説明

ケーブルクランプ

【課題】 一般ユーザが誤ってケーブルグランド部に触れてしまい、組み付け不良等が発生することを未然に防止可能なケーブルクランプを提供する。
【解決手段】 ケーブルグランド部7のうち筐体3外に露出した部位の少なくとも一部を覆う取外防止カバー9を設ける。これにより、一般ユーザが誤ってナットキャップ7F(ケーブルグランド部7)に触れてしまうことを防止できるので、ケーブルクランプ1の組み付け不良が発生してしまうおそれが殆ど無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に設けられた貫通穴に挿通されるケーブルを保持するためのケーブルクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブルクランプは、筐体の貫通穴に装着されるとともに、ケーブルが挿入される挿入穴が設けられたケーブルグランド部を有して構成されており、このケーブルグランド部は、ナット等のネジ機構に筐体に固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、一般的なケーブルクランプでは、円筒状のスリーブが挿入穴に装着されており、ナット状のキャップを締め込むようにしてスリーブの先端側を絞ってケーブルをケーブルグランド部に挟持固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−21066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常、ケーブルクランプは、筐体外に露出した部分に対して作業を行うことにより、組み付け作業の殆どが完了するように構成されているため、組み付け作業の完了後、一般ユーザが誤ってケーブルグランド部に触れてしまい、組み付け不良が発生してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、一般ユーザが誤ってケーブルグランド部に触れてしまい、組み付け不良等が発生することを未然に防止可能なケーブルクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、筐体(3)に設けられた貫通穴(3A)に装着され、ケーブル(5)を保持するケーブルクランプであって、貫通穴(3A)に装着され、ケーブル(5)が挿入される挿入穴(7a)が設けられたケーブルグランド部(7)と、ケーブルグランド部(7)に装着され、ケーブルグランド部(7)のうち筐体(3)外に露出した部位の少なくとも一部を覆うグランド部カバー(9)とを備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、請求項1に記載の発明では、一般ユーザが誤ってケーブルグランド部(7)に触れてしまうことを防止できるので、ケーブルクランプ1の組み付け不良が発生してしまうおそれが殆ど無い。
【0009】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係るケーブルクランプの正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るケーブルクランプの分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るケーブルクランプの断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るケーブルクランプの効果を説明するための図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るケーブルクランプの効果を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るケーブルクランプの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、気密性及び水密性が求められる筐体に本発明に係るケーブルクランプを適用した例である。以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.ケーブルクランプ1の構成
ケーブルクランプ1は、図1に示すように、筐体3の隔壁に設けられた筐体内外を貫通する貫通穴3A(図3参照)に嵌め込まれた状態で筐体3に組み付けられ、このケーブルクランプ1により、電気ケーブル等のケーブル5が保持される。
【0012】
また、ケーブルクランプ1は、図2に示すように、ケーブル5を挟持(保持)するためのケーブルグランド部7、ケーブルグランド部7のうち筐体3外に露出した部位の少なくとも一部を覆う取外防止カバー9、ケーブルグランド部7を筐体3に対して回転可能とするフリーテンションパーツ11、及びケーブルグランド部7(ケーブルクランプ1)を筐体3に組み付けるための取付部13等から構成されている。
【0013】
そして、ケーブルグランド部7は、ケーブル5が挿入される挿入穴7aが設けられた本体部7Aを有しており、この本体部7A(挿入穴7a)には、ノイズフィルタ7B、及びケーブル5を挟持するためのクランプ機構7Cが挿入・装着されている。
【0014】
ノイズフィルタ7Bは、図3に示すように、ケーブル5が挿入可能な円筒状であり、その外周面には、本体部7Aに対してノイズフィルタ7Bが回転することを防止する位置決め突起7bが設けられている。
【0015】
なお、ノイズフィルタ7Bは、フェライト等の磁性材料にて構成されたもので、ケーブル5を介して伝達される電気信号に電気ノイズが畳重し、又はケーブル5から電気ノイズが発信してしまうことを抑制する。
【0016】
クランプ機構7Cは、ゴム等の軟質な樹脂にて構成され、かつ、ケーブル5が挿入される円筒状の本体パッキン7D、本体パッキン7Dの外周側に覆うようにして本体パッキン7Dをケーブル5に押し付ける円筒状の固定爪7E、及び本体部7Aに設けられた雄ネジ部に締め込まれるナットキャップ7F等から構成されている。
【0017】
そして、固定爪7Eの軸方向端部のうちナットキャップ7F側には、図2に示すように、軸方向に沿って本体部7A側に延びる複数本のスリット(切り欠き部)7Gが設けられ、固定爪7Eの軸方向端部のうちナットキャップ7F側の外形寸法は、固定爪7Eの軸方向端部のうち本体部7A側の外形寸法に比べて大きくなっている。
【0018】
このため、ナットキャップ7Fを本体部7Aに締め込んでいくと、固定爪7Eの軸方向端部のうちナットキャップ7F側(以下、この部位を爪部という。)が内方側に変位し、本体パッキン7Dをケーブル5側に押圧するので、図3に示すように、本体パッキン7D及び爪部が窄まるように弾性変形してケーブル5が挟持される。
【0019】
また、フリーテンションパーツ11は、筐体3の貫通穴3Aに装着固定された固定部11A、及びケーブルグランド部7(本体部7A)と連結され、かつ、固定部11Aに対して回転変位可能な回転連結部11Bを有して構成されている。
【0020】
そして、固定部11Aの円筒部11Cの外周面には、その全周に亘って径方向外側に突出するフランジ状の鍔部11Dが設けられ、一方、回転連結部11Bのうち円筒部11Cの外周側を覆うように設けられた円筒部11Eの内周側には、鍔部11Dと摺動可能に係合する係合片11Fが設けられている。
【0021】
また、回転連結部11Bは、本体部7Aに設けられた雄ねじ部にネジ結合することにより本体部7A(ケーブルグランド部7)と一体的化されているため、ケーブルクランプ1を貫通穴3Aに対して回転させるような張力がケーブル5に作用すると、回転連結部11Bがケーブルグランド部7と共に固定部11Aに対して回転することにより、固定部11Aに回転力が作用することが回避される。
【0022】
なお、パッキン15は気密性及び水密性を保持するためのリンク状の部材である。因みに、固定部11Aと回転連結部11Bとの間には、パッキンに相当する部品が設けられていないが、この部位は、迷路構造(ラビリンス構造)となっているので、メカニカルシール効果を得ることができ、必要にして十分な気密性及び水密性を得ることができる。
【0023】
また、取付部13は、貫通穴3Aの径方向に弾性的に変位可能な係合爪部13Aを筐体3に係合させることにより、ケーブルグランド部7(フリーテンションパーツ11を含む。)を筐体3に係止固定するワンタッチ装着パーツであり、この取付部13は、固定部11A(フリーテンションパーツ11)に設けられた雄ねじ部にネジ結合されている。
【0024】
また、取外防止カバー9は袋状に形成されているとともに、そのナットキャップ7F側の開口部縁には、内方側に突出した係止爪9Aが設けられており、この係止爪9Aが設けられた部位には、係止爪9Aを弾性変位可能するためのスリット(切り欠き)9B(図1参照)が設けられている。
【0025】
2.本実施形態に係るケーブルクランプの特徴
取外防止カバー9が取り外された状態では、図4に示すように、ナットキャップ7Fが露出した状態となるので、一般ユーザが誤ってナットキャップ7F(ケーブルグランド部7)に触れてしまい、ケーブルクランプ1の組み付け不良が発生してしまうおそれがある。
【0026】
これに対して、本実施形態では、ケーブルグランド部7のうち筐体3外に露出した部位の少なくとも一部が、グランド部カバーをなす取外防止カバー9により覆われているので、一般ユーザが誤ってナットキャップ7F(ケーブルグランド部7)に触れてしまい、ケーブルクランプ1の組み付け不良が発生してしまうおそれが殆ど無い。
【0027】
また、ケーブル5がケーブルグランド部7に固定された状態で保持されているため、例えばケーブル5に捻り力が作用すると、ケーブルクランプ1(ケーブルグランド部7)を筐体3に固定するための固定力が低下してしまうおそれがある。
【0028】
これに対して、本実施形態では、ケーブル5に作用する捻り力が、回転連結部材を成すフリーテンションパーツ11にて吸収されるので、ケーブルクランプ1を筐体3に固定するための固定力が低下してしまうことを防止できる。
【0029】
また、取付部13は、貫通穴3Aの径方向に弾性的に変位可能な係合爪部13Aを筐体3に係合させることにより、ケーブルクランプ1を筐体3に係止固定するので、ケーブルクランプ1を貫通穴3Aに対して一方向から嵌め込むのみでケーブルクランプ1を筐体3に組み付けることができる。したがって、ケーブルクランプ1の組み付け作業性を向上させることができる。
【0030】
また、取付部13は本体部7Aにネジ結合されているので、ユーザは、後述する取付ナットにてケーブルクランプ1を筐体3に組み付ける場合と、取付部13にてケーブルクランプ1を筐体3に組み付ける場合と容易に選択することができる。
【0031】
また、本実施形態では、図5に示すように、フリーテンションパーツ11及びナットキャップ7F等の外周面に六角状の二面幅が設けられているので、特殊な工具を用いることなく、スパナ等にてケーブルクランプ1を筐体3に組み付けることができる。
【0032】
また、本実施形態では、ケーブルクランプ1内にノイズフィルタ7Bが内蔵されているので、別途、ノイズフィルタを設けることなく、電気ノイズの影響を抑制することができる。
【0033】
(第2実施形態)
本実施形態は、取付部13に代えて、図6に示すように、取付ナット17にて筐体3を固定部11Aと協働して挟み込むようにしてケーブルクランプ1を貫通穴3Aに固定するものである。
【0034】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るケーブルクランプ1では、全ての部品1〜15を樹脂製としたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
また、上述の実施形態では、ノイズフィルタ7Bをケーブルクランプ1に内蔵したが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上述の実施形態では、取付部13を本体部7Aに着脱自在な構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、本体部5に弾性的に変位可能な係合爪部13Aを設けてもよい。
【0036】
また、上述の実施形態では、固定部11Aと回転連結部11Bとの間にパッキンが設けられていなかったが、この部位に、ペースト状のパッキンや所定形状に成形したパッキン等を配設することにより気密性及び水密性を更に向上させてもよい。
【0037】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1…ケーブルクランプ、3…筐体、3A…貫通穴、5…ケーブル、
7…ケーブルグランド部、7A…本体部、7B…ノイズフィルタ、
7C…クランプ機構、7D…本体パッキン、7E…固定爪、7F…ナットキャップ、
7a…挿入穴、7b…位置決め突起、9…取外防止カバー、9A…係止爪、
11…フリーテンションパーツ、11A…固定部、11B…回転連結部、
11C…円筒部、11D…鍔部、11E…円筒部、11F…係合片、
13…取付部、13A…係合爪部、15…パッキン、17…取付ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けられた貫通穴に装着され、ケーブルを保持するケーブルクランプであって、
前記貫通穴に装着され、ケーブルが挿入される挿入穴が設けられたケーブルグランド部と、
前記ケーブルグランド部に装着され、前記ケーブルグランド部のうち前記筐体外に露出した部位の少なくとも一部を覆うグランド部カバーと
を備えることを特徴とするケーブルクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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