説明

ケース

【課題】ケース内に香りを長期間保持できるケースを提供する。
【解決手段】揮発性の高い香料であっても、マイクロカプセル内部に入れることによって、香り成分を長期間閉じ込めておくことができるようになる。この場合、マイクロカプセル外殻からは香料成分がすこしずつ染み出してくるため、香りが緩やかに長期間放出し続けることができる。このマイクロカプセルに香料を内包させたものをケース内面に塗布することによりケース内に付着させる。したがって、ケース内に香りを長期間保持できるケースの提供が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に香りを長期間保持できるケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香りつけした製品や香り成分を密閉保存する方法としては、特許文献1に開示されているような、ポリエチレンテレフタレート製の容器と蓋の間に気体透過率の低い弾性部材を介在させて密封する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
(特許文献1)特開2005−8232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
香り成分は、12時間以内に揮発してしまうものがほとんどであり、密閉しなければ長期保管はできない。その為、特許文献1の容器のような密閉できるケースを使用する必要がある。しかし、特許文献1の容器を使用して香り成分と一緒にケースに使用した場合、特に、大きな容器の場合、開口部が大きくなるため、容器を密閉することが困難になり、香り成分を保持することができない。また、容器を密閉するため、小さな容器とした場合、収納するものが入らなかったり、小分けして入れなければならないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本考案は、少なくとも香料を内包したマイクロカプセルをケース内面に付着させたケースを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
マイクロカプセルとは、1ミクロンから数百ミクロン単位の微小な粒子であり、その内部に別の物質を封じ込めたものである。揮発性の高い香料であっても、このマイクロカプセル内部に入れることによって、香り成分を長期間閉じ込めておくことができるようになる。この場合、マイクロカプセル外殻からは香料成分がすこしずつ染み出してくるため、香りが緩やかに長期間放出し続けることができる。また、香りを強くしたい場合は、マイクロカプセルを摩擦などの方法で変形、破壊することにより、より香りの放出量を多くすることも可能である。このマイクロカプセルに香料を内包させたものをケース内面に塗布することにより、特許文献1のような方法でケースを密封しなくても、香りを長期間ケース内部に保持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一例を示す斜視図。
【図2】部品を示す斜視図。
【図3】他の一例を示す斜視図。
【図4】部品を示す展開図
【図5】更に他の一例を示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
香料として、具体的には、バラ油、ジャスミン油、ネロリ油、ラベンダー油、イランイラン油、チュベローズ油、クラリセーズ油、クローブ油、ペパーミント油、ゼラニウム油、パッチェリー油、サンダルウッド油、シンナモン油、コリアンダー油、ナツメグ油、ペパー油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、オポポナックス油、ベチバー油、オリス油、オークモス油等の植物性香料や、ムスク油、シベット油、カストリウム油、アンバーグリス油等の動物性香料等が挙げられる。合成香料は、天然香料からその含有成分を抽出、精留、晶析や簡単な化学処理よってえる単離香料と、有機合成反応により製造する純合成香料とがある。具体的には、リモネン、β−カリオレフィン等の炭化水素類香料、シス−3−ヘキサノール、リナロール、ファルネソール、β−フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、シトロネロール、タービネオール、メントール、サンタロール、バクダノール、ブラマノール等のアルコール類香料、2,6−ノナジエール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、リラール、リリアール等のアルデヒド類香料、β−イオノン、l−カルボン、シクロペンタデカノン、ダマスコン、メチルイオノン、イロン、イソイースーパー、アセチルセドレン、ムスコン等のケトン類香料、リナニルアセテート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、メチルジャスモネート等のエステル類香料、Y−ウンデカラクトン、ジャスミンラクトン、シクロペンタデカノリッド、エチレンブラシレート等のラクトン類香料、オイゲノール等のフェノール類香料、ローズオキサイド、ガラクソリッド、アンプロキサン等のオキサイド類香料、インドール等の含窒素化合物類香料、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール等のアセタール類香料、オーランチオール等のシッフ塩基類香料等が挙げられる。またこれらの天然香料や合成香料はそのまま単独で使用することは少なく、多くの場合、これらの素材を目的に応じて組み合わせ調合された調合香料の形で用いられることもある。具体的には、ローズ、ジャスミン、ミューゲ、リラ、カーネーション、チュベローズ、ヒアシンス、オレンジフラワー、ネロリ、バシオレット、ヘリオトロープ、ガーデニア、ハニーサックル、ジョンキル、ナルシス、フリージア、イランイラン、ジンチョウゲ等の花の香りのフローラル類香料、ベチバー系、サンダルウッド系、パッチェリー系、セダーウッド系、パイン系等の木の香りのウッディ類香料、Coty社の香水Chypreが原型となっているシプレー類香料、ベルガモット、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、マッダリン等の柑橘系の香りのシトラス類香料、葉や、きゅうり、トマト、ピーマンなどに感じられる青くさい香りのグリーン類香料、Fougere Royaleの香水名の原型であるフゼア類香料、東洋からヨーロッパに輸入された香料の特徴から名づけられたオリエンタル類香料、ピーチ、ストロベリー、アップル、バナナ、メロン、パイナップル、ラズベリー等のフルーツの香りのフルーティ類香料、グローブ、シンナモン、タイム、ペパー、カルダモン、ナツメッグ等のスパイスの香りのスパイシー類香料、脂肪族アルデハイドに属する炭素数7から12までのもつアルデハイド類香料、ムスク、シベッド、カストリウム、アンバーグリス等の動物の臭いのアニマル類香料等が挙げられる。これらの香料は、単独もしくは複数混合して使用可能である。
【0009】
香料を内包させるマイクロカプセルは、メラミン樹脂やアクリル樹脂などの合成樹脂製の殻材などでできたケミテック(株)製のものや、多孔質体に香料を吸着させたエネックス社のものが知られている。
これらのいずれか1種若しくは2種以上を用いることができる。
【0010】
ケースの形状は従来公知のものが挙げられ、具体的には、たばこを収納したケース、菓子を収納したケース、筆記具を収納したケース、絵の具・クレヨンを収納したケース、替芯を収納したケース、調理器具を収納したケース、食器を収納したケース、トイレタリー製品を収納したケース、工具を収納したケース、家電製品を収納したケース、医療品を収納したケース。衣料品を収納したケース、名刺を収納したケース、郵便物を収納したケース、DVD等電子媒体を収納したケース、書籍を収納したケース、写真を収納したケース、化粧品を収納したケース、宝飾類を収納したケース、歯磨きセットを収納ケース、時計を収納したケース、ファイルを収納したケース、ラップ・アルミホイルを収納したケース、ゲーム機を収納したケース、ノートパソコンを収納したケース、携帯電話、電子計算機等を収納したケース、手帳を収納したケース、靴を収納するケース、小物を収納したケース、コインケース、スーツケース、等が挙げられる。なお材質は問わず使用可能である。
【0011】
ケースの内面に香料を内包したマイクロカプセルを付着させる方法としては、香料を内包したマイクロカプセルに溶剤を加えて香料を内包したマイクロカプセル溶液を作成し、香料を内包したマイクロカプセル溶液をケース内面に向けスプレーしたり、刷毛等で塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。香料を内包したマイクロカプセルの溶液を作成する際の溶剤としてはピネン、セイリネン、サンタレンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの脂肪族アルコール類、テルピネオール、イソボルネオなどのテルペンアルコール類、サンタロール、セドロール、ランブテロールなどのセスキテルベンアルコール類、フェニルエチルアルコール、桂皮アルコールなどの芳香族アルコール類、パラクレゾール、チモールなどのフェノール類、ベンジルベンゾエート、イソオイゲノールなどのフェニルエーテル類、アグルメなどのC8〜C13の炭化水素鎖をもつ脂肪族アルデヒド類、シトラール、シトロネラなどのテルペンアルデヒド類、ベンズアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類、シスジャスモン、メントンなどの環状ケトン類、ナノラクトンなどのラクトン類、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテートなどのエステル類、インドール、メチルアンスラアニレートなどのニトロ化化合物類、蒸留水などを例示できる。これら溶剤を単独または複数種組み合わせて使用される。
なおケースの内面とは、ケースの部品である外箱と内箱、あるいは収容部と蓋体によって囲まれたケース内部である。
【実施例】
【0012】
図面に基づき一例について説明する。
【0013】
<実施例1>
図1に示したものは、紙製の内箱2に蓋となる紙製の外箱1を被せたケースの斜視図である。内箱2とは絵の具、クレヨンを収納する箱である。内箱2は絵の具、クレヨンを整列させる為、内箱2の内部に仕切りを設けたり、トレーを置く事もできる。外箱1とは内箱2に被せて蓋とする為の箱である。その寸法は内箱2に外箱1を被せた際にガタつきが無く、かつ自由に取り外しができる程度とする。香料を内包したマイクロカプセルを付着させる位置を例として図2に外箱1の天井部分内側3をドットにて示す。香料を内包したマイクロカプセルの付着量はケース全体で0.01グラム〜0.5グラム程度である。香料としてジャスミンの香料を内包したマイクロカプセルを0.5グラム付着させたものを40℃で1カ月放置し、香りを官能で確認した。
【0014】
<実施例2>
図3に示したものは、紙製のスリーブ式外箱4に挿脱自在な紙製の内箱2を差し込んだ
ケースの斜視図である。図4に示したものは図3のスリーブ式外箱4を展開した部品図である。スリーブ式外箱4とは内箱2を差し込んで蓋とする為の筒状の部品である。内箱2とスリーブ式外箱4の大きさはガタつきが無く、自由に取り外しができる程度に接触した状態にする。香料を内包したマイクロカプセルを付着させる位置を例として図4にスリーブ式外箱4の天井部分内側5をドットにて示す。香料を内包したマイクロカプセルの付着量はケース全体で0.01グラム〜0.5グラム程度である。香料としてジャスミンの香料を内包したマイクロカプセルを0.3グラム付着させたものを40℃で1カ月放置し、香りを官能で確認した。
【0015】
<実施例3>
図5に示したものはポリプロピレン製の絵の具、クレヨンの収容部6とポリプロピレン製の蓋体7がポリプロピレン製のヒンジ部8によって連結されたケースである。蓋体7と絵の具、クレヨンの収容部6は勘合部を設けたり、ホックで固定する等の方法で保管時に開かないようにする。香料を内包したマイクロカプセルを付着させる位置を例として蓋体6の天井部分内側9をドットにて示す。香料を内包したマイクロカプセルの付着量はケース全体で0.01グラム〜0.5グラム程度である。香料としてジャスミンの香料を内包したマイクロカプセルを0.1グラム付着させたものを40℃で1カ月放置し、香りを官能で確認した。
【0016】
<比較例1>
図1と同じ形状でスチロール製の内箱2にジャスミンの香料0.05グラムを入れた後、スチロール製の外箱1の天井部分内側全面に厚さ0.5ミリメートルのブチルゴムを入れたもので蓋をし、40℃で1カ月放置し、香りを官能で確認した。
【0017】
上記実施例1〜3、比較例1の結果を表1に示す。表中の「○」は香りを感じられるものであり、「×」は香りを感じられないものである。
【0018】
【表1】

【符号の説明】
【0019】
1 外箱
2 内箱
3 天井部分内側
4 スリーブ式外箱
5 天井部分内側
6 絵の具、クレヨンの収容部
7 蓋体
8 ヒンジ部
9 天井部分内側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも香料を内包したマイクロカプセルをケース内面に付着させたケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−25972(P2011−25972A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174845(P2009−174845)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】