説明

ケースモールド型コンデンサ

【課題】近接した異極のバスバー間の絶縁距離を確保するとともに、外部機器への接続端子の位置精度を向上することができるケースモールド型コンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】コンデンサ素子11と、素子接続部12aにこのコンデンサ素子11を接続した一対のバスバー12と、このバスバー12の他方の端部に設けられた外部接続端子部12bと、コンデンサ素子11を収容するケース14と、外部接続端子部12bの一部を除いてバスバー12およびコンデンサ素子11を覆うようにケース14内に充填される充填樹脂とからなるケースモールド型コンデンサにおいて、一対のバスバー12の外部接続端子部12bの互いに重なる重複部12cに絶縁板13を設け、絶縁板13により外部接続端子部12bの互いの位置を固定した一対のバスバー12をコンデンサ素子11に接続したケースモールド型コンデンサとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用されるケースモールド型コンデンサに関するものであり、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用などに最適なケースモールド型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、多くの電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとガソリンエンジンを使い分けて走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入されるなど、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEVで使用される電気モータは、使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されている。さらに、市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも、極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサが採用される傾向が目立っている。そして車載用などの厳しい温度や湿度環境下での長期の使用に耐えうるように、金属化フィルムコンデンサを外装ケースに充填樹脂とともに樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサが用いられている。
【0004】
このようなケースモールド型コンデンサは複数のコンデンサをバスバーなどにより電気的に接続したものが多く、インダクタンスが大きくなりやすいものであるが、近年ケースモールド型コンデンサが使用される回路においても高周波化が進み、回路上のロスを少なくして効率を上げるために低インダクタンス化が求められるようになっている。
【0005】
低インダクタンス化のためには、正極と負極のような異極のバスバーを対向させ、バスバーの配線により囲まれるループを小さくすることにより、相互インダクタンスを小さくする方法などが考えられている。
【0006】
図4は従来の低インダクタンスコンデンサの一例を示す斜視図であり、メタライズドポリプロピレンフィルムを巻回したコンデンサ素子の両端面に電極41、41が形成されている。そしてこのコンデンサ素子側面に絶縁フィルム44を巻き、一方の電極41の端面よりも絶縁フィルム44の一端(図では上方)が突出するように周回させている。
【0007】
そしてこの絶縁フィルム44の上に他方の電極41と電気的に接続され、電極引出し板45を巻き、コンデンサ素子の全周を覆っている。
【0008】
その電極引出し板45から第1の端子42aをコンデンサ素子の円筒軸と平行に一方の電極41が形成された方向に引き出している。また、一方の電極41に電気的に接続するとともに、第1の端子42aと平行となるように第2の端子42bを引き出し、両端子42a、42bを絶縁板43を介して対向して近接させたものである。
【0009】
そしてこの構成により、コンデンサのインダクタンスを低減しつつ、端子間の沿面距離を長くとることができ、その結果高電圧に耐え、容易に配線・接続ができるというものであった。
【0010】
なお、本出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3845658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の低インダクタンスコンデンサにおいては、端子42a、42bよりも幅広の絶縁板により絶縁距離を確保しているが、端子42aと42bの位置は相互に固定されていない。このため、外部機器への取付などに際して、端子42a、42bが変形するような応力がかかった場合、端子42a、42bがずれて十分な端子間の沿面距離が確保できなくなるおそれがある。また、端子42a、42bがずれても充分な沿面距離を確保しようとすると、絶縁板を必要以上に大きくせざるを得ず、その結果コンデンサの大型化やコスト増加につながってしまう。
【0013】
さらに、絶縁物と導電板とコンデンサ素子集合体よりなる簡単な構造のため、導電板の位置固定が困難であり、HEV用などで外部機器に取り付ける際に接続端子の位置精度を確保することが出来ないものであった。
【0014】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、近接した異極のバスバー間の絶縁距離を確保するとともに、外部機器への接続端子の位置精度を向上することができるケースモールド型コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のケースモールド型コンデンサは誘電体フィルムに金属を蒸着した金属化フィルムを積層または巻回したコンデンサ素子と、一方の端部にこのコンデンサ素子を接続した一対のバスバーと、このバスバーの他方の端部に設けられた外部接続端子部と、前記コンデンサ素子を収容する上面の開口したケースと、前記外部接続端子部の一部を除いて前記バスバーおよび前記コンデンサ素子を覆うように前記ケース内に充填される充填樹脂とからなるケースモールド型コンデンサにおいて、前記一対のバスバーの外部接続端子部は互いに重なる重複部を有し、この重複部に前記一対のバスバーを絶縁するように絶縁板を設け、前記絶縁板により前記外部接続端子部の互いの位置が固定された前記一対のバスバーのそれぞれ一方の端部を前記コンデンサ素子に接続したことを特徴とするケースモールド型コンデンサである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バスバーの外部接続端子部の重複部にこの一対のバスバーを絶縁するように設けた絶縁板により、外部接続端子部の互いの位置が固定された一対のバスバーのそれぞれ一方の端部をコンデンサ素子に接続する構成としたため、複雑な位置決め作業や余分な絶縁物などの材料を必要とすることなく、低インダクタンス化のために近接した異極のバスバー間の絶縁距離を確保するとともに、外部機器への接続端子の位置精度を向上することができ、製造工数を著しく削減することにより生産性の向上に寄与することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)本実施の形態1によるケースモールド型コンデンサの樹脂モールド前の構成を示した分解斜視図、(b)同ケースモールド型コンデンサの各構成要素を組み上げた状態を示す断面図
【図2】(a)図1(a)の部分拡大図、(b)〜(c)同ケースモールド型コンデンサの他の例を示す部分拡大図
【図3】本実施の形態2によるケースモールド型コンデンサの部分拡大図
【図4】従来の低インダクタンスコンデンサの一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態におけるケースモールド型コンデンサについて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1(a)は本実施の形態1によるケースモールド型コンデンサの樹脂モールド前の構成を示した分解斜視図であり、図1(b)は図1(a)の各構成要素を組み上げた状態を示す断面図であり、図2(a)〜図2(c)は図1(a)の要部拡大斜視図である。
【0020】
図1において、11はコンデンサ素子であり、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの誘電体フィルム(図示せず)にアルミニウムや亜鉛などの金属蒸着電極(図示せず)を設け、この誘電体フィルムを介して金属蒸着電極が対向するように巻回したものの両端面に亜鉛やスズなどの金属を溶射することによってメタリコン電極(図示せず)を備えたものである。
【0021】
12は銅板などからなる一対のバスバーであり、この一対のバスバー12は一端である素子接続部12aがコンデンサ素子11のメタリコン電極にはんだ付けなどにより接続されるとともに、反対側の他端は後述するケース14の上方を向くようにL字状に折り曲げられている。
【0022】
そしてこのバスバー12の他端にはケース14からその一部が突出する外部接続端子部12bが設けられており、この外部接続端子部12bの一部は互いに重なり合う重複部12cを構成している。
【0023】
この重複部12cは、一対のバスバー12を流れる電流の向きが逆になることにより、相互インダクタンスを低下させることを目的として構成されるものである。
【0024】
この重複部12cは表面に突起部13aが設けられた樹脂製の絶縁板13を挟んで対向しており、重複部12cが絶縁板13に設けられた突起部13aと対向する位置に穴部12dを形成している。
【0025】
そして、この絶縁板13の突起部13aと、重複部12cに設けられた穴部12dを嵌合させることにより、一対のバスバー12の外部接続端子部12bの相互の位置が固定されるとともに、絶縁板13との位置も固定されるものである。
【0026】
14はポリフェニレンサルファイドなどからなる上面の開口した樹脂製のケースであり、コンデンサ素子11とバスバー12とを収容するものである。また、15は主にエポキシ樹脂やウレタン樹脂などからなる充填樹脂で、ケース14に充填され、このとき図1(b)に示すようにバスバー12の外部接続端子部12bの一部はケース14から表出している。
【0027】
このような構成の本実施の形態によるケースモールド型コンデンサにおいて、絶縁板13に設けた突起部13aと、重複部12cに設けられた穴部12dを嵌合させて絶縁板13とバスバー12とを固定したことが本発明の特徴の一つであり、この構成により一対のバスバー12間の絶縁距離を容易に確保することができるとともに、一対のバスバー12の外部接続端子部12bの相互の位置が精度よく固定される。
【0028】
この外部接続端子部12bは外部機器(図示せず)に機械的及び電気的に接続されるものであり、接続を容易にするためにその相互の位置が非常に重要なものである。
【0029】
そして、外部接続端子部12bの相互の位置が精度よく固定された状態で、素子接続部12aがコンデンサ素子11のメタリコン電極(図示せず)に接続されるのであるが、この素子接続部12aは図1〜図3に示したように、枝状の突起部として形成されたものである。すなわち、この素子接続部12aが枝状の突起部として形成されることにより、コンデンサ素子11の幅方向の寸法にばらつきがあった場合でも、素子接続部12aが広がるか狭まるなどの変形をすることにより、コンデンサ素子11に無理なく固定できるという効果を奏することができる。
【0030】
図2はバスバー12と絶縁板13の固定を説明するための部分拡大図であり、図2(a)は図1に示した構成を拡大して示したものである。
【0031】
図2(b)、図2(c)はバスバー12と絶縁板13の固定の他の例を示す部分拡大図である。図2(b)では図2(a)に示した突起部13aと穴部12dに代わるものとして、絶縁板16にガイド部16aを設け、またバスバー12にはこのガイド部16aが嵌合する切欠部17を設けたものである。
【0032】
図2(c)は図2(a)に示した絶縁板13の両端部に折り曲げ部18を設けたものであり、バスバー12間の絶縁距離をより確実に確保することができるとともに、一対のバスバー12の外部接続端子部12bの相互の位置精度もより向上させることができる。
【0033】
(実施の形態2)
実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、絶縁板13に設けた突起部13aやガイド部16aと、バスバー12に設けた穴部12dや切欠部17を嵌合させるのではなく、あらかじめバスバー12の位置を固定した状態で絶縁板と一体成形した点であり、その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0034】
実施の形態2によるケースモールド型コンデンサでは、図3の部分拡大図に示したように、インサート成形などの方法により、一対のバスバー12の外部接続端子部12bの先端部分が絶縁板19から表出した状態で絶縁板19と一体に形成されたものを用いている。
【0035】
図1と同様にバスバー12の外部接続端子部12bと反対側の一端である素子接続部12aはコンデンサ素子11に接続され、ケース14に収納された後、充填樹脂15で封止される。
【0036】
実施の形態2のケースモールド型コンデンサでは、あらかじめバスバー12と絶縁板19が一体成形されているため、組み立てが簡単で、かつバスバー12間の絶縁距離をより確実に確保することができるとともに、一対のバスバー12の外部接続端子部12bの相互の位置精度もより向上させることができるものである。
【0037】
なお、実施の形態1および2では構成を分かりやすくするために、コンデンサ素子11が1個でバスバー12が一対の例を示したが、これに限定されるものではなく、コンデンサ素子11が複数でバスバー12がコンデンサ素子11の個数に対応する複数でもよい。
【0038】
また、図2(a)の絶縁板13としては樹脂製の例を示したが、これに限定されるものではなく、ゴム製のものでもよく、図2(b)に示したガイド部16aを設けた絶縁板16や、図2(c)に示した折り曲げ部18を設けた絶縁板などの場合には、ゴム製とすることにより作業性がより容易になるという効果も有するものである。
【0039】
また、実施の形態2でインサート成形などの一体成形に用いる絶縁板19は、樹脂製でもゴム製でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にかかるケースモールド型コンデンサによれば、バスバー間の絶縁距離を確実に確保することができるとともに、バスバーの外部接続端子部の相互の位置精度を向上させることができ、低インダクタンス化と厳しい寸法精度が要求される自動車のモータ駆動用インバータシステムなどに使用されるケースモールド型コンデンサとして有用である。
【符号の説明】
【0041】
11 コンデンサ素子
12 バスバー
12a 素子接続部
12b 外部接続端子部
12c 重複部
12d 穴部
13 絶縁板
13a 突起部
14 ケース
15 充填樹脂
16 絶縁板
16a ガイド部
17 切欠部
18 折り曲げ部
19 絶縁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムに金属を蒸着した金属化フィルムを積層または巻回したコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の両端面にそれぞれ一方の端部が接続された一対のバスバーと、このバスバーの他方の端部に設けられた外部接続端子部と、前記コンデンサ素子を収容する上面の開口したケースと、前記外部接続端子部の一部を除いて前記バスバーおよび前記コンデンサ素子を覆うように前記ケース内に充填される充填樹脂とからなるケースモールド型コンデンサにおいて、前記一対のバスバーの外部接続端子部は互いに重なる重複部を有し、この重複部に前記一対のバスバーを絶縁するように絶縁板を設け、前記絶縁板により前記外部接続端子部の互いの位置が固定された前記一対のバスバーのそれぞれ一方の端部を前記コンデンサ素子に接続したことを特徴とするケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
前記一対のバスバーの重複部に位置決め用の穴部を設けるとともに前記絶縁板の前記重複部の穴部に対応する位置に凸部を設け、前記重複部の穴部と前記絶縁板の凸部を嵌合させることにより前記外部接続端子部の重複部を互いに固定することを特徴とする請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項3】
前記絶縁板の両端にガイド部を設けるとともに、前記一対のバスバーの外部接続端子部に前記ガイド部に嵌合する切欠部を設け、前記ガイド部と前記切欠部を嵌合させることにより前記外部接続端子部の重複部を互いに固定することを特徴とする請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項4】
前記一対のバスバーの外部接続端子部と、前記絶縁板とが一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項5】
前記コンデンサ素子に接続される一対のバスバーの一方の端部は枝状の突起部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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