説明

ケーブル引込線用引抜き工具

【課題】作業者の手が入らないような狭小隙間を利用して通信ケーブルの引込線を屋内に配線する場合でも、効率のよい作業の遂行を可能とする。
【解決手段】ケーブル引込線用引抜き工具であって、グリップ10から延びるパイプ20が自体の弾性によって曲がることができるとともに、このパイプがグリップ10に対して軸心回りに回転可能である。そして、パイプ20に挿通させたワイヤー30が、該パイプの先端側から外部に出てループ部32を構成し、かつグリップ10側から外部に出て操作部34を構成している。この操作部34を引き締めることでループ部32を絞ることができるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル等の通信ケーブルにおける引込線を屋内に配線する作業(ドロップ・インドア配線作業)に使用するケーブル引込線用引抜き工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配線作業を一般家屋において行う場合は、例えばエアコン用のホースを通すために家屋の壁に開けられている孔を利用することが多い。つまり、通信ケーブルの引込線を屋外側から壁の孔に差し込み、屋内側から引込線を引き入れて配線作業を行っている。
また、特許文献1に開示された技術では、ビルディング等の建物を対象とし、光ファイバケーブルを挿通させた金属フレキシブル管を建物のエレベータシャフト等の空間に配置する。そして、この金属フレキシブル管から引き出された個別のケーブルを各種の通信機器に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−114282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般家屋において、前述のようにエアコン用のホースが通されている壁の孔を利用して引込線を配線する場合、屋内側ではエアコンの室内機と壁との間の狭小隙間に引込線が位置することになる。このように作業者の手が入らず、また手が届きにくい狭小隙間の奥に引込線があるときは、エアコンの室内機を移動させる必要があり、その分、配線作業の効率がわるくなる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、作業者の手が入らないような狭小隙間を利用して通信ケーブルの引込線を屋内に配線する場合でも、効率のよい作業の遂行を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
グリップから延びるパイプが自体の弾性によって曲がることができるとともに、このパイプがグリップに対して軸心回りに回転可能である。そして、パイプに挿通させたワイヤーが、該パイプの先端側から外部に出てループ部を構成し、かつグリップ側から外部に出て操作部を構成している。この操作部を引き締めることでループ部を絞ることができるように構成されている。
【0007】
より好ましくは、ワイヤーのループ部が、パイプの先端側の二箇所に開けられた挿通孔から外部に出ることで構成されていることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、作業者の手が入らないような狭小隙間を利用して通信ケーブルの引込線を屋内に配線する際に、屋外から狭小隙間に差し込まれた引込線の端部を、パイプの先端側にあるワイヤーのループ部を絞ることで把持し、そのまま引込線を屋内側に引き入れて配線することができる。これにより、狭小隙間をつくっている障害物を移動させる手間を省いて効率よく配線作業を行うことができる。
また、狭小隙間に合わせてパイプを曲げることができ、かつグリップに対してパイプを軸心回りに回転させてワイヤーのループ部の向きを調整することにより、狭小隙間に位置する引込線を容易に把持することができる。
【0009】
さらに、ワイヤーをパイプの先端側の二箇所に開けられた挿通孔から外部に出してループ部を構成することにより、引込線を把持するためにループ部を繰り返して絞っても、ワイヤーに局部的な折れ曲がり等が生じにくく、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ケーブル引込線用引抜き工具の全体を表した平面図。
【図2】ケーブル引込線用引抜き工具の一部を破断して表した平断面図。
【図3】ケーブル引込線用引抜き工具の一部を破断して表した縦断面図。
【図4】引込線を把持した状態のケーブル引込線用引抜き工具の一部を表した斜視図。
【図5】一般家屋における引込線の配線箇所を表した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1〜図3から明らかなように本実施の形態のケーブル引込線用引抜き工具は、大別してグリップ10とパイプ20とワイヤー30とによって構成されている。グリップ10は、パイプ20よりも径の大きい中空の筒形状であり、ABS樹脂材などで成形されている。これに対してパイプ20は、透明のアクリル樹脂材などで成形されている。また、ワイヤー30は金属製で、後で説明するように引込線50を把持するために必要な適度の可撓性を有する。
【0012】
グリップ10は、配線作業者が手で持ってケーブル引込線用引抜き工具を操作するのに適した長さ(約200mm)と径(約25mm)とに設定されている。グリップ10の内部には、図2あるいは図3の右端寄りの領域において発光ダイオード(LED)を用いたランチャーライト14が組込まれている。このランチャーライト14を点灯・消灯させるスイッチ部は、グリップ10の外部から操作可能になっている。グリップ10には、長孔形状をした左右一対の挿通孔12と丸孔形状をした左右一対の挿通孔13とが、それぞれグリップ10の内外に貫通して開けられている。
【0013】
グリップ10の左端側の開口部は、ABS樹脂材などで成形されたキャップ16で閉ざされている。このキャップ16には、グリップ10の内外に貫通した連結孔18が開けられており、この連結孔18にパイプ20の基端部が差し込まれている(図2、図3)。
グリップ10およびキャップ16は、黒色で不透明の樹脂材によって成形することが好ましい。その結果、ランチャーライト14の光が外に洩れるのを防止できるとともに、グリップ10の内部を見えなくして意匠性を高めることができる。
【0014】
パイプ20は、その先端部が後述する配線箇所の狭小隙間Sに届く長さ(約300mm)と、この狭小隙間Sに入る径(約6mm)とに設定されている。パイプ20の素材は、前述のように透明の樹脂材であるとともに、自体の弾性によって適度に曲がることができる。パイプ20の先端部寄りには、長孔形状をした左右一対の挿通孔26がパイプ20の内外に貫通して開けられている。
パイプ20の先端側の開口部は、透明のアクリル樹脂材などで成形された透光キャップ28で塞がれている。ランチャーライト14を点灯したときのLEDの光は、パイプ20を通って透光キャップ28から照明光を発することになる。
【0015】
パイプ20の基端部は、既に述べたようにキャップ16の連結孔18に差し込まれている。そして、パイプ20の基端部には、キャップ16の内側(グリップ10の内部)およびキャップ16の外側(グリップ10の外部)においてスリーブ形状のストッパー22,24がそれぞれ固定されている。これにより、パイプ20はグリップ10に結合された状態に保持され、かつグリップ10に対して軸心回りに回転することができる。なお、これらのストッパー22,24についても、グリップ10やキャップ16と同様にABS樹脂材などで成形されている。
【0016】
ワイヤー30は、パイプ20における先端側の外部で一つのループ部32が構成され、グリップ10側の外部で一対の操作部34が構成されている(図2)。実際にワイヤー30を組付ける手順については、一本のワイヤー30の中間部分を折り返し、その両端部をパイプ20の先端寄りに開けられている一対の挿通孔26からパイプ20の中にそれぞれ挿入してグリップ10の中まで導く。そして、ワイヤー30の両端部をグリップ10に開けられている一対の挿通孔12から個別にグリップ10の外部に出した後、一対の挿通孔13から再び内部に挿入する。
【0017】
これにより、ワイヤー30はパイプ20の両挿通孔26から外部に出た箇所においてループ部32が構成され、グリップ10の各挿通孔12,13から外部に出た箇所において操作部34が構成される。グリップ10の内部に位置するワイヤー30の両端部は、それぞれカシメ加工がされて個々の挿通孔13から抜けないようになっている(図2)。このカシメ加工は、ランチャーライト14が組込まれる前のグリップ10の開口からワイヤー30の両端部を外に出して行う。
【0018】
以上のように構成されたケーブル引込線用引抜き工具において、ワイヤー30のループ部32に通信ケーブルの引込線50を通した後、グリップ10側で操作部34を引き締めてワイヤー30を手元側へ引き寄せる。これにより、ワイヤー30のループ部32が絞られ、図4で示すようにループ部32とパイプ20の先端との間で引込線50を把持することができる。
図5で示すように、一般家屋においてエアコンホース46を通している壁40の孔42を利用して通信ケーブルの引込線50を屋外から屋内に配線する場合、屋外側から壁40の孔42に差し込まれた引込線50の端部は、壁40とエアコン室内機44との間の狭小隙間Sに位置している。この狭小隙間Sは、作業者の手が入らず、届きにくい。加えて多くの場合は、引込線50の端部が狭小隙間Sにおいてエアコン室内機44の背面に引っ掛かって作業者の手元まで配線できない。
【0019】
そこで、屋内側においてケーブル引込線用引抜き工具のパイプ20を狭小隙間Sに入れ、前述のように操作してループ部32により引込線50を把持する。このとき、パイプ20は弾性によって曲がることができるとともに、グリップ10に対して軸心回りに回転することができるので、ループ部32の向きなどを自由に調整して引込線50を確実に把持することが可能となる。したがって、作業者は無理な姿勢をとることなく、引込線50を屋内側に引抜いて配線することができる。
また、狭小隙間Sが暗いときは、ランチャーライト14を点灯することにより、パイプ20先端の透光キャップ28から発せられるLEDの光で狭小隙間Sを照明することができる。
【0020】
このように、狭小隙間Sにある引込線50をケーブル引込線用引抜き工具におけるワイヤー30のループ部32で把持して屋内側へ引抜くことにより、エアコン室内機44を壁40から一旦取外すといった作業が不要となって配電作業を効率よく行うことができる。なお、狭小隙間Sに差し込まれるパイプ20が樹脂製であることから、壁40にキズをつけることも少ない。
ループ部32は、パイプ20の二箇所に開けられた挿通孔26にグリップ10を挿通させることで構成されているので、このループ部32を繰り返して絞ることでワイヤー30に局部的な折れ曲がり等が生じるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 グリップ
20 パイプ
30 ワイヤー
32 ループ部
34 操作部
50 通信ケーブルの引込線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップから延びるパイプが自体の弾性によって曲がることができるとともに、このパイプがグリップに対して軸心回りに回転可能であり、パイプに挿通させたワイヤーが、該パイプの先端側から外部に出てループ部を構成し、かつグリップ側から外部に出て操作部を構成し、この操作部を引き締めることでループ部を絞ることができるように構成されているケーブル引込線用引抜き工具。
【請求項2】
請求項1に記載されたケーブル引込線用引抜き工具であって、
ワイヤーのループ部は、パイプの先端側の二箇所に開けられた挿通孔から外部に出ることで構成されているケーブル引込線用引抜き工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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