説明

ケーブル接続部及びそれに用いる熱収縮性チューブ

【課題】ケーブル接続部の、使用材料を少なくし、施工時間を短くし、施工にスキルが要求されないようにする。
【解決手段】ケーブルシース12から接続部保護管20にかけて、熱収縮層52の内側に接着層54を有する熱収縮性チューブ50を被せ、この熱収縮性チューブ50を、ケーブルシース12及び接続部保護管20上に熱収縮させると共に、ケーブルシース12及び接続部保護管20にそれぞれ接着する。熱収縮性チューブ50は、ケーブルシース12が経時的に長手方向に収縮しようとする際の収縮力で破断することのない引張強度と、前記収縮力でケーブルシース12及び接続部保護管20との接着が剥離することのない接着強度を有している。熱収縮性チューブ50の両端に遮水用の粘着水密シート巻き層56と防水用のテープ巻き層58を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックシースを有する電力ケーブル等の接続部と、それに用いる熱収縮性チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルの接続部には、絶縁性、防水性、防護性(機械的なもの)に加えて、シース拘束性(ケーブルシースが経時的に長手方向に収縮するのを阻止する)、遮水性(プラスチックを通過しての水分の浸入を阻止する)も要求される。このような要求性能を満たすため、従来の電力ケーブル接続部は例えば図5のような構成となっている。
【0003】
図5において、10は電力ケーブル、12はケーブルシース、14はケーブル外部半導電層、16はケーブル絶縁層、18は導体接続部、19は接続部補強絶縁体、20は接続部保護管(銅管等)、22は防食層、24は接地線、26はシース拘束用のシース固定層、28は接地線接続部保護用のテープ巻き層、30はシース拘束用のエポキシ含浸ガラステープ巻き層、32はガラステープ巻き層押さえ用の粘着PVC(ポリ塩化ビニル)テープ巻き層、34はシース拘束用のパテテープ巻き層、36は絶縁用のテープ巻き層、38は遮水用の粘着水密シート巻き層、40は遮水用熱収縮性チューブ、42は遮水用の粘着水密シート巻き層、44は防水及び防護用のテープ巻き層、46は防護用の粘着PVCテープ巻き層である。
【0004】
【特許文献1】特開平10−66240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電力ケーブル接続部は、シース拘束のために、シース固定層26、エポキシ含浸ガラステープ巻き層30、パテテープ巻き層34などが設けられており、構造が複雑であった。またテープやシート等を、指定された細かい寸法で巻き上げるため、スキルが要求されるだけでなく、施工に長い時間がかかる。その上、接着剤や2液混合エポキシを使用することから、その硬化反応にも時間がかかる。
【0006】
本発明の目的は、構造が簡素で、施工時間が短くて済み、施工にスキルが要求されないケーブル接続部と、それに用いる熱収縮性チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るケーブル接続部は、ケーブルシースから接続部保護管にかけて、熱収縮層の内側に接着層を有する熱収縮性チューブを被せ、この熱収縮性チューブを、ケーブルシース及び接続部保護管上に熱収縮させると共に、ケーブルシース及び接続部保護管にそれぞれ接着させてなるケーブル接続部であって、前記熱収縮性チューブは、ケーブルシースが経時的に長手方向に収縮しようとする際の収縮力で破断することのない引張強度と、前記収縮力でケーブルシース及び接続部保護管との接着が剥離することのない接着強度を有していることを特徴とするものである。
【0008】
また本発明において、前記熱収縮性チューブは、熱収縮層内に遮水層を有しており、ケーブルシースの経時的な長手方向への収縮を、前記遮水層が破断しない範囲に抑えられるだけの引張強度を有しているものであることが好ましい。
【0009】
また本発明に係るケーブル接続部用熱収縮性チューブは、熱収縮層の内側に接着層を有する熱収縮性チューブであって、前記接着層は、加熱されることにより接着力を発揮するシートを巻回して形成したものからなり、前記熱収縮層は、熱収縮性シートを収縮方向が周方向を向くように巻回して形成したものからなることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明の熱収縮性チューブにおける熱収縮層は、巻回された熱収縮性シートの間に金属箔を巻き込んで遮水層を設けたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケーブルシースの長手方向収縮力に耐えうる引張強度と接着強度を有する熱収縮性チューブによってシースを拘束するようにしたので、接続部の構造が簡素になり、使用材料の種類を大幅に減らすことができ、材料費を安くできると共に、施工が簡単になるため、施工時間を大幅に短縮でき、施工にスキルが必要なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明に係るケーブル接続部の一実施形態を示す。図1において、図5と同一部分には同一符号を付してある。すなわち、10は電力ケーブル、12はケーブルシース、14はケーブル外部半導電層、16はケーブル絶縁層、18は導体接続部、19は接続部補強絶縁体、20は接続部保護管、22は防食層、24は接地線である。
【0013】
この電力ケーブル接続部の特徴は、肉厚を厚くして強度を高めた熱収縮層52と、接着強度の高い接着層54とを有する熱収縮性チューブ50を使用したことにある。この熱収縮性チューブ50を、ケーブルシース12から接続部保護管20にかけての外周に被せ、ケーブルシース12及び接続部保護管20上に熱収縮させると共に、ケーブルシース12及び接続部保護管20にそれぞれ接着させてある。
【0014】
熱収縮性チューブ50は、熱収縮層52の厚さを十分厚くして、ケーブルシース12が経時的に長手方向に収縮(シュリンクバック)しようとしても、その収縮を抑制し、その収縮力で破断することのない引張強度を持たせてある。熱収縮層52はシースが長手方向に引っ張られて破断しても、破断しない強度を有している。熱収縮層52はケーブルシース12と同種の材料で形成されていることが望ましい。接着層54は前記収縮力でケーブルシース12及び接続部保護管20との接着が剥離することのない接着強度を有している。
【0015】
熱収縮させた熱収縮性チューブ50の両端部には、当該熱収縮性チューブ50上からケーブルシース12上及び接続部保護管20上にかけて、遮水用の粘着水密シート巻き層56と、防水用のテープ巻き層58が設けられている。
【0016】
この電力ケーブル接続部は、以上のような構成であるから、熱収縮性チューブ50と、粘着水密シートと、防水用テープの3部品で、ケーブルシース拘束、防水、防護、遮水、絶縁などの要求性能を満たすことができる。このため、材料費を安くできると共に、施工が簡単になるため、施工時間を大幅に短縮でき、スキルの低い作業者でも施工できる、という利点がある。
【0017】
図2は、上記の電力ケーブル接続部に用いる熱収縮性チューブ50の一実施形態を示す。この熱収縮性チューブ50の接着層54は、加熱されることにより接着力を発揮する樹脂シートを所要の厚さになるまで巻回することにより形成される。接着層54用の樹脂シートとしては、例えばエポキシ基を導入して接着性をもたせたポリオレフィン系ポリマーからなる厚さ0.05〜0.1mm程度のシートを使用することができる。また熱収縮層52は、一方向に熱収縮する熱収縮性シートを、その収縮方向を周方向に向けて所要の厚さになるまで巻回することにより形成される。熱収縮層52用の熱収縮性シートとしては、二軸延伸されたものや一軸延伸されたものを使用できるが、二軸延伸されたものの方が、チューブ50の熱収縮による縮径方向と交わるケーブルシース12の収縮方向の破断強度を高めることができる利点がある。熱収縮層52の厚さは、収縮後の熱収縮チューブのシース上の断面積にチューブ材料の引張強度を乗じた値が、シースの断面積にシース材料の引張強度を乗じた値と同等以上になるように設定することが好ましい。
【0018】
図3は本発明に係るケーブル接続部の他の実施形態を示す。この接続部が図1の接続部と異なる点は、熱収縮性チューブ50の熱収縮層52内に金属箔からなる遮水層60が設けられていることである。この場合の熱収縮性チューブ50は、ケーブルシース12の経時的な長手方向の収縮(熱収縮性チューブの伸び)を、前記遮水層60が破断しない範囲に抑えられるだけの引張強度を有している。上記以外の構成は図1の接続部と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
上記のように、熱収縮性チューブ50の熱収縮層52内に金属箔からなる遮水層60を設けると、熱収縮性チューブ50を肉厚方向に通過する水分を完全に遮断できるため、接続部内に水分が浸入するのを、より確実に防止することができる。
【0020】
図4は、図3の電力ケーブル接続部に用いる熱収縮性チューブ50の一実施形態を示す。この熱収縮性チューブ50の接着層54は、図2に示した熱収縮性チューブ50の接着層54と同じである。熱収縮層52は、図3の熱収縮52と同様に熱収縮性シートを所要の厚さに巻回することにより形成されるが、巻回の途中で熱収縮性シートの間に金属箔を1周分巻き込んで遮水層60を設けたものである。金属箔としては例えばアルミ箔や鉛箔 を用いることが好ましい。金属箔の厚さは熱収縮層52の熱収縮を妨げない程度に薄いことが必要であり、例えば15μm程度が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るケーブル接続部の一実施形態を示す要部の縦断面図。
【図2】図1の接続部に使用される熱収縮性チューブを示す、(A)は正面図、(B)は一部切開側面図。
【図3】本発明に係るケーブル接続部の他の実施形態を示す要部の縦断面図。
【図4】図3の接続部に使用される熱収縮性チューブを示す、(A)は正面図、(B)は一部切開側面図。
【図5】従来のケーブル接続部を示す要部の縦断面図。
【符号の説明】
【0022】
10:電力ケーブル
12:ケーブルシース
14:ケーブル外部半導電層
16:ケーブル絶縁層
20:接続部保護管
24:接地線
50:熱収縮性チューブ
52:熱収縮層
54:接着層
56:粘着水密シート巻き層
58:防水用テープ巻き層
60:金属箔からなる遮水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルシースから接続部保護管にかけて、熱収縮層の内側に接着層を有する熱収縮性チューブを被せ、この熱収縮性チューブを、ケーブルシース及び接続部保護管上に熱収縮させると共に、ケーブルシース及び接続部保護管にそれぞれ接着させてなるケーブル接続部であって、
前記熱収縮性チューブは、ケーブルシースが経時的に長手方向に収縮しようとする際の収縮力で破断することのない引張強度と、前記収縮力でケーブルシース及び接続部保護管との接着が剥離することのない接着強度を有していることを特徴とするケーブル接続部。
【請求項2】
熱収縮性チューブは、熱収縮層内に遮水層を有しており、ケーブルシースの経時的な長手方向への収縮を、前記遮水層が破断しない範囲に抑えられるだけの引張強度を有していることを特徴とする請求項1記載のケーブル接続部。
【請求項3】
熱収縮層の内側に接着層を有する熱収縮性チューブであって、前記接着層は、加熱されることにより接着力を発揮するシートを巻回して形成したものからなり、前記熱収縮層は、熱収縮性シートを収縮方向が周方向を向くように巻回して形成したものからなることを特徴とするケーブル接続部用熱収縮性チューブ。
【請求項4】
熱収縮層には、巻回された熱収縮性シートの間に金属箔を巻き込んで遮水層が設けられていることを特徴とする請求項3記載のケーブル接続部用熱収縮性チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−174773(P2007−174773A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367292(P2005−367292)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】