説明

ケーブル保持具

【課題】ケーブル保持具本体によって規定されるケーブル保持スペースの大きさを変更できるケーブル保持具を提供する。
【解決手段】複数のケーブル保持用のリンク部材を互いに屈曲可能に連結して、それらの内部に複数本のケーブルを保持するケーブル保持具であって、梁部材20をケーブル保持具本体10の両側面プレート12,13に成形されたスリット部12a,13aに沿って上下に移動する際、梁部材20の脚部21,22の係合爪21a,21bおよび22a,22bを各側面プレート12,13の鋸歯面14a,14bと係合させることで、位置決め固定する。したがって、保持されるケーブルの通線容量に合わせて梁部材20の固定位置を調整できることにより、リンク部材の通線容量を可変にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一形状に形成されたケーブル保持用のリンク部材を複数個それぞれ連結することで、それらの内部に一本あるいは複数本のケーブルを屈曲可能に保持するようにしたケーブル保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット等のように、機械本体に対して相対的に移動する可動部分を有する装置においては、機械本体と可動部分との間に電気配線を行わなければならない場合がしばしば発生する。このような場合、機械本体と可動部分とをつなぐ電気ケーブルを裸のままで放置した場合には、電気ケーブルが外部の部材に接触したりして傷みやすく、断線等が発生することが考えられる。また、通信機器や電子機器の本体と引き出し可能なユニットとをケーブル接続する場合でも、ユニットを出し入れする際におけるケーブル断線を防止し、あるいは高密度実装を可能にするためには、ケーブルを保持する必要がある。
【0003】
そのため、このような相対移動する部分に電源線や信号線等複数本のケーブルを配線するには、それらのケーブルを例えばチェーン状に形成されたフレキシブルなケーブル保持具の内部に収納して保護することが行われている。こうしたチェーン状のケーブル保持具は、機械本体と可動部分との相対移動につれて変形自在に構成されているので、可動部分の動きを妨げる等の悪影響を与えることなく、電気ケーブルを外部から保護することができる。
【0004】
従来のケーブル保持具には、例えば特許文献1に開示されている様なものが知られている。ケーブル保持具を構成する単位リンク部材は、水平方向に所定距離を離間して配置された一対のサイドプレート部と、これら一対のサイドプレート部の下端部を互いに接続するための底プレート部と、一対のサイドプレート部間に電線等のケーブルを収納した状態で、リンク部材からケーブルが飛び出さない様にサイドプレート部の上部を部分的に閉鎖するための梁部材とから概略構成されている。こうしたリンク部材を、その前後に設けられた円柱状の突起と丸穴とを連結するもの同士で互いに勘合させていくことで、ケーブル保持具を屈曲可能に構成している。これにより、ユニットの出し入れに伴うケーブルの引き回しに際して、ケーブルが損傷されることがなくなり、その後もスムースな移動が可能になるから、ケーブル全体が保護されるだけでなく、ケーブル自体のばらつき移動を規制できる。
【0005】
ところで、こうした従来技術においては、リンク部材を形成するための型の構造が単純化され、ケーブル保持具のローコスト化を図るようにしている。しかし、従来のケーブル保持具では、ケーブル通線のためのスペースが固定であるので、複数の異なる大きさ、あるいは形状を有するリンク部材を多種類用意しておき、それぞれの通線条件に応じて通線容量が設定され、その通線容量に適したサイズのものを選択していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2589448号公報(段落番号〔0016〕、〔0017〕および図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のリンク部材の構造のままでケーブル保持具の共通化を行うと、通線容量の差異により、ケーブルの量がそのスペースよりも少ない場合、ケーブル保持具内でのケーブルの挙動は不安定になり、ケーブル断線等の問題が発生するおそれがあった。
【0008】
また、出荷後の装置への機能追加にともなって、必要なケーブルの本数が増加する場合もある。同一のケーブル保持具内に、その通線容量以上にケーブルを多く挿入することになれば、ケーブル保持具の屈曲にともなって上部を閉鎖している梁部材が破損し、あるいは梁部材がサイドプレート部から外れたりするおそれもある。
【0009】
したがって、従来のケーブル保持具のリンク部材では、収容可能なケーブルの容量が固定されていたため、通線容量の増大に柔軟に対処することができなかった。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、ケーブル保持具本体によって規定されるケーブル保持スペースを変更できるケーブル保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記問題を解決するために、同一形状に形成されたケーブル保持用のリンク部材を複数個それぞれ連結することで、それらの内部に一本あるいは複数本のケーブルを屈曲可能に保持するようにしたケーブル保持具が提供される。このケーブル保持具では、前記リンク部材は、所定の幅を有する底面プレート、および前記底面プレートからそれぞれ所定の高さで左右に起立する側面プレートによって構成され、前記ケーブルが一本あるいは複数本だけ纏めて挿入可能なケーブル保持具本体と、前記ケーブルを前記側面プレートの開放側から前記ケーブル保持具本体内に挿入して保持する際に、前記側面プレートのそれぞれに形成されたガイドレールに沿って上下に移動可能であって、前記底面プレートに対して任意距離だけ離間した位置で前記ケーブル保持具本体に対して固定される梁部材とから構成される。前記ケーブル保持具本体には、その前後部それぞれに嵌合穴あるいは突起部が形成され、前後に隣接するケーブル保持具本体と相互に連結可能としている。
【0011】
したがって、梁部材をケーブル保持具本体の両側面プレートに成形されたガイドレールに沿って上下に移動して位置決めする場合に、そこで保持されるケーブルの通線容量に応じた適正位置に梁部材を固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のケーブル保持具では、リンク部材によって規定されるケーブル保持具のスペースを、梁部材の固定位置の調整により変更可能としたことにより、リンク部材自体の大きさを変更しなくても、ケーブルの通線容量に応じた保持スペースを自由に確保できるという利点がある。
【0013】
すなわち、新たな部品の追加無しにケーブルの通線容量を変更できる構造であるために、このケーブル保持具は通線容量に柔軟性があって、通信機器や電子機器に必要なケーブルの配線規模の変化に容易に対処できる。そのため、ケーブルの通線品質を維持向上できるだけでなく、ケーブル保持具の共通化によって部品コストの低減が図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るケーブル保持具本体および梁部材を示す斜視図である。
【図2】複数のケーブル保持具本体を連結した状態を示す斜視図である。
【図3】ケーブルを屈曲可能に保持するケーブル保持具の全体構成を示す斜視図である。
【図4】複数のケーブル保持具本体を連結し、ケーブルを取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るケーブル保持具本体および梁部材を示す斜視図である。
ここには、ケーブル保持具本体10と梁部材20とを構成要素とする単一のリンク部材を示している。ケーブル保持具本体10は、所定の幅D1を有する底面プレート11、およびこの底面プレート11からそれぞれ所定の高さで垂直に起立する左右の側面プレート12,13を有している。このケーブル保持具本体10は、弾性を有する材料によって形成され、側面プレート12,13の内側のスペース幅D2に少なくとも一本のケーブル(図示せず)が挿入可能なU字状の断面を有するスペースを有している。すなわち、このリンク部材は、ケーブルの太さにもよるが、一本あるいは複数本のケーブルが側面プレート12,13の開放側からケーブル保持具本体10内に挿入された際に、それらを纏めて保持することができる。
【0016】
左右の側面プレート12,13には、上端部から縦に所定の深さまでスリット部12a,13aが形成されている。また、各側面プレート12,13の外側面には、それぞれスリット部12a,13aを挟んで相対向する位置で、互いに向かい合うように鋸歯面14a,14b(図1では、側面プレート12のみ示されている。)が設けられている。これらの鋸歯面14a,14bは、いずれも上向きの傾斜面と水平の係止面とからなる突部とによって鋸歯状の係止面を構成するものである。そして、これらのスリット部12a,13aと鋸歯面14a,14bとによって、梁部材20のガイドレールを構成している。
【0017】
梁部材20は、左右の側面プレート12,13のスリット部12a,13aに挿入可能な太さで、ケーブル保持具本体10のスペース幅D2よりやや長い棒状をなしており、その左右両端側にそれぞれ弾性を有する材料によって二股形状の脚部21,22が形成されている。これらの脚部21,22の先端の自由端には、それぞれのガイドレールと係合するように、抜け止め用の係合爪21a,21bおよび22a,22bが形成されていて、これらの係合爪21a,21bおよび22a,22bが各側面プレート12,13の鋸歯面14a,14bと係合するようになっている。
【0018】
また、ケーブル保持具本体10には、左右の側面プレート12,13の外側面にそれぞれ前部に嵌合穴16が形成され、側面プレート12,13の外幅がD1よりやや狭く形成された後部には、嵌合穴16に対応する大きさの突起部17が形成されている。ここで、左右の側面プレート12,13の外幅をその前後方向で変えるために、直線状の段差部18が設けられている。また、突起部17の後部表面は、傾斜面17aをなしている。そして、これらの嵌合穴16に隣接するケーブル保持具本体10の突起部17を嵌めこむことで、隣接する2つのケーブル保持具本体10が連結される。
【0019】
図2は、複数のケーブル保持具本体を連結した状態を示す斜視図、図3は、ケーブルを屈曲可能に保持するケーブル保持具の全体構成を示す斜視図、図4は、複数のケーブル保持具本体を連結し、ケーブルを取り付けた状態を示す斜視図である。
【0020】
図3、図4に示すように、チェーン状に接続されたケーブル保持具を曲げる力が作用した場合でも、リンク部材同士は所定の角度以上屈曲しない。これは、左右の側面プレート12,13の段差部18に、その前端に形成された傾斜19が突き当たって、ケーブル保持具本体10同士の回動角度を規制しているためである。また、ケーブル保持具が真っ直ぐになった状態においては、1つのリンク部材の底面プレート11の前端部と、隣接するリンク部材の底面プレート11の後端部とが当接するため、ケーブル保持具が反対側に曲がることが防止される。このように屈曲角度に規制があることによって、折り曲げられる曲率半径が必要以上に小さくなることがなく、そのため、保持されるケーブルが小さい曲率半径で繰り返し折り曲げられることによるケーブルの断線等を防止することができる。
【0021】
こうして、複数のケーブル保持具本体10を互いに連結することで、チェーン状に形成されたフレキシブルなケーブル保持用のケーブル保持具を構成できる。その内部に一本あるいは複数本のケーブルを屈曲可能に保持する際、梁部材20をケーブル保持具本体10のガイドレールに沿って押し込むだけで、梁部材20がケーブル保持具本体10に対して所望する位置に固定される。したがって、ケーブル保持具本体10内で保持されるケーブルの容量に応じて梁部材20の固定位置を容易に変更することができる。
【0022】
ケーブル量に応じて梁部材20の位置を調整可能としたので、ケーブル保持具を構成する単位リンク部材(ケーブル保持具本体10と梁部材20)のサイズの共通化を図ることができ、コストダウンが可能になる。また、従来では複数本のケーブル保持具が必要な部位であっても、1本のケーブル保持具だけで対応が可能となることから、通信機器や電子機器における省スペース化の効果がある。
【0023】
また、本実施の形態では、そのケーブル保持具により保持されるケーブルの通線量が少ない場合でも、リンク部材の内部での遊びを少なくすることが可能になるから、ケーブルがリンク部材の外側に飛び出すおそれがなくなり、断線等を確実に防止できる。
【0024】
なお、この実施の形態では、梁部材20をケーブル保持具本体10の任意の位置で固定する手段として、側面プレート12,13を跨いでその外側面に設けたガイドレールに梁部材20の脚部21,22を係合させる構成にしてあるが、それに限定されるものではない。確かに、ケーブルを追加しようとして梁部材20の位置を上方に後で変更する場合、梁部材20の脚部21,22に設けた係合爪21a,21b,22a,22bを治具を用いて互いに接近させる方向に変形させて鋸歯面14a,14bとの係合状態を脱するように操作するには、ガイドレールが各側面プレート12,13の外側面にあると都合がよい。しかし、そのようなケーブル収容のスペースを拡張する可能性のない場所への適用には、ガイドレールを側面プレート12,13の内側面に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 ケーブル保持具本体
11 底面プレート
12,13 側面プレート
12a,13a スリット部
14a,14b 鋸歯面
16 嵌合穴
17 突起部
18 段差部
19 傾斜
20 梁部材
21,22 脚部
21a,21b,22a,22b 係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状に形成されたケーブル保持用のリンク部材を複数個それぞれ連結することで、それらの内部に一本あるいは複数本のケーブルを屈曲可能に保持するようにしたケーブル保持具において、
前記リンク部材は、
所定の幅を有する底面プレート、および前記底面プレートからそれぞれ所定の高さで左右に起立する側面プレートを有し、前記ケーブルが一本あるいは複数本纏めて収容可能なケーブル保持具本体と、
前記ケーブルを前記側面プレートの開放側から前記ケーブル保持具本体内に挿入して保持する際に、前記側面プレートのそれぞれに形成されたガイドレールに沿って上下に移動可能であって、前記底面プレートに対して任意距離だけ離間した位置で前記ケーブル保持具本体に固定される梁部材と、
を備え、前記ケーブル保持具本体には、その前後部それぞれに嵌合穴あるいは突起部が形成され、前後に隣接して別のケーブル保持具本体と連結可能としたことを特徴とするケーブル保持具。
【請求項2】
前記ガイドレールは、前記側面プレートのそれぞれに形成された鋸歯状の係止面を有しており、
前記梁部材には、その左右両端側にそれぞれ脚部が形成され、前記脚部のそれぞれの先端部に前記係止面と係合する抜け止め用の係合爪を有し、
前記ガイドレールに沿って前記梁部材を押し込むとともに、前記ケーブル保持具本体に対して前記梁部材を所望する位置に固定して前記ケーブルを前記ケーブル保持具本体内で保持するようにしたことを特徴とする請求項1記載のケーブル保持具。
【請求項3】
前記ガイドレールは、前記側面プレートのそれぞれに上端部から縦に所定の深さで前記梁部材が挿入可能な幅に形成されたスリット部を有し、
前記係止面は、前記スリット部に沿って前記側面プレートのそれぞれの外側面に形成されていることを特徴とする請求項2記載のケーブル保持具。
【請求項4】
前記梁部材には、その左右両端側に弾性を有する材料によって構成された二股形状をなす前記脚部がそれぞれ設けられ、前記脚部の自由端にそれぞれ外側に突起するように前記係合爪が形成され、
前記係止面は、前記側面プレートのそれぞれの外側面で、前記スリット部に挿入された前記梁部材のそれぞれ相対向する前記脚部から突起する前記係合爪と係合する位置に形成されていることを特徴とする請求項3記載のケーブル保持具。
【請求項5】
前記ケーブル保持具本体は、弾性を有する材料によって構成され、前記ケーブルを保持するための内部空間がU字状の断面を有することを特徴とする請求項1記載のケーブル保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−160524(P2011−160524A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18700(P2010−18700)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】