説明

ケーブルハンガ製造装置および製造方法

【課題】ハンガ線材を用いて、Z巻きの螺旋とS巻きの螺旋とを交互に連続して形成することのできるケーブルハンガを製造する。
【解決手段】ハンガ線材が一端から供給され、他端から送り出されるハウジングの円筒状の空間内に、複数個の螺旋成形ダイスが互いに隣接して、かつ、おのおの独立して回動可能に収容される。各螺旋成形ダイスは、ハウジングの内周面との間で、軸線と直交する平面における螺旋の曲率に相当する形状を形成する底面と、前記平面に対して傾斜するZ巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するZ巻き用壁面、およびS巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するS巻き用壁面とを備える。Z巻き用壁面とS巻き用壁面とが、各螺旋成形ダイスの長手方向中央部で交差し、この交差部の前後において、Z巻き用壁面とS巻き用壁面とに挟まれた領域が前記底面で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光集合ドロップケーブルなどの光ファイバケーブルや、その他各種ケーブル等の線材を、電柱に沿って一束化するのに用いるケーブルハンガの製造装置と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバケーブル等の線材を電柱に沿って一束化するのに、ケーブルハンガが用いられている。この種のケーブルハンガには、螺旋状に形成されたスパイラルハンガと呼ばれるものがある(特許文献1参照)。
【0003】
スパイラルハンガと呼ばれるケーブルハンガは、ハンガ線材をコイル状に一定方向に巻いて形成されている。そして、電柱と電柱の間に掛け渡された吊線に架設する場合は、その吊線の端部からケーブルハンガの一端を差込み、ケーブルハンガを螺旋に沿って一方向に回転し続けて、内部に吊線を取り込むことで支持される。
【0004】
これに対し、同じスパイラル状のケーブルハンガでも、作業性の大幅な向上が図れるようにしたケーブルハンガが提案されている。
【0005】
このケーブルハンガは、螺旋形状を一定方向に形成するのではなく、軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたものである(特許文献2参照)。
【0006】
そのため、電柱と電柱の間に掛け渡された吊線に架設する場合は、ケーブルハンガを吊線に沿って配置した後、任意の切換部を吊線に差し込み、そのまま次の切換部に達するまで一方向に(例えば左回転させて)ケーブル内へ取り込んでいく。次の切換部に達したら、その切換部を吊線に差し込み、そのまま次の切換部に達するまで一方向に(例えば右回転させて)ケーブル内へ取り込む。このような取り込み動作を吊線の全長に亘って行なうことで、ケーブルハンガを迅速に吊線に架設することが可能となる。
【特許文献1】米国特許第5727777号明細書
【特許文献2】特開2005−168284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなケーブルハンガは、ハンガ線材を用いて、Z巻きの螺旋とS巻きの螺旋とを交互に連続して形成しなければならないため、これに適した製造装置が従来提案されていなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ハンガ線材を用いて、Z巻きの螺旋とS巻きの螺旋とを交互に連続して形成することのできるケーブルハンガの製造装置と、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係るケーブルハンガ製造装置は、軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガを製造する装置であって、ハンガ線材が一端から供給され、かつ、他端から送り出されるハウジングの円筒状の空間内に、複数個の螺旋成形ダイスが互いに隣接して、かつ、おのおの独立して回動可能に収容され、前記各螺旋成形ダイスは、前記ハウジングの内周面との間で、前記軸線と直交する平面における前記螺旋の曲率に相当する形状を形成する底面と、前記平面に対して傾斜する前記Z巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するZ巻き用壁面、および前記S巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するS巻き用壁面とを備え、前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とが、前記各螺旋成形ダイスの長手方向中央部で交差し、この交差部の前後において、前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とに挟まれた領域が前記底面で構成された、ことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項1記載のケーブルハンガ製造装置において、前記各螺旋成形ダイスは、前記ハンガ線材の挿通時に、前記各螺旋成形ダイスの前記交差部が前記軸線方向に沿って整列する位置に位置決めされることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項1または請求項2記載のケーブルハンガ製造装置において、前記各螺旋成形ダイスは、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成時に、前記各螺旋成形ダイスの前記Z巻きまたはS巻き用壁面どうしが順次連なる位置に位置決めされることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項3記載のケーブルハンガ製造装置において、前記ハンガ線材の挿通位置から前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置への、前記各螺旋成形ダイスの位置決めは、前記ハウジングのハンガ線材供給端から数えて1番目の前記螺旋成形ダイスを基準として、この基準の螺旋成形ダイスに対して2番目以降の複数個の前記螺旋成形ダイスを同時に回動させる一方、手前側の前記螺旋成形ダイスから順に停止させることで行われることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項5に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項3記載のケーブルハンガ製造装置において、前記各螺旋成形ダイスは、前記切換部の形成時に、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置へ、切り換えて位置決めされることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項6に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項5記載のケーブルハンガ製造装置において、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置への、前記各螺旋成形ダイスの位置決め切り換えは、前記ハウジングのハンガ線材供給端から数えて1番目の前記螺旋成形ダイスを基準として、この基準の螺旋成形ダイスに対して2番目以降の複数個の前記螺旋成形ダイスを同時に回動させる一方、手前側の前記螺旋成形ダイスから順に停止させることで行われることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項7に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項4または請求項6記載のケーブルハンガ製造装置において、前記各螺旋成形ダイスの回動速度は、ハンガ線材が前記各螺旋成形ダイスの前端から後端まで移動する間に、前記各螺旋成形ダイスが、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置への切り換えに必要な回動角度を回動する速度に設定されることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項8に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項1,4,6,7のいずれか1項記載のケーブルハンガ製造装置において、前記各螺旋成形ダイスの回動速度は、等速度であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項9に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項1〜8のいずれか1項記載のケーブルハンガ製造装置において、前記各螺旋成形ダイスは、前記ハウジングのハンガ線材供給端から数えて1番目の螺旋成形ダイスが固定され、2番目以降の複数個の螺旋成形ダイスが回動されることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項10に係るケーブルハンガ製造装置は、請求項1〜9のいずれか1項記載のケーブルハンガ製造装置において、前記螺旋成形ダイスの個数は、少なくとも3個必要であることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項11に係るケーブルハンガ製造装置は、軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガを製造する装置であって;ハンガ線材が一端から供給され、かつ、他端から送り出される円筒状の空間を有するハウジングと、前記ハウジングの前記円筒状空間内に、互いに隣接して、かつ、モータによりおのおの独立して回動可能に収容された複数個の螺旋成形ダイスと、を備えた線材加工装置と;前記線材加工装置の前方に配置され、前記線材加工装置の前記一端に向けてハンガ線材を供給する線材供給装置と;を備え;前記各螺旋成形ダイスは、前記線材加工装置の前記一端から数えて1番目の前記螺旋成形ダイスを基準として、この基準の螺旋成形ダイスに対して2番目以降の前記螺旋成形ダイスを同時に回動させる一方、手前側の前記螺旋成形ダイスから順に停止させることで、前記Z巻きまたはS巻き螺旋を形成する位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋を形成する位置へ切り換えて位置決めされ;前記モータによる前記各螺旋成形ダイスの回動速度は、前記線材供給装置により供給される前記ハンガ線材が前記各螺旋成形ダイスの前端から後端まで移動する間に、前記各螺旋成形ダイスが、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置への切り換えに必要な回動角度を回動する速度に設定される;ことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項12に係るケーブルハンガ製造方法は、軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガを製造する方法であって;ハンガ線材が一端から供給され、かつ、他端から送り出されるハウジングの円筒状の空間内に、互いに隣接して、かつ、おのおの独立して回動可能に収容された複数個の螺旋成形ダイスを用い;前記各螺旋成形ダイスは、前記ハウジングの内周面との間で、前記軸線と直交する平面における前記螺旋の曲率に相当する形状を形成する底面と、前記平面に対して傾斜する前記Z巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するZ巻き用壁面、および前記S巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するS巻き用壁面とを備え、前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とが、前記各螺旋成形ダイスの長手方向中央部で交差し、この交差部の前後において、前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とに挟まれた領域が前記底面で構成され;前記方法は;前記交差部が前記軸線方向に沿って整列する位置に位置決めした状態の前記各螺旋成形ダイスに、前記交差部に沿って前記ハンガ線材を挿通する第1の工程の実行後に、前記ハンガ線材を前記一端から供給しながら;前記各螺旋成形ダイスを、前記Z巻きまたはS巻き用壁面どうしが順次連なる位置に位置決めする第2の工程と;前記各螺旋成形ダイスを前記位置決めした状態に保って、所定巻数の前記Z巻きまたはS巻き螺旋を形成する第3の工程と;前記各螺旋成形ダイスを、前記S巻きまたはZ巻き用壁面どうしが順次連なる位置に切り換えて位置決めする第4の工程と;前記各螺旋成形ダイスを前記位置決めした状態に保って、所定巻数の前記S巻きまたはZ巻き螺旋を形成する第5の工程と;を所要回数繰り返す;ことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の請求項13に係るケーブルハンガ製造方法は、請求項12記載のケーブルハンガ製造方法において、前記第2の工程および前記第4の工程は、前記ハウジングのハンガ線材供給端から数えて1番目の前記螺旋成形ダイスを基準として、この基準の螺旋成形ダイスに対して2番目以降の複数個の前記螺旋成形ダイスを同時に回動させる一方、手前側の前記螺旋成形ダイスから順に停止させることで行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上のように、軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガを製造する装置であって、ハンガ線材が一端から供給され、かつ、他端から送り出されるハウジングの円筒状の空間内に、複数個の螺旋成形ダイスが互いに隣接して、かつ、おのおの独立して回動可能に収容され、前記各螺旋成形ダイスは、前記ハウジングの内周面との間で、前記軸線と直交する平面における前記螺旋の曲率に相当する形状を形成する底面と、前記平面に対して傾斜する前記Z巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するZ巻き用壁面、および前記S巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するS巻き用壁面とを備え、前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とが、前記各螺旋成形ダイスの長手方向中央部で交差し、この交差部の前後において、前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とに挟まれた領域が前記底面で構成されたものであるので、ハンガ線材を用いて、Z巻きの螺旋とS巻きの螺旋とを交互に連続して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明によるケーブルハンガ製造装置の全体構成を示す概略的平面図であり、このケーブルハンガ製造装置1は、軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガを製造するものである。
【0025】
ケーブルハンガ製造装置1は、ハンガ線材3の送り出し方向に沿って、手前から、線材供給装置40と、線材加工装置10とで構成される。線材加工装置10で加工されてできあがったケーブルハンガ5は、巻き取り装置(巻き取りドラム)72に巻き取られる。
【0026】
まず、図2〜図13参照して、線材加工装置10による螺旋形成の概要について説明する。
【0027】
線材加工装置10は、ハンガ線材3が一端から供給され、かつ、他端から送り出されるハウジング11の円筒状の空間12内(図5(c)参照)に、複数個の螺旋成形ダイス20が互いに隣接して、かつ、おのおの独立して回動可能に収容される。
【0028】
螺旋成形ダイス20の個数は、少なくとも3個必要である。ここでは、4個の螺旋成形ダイス20(20a,20b,20c,20d)を用いて説明する。すなわち、ハウジング11のハンガ線材供給端から数えて1番目の螺旋成形ダイス20a、2番目の螺旋成形ダイス20b、3番目の螺旋成形ダイス20c、4番目の螺旋成形ダイス20dを用いる。
【0029】
1番目の螺旋成形ダイス20aは、ハウジング11に固定された固定ダイスであり、2番目〜4番目の螺旋成形ダイス20b,20c,20dは、軸線のまわりにおのおの独立して回動可能に支持された回動ダイスである。
【0030】
各螺旋成形ダイス20(20a,20b,20c,20d)は、ハウジング11の内周面13との間で、軸線と直交する平面における前記螺旋の曲率に相当する形状を形成する底面21(21a,21b,21c,21d)を備えている。
【0031】
また、各螺旋成形ダイス20(20a,20b,20c,20d)は、前記平面に対して傾斜するZ巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するZ巻き用壁面22(22a,22b,22c,22d)、およびS巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するS巻き用壁面23(23a,23b,23c,23d)を備えている。
【0032】
そして、2番目〜4番目の螺旋成形ダイス20b,20c,20dでは、Z巻き用壁面22b,22c,22dとS巻き用壁面23b,23c,23dとが、各螺旋成形ダイス20b,20c,20dの長手方向中央部で交差し、この交差部24b,24c,24dの前後において、Z巻き用壁面22b,22c,22dとS巻き用壁面23b,23c,23dとに挟まれた領域が底面21b,21c,21dで構成されている。
【0033】
また、1番目の螺旋成形ダイス20aの場合、図中右半部では、2番目〜4番目の螺旋成形ダイス20b,20c,20dと同様に、Z巻き用壁面22aとS巻き用壁面23aとが交差部24aで交差する。一方、螺旋成形ダイス20aの図中左半部では、Z巻き用壁面22aおよびS巻き用壁面23aが形成されず、これに代えて軸線に沿って延びる導入部が形成され、その導入部の図中左端はハンガ線材導入口26となっている。
【0034】
各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dは、ハンガ線材3の挿通時に、各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dの交差部24a,24b,24c,24dが軸線方向に沿って整列する位置に位置決めされる(図2(a)、図5参照)。
【0035】
各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dは、Z巻き螺旋の形成時に、各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dのZ巻き用壁面22a,22b,22c,22dどうしが順次連なる位置に位置決めされる(図2(d)、図6参照)。
【0036】
各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dは、S巻き螺旋の形成時に、各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dのS巻き用壁面23a,23b,23c,23dどうしが順次連なる位置に位置決めされる(図13参照)。
【0037】
ハンガ線材3の挿通位置からZ巻き螺旋の形成位置への、各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dの位置決めは、1番目の螺旋成形ダイス20aを基準として、この基準の螺旋成形ダイス20aに対して2番目以降の各螺旋成形ダイス20b,20c,20dを同時に回動させる一方、手前側の螺旋成形ダイス20b,20c,20dから順に停止させることで行われる(図2(a)〜(d)参照)。
【0038】
ハンガ線材3の挿通位置からS巻き螺旋の形成位置への、各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dの位置決めは、図示してないが、Z巻き螺旋の場合と同様である。
【0039】
2番目以降の各螺旋成形ダイス20b,20c,20dは、切換部25の形成時に、Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置へ、切り換えて位置決めされる。
【0040】
Z巻き螺旋の形成位置からS巻き螺旋の形成位置への、各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dの位置決め切り換えは、1番目の螺旋成形ダイス20aを基準として、この基準の螺旋成形ダイス20aに対して2番目以降の各螺旋成形ダイス20b,20c,20dを同時に回動させる一方、手前側の螺旋成形ダイス20b,20c,20dから順に停止させることで行われる(図7〜図12参照)。
【0041】
S巻き螺旋の形成位置からZ巻き螺旋の形成位置への、各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dの位置決め切り換えは、図示してないが、Z巻き螺旋からS巻き螺旋への切り換えの場合と同様である。
【0042】
2番目以降の各螺旋成形ダイス20b,20c,20dの回動速度は、ハンガ線材3が各螺旋成形ダイス20b,20c,20dの前端から後端まで移動する間に、各螺旋成形ダイス20b,20c,20dが、Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置への切り換えに必要な回動角度を回動する速度に設定される(図7〜図12参照)。このとき、各螺旋成形ダイス20b,20c,20dの回動速度は、等速度である。
【0043】
ここで、図2に示すようにして所定巻数のZ巻き螺旋を形成した後、S巻き螺旋を形成するときの方法について説明する。各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dがZ巻き螺旋形成位置にある状態を図6に示す。
【0044】
図6に示す位置から、回動可能な各螺旋成形ダイス20b,20c,20dを、同時に等速で左回りに回動させる。始動後90°回動した位置を図7に示す。このとき、螺旋成形ダイス20aの底面21aと、螺旋成形ダイス20bの底面21bとが、向かい合う位置となる。ハンガ線材3は、向かい合う底面21a,21bの中央を軸線に沿って送られる。
【0045】
さらに90°(始動後180°)回動した位置を図8に示す。このとき、螺旋成形ダイス20aのS巻き用壁面23aと、螺旋成形ダイス20bのS巻き用壁面23bとが連なる位置となる。この位置で、螺旋成形ダイス20bは停止させる。ハンガ線材3は、螺旋成形ダイス20bの交差部24bより右側では、Z巻き用壁面22b,22c,22dに沿って位置する一方、交差部24bより左側では、S巻き用壁面23a,23bに沿って位置する。これにより、螺旋成形ダイス20bの交差部24bにおいて、切換部25が形成される。
【0046】
さらに90°(始動後270°)回動した位置を図9に示す。このとき、螺旋成形ダイス20bの底面21bと、螺旋成形ダイス20cの底面21cとが、向かい合う位置となる。ハンガ線材3は、切換部25が、向かい合う底面21b,21cの境界において図中上端に位置するまで送られる。
【0047】
さらに90°(始動後360°)回動した位置を図10に示す。このとき、螺旋成形ダイス20a,20bのS巻き用壁面23a,23bと、螺旋成形ダイス20cのS巻き用壁面23cとが連なる位置となる。この位置で、螺旋成形ダイス20cは停止させる。ハンガ線材3は、切換部25が螺旋成形ダイス20cの交差部24cに位置するまで送られる。
【0048】
さらに90°(始動後450°)回動した位置を図11に示す。このとき、螺旋成形ダイス20cの底面21cと、螺旋成形ダイス20dの底面21dとが、向かい合う位置となる。ハンガ線材3は、切換部25が、向かい合う底面21c,21dの境界において図中上端に位置するまで送られる。
【0049】
さらに90°(始動後540°)回動した位置を図12に示す。このとき、螺旋成形ダイス20a,20b,20cのS巻き用壁面23a,23b,23cと、螺旋成形ダイス20dのS巻き用壁面23dとが連なる位置となる。この位置で、螺旋成形ダイス20dは停止させる。ハンガ線材3は、切換部25が螺旋成形ダイス20dの交差部24dに位置するまで送られる。
【0050】
そして、最後に、ハンガ線材3の切換部25は、螺旋成形ダイス20dの底面21dの右端位置を通って、線材加工装置10から抜け出ることとなる(図13参照)。
【0051】
このようにしてケーブルハンガ5を製造するには、つぎのようにして行う。まず、交差部24(24a,24b,24c,24d)が軸線方向に沿って整列する位置に位置決めした状態の各螺旋成形ダイス20(20a,20b,20c,20d)に、ハンガ線材挿入口26から、交差部24(24a,24b,24c,24d)に沿ってハンガ線材3を挿通する(図2(a)、図5参照)。
【0052】
つぎに、ハンガ線材3をハンガ線材挿入口26から供給し続けながら、各螺旋成形ダイス20(20a,20b,20c,20d)を、前記Z巻きまたはS巻き用壁面どうしが順次連なる位置に位置決めする(図2(d)、図6参照)。
【0053】
つぎに、ハンガ線材3をハンガ線材挿入口26から供給し続けながら、各螺旋成形ダイス20(20a,20b,20c,20d)を前記位置決めした状態に保って、所定巻数の前記Z巻きまたはS巻き螺旋を形成する(図2(d)、図6参照)。
【0054】
つぎに、ハンガ線材3をハンガ線材挿入口26から供給し続けながら、各螺旋成形ダイス20(20a,20b,20c,20d)を、前記S巻きまたはZ巻き用壁面どうしが順次連なる位置に切り換えて位置決めする(図7〜図12参照)。
【0055】
つぎに、ハンガ線材3をハンガ線材挿入口26から供給し続けながら、各螺旋成形ダイス20(20a,20b,20c,20d)を前記位置決めした状態に保って、所定巻数の前記S巻きまたはZ巻き螺旋を形成する(図13参照)。
【0056】
そして、以上の動作を所要回数繰り返す。
【0057】
なお、図5〜図13の説明では、各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dが順次90°ずつ角度ずれすることで、Z巻き用壁面22a,22b,22c,22dまたはS巻き用壁面23a,23b,23c,23dが、順次連なる位置となるように構成したが、これに限定されない。すなわち、90°以外の任意の角度、例えば、角度θだけ各螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dが順次角度ずれすることで、Z巻き用壁面22a,22b,22c,22dまたはS巻き用壁面23a,23b,23c,23dが、順次連なる位置となるように構成することが可能である。
【0058】
また、図5〜図13の説明では、1番目の螺旋成形ダイス20aを固定ダイスとし、2番目〜4番目の螺旋成形ダイス20b,20c,20dを回動ダイスとしたが、これに限定されない。すなわち、1番目〜4番目の螺旋成形ダイス20a,20b,20c,20dが、Z巻き螺旋形成時に一方向に90°(またはθ)ずつ角度ずれする一方、S巻き螺旋形成時に他方向に90°(またはθ)ずつ角度ずれすることができるものであればよい。このことから、ハンガ線材3をハンガ線材挿入口26から供給し続けることに支障がない限り、1番目の螺旋成形ダイス20aを回動ダイスとすることが可能である。また、その場合、例えば、2番目の螺旋成形ダイス20bを固定ダイスとすることが可能である。
【0059】
次に、ケーブルハンガ製造装置1の各部の具体的構造について説明する。ケーブルハンガ製造装置1は、線材供給装置(線材送り出し装置)40と、線材加工装置10とを備えている。
【0060】
線材送り出し装置40は、図示しない線材ドラムから連続して繰り出されるハンガ線材3を、線材ガイド部60を介して、線材加工装置10へ向けて強制的に送り出す。図14に示すように、線材送り出し装置40は、固定された上方の送り出しベルト41と、その下方に対向して配置された、上下動可能な下方の送り出しベルト51とで構成される。
【0061】
固定された上方の送り出しベルト41は、図14で左から右へ向かう送り出し方向の後方(図中右方)のベルト転動輪42と、図示しない前方のベルト転動輪とに、エンドレスに掛け回されている。後方のベルト転動輪42と前方の転動輪との間には、ベースフレーム45に支持された、駆動スプロケット46と図示しない従動スプロケットとに、エンドレスに掛け回されたチェーン47が配置される。チェーン47には支持プレート48が設けられ、支持プレート48の移動にともなって送り出しベルト41が回動する。
【0062】
上下動可能な下方の送り出しベルト51は、後方(図中右方)のベルト転動輪52と、図示しない前方のベルト転動輪とに、エンドレスに掛け回されている。後方のベルト転動輪52と前方のベルト転動輪との間には、可動フレーム55に支持された、駆動スプロケット56と図示しない従動スプロケットとに、エンドレスに掛け回されたチェーン57が配置される。可動フレーム55は、ピストン54aとシリンダ54bからなる昇降用の油圧装置54によって上下動する。チェーン57には支持プレート58が設けられ、支持プレート58の移動にともなって送り出しベルト51が回動する。
【0063】
上方の送り出しベルト41の駆動スプロケット46を駆動する駆動モータ49、下方の送り出しベルト51の駆動スプロケット56を駆動する駆動モータ59、および、下方の送り出しベルト51を上下動させる油圧装置54は、制御装置65からの指令に基づいて制御される。油圧装置54の上昇作動により下方の送り出しベルト51が上昇位置(オン位置)にあるとき、下方の送り出しベルト51は上方の送り出しベルト41と強く圧着する。このとき、送り出しベルト41,51の圧着面は、各支持プレート48,58によって支持されることで、ハンガ線材3を上下から強く挟みつける作用が生れる。これにより、前後方向に長い挟持面50が確保され、その長い挟持面50によって、ハンガ線材3の強く確実な送り出し(図14矢印A方向)が可能である。
【0064】
線材ガイド部60は、内部にハンガ線材3を案内可能な円筒状に形成され、ガイドベース61に支持されている。線材ガイド部60の前端は、線材送り出し装置40の送り出し口に隣接して位置する。一方、線材ガイド部60の後端は、線材加工装置10のハンガ線材導入口26に隣接して位置する。そして、線材ガイド部60は、線材送り出し装置40から強制的に送り出されるハンガ線材3が、線材加工装置10の内部を送られるときに発生する強い摺動抵抗によって、送り出し口とハンガ線材導入口26との間で座屈を起こすことがないように、ハンガ線材3を確実に案内する。
【0065】
第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dは、固定ダイス20aを基準としてそれぞれ、90°までの螺旋ガイド用、180°までの螺旋ガイド用、270°までの螺旋ガイド用のものである。
【0066】
第1の回動ダイス20bは、図16、図17、図18に示すように、ダイス外周面に螺旋成形ガイド部31と、リング状の噛み合いギヤ34がそれぞれ設けられている。螺旋成形ガイド部31を有する第1の回動ダイス20b及び噛み合いギヤ34は、ダイスハウジング11に対してベアリング等の軸受35によって回転自在に支持される。噛み合いギヤ34は、ダイスハウジング11に設けられた図示しない開口を介して、第1の駆動ギヤ36と噛み合っている。
【0067】
螺旋成形ガイド部31は、対向する一対の前傾した傾斜案内面32と、傾斜案内面32の内側に設けられた対向する一対の誘導円弧面33とからなる組合せ形状のものである。
【0068】
誘導円弧面33及び傾斜案内面32は、図18において、例えば、矢印B方向へ回転したときにハンガ線材9が矢印Cのように送り出されることで、螺旋形状を作る。
【0069】
この場合、ケーブルハンガ5の切換部(反転部)25を作ることが可能な第1の回動ダイス20bの傾斜案内面32は、図22に示すように、切換部(反転部)25を円弧領域の外へ立上げる形状を作る。
【0070】
一方、噛み合いギヤ34は、正転、逆転可能な第1のダイス駆動モータM1によって回転動力が与えられる第1の駆動ギヤ36と噛み合う。第1のダイス駆動モータM1からの回転動力は、第1の駆動ギヤ36および噛み合いギヤ34を介して、第1の回動ダイス20bに伝達され、第1の回動ダイス20bが正転、逆転する。
【0071】
第2、第3の回動ダイス20c,20dは、第1の回動ダイス20bと同一構造のものである。そして、第2の回動ダイス20cは第2のダイス駆動モータM2によって、第3の回動ダイス20dは第3のダイス駆動モータM3によって、それぞれ正転、逆転の回転動力が与えられる。
【0072】
第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dのダイスハウジング11は、ベースハウジング15に対して同一軸線X上に配置される。
【0073】
第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dのダイス駆動モータM1、M2、M3は、制御装置65からの指令に基づいて制御される。
【0074】
制御装置65は、予め組込まれたプラグラムに基づいて、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20d及び線材送り出し装置40に、それぞれ作動指令を出力する。その関係を図19に示す。
【0075】
図19は、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dの正転及び逆転と、線材送り出し装置40のオン・オフの関係をタイムチャートで示したものである。
【0076】
すなわち、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dは、各螺旋成形ガイド部31がハンガ線材導入口26と同一軸線X上に揃う状態を0°として、それぞれ90°、180°、270°に正転する。次に、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dは、同一軸線X上に揃う0°を越えて、反対側へ同様にして回転(逆転)する。第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dは、このような正転、逆転動作を交互に繰り返す。
【0077】
これについて、例えば、右側へ回転させることをプラス側、左側へ回転させることをマイナス側と仮定して、具体的に説明する。
【0078】
第1の回動ダイス20bは、0°をスタートとして、プラス側となる右側へ+90°回転(正回転)する。次に、+90°の位置から0°へ戻り、マイナス側となる左側へ−90°回転(逆回転)する。次に、−90°の位置から0°へ戻り、再びプラス側となる右側へ+90°回転(正回転)する。第1の回動ダイス20bは、この動作を交互に繰り返す。
【0079】
第2の回動ダイス20cは、0°をスタートとして、プラス側となる右側へ+180°回転(正回転)する。次に、+180°の位置から0°へ戻り、マイナス側となる左側へ−180°回転(逆回転)する。次に、−180°の位置から0°へ戻り、再びプラス側となる右側へ+180°回転(正回転)する。第2の回動ダイス20cは、この動作を交互に繰り返す。
【0080】
第3の回動ダイス20dは、0°をスタートとして、プラス側となる右側へ+270°回転(正回転)する。次に、+270°の位置から0°へ戻り、マイナス側となる左側へ−270°回転(逆回転)する。次に、−270°の位置から0°へ戻り、再びプラス側となる右側へ+270°回転(正回転)する。第3の回動ダイス20dは、この動作を交互に繰り返す。
【0081】
一方、線材送り出し装置40は、スタート位置で一旦オン(圧着送り出し状態)になると、例えば、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dが、それぞれ90°、180°、270°に回転し終わった後も、なお一定時間オン状態を継続する。その後、オフの期間を経て、再びオン(圧着送り出し状態)になる。線材送り出し装置40は、このオン・オフ動作を繰り返す。
【0082】
このときの線材送り出し装置40と、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dの関係を、図20を参照して説明する。
【0083】
スタートと同時に線材送り出し装置40がオン(圧着送り出し状態)となるオン領域において、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dは、それぞれ+90°、+180°、+270°の位置まで回転(正回転)する。これにより、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dの各螺旋成形ガイド部31によって、図20に示すように、270°までの右回り螺旋ガイドR−Gが作られる。ハンガ線材3は、この右回り螺旋ガイドR−Gに沿って強制的に送り続けられることで、所定巻数の右回り螺旋部5−Rが得られる。
【0084】
また、線材送り出し装置40が一旦オフとなり、再びオン(圧着送り出し状態)となる次のオン領域において、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dは、それぞれ−90°、−180°、−270°の位置まで回転(逆回転)する。これにより、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dの各螺旋成形ガイド部31によって、図20に示すように、270°までの左回り螺旋ガイドL−Gが作られる。ハンガ線材3は、この左回り螺旋ガイドL−G沿って強制的に送り続けられることで、所定巻数の左回り螺旋部5−Lが得られる。
【0085】
なお、上記の説明では、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dの右回りを正転、左回りを逆転としたが、左回りを正転、右回りを逆転としてもよい。また、上記の説明では、滑らかな螺旋ガイドを作るために、固定ダイス20aと、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dからなる4個の組合せダイスを採用した。しかし、固定ダイス20aと、第1、第2の回動ダイス20b,20cからなる3個の組合せダイスを採用することも可能である。
【0086】
また、線材送り出し装置40は、オフ領域において、固定送り出しベルト41に対して可動送り出しベルト51が下降した状態にあり、ハンガ線材3の挟持を解除する。このオフの期間は、1〜2秒である。これにより、例えば、右回り螺旋部5−Rから次の左回り螺旋部5−Lに入るときに、ハンガ線材3の挟持を一時的に解除することができ、ねじれ反力を一時的に解放させることができる。
【0087】
なお、線材送り出し装置40は、ハンガ線材3の挟持を解除するオフ期間を設けず、送り出しを続けるオン(圧着送り出し状態)のままでも、右回り螺旋部5−R、左回り螺旋部5−Lを交互に連続して作ることが可能である。右回り螺旋部5−R、左回り螺旋部5−Lの各巻数が、例えば2.0巻き前後(1.5巻き〜2.5巻き程度)と比較的少ない場合は、これでも充分な品質をもったケーブルハンガ5を製造することができる。
【0088】
ケーブルハンガ取出し装置70は、第3の回動ダイス20dに設けられた所定長さのケーブルハンガ支持部材71と、製品となったケーブルハンガ5を巻き取る巻取りドラム72とを有している。
【0089】
ケーブルハンガ支持部材71は、第3の回動ダイス20dの中心軸線に一体に取付けられた円筒状に形成され、第3の回動ダイス20dと一体に回転する。そのため、第3の回動ダイス20dから送り出されたケーブルハンガ5は、地上に落下することなく、所定の長さにわたってケーブルハンガ支持部材71に支持された後、巻取りドラム72によって巻取られる。
【0090】
巻取りドラム72は、左右一対の巻取りフランジ73と、両巻取りフランジ73間に位置する巻取り胴部74と、巻取り胴部74の周囲に半径方向に所定間隔で形成された複数の凸条部75とで構成される。各凸条部75は、巻取り胴部74のほぼ全長にわたって半径方向外方へ突き出たものである。ケーブルハンガ5は、巻取りドラム72の巻取り胴部74に巻き取られるとき、右回りまたは左回り螺旋部5−R,5−Lが、図23に示すように波状に延ばされた不安定な状態で巻取られる。このとき、両螺旋部5−R,5−Lの繋ぎ目にある切換部(反転部)25を凸条部75に係止することで、ケーブルハンガ5を安定させて確実に巻取ることができる。
【0091】
左右いずれか一方の巻取りフランジ73は、巻取り胴部74に対して着脱自在に取付けられる。この巻取りフランジ73を取外したとき、巻取り胴部74が露出し、ケーブルハンガ5を巻取り胴部74から容易に取外すことができる。
【0092】
このように構成されたケーブルハンガ製造装置1によるケーブルハンガ5の製造方法について説明する。まず、図1に示すように、ハンガ線材導入口26と同一軸線X上となるよう第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dの各螺旋成形ガイド部31をセットする。このセットした各螺旋成形ガイド部31に、長手方向に連続するハンガ線材3をハンガ線材導入口26から挿入する。つぎに、線材送り出し装置40をオン状態にしてハンガ線材3を送り出し、これと同時に、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dを右側へ、それぞれ+90°、+180°、+270°の位置まで回転させる。これにより、ハンガ線材3は、270°までの右回り螺旋が作られる。このとき、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dによって、右回りの螺旋ガイドR−Gが形成されるから、継続してハンガ線材3を強制的に一定時間送り続けることで、所定巻数の右回り螺旋部5−Rが得られる。
【0093】
次に、ハンガ線材3の挟持を一時解除してねじれ反力を解放する。その後再び、ハンガ線材3を送り出し、これと同時に、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dを0°を越えて左側へ、それぞれ−90°、−180°、−270°の位置まで回転させる。これにより、ハンガ線材3は、切換部(反転部)25を介して、270°までの左回り螺旋が作られる。このとき、第1〜第3の回動ダイス20b,20c,20dによって、左回りの螺旋ガイドL−Gが形成されるから、継続してハンガ線材3を強制的に一定時間送り続けることで、所定巻数の左回り螺旋部5−Lが得られる。
【0094】
以下、前記動作を繰り返すことで、図21に示すように、右回り螺旋部5−Rと左回り螺旋部5−Lが切換部(反転部)25を介して軸線方向に沿って交互に連続するケーブルハンガ5を得ることができる。
【0095】
これら一連の螺旋成形時において、線材送り出し装置40によるハンガ線材3の送り出し時に、各螺旋成形ガイド部31によってハンガ線材3には強い摺動抵抗が起きるが、線材送り出し装置40からハンガ線材導入口26の間は、線材ガイド部60によってガイドされるため、座屈を起こすことなく確実にハンガ線材3を円滑に送り出すことができる。
【0096】
なお、この場合、摺動抵抗の軽減を図るためにハンガ線材導入口26に油だめを設け、ハンガ線材3に挿入抵抗を軽減するための潤滑作用を与えるようにすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明によるケーブルハンガ製造装置の全体構成を示す概略的平面図である。
【図2】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの概略的斜視図であり、Z巻き螺旋を形成するときの各螺旋成形ダイスの回動位置を順次示す説明図である。
【図3】固定の螺旋成形ダイスの正面図である。
【図4】固定の螺旋成形ダイスの平面図である。
【図5】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、ハンガ線材を挿通するときの各螺旋成形ダイスの位置を示す。
【図6】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、Z巻き螺旋を形成するときの各螺旋成形ダイスの位置を示す。
【図7】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、S巻き螺旋を形成するため図6に示す位置から90°回動した位置を示す。
【図8】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、図7に示す位置からさらに90°回動した位置を示す。
【図9】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、図8に示す位置からさらに90°回動した位置を示す。
【図10】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、図9に示す位置からさらに90°回動した位置を示す。
【図11】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、図10に示す位置からさらに90°回動した位置を示す。
【図12】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、図11に示す位置からさらに90°回動した位置を示す。
【図13】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスの(a)概略的平面図、(b)概略的正面図、(c)概略的底面図、(d)概略的背面図であり、図11に示す位置で切換部が抜け出る状態を示す。
【図14】線材送り出し装置の要部構造を示す正面図である。
【図15】線材加工装置の構造を示す正面図である。
【図16】線材加工装置の構造を示す右側面図である。
【図17】図16のXVII−XVII線に沿ってとられた横断平面図である。
【図18】回動する螺旋成形ダイスに設けた螺旋成形ガイド部の一対の誘導円弧面を示す要部の斜視図である。
【図19】回動する螺旋成形ダイスと線材送り出し装置の動作を示すタイムチャートである。
【図20】線材加工装置として組み合わせた螺旋成形ダイスによるZ巻き螺旋の形成状態およびS巻き螺旋の形成状態を示す説明図である。
【図21】軸線に沿ってZ巻き螺旋とS巻き螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガの斜視図である。
【図22】図21のケーブルハンガを軸線方向からみた説明図である。
【図23】巻取りドラムの片方の巻取りフランジを取外した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0098】
1 ケーブルハンガ製造装置
3 ハンガ線材
5 ケーブルハンガ
10 線材加工装置
11 ハウジング(ダイスハウジング)
12 円筒状空間
13 内周面
20 螺旋成形ダイス
21 底面
22 Z巻き用壁面
23 S巻き用壁面
24 交差部
25 切換部(反転部)
26 ハンガ線材導入口
40 線材供給装置(線材送り出し装置)
60 線材ガイド部
70 ケーブルハンガ取出し装置
71 ケーブルハンガ支持部材
72 巻取りドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガを製造する装置であって、
ハンガ線材が一端から供給され、かつ、他端から送り出されるハウジングの円筒状の空間内に、複数個の螺旋成形ダイスが互いに隣接して、かつ、おのおの独立して回動可能に収容され、
前記各螺旋成形ダイスは、
前記ハウジングの内周面との間で、前記軸線と直交する平面における前記螺旋の曲率に相当する形状を形成する底面と、
前記平面に対して傾斜する前記Z巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するZ巻き用壁面、および前記S巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するS巻き用壁面とを備え、
前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とが、前記各螺旋成形ダイスの長手方向中央部で交差し、この交差部の前後において、前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とに挟まれた領域が前記底面で構成された、
ことを特徴とするケーブルハンガ製造装置。
【請求項2】
前記各螺旋成形ダイスは、前記ハンガ線材の挿通時に、前記各螺旋成形ダイスの前記交差部が前記軸線方向に沿って整列する位置に位置決めされることを特徴とする請求項1記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項3】
前記各螺旋成形ダイスは、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成時に、前記各螺旋成形ダイスの前記Z巻きまたはS巻き用壁面どうしが順次連なる位置に位置決めされることを特徴とする請求項1または請求項2記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項4】
前記ハンガ線材の挿通位置から前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置への、前記各螺旋成形ダイスの位置決めは、
前記ハウジングのハンガ線材供給端から数えて1番目の前記螺旋成形ダイスを基準として、この基準の螺旋成形ダイスに対して2番目以降の複数個の前記螺旋成形ダイスを同時に回動させる一方、手前側の前記螺旋成形ダイスから順に停止させることで行われることを特徴とする請求項3記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項5】
前記各螺旋成形ダイスは、前記切換部の形成時に、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置へ、切り換えて位置決めされることを特徴とする請求項3記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項6】
前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置への、前記各螺旋成形ダイスの位置決め切り換えは、
前記ハウジングのハンガ線材供給端から数えて1番目の前記螺旋成形ダイスを基準として、この基準の螺旋成形ダイスに対して2番目以降の複数個の前記螺旋成形ダイスを同時に回動させる一方、手前側の前記螺旋成形ダイスから順に停止させることで行われることを特徴とする請求項5記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項7】
前記各螺旋成形ダイスの回動速度は、ハンガ線材が前記各螺旋成形ダイスの前端から後端まで移動する間に、前記各螺旋成形ダイスが、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置への切り換えに必要な回動角度を回動する速度に設定されることを特徴とする請求項4または請求項6記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項8】
前記各螺旋成形ダイスの回動速度は、等速度であることを特徴とする請求項1,4,6,7のいずれか1項記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項9】
前記各螺旋成形ダイスは、前記ハウジングのハンガ線材供給端から数えて1番目の螺旋成形ダイスが固定され、2番目以降の複数個の螺旋成形ダイスが回動されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項10】
前記螺旋成形ダイスの個数は、少なくとも3個必要であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のケーブルハンガ製造装置。
【請求項11】
軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガを製造する装置であって;
ハンガ線材が一端から供給され、かつ、他端から送り出される円筒状の空間を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記円筒状空間内に、互いに隣接して、かつ、モータによりおのおの独立して回動可能に収容された複数個の螺旋成形ダイスと、
を備えた線材加工装置と;
前記線材加工装置の前方に配置され、前記線材加工装置の前記一端に向けてハンガ線材を供給する線材供給装置と;
を備え;
前記各螺旋成形ダイスは、前記線材加工装置の前記一端から数えて1番目の前記螺旋成形ダイスを基準として、この基準の螺旋成形ダイスに対して2番目以降の前記螺旋成形ダイスを同時に回動させる一方、手前側の前記螺旋成形ダイスから順に停止させることで、前記Z巻きまたはS巻き螺旋を形成する位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋を形成する位置へ切り換えて位置決めされ;
前記モータによる前記各螺旋成形ダイスの回動速度は、前記線材供給装置により供給される前記ハンガ線材が前記各螺旋成形ダイスの前端から後端まで移動する間に、前記各螺旋成形ダイスが、前記Z巻きまたはS巻き螺旋の形成位置から、前記S巻きまたはZ巻き螺旋の形成位置への切り換えに必要な回動角度を回動する速度に設定される;
ことを特徴とするケーブルハンガ製造装置。
【請求項12】
軸線に沿ってZ巻きの螺旋とS巻きの螺旋とが切換部を介して交互に連続して形成されたケーブルハンガを製造する方法であって;
ハンガ線材が一端から供給され、かつ、他端から送り出されるハウジングの円筒状の空間内に、互いに隣接して、かつ、おのおの独立して回動可能に収容された複数個の螺旋成形ダイスを用い;
前記各螺旋成形ダイスは、
前記ハウジングの内周面との間で、前記軸線と直交する平面における前記螺旋の曲率に相当する形状を形成する底面と、
前記平面に対して傾斜する前記Z巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するZ巻き用壁面、および前記S巻き螺旋のピッチに相当する形状を形成するS巻き用壁面とを備え、
前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とが、前記各螺旋成形ダイスの長手方向中央部で交差し、この交差部の前後において、前記Z巻き用壁面と前記S巻き用壁面とに挟まれた領域が前記底面で構成され;
前記方法は;
前記交差部が前記軸線方向に沿って整列する位置に位置決めした状態の前記各螺旋成形ダイスに、前記交差部に沿って前記ハンガ線材を挿通する第1の工程の実行後に、前記ハンガ線材を前記一端から供給しながら;
前記各螺旋成形ダイスを、前記Z巻きまたはS巻き用壁面どうしが順次連なる位置に位置決めする第2の工程と;
前記各螺旋成形ダイスを前記位置決めした状態に保って、所定巻数の前記Z巻きまたはS巻き螺旋を形成する第3の工程と;
前記各螺旋成形ダイスを、前記S巻きまたはZ巻き用壁面どうしが順次連なる位置に切り換えて位置決めする第4の工程と;
前記各螺旋成形ダイスを前記位置決めした状態に保って、所定巻数の前記S巻きまたはZ巻き螺旋を形成する第5の工程と;
を所要回数繰り返す;
ことを特徴とするケーブルハンガ製造方法。
【請求項13】
前記第2の工程および前記第4の工程は、前記ハウジングのハンガ線材供給端から数えて1番目の前記螺旋成形ダイスを基準として、この基準の螺旋成形ダイスに対して2番目以降の複数個の前記螺旋成形ダイスを同時に回動させる一方、手前側の前記螺旋成形ダイスから順に停止させることで行うことを特徴とする請求項12記載のケーブルハンガ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−58922(P2008−58922A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285451(P2006−285451)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【特許番号】特許第3962085号(P3962085)
【特許公報発行日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(591102660)協栄線材株式会社 (24)
【Fターム(参考)】