説明

ケーブル

【課題】ケーブルの強度及び導電率を確保しつつ細径化を図ることができるケーブルを提供する。
【解決手段】抗張力線2と、絶縁体5で被覆され抗張力線2の外周に巻き回される複数の導体3と、を備えるケーブル1において、導体3は、抗張力線2の軸に垂直な断面形状において、抗張力線2の周方向に沿った長さが、抗張力線2の径方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗張力性に優れたケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
抗張力に優れた繊維を芯材に用いて引張強さを高めた電線ケーブルが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。ケーブルの構成としては、アラミド繊維などの抗張力体を芯材として中心に配置し、その外周に絶縁被覆された導体を巻き付け、それらをシースで覆ったものが知られている。
【0003】
特に、断面積の大きさに制約がある細径のケーブル(例えば、ケーブル最外径が0.55mm〜1.00mm)では、強度や柔軟性を確保する観点から、この構成を採用する場合が多い。図3及び図4を参照して、従来のケーブルの構成について説明する。図3は、従来例に係るケーブルの模式的断面図である。図4は、従来例に係るケーブルの構成を説明する模式図である。
【0004】
図3に示すように、ケーブル101は、抗張力に優れた繊維で構成された抗張力線102を芯材とし、その外周面に絶縁体105により被覆された複数の導体103が螺旋状に巻き付けられ、その外側をシース104によって覆われている。導体103としては、複数の導線を撚り合わせて一本の導体とした、断面円形のいわゆる丸型導体が用いられる。このような導体103を複数並列に並べて抗張力線102の外周に巻き付けることにより、小径のケーブルにおいて抗張力と柔軟性(屈曲性)に優れたものとすることができる。
【0005】
しかしながら、このような断面構成のケーブルにおいて更なる細径化を図る場合には次のような問題があった。すなわち、ケーブルを細径化するためには抗張力線102や導体103を細くする必要があるが、ケーブルの強度を担保する観点からは、抗張力線102を細くするには限界がある。一方、導体103を細くすると、導体断面積の減少により、電気抵抗が増大してしまい、やはり細くするには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−270207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ケーブルの強度及び伝送性能を確保しつつ細径化を図ることができるケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明におけるケーブルは、
抗張力線と、
絶縁体で被覆され前記抗張力線の外周に巻き回される複数の導体と、
を備えるケーブルにおいて、
前記導体は、前記抗張力線の軸に垂直な断面形状において、前記抗張力線の周方向に沿った長さが、前記抗張力線の径方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする。
【0009】
本発明よれば、導体の断面形状を周方向に長い形状とすることにより、断面を径方向に
広げずに導体断面積を大きくすることができる。すなわち、抗張力線の径を細くすることなく、導体の断面積を大きくとることができる。したがって、ケーブルの細径化において、ケーブルの強度を維持しつつ電気抵抗の増大を抑えることができる。
【0010】
前記断面形状において、複数の前記導体の前記抗張力線の周方向に沿った長さの合計が、前記抗張力線の周長と略等しいとよい。
【0011】
すなわち、導体を隙間なく並べて巻き回して、抗張力線の外周の略全周にわたって導体の領域を形成するとよい。これにより、より広い導体断面積の確保を図ることができる。
【0012】
前記断面形状において、複数の前記導体の前記抗張力線の周方向に沿った長さが互いに異なるとよい。
【0013】
すなわち、個々の導体の断面積の大きさはそれぞれ任意で決めることができる。したがって、断面の大きさの異なる種々の導体を用いることができる。
【0014】
前記導体を巻き回したさらに外周に金属テープを巻いてもよい。
【0015】
金属テープを巻くことにより、導体への外部からの影響を低減することができる。
【0016】
前記導体は、略長方形の断面形状を有し、該断面の長辺が前記抗張力線の外周に沿うように巻き回されるとよい。
【0017】
このように、略長方形の断面形状を有する導体を、該断面の長辺が抗張力線の外周に沿うように巻き回すことにより、抗張力線の軸に垂直な断面において、抗張力線の周方向に沿った長さが、抗張力線の径方向に沿った長さよりも長い、導体の断面形状を形成することができる。
【0018】
また、上記目的を達成するために、本発明におけるケーブルは、
抗張力線と、
絶縁体で被覆され前記抗張力線の外周に巻き回される複数の導体と、
を備えるケーブルにおいて、
前記導体は、前記抗張力線の軸方向に沿った断面形状において、前記抗張力線の軸方向に沿った長さが、前記抗張力線の径方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、抗張力線に巻き回された導体の断面形状を、軸方向に長い形状とすることにより、導体を抗張力線に巻き回す回数を低減することができる。これにより、ケーブルの柔軟性を損なわずに導体の長さを短縮することができ、電気抵抗の低下を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケーブルの強度及び伝送性能を確保しつつ細径化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係るケーブルの模式的断面図。
【図2】本発明の実施例に係るケーブルの構成を説明する模式図。
【図3】従来例に係るケーブルの模式的断面図。
【図4】従来例に係るケーブルの構成を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
(実施例)
図1及び図2を参照して、本発明の実施例に係るケーブルについて説明する。図1は、本実施例に係るケーブルの模式的断面図である。図2は、本実施例に係るケーブルの構成を説明する模式図である。
【0024】
<ケーブルの概略構成>
図1及び図2に示すように、本実施例に係るケーブル1は、抗張力線2と、該抗張力線2の外周面に螺旋状に巻き回される複数の導体3と、該導体3が巻き回された抗張力線2の外側を覆う樹脂製のシース4と、を備える。
【0025】
抗張力線2は、例えば、アラミド繊維等の抗張力に優れた材料からなる断面略円形の線材である。
【0026】
導体3は、断面形状が略長方形の導電性を有する帯状部材である。導体3としては、例えば、銅線を帯状に圧延して形成される、いわゆる平角導体を利用することができる。導体3は、フッ素樹脂等の絶縁性を有する材料からなる絶縁体5により被覆されている。導体3の本数は、ケーブルの用途に応じて適宜変更される。
【0027】
本実施例のケーブル1では、導体3を被覆する絶縁体5としてフッ素樹脂を用いている。フッ素樹脂は、耐摩耗性に優れるとともに薄く成型し易く、小径のケーブル用途において好適である。また、例えば、ヘッドホンケーブルとしての用途においては、ノイズ対策のために、導体3を巻き回したさらに外周に金属テープを巻いてもよい。
【0028】
<本実施例の優れた点>
導体3は、図2に示すように、略長方形の断面形状の長辺が抗張力線2の外周に沿うように巻き回され、図1に示すように、抗張力線2の軸に垂直な断面形状において、抗張力線2の周方向に沿った長さが、抗張力線2の径方向に沿った長さよりも長い形状を有している。
【0029】
図1の本実施例と図3の従来例とを対比すると、ケーブル最外径、抗張力線の径を同じ条件にして複数の導体を抗張力線外周に隙間なく並べて巻き回した場合、図3に示す丸型導体103の方が、図1に示す導体3よりも、巻き回される本数が多くなり、絶縁体の占める面積の割合は図3の構成の方が、図1の構成よりも大きくなる。また、図1に示すように、本実施例では、各導体3の抗張力線2の周方向に沿った長さの合計が、抗張力線2の周長と略等しく、抗張力線2の外周の略全周にわたって導体3の領域が形成されるような構成となっている。
【0030】
したがって、本実施例によれば、ケーブル断面における導体部分(電気を通す部分)の占める割合を、図3の従来例よりも大きくとることができ、より広い導体断面積の確保を図ることが可能となる。これにより、導体の電気抵抗の増大を抑えることができ、細径ケーブルの伝送性能の向上を図ることができる。
【0031】
また、図2に示すように、抗張力線2の外周面に巻き回された導体3は、抗張力線2の軸方向に沿った断面形状において、軸方向に沿った長さが、抗張力線2の径方向に沿った
長さよりも長い構成となっている。
【0032】
かかる構成によれば、図2に示すように、複数の導体を軸方向に互いに密接に並列させて抗張力線の外周に巻き回す場合には、本実施例の導体3のように軸方向に長い断面形状とすることで、図4に示す従来の丸型導体103を同じピッチで複数並列に巻き回す場合よりも、抗張力線2に巻き回す回数を減らすことができる。なお、巻きピッチを長くすることで、従来例においても導体103を巻き回す回数を減らすことができるが、ピッチを長くするとケーブルの柔軟性が低下する場合がある。
【0033】
したがって、本実施例によれば、ケーブルの柔軟性を損なわず導体の長さ(抗張力線へ巻き付ける前の導体の全長)を短縮することができる。導体の長さが短縮されることで、導体の電気抵抗の増大を抑えることができる。
【0034】
また、導体と抗張力線やシースの接触面積が大きくなる。したがって、例えば、配線作業において、ケーブル端部でシースを剥離する際に抗張力線が飛び出す危険などを抑制することができる。
【0035】
本実施例によれば、導体3を、抗張力線2の周方向に沿った長さが、抗張力線2の径方向に沿った長さよりも長い断面形状とすることで、径方向の寸法を大きくすることなく、断面積を大きくすることができる。すなわち、抗張力線2の径を細くすることなく、導体3の断面積を大きくとることができる。したがって、ケーブルの細径化において、引張強度、伝送性能、撓み性等を高い水準で確保することが可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施例によれば、ケーブルの強度及び伝送性能を確保しつつ細径化を図ることができる。
【0037】
<その他>
複数の導体3の断面積の大きさは、同一である必要はなく、それぞれ個々に任意の大きさとすることができる。すなわち、ケーブルの断面形状において、複数の導体3の抗張力線2の周方向に沿った長さが互いに異なってもよい。したがって、導体3として断面の大きさが異なる種々の導体を用いることができる。
【0038】
本実施例のケーブルは、送電用ケーブルや通信用ケーブルなど種々のケーブルとして用いることができ、特定の用途のケーブルに限定されるものではない。また、本実施例のケーブルは、1mm以下の細径のケーブルに限定されるものではなく、種々の径のケーブル構成にも好適に適用することができる。
【0039】
また、例えば、芯数が少ないために複数の導線を互いに密に並列に巻き回すことが難しい場合には、導体の間に、スペーサとしてダミーの帯状部材を巻き付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ケーブル
2 抗張力線
3 導体
4 シース
5 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗張力線と、
絶縁体で被覆され前記抗張力線の外周に巻き回される複数の導体と、
を備えるケーブルにおいて、
前記導体は、前記抗張力線の軸に垂直な断面形状において、前記抗張力線の周方向に沿った長さが、前記抗張力線の径方向に沿った長さよりも長いことを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記断面形状において、複数の前記導体の前記抗張力線の周方向に沿った長さの合計が、前記抗張力線の周長と略等しいことを特徴とする請求項1記載のケーブル。
【請求項3】
前記断面形状において、複数の前記導体の前記抗張力線の周方向に沿った長さが互いに異なることを特徴とする請求項1または2記載のケーブル。
【請求項4】
前記導体を巻き回したさらに外周に金属テープを巻いたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のケーブル。
【請求項5】
前記導体は、略長方形の断面形状を有し、該断面の長辺が前記抗張力線の外周に沿うように巻き回されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のケーブル。
【請求項6】
抗張力線と、
絶縁体で被覆され前記抗張力線の外周に巻き回される複数の導体と、
を備えるケーブルにおいて、
前記導体は、前記抗張力線の軸方向に沿った断面形状において、前記抗張力線の軸方向に沿った長さが、前記抗張力線の径方向に沿った長さよりも長いことを特徴とするケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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