説明

ケーブル分岐カバー着脱装置

【課題】 比較的小さい力で確実かつ容易にケーブル分岐具を被覆するカバーの着脱を行うことを目的とする。
【解決手段】 本発明のケーブル分岐カバー着脱装置300は、ラック304を有するレール部302と、ケーブル分岐具100のカバー104を把持するカバー把持部340と、ケーブル200を固定することによりケーブルをレール部と略平行に固定するケーブル固定部320と、レール部のラックと噛合するピニオンおよび外力を受けてピニオンを回転させる駆動入力軸314を含む移動部310とを備え、カバー把持部は、駆動入力軸と連結しており、駆動入力軸を回転させることによりカバー把持部がレール部に対して相対的に移動し、カバーをケーブル分岐具に対してスライドさせることによりカバーをケーブル分岐具に着脱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される電線等のケーブルを分岐するためにケーブルに装着するケーブル分岐具を着脱するケーブル分岐カバー着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気事業者の発電所で発電された電力は、電線や電力ケーブル等の電線類によって需要家に供給される。従来は所定間隔ごとに電柱を設置し、電線を架設して電気を供給していた。電柱に架設される電線には、高圧線(例えば6600V)、動力線(三相200V)、電灯線(単相200V/100V)などの種類があり、電圧が高いものほど上方に架設されるのが通常である。また電柱には電線の他、通信線や光ケーブルなどの共架物が架設されている。
【0003】
近年、都市部や市街地では、電線類を歩道等の下の地中に埋設する電線類地中化(無電柱化)が提案され(例えば、非特許文献1)、実施されつつある。電柱類地中化とは、安全で快適な通行空間の確保、都市災害の防止、都市景観の向上等の観点から、電線や通信線等の電線類をおよび関連施設を地中に埋設することである。
【0004】
電線類地中化においては、歩道の下に電線共同構を建設し、地上(歩道など)に設置したペデスタルボックス内に変圧器や増幅器、分岐器などを収容する。しかし歩道が狭いなどの理由から地上にペデスタルボックスを設置できない場合は、電柱を設置もしくは残存させたり、自治体が保有する街灯の鋼管柱を利用したりして、これらの電柱等の上に変圧器などの電気機器を設置する。すなわち電線類だけを地中化し、要所で柱上の電気機器を中継する構成である。このように柱を残して電線類を地中化する手法は、ソフト地中化と呼ばれている。
【0005】
柱上にある電線は、ポリ塩化ビニル(PVC:PolyVinyl Chloride)やポリエチレン、架橋ポリエチレンなどの樹脂によって被覆されている。一方、地中化する電力ケーブルは、絶縁被覆、外部半導層被覆、遮蔽銅被覆、シース被覆を芯線から近い順に多層に被覆されており、遮蔽銅被覆をアースに落とすことにより芯線からの誘導起電力が外部に漏れることを防止している。
【0006】
そして歩道などの下の地中に埋設された電力ケーブルから各需要家へは、電力ケーブルを分岐させることによって配電される。分岐は多回路開閉器で行われる場合が多かったが、近年は、別途機器を設置する必要がない高圧T分岐接続部等のケーブル分岐具によって相互に接続もしくは分岐する傾向にある。高圧T分岐接続部は、最大3本の電力ケーブルを電気的に接続するものである。具体的な構成は種々のものが考えられるが、例えば各電力ケーブルの先端に端子を取り付け、各端子をアルミブロックにボルト留めすることにより、着脱可能に接続することができる。ケーブル分岐具は、防錆および防水のために、および感電防止のために、絶縁部材によって覆われる。絶縁部材は、主として端子周辺を覆うゴム製のカバーと、随時施工される絶縁テープとから構成される。
【0007】
電力ケーブルは、必要に応じてケーブル分岐具に対して着脱される。例えば最初の施工時は、当然に接続が必要である。需要家が減ったときには分岐されていた電力ケーブルの撤去が生じるため分離が必要となる。また需要家が増えることが予想される場合(空地がある場合など)には、まだ分岐させない場合であってもケーブル分岐具を設置しておく場合もある。このように電力ケーブルをケーブル分岐具に対して着脱する場合には、ゴム製のカバーに対して電力ケーブルを挿抜する必要が生じる。またゴム製のカバーにおいて電力ケーブルを取り付けない開口部にはスペーサ(栓)をするため、作業に応じてスペーサの着脱も必要となる。
【0008】
しかし、ゴム製のカバーと電力ケーブルまたはスペーサの摩擦抵抗は大きく、例えば素手で作業するとすれば、作業員が2人がかりで押し合ったり引き合ったりしなくてはならないほどである。挿入時には接合部にグリスを塗ってから作業をするため比較的容易ではある。しかし、設置から数年経過後に取り外す場合にはゴムが硬化しており、固着も進行しているため、取り外し作業は容易ではない。
【0009】
特に電線類をソフト地中化する場合には、ケーブル分岐具はハンドホールと呼ばれる穴に収容されている。このハンドホールは作業員一人がようやく入れる程度の狭い空間であり、この中で作業する限りにおいて作業員は強い力を出すことは極めて困難である。
【0010】
特許文献1には、T分岐式のケーブル接続体において、ケーブルを接続受容体(記載はないがゴムなどのエラストマ製と想定される)に挿入することにより、接続受容体の中央に配置されたレセプタクルにケーブル先端の端子を接続する構成が記載されている。そして特許文献1においては、接続受容体を把持する第1のクランプと、ケーブルを湾曲させて把持する第2のクランプを駆動用ねじでスライドさせることで、ケーブルを滑ることなく把持し、比較的小さい力でケーブルの挿抜作業を行うことができるとしている。
【非特許文献1】国土交通省ホームページhttp://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chichuka/
【特許文献1】特開平6−98438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載の技術では、ケーブルを把持する際に湾曲させて把持することになるため、ケーブルに負荷がかかって損傷をきたすおそれがある。また、接続受容体は絶縁のためにエラストマ製と想定されるが、これを締め付けて把持しているため、挿入されている電力ケーブルをさらに強固に固定してしまって抜きにくくなったり、開口を押しつぶして挿入しにくくなったりしてしまうおそれがある。また、接続受容体とケーブルとを一対一で把持しているため、強い力がかかると傾いてしまい、挿抜の際のスライド抵抗が増大して着脱が困難となってしまうおそれがある。
【0012】
一方、ケーブル分岐具を覆うカバーが中実であれば、特許文献1のように把持することも可能である。しかし、カバーが中空の外殻をなす場合には、強い力でカバーを把持しようとしても変形してしまうため、滑ってしまって着脱させることが困難であるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、このような問題に鑑み、狭い場所であっても、小さい力で確実かつ容易にケーブル分岐具を被覆するカバーの着脱を行うことが可能なケーブル分岐カバー着脱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、ケーブルを分岐するケーブル分岐具に対してカバーを着脱するケーブル分岐カバー着脱装置であって、ラックを有するレール部と、カバーを把持するカバー把持部と、ケーブル分岐具から延出したケーブルを固定することにより当該ケーブルをレール部と略平行に固定するケーブル固定部と、ラックと噛合するピニオンおよび外力を受けて当該ピニオンを回転させる駆動入力軸を含む移動部と、を備え、カバー把持部は、移動部に取り付けられ、駆動入力軸を回転させることによりレール部に対して相対的に移動し、当該カバー把持部がカバーに設けられた突出部の側面に係止して当該カバーをケーブル分岐具に対してスライドさせることによりカバーをケーブル分岐具に着脱することを特徴とする。
【0015】
かかる構成により、駆動入力軸を回転させるだけでカバー把持部のみをケーブルと略平行に移動させることができる。換言すれば、カバー把持部に把持されたカバーのみをケーブルと略平行に移動させて、ケーブル分岐具の本体を露出させることができる。したがって、安定かつ容易にケーブル分岐具からカバーを取り外したり、取り付けたりすることができるため、狭小な作業スペースしか確保することのできない、ソフト地中化を実施している場合であっても、簡単に電力ケーブルやスペーサの着脱作業を行うことが可能となる。
【0016】
また、カバー把持部は、カバーに設けられた突出部の側面に係止して当該カバーをケーブル分岐具に対してスライドさせる構成により、カバーを把持する方向に力を分散することなく、スライド方向にのみ力を加えることが可能となる。したがって、カバーを移動させる方向にのみ力が作用することになるため、カバーが把持する方向に変形してしまうことがなくなる。これにより、カバー把持部が、ケーブル分岐具に挿入されている電力ケーブルをさらに強固に固定したり、開口部を押しつぶしたり、ケーブル分岐具が中空である場合のカバーの変形によるカバー把持部からの滑動がなくなるため、より小さい力でカバーをスライドさせることができる。
【0017】
ケーブル固定部は、ケーブルと当接する部分にエラストマで形成されケーブルの径に応じた凹部を有する着脱可能な把持ブロックをさらに備え、把持するケーブルの径に応じて選択的に当該把持ブロックを交換可能であってもよい。
【0018】
ケーブル固定部のケーブルと当接する部分がエラストマで形成される構成により、ケーブルの被覆との摩擦力が向上するため、ケーブル固定部とケーブルが滑動することなく、確実に固定することができる。
【0019】
また、把持するケーブルの径に応じて選択的に当該把持ブロックを交換可能であるため、様々な太さのケーブルに適応可能である。したがって、把持ブロックの凹部が大きすぎるために、ケーブルを確実に固定できなかったり、凹部が小さすぎるために、ケーブルに損傷を与えたりする不具合を防止することができる。
【0020】
当該ケーブル分岐カバー着脱装置は、レール部の両側にケーブル固定部を備え、ケーブル分岐具の両側からケーブルが延出している場合、両側のケーブル固定部は当該延出したケーブルをそれぞれ固定してもよい。
【0021】
ケーブル分岐具を略中央にして両側を固定することにより、当該ケーブル分岐カバー着脱装置を確実にケーブルに固定することができる。したがって、安定してカバーのみを移動させることができ、容易にカバーをケーブル分岐具から着脱することが可能となる。
【0022】
ケーブル固定部に代えてまたは追加して、レール部の一端または両端に、カバーの開口部を封止するスペーサを固定するスペーサ固定部を備えてもよい。
【0023】
事故等の有事、分岐側の設備の撤去、新設作業等がある場合、ケーブル分岐具の片端もしくは両端には、ケーブルではなくカバーの開口部を封止するスペーサを備える場合がある。スペーサは、ケーブル分岐具本体よりも強固にカバーに固着している。したがって、ケーブル固定部に代えてまたは追加してスペーサ固定部を備える構成により、スペーサとカバーを安定かつ容易に取り外すことが可能となる。
【0024】
スペーサ固定部は、カバーとスペーサの間に形成される隙間に嵌合する爪部を有していてもよい。
【0025】
カバーとスペーサの間に形成される隙間にスペーサ固定部の爪部を嵌合させることにより、スペーサを把持する方向に力を分散することなく、スライド方向にのみ力を加えることが可能となる。したがって、カバーを移動させる方向にのみ力が作用することになるため、より小さい力でカバーとスペーサを取り外すことが可能となる。
【0026】
カバー把持部は、カバーの外周の略半周を覆う第一把持部と、カバーの残りの略半周を覆う第二把持部と、を含んで構成され、第一把持部と第二把持部の接合部は互いに櫛歯形状をなし、接合部は、カバーの円周方向において噛合し、当該カバー把持部のスライド方向に対して係合してもよい。
【0027】
カバー把持部がカバーの移動方向にスライドしても、第一把持部と第二把持部の接合部が円周方向に噛合することにより、接合部の一部に力が偏倚することがなくなり、負荷が分散するためカバー把持部が損壊することがなくなる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明のケーブル分岐カバー着脱装置によれば、比較的小さい力で確実かつ容易にケーブル分岐具を被覆するカバーの着脱を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0030】
図1は、本実施形態にかかるケーブル分岐カバー着脱装置を適応するケーブル分岐具を説明するための説明図であり、図1(a)は、ケーブル分岐具を説明するための説明図、図1(b)は、カバーを説明するための説明図、図1(c)は、ケーブルをつながない場合のケーブル分岐具を説明するための説明図である。図1に示すように、ケーブル分岐具100は、本体102、カバー(絶縁筒)104、スペーサ110を含んで構成される。
【0031】
本実施形態においてケーブル分岐具100は、1本のケーブル(電力ケーブル)200aを2本のケーブル200b、200cに分岐可能に構成される(図1(a)参照)。したがって、ケーブル分岐具100のケーブル200を1本接続する側(以下単に一口側と称する。)からは、1本のケーブル200aが延出することとなり、ケーブル200を2本接続する側(以下単に二口側と称する。)からは、2本のケーブル200b、200cが延出することとなる。
【0032】
本実施形態において、ケーブル200の外径は8mm、60mm、150mmの3種類あり、ケーブル分岐具100は、これらの種類のケーブル200を接続可能である。
【0033】
図1(b)に示すように、本体102を被覆するカバー104は、絶縁性を有するエラストマで形成され、両端に鉛直断面が略矩形の突出部106と、中央に略楕円形状の筒部108とを含んで構成される。
【0034】
複数(例えば3本)のケーブル分岐具100を筒部108で纏めることにより、土木、建築用の柱、梁、基礎杭等の構造用鋼材であるH鋼に嵌設させることができる。したがって、ソフト地中化等狭小なスペースしか確保できない場所であっても、無駄なくケーブル分岐具100およびケーブル200を設置することが可能となる。
【0035】
スペーサ110は、ケーブル200が延出可能な穴があいており、ケーブル200とカバー104の開口部104aとの間を封止する。
【0036】
また、図1(c)に示すように、本実施形態においてケーブル分岐具100は、ケーブル200を接続しない場合、ケーブル200が延出可能な穴が開いているスペーサ110の代わりに、カバー104の開口部104aを封止する穴が開いていないスペーサ112を装着する。これは、事故等の有事、分岐側の設備の撤去、新設作業等がある場合、ケーブル分岐具100の片端もしくは両端には、ケーブル200ではなくカバー104の開口部104aを封止するスペーサ112を備えることで、カバー104を封止して防水および防錆を図るためである。
【0037】
従来はケーブル分岐具100の両側から人が人力で引っ張ることにより、ケーブル分岐具100からカバー104、スペーサ110、112をはずしていた。ケーブル分岐具100は、筒部108の断面の楕円の長径が15cm程度と大きく、ソフト地中化等を行う際に確保できる狭小な作業スペースでは、ケーブル分岐具100からカバー104等をはずすのは、困難であった。
【0038】
以下に、本実施形態にかかるケーブル分岐カバー着脱装置について詳述する。
【0039】
(ケーブル分岐カバー着脱装置300)
図2は、本実施形態にかかるケーブル分岐カバー着脱装置を説明するための説明図である。なお、以下説明を容易にするためにケーブル分岐カバー着脱装置300を単に着脱装置300と称する。
【0040】
図2に示すように、着脱装置300は、レール部302と、移動部310と、ケーブル固定部320と、スペーサ固定部330と、カバー把持部340と、を含んで構成される。
【0041】
図3は、レール部および移動部を説明するための説明図であり、図3(a)はレール部および移動部の外観図を、図3(b)は、移動部を説明するための説明図である。図3に示すように、レール部302は、ラック304と、取付部306と、を含んで構成され、移動部310は、レール部302のラック304と噛合するピニオン312と、外力を受けてピニオン312を回転させる駆動入力軸314とを含んで構成される。
【0042】
本実施形態において、移動部310にはカバー把持部340が、取付部306にはケーブル固定部320もしくはスペーサ固定部330がピンで固定される。これにより、着脱装置300を現場で簡単に組み立てることができるため、着脱装置300をコンパクトでき容易に持ち運びすることが可能になる。
【0043】
したがって、レール部302は、移動部310および取付部306を介してカバー把持部340とケーブル固定部320とをケーブル200と略平行に固定し、カバー把持部340をスライド自在に固定する。
【0044】
ケーブル分岐具100を略中央にして両側を固定することにより、当該ケーブル分岐カバー着脱装置300を確実にケーブル200に固定することができる。したがって、安定してカバー104のみを移動させることができ、容易にカバー104をケーブル分岐具100から着脱することが可能となる。
【0045】
図3(b)に示すように、具体的には、本実施形態において駆動入力軸314は、ボルトで構成され、ラチェットレンチ等でボルトを回転させることにより、ピニオン312を回転(図3(b)中矢印Aで示す)させる。これにより、ボルトの回転よりも多くピニオン312を回転させることができるため、比較的小さい力でピニオン312を回転させることができる。つまり、駆動入力軸314をラチェットレンチで回転させることにより、移動部310に固定されたカバー把持部340が、レール部302に対して相対的に移動(図3(b)中矢印Bで示す)することとなる。
【0046】
さらに本実施形態において、取付部306はレール部302の両側に2つ含んで構成されるが、ケーブル200、スペーサ110、112を固定できれば足りるため、取付部306は、1つであってもよい。
【0047】
図4は、ケーブル固定部を説明するための説明図である。図4に示すように、ケーブル固定部320は、レール部302に含まれる取付部306にピン306aで固定可能であり、ケーブル200の径に応じた凹部324を有する着脱可能な把持ブロック322を含んで構成され、ケーブル分岐具100から延出したケーブル200を固定する。
【0048】
本実施形態において、把持ブロック322は、一口側に対応した把持ブロック322a(図4(a))と、二口側に対応可能な把持ブロック322b(図4(b))との2種類がある。なお、把持ブロック322は、8mm、60mm、150mmの3種類のケーブル200にそれぞれ対応した凹部324を有するエラストマブロック326を交換可能に備えている。
【0049】
エラストマブロック326は、固定する対象のケーブル200の外径に基づいて選択され、把持ブロック322に固定する。また把持ブロック322は、把持した状態においてケーブル200の中心が出るように片側基準で固定するよう構成されている。したがって、ケーブル200が、屈折することによる損傷の発生を防止している。
【0050】
把持するケーブル200の径に応じて選択的にエラストマブロック326を交換可能であるため、様々な太さのケーブル200に適応可能である。したがって、エラストマブロック326の凹部324が大きすぎるために、ケーブル200を確実に固定できなかったり、凹部324が小さすぎるために、ケーブル200に損傷を与えたりする不具合を防止することができる。
【0051】
本実施形態において、ケーブル固定部320のケーブル200と当接する部分すなわちエラストマブロック326の凹部324はエラストマで形成されている。
【0052】
エラストマブロック326の凹部324がエラストマで形成される構成により、ケーブル200の被覆との摩擦力が向上するため、ケーブル固定部320とケーブル200が滑動することなく、確実に固定することができる。
【0053】
図5は、スペーサ固定部を説明するための説明図であり、図5(a)は、スペーサ固定部の外観図を、図5(b)は、図5(a)のXX断面図を、図5(c)は、爪部とカバーとスペーサの間に形成される隙間との関係を説明するための説明図である。図5においては、スペーサ112を例示する。図5に示すように、スペーサ固定部330は、ケーブル分岐具100のスペーサ110、112を締め付けて把持するアーム332と、アーム332の内周に立設され、カバー104とスペーサ112の間に形成される隙間114(図5(c))に嵌合する爪部334を有している。
【0054】
図5(a)に示すように、スペーサ固定部330は、ケーブル固定部320に代えてまたは追加して、レール部302の一端または両端に備えられた取付部306にピン306aで固定される。
【0055】
スペーサ110、112は、ケーブル分岐具100の本体102よりも強固にカバー104に固着している。したがって、スペーサ固定部320が爪部324を有する構成により、経年劣化等によりスペーサ110、112がカバー104に固着していても、スペーサ110、112とカバー104を安定かつ容易に取り外すことが可能となる。なお、カバー104にスペーサ110、112を装着する際には、グリスを塗布することができるため、アーム332によるスペーサ110、112の把持のみでも装着することができる。
【0056】
さらに本実施形態において、スペーサ固定部330のスペーサ110、112と当接する内側には、エラストマを備えており、スペーサ固定部330とスペーサ110、112が滑動することなく、確実に固定することができる。
【0057】
また、カバー104とスペーサ112の間に形成される隙間にスペーサ固定部330の爪部334を嵌合(図5(c)参照)させることにより、スペーサ112を把持する方向に力を分散することなく、スライド方向にのみ力を加えることが可能となる。したがって、カバー104を移動させる方向にのみ力が作用することになるため、より小さい力でカバー104とスペーサ112を取り外すことが可能となる。
【0058】
図6は、カバー把持部を説明するための説明図である。図6に示すように、カバー把持部340は、カバー104の外周の略半周を覆う第一把持部342と、カバー104の残りの略半周を覆う第二把持部344と、第一把持部342と第二把持部344を結合するキャッチクリップ346とを含んで構成される。
【0059】
図6(a)に示すように、カバー把持部340は、移動部310にピン306aで固定される。
【0060】
図6(b)に示すように、第一把持部342と第二把持部344の接合部348は互いに櫛歯形状をなし、接合部348は、カバー104の円周方向(図6(b)中矢印C)において噛合し、カバー把持部340のスライド方向(図6(b)中矢印D)に対して係合する。なお、図6(b)において、接合部348を明確にするため、キャッチクリップ346を点線で示す。
【0061】
かかる構成により、カバー把持部340がカバー104の移動方向(図6(b)中矢印D)にスライドしても、第一把持部342と第二把持部344の接合部348が円周方向(図6(b)中矢印C)に噛合することにより、接合部348の一部を結合するキャッチクリップ346に力が偏倚することがなくなり、負荷が分散するためカバー把持部340が損壊することがなくなる。
【0062】
図6(c)に示すように、本実施形態において、カバー把持部340は、カバー104に設けられた突出部106の側面に係止してカバー104をスライドさせる。
【0063】
これにより、カバー把持部340は、カバー104を把持する方向に力を分散することなく、スライド方向にのみ力を加えることが可能となる。したがって、カバー104を移動させる方向にのみ力が作用することになるため、カバー104が把持する方向に変形してしまうことがなくなる。これにより、カバー把持部340が、ケーブル分岐具100に挿入されているケーブル200をさらに強固に固定したり、開口部104aを押しつぶしたり、ケーブル分岐具100が中空である場合のカバー104の変形によるカバー把持部340からの滑動がなくなるため、より小さい力でカバーをスライドさせることができる。
【0064】
図7は、本実施形態にかかる着脱装置300の使用形態を説明するための説明図である。
【0065】
まず、カバー把持部340でケーブル分岐具100を構成するカバー104を把持し、ケーブル固定部320もしくはスペーサ固定部330でケーブル200の両端を固定する(図7(a))。
【0066】
図8は、ケーブルの径およびスペーサの有無に応じたケーブル固定部もしくはスペーサ固定部の適応を説明するための説明図である。図8中、把持ブロック322aおよびカバー把持部340を用い2点で固定する形態を利用可能な場合を○で示し、スペーサ固定部330、カバー把持部340、把持ブロック322bを用い3点で固定する形態を推奨する場合◎で示す。
【0067】
図8に示すように、一口側のケーブル200の径が、60mmもしくは150mmである場合、一口側に対応可能な把持ブロック322aおよびカバー把持部340を用いてもよく、それ以外はスペーサ固定部330、カバー把持部340、二口側に対応可能な把持ブロック322bを用いるとよい。
【0068】
そして、カバー104に設けられた突出部106の側面にカバー把持部340を係止して(図7(b))、移動部310の駆動入力軸314をラチェットレンチ等によって回転させることで、カバー把持部340ごとカバー104をレール部302に対して相対的に移動させスライドさせることにより、ケーブル分岐具100からカバー104を取り外す(図7(c))。
【0069】
一方、カバー104を取り付ける際には、ケーブル固定部320でケーブル200の両端を固定し、カバー把持部340でケーブル分岐具100を構成するカバー104を把持し、カバー104に設けられた突出部106の側面にカバー把持部340を係止して、図7(c)に示す方向とは逆方向にカバー把持部340ごとカバー104をレール部302に対して相対的に移動させスライドさせることにより、カバー104を取り付ける。
【0070】
上述した如く本実施形態にかかる着脱装置300によれば、駆動入力軸314を回転させるだけでカバー把持部340のみをケーブル200と略平行に移動させることができる。換言すれば、カバー把持部340に把持されたカバー104のみをケーブル200と略平行に移動させることができるため、カバー104を容易にケーブル分岐具100の本体102から取り外したり、取り付けたりすることが可能となる。
【0071】
また、ケーブル固定部320でケーブル200を固定、もしくはスペーサ固定部330でスペーサ110、112を固定しているため、安定してカバー104のみをスライドさせることができる。
【0072】
したがって、安定かつ容易にケーブル分岐具100からカバー104を取り外したり、取り付けたりすることができるため、狭小な作業スペースしか確保することのできない、ソフト地中化を実施する際でも、簡単にケーブル分岐具100の交換等を行うことが可能となる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、地中に埋設される電線等のケーブルを分岐するためにケーブルに装着するケーブル分岐具を着脱するケーブル分岐カバー着脱装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施形態にかかるケーブル分岐カバー着脱装置を適応するケーブル分岐具を説明するための説明図である。
【図2】実施形態にかかるケーブル分岐カバー着脱装置を説明するための説明図である。
【図3】レール部および移動部を説明するための説明図である。
【図4】ケーブル固定部を説明するための説明図である。
【図5】スペーサ固定部を説明するための説明図である。
【図6】カバー把持部を説明するための説明図である。
【図7】実施形態にかかる着脱装置の使用形態を説明するための説明図である。
【図8】ケーブルの径およびスペーサの有無に応じたケーブル固定部もしくはスペーサ固定部の適応を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0076】
100 …ケーブル分岐具、102 …本体、104 …カバー、104a …開口部
106 …突出部、108 …筒部、110 …絶縁栓、112 …スペーサ、114 …隙間、200 …ケーブル、300 …着脱装置、302 …レール部、304 …ラック、306 …取付部、306a …ピン、310 …移動部、312 …ピニオン、314 …駆動入力軸、320 …ケーブル固定部、322 …把持ブロック、324 …凹部、326 …エラストマブロック、330 …スペーサ固定部、332 …アーム、334 …爪部、340 …カバー把持部、342 …第一把持部、344 …第二把持部、346 …キャッチクリップ、348 …接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを分岐するケーブル分岐具に対してカバーを着脱するケーブル分岐カバー着脱装置であって、
ラックを有するレール部と、
前記カバーを把持するカバー把持部と、
前記ケーブル分岐具から延出した前記ケーブルを固定することにより該ケーブルを前記レール部と略平行に固定するケーブル固定部と、
前記ラックと噛合するピニオンおよび外力を受けて該ピニオンを回転させる駆動入力軸を含む移動部と、
を備え、
前記カバー把持部は、前記移動部に取り付けられ、前記駆動入力軸を回転させることにより前記レール部に対して相対的に移動し、該カバー把持部が前記カバーに設けられた突出部の側面に係止して該カバーを前記ケーブル分岐具に対してスライドさせることにより前記カバーを前記ケーブル分岐具に着脱することを特徴とするケーブル分岐カバー着脱装置。
【請求項2】
前記ケーブル固定部は、前記ケーブルと当接する部分にエラストマで形成されケーブルの径に応じた凹部を有する着脱可能な把持ブロックをさらに備え、
把持するケーブルの径に応じて選択的に該把持ブロックを交換可能であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル分岐カバー着脱装置。
【請求項3】
当該ケーブル分岐カバー着脱装置は、
前記レール部の両側にケーブル固定部を備え、
前記ケーブル分岐具の両側から前記ケーブルが延出している場合、前記両側のケーブル固定部は該延出したケーブルをそれぞれ固定することを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル分岐カバー着脱装置。
【請求項4】
前記ケーブル固定部に代えてまたは追加して、前記レール部の一端または両端に、前記カバーの開口部を封止するスペーサを固定するスペーサ固定部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項3に記載のケーブル分岐カバー着脱装置。
【請求項5】
前記スペーサ固定部は、前記カバーと前記スペーサの間に形成される隙間に嵌合する爪部を有していることを特徴とする請求項4に記載のケーブル分岐カバー着脱装置。
【請求項6】
前記カバー把持部は、
前記カバーの外周の略半周を覆う第一把持部と、
前記カバーの残りの略半周を覆う第二把持部と、
を含んで構成され、
前記第一把持部と第二把持部の接合部は互いに櫛歯形状をなし、前記接合部は、前記カバーの円周方向において噛合し、該カバー把持部のスライド方向に対して係合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のケーブル分岐カバー着脱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−28973(P2010−28973A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187324(P2008−187324)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】