説明

ケーブルガイド

【課題】ケーブルを容易に配設することができ、発塵しにくく、ケーブルの幅方向の負荷に対しても優れたケーブル保持性を有し、かつ低コストで製造可能なケーブルガイドを提供する。
【解決手段】一方向に延びる底部1の幅方向両端縁に沿って、少なくとも先端部分が内側方向に傾斜又は屈曲した側壁2を形成し、この底部1と側壁2によりケーブル収容部3を構成する。その際、対向する側壁2の先端を一定間隔で離隔し、かつ側壁2が底部1よりも肉厚になるように、熱可塑性エラストマーにより底部1と側壁2とを一体で形成する。そして、ケーブル収容部3内から側壁2の先端部分(傾斜部2a)に対して0.044N/mmの垂直荷重をかけたとき、側壁2と底部1のなす角度αの変化量が45°以下であるケーブルガイド10を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを収容するケーブルガイドに関する。より詳しくは、ケーブルが接続されている装置の動作に追従して移動し、収容しているケーブルを案内するケーブルガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアーム、工作機械、ゲーム機のクレーン及び監視カメラなどでは、装置の動作に追従してケーブル(配線)も移動するが、その際、ケーブルの絡まりや、他の部材との接触による損傷・断線を防止するため、ケーブルガイドが利用されている。
【0003】
このようにケーブルの保護及び案内を行うケーブルガイドは、一般に、追従性能を確保するために、継ぎ手やピン材などを使用して、複数のユニット(リンクプレート)を連結した構成となっている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、従来、断面矩形状の複数の筒状体を、フレキシブルワイヤーで連結した構成のケーブルガイドも提案されている(特許文献4参照)。
【0004】
一方、側板と上面とを一体成形することで、部品数を減らし、製造コスト低減を図ったケーブルガイドもある(特許文献5参照)。更に、底部、側壁及び蓋部(上面)の全てを、合成樹脂で一体成形したケーブルガイドも提案されている(例えば、特許文献5〜8参照。)。これら特許文献5〜8に記載のケーブルガイドでは、屈曲移動を可能とするために、蓋部や側壁に切り込みが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−83473号公報
【特許文献2】特開2005−147233号公報
【特許文献3】特開2009−264501号公報
【特許文献4】特開2003−106381号公報
【特許文献5】特開2009−273250号公報
【特許文献6】特開平10−28310号公報
【特許文献7】特開2000−227145号公報
【特許文献8】特開2008−25775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、特許文献1〜3に記載されているような複数のユニットを連結した構成のケーブルガイドは、丈夫で、長さ調整が自在などの利点があるが、その一方で、移動時に接触摩耗による摩擦粉塵や部品同士の接触による騒音が発生しやすいという問題点がある。このため、これらのケーブルガイドは、摩擦粉塵の発生の点からは、例えばクリーンルームなどの清浄な環境下での使用には適さず、また、騒音の点からは、例えば作業環境の悪化を招く。特にこのような構成のケーブルガイドは、部品数及び工程数が多いため、製造コストが高くなるという問題点もある。
【0007】
また、筒状部材をワイヤーで連結した特許文献4に記載のケーブルガイドは、貫通したフレキシブルワイヤーのみに全ての力がかかり、移動の繰り返しによりワイヤーが破断しやすく、また、筒状部材同士や筒状部材とワイヤー間での接触摩耗が発生しやすいという問題点がある。一方、特許文献5〜8に記載されているように、一部又は全部を合成樹脂で一体形成した場合、製造コストを低減することができ、接触摩耗も発生しにくくなるが、ケーブルの新規配設、追加配設及び取り替えがしにくいという問題点がある。また、特許文献5,8のケーブルガイドは、成形後に、別途組み立て工程が必要となるという問題点もある。
【0008】
その他、ケーブルガイドからの摩耗粉塵の発生を防止することを目的として、必要本数のケーブルを予め束ねてテープ状とし、ケーブルガイドの使用をなくす提案もされているが、この方法には、幅方向に負荷がかかったときに、ケーブル束が走行する溝などから脱落するという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、ケーブルを容易に配設することができ、発塵しにくく、ケーブルの幅方向の負荷に対しても優れたケーブル保持性を有し、かつ低コストで製造可能なケーブルガイドを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るケーブルガイドは、一方向に延びる底部と、該底部の幅方向両端縁に沿って設けられ、少なくとも先端部分が内側方向に傾斜又は屈曲した側壁とで構成されるケーブル収容部を有し、該ケーブル収容部は、対向する側壁の先端が一定間隔で離隔すると共に、前記底部及び側壁が熱可塑性エラストマーにより一体で形成されており、前記ケーブル収容部内から前記側壁の先端部分に対して0.044N/mmの垂直荷重をかけたとき、前記側壁と底部のなす角度の変化量が45°以下のものである。
本発明においては、対向する側壁の先端が一定間隔で離隔し、上面が開口しているため、ケーブルの出し入れが容易である。また、側壁は、少なくとも先端部分が内側方向に傾斜又は屈曲しているため、ケーブル保持性に優れ、移動時にケーブルが脱落することがない。更に、底部及び側壁が熱可塑性エラストマーで一体形成されているため、移動時の変形に追従可能で、発塵を抑制することもでき、更には押出成形により容易にかつ低コストで製造することが可能である。更にまた、側壁に垂直荷重を付加したときの側壁と底部のなす角度の変化量を45°以下としているため、水平方向における撓みが少なく、ケーブル保持性に優れている。
このケーブルガイドは、少なくとも前記側壁の傾斜部又は屈曲部よりも底部側の部分を、前記底部よりも肉厚に形成することができる。
その場合、側壁全体が前記底部よりも肉厚に形成されていてもよい。
また、前記底部の裏面に、前記底部よりも肉厚のリブ部が一体で形成することもできる。
更に、前記ケーブル収容部における前記底部と前記側壁との境界部分を曲面又はC面で構成し、その曲率半径R又はC面寸法を3〜10mmとしてもよい。
又は、前記ケーブル収容部における前記底部と前記側壁との境界部分及び前記底部の裏面と前記リブ部の内面との境界部分の両方を曲面又はC面で構成し、その曲率半径R又はC面寸法を3〜10mmとすることもできる。
ここで、C面とは、立体を構成する2面の角部に形成される面であり、角部と平行でかつ角部から一定距離に設けられた二辺をつないだ傾斜面をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上面が開口しているためケーブルの出し入れが容易であり、また、底部及び側壁が熱可塑性エラストマーで一体形成されているため、従来品よりも、発塵しにくく、低コストで製造することができ、更には側壁の先端部分に0.044N/mmの垂直荷重をかけたとき、側壁と底部のなす角度の変化量が45°以下であるため、ケーブルの幅方向に負荷がかかった場合においても優れたケーブル保持性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るケーブルガイドの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すケーブルガイド10の使用時の状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係るケーブルガイドの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るケーブルガイドの構成を示す断面図である。
【図5】図4に示すケーブルガイド20の使用時の状態を示す側面図である。
【図6】側壁と底面のなす角度の変化量を測定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係るケーブルガイドについて説明する。図1は本実施形態のケーブルガイドの構成を示す断面図であり、図2はその使用時の状態を示す側面図である。本実施形態のケーブルガイド10は、ケーブルが一段又は多段で収容されるものであり、図1及び図2に示すように、一方向に延びる底部1の幅方向両端縁に沿って、側壁2が設けられている、そして、この底部1及び側壁2により、ケーブル収容部3が構成されている。
【0015】
また、本実施形態のケーブルガイド10の側壁2は、上部が内側に向かって傾斜しており、この傾斜部2aにより、ケーブル収容部3内に収容されたケーブルの脱落が防止される。更に、このケーブルガイド10では、対向する側壁2の先端が一定間隔で離隔しており、ケーブル収容部3は上面が開口した構成となっている。これにより、この開口部分から、ケーブルを容易に出し入れすることができる。
【0016】
一方、本実施形態のケーブルガイド10は、熱可塑性エラストマーにより、底部1及び側壁2が一体で形成されている。その成形方法は、特に限定するものではないが、例えば、押出成形を適用することができる。これにより、長尺のケーブルガイドを連続して成形することができるため、従来品に比べて、製造コストを低減することができる。また、この場合、長尺のケーブルガイド10を、使用者が任意の長さに切断して使用することも可能である。
【0017】
また、底部1及び側壁2を形成する熱可塑性エラストマーとしては、例えば熱可塑性ポリエステル系エラストマー(Thermoplastic-Polyester-Elastomer:TPEE)、熱可塑性ポリアミド系エラストマー(Thermoplastic-Polyamid-Elastomer:TPAE)、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(Thermoplastic-Polyurethane-Elastomer:TPU)、熱可塑性ポリスチレン系エラストマー(Thermoplastic-Polystyrene-Elastomer:TPS)、熱可塑性ポリ塩化ビニル系エラストマー(Thermoplastic-Poly(vinyl chloride)-Elastomer:TPVC)、熱可塑性オレフィン系エラストマー(Thermoplastic-Polyolefine-Elastomer:TPO)などが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーを使用することにより、曲げ特性が向上するため、側壁2に切り込みを形成しなくても、屈曲移動が可能となる。これにより、装置の動作に追従して移動する際の撓みや横ぶれを防止することができる。
【0018】
そして、本実施形態のケーブルガイド10は、ケーブル収容部3から側壁2の先端部分に対して垂直方向に0.044N/mmの荷重をかけたとき、側壁2と底部1のなす角度αの変化量が45°以下になるように構成されている。これにより、水平方向の撓みを抑制することができるため、ケーブル保持性が向上し、移動及び屈曲を繰り返し行った場合でも、ケーブルの脱落を防止することができる。
【0019】
ここで規定している側壁2と底部1のなす角度αの変化量は、側壁2の幅が10mmになるように加工した試料について測定した値である。また、「側壁2の先端部分」とは、例えば図1に示す構成のケーブルガイド10の場合は、傾斜部2aが先端部分に相当する。更に、後述するリブ部を有するものについては、そのリブ部を切断して測定を行う。
【0020】
なお、0.044N/mmの垂直荷重に対する側壁2と底部1のなす角度αの変化量が45°を超えると、ケーブルの幅方向に負荷がかかった際に、側壁2がケーブルの重みに耐えられず、ケーブルガイド10からケーブルが脱落したり、屈曲部でケーブルが飛び出したりする。
【0021】
側壁2と底部1のなす角度αの変化量を45°以下に抑制するための具体的構成としては、例えば、図1に示すように、側壁2の肉厚を、底部1よりも厚くする方法がある。ここで、底部1は、ケーブルガイド10の全長に亘って連続しているため、その厚さはケーブル保持性能への影響は少ないが、側壁の厚さは、強度に影響し、特に、後述する切り込みが形成されているものではその影響が大きい。
【0022】
この側壁2と底部1の厚さの差は、特に限定されるものではなく、材質、大きさ及び厚さに応じて適宜設定することができる。例えば、ケーブルガイド10を、ヤング率が94.1MPaのポリエステルエラストマーで形成した場合は、側壁2の肉厚を底部1よりも0.1〜2.0mm厚くすることが好ましく、0.2〜1.5mm厚くすることがより好ましい。
【0023】
側壁2と底部1の厚さの差が、0.1mm未満の場合、角度αの変化量を十分に小さくできないことがある。また、この差が2.0mmを超えると、角度αの変化量は小さくなり、性能面では問題がないが、用途や収容するケーブルの種類によっては、過剰性能となり、コスト面で不利になる場合がある。
【0024】
更に、本実施形態のケーブルガイド10は、底部1にバネ鋼又はバネ鋼と同等の特性(剛性や強度)などを有する繊維強化プラスチックからなる板材や線材を、その長手方向に内包させてもよい。これにより、板材及び線材がテンションメンバーとして作用するため、繰り返し曲げ性を更に向上させることができると共に、直線部の撓みも防止することができる。
【0025】
ここで使用するバネ鋼としては、例えば炭素鋼及びステンレス鋼などが挙げられる。また、繊維強化プラスチックとしては、例えば、炭素繊維強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチック、炭化珪素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維強化プラスチックなどが挙げられ、特に補強繊維により長手方向に強化したものが好ましい。更に、これらの補強繊維を織物としたもので強化したプラスチックを使用することもできる。
【0026】
なお、板材又は線材を内包させる位置及び本数は、特に限定されるものではなく、底部1の幅方向中心部分に1本の板材又は線材を配置してもよいが、例えば、2本の板材又は線材を底部の幅方向両端部に配置したり、3本以上の線材又は線材を配置したりすることもできる。
【0027】
このように底部1に板材又は線材を内包させる場合、板材又は線材と熱可塑性エラストマーとを同時に押出成形して、複合化することが可能である。その際、板材又は線材と底部1を構成する熱可塑性エラストマーとの間に接着性樹脂層を設け、底部1と板材又は線材との密着性を高めてもよいが、逆に、熱可塑性エラストマーと板材又は線材との間に、空間を設けることもできる。
【0028】
本実施形態のケーブルガイド10は、底部1の裏面側が内側に、ケーブル収容部3の開口部が外側に、即ち、ケーブルが収容されている側を外側にして配置される。そして、ケーブルが接続されている装置の動作に追従して、その長手方向に直線移動又は屈曲移動し、内部に収容されているケーブルを案内する。
【0029】
本実施形態のケーブルガイド10は、対向する側壁2の先端が一定間隔で離隔し、上面が開口しているため、筒状や蓋が設けられている従来品に比べて、ケーブルの出し入れが容易である。このケーブルガイド10は、側壁2の上部が内側に傾斜しているため、上面が開口していても、ケーブルが脱落することはない。特に、屈曲移動の際は、側壁2全体が内側に傾き、ケーブルを両側から挟み込むため、ケーブルの保持性が向上する。
【0030】
また、本実施形態のケーブルガイド10は、底部1及び側壁2が熱可塑性エラストマーで一体形成されているため、部品間の接触摩耗が発生しない。これにより、移動時の発塵が抑制されるため、クリーンルームにおいても好適に使用することができる。また、移動時に擦れが発生しないため、騒音レベルの接触音などは事実上発生せず、騒音による作業環境の悪化などを防止することができる。更に、このケーブルガイド10は、押出成形により容易に製造することが可能であるため、低コストで製造することが可能である。
【0031】
更にまた、0.044N/mmの垂直荷重に対する側壁2と底部1のなす角度αの変化量を45°以下としているため、移動時及び屈曲時における水平方向の撓みを低減することができる。これにより、収容されているケーブルを押さえ込む力、即ち、ケーブル保持性が向上するため、移動及び屈曲を繰り返し行っても、ケーブルが脱落することがない。その結果、ケーブル及びケーブルガイド10をその幅方向に移動させるような使用条件においても、ケーブルの脱落を防止することができる。
【0032】
(第1の実施形態の変形例)
前述した第1の実施形態では、側壁2に傾斜部2aが設けられたケーブルガイド10を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、側壁の先端部が内側に向かって屈曲していてもよい。また、図1に示すケーブルガイド10では、側壁2の全体を底部1よりも肉厚にしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも底部1に対して垂直の部分が肉厚になっていればよい。
【0033】
図3は本発明の第1の実施形態の変形例に係るケーブルガイドの構成を示す断面図である。図3に示すように、本変形例のケーブルガイド11は、側壁が、底部1に対して垂直に延びる垂直部12bと、内側に向かって屈曲する屈曲部12aとで構成されている。このように、側壁の先端を内側に向かって屈曲させることにより、例えば曲げ半径が小さい場合でも、ケーブル収容部13からのケーブルの脱落を防止することができる。
【0034】
また、本変形例のケーブルガイド11では、側壁の垂直部12bのみが底部1よりも肉厚になっており、屈曲部12aは底部1と同等の厚さとなっている。このように垂直部12bのみを肉厚にした場合でも、ケーブル収容部13から側壁の先端部分(屈曲部12a)に対して垂直方向に0.044N/mmの荷重をかけたとき、側壁(垂直部12a)と底部1のなす角度の変化量を45°以下にすることができる。従って、本変形例のケーブルガイド11においても、優れたケーブル保持性能が得られる。
【0035】
更に、本変形例のケーブルガイド11は、各屈曲部12aがエラストマーで形成されているため、曲げた際に引っ張られて更に屈曲し、曲げ部でのケーブルの脱落が更に抑制される。このケーブルガイド11には、複数のケーブル4が一体化されたケーブル束14が特に好適である。なお、本変形例のケーブルガイドにおける上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0036】
また、第1の実施形態ケーブルガイド10及びその変形例のケーブルガイド11における傾斜部2aや屈曲部12aは、先端部のみに形成されている必要はなく、例えば、側壁全体が内側に傾斜していてもよく、また、下部が緩やかに内側に傾斜し、上部がそれよりも角度をもって内側に傾斜した構成にすることもできる。この場合は、側壁全体を底部よりも肉厚にしたり、又は、傾斜部若しくは屈曲部よりも底部側の部分を底部よりも肉厚にしたりすればよい。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るケーブルガイドについて説明する。図4は本実施形態のケーブルガイドの構成を示す断面図である。また、図5はその使用時の状態を示す側面図である。なお、図4及び図5においては、前述した第1の実施形態のケーブルガイド10の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0038】
図4及び図5に示すように、本実施形態のケーブルガイド20は、底部1の裏面側に、底部1よりも肉厚のリブ部6が設けられている。このリブ部6は、ケーブルガイド20の横ぶれや直線部のたるみを防止するものであり、例えば、ケーブルガイド20の長手方向に一定の間隔をあけて、V字状の切り欠き6aが形成されている。この切り欠き6aの幅dは、曲げ半径に応じて設定することが好ましい。例えば、ケーブルガイド20の底部1の幅方向中心部における半円周がL、リブ部6の先端部における半円周がL、切り欠き数xの場合は、下記数式(1)により求められる値とすることができる。
【0039】
【数1】

【0040】
このように、リブ部6に、曲げ半径に応じた切り欠き6aを設けることにより、所望の曲げ半径に屈曲することができる。
【0041】
また、本実施形態のケーブルガイド20では、側壁2の先端から底部1に向かって、その高さ方向に延びる切り込み5が、一定間隔で形成されている。この切り込み5を設けることにより、曲げ半径が小さい場合でも、側壁2を構成する熱可塑性エラストマーに過度のストレスを与えずに容易に曲げることができる。
【0042】
更に、側壁2の切り込み5と、リブ部6の切り欠き6aとは、底部1の長手方向、即ち、ケーブルガイド20の長手方向において、整合する位置に設けられていることが望ましい。これにより、屈曲部において側壁2にかかるストレスを小さくすることができる。
【0043】
そして、本実施形態のケーブルガイド20では、ケーブル収容部3における底部1と側壁2との境界部分及び底部1の裏面とリブ部6の内面との境界部分が、曲面又はC面で構成されており、その曲率半径R又はC面寸法が3〜10mmとなっている。このように、底部1と側壁2の境界部分をR面又はC面とすることにより、底部1と側壁2の接触面積が大きくなり、側壁2がより大きな面積で支えられることになるため、側壁2が外側に開きくことによるケーブル保持性の低下を抑制することができる。
【0044】
また、この境界部分をR面又はC面で構成すると、境界部分をこのような形状にしていない場合に比べて、ケーブル収容部3内から側壁2の先端部分に対して0.044N/mmの垂直荷重をかけたときの側壁2と底部1のなす角度αの変化量を小さくすることができる。更に、この変化量を同等に設計した場合には、側壁2の厚さを薄くすることが可能となるため、使用する樹脂量を減らすことができ、製造コストを低減することができる。
【0045】
一方、押出成形により長尺のケーブルガイドを製造すると、側壁部分が外側に開いたり、垂直部分が傾いたりする可能性があるが、この部分を曲面又はC面で構成することにより、成形時の形状安定性が向上する。また、底面の両端部の厚さが厚くなるため、側壁2に切り込み5を形成したり、リブ部6に切り欠き6aを形成したりした場合でも、長期間繰り返し屈曲させても破損が生じない優れた耐久性を得ることができる
【0046】
ただし、この境界部分をC面で構成した場合、R面よりも内部の収容量が小さくなる。このため、収容するケーブルの本数を多くしたい場合などは、C面よりもR面で形成することが望ましい。なお、これら境界部分の曲率半径R又はC面寸法が3mm未満の場合、前述した効果が十分得られないことがある。また、境界部分の曲率半径R又はC面寸法が10mmを超えると、ケーブル収容部3の容積が小さくなり、収容できるケーブルの本数が少なくなったり、ケーブルとの接触面積が大きくなって、騒音や発塵が発生しやすくなったりする。
【0047】
このように、本実施形態のケーブルガイド20は、底部1よりも肉厚のリブ部6を設けているため、ケーブルガイド20の横ぶれや撓みが抑制され、ケーブル保持性能が更に向上する。また、底部1と側壁2及びリブ部6との境界部分を、特定の曲率半径Rを有する曲面又は特定寸法のC面で形成しているため、成形時の形状安定性が向上し、ケーブル保持性にも優れている。なお、本実施形態のケーブルガイド20における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0048】
また、図4には底部1と側壁2との境界部分、及び底部1とリブ部6との境界部分の両方が曲面で構成されているケーブルガイド20を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくともケーブル収容部3側の境界部分が特定の曲率半径Rを有する曲面又は特定寸法のC面となっていればよい。更に、リブ部6が設けられていない図1に示すケーブルガイド10や図3に示すケーブルガイド11の底部1と側壁1との境界部分を、特定の曲率半径Rを有する曲面又は特定寸法のC面で構成しても、同様の効果が得られる。
【0049】
なお、図4に示すケーブルガイド20では、ケーブル4を一段で収容しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ケーブル4を多段で収容することもできる。その場合、ケーブル4の高さに合わせて、側壁2の高さや傾斜角度を設定すればよく、これは図1に示すケーブルガイド10においても同様である。
【0050】
また、図4に示すケーブルガイド20では、底部1の両縁部に沿ってリブ部6を設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、底部1の幅方向中心部や、底部1の縁部よりも内側にリブ部6を形成してもよい。このように、底部1の内側にもリブ部6を設けることにより、ケーブルガイドの横ぶれを防止することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、図1に示す形状で、側壁の先端部分に0.044N/mmの垂直荷重をかけたとき側壁と底部のなす角度の変化量が45°以下であるケーブルガイド(実施例1〜8)と、側壁と底部のなす角度の変化量が45°を超えているケーブルガイド(比較例1)を作製し、その性能を評価した。
【0052】
<角度αの変化量>
図6は側壁と底部のなす角度の変化量を測定する方法を示す図である。図6に示すように、側壁32と底部31のなす角度αの変化量は、実施例及び比較例の各ケーブルガイドを長手方向に100mmの長さに切断し、更に、その一方の側壁32を幅が10mmになるように加工した試料30を用いて行った。
【0053】
そして、先ず、図6に示す試料30を、水平な場所に設置し、更に、その底部31の荷重をかけても移動せずかつ邪魔にならない位置に重りを載せた。次に、側壁32の先端部分32aに、デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ社製 FGN−50B)を、接触面に対して垂直に押し当てて、0.044N/mmの力を加えた。そして、分度器によりその側壁32と底部31のなす角度αの変化量を測定した。
【0054】
<騒音>
騒音の評価は、実施例及び比較例の各ケーブルガイドに直径10mmのウレタン被覆5連ケーブルを収容し、その状態で屈伸動作及び幅方向への移動動作を行い、その際発生する騒音の状態を確認した。その結果、ほとんど音が聞き取れなかったものを◎、非連続的な発生であり、小音量であったため、あまり気にならなかったものを○、非連続な発生であるが、やや耳障りであったものを△、連続的に音が発生し、耳障りであったものを×とした。
【0055】
<移動時のケーブル飛び出し>
ケーブル飛び出しの評価では、先ず、実施例及び比較例の各ケーブルガイドを長さ1mに切断したものに、直径10mmのウレタン被覆5連ケーブル(1kg/m)を収容した。そして、その状態で、ケーブルガイドの両端を固定し、横方向に2Gの加速度で100往復させ、ケーブルの飛び出しの有無を確認した。
【0056】
以上の結果を、下記表1にまとめて示す。
【0057】
【表1】

【0058】
上記表1に示すように、垂直荷重に対する角度αの変化量が45°を超えている比較例1のケーブルガイドは、移動時にケーブルの飛び出しが発生したが、この角度αの変化量が45°以下である実施例1〜8のケーブルガイドでは、飛び出しは発生しなかった。これら実施例1〜8のケーブルガイドの中でも、特に、側壁2との境界部分を、曲面又はC面で構成し、その曲率半径R又はC面寸法が3〜10mmの範囲ないである実施例3〜6のケーブルガイドは、角度αの変化量も少なく、騒音の発生もなかった。
【0059】
以上の結果から、本発明によれば、従来品に比べて、幅方向の負荷に対するケーブル保持性に優れ、かつ騒音が発生しにくいケーブルガイドを実現できることが確認された。
【符号の説明】
【0060】
1、31 底部
2、32 側壁
2a 傾斜部
3、13 ケーブル収容部
4 ケーブル
5 切り込み
6 リブ部
6a 切り欠き
10、11、20 ケーブルガイド
12a 屈曲部
12b 垂直部
14 ケーブル束
30 試料
32a 先端部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる底部と、該底部の幅方向両端縁に沿って設けられ、少なくとも先端部分が内側方向に傾斜又は屈曲した側壁とで構成されるケーブル収容部を有し、
該ケーブル収容部は、対向する側壁の先端が一定間隔で離隔すると共に、前記底部及び側壁が熱可塑性エラストマーにより一体で形成されており、
前記ケーブル収容部内から前記側壁の先端部分に対して0.044N/mmの垂直荷重をかけたとき、前記側壁と底部のなす角度の変化量が45°以下であるケーブルガイド。
【請求項2】
少なくとも前記側壁の傾斜部又は屈曲部よりも底部側の部分は、前記底部よりも肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブルガイド。
【請求項3】
側壁全体が前記底部よりも肉厚に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のケーブルガイド。
【請求項4】
前記底部の裏面には、前記底部よりも肉厚のリブ部が一体で形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のケーブルガイド。
【請求項5】
前記ケーブル収容部における前記底部と前記側壁との境界部分は曲面又はC面で構成されており、その曲率半径R又はC面寸法が3〜10mmであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のケーブルガイド。
【請求項6】
前記ケーブル収容部における前記底部と前記側壁との境界部分及び前記底部の裏面と前記リブ部の内面との境界部分はいずれも曲面又はC面で構成されており、その曲率半径R又はC面寸法が3〜10mmであることを特徴とする請求項4に記載のケーブルガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−23877(P2012−23877A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160295(P2010−160295)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】