説明

ケーブルアセンブリ、及び、それを用いたアンテナシステム

【課題】 良好な高速通信が可能なアンテナシステムを実現できるケーブルアセンブリ、及び、それを用いたアンテナシステムを提供する。
【解決手段】
ケーブルアセンブリ1は、中心導体11と、中心導体11の外周を被覆する絶縁層12と、絶縁層12の外周を被覆する外部導体13と、外部導体13を被覆するシース14とを有する同軸ケーブル10と、信号端子21とグランド端子22とを有するコネクタ20と、を備え、同軸ケーブル10の端部において、外部導体13は、シース14から露出してグランド端子22と電気的に接続され、中心導体11は、外部導体13の端部から導出すると共に、少なくとも一部が露出して信号端子21と接続され、外部導体13の端部から中心導体11が信号端子21に接続されるまで距離が、0.40mm以上0.85mm以下とされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルアセンブリ、及び、それを用いたアンテナシステムに関し、特に良好な高速通信が可能なアンテナシステムを実現できるケーブルアセンブリ、及び、それを用いたアンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話やモバイルパソコン等といった小型電子機器に用いられているアンテナは、一般的に配線基板に設けられているインピーダンスが50Ωの導線路と電気的に接続されている。そして、この配線基板の導線路と他の配線基板の導線路とが電気的に接続されるとき、それぞれの配線基板の導線路同士が、同軸ケーブルにより接続されることがある。この場合、一般的にそれぞれの配線基板の導線路のインピーダンスと同軸ケーブルのインピーダンスとを整合させるために、インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルが用いられる。
【0003】
下記特許文献1には、このような同軸ケーブルの一例が記載されている。下記特許文献1に記載の同軸ケーブルにおいては、配線基板に接続される側の端部において口出しがされている。この口出しは、シースから外部導体が露出され、外部導体から絶縁層が露出され、絶縁層から中心導体が露出されるものである。そして、露出された外部導体が、配線基板のグランド端子にはんだ付けにより接続されると共に、中心導体が、配線基板の信号端子にはんだ付けにより接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−45224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、小型電子機器の高速通信化に伴ってWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)等の様にOFDM(Orthogonal
Frequency Division Multiplexing)等の周波数多重方式を用いた通信技術が用いられている。このような通信技術においては、100kHzから12GHzの周波数の信号がアンテナにより送受信されるようになっている。このようにアンテナが送受信する周波数の帯域が広くなると、周波数の高い領域において、配線基板の導線路や、同軸ケーブルにおいてインピーダンスの不整合が生じ易くなる。このインピーダンスの不整合が生じると、定在波が目立つようになり、高周波領域での通信が阻害され、電子機器の高速通信を阻害する場合がある。このようなインピーダンスの整合性を示す一つの指標としてVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)がある。そして、一般的にVSWRが1.60以下であることが、アンテナで高速通信を行うための目安の一つとされる。
【0006】
しかし、配線基板の導線路のインピーダンスと、同軸ケーブルのインピーダンスとを整合させても、配線基板の端子に接続される同軸ケーブルの端部においては、一部が絶縁層により被覆された中心導体が、外部導体の端部から導出している。このような外部導体から導出している中心導体は、中心導体が外部導体によりシールドされていないため、インピーダンス不整合が生じる傾向にある。上記特許文献1の同軸ケーブルにおいても、同軸ケーブルの端部において、VSWRが1.60より大きくなる場合があり、このような場合には、良好な高速通信が阻害される虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、良好な高速通信が可能なアンテナシステムを実現できるケーブルアセンブリ、及び、それを用いたアンテナシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、基板の導線路と同軸ケーブルとが接続される部分において、インピーダンス不整合が生じないように鋭意研究を行った。中心導体が外部導体により覆われている部分においては、インピーダンスが整合されており、また、中心導体が信号端子に接続されてからは、信号端子のインピーダンスが支配的になる。従って、中心導体が外部導体の端部から導出してから信号端子に接続されるまでの長さを短くすれば、インピーダンス不整合が生じづらくなり、上記課題は解決できると考えた。そこで、信号端子とグランド端子とを有するコネクタ、及び、口出しされた同軸ケーブルを用意して、外部導体とコネクタのグランド端子とを接続し、中心導体とコネクタの信号端子とを接続して、ケーブルアセンブリを作製した。このとき、外部導体の端部から中心導体が信号端子に接続されるまで距離を短くすることにより、インピーダンスの不整合の問題は解決すると思われた。しかし、特定の周波数においては、外部導体の端部から中心導体が信号端子に接続されるまで距離を短くすると、却ってインピーダンス不整合が生じることが明らかになった。そこで、本発明者は、さらに鋭意研究を重ねて、本発明をするに至った。
【0009】
すなわち、本発明の同軸ケーブルは、中心導体と、前記中心導体の外周を被覆する絶縁層と、前記絶縁層の外周を被覆する外部導体と、前記外部導体を被覆するシースとを有し、100kHz以上12GHz以下の周波数においてインピーダンスが50Ωの同軸ケーブルと、信号端子とグランド端子とを有し、100kHz以上12GHz以下の周波数においてインピーダンスが50Ωのコネクタと、を備え、前記同軸ケーブルの端部において、前記外部導体は、前記シースから露出して前記グランド端子と電気的に接続され、前記中心導体は、前記外部導体の端部から導出すると共に、少なくとも一部が露出して前記信号端子と接続され、前記外部導体の端部から前記中心導体が前記信号端子に接続されるまで距離が、0.40mm以上0.85mm以下とされることを特徴とするものである。
【0010】
このようなケーブルアセンブリによれば、同軸ケーブル、及び、コネクタにおいては、100kHz以上12GHz以下の周波数においてインピーダンスが共に50Ωとされ、インピーダンス整合がされている。また、100kHz以上12GHz以下の周波数の信号がコネクタの信号端子に印加される場合において、外部導体の端部から中心導体が信号端子に接続されるまで距離が、0.40mm以上0.85mm以下とされため、同軸ケーブルの端部におけるVSWRを1.60以下にすることができる。上述のように高速通信に用いられるアンテナ用の線路として、このようなVSWRが1.60以下であることが求められる。従って、このようなケーブルアセンブリにおいては、高速通信を行う場合におけるインピーダンス不整合による定在波を十分なレベルに抑制することができる。従って、このようなケーブルアセンブリを用いることにより、良好な高速通信が可能なアンテナシステムを実現することができる。
【0011】
また、上記ケーブルアセンブリにおいて、前記絶縁層は、前記外部導体の端部から露出しており、前記中心導体が前記外部導体の端部から導出している部分における前記外部導体側の一部は、前記絶縁層で被覆されていることが好ましい。
【0012】
このようなケーブルアセンブリによれば、外部導体の端部から中心導体が露出している部分の間において、絶縁層が中心導体を被覆しているため、外部導体と中心導体との短絡を防止することができる。
【0013】
また、上記ケーブルアセンブリにおいて、前記外部導体は、金属編組と、前記金属編組の隙間を埋める金属とから構成されることが好ましい。
【0014】
このような同軸ケーブルによれば、金属編組の複数の線材が、金属編組の隙間を埋める金属により一体とされるため、外部導体を露出させるときに、外部導体がバラバラにならず作業性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明のアンテナシステムは、上記のケーブルアセンブリと、前記信号端子と電気的に接続されるインピーダンスが50Ωの導線路と、前記グランド端子と電気的に接続されるグランド体とを有する配線基板と、100kHz以上12GHz以下の周波数で通信を行い、前記導線路と電気的に接続されるアンテナと、を備えることを特徴とするものである。
【0016】
このようなアンテナシステムによれば、同軸ケーブル及び導線路のインピーダンスが共に50Ωとされ、さらに同軸ケーブルの端部におけるVSWRを1.60以下にすることができるので、全体的にインピーダンスの不整合による定在波が抑制でき、良好な高速通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、良好な高速通信が可能なアンテナシステムを実現できるケーブルアセンブリ、及び、それを用いたアンテナシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るケーブルアセンブリを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るアンテナシステムを組み立てる様子を示す図である。
【図3】図1のケーブルアセンブリにより伝送される信号の周波数と、同軸ケーブルの端部におけるVSWRとの関係を、外部導体の端部から中心導体が信号端子に接続されるまで距離毎に示す図である。
【図4】図1の外部導体の端部から中心導体が信号端子に接続されるまで距離と、同軸ケーブルの端部におけるVSWRとの関係を周波数毎に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る同軸ケーブルの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るケーブルアセンブリを示す図である。図1に示すように、ケーブルアセンブリ1は、同軸ケーブル10、及び、コネクタ20を備える。
【0021】
同軸ケーブル10は、中心導体11と、中心導体11の外周を被覆する絶縁層12と、絶縁層12の外周を被覆する外部導体13と、外部導体13を被覆するシース14とを有する。
【0022】
中心導体11は、複数の導電性の線材の撚り線から構成される。中心導体11の直径は、特に制限されるものではないが、0.075mm〜0.15mmであることが、省スペース化に寄与しつつ、VSWRを低く抑える観点から好ましい。なお、中心導体11の材料としては、導体であれば特に制限されないが、例えば、銅やニッケル等が挙げられる。
【0023】
中心導体11を被覆する絶縁層12は、絶縁性の樹脂から形成されている。絶縁層12の外径は、特に制限されるものではないが、0.165mm〜0.4mmであることが、上述の中心導体11の好ましい直径の理由と同様に、省スペース化に寄与しつつ、VSWRを低く抑える観点から好ましい。なお、絶縁層12の材料としては、絶縁性の樹脂であれば特に制限がないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂としては、エチレンプロピレン共重合体系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は、これらの混合物などが挙げられる。
【0024】
絶縁層12を被覆する外部導体13は、金属編組から構成される。金属編組は、例えば、直径が0.1mm以下の多数の金属の線材が編みこまれたものである。なお、外部導体13は、金属により金属編組の線材の隙間が埋められていることが好ましい。すなわち同軸ケーブル10は、いわゆるセミフレキシブル同軸ケーブルであることが好ましい。このように構成することで、金属編組の複数の線材が、金属編組の隙間を埋める金属により一体とされるため、外部導体13を露出させるときに、外部導体13がバラバラにならず作業性を向上させることができる。この金属編組の隙間を埋める金属としては、例えば、スズ、はんだ等が挙げられる。そして、金属編組の隙間を埋める金属は、例えばめっき加工により金属編組の線材を被覆することで、金属編組の隙間を埋めている。外部導体の外径は、特に制限されるものではないが、例えば、上述のように中心導体11の直径が0.075mm〜0.15mmである場合には、0.29mm〜0.83mmとされる。
【0025】
シース14は、熱可塑性樹脂により形成されている。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PTA)や、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂を挙げることができる。
【0026】
なお、このような構成の同軸ケーブル10は、少なくとも100kHzから12GHzにおいて、インピーダンスが50Ωとなるように調整されている。
【0027】
そして、同軸ケーブル10は、端部において口出しがされている。この口出しにより、外部導体13がシース14から露出し、絶縁層12が外部導体13から露出し、中心導体11が絶縁層12から露出されている。このように絶縁層12が外部導体13から露出することにより、外部導体13の端部から中心導体11が導出している部分の外部導体側の一部が絶縁層12により被覆され、外部導体13と中心導体11との短絡を防止することができる。
【0028】
コネクタ20は、グランド端子22と信号端子21とを有する。
【0029】
このコネクタ20のグランド端子22は、開口22aが形成された金属の枠体から構成されており、グランド端子22の枠体の一部には開口22aと垂直な方向に孔22bが形成されている。
【0030】
また、グランド端子22を構成する枠体内には、信号端子21が、開口22aから一部が露出するようにして配置されている。この信号端子21には、グランド端子22の開口22aが向く方向に沿って孔21aが形成されている。また、信号端子21におけるグランド端子22の開口22a側と反対側には、同軸ケーブル10の中心導体11が、孔21aと略垂直な方向を向いて固定される固定手段21bが設けられている。
【0031】
そして、このグランド端子22と信号端子21との間には、樹脂23が充填されており、この樹脂23により信号端子21とグランド端子22とが互いに絶縁されている。具体的には、信号端子21の孔21aが形成されている側と反対側は、樹脂23により被覆されている。そして、信号端子21の固定手段21bに同軸ケーブル10の中心導体11を固定するために、樹脂23には、中心導体11が挿入される孔23bが設けられている。この樹脂23に形成されている孔23bが、グランド端子22に形成された孔22bから露出するようにして、樹脂23の一部は、グランド端子22の孔22bから露出している。
【0032】
また、信号端子21の孔21aが形成されている側において、樹脂23には孔23aが形成されており、信号端子21の一部が、この孔23a内に配置されて露出すると共に、信号端子21の一部と樹脂23とが離間している。
【0033】
さらに、グランド端子22を形成する金属の枠体の一部は、グランド端子22の孔22bが向く方向に沿って延在しており、ケーブル固定部24が形成されている。従って、このケーブル固定部24は、グランド端子22と導通している。そして、ケーブル固定部24にはかしめ部26が形成されており、このかしめ部26は、同軸ケーブル10の外部導体13をかしめて、同軸ケーブル10とコネクタ20とを固定するように構成されている。
【0034】
なお、このような構成のコネクタ20は、少なくとも100kHzから12GHzにおいて、インピーダンスが50Ωとなるように調整されている。
【0035】
そして、上述のように口出しされた同軸ケーブル10の端部において、シース14から露出した外部導体13は、かしめ部26によりかしめられ、さらに、外部導体13の端部から導出すると共に、少なくとも一部が露出した中心導体11は、樹脂23の孔23bを介して信号端子21の固定手段21bに固定される。こうして、外部導体13がグランド端子22と電気的に接続されると共に、中心導体11が信号端子21と接続され、ケーブルアセンブリ1とされる。このとき、ケーブルアセンブリ1においては、外部導体13の端部から中心導体11が信号端子21に接続されるまで距離Lが、0.40mm以上0.85mm以下とされている。
【0036】
次に、このようなケーブルアセンブリ1を用いたアンテナシステムについて説明する。
【0037】
図2は、本発明の実施形態に係るアンテナシステムを組み立てる様子を示す図である。図2に示すように、本実施形態のアンテナシステムは、配線基板30と、配線基板30上に実装されているソケット40と、配線基板30上に実装されているアンテナ50と、ソケット40にコネクタ20が接続される上述のケーブルアセンブリ1とを主な構成として備える。
【0038】
図2に示すように配線基板30は、平板状の基板31と、基板31の一方の面上に設けられたグランド用ランド34と、基板31の一方の面上に設けられた信号用ランド32と、基板31の一方の面上に設けられ信号用ランド32と接続されている導線路33と、基板31の他方の面上に設けられているグランド体としてのグランド層35と、グランド層35とグランド用ランド34とを電気的に接続する貫通導体36とを主な構成として備える。
【0039】
基板31は、例えば、ガラス繊維にエポキシ樹脂が含浸された基板とされる。グランド用ランド34、信号用ランド32、導線路33、及び、グランド層35は、金属めっきや銅箔等の金属箔から構成されており、貫通導体36は、銅等の金属から構成されるビアやスルーホールから構成されている。そして、グランド層35は、基板31における他方の面の略全面に設けられている。なお、このグランド層35は、図示しない手段により、接地される。また、導線路33は、少なくとも100kHzから12GHzにおいて、インピーダンスが50Ωに調整されている線路である。
【0040】
また、配線基板30上に実装されるアンテナ50は、導線路33と電気的に接続されている。本実施形態においては、アンテナ50は、基体51上に放射導体52及び給電線53が設けられた構成のいわゆるパッチアンテナとされる。このパッチアンテナの給電線53が、図示しないはんだにより導線路33と電気的に接続される。そして、給電線から100kHzから12GHzの信号が伝送されることにより、アンテナ50は、100kHzから12GHzの周波数帯域で通信を行う。
【0041】
また、配線基板30上に実装されているソケット40は、金属から成る枠体から構成されるグランド接続部42内に、信号接続部41が設けられており、グランド接続部42と信号接続部41とは、樹脂45により互いに絶縁されている。そして、グランド接続部42には、グランド用の端子44が接続されており、グランド用の端子44と、配線基板30のグランド用ランド34とが図示しないはんだにより電気的に接続されている。また、信号接続部41には、信号用の端子43が接続されており、信号用の端子43と、配線基板30の信号用ランド32とが図示しないはんだにより電気的に接続されている。
【0042】
そして、コネクタ20のグランド端子22と、ソケット40のグランド接続部42とが嵌合するように、コネクタ20は、図2の矢印に示すように移動されてソケット40に固定される。このときコネクタ20のグランド端子22に形成された開口22aにソケット40のグランド接続部42が入り込んで、グランド端子22とグランド接続部42とが嵌合して、互いに導通する。従って、グランド端子22は、グランド層35と電気的に接続される。さらにコネクタ20の信号端子21に形成された孔21aにソケット40の信号接続部41が入り込んで、信号端子21と信号接続部41とが嵌合して、互いに導通する。従って、信号端子21と導線路33とが電気的に接続される。こうして、アンテナ50が実装された配線基板30上にケーブルアセンブリ1が実装されて、アンテナシステムとされる。
【0043】
そして、同軸ケーブル10の中心導体11に100kHzから12GHzの信号は伝送されると、配線基板30の導線路33を介して、アンテナ50により通信が行われる。
【0044】
次に、ケーブルアセンブリ1における、図1の外部導体の端部から中心導体が信号端子に接続されるまで距離Lと、同軸ケーブル10の端部におけるVSWRとの関係について説明する。図3は、図1のケーブルアセンブリ1により伝送される信号の周波数と、同軸ケーブル10の端部におけるVSWRとの関係を、外部導体13の端部から中心導体11が信号端子21に接続されるまで距離L毎に示す図である。具体的には、距離Lが、0.25mm、0.75mm、1.25mm、1.75mmであるそれぞれのケーブルアセンブリ1について、横軸を周波数として、縦軸をVSWRとして、周波数とVSWRとの関係を示している。
【0045】
ここで、絶縁層12が外部導体13から露出する長さを0mm、0.5mm、1.0mm、1.5mmと変化させて、絶縁層12から露出し信号端子21に接続されるまでの中心導体11の長さを0.25mmとすることで、上述のように距離Lを0.25mm、0.75mm、1.25mm、1.75mとした。また、外部導体13がシース14から露出する長さを2.09mmとし、絶縁層12から露出する中心導体11全体の長さを1.2mmとした。
【0046】
なお、外部導体13の端部から中心導体11が信号端子21に接続されるまで距離L以外はコネクタ20の設計に依存し、特に限定はされない。さらに外部導体13から露出する絶縁層12の長さは中心導体11と外部導体13とが短絡せず、中心導体11と信号端子21との接続に邪魔にならないかぎり特に制限されない。
【0047】
図3から明らかなように、距離Lが1.75mmのケーブルアセンブリ1においては、周波数が約8.8GHz以上になるとVSWRが1.60よりも大きくなる場合がある。同様に、距離Lが1.25mmのケーブルアセンブリ1においては、周波数が、約8.9GHzを以上になるとVSWRが1.60よりも大きくなる場合がある。さらに、距離Lが0.25mmのケーブルアセンブリ1においては、周波数が約7.4GHzから約7.6GHzにかけてVSWRが1.60よりも大きくなる。一方、距離Lが0.75mmのケーブルアセンブリ1においては、高速通信を行うために必要な周波数である100kHzから12GHzにおいて、VSWRが1.60を超えることがない。このようにケーブルアセンブリ1においては、距離Lが0.75mm付近である場合には、VSWRが良好な値を示すことが分かる。
【0048】
次に、このようなVSWRが1.60を超えない距離Lの範囲について、図4を用いて更に詳細に説明する。図4は、図1の外部導体13の端部から中心導体11が信号端子21に接続されるまで距離Lと、同軸ケーブル10の端部におけるVSWRとの関係を周波数毎に示す図である。具体的には、周波数が100kHz、及び、0.1GHzから12GHzにおける0.1GHz間隔の各周波数において、距離Lが0.25mm、0.75mm、1.25mm、1.75mmでのVSWRの値をプロットして、それぞれの周波数における各プロットを直線で結んだものである。なお、図4においては、VSWRの全体的な傾向を把握するため、特に言及する場合を除き、プロットされたグラフの各周波数については言及しない。
【0049】
図4に示すうように、同軸ケーブル10が、100kHzから12GHzの周波数の信号を伝送する場合において、距離Lが0.40mm以上0.85mm以下である場合に、同軸ケーブル10の端部におけるVSWRが1.60以下となる。
【0050】
距離Lが0.40mmにおける最もVSWRが高い値となる周波数は、図4に示すように7.5GHzである。ここで、周波数が7.5GHzにおいて、距離Lが0.25mmにおけるVSWRの値は、1.66であり、距離Lが0.75mmにおけるVSWRの値は、1.45である。従って、周波数が7.5GHzにおいて、距離Lが0.25mm及び0.75mmでのVSWRの値をプロットして、これらのプロットを直線で結んだ場合、距離Lが0.40mmにおいて、この直線が示すVSWRの値は、1.597となる。
【0051】
一方、距離Lが0.85mmにおける最もVSWRが高い値となる周波数は、図4に示すように10.8GHzである。ここで、周波数が10.8GHzにおいて、距離Lが0.75mmにおけるVSWRの値は、1.52であり、距離Lが1.25mmにおけるVSWRの値は、1.91である。従って、周波数が10.8GHzにおいて、距離Lが0.75mm及び1.25mmでのVSWRの値をプロットして、これらのプロットを直線で結んだ場合、距離Lが0.85mmにおいて、この直線が示すVSWRの値は、1.598となる。
【0052】
従って、図1に示すケーブルアセンブリ1が、高速通信を行うために必要な100kHzから12GHzの周波数の信号を伝送する場合に、同軸ケーブル10の端部におけるVSWRが、1.60以下になるためには、距離Lは、0.40mm以上0.85mm以下とされる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によるケーブルアセンブリ1によれば、中心導体11が外部導体13により覆われている部分においては、インピーダンスが整合されており、また、中心導体11が信号端子21に接続されてからは、信号端子21のインピーダンスが支配的になる。そして、100kHz以上12GHz以下の周波数の信号がコネクタ20の信号端子21に印加される場合において、外部導体13の端部から中心導体11が信号端子21に接続されるまで距離Lが、0.40mm以上0.85mm以下とされため、同軸ケーブル10の端部におけるVSWRを1.60以下にすることができる。上述のように高速通信に用いられるアンテナ用の線路として、このようなVSWRが1.60以下であることが求められる。従って、このようなケーブルアセンブリ1においては、高速通信を行う場合におけるインピーダンス不整合による定在波を十分なレベルに抑制することができる。従って、このようなケーブルアセンブリ1を用いることにより、良好な高速通信が可能なアンテナシステムを実現することができる。
【0054】
そして、このようなケーブルアセンブリ1を用いたアンテナシステムによれば、同軸ケーブル10及び導線路33のインピーダンスが共に50Ωとされ、さらに同軸ケーブル10の端部におけるVSWRを1.60以下にすることができるので、全体的にインピーダンスの不整合による定在波が抑制でき、良好な高速通信を行うことができる。
【0055】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、同軸ケーブル10の端部において口出しにより絶縁層が露出するとしたが、絶縁層は必ずしも露出していなくても良い。
【0057】
また、同軸ケーブル10の中心導体11は、複数の導電性の線材の撚り線から構成されるとしたが、導電性の単線から構成されても良い。また、外部導体13は、金属編組と、金属編組の隙間を埋める金属とから構成されるとしたが、金属編組のみから構成されても良く、金属のテープから構成されても良い。
【0058】
また、ケーブルアセンブリ1は、コネクタ20とソケット40とが嵌合することで、グランド端子22とグランド層35とが電気的に接続されると共に、信号端子21と導線路33とが電気的に接続されるとしたが、他の手段により、グランド端子22とグランド層35とが電気的に接続され、信号端子21と導線路33とが電気的に接続されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、良好な高速通信が可能なアンテナシステムを達成することができる同軸ケーブル、及び、これを用いたアンテナシステムが提供される。
【符号の説明】
【0060】
1・・・ケーブルアセンブリ
10・・・同軸ケーブル
11・・・中心導体
12・・・絶縁層
13・・・外部導体
14・・・シース
20・・・コネクタ
21・・・信号端子
22・・・グランド端子
23・・・樹脂
24・・・ケーブル固定部
26・・・かしめ部
30・・・配線基板
31・・・基板
32・・・信号用ランド
33・・・導線路
34・・・グランド用ランド
35・・・グランド層
36・・・貫通導体
40・・・ソケット
41・・・信号接続部
42・・・グランド接続部
43・・・端子
44・・・端子
45・・・樹脂
50・・・アンテナ
51・・・基体
52・・・放射導体
53・・・給電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と、前記中心導体の外周を被覆する絶縁層と、前記絶縁層の外周を被覆する外部導体と、前記外部導体を被覆するシースとを有し、100kHz以上12GHz以下の周波数においてインピーダンスが50Ωの同軸ケーブルと、
信号端子とグランド端子とを有し、100kHz以上12GHz以下の周波数においてインピーダンスが50Ωのコネクタと、
を備え、
前記同軸ケーブルの端部において、前記外部導体は、前記シースから露出して前記グランド端子と電気的に接続され、前記中心導体は、前記外部導体の端部から導出すると共に、少なくとも一部が露出して前記信号端子と接続され、
前記外部導体の端部から前記中心導体が前記信号端子に接続されるまで距離が、0.40mm以上0.85mm以下とされる
ことを特徴とするケーブルアセンブリ。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記外部導体の端部から露出しており、前記中心導体が前記外部導体の端部から導出している部分における前記外部導体側の一部は、前記絶縁層で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブルアセンブリ。
【請求項3】
前記外部導体は、金属編組と、前記金属編組の隙間を埋める金属とから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブルアセンブリ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のケーブルアセンブリと、
前記信号端子と電気的に接続されるインピーダンスが50Ωの導線路と、前記グランド端子と電気的に接続されるグランド体とを有する配線基板と、
100kHz以上12GHz以下の周波数で通信を行い、前記導線路と電気的に接続されるアンテナと、
を備えることを特徴とするアンテナシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−228032(P2011−228032A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94652(P2010−94652)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】