説明

ケーブル間隔保持具

【課題】3本のケーブルが水平方向のみならず上下方向に配された場合であっても取付取外作業が容易で、かつ簡単な構成で低コストで確実な間隔保持を実現できるケーブル間隔保持具を提供する。
【解決手段】互いに平行な面内の一方の面内に位置する左フック7と他方の面内に位置して左フック7とは逆の位置に開放部24が形成された右フック7と、左右のフック7を基端部において連結し、間隔保持本体3に軸心まわりに回転可能に支持される軸体6とを有する中央位置規制部5が、間隔保持本体3の中央に設けられたケーブル間隔保持具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほぼ平行に配された3本の電線等のケーブルを、所定間隔に保つケーブル間隔保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空配電線からバイパス線等を引き出す場合や電線の先端処理を行う場合、予め行う作業として、例えば、ほぼ平行に配された3本の電線を所定間隔に保った状態で保持させる作業があった。従来より、この作業にはケーブル間隔保持具が用いられていた。
【0003】
従来の電線間隔保持具(ケーブル間隔保持具)の一例として、図6に示すように、棒状の間隔保持本体30と、この間隔保持本体30の両端に設けられた両側の電線A1、A2を保持するクランプ部31と、前記間隔保持本体30の中央に設けられた中央の電線を位置規制する中央位置規制部32とを備えたものであって、前記中央位置規制部32は、中央の電線A3を収納する電線保持凹部33と、この電線保持凹部33の開口を開閉自在となるように開口周辺に軸支された係合片34と、この係合片34に一体に形成されたウエイトリング35とから構成されていた。なお図6に示す36はストッパである。中央位置規制部32における通常時は、ウエイトリング35の自重により係合片34がストッパ36に当接して電線保持凹部33を閉状態としている。そして各電線を所定間隔に保持する場合は、先ず両端の電線A1、A2をクランプ部31により保持させ、次いで中央の電線A3を中央位置規制部32により保持させる。中央位置規制部32では、係合片34を電線A3によりウエイトリング35の自重に抗して押し下げ、電線A3を電線保持凹部33に収納させる。すると係合片34が電線A3から離れ、ウエイトリング35の自重により係合片34が再び電線保持凹部33を閉状態とすることによって、中央位置規制部32は電線を位置規制していた。
【0004】
また、従来のケーブル間隔保持具の他の例として、ケーブルを上下1対の支持体に挟み込むことにより3本のケーブルを所定間隔に保持するものが知られている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2687259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の図6に示す電線間隔保持具では、3本の電線が鉛直方向に配された場合に使用すると、重力がウエイトリングに作用しにくいことから、この場合の使用が困難であるという問題があった。また、特許文献1に記載のケーブル間隔保持具では、部品点数が多くコスト高で、かつ取付取外作業が困難という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、電線が鉛直方向に配された場合であっても取付取外作業が容易で、かつ簡単な構成で低コストで実現できるケーブル間隔保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、ほぼ平行に配された3本のケーブルを所定間隔に保つケーブル間隔保持具において、棒状の間隔保持本体と、前記間隔保持本体の両側に設けられて両側のケーブルを保持する左右のクランプ部と、前記間隔保持本体の中央に設けられて中央のケーブルを位置規制する中央位置規制部とを備え、前記中央位置規制部は、互いに平行な面内の一方の面内に位置する左フックと他方の面内に位置して左フックとは逆の位置に開放部が形成された右フックと、左右のフックを基端部において連結し、間隔保持本体に軸心まわりに回転可能に支持される軸体とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ほぼ平行に配された3本のケーブルの内両側の2本のケーブルは、左右のクランプ部によって保持される。そして、中央位置規制部の軸体を、左右のフックが位置する前記互いに平行な面が、中央のケーブルと平行となる回転位置にセットすれば、中央のケーブルを左右のフックに挟まれる空間内に容易に導くことができる。次いで、前記軸体を左右のフックが前記中央のケーブルに干渉しない方向に90°回転させると、中央のケーブルは、左右のフック内にそれぞれの開放部を通じて導かれ、左右のフックによって、上下方向および左右方向の位置が規制される。この結果、3本のケーブルの間隔保持が確実になされる。前記軸体を逆方向に90°回転させることにより、中央のケーブルの位置規制を解除することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、3本のケーブルが水平方向に配された場合のみならず、鉛直方向に配された場合であっても確実にこれらの間隔を保持することができ、その取付取外作業が容易で、かつ簡単な構成で低コストで実現できるケーブル間隔保持具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本実施形態のケーブル間隔保持具は、図1、図2に示すように、ほぼ平行に配された3本の電線2を、所定間隔に保つ電線間隔保持具1に係るものであって、棒状の間隔保持本体3と、前記間隔保持本体3の両端に設けられた両側の電線2を保持する左右のクランプ部4と、前記間隔保持本体3の中央に設けられた中央の電線2を位置規制する中央位置規制部5とを備え、前記中央位置規制部5は、前記間隔保持本体3に軸心まわりに回転可能に支持される軸体6と、前記軸体6に固定された左右1対のフック7とから構成されている。
【0012】
前記間隔保持本体3は、3本のパイプおよび内蔵されたターンバックル機構から構成され、周知のようにその長さを伸縮可能に調整でき、かつその表面に絶縁処理が施されている。またその両端には前記クランプ部4がビスによって固定されている。さらに中央には、図3、図4に詳細に示すように、中央位置規制部5が取付部材9を介して固定されている。取付部材9には中央位置規制部5の軸体6を回転可能に支持するための挿入孔8が設けられており、この挿入孔8は、間隔保持本体3に対して垂直方向に穿孔されている。
【0013】
前記クランプ部4は、図5に示すように、間隔保持本体3に取り付けられるコ字状のクランプ本体10と、これに螺合して電線を挟み込む挟持体11とから構成されている。前記クランプ本体10は、間隔保持本体3にビスにより固定される固定部12と、電線2を保持する保持部13とを有している。保持部13は上側には電線2を収容するための収容凹部14が形成されており、下側には挟持体11のネジ軸16を螺合させる螺孔15が形成されている。前記挟持体11は、ネジ軸16と、その上端に相対回転自在に取り付けられた電線受け部17と、ネジ部16の下端に固定された操作用リング18を有している。前記電線受け部17は、上下可能かつ回転不可の状態でクランプ本体10に案内され、かつ確実に電線を受けるためにV字溝19が形成されている。そしてクランプ部4は、操作用リング18を回動させると、ネジ軸16と螺孔15により電線受け部17が上下動し、電線受け部17と収容凹部14の間に電線2を挟持して保持する。
【0014】
前記中央位置規制部5の軸体6は、図3、図4に詳細に示すように、上端に左右1対のフック7、下端に回転操作用リング20が固定された円柱体21であって、取付部材9の挿入孔8内に任意回転位置に維持されるように軸支されている。
【0015】
左右1対のフック7は、それぞれ互いに平行な面内の一方の面内、および他方の面内に位置するC形状に形成され、左フック7の開放部24と右フック7の開放部24とは逆方向に開放するように形成されている。そして左右のフック7の基部は、前記軸体6の上端部から前記平行な面に直角な方向に延びる延長部22によって連結されている。左右のフック7間の間隔は中央の電線2が挿通されるために必要な間隔に設定され、また左右のフック7の各開放部24の高さ間隔も、軸体6を回転させて左右のフック7内に中央の電線2を導く際に支障とならない間隔に設定されている。
【0016】
次に、本実施形態の電線間隔保持具1の動作を説明する。
【0017】
先ず、ほぼ平行に配された3本の電線2の内、両側の電線2をクランプ部4により保持させる。クランプ部4による保持は、電線2をクランプ本体10の挟持体11に形成された収容凹部14に収容させ、操作用リング18を回動させることにより電線受け部17を上昇させ、挟持させる。
【0018】
次に、中央の電線2を中央位置規制部5により位置規制させる。その際、先ず軸体6を、左右のフック7が位置する前記互いに平行な面が、中央の電線2と平行となる回転位置にセットしておき、中央の電線2を左右のフック7に挟まれる空間内に導く。次いで前記回転操作用リング20を把持して、前記軸体6を左右のフック7が中央の電線2に干渉しない方向に90°回転させる。これにより図2に示すように、中央の電線2は、左右のフック7内にそれぞれの開放部24を通じて導かれ、左右のフック7のそれぞれの上下辺部により上下方向の位置が規制され、左右のフック7のそれぞれの側辺部により左右方向の位置が規制される。この結果3本の電線2の間隔保持が確実になされることになる。
【0019】
なお、電線2を電線間隔保持具1から取り外す場合は、上記説明した手順の逆手順により行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、電線工事等に適用できるもので、産業上の利用性を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る電線間隔保持具(ケーブル間隔保持具)を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る電線間隔保持具の使用例を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る電線間隔保持具の中央位置規制部を拡大した斜視図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】本実施形態に係る電線間隔保持具のクランプ部を拡大した斜視図である。
【図6】従来例の電線間隔保持具を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 電線間隔保持具(ケーブル間隔保持具)
2 電線(ケーブル)
3 間隔保持本体
4 クランプ部
5 中央位置規制部
6 軸体
7 フック
24 開放部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ平行に配された3本のケーブルを所定間隔に保つケーブル間隔保持具において、
棒状の間隔保持本体と、前記間隔保持本体の両側に設けられて両側のケーブルを保持する左右のクランプ部と、前記間隔保持本体の中央に設けられて中央のケーブルを位置規制する中央位置規制部とを備え、
前記中央位置規制部は、
互いに平行な面内の一方の面内に位置する左フックと他方の面内に位置して左フックとは逆の位置に開放部が形成された右フックと、
左右のフックを基端部において連結し、間隔保持本体に軸心まわりに回転可能に支持される軸体とを有する
ことを特徴とするケーブル間隔保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−202288(P2007−202288A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17336(P2006−17336)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000242644)北陸電力株式会社 (112)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】