説明

ケーブル探査装置

【課題】探査対象ケーブルに印加される送信探査信号の信号レベルを高くして探査ケーブルを確実に探査でき、かつ、電磁変換素子のケーブルへの取り付け作業を容易化可能なケーブル探査装置を実現する。
【解決手段】送信機1から送信探査信号15を互いに並列接続された複数の電磁変換素子2a〜2cに出力する。ケーブルトレイ6には複数のケーブル7が敷設され探査対象ケーブル71が電磁変換素子2a〜2cの中空部を通過している。探査対象ケーブル71には3台の電磁変換素子2a〜2cからの探査信号15が誘導されるため、これらが合成(加算)され1台の電磁変換素子に対する探査信号の3倍の探査信号がケーブル71に誘導され伝播される。これにより、送信探査信号の信号レベルを高くして探査ケーブル71を確実に探査でき、かつ、電磁変換素子2a〜2cのケーブル71への取り付け作業が容易化可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や発電所等に敷設されたケーブルのうち、撤去等の対象となるケーブルを探査するケーブル探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の施設内には、区画内の多数の機器からのケーブルが、計画されたケーブル経路に設置される。これらのケーブルは、天井または壁に設置されたサポート材でサポートされたトレイ等内に敷設されている。
【0003】
また、これらのケーブルは、高圧動力用ケーブル、低圧動力用ケーブル、制御用ケーブル、計装用ケーブル(計測用ケーブルとも言う)等の用途毎に分類されている。
【0004】
1つのトレイ内に敷設されているケーブルの本数は、ケーブルの径寸法の関係上、例えば、高圧動力用の場合、数本から十数本であり、低圧動力用の場合、十数本から数十本である。一方、制御用および計装用の場合、ケーブルが数百本程度となる。また、ケーブル1本当たりの長さは、数十mから数百m程度に及んでいる。
【0005】
トレイ内に敷設された多数のケーブルのうちの目的とするケーブルを探査する技術として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1には、環状のクランプを有する電磁変換素子を利用してケーブルに送信探査信号を非接触で印加し、環状のクランプを有する磁電変換素子によりケーブルに流れる送信探査信号によって生じる磁束を検出してケーブルを探査する技術が開示されている。特許文献1に記載された技術では、送信機から出力する送信探査信号は電磁変換素子を利用してケーブルに非接触で印加されるが電磁変換素子は1台である。
【0006】
また、特許文献2には、サーチコイルを用いてケーブルを探査する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−345344号公報
【特許文献2】特開2003−121420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電磁変換素子は、電流注入手段、電流注入プローブとも言うが、所謂変流器であり、変流器の1次と2次の巻数でケーブルに印加される送信探査信号のレベルが決まる。
【0009】
探査対象のケーブルは、プラントにトレイ等内に敷設されている状態であり、特許文献1に記載された技術にあっては、環状のクランプを有する電磁変換素子にケーブルを巻きつけて複数巻きにすることは困難である。このため、電磁変換素子にケーブルを貫通させるだけであり、巻数は1巻きにならざるを得ない。
【0010】
2次側の巻き数を1次側の巻き数より多くすると、送信探査信号のレベルを高くできるが、上記のような制限により、2次側の巻き数は1巻きにならざるを得ず、1次側も1巻きとして電磁変換素子の巻数比を1対1とすることがケーブルへの送信探査信号印加の最大条件となる。
【0011】
しかし、ケーブル1本当たりの長さは、数十mから数百m程度に及ぶために、電磁変換素子の巻数比を1対1としても、数百mのケーブルに対しては送信探査信号の印加位置から離れれば離れるほど信号減衰が大きくなり、送信探査信号を磁電変換素子で検出することが困難になるという問題が生じる。
【0012】
また、特許文献2に記載の技術にあっては、サーチコイルを用いてケーブルを探査するが、この場合も上記と同一の問題がある。
【0013】
本発明の目的は、探査対象ケーブルに印加される送信探査信号の信号レベルを高くして探査ケーブルを確実に探査でき、かつ、電磁変換素子のケーブルへの取り付け作業が容易化可能なケーブル探査装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は次のように構成される。
【0015】
ケーブル探査装置において、探査対象ケーブルを包囲する環状のクランプを有し、互いに並列に接続された複数の電磁変換素子と、送信探査信号を互いに並列に接続された複数の電磁変換素子に供給し、探査対象ケーブルに送信探査信号を伝送させる送信機と、環状のクランプを有し、この環状クランプにより包囲された上記探査対象ケーブルに流れる探査信号によって生じる磁束を検知することにより探査信号を検知する磁電変換素子またはサーチコイルと、磁電変換素子またはサーチコイルにより検知された探査信号を受信探査信号として受信する受信機とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、探査対象ケーブルに印加される送信探査信号の信号レベルを高くして探査ケーブルを確実に探査でき、かつ、電磁変換素子のケーブルへの取り付け作業を容易化可能なケーブル探査装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例であるケーブル探査装置の全体概略構成図である。
【図2】複数のケーブルがケーブルトレイに敷設される状況を示す図である。
【図3】探査対象ケーブルと電磁変換素子との関係を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施例における送信機の概略構成図である。
【図5】本発明の第1の実施例における受信機3の概略構成図である。
【図6】本発明の第1の実施例における送信機及び受信機の動作説明図である。
【図7】本発明の第1の実施例における送信機の増幅器と電磁変換素子とで構成される回路の等価回路を示す図である。
【図8】増幅器の出力インピーダンスがゼロの場合と6.5Ωの場合との2ケースについて探査信号と電磁変換素子の台数との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施例であるケーブル探査装置の全体概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0019】
(第1の実施例)
本発明の第1の実施例は、環状のクランプを有する複数の電磁変換素子と、導電性のケーブルに通電される電流と異なる周波数の電磁信号を送信探査信号として複数の電磁変換素子によりケーブルに印加する送信機と、ケーブルに流れる探査信号によって生じる磁束を検知する環状のクランプを有する磁電変換素子と、この磁電変換素子によりケーブルに流れる探査信号を受信探査信号として検知する受信機とを備えている。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施例であるケーブル探査装置の全体概略構成図である。図1において、送信機1から導電性のケーブルを探査するために送信探査信号15を電磁変換素子2a、2b、2c(電流注入手段、電流注入プローブとも言う)に出力している。
【0021】
この第1の実施例では、複数の電磁変換素子の例として電磁変換素子2a、2b、2cを3台互いに並列に接続している。
【0022】
ケーブルトレイ6には、複数の導電性ケーブル7が敷設されており、複数のケーブル7のうちの探査対象ケーブル71が、電磁変換素子2a、2b、2cの中空部を通過している。
【0023】
上記探査ケーブル71に流れる探査信号によって生じる磁束を検知する環状のクランプ(探査対象ケーブルを包囲するクランプ)を有する磁電変換素子4によって受信探査信号31が検出される。そして、受信探査信号31は受信機3に入力される。受信機3は、受信探査信号31の位相を判定して送信探査信号15と受信探査信号31とが同相である場合に探査対象ケーブル71であると判定する。
【0024】
電磁変換素子2a〜2c及び磁電変換素子4は半割れタイプのクランプ構造となっているので、ケーブル71への着脱が容易である。
【0025】
送信機1から出力される送信探査信号15は、並列接続している3台の電磁変換素子2a、2b、2cに入力される。これにより、各電磁変換素子2a、2b、2cは、印加された送信探査信号15を電磁誘導により探査対象ケーブル71の芯線に非接触で誘導する。
【0026】
探査対象ケーブル71の芯線には、3台の電磁変換素子2a、2b、2cからの探査信号15が誘導されるために、これらが合成(加算)され、1台の電磁変換素子に対する探査信号の3倍の探査信号が、ケーブル71に誘導され、伝播されることになる。
【0027】
図2は、複数のケーブル7がケーブルトレイ6に敷設される状況を示す図であり、ケーブルトレイ6とケーブルトレイ6に敷設された複数のテーブル7の概略断面図である。
【0028】
図2に示すように、ケーブル7は、ケーブルトレイ6内で山積み状態になっている。各ケーブルは、図3に示すように、多芯構造(芯線71a71b71c71d新鮮)になっていることが一般的であり、電磁変換素子2a、2b、2cによって探査対象ケーブル71の芯線(図3では4本の芯線71a、71b、71c、71dを示している)に誘導され、探査信号(1台の電磁変換素子に対して3倍の探査信号)が芯線71a、71b、71c、71dを伝播する。
【0029】
ケーブル長が、数十mから数百m程度に及ぶために、数百mのケーブルに対しては、例えば、探査信号の周波数を数十MHzにすると信号減衰量が多くなり、送信探査信号15がケーブル端部まで伝達しなくなる。このため、多数の電磁変換素子2a、2b、2cを互いに並列に接続して送信機1から送信探査信号15を出力するようにすれば、3倍の探査信号とできるため、送信探査信号15をケーブル端部まで伝達することができる。
【0030】
並列接続する電磁変換素子の数を増加すれば、探査信号を増加させることができるが、多数のケーブルの存在するため、プラント現場での電磁変換素子の取付け作業性の観点から、電磁変換素子の数は、10台以下が現実的である。また、探査信号の周波数は100KHzから10MHzの範囲の周波数が望ましい。
【0031】
図4は、本発明の第1の実施例における送信機1の概略構成図である。図4において、送信機1は、タイミング検出用信号11aを生成するタイミング検出用信号発生回路11と、位相検出用信号12aを生成する位相信号発生回路12と、これら回路11、12から出力される信号を合成して送信探査用信号13aを出力する合成回路13と、合成回路13で作成される送信探査用信号13aを増幅する増幅器14とを備える。増幅器14から電磁変換素子2a、2b、2cに送信探査信号15が出力される。
【0032】
図5は、本発明の第1の実施例における受信機3の概略構成図である。図5において、受信機3は、磁電変換素子4の環状クランプにより包囲された探査対象ケーブルから検出された受信探査信号(ケーブルを伝播する探査信号を検出した信号)31に対して所定の帯域の周波数を通過させるフィルタ32と、増幅器33と、受信探査信号31の位相信号の始まりを検出するタイミング検出回路34と、この検出回路34からタイミング信号35が供給されると共に位相信号を検出する位相判定回路36と、位相比較回路37と、表示器38とを備える。
【0033】
図6は、送信機1及び受信機3の動作説明図である。図6の(a)に示すように、送信機1からは、タイミング検出用信号11aと位相検出用信号12aとからなる送信探査用信号15が探査対象ケーブル71に電磁変換素子2a、2b、2cを介して印加される。この送信探査用信号15は探査対象ケーブル71の芯線71a〜71dに伝播される。
【0034】
探査対象ケーブル71にシールド線がある場合にはシールド線にも伝播される。探査対象ケーブル71に流れる探査信号15は、磁電変換素子4によって受信探査信号31として非接触で検出される。検出された受信探査用信号31は、フィルタ32、増幅器33を介してタイミング検出回路34、位相判定回路36に入力される。
【0035】
タイミング検出回路34は、受信探査信号31の構成信号であるタイミング検出用信号11aを受信すると、タイミング検出用信号11aの最後を検出して図6(b)に示すようなタイミング信号35を出力する。
【0036】
タイミング信号35の相関値のピークが得られるが、このピーク時点が位相検出用信号の始まりになる。位相判定回路36はタイミング信号35(相関値のピーク時点)に基づいて、位相検出用信号12aの位相情報を検出する。
【0037】
検出された位相情報は、位相判定回路37に入力され、位相検出用信号12aと同相であれば、探査対象ケーブル71からの受信探査信号31であると判定し、逆位相(位相が180°ずれている)であれば隣接する他のケーブルであると判定する。この判定結果は表示器38によって表示される。
【0038】
タイミング検出用信号11aは、ランダムな時系列信号で構成されており、例えば、正規分布のランダムノイズが適当である。これ以外にもM系列でも使用できる。
【0039】
位相検出回路36では、位相検出用信号12aから位相情報を取得するものであり、具体的には、sin(2πft+φ)で示される位相φの値を取得する。ここで、fは位相検出用信号12aの周波数である。この位相検出情報を位相判定回路37に出力する。
【0040】
位相検出用信号12aだけで位相判定しようとすると、タイミングの基準が無いため、位相が反転しているか否かの判定ができない。従来の技術ではタイミングの情報を含む信号について別途ケーブルを用いて伝送する必要があった。
【0041】
本発明によれば、タイミング検出用信号11aを位相検出信号12aとともに送信探査信号15として送出するため、別途ケーブルを用いることが不要となる。
【0042】
これは、プラント等の新たなケーブルの引き回しや部屋間、建屋間に跨ってケーブルを引き回すことが困難な場合に非常に有効であり、これまでケーブルの探査が困難であった場所でも可能となる。
【0043】
次に、3台の電磁変換素子2a、2b、2cによって探査対象ケーブル71に誘導される探査信号の値について、図7及び図8を用いて説明する。
【0044】
図7は、送信機1の増幅器14と、電磁変換素子2a、2b、2cとで構成される回路の等価回路を示している。図7において、増幅器14の出力インピーダンスZoとして表し、電磁変換素子2a、2b、2cの入力インピーダンスをそれぞれZia、Zib、Zicとして表している。電磁変換素子2a、2b、2cの入力インピーダンスは、図3に示したような探査対象ケーブル71を接続した状態のインピーダンスである。
【0045】
増幅器14から出力される送信探査用信号15は、増幅器14の出力インピーダンスZoを介して、互いに並列接続される電磁変換素子2a、2b、2cに入力される、
電磁変換素子2a、2b、2cの入力インピーダンスが互いに等しい場合には、出力インピーダンスZoを流れる電流の1/3がそれぞれの電磁変換素子2a、2b、2cに流れる。
【0046】
この電磁変換素子2a、2b、2cに流れる電流値によって、探査対象ケーブル71に誘導される探査信号のレベルが決まる。
【0047】
複数の電磁変換素子2a、2b、2cが、探査対象ケーブル71に比較的隣接して取付けられるので、探査信号の周波数が100KHzから10MHzであれば、探査対象ケーブル71に誘導される探査信号は各電磁変換素子2a、2b、2cによって誘導される探査信号の加算になる。つまり、位相ずれは無視できるほど小さい。
【0048】
一般に、増幅器の出力インピーダンスは抵抗成分と配線等によるインダクタンス成分があり、探査信号の周波数100KHzから10MHzに対して、インダクタンス成分であるリアクタンスは無視できない。例えば、市販の増幅器では周波数2MHzにおいては、抵抗1.5Ω、リアクタンス6.3Ω(インダクタンス0.5μHのインピーダンス)であり、インピーダンスは6.5Ωとなる。
【0049】
この周波数での同一の電磁変換素子2a、2b、2cの入力インピーダンスを実験で測定した結果、周波数2MHzで44Ωであった。
【0050】
これらの結果を基に、探査対象ケーブル71に誘導される探査信号15と、電磁変換素子の台数との関係を図8に示す。なお、増幅器14の出力インピーダンスを送信機1の出力インピーダンスと扱っても良い。
【0051】
図8は、増幅器14の出力インピーダンスがゼロの場合と、上述したように6.5Ωの場合との2ケースについて、探査対象ケーブル71に誘導される探査信号と電磁変換素子の台数の関係を示すグラフである。なお、図8の横軸は、並列接続される電磁変換素子の個数を示し、図8の縦軸は、探査信号の信号レベル(相対値)を示す。
【0052】
また、各電磁変換素子の入力インピーダンスは周波数2MHzでそれぞれ44Ωとしている。したがって、合成インピーダンスは、電磁変換素子が1台の場合には44Ω、2並列の場合には22Ω、3並列の場合には、約15Ωになる。
【0053】
図8に示したグラフから、電磁変換素子の並列台数が増加するに従って、探査対象ケーブル71に誘導される探査信号のレベルが増加することがわかる。
【0054】
増幅器14の出力インピーダンスがゼロの場合には、電磁変換素子の並列台数に比例して探査対象ケーブル71に誘導される探査信号のレベルが増加する。増幅器14の出力インピーダンスが6.5Ωの場合の探査信号のレベル変化が示すように、増幅器14の出力インピーダンスが高くなるに従って、電磁変換素子の並列台数の増加に伴う探査対象ケーブル71に誘導される探査信号のレベルを高くする効果は少なくなる。
【0055】
極端な例として電磁変換素子の入力インピーダンスをゼロとすると、電磁変換素子の並列台数に関係なく増幅器14の出力インピーダンスによって電流が決まる。この結果、電磁変換素子の並列台数を増やす効果がない。
【0056】
このため、電磁変換素子の入力インピーダンスは、増幅器14の出力インピーダンスより高いことが有効となる。電磁変換素子の巻数比は前述したように1対1であり、磁気コアの透磁率、実効磁路長により、電磁変換素子の入力インピーダンスは一般的に低い。
【0057】
増幅器14の出力インピーダンスを電磁変換素子の入力インピーダンスより低くして、電磁変換素子の入力インピーダンスが増幅器14の出力インピーダンスより高くすることが有効である。この結果、探査対象ケーブル71に印加する探査信号のレベルを高くすることができるようになり、探査対象ケーブルを確実に探索することが可能になる。
【0058】
図2に示したように、ケーブルトレイ6には複数のケーブル7が山積み状態になって敷設されている。このため、下側のケーブル7に、大型の電磁変換素子を取り付ける場合には、対象となるケーブル以外の多数のケーブルをリフトして、対象となるケーブルに取り付けなければならず、作業性が大変悪い。
【0059】
これに対して、複数の小型の電磁変換素子を同一のケーブルに取付ける場合は、大型の電磁変換素子を下側のケーブルに取り付ける場合に比較して、リフトしなければならないケーブルの数も少なく、作業性も良好である。
【0060】
つまり、本発明の第1の実施例によれば、電磁変換素子を互いに並列接続する構成となっているので、大型の電磁変換素子を1台取り付ける場合と同等のレベルの探査信号をケーブルに誘導させる場合は、電磁変換素子を小型化することができる。その結果、トレイ内に複数のケーブルが敷設されている場合、対象のケーブルへの電磁変換素子の取り付け作業が容易となり、ケーブル探査作業の効率が向上する。また、取付け作業時の安全性も向上する。
【0061】
なお、本発明とは異なり、電磁変換素子を1個使用する実際の装置例では、約150m長のケーブルの探索が可能な例として、直径が約13cm、内径が約3.5cm、幅が約7cm必要であった。このため、多数のケーブルが敷設されたトレイ内の中に存在する対象ケーブルに電磁変換素子を取り付ける作業は、困難な作業である。
【0062】
したがって、複数の電磁変換素子を互いに並列に接続し、1つの電磁変換素子の外径寸法を小型化可能な本発明の実施例によれば、多数のケーブルが敷設されたトレイ内の中に存在する対象ケーブルに電磁変換素子を取り付ける作業を容易化可能であることが理解可能である。
【0063】
なお、受信側の磁電変換素子4は1個の例を示したが、受信側においても、送信側と同様に、互いに並列接続された複数の磁電素子を使用することもできる。複数の磁電素子を用いる場合、磁電変換素子を小型化することができ、対象ケーブルに磁電変換素子を取り付ける作業を容易化することが可能である。
【0064】
(第2の実施例)
本発明の第2の実施例は、環状のクランプを有する複数の電磁変換素子と、ケーブルに通電される電流と異なる周波数の電磁信号を送信探査信号として複数の電磁変換素子によりケーブルに印加する送信機と、ケーブルに流れる探査信号によって生じる磁束を検知するサーチコイルと、このサーチコイルにより受信探査信号として検知する受信機とを備えている。
【0065】
上述した本発明の第1の実施例は、探査対象ケーブル自体を特定するケーブル探査装置の場合について説明したが、探査対象ケーブルのルートをケーブルトレイ単位で特定する場合についても同様に本発明を適用することができる。
【0066】
つまり、本発明の第2の実施例は、探査対象のケーブルが、遠隔する位置のケーブルトレイ内に存在するか否かをケーブルトレイ単位で検出することが可能な例である。
【0067】
探査対象ケーブルのケーブルトレイ単位でルートを特定する場合には、受信側で、磁電変換素子4の代わりにサーチコイルを利用することで実現できる。
【0068】
図9は、本発明の第2の実施例によるケーブル探査装置の構成説明図である。図9において、送信機1からケーブルを探査するために送信探査信号15を電磁変換素子2a、2b、2cに出力する装置構成は、図1に示した第1の実施例と同一である。
【0069】
本発明の第1の実施例と第2の実施例との相違点は、第2の実施例においては、ではなく、サーチコイル8を使用している点である。このサーチコイル8は、磁電変換素子のように環状のクランプではなく、ケーブルをクランプする必要な無い。サーチコイル8は、例えばループアンテナやロッドアンテナ、バーアンテナなどで構成することが出来る。
【0070】
ケーブルトレイ内の探査対象ケーブルの近傍にサーチコイル8を位置させると、送信探査信号15と同相の受信探査信号31が得られる。一方、探索対象ケーブルが存在しないケーブルトレイに対しては、サーチコイル8によって検出される受信探査信号31は誘導により送信探査信号15と逆位相になるため、このケーブルトレイのルートには探索対象ケーブルが存在しないと判定できる。
【0071】
このようにして得られる判定結果は、受信機3の表示器38に表示される。
【0072】
本発明の第2の実施例においても、探査対象ケーブルに印加する探査信号のレベルを高くすることができるようになり、探査対象ケーブルを確実に探索することが可能になる。
【0073】
また、送信側では、トレイ内の中に存在する対象ケーブルに電磁変換素子を取り付ける作業を容易化することが可能である。
【0074】
さらに、受信機側について、第2の実施例におけるサーチコイルを用いて、探探索対象ケーブル近辺を検出し、その後、探索対象ケーブルを、第1の実施例における磁電変換素子を用いて、特定するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1・・・送信機、 2a、2b、2c・・・電磁変換素子、3・・・受信機、4・・・磁電変換素子、6・・・ケーブルトレイ、7・・・ケーブル、8・・・サーチコイル、11・・・タイミオング検出用信号発生回路、12・・・位相信号発生回路、13・・・合成回路、14、33・・・増幅器、15・・・送信探査信号、31・・・受信探査信号、32・・・フィルタ、34・・・タイミング検出回路、36・・・位相検出回路、37・・・位相判定回路、38・・・表示器、71・・・探査対象ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の導電性のケーブルから対象ケーブルを探索するケーブル探査装置において、
探査対象ケーブルを包囲する環状のクランプを有し、互いに並列に接続された複数の電磁変換素子と、
探査対象ケーブルを探査するための送信探査信号を、上記互いに並列に接続された複数の電磁変換素子に供給し、上記複数の電磁変換素子により包囲された探査対象ケーブルに送信探査信号を伝送させる送信機と、
環状のクランプを有し、この環状クランプにより包囲された上記探査対象ケーブルに流れる探査信号によって生じる磁束を検知することにより探査信号を検知する磁電変換素子と、
上記磁電変換素子により検知された探査信号を受信探査信号として受信する受信機と、
を備えることを特徴とするケーブル探査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル探査装置において、
上記互いに並列に接続された複数の電磁変換素子の入力インピーダンスが、上記送信機の出力インピーダンスより高いことを特徴とするケーブル探査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のケーブル探査装置において、
上記受信機は、上記受信探査信号の位相を判定し、上記送信探査信号と上記受信探査信号とが同相であるか否かを判定する位相判定回路と、この位相判定回路の判定結果を表示する表示器とを有することを特徴とするケーブル探査装置。
【請求項4】
許請項1に記載のケーブル探査装置において、探査対象ケーブルにより伝送される送信探査信号の周波数は、100KHzから10MHzの範囲の周波数であることを特徴とするケーブル探査装置。
【請求項5】
多数の導電性のケーブルから対象ケーブルを探索するケーブル探査装置において、
探査対象ケーブルを包囲する環状のクランプを有し、互いに並列に接続された複数の電磁変換素子と、
探査対象ケーブルを探査するための送信探査信号を、上記互いに並列に接続された複数の電磁変換素子に供給し、上記複数の電磁変換素子により包囲された探査対象ケーブルに送信探査信号を伝送させる送信機と、
上記探索対象ケーブルに流れる探査信号によって生じる磁束を検知することにより探査信号を検知するサーチコイルと、
上記サーチコイルにより検知された探査信号を受信探査信号として受信する受信機と、
を備えることを特徴とするケーブル探査装置。
【請求項6】
請求項5に記載のケーブル探査装置において、
上記互いに並列に接続された複数の電磁変換素子の入力インピーダンスが、上記送信機の出力インピーダンスより高いことを特徴とするケーブル探査装置。
【請求項7】
請求項5に記載のケーブル探査装置において、探査対象ケーブルにより伝送される送信探査信号の周波数は、100KHzから10MHzの範囲の周波数であることを特徴とするケーブル探査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−83305(P2012−83305A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231585(P2010−231585)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】