説明

ゲノム核酸中の遺伝子異常を検出するためのアッセイ

本発明は固相支持体に固定された未増幅のゲノム核酸を検出する方法を提供する。方法は種々の疾患に関係する遺伝子異常の検出、診断、および予後診断に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲノム核酸の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の記述は読者の理解を促すために提供するものである。提供する情報または引用する文献はいずれも本発明の先行技術と認めるものではない。
【0003】
遺伝子異常、例えば重複、欠失、染色体転座、点変異は多くの場合、病的状態を引き起こす。
【0004】
癌のように生涯のうちで少数の細胞に起こる遺伝子異常を原因とする疾患もあれば、他の疾患のように受胎の時から身体の全細胞に遺伝子異常が存在する場合もある。
【0005】
遺伝子異常を検出するためには、異常を含むゲノム核酸を検出する必要がある。遺伝子異常(例えば異数性、転座、重複、および欠失)の検出法は当該分野で公知である。それらの方法の一つに、中期染色体スプレッドを染色および可視化する細胞遺伝学的分析がある。中期染色体は、染色体のバンド形成で顕著となる特有の濃淡の染色パターンを示す。
【0006】
分子細胞遺伝学的手法の開発により、より感度の高いアッセイが提供される。これらの方法は放射性標識または蛍光標識をしたプローブとDNAとのハイブリダイゼーションを伴う。例えば蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析では、蛍光プローブを中期(metaphase)または間期(interphase)染色体にハイブリダイズさせる。次いで、蛍光顕微鏡を用いてハイブリダイズしたプローブを検出する。しかしながら、これらの方法は無傷細胞または無傷もしくは部分的に無傷の核を必要とする。
【0007】
in situハイブリダイゼーション法以外の染色体異常検出法も当該分野で知られている。米国特許公開第2006/0292576号は、固相支持体上でゲノムDNAをハイブリダイズ、捕捉、および検出することによる染色体異常の検出法について報告している。この方法はゲノム核酸に特異的な2つのプローブを使用する。一つのプローブは固相支持体に固定され、他方のプローブは検出可能な標識が施与されている。第1のプローブとゲノム核酸のハイブリダイゼーションによりゲノム核酸を固相支持体上に捕捉し、第2のプローブの検出可能な標識から生じるシグナルを使用してゲノム核酸を検出する。この方法は核酸ハイブリダイゼーションによる固相支持体へのゲノム核酸の捕捉を必要とする。
【0008】
ある単一ヌクレオチド多型の検出法は、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(dynamic allele specific hybridization(DASH))による。この方法は、ミスマッチ塩基対の不安定性に起因するDNAの融解温度(Tm)の差異を利用する。ゲノムセグメントを例えばPCRによって増幅し、固相支持体に結合させる。2本鎖DNAに結合すると蛍光を発するような分子の存在下で、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを添加する。Tmが確認されるまで、温度を上昇させながら強度を測定する。変異があれば期待されるTmより低くなるので、野生型配列と識別することができる。
【0009】
別の単一ヌクレオチド多型の検出法はマイクロアレイ法である。まずゲノム核酸を増幅し、次いで固相表面に固定されたプローブへのハイブリダイゼーションによって固相表面上に捕捉する。検出可能な標識を有する第2のプローブを用い、ハイブリダイゼーションによってゲノム核酸を検出する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、増幅を行わず、無傷の細胞または核も必要とせずに試験サンプル中の目的のゲノム核酸を検出する方法を提供する。一般的には、ゲノム核酸を標識されたプローブにハイブリダイズさせ、核酸ハイブリダイゼーション以外の方法によって固相支持体に固定させる。固相支持体上のハイブリダイズした複合体中の標識を検出することによってゲノム核酸を検出する。方法を使用して遺伝子異常、例えば点変異、遺伝子重複または欠失、および染色体転座を検出してもよい。また、方法を用いて疾患の診断または予後診断を行ってもよい。
【0011】
ある観点では、本発明は以下によってゲノム核酸中の標的配列を検出する方法を提供する:
a.標的配列を含有するゲノム核酸サンプルを標的配列に特異的なプローブと接触させ、ゲノム核酸および標的配列にハイブリダイズしたプローブから成る複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、プローブは検出可能な標識を含有し、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、そして、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);そして
b.標識と固相支持体の結合を検出することによってゲノム核酸中の標的配列の存在を検出する。
【0012】
別の観点では、本発明は以下によってゲノム核酸中の遺伝子異常の存在または不存在を検出する方法を提供する:
a.ゲノム核酸サンプルを遺伝子異常に特異的なプローブと接触させ、(もしゲノム核酸中に遺伝子異常が存在すれば)ゲノム核酸およびプローブから成る複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);
b.標識と固相支持体の結合を検出することによって遺伝子異常の存在を検出する。
【0013】
別の観点では、本発明は以下によってゲノム核酸中の遺伝子異常を検出する方法を提供する:
a.遺伝子異常を含有するゲノム核酸サンプルを遺伝子異常に特異的な第1のプローブと接触させ、ゲノム核酸および第1のプローブから成る第1の複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、プローブは検出可能な標識を含有し、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、そして、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);
b.ゲノム核酸サンプルを参照核酸に特異的な第2のプローブと接触させ、参照核酸および第2のプローブから成る第2の複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、第2のプローブは検出可能な標識を含有する);
c.形成された第1の複合体の量の測定を、複合体と結合した第1のプローブの検出可能な標識を検出することによって行い、形成された第2の複合体の量の測定を、複合体と結合した第2のプローブの検出可能な標識を検出することによって行う;そして、
d.第1の複合体の量と第2の複合体の量を比較する(ここで、2つの複合体の量の差異は遺伝子異常を示す)。
【0014】
上記の観点のある態様では、ゲノム核酸および参照核酸は同一サンプルを由来とする。上記の観点のある態様では、ゲノム核酸および参照核酸は異なるサンプルを由来とし、これは同一の、または異なる個体由来のものであってもよい。別の態様では、第1の複合体および第2の複合体の量を同じ固相支持体を用いて測定し、第1のプローブおよび第2のプローブの検出可能な標識は異なる。
【0015】
別の観点では、本発明は以下によってゲノム核酸中の遺伝子異常を検出する方法を提供する:
a.遺伝子異常を含有するゲノム核酸サンプルを遺伝子異常に特異的な第1のプローブと接触させ、ゲノム核酸および第1のプローブから成る第1の複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、プローブは検出可能な標識を含有し、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、そして、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);
b.ゲノム核酸サンプルを参照核酸に特異的な第2のプローブと接触させ、参照核酸および第2のプローブから成る第2の複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、第2のプローブは検出可能な標識を含有する);
c.形成された第1の複合体の量の測定を、複合体と結合した第1のプローブの検出可能な標識を検出することによって行い、形成された第2の複合体の量の測定を、複合体と結合した第2のプローブの検出可能な標識を検出することによって行う;
d.第1および第2の複合体の量の比率を求める;そして
e.得られた比率を参照サンプル由来のゲノム核酸を用いて同様に得た比率と比較する(ここで、比率の差異は遺伝子異常を示す)。
【0016】
好ましい態様では、ゲノム核酸および参照核酸はビオチンおよびアビジンの相互作用によって固相支持体に固定される。別の好ましい態様では、固相支持体はビーズである。別の好ましい態様では、第1および第2の複合体をフローサイトメトリーで測定する。
【0017】
本発明の全ての観点の好ましい態様では、遺伝子異常は点変異、染色体転座、重複または欠失である。ある態様では、本発明はHER-2遺伝子の重複を検出する方法を提供する。
【0018】
別の観点では、本発明は以下によって個体を診断する方法を提供する:
a.個体由来のゲノム核酸サンプルを疾患に特異的な核酸配列と相補的なプローブと接触させ、(もしゲノム核酸が疾患に特異的な核酸配列を含有すれば)ゲノム核酸およびプローブから成る複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、プローブは検出可能な標識を含有し、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、そして、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);
b.支持体に結合した検出可能な標識の量を検出することによって固相支持体上に形成された複合体の量を測定する;そして、
c.形成された複合体の量を、同様の条件下でアッセイを行った参照サンプル由来のゲノム核酸を用いて形成された複合体の量と比較する(ここで、個体から形成された複合体の量と参照サンプルとの差異によって疾患が診断される)。
【0019】
ある態様では、疾患を有さないと推測される個体から参照サンプルを得てもよい。別の態様では、疾患を有することが知られている個体から参照サンプルを得てもよい。別の態様では、第1のサンプルを得た後に、同じ個体から参照サンプルを得てもよい。ある態様では、方法を使用して癌に罹患している疑いのある個体の腫瘍量を測定してもよい。別の態様では、方法を用いて疾患の予後診断を行ってもよい。
【0020】
ゲノム核酸は共有結合または非共有結合で固相支持体に固定してもよい。本発明の全ての観点のいくつかの態様では、ゲノム核酸は“結合対”(本明細書では特異的相互作用によって複合体を形成する2つの分子を指す)を介して固相支持体に非共有結合で固定してもよい。従って、ゲノム核酸はゲノム核酸に結合した結合対の一方のメンバーと固相支持体に結合した結合対の他方のメンバー間の相互作用によって固相支持体に捕捉してもよい。
【0021】
好ましい態様では、結合対はビオチンおよびアビジンまたはアビジンの変異体(例えばストレプトアビジンおよびNeutrAvidinTM)である。
【0022】
他の態様では、結合対はリガンド-受容体、ホルモン-受容体、抗原-抗体であってもよい。
【0023】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、ゲノム核酸は共有結合によって固相支持体に固定してもよい。ある態様では、ゲノム核酸の固相支持体への共有結合は光活性基(例えばアジド、アジドフェナシル、4-ニトロフェニル3-ジアゾピルベート、ソラレン(psolaren)、ソラレン誘導体)によるものである。別の態様では、UV架橋によってゲノム核酸を種々の固相表面に架橋結合させてもよい。別の態様では、化学的リンカーを用いる化学結合によってゲノム核酸を固相支持体に固定させてもよい。
【0024】
別の好ましい態様では、ゲノム核酸はゲノムDNAである。別の態様では、参照核酸は染色体中のハウスキーピング遺伝子またはシングルコピー配列である。
【0025】
本発明の全ての観点のある態様では、試験サンプルまたは参照サンプル(それぞれゲノム核酸、参照核酸を含有する)を細胞、組織、体液、血漿、血清、尿、中枢神経系液(central nervous system fluid)、糞便、胆管、パラフィン包埋組織、細胞ライセート、組織ライセートなどから得る。試験核酸および参照核酸は任意の数の供与源から任意の方法で得てもよい。
【0026】
本発明の全ての観点の好ましい態様では、プローブはオリゴヌクレオチド、人工染色体、断片化人工染色体、ゲノムDNA、RNA、組換え核酸、ペプチド核酸(PNA)、 ヘアピン・オリゴヌクレオチド、または複素環オリゴマーであってもよい。ある態様では、好ましくはプローブはDNAの大型フラグメント(>20kb。コスミド、YAC、またはBACクローンを含む)である。
【0027】
本発明の全ての観点の好ましい態様では、プローブに結合した検出可能標識はフルオロフォア、ナノ粒子、同位元素、化学発光化合物、酵素、または ハプテンであってもよい。
【0028】
本発明の全ての観点の好ましい態様では、検出可能標識の検出を、標識された試薬によって行ってもよい。ある好ましい態様では、標識された試薬はプローブに結合した標識を検出する能力のある、標識された抗体であってもよい。別の態様では、標識された試薬は、プローブに結合した標識を検出する能力のある1次抗体/2次抗体対であり、1次抗体もしくは2次抗体、またはその両方が検出可能標識と結合する。
【0029】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、固相支持体に固定されたゲノム核酸、検出可能標識を含有しゲノム核酸にハイブリダイズしたプローブの複合体をフローサイトメーターで検出する。
【0030】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、まず溶液中で検出可能標識を含有するプローブとゲノム核酸をハイブリダイズさせ、その後、ハイブリダイズした複合体を固相支持体に固定させてもよい。
【0031】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、プローブは少なくとも50ヌクレオチド長であってもよい。他の態様では、1つまたはそれ以上のプローブは約1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、7,500、10,000、20,000、50,000、100,000、またはそれ以上のヌクレオチド長である。
【0032】
本明細書で使用する単数形(“a”、“an”、および“the”)は、特に記載がない限り複数形も含む。従って、例えば“オリゴヌクレオチド”という記述は複数のオリゴヌクレオチド分子を含み、固相支持体という記述は1つまたはそれ以上の固相支持体について記述するものであり、標識という記述は1つまたはそれ以上の標識について記述するものであり、プローブという記述は1つまたはそれ以上のプローブについて記述するものであり、“核酸”という記述は1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドについて記述するものである。
【0033】
本明細書で使用する“ゲノム核酸”という用語は、細胞中の核酸であって生物の細胞染色体(単数または複数)中に存在し、その生物の細胞の種々のタンパク質をコードする遺伝子を含有する。ゲノム核酸とは、ウィルスの情報を提供するウィルス核酸のことも指す。ゲノム核酸は通常DNAであるが、mRNAまたはいくつかのウィルスの場合のようにRNAであってもよい。好ましいタイプのゲノム核酸は真核細胞の核中に存在するものである。ゲノム核酸は2本鎖、1本鎖、部分的2本鎖、部分的1本鎖、またはヘアピン分子であってもよい。ゲノム核酸は無傷であるか、または(例えば制限エンドヌクレアーゼでの消化、または音波処理もしくは当該分野で公知の方法によるせん断力によって)断片化されてもよい。場合により、ゲノム核酸は単一の遺伝子の全部もしくは一部由来の配列もしくは複数の遺伝子由来の配列、1つもしくはそれ以上の染色体由来の配列、または細胞の全染色体由来の配列を含んでもよい。周知のように、ゲノム核酸は遺伝子コード領域、イントロン、5'および3'非翻訳領域、5'および3'隣接DNA、および構造セグメント(例えばテロメアDNAおよびセントロメアDNA、複製起源、および遺伝子間DNA)を含む。ゲノムの総核酸を示すゲノム核酸を“総ゲノム核酸”という。
【0034】
当該分野で公知のように、細胞から抽出/精製する方法によってゲノム核酸を得てもよい。ゲノム核酸の供与源となる細胞は正常細胞であってもよいし、ゲノム核酸中に1つまたはそれ以上の変異(例えば重複、欠失、転座、およびトランスバージョン)を含有する細胞であってもよい。ゲノム核酸は細胞から直接抽出してもよいし、細胞から抽出した核酸のコピーであってもよい。検出を意図する目的の標的配列の量を、ゲノム核酸中の他の核酸配列に比較して増加させるための増幅段階を行ったゲノム核酸は、ゲノム核酸の意味から除外される。
【0035】
ゲノム核酸は約10塩基、約20 塩基、約50塩基、約100塩基、約500塩基、約1,000塩基、約2,000塩基、2,500塩基、約3,000塩基、約3,500塩基、約4,000塩基、約5,000塩基、約7,500塩基、約10,000塩基、約20,000塩基、約30,000塩基、約40,000塩基、約50,000塩基、約75,000塩基、約100,000塩基、約1,000,000塩基、約2,000,000塩基、5,000,000塩基、またはそれ以上であってもよい。
【0036】
本明細書で使用する“参照核酸”という用語は、研究を行っているゲノム核酸と比較することを目的として同定することを意図される核酸を言う。参照核酸は天然または合成のDNAまたはRNAであってもよい。ある場合には、参照核酸は相対的に不変である配列、すなわちハウスキーピング遺伝子もしくは遺伝子座、または他の遺伝子、あるいは染色体中の他の配列で種々の条件(例えば健常状態または疾病状態)下で変化しないと考えられるものを含有してもよい。参照核酸は正常または野生型状態、すなわち点変異、転座、欠失、または重複が無い核酸であってもよい。他の場合には、参照核酸は点変異、転座、欠失、または重複を有する核酸配列であってもよい。場合によっては、研究を行っているゲノム核酸および参照核酸を同じサンプルから得てもよい。他の場合には、ゲノム核酸および参照核酸を異なるサンプルから得てもよい。ある場合には、ゲノム核酸と異なる供与源から参照核酸を得てもよい。ある場合には、ゲノム核酸と異なる生物から参照核酸を得てもよい。
【0037】
“標的核酸”および“標的配列”という用語は本明細書では同義に用いられ、同定しようとする核酸配列を示す。標的配列はDNAまたはRNAであってもよい。“標的配列”はゲノム核酸であってもよい。標的配列には野生型配列、点変異、欠失、または重複を含有する核酸配列、単一の遺伝子の全部もしくは一部または複数の遺伝子を由来とする配列、1つまたはそれ以上の染色体を由来とする配列、あるいは、目的とする任意の他の配列がある。標的配列は、特定の遺伝子の代替配列または対立遺伝子であってもよい。標的配列は2本鎖、1本鎖、部分的2本鎖、部分的1本鎖、またはヘアピン分子であってもよい。標的配列は約1-5 塩基、約10塩基、約20塩基、約50塩基、約100塩基、約500塩基、約1,000 塩基、約2,000塩基、2,500塩基、約3,000塩基、約4,000塩基、約5,000塩基、約7,500塩基、約10,000塩基、約20,000塩基、約30,000 塩基、約40,000塩基、約50,000塩基、約75,000塩基、約100,000塩基、約1,000,000塩基、またはそれ以上であってもよい。
【0038】
特に明記しない限り、本明細書で使用する“約”とはプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0039】
“同一性”および“同一の”という用語は配列間の同一性の程度を示す。部分的な同一性、または完全な同一性がありうる。部分的に同一である配列は、もう一方の配列と100%未満の同一性を有するものである。好ましくは部分的に同一な配列は全体の少なくとも70%または少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%または少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%または少なくとも95%である。
【0040】
サンプル中のゲノム核酸の存在を示すための検出可能標識からのシグナルの検出に関して本明細書で使用する“検出する”という用語では、方法が100%の感度および/または100%の特異度である必要はない。周知のように、“感度”とはその人がゲノム核酸配列を有する場合に試験が陽性である可能性であり、“特異度”とはその人がゲノム核酸配列を有さない場合に試験が陰性である可能性である。少なくとも50%の感度が好ましいが、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、おとび少なくとも99%の感度であれば明らかにより好ましい。少なくとも50%の特異度が好ましいが、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、および少なくとも99%の特異度であれば明らかにより好ましい。検出は偽陽性および偽陰性を伴うアッセイも包含する。偽陰性率は1%、5%、10%、15%、20%、またはそれ以上であってもよい。偽陽性率は1%、5%、10%、15%、20%、またはそれ以上であってもよい。
【0041】
遺伝子フラグメントまたは染色体フラグメントに関連する“フラグメント”とは、少なくとも約10 ヌクレオチド、少なくとも約20 ヌクレオチド、少なくとも約 25 ヌクレオチド、少なくとも約 30 ヌクレオチド、少なくとも約 40 ヌクレオチド、少なくとも約 50 ヌクレオチド、少なくとも約 100 ヌクレオチド、少なくとも約 250 ヌクレオチド、少なくとも約 500 ヌクレオチド、少なくとも約 1,000 ヌクレオチド、少なくとも約 2,000 ヌクレオチド、少なくとも約 5,000 ヌクレオチド、少なくとも約 10,000 ヌクレオチド、少なくとも約 20,000 ヌクレオチド、少なくとも約 50,000 ヌクレオチド、少なくとも約 100,000 ヌクレオチド、少なくとも約 500,000 ヌクレオチド、少なくとも約 1,000,000ヌクレオチド、またはそれ以上であるヌクレオチド残基の配列をいう。
【0042】
ある態様では、単離または精製した分子が好ましい。本明細書で使用する“単離された”、“精製された”、または“実質的に精製された”という用語は、核酸またはアミノ酸配列のいずれかの分子であって、自然環境から除去、単離、または分離され、天然では随伴している他の成分の少なくとも60%を含有しない、好ましくは75%を含有しない、そして最も好ましくは90%を含有しないものをいう。従って、単離された分子は実質的に精製された分子である。
【0043】
本明細書で使用する“試験サンプル”という用語は、本発明の方法のためのゲノム核酸を含有するサンプルまたはゲノム核酸の供与源として使用されるサンプルをいう。
【0044】
本明細書で使用する“参照サンプル”という用語は、本発明の方法のための参照核酸を含有するサンプルまたは参照核酸の供与源として使用されるサンプルをいう。
【0045】
“固相支持体”および“固相表面”という用語は本明細書では同義に用いられ、ビーズ、微粒子、マイクロスフェア、プレート(フラットであるか、またはウェルまたは浅い凹みもしくは溝から成る)、マイクロウェル表面、スライド、ガラス表面、コーティングされたガラス表面、反応容器の表面、クロマトグラフィーカラム、膜、フィルター、マイクロチップ、石英、シリカ、紙、プラスチック、ニトロセルロース、ナイロン、ポリプロピレン、ポリスチレン、または他のポリマーなどで、ゲノム核酸が固定化されるものをいう。
【0046】
本明細書で使用する“プローブ”という用語は、ゲノム核酸または参照核酸の少なくとも一部にハイブリダイズする能力のある物をいう。プローブはオリゴヌクレオチド、人工染色体、断片化人工染色体、ゲノム核酸、断片化ゲノム核酸、RNA、組換え核酸、断片化組換え核酸、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸、環状複素環オリゴマー(oligomer of cyclic heterocycles)、または核酸コンジュゲートであってもよい。
【0047】
プローブは約10 塩基、約 20 塩基、約 30 塩基、約 40 塩基、約 50 塩基、約 75 塩基、約 100 塩基、約 200 塩基、約 300 塩基、約 400 塩基、約 500 塩基、約 750 塩基、約 1,000 塩基、約 1,500 塩基、約 2,000 塩基、約 2,500 塩基、約 3,000 塩基、約 3,500 塩基、約 4,000 塩基、約 5,000 塩基、約 7,500 塩基、約 10,000 塩基、約 15,000 塩基、約 20,000 塩基、約 25,000 塩基、約 30,000 塩基、約 40,000 塩基、約 50,000 塩基、約 75,000 塩基、約 100,000 塩基、約 500, 000塩基、1,000,000 塩基、約 2,000,000 塩基、約 5,000,000塩基、またはそれ以上であってもよい。より長い、約1,000(1kb)から約5,000,000(5Mb)、またはそれ以上のヌクレオチド長のプローブを目的の核酸セグメントを含有する染色体または人工染色体から得てもよい。本発明のある態様では、プローブは好ましくは大型DNAフラグメント(>20kb、コスミド、YAC、またはBACクローンを含む)である。
【0048】
本明細書で使用する“検出可能標識”とは、プローブに結合した分子もしくは化合物または分子群もしくは化合物群をいい、ゲノム核酸または参照核酸にハイブリダイズしたプローブを同定するのに使用される。
【0049】
ある場合には、検出可能標識を直接検出してもよい。他の場合には、検出可能標識は結合対の一部であって、その後に検出してもよい。検出可能標識からのシグナルは種々の方法で検出してもよく、これは検出可能標識の性質に依存する。検出可能標識の検出法の例として、それらに限定される訳ではないが、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電磁気学的、放射化学的、もしくは化学的方法(例えば蛍光、化学蛍光、または化学発光)、または他の任意の好適な方法がある。
【0050】
本明細書で使用する“ハイブリダイゼーション”という用語は、実質的に相補的なヌクレオチド配列(核酸鎖)が対を形成し、相補的塩基対間の水素結合形成によって2本鎖またはヘテロ2本鎖を形成することをいう。これは2つの相補的ポリヌクレオチド間の特異的、すなわち非ランダム相互作用である。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち核酸間の結合強度)は核酸間の相補性の程度、使用するストリンジェンシー条件、および形成されたハイブリッドのTmなどの因子の影響を受ける。
【0051】
本明細書でポリヌクレオチド(すなわちオリゴヌクレオチドのようなヌクレオチド配列またはゲノム核酸)に関連して使用する“相補体”、“相補的な”、または“相補性”という用語は塩基対合則(base-paring rules)に関係する。本明細書で使用する核酸配列の相補体とは、一方の配列の5’末端が他方の3’末端と対合するように核酸配列とアラインさせた場合に“アンチパラレルに結合”するオリゴヌクレオチドをいう。例えば、配列“5'-A-G-T-3'”は配列“3'-T-C-A-5'”に相補的である。通常天然の核酸には見られないある種の塩基が本発明の核酸に含まれていてもよく、それらには、例えばイノシンおよび7-デアザグアニンがある。相補性は完全である必要はない;安定な2本鎖がミスマッチ塩基対または不対合塩基を含むこともありうる。核酸技術分野の技術者は、多くの変数(例えばオリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列、イオン強度、およびミスマッチ塩基対の頻度)を経験的に考慮して、2本鎖の安定性を判定することができる。
【0052】
相補性は、“部分的”であって、核酸の塩基の一部だけが塩基対合則に従ってマッチしていてもよい。または、核酸間が“完全な”、“全ての”、または“全くの”相補性を有してもよい。
【0053】
本明細書で使用する“ストリンジェンシー”という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる温度、イオン強度、および他の化合物の存在の条件をいう。高ストリンジェンシー条件では、相補的塩基配列が高頻度で存在する核酸間でのみ、核酸の塩基対合が起こる。
【0054】
本明細書で使用する“遺伝子異常”という用語は、野生型または正常な遺伝子配列からの核酸配列の逸脱をいう。遺伝子異常は、ある生物の完全長遺伝子相補体またはその一部と、その生物の全染色体の正常な完全長遺伝子相補体との差異を反映しうる。例えば、遺伝子異常には染色体コピー数の変化(例えば異数性)もしくはその一部の変化(例えば欠失、重複、増幅);または染色体構造の変化(例えば転座、点変異)が含まれる。遺伝子異常は遺伝性、すなわち世代から世代へと伝えられるものと、非遺伝性のものがある。遺伝子異常は生物の一部の細胞に存在するか、または生物の全ての細胞に存在してもよい。
【0055】
本明細書で使用する“異数性細胞”または“異数性”という用語は、間期において少なくとも1つの染色体の数が異常である細胞をいう。
【0056】
“試験値”は、検出可能なプローブにハイブリダイズした試験サンプル由来のゲノム核酸を含有する、固相支持体上に形成された複合体の量を測定することによって得られる。ある態様では、試験サンプル由来のゲノム核酸は遺伝子異常を有すると疑われるものである。ある態様では、参照サンプル中の同じ染色体配列または遺伝子配列を検出することによって試験値を得てもよい。
【0057】
“コントロール値”は、検出可能なプローブにハイブリダイズした参照サンプル由来のゲノム核酸を含有する、固相支持体上に形成された複合体の量を測定することによって得られる。ある態様では、ハイブリダイゼーションの標的は遺伝子異常を有さないと疑われるものである。別の態様では、ハイブリダイゼーションの標的は遺伝子異常を有することが知られているものである。ある態様では、試験サンプルおよび参照サンプルは同一である。
【0058】
“参照値”とは、他の特性に関連付けられている数値をいう。一連の参照値を標準曲線として用いることができる。
【0059】
試験値またはコントロール値を複合体の“量”またはコピー数で表してもよい。複合体の量は、取りこまれた標識の検出レベル(例えば蛍光強度)に応じて一つの数値または数値の範囲であってもよい。例えば数値の範囲を用いて、形成された複合体の量と他の量(例えば腫瘍量)の間の標準曲線を作成してもよい。
【0060】
試験値またはコントロール値を、ある複合体の量と別の量との“相対量”または“比率”で表してもよい。本発明の方法のある態様では、同一の標的遺伝子を用いて2つの複合体を得てもよく、ここで第2の複合体の量は背景の値(historical value)または並行アッセイで得られる数値を示す。他の態様では、2つの異なる遺伝子(1つめは目的の遺伝子であり、2つめは変化しないと予想される遺伝子(例えばハウスキーピング遺伝子)である)を用いて2つの複合体を得る。相対量は1つの数値または数値の範囲であってもよい。例えば、数値の範囲を用いて、形成された複合体の相対量と他の量(例えば腫瘍量)の間の標準曲線を作成してもよい。
【0061】
“対立遺伝子”および“対立遺伝子多型”という用語は本明細書では同義に使用する。対立遺伝子は染色体上の所定の遺伝子座または位置を占める同じ遺伝子の、他に取り得る多くの形態または配列のうちの任意のものである。各遺伝子座について一つの対立遺伝子がそれぞれの親から別々に遺伝し、それによって各遺伝子につき2つの対立遺伝子となる。特定の遺伝子に関して同じ対立遺伝子の2コピーを有する個体はその遺伝子座においてホモ接合性であり、特定の遺伝子に関して2つの異なる対立遺伝子を有する個体はヘテロ接合性である。
【0062】
本明細書で使用する“診断する”または“診断”という用語は、疾患または障害の兆候および症状の評価によって、ある生物もしくは植物における疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の原因を同定または判定する作業または過程をいう。通常、疾患または障害の診断は、疾患を示す1つまたはそれ以上の因子および/または症状の評価に基づく。すなわち、診断は疾患または症状の存在または不存在を示す因子の存在、不在、または量に基づいて行われる。特定の疾患の診断の指標となると考えられるそれぞれの因子または症状は、特定の疾患だけに関係している必要はない;すなわち、診断の因子または症状から種々の診断が推論されることもありうる。同様に、特定の疾患を示す因子または症状が特定の疾患を有さない個体に存在している場合もありうる。
【0063】
本明細書で使用する“予後診断”という用語は、推定される臨床症状または疾患の経過および転帰の予測をいう。患者の予後診断は通常、疾患の好ましい、または好ましくない経過または転帰の指標となる疾患の因子または症状を評価することによって行われる。
【0064】
本明細書で使用する“予後の判定”というフレーズは、当業者が用いて患者における症状の経過または転帰を予測できるプロセスをいう。“予後診断”は100%の確度で症状の経過または転帰を予測する能力を意味するものではない。むしろ、当業者に理解されるように、“予後診断”という用語は一定の経過または転帰が起こる可能性が高いこと;すなわち、所定の症状を示す患者において、その症状を示さない個体に比較して、ある経過または転帰が起こる可能性が高いことをいう。予後診断は、患者が生存すると期待できる時間の長さとして表してもよい。あるいはまた、予後診断は疾患が寛解に向かう見込み、または疾患が寛解状態にあり続けると期待できる時間の長さであってもよい。予後診断は種々の方法で表される;例えば患者が1年後、5年後、10年後等に生存している可能性%として予後診断を表してもよい。あるいはまた、患者が症状または疾患の結果として生存することを期待できる平均年数で予後診断を表してもよい。患者の予後診断は、最終的な転帰に影響を与える多くの因子を用いた相対的表現(an expression of relativism)と見なしてもよい。例えば若干の症状を有する患者では、予後診断を症状が治療可能もしくは治癒可能である可能性、または疾患が寛解に向かう可能性として適宜に表してもよく、より重篤な症状を有する患者では、予後診断を特定の期間生存できる可能性として適宜に表してもよい。
【0065】
予後診断は多くの場合、1つまたはそれ以上の予後診断因子または指標を試験することによって行う。それらは、例えば特定の染色体転座の存在のようなマーカーであり、患者(または患者由来のサンプル)におけるその存在または量は所定の経過または転帰が起こる可能性を示す。当業者に理解されるように、予後指標と有害転帰との関連付けには統計学的分析も含まれうる。
【0066】
本明細書に使用する“腫瘍量”とは、個体における腫瘍の容積または質量をいう。この量は一つの部位におけるもの(例えば原発腫瘍)であってもよいし、複数部位からの総量(例えば原発腫瘍および/または転移腫瘍)であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0067】
発明の詳細な説明
本発明は無傷細胞または核を必要とせずに固相支持体上で未増幅のゲノム核酸を検出するための方法を提供する。方法を使用して試験サンプル中の遺伝子異常、例えば点変異、転座、欠失、および重複を検出してもよい。方法を使用して、疾患の診断または予後診断を行ってもよい。
【0068】
遺伝子異常:タイプ、関連疾患
遺伝子異常は、ある生物の完全長遺伝子相補体またはその一部と、その生物の全染色体の正常な完全長遺伝子相補体との相違を反映しうる。例えば、遺伝子異常には染色体コピー数の変化(例えば異数性)もしくはその一部の変化(例えば欠失、重複、増幅);または染色体構造の変化(例えば転座、点変異)が含まれる。遺伝子異常により病的状態が引き起こされうる。癌のように生涯のうちで少数の細胞に起こる遺伝子異常を原因とする疾患もあるが、“遺伝病”という用語は最も一般的には、身体の全細胞に受胎の時から存在する疾患を言う。遺伝子異常は遺伝性のものと非遺伝性のものがある。
【0069】
遺伝子重複はゲノム配列のある領域の重複である。相同組換えにおけるエラー、レトロ転位事象、または染色体全体の重複として起こりうる。遺伝子の重複は以下のように一部の疾患と関連付けられている:一部のぺージェット性の骨肉腫(pagetic osteosarcoma)症例はMYC遺伝子の重複に関係する(Sarcoma, vol. 1, no. 3-4, pp. 131-134, 1997)、一部の乳癌症例はHER-2/neu遺伝子の重複に関係する(Ann Oncol., 12(suppl 1):S3-S8, 2001)、一部の膀胱腫瘍症例はc-erb-2遺伝子の重複と関係する(Cancer Res., 55, 2422-2430, 1995)。
【0070】
欠失(別名、遺伝子欠失、欠損、または欠失変異)は一部の染色体またはDNA配列が失われる遺伝子異常である。欠失は遺伝物質の喪失である。1塩基から染色体全長まで、いずれの数のヌクレオチドの欠失も起こりうる。欠失は減数分裂の際の染色体の乗換えのエラーによって起こる。欠失は多数の遺伝障害(例えば男性不妊の一部の症例およびデュシェンヌ型筋ジストロフィーの3分の2の症例)に関係し、5番染色体の短腕の一部欠失はCri du chatと呼ばれる症候群(別名、“猫鳴き症候群”)を引き起こす。
【0071】
染色体“転座”は非相同染色体間の部分の交換である。これは一般に、罹患細胞の細胞遺伝学または核型分析によって検出される。2つの主な型、相互型(全ての染色体物質が保持される)およびロバートソン型(染色体物質の一部が失われる)がある。更に、転座には均衡型(物質の等量交換で、遺伝情報に過剰または不足がない)または不均衡型(染色体物質の交換が等量でなく、遺伝子の過剰または不足が起こる)でありうる。
【0072】
9番染色体および22番染色体間の均衡型転座(細胞遺伝学的に明らかに異なる末端動原体型染色体を生じる)はフィラデルフィア染色体と呼ばれる。この転座では22番染色体のBCR遺伝子座および9番染色体のがん原遺伝子ABL遺伝子座が融合し、bcr/ablがん原タンパク質を生成する(Tefferiら Mayo Clin Proc 80(3):390-402, 2005)。フィラデルフィア染色体は当初、CMLと関連付けられたが、現在では、他の血液障害、例えば急性リンパ性白血病(ALL)の予後診断指標であることが知られている。
【0073】
転座は他の疾患と関連付けられてきた。例えば11番染色体および16番染色体間の転座による16番染色体のCBP遺伝子の11番染色体のMLL遺伝子への融合は白血病と関連付けられている(Zhangら Genes Chromosomes Cancer 41(3):257-65, 2004)。同様に、8番染色体および21番染色体間の転座ではAML1およびETO遺伝子の融合が起こり、これは急性骨髄性白血病(AML)の症例の15%近くに関与している(Zhangら Science 305:1286-9, 2004)。更に、多くの染色体転座が種々の形態のリンパ腫で同定されている。例えばc-myc遺伝子が関与する8番染色体および14番染色体間の転座は、バーキットリンパ腫/白血病症例の約80-85%に存在することが報告されている(Vegaら Arch Pathol Lab Med 127:1148-1160, 2003)。
【0074】
変異は点変異の挿入、または欠失である。点変異または置換は、1塩基のヌクレオチドが別のヌクレオチドで置換されるタイプの変異である。挿入および欠失には1個の塩基対の挿入または欠失がある。遺伝子または染色体の変異は多くの場合、鎌状赤血球貧血、嚢胞性線維症、血友病、フェニルケトン尿症、二分脊椎などの疾患に関係する。
【0075】
遺伝子異常の診断は、野生型配列からの配列の変異を含有するゲノム核酸配列の同定を伴う。好ましい態様では、ゲノム核酸を含有する試験サンプルを回収し、ゲノム核酸の存在を同定し、ゲノム核酸の存在または不存在によって診断が行われる。
【0076】
生体サンプルの回収および調製
【0077】
試験サンプルおよび参照サンプル:試験サンプルおよび参照サンプルはそれぞれゲノム核酸および参照核酸を含有する。試験サンプルおよび参照サンプルはヒトまたは非ヒト起源であってもよい。試験サンプルおよび参照サンプルは真核生物、原核生物、植物、または環境中から得てもよい。試験サンプルおよび参照サンプルは、任意の細胞または組織を含有する、または含有しない固体、液体、半固体、気体であってもよい。試験サンプルおよび参照サンプルには、それらに限定される訳ではないが以下がある:羊水、生検、血液、血液細胞、骨髄、脳脊髄液、糞便サンプル、排泄物、細針生検サンプル、腹水、血漿、胸水、気管支肺胞洗浄液、気管支洗浄液、唾液、精液、血清、喀痰、涙、頬側スワブ、組織、組織ホモジネート、凍結組織、組織のパラフィン切片、組織培養液、細胞、細胞ライセート、培養液からの細胞、細胞培養液上清、胎児、胚、尿、微生物、ウィルス、マイコプラズマ。
【0078】
ある態様では、疾患または遺伝子異常を有する疑いのある個体から試験サンプルを得てもよい。別の態様では、疾患または遺伝子異常を有さないと推測される健常個体から試験サンプルを得てもよい。
【0079】
サンプル回収:試験サンプルおよび参照サンプルの採取方法は当業者に公知であり、それらには、限定されるわけではないが以下がある:吸引、組織の切片化、血液または他の体液の採取、外科的または細針生検、パラフィン包埋組織の回収、体液の回収、糞便の回収など。
【0080】
本発明の方法を使用して、任意のタイプの胚もしくは胎児細胞、または核酸含有体液を用いて出生前診断を行うことができる。胎児細胞を妊婦から、または胚サンプルから得ることができる。従って、胎児細胞は羊水穿刺で得た羊水、注射で吸引した絨毛膜絨毛、経皮採取臍帯血、胎児皮膚生検、4細胞期から8細胞期胚の割球(移植前)、または(移植前または子宮内洗浄による)胚盤胞からの栄養外胚葉サンプル中に含有される。
【0081】
ゲノム核酸:ある態様では、ゲノム核酸は無傷であってもよい。別の態様では、ゲノム核酸は(例えば制限エンドヌクレアーゼでの消化、または音波処理もしくは当該分野で公知の方法によるせん断力の適用によって)断片化されていてもよい。
【0082】
サンプル調製:核酸(DNAまたはRNA)は当該分野で公知の任意の方法に従ってサンプルから単離してもよい。必要により、遠心分離などでサンプルを回収または濃縮してもよい。例えば酵素、熱、界面活性剤、超音波、またはそれらの組み合わせによって、サンプルを溶解してもよい。溶解処理は十分量の核酸を得るために行う。サンプルを液体クロマトグラフィーに施与し、ゲノム核酸の部分精製を行ってもよい。
【0083】
好適なDNA単離法にはフェノールおよびクロロホルム抽出がある。Maniatisら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, page 16.54 (1989)参照。多くの市販キットを利用して適切なDNAを得てもよく、それらには、限定されるわけではないが以下がある:QIAampTM mini blood kit、Agencourt GenfindTM、Roche Cobas(登録商標)Roche MagNA Pure(登録商標)、またはEppendorf Phase Lock Gels(登録商標)を用いたフェノール:クロロホルム抽出。
【0084】
市販のキット(例えばQiagen社のQIAamp DNAおよびQIAamp DNA Blood mini kits)を用いて(例えばゲノム、ミトコンドリア、微生物、ウィルスの)総DNAを生体サンプル(例えば全血、血漿、血清、軟膜、骨髄、他の体液、リンパ球、培養細胞、組織、および法医学標本)から精製することができる。ウィルスRNAは、市販のキット(例えばQIAamp Viral RNA mini kit)を用いて全血、血漿、血清、軟膜、骨髄、他の体液、リンパ球、培養細胞、組織、および法医学標本から精製できる。
【0085】
標準的な方法を用いてゲノムDNAを細胞または組織から単離してもよい(例えばSambrookら, 1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Press, Plainview, NY参照)。
【0086】
別の態様では、ゲノム核酸はmRNAもしくはmRNAから生成されるcDNAであってもよく、または総RNAを用いてもよい。標準的な方法を用いてRNAを細胞または組織サンプルから単離する(例えばSambrookら, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Press, Plainview, NY参照)。更に、mRNAの単離およびcDNAの合成のためのキットも市販されている(例えばQiagen社のRNeasy Protect Mini kit、RNeasy Protect Cell Mini kit)。
【0087】
ある態様では、ゲノム核酸はパラフィン包埋組織から単離したDNAである。パラフィン包埋組織からDNAを抽出する方法は当該分野で公知であり、例えば組織を含有するパラフィン・ブロックを回収し、キシレン処理によってワックスを除去し、プロテイナーゼ処理によってタンパク質不純物を除去した後、最終的にフェノールおよびクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿を行う。あるいはまた、パラフィン包埋組織からのDNAの単離は市販のキットで行ってもよく、例えばQiagen社のEZ1 DNA kit, QIAamp DNA Mini Kitを用いてパラフィン包埋組織からDNAを抽出してもよい。
【0088】
核酸は抽出する必要はなく、好適な細胞または組織処理(例えば米国特許出願第11/566169号に記載)によって調製してもよい。
【0089】
固相支持体
固相支持体を用いて共有結合または非共有結合によってゲノム核酸を固定してもよい。好ましい態様では、固相表面はビーズである。ある態様では、ビーズまたは微粒子は実質的に同一サイズである。他の態様では、ビーズまたは微粒子は同一サイズまたは複数サイズである。ある態様では、ビーズまたは微粒子は磁性であってもよい。これらのビーズまたは微粒子は、例えばポリスチレンまたはラテックスから成ってもよい。ビーズまたは微粒子は直径約0.1μm-10μmであるか、または大きければ直径50μm-100μmであってもよいが、より小さいビーズサイズおよびより大きいビーズサイズも可能である。
【0090】
好ましい態様では、固相表面はストレプトアビジンでコーティングされたビーズである。ストレプトアビジン・コーティング・ビーズは、例えばBang laboratories社(カタログ番号:214,217)、EMD Biosciences社(カタログ番号:70716-3、70716-4)、Invitrogen社のDynal beads(カタログ番号:658-01D、602-10)から販売されている。
【0091】
ある態様では、固相表面はゲノム核酸と直接、または化学リンカーを介して間接的に共有結合する能力のある官能基を有してもよい。官能基の例として、それに限定されるわけではないが、ポリL-リジン、アミノシラン、エポキシシラン、アルデヒド、アミノ基、エポキシ基、シアノ基、エチレン基、ヒドロキシル基、チオール基がある。
【0092】
固相支持体上での核酸の固定
ゲノム核酸または参照核酸の固相支持体への固定は、検出可能標識を有するプローブへのゲノム核酸または参照核酸のハイブリダイゼーションの前、後、または同時に行ってもよい。核酸を支持体に共有結合または非共有結合によって固定してもよい。
【0093】
固相表面に核酸を非共有結合で固定するための好ましい方法は“結合対”(本明細書では特異的相互作用によって複合体を形成する2つの分子をいう)を介するものである。従って、核酸に結合した結合対の一方のメンバーと固相支持体に結合した結合対の他方のメンバーとの間の相互作用によって、核酸を固相支持体上に捕捉することができる。
【0094】
好ましい態様では、結合対はビオチンおよびアビジン、またはアビジンの変異体(例えばストレプトアビジン、NeutrAvidinTM)である。固相表面はストレプトアビジンまたはその変異体を含有し、ゲノム核酸はビオチンから成るように修飾する。核酸をビオチン化する方法は当該分野で公知である(例えば光架橋(Pierce Chemical社のEZ-link psoralen-PEO biotinを使用)、化学結合(Mirus Bio社のLabel IT(登録商標)μArray(登録商標)Biotin Labeling Kit、Pierce Chemical社のPFP Biotinを使用)、ニック翻訳(Invitrogen社のBioNick DNA Labeling Systemを使用)、または3'-末端標識(市販のキット、例えばPierce社のBiotin 3-end labeling kitを使用))。
【0095】
他の態様では、結合対はリガンド-受容体、ホルモン-受容体、抗原-抗体から成る。それらの結合対の例として、それに限定される訳ではないが以下がある:ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン抗体;6-(2,4-ジニトロフェニル)アミノヘキサン酸および抗ジニトロフェニル抗体;5-ブロモ-dUTP(BrdUTP)および抗BrdUTP抗体;N-アセチル2-アミノフルオレン(AAF)および抗AAF抗体。これらの場合の固相表面は抗体から成り、ゲノム核酸は抗原から成るように修飾される。DNAにジゴキシゲニン、2,4-ジニトロフェニル基、5-ブロモ-dUTP基を導入する方法は、ニック翻訳または末端トランスフェラーゼ反応によって行うか(その例は当該分野で十分に報告されている)、または市販のキット(例えばRoche Applied Sciences社のDIG DNA labeling kit)を用いて行ってもよい。ジゴキシゲニンはジゴキシゲニン-NHSエステルによって核酸と化学結合させることができる。N-アセチル2-アミノフルオレン(AAF)をゲノム核酸と共有結合させることができる。
【0096】
別の態様では、ゲノム核酸は化学リンカーを用いる化学結合によって固相支持体に固定してもよい。ゲノム核酸および表面間の共有結合が所望される場合、固相表面は通常、官能基を有するか、または官能化される能力がある。結合に使用される官能基の例には、限定されるわけではないがカルボン酸、アルデヒド、アミノ基、シアノ基、エチレン基、ヒドロキシル基、チオール基がある。
【0097】
ある態様では、固相支持体をエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ポリリジンでコーティングしてもよい。コーティングされた固相支持体は市販されている(例えば官能基でコーティングしたビーズはInvitrogen社、BD Biosciencesから販売されている;官能基でコーティングしたガラススライドはPierce、Asper Biotech、Full Moon Biosystems、ThermoFisher社から販売されている)。
【0098】
ゲノム核酸を官能基から成るように修飾してもよい。カルボジイミド架橋剤EDC(Pierce社、製品番号22980)およびイミダゾールを使用して、ゲノム核酸の5'リン酸基を第1級アミン含有分子にコンジュゲートさせてもよい。過剰のエチレンジアミンを用いて核酸の5'リン酸基をアミン基から成るように修飾し、カルボジイミド架橋剤EDC(Pierce社、製品番号22980)およびイミダゾールをPierce Technote No. 30の記載に従って使用してもよい。使用するアミン含有分子に従って、架橋戦略を種々の方法で適合させ、ゲノム核酸を直接的または間接的に修飾、標識、またはコンジュゲートすることができる。例えば光活性化(ランダム反応性)核酸を生成するために、初期反応(default reaction)においてエチレンジアミンの代わりにp-アジドベンゾイルヒドラジン(ABH、Pierce社、カタログ番号21510)を用いてもよい。スルフヒドリル反応性核酸を生成するために、初期反応においてエチレンジアミンの代わりに[N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド、トリフルオロ酢酸塩(EMCH、Pierce社、カタログ番号22106)、N-[k-マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド(KMUH、Pierce社、カタログ番号22111)、または4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド塩酸塩(MPBH、Pierce社、カタログ番号22305)を用いてもよい。可逆性スルフヒドリル架橋を得るために、エチレンジアミンの代わりに3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH、Pierce社、カタログ番号22301)を用いてもよい。この戦略はゲノム核酸をスルフヒドリル含有固相支持体に結合させるのに有用である。ゲノム核酸上にスルフヒドリル基を生成するために、初期反応においてエチレンジアミンの代わりにシスタミン(NH2-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-NH2)を用い、その後DTTまたは類似の試薬でジスルフィド結合を還元してもよい。この戦略はマレイミド活性化固相支持体への共有結合に有用である。核酸をビーズアフィニティー支持体に固定化するために、初期反応においてエチレンジアミンの代わりにUltraLink Hydrazide(Pierce社、カタログ番号53149)を使用してもよい。
【0099】
ゲノム核酸を酵素的に修飾してアミノ基のような官能基から成るようにし、例えばニック翻訳または末端トランスフェラーゼ反応によってアミノアリルdUTPを導入してもよい。
【0100】
種々の官能基を互いに結合させる方法は公知であり、文献に十分例証されている。ある態様では、化学結合を使用して2つの官能基(一方は固相支持体上、他方はゲノム核酸上)を共有結合させてもよい。化学結合は単機能性、二機能性、多機能性、ヘテロ二機能性、またはヘテロ多機能性であってもよい。好ましい態様では、化学結合は立体障害を回避するためのスペーサーアームを有してもよい。アミノ基をアミノ基に結合させる化学リンカーの例には、限定されるわけではないがエチレングリコールビス[スクシンイミジルスクシネート]、スベリン酸ジスクシンイミジル、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンがある。チオール基をチオール基に結合させる化学リンカーの例には、限定されるわけではないが1,4-ジ-[3'-(2'-ピリジルジチオ)]-プロピオンアミド]ブタン、ジチオ-ビスマレイミドエタンがある。種々の好適な架橋リンカーおよび架橋法がPierce社から提供されている。
【0101】
別の態様では、ゲノム核酸は光活性部分を介して固相支持体に固定される。ある態様では、固相表面は光活性化によってゲノム核酸に結合する能力のある光活性部分を固定してもよい。別の態様では、ゲノム核酸の5'-リン酸基を固相表面上の官能基に光架橋する能力のある光活性基にコンジュゲートさせてもよい。別の態様では、2つまたはそれ以上の光活性部分を各末端に1つまたはそれ以上有するリンカーを介して、ゲノム核酸を固相表面に固定させてもよく、ここでリンカーの存在下で好適な波長を固相表面およびゲノム核酸に放射すると、リンカーは固相表面およびゲノム核酸に結合する。光活性部分の例には、限定される訳ではないがアジド、アリールアジド、アジドフェンアシル、4-ニトロフェニル3-ジアゾピルベート、ソラレン、ソラレン誘導体がある。
【0102】
別の態様では、固相表面およびゲノム核酸に紫外線を照射することによって、ゲノム核酸をナイロン、ニトロセルロース、またはナイロン強化ニトロセルロース膜をコーティングしたガラス表面と架橋させることができる。種々の表面への核酸の架橋結合法は公知であり、文献に十分報告されている(例えばStratagene UV crosslinkerを使用)。
【0103】
プローブ
プローブはゲノム核酸の少なくとも一部にハイブリダイズする能力がある。好ましい態様では、核酸プローブはThe BAC Resource Consortiumによる細菌人工染色体(BAC)一覧に提供されるヒトゲノム核酸セグメントの1個、数個、または全てから誘導される。当該分野では通常、これらのプローブをそのRPIまたはCTBクローン名で称する(Cheungら, Nature 409:953-958, 2001参照)。この一覧は、ヒトゲノム・ドラフト配列上の7,600個の細胞遺伝学的に定義されたランドマークを含有する(McPherson et al., Nature 409:934-41, 2001参照)。これらのランドマークは蛍光in situハイブリダイゼーションによって染色体バンドにマッピングされる大型インサートクローンであり、それぞれ、ゲノム配列上に位置する配列タグを含有する。これらのクローンは24個のヒト染色体全てを約1Mbの解像度で表す。BACゲノム・コレクションの供与源には BACPAC Resources Center(CHORI-Children’s Hospital Oakland Research Institute)、ResGen(Research Genetics(Invitrogen社を介する))、およびThe Sanger Center(英国)が含まれる。
【0104】
プローブは一つまたは複数の検出可能標識から成る。ある好ましい態様では、プローブに結合する検出可能標識は検出可能シグナルを直接生成する。別の態様では、プローブに結合する検出可能標識は試薬を用いて間接的に検出され、この試薬は検出可能標識を含有し、プローブに結合した標識に結合する。ある態様では、検出可能標識を含有する試薬は標識された抗体である。別の態様では、検出可能標識を含有する試薬は1次抗体/2次抗体対であり、この検出可能標識は1次抗体、2次抗体、またはその両方にあってもよい。
【0105】
ハイブリダイゼーション
核酸鎖間の相補性の度合いは、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に有意な影響を及ぼす。これは核酸間の結合に依存する検出法において、特に重要である。ある態様では、プローブおよびゲノム核酸間の相補性は“部分的”であって、一部の核酸の塩基だけが塩基対合則に従ってマッチしていてもよい。別の態様では、プローブおよびゲノム核酸間の相補性は“完全な”、“全ての”、または“全くの”ものであってもよい。
【0106】
本発明の方法に、DNAハイブリダイゼーションを実施するための全ての既知の方法および手段、並びにそれらの変法を組み込むことができる。例えばSambrookら, 1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Press, Plainview, NY参照。
【0107】
ゲノム核酸、参照核酸、および核酸に対して選択したプローブをハイブリダイゼーション条件下で接触させる。本発明の方法における核酸のハイブリダイゼーション条件は当該分野で公知である。例えば、ハイブリダイゼーション条件は高、中、または低ストリンジェンシー条件であってもよい。理想的には、核酸は相補的核酸にのみハイブリダイズし、サンプル中の他の非相補的核酸にはハイブリダイズしない。当該分野で知られているように、ハイブリダイゼーション条件を変化させて、ハイブリダイゼーションにおけるストリンジェンシーの程度を変化させ、バックグラウンド・シグナルを低下させてもよい。例えば、ハイブリダイゼーション条件が高ストリンジェンシー条件の場合、核酸は非常に高度な相補性を有する核酸標的配列と検出可能な程度の結合をする。低ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件では、ある程度の配列相違を有する配列とハイブリダイズできる。ハイブリダイゼーション条件は生体サンプル並びに核酸のタイプおよび配列によって様々である。本発明の方法を実施するためのハイブリダイゼーション条件の最適化は当業者に公知である。
【0108】
代表的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りである。高ストリンジェンシーは、一般に0.018M NaCl中、65℃で安定なハイブリッドを形成する核酸配列のみでハイブリダイゼーションが起こる条件をいう。高ストリンジェンシー条件は、例えば、50%ホルムアミド、5Xデンハルト液、5X SSC(クエン酸生理食塩水)、0.2% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中、42℃でハイブリダイゼーションを行い、その後0.1X SSCおよび0.1% SDS中、65℃で洗浄することによって提供される。中ストリンジェンシーとは、50%ホルムアミド、5Xデンハルト液、5X SSC、0.2% SDS中、42℃でハイブリダイゼーションを行い、その後0.2X SSCおよび0.2% SDS中、65℃で洗浄するのと同等の条件をいう。低ストリンジェンシーとは、10%ホルムアミド、5Xデンハルト液、6X SSC、0.2% SDS中でハイブリダイゼーションを行い、その後1X SSCおよび0.2% SDS中、50℃で洗浄するのと同等の条件をいう。
【0109】
検出可能標識
本明細書で使用する“検出可能標識”とは、プローブに結合する分子、化合物、一群の分子、または一群の化合物で、ゲノム核酸または参照核酸にハイブリダイズしたプローブを同定するために用いられるものをいう。
【0110】
検出可能標識には、それに限定されるわけではないがフルオロフォア、同位元素(例えば32P、33P、35S、3H、14C、125I、131I)、高電子密度試薬(例えば金、銀)、ナノ粒子、ELISAに一般的に使用される酵素(例えばホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光化合物、比色標識(例えばコロイド金)、磁性標識(例えばDynabeadsTM)、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、抗血清またはモノクローナル抗体を利用できるタンパク質、リガンド、ホルモン、対応するオリゴヌクレオチド相補体と複合体を形成する能力のあるオリゴヌクレオチドがある。
【0111】
好ましい態様では、検出可能標識はフルオロフォアである。本明細書で使用する“フルオロフォア”という用語は、特定の波長(励起周波数(excitation frequency))の光を吸収し、次いでそれに応答して異なる(一般的には、より長い)波長(発光周波数(emission frequency))の光を放射する分子をいう。ある態様では、検出可能標識はクエンチャー部分の近傍にあるドナー・フルオロフォアである。
【0112】
好適な蛍光部分には、それらに限定されるわけではないが個々に作用する、または組み合わされて作用する以下のフルオロフォアがある:4-アセトアミド-4’-イソチオシアネートスチルベン-2,2’ジスルホン酸;アクリジンおよび誘導体:アクリジン、アクリジンイソチオシアネート;Alexa Fluor:Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)647(Molecular Probes);5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS);4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニルフェニル]ナフタルイミド-3,5ジスルホネート(ルシファーイエローVS);N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;ブラックホールクエンチャーTM(BHQTM)色素(biosearch Technologies);BODIPY色素:BODIPY(登録商標)R-6G、BOPIPY(登録商標)530/550、BODIPY(登録商標)FL;ブリリアントイエロー;クマリンおよび誘導体:クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(couluarin)(クマリン151);Cy2(登録商標)、Cy3(登録商標)、Cy3.5(登録商標)、Cy5(登録商標)、Cy5.5(登録商標);シアノシン;4',6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5',5"-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロール・レッド);7-ジエチルアミノ-3-(4'-イソチオシアネートフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセテート;4,4'-ジイソチオシアネートジヒドロ-スチルベン-2,2'-ジスルホン酸;4,4'-ジイソチオシアネートスチルベン-2,2'-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4-(4'-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4'-イソチオシアネート(DABITC);EclipseTM (Epoch Biosciences社);エオジンおよび誘導体:エオジン、エオジンイソチオシアネート;エリスロシンおよび誘導体:エリスロシンB、エリスロシンイソチオシアネート;エチジウム;フルオレセインおよび誘導体:5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2',7'-ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(HEX)、QFITC(XRITC)、テトラクロロフルオレセイン(TET);フルオレスカミン;IR144;IR1446;ランタニド(lanthamide)蛍光体;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローザニリン;フェノールレッド;B-フィコエリスリン、R-フィコエリスリン;アロフィコシアニン;o-フタルジアルデヒド;オレゴングリーン(登録商標);ヨウ化プロピジウム;ピレンおよび誘導体:ピレン、ピレンブチレート、スクシンイミジル1-ピレンブチレート;QSY(登録商標)7;QSY(登録商標)9;QSY(登録商標)21;QSY(登録商標)35(Molecular Probes);Reactive Red 4(Cibacron(登録商標)ブリリアントレッド3B-A);ローダミンおよび誘導体:6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミングリーン、ローダミンXイソチオシアネート、リボフラビン、ロゾール酸、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);テルビウムキレート誘導体;N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)。
【0113】
他の蛍光ヌクレオチド類似体を使用することもできる。例えばJameson,Meth. Enzymol. 278:363-390,1997;Zhu,Nucl. Acids Res. 22:3418-3422,1994を参照されたい。米国特許第5,652,099号および第6,268,132号も、蛍光オリゴヌクレオチドを生成するために酵素的または化学合成のいずれかを介して核酸(例えばDNAおよび/またはRNA)またはオリゴヌクレオチドに導入するためのヌクレオシド類似体について記載している。米国特許第5,135,717号は蛍光標識として使用するためのフタロシアニンおよびテトラベンズトリアザポルフィリン試薬について記載している。
【0114】
検出可能標識は、核酸に導入、結合、またはコンジュゲートさせることができる。標識を種々の長さのスペーサー・アームに結合させ、起こりうる立体障害、または他の有用もしくは所望の特性への影響を低減させることができる。例えばMansfield,Mol.Cell.Probes 9:145-156,1995参照。
【0115】
検出可能標識の核酸プローブへの導入は共有結合または非共有結合によって、例えば転写によって、例えばクレノウ・ポリメラーゼを用いるランダムプライマー標識、ニック翻訳、増幅、または当該分野で公知の同等物によって行うことができる。例えばヌクレオチド塩基を検出可能部分(例えばCy3TMまたはCy5TMのような蛍光色素)にコンジュゲートさせた後、核酸合成または増幅の際に核酸プローブに導入する。未標識のdCTPと混合したCy3TM-またはCy5TM-dCTPコンジュゲートを用いて合成する際に核酸プローブを標識することもできる。
【0116】
核酸プローブの標識は、標識された前駆体ヌクレオチドの存在下でPCRまたはニック翻訳を用いて行うことができ、例えばアリルアミン-dUTPを蛍光色素またはハプテン(例えばビオチンまたはジゴキシゲニン)のスクシンイミジルエステル誘導体に結合させることによって合成される修飾型ヌクレオチドを使用することができる;この方法により、一般的な蛍光ヌクレオチドのほとんどを必要に応じて構築することができる(例えばHenegariu,Nat. Biotechnol. 18:345-348,2000参照)。
【0117】
当該分野で公知の非共有結合法によって核酸のプローブを標識してもよい。例えば、Kreatech BiotechnologyのUniversal Linkage System(登録商標)(ULS(登録商標))によって非酵素的標識法を行うことができ、ここでは、白金族がDNA、RNA、またはヌクレオチドと、グアノシンのN7位に結合することによって配位結合を形成する。この技術を用い、アミノ酸の窒素および硫黄含有側鎖に結合させることによってタンパク質を標識してもよい。例えば米国特許第5,580,990号;第5,714,327号;および第5,985,566号;並びに欧州特許第0539466号参照。
【0118】
検出可能標識での標識は、別の生体分子に結合した核酸、例えばオリゴヌクレオチドのような核酸、または“分子ビーコン”もしくは“アプタマー・ビーコン”のようなステム・ループ構造を有する核酸を含んでもよい。検出可能部分としての分子ビーコンは当該分野で公知である;例えばSokol(Proc. Natl. Acad. Sci,USA 95:11538-11543,1998)は、対応する蛍光ドナーとアクセプター発色団をその5’および3’末端に有する“分子ビーコン”レポーター・オリゴデオキシヌクレオチドを合成した。相補的核酸鎖が存在しなければ分子ビーコンはステム・ループ構造のままであり、蛍光共鳴エネルギー転移により、シグナルは放射されない。相補配列とハイブリダイズするとステム・ループ構造が開き、ドナーおよびアクセプター部分間の物理的距離が増加し、それによって蛍光共鳴エネルギー転移が低下し、好適な波長の光によってビーコンが励起されると検出可能なシグナルが放射される。例えば以下参照:Antony(Biochemistry 40:9387-9395,2001、オリゴデオキシリボヌクレオチドを形成するGリッチ18量体トリプレックスから成る分子ビーコンについて記載)。米国特許第6,277,581号および第6,235,504号も参照。
【0119】
アプタマー・ビーコンは分子ビーコンに類似している;例えばHamaguchi,Anal. Biochem.294:126-131,2001;Poddar,Mol. Cell. Probes 15:161-167,2001;Kaboev,Nucl. Acids Res. 28:E94,2000参照。アプタマー・ビーコンは2つまたはそれ以上のコンフォメーションを取りうるが、そのうちの1つでリガンドの結合が可能である。蛍光-クエンチング対を用いて、リガンド結合によって誘導されるコンフォメーション変化を伝える。例えばYamamoto,Genes Cells 5:389-396,2000; Smimov,Biochemistry 39:1462-1468,2000参照。
【0120】
核酸プローブはペプチドを介して間接的に検出可能標識を施与してもよい。第2のレポーター(例えばロイシンジッパー対配列、2次抗体の結合部位、転写活性化ポリペプチド、金属結合ドメイン、エピトープタグ)で認識される既定のポリペプチドエピトープを導入することによってペプチドを検出可能にすることができる。第1のペプチドと相互作用(例えばS-S結合)する第2のペプチドを介して標識を結合させてもよい。
【0121】
当業者に容易に認識されるように、標識されたプローブにハイブリダイズしたゲノム核酸を含有する複合体の検出は、プローブの標識に対する標識された抗体を使用することによって行うことができる。好ましい態様では、プローブをジゴキシゲニンで標識し、蛍光標識した抗ジゴキシゲニン抗体で検出する。別の態様では、プローブをFITCで標識し、蛍光標識した抗FITC抗体で検出する。これらの抗体は容易に購入できる。別の態様では、プローブをFITCで標識し、抗FITC抗体1次抗体および標識された抗-抗FITC2次抗体で検出する。
【0122】
ゲノム核酸およびプローブ複合体の検出
ハイブリダイズしたゲノム核酸、プローブ、および固相支持体複合体に導入された検出可能な標識を施与されたプローブの検出法は公知であり、標識の性質によって様々である。
【0123】
蛍光色素の検出は、外部光源(例えば白熱灯またはレーザー)から供給されるある波長の光子エネルギーに標識を暴露し、フルオロフォアを励起状態に変換させることによって行う。次いでフルオロフォアは吸収したエネルギーを励起波長より長い波長で放出し、これは、蛍光検出器を含む標準的な装置で蛍光として測定できる。代表的な蛍光装置には蛍光光度計およびマイクロプレートリーダー、蛍光顕微鏡、蛍光スキャナー、およびフローサイトメーターがある。
【0124】
複数のフルオロフォアを検出する装置および方法は当該分野で公知である。例えば米国特許第5,539,517号;第6,049,380号;第6,054,279号;第6,055,325号;および第6,294,331号参照。任意の既知の装置もしくは方法、またはそれらを改変したものを本発明の方法の実施に使用または適合させてもよい。それらには例えば多色蛍光イメージのスキャンおよび分析のような、アレイ読み取りまたは“スキャニング”装置がある。例えば米国特許第6,294,331号;第6,261,776号;第6,252,664号;第6,191,425号;第6,143,495号;第6,140,044号;第6,066,459号;第5,943,129号;第5,922,617号;第5,880,473号;第5,846,708号;第5,790,727号;および本明細書においてアレイに関する記述の中で引用する特許参照。また、米国特許出願第2001/0018514号;第2001/0007747号;そして国際特許公開WO/0146467 A;WO/9960163 A;WO/0009650 A;WO/0026412 A;WO/0042222 A;WO/0047600 A;およびWO/0101144 Aも参照されたい。
【0125】
電荷結合素子(CCD)を、本発明の方法の実施を含むマイクロアレイ・スキャニング系に使用する。光の識別は3色CCDビデオイメージに基づいて行ってもよい;これらは色相(hue)値の測定によって行うことができる。色相値を導入して光を数値的に特定する。カメラの別個のチャンネルで記録される赤色、緑色、および青色光(RGB)の強度に基づいて計算を行う。しかしながら、RGB値を色相に変換するのに用いられる式によってデータは単純化され、光の真の物理的特性は反映されない。あるいはまた、スペクトル・イメージングを用いることができる;これは、光を波長毎の強度(光の色を正確に表すことのできる唯一の数量である)として分析するものである。更に、スペクトル・イメージングはイメージのピクセル毎にスペクトル情報を含有するので、これから空間データを得ることができる。あるいはまた、明視野顕微鏡を用いてスペクトル・イメージを作製することができる。例えば米国特許第6,294,331号参照。
【0126】
好ましい態様では、フローサイトメトリーを用いてハイブリダイズした複合体を検出する。フローサイトメトリーは当該分野で公知の技術である。フローサイトメーターでは、粒子(例えば細胞または合成マイクロ粒子もしくはビーズ)の懸濁液を流体力学的に絞り込んで粒子を本質的に一列の流れとすることにより、各粒子を個々に分析することができる。フローサイトメーターは、粒子サイズに相関する前方および側方散乱光を測定することができる。従って、異なるサイズの粒子を本発明の方法に同時に使用し、異なる核酸セグメントを検出してもよい。更に、1つまたはそれ以上の波長の蛍光を同時に測定することができる。それによって、粒子をサイズで選別し、各粒子について1つまたはそれ以上の蛍光標識プローブを分析できる。代表的なフローサイトメーターにはBecton-Dickenson Immunocytometry Systems FACSCANがある。同様のフローサイトメーターも本発明の方法に使用できる。
【0127】
別の態様では、固相支持体に固定化され、プローブにハイブリダイズしたゲノム核酸を含有する複合体を表面プラズモン共鳴によって検出してもよい。
【0128】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、例えば少なくとも50塩基、より好ましくは少なくとも100塩基、より好ましくは少なくとも200塩基、より好ましくは少なくとも500塩基、より好ましくは少なくとも1kb、より好ましくは少なくとも2 kb、より好ましくは少なくとも4 kb、より好ましくは少なくとも8 kb、および更に好ましくは少なくとも10kbもしくはそれ以上を含む大きな異常に好適である。しかしながら、当該分野で公知のようにプローブおよびハイブリダイゼーション条件を好適に調整することによって、少なくとも1塩基、少なくとも5塩基、少なくとも10塩基、少なくとも25塩基、少なくとも25-50塩基を含む、より小さな異常を検出してもよい。
【0129】
染色体セグメントまたは遺伝子の重複または欠失を検出する方法を実施例1-4に示す。これらの特定の実施例において、目的の配列はヒトHER-2遺伝子である。HER-2遺伝子の増幅は乳癌と関係することが報告されている。試験症例のゲノムDNAは、乳癌に罹患していることが確認されている個体の血清から単離する。コントロール症例のゲノムDNAは乳癌に罹患していないことが確認されている個体から単離する。ゲノムDNAをビオチン化し、2つのプローブにハイブリダイズさせる。プローブの一方はHER-2遺伝子のある領域に相補的であり、FITCで標識される。他方のプローブは17番染色体に特異的なシングルコピー配列(17-SSC)のある領域に相補的であり、Cy5で標識される。その後、2つのプローブにハイブリダイズさせたビオチン化ゲノムDNAを市販のストレプトアビジン・コーティング・ビーズに固定化する。複合体をウサギ抗FITC/ヤギ抗ウサギAlexa-488抗体に結合させることにより、HER-2プローブからのシグナルを更に増強する。フローサイトメトリーを用いてビーズに捕捉されたハイブリダイゼーション複合体を検出する。HER-2プローブ/抗体対から得られるシグナルと17-SSCから得られるシグナルの比率を測定する。試験症例からのシグナルの比率をコントロール症例と比較する。比率が高いほどHER-2遺伝子が増幅されているとみなされる。
【0130】
ここで、以下の非制限的な実施例を参照することによって、本発明についてより詳細に記載する。
【実施例】
【0131】
実施例1 ゲノム核酸の単離およびビオチン化
ゲノム核酸の単離
この実施例のゲノム核酸は、乳癌に罹患していることが確認されている個体または乳癌に罹患していないことが確認されているコントロール個体由来のヒトHER-2遺伝子配列を含有するゲノムDNAである。個体の血清からDNAを抽出するか、またはQiagen社のEZ1 DNAキットを用いてパラフィン包埋組織からゲノムDNAを単離した。
【0132】
無作為に選択した乳癌罹患個体21人および乳癌に罹患していないコントロール個体52人の血清からゲノムDNAを得た。また、パラフィン包埋組織からもゲノムDNAを単離し、無作為に選択した乳癌罹患パラフィン包埋組織サンプル92検体および乳癌に罹患していないコントロールサンプル26検体からゲノムDNAを得た。
【0133】
QIAamp MinElute Virus Spin Kit(Qiagen社,カリフォルニア州バレンシア市)を使用して、パラフィン包埋組織(FFPE)からDNAを抽出した。キシレン/エタノールで脱パラフィンした後、FFPE組織切片をプロテイナーゼKで処理し、熱失活させ(96℃、10分間)、シリカメンブレンを充填したスピンカラムでDNAを精製した。血漿または血清由来の無細胞循環DNA(circulating DNA)(200μl)を同じキットで、製造者のプロトコルに従って精製した。ゲノムDNAを37℃1時間、DpnIIで消化した。65℃で10分間熱失活させて消化を停止させた。
【0134】
単離したDNAのビオチン化:Biotin-Nick Translation Mix(Roche Applied Science社、スイス、バーゼル市)を用い、キットの説明書に従って、DNAをビオチン-16-dUTPでビオチン化した。Mix中のビオチン-16-dUTPとdTTPのモル比は、新たに合成されるDNA中の20-25ヌクレオチド毎にビオチンで標識されるように調整する(これによって検出感度が最高となる)。典型的なニック翻訳反応で得られた標識されたフラグメントは、200から500塩基対のサイズ分布であった。
【0135】
上記の段階からの単離および断片化されたDNAを、標準的なニック翻訳(NT)プロトコルを用いてビオチン化した。10μlのDNAを含有する反応混液をNT酵素、バッファー、およびビオチン-16-dUTPと混合し、65℃で1.5時間インキュベートした。0.5M EDTAを添加して反応を停止させ、混合液を65℃で10分間インキュベートした。ゲノムDNA(1μg)を変性させるために、変性溶液(70%脱イオン化ホルムアミド、0.2xSSC)中で73℃、7分間インキュベートした後、氷上で5分間インキュベートした。
【0136】
あるいは、市販のキット(例えばLabel IT(登録商標) μArray(登録商標) Biotin Labeling Kit)を用いて単離したDNAをビオチンで直接標識した。
【0137】
実施例2 標識したプローブとビオチン化した標的DNAとのハイブリダイゼーション
ヒトHER-2遺伝子のある領域に相補的なFITC標識したプローブおよびCy-5で標識した17番染色体特異的シングルコピー配列(17-SSC)を用いて、血清またはパラフィン包埋組織サンプルから単離したビオチン化ゲノムDNAとハイブリダイズさせた。
【0138】
17-SSCの配列を以下に示す:
5´ Cy5-TGTATTTATC CTCTCTCTAG CCATCCATAGC TGTAGCTGGC TCACTCACT 3´ (SEQ ID NO: 1)
【0139】
プローブをHybrisol VIIハイブリダイゼーション溶液(MP Biomedicals社、オハイオ州ソロン)に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートし、73℃で10分間変性させた。次いで、プローブ混合液を氷上で5分間冷却した。その後、変性溶液(70%脱イオン化ホルムアミド、0.2xSSC)をプローブ混合液に添加した。
【0140】
変性させたプローブ混合液及び変性させたゲノムDNAを混合し、37℃で一晩インキュベートした。
【0141】
実施例3 固相支持体上のハイブリダイゼーション複合体の捕捉およびフローサイトメトリーによる検出
ビオチン標識したゲノムDNAを含有するハイブリダイゼーション複合体をストレプトアビジン・コーティング・ビーズに捕捉した。非特異的結合を低減するために、コンジュゲーションに先立ってストレプトアビジン・コーティング・マイクロスフェア(Bangs Laboratories社、インディアナ州フィッシャーズ)をBlockAid(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)および断片化サケ精子DNA(100μg/mL)で順次処理した。5μlのストレプトアビジン・ビーズ(Bangs社、インディアナ州フィッシャーズ)を100μlのコンジュゲーション・バッファー(100mM Tris-HCL;pH 8.0、0.1% Tween 20;および1M LiCl)で1回洗浄し、20μlのコンジュゲーション・バッファーに再懸濁した。5μlのプローブ-DNA複合体をビーズに添加し、混合液を室温で撹拌しながら1時間インキュベートし、ビーズ-DNA複合体を生成させた。結合したビーズを10%ホルムアミド/0.2x SSCで1回、0.2x SSCで2回、洗浄する。ウサギ抗FITC抗体(BD Bioscience)を含有する溶液にビーズ複合体を再懸濁した。ビーズ複合体を2% BSA/リン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、4%ブロッキング・ミルクに再懸濁し、2% BSA/PBSで1回洗浄した。ビーズ複合体をAlexa-488標識したヤギ抗ウサギ抗体(BD Bioscience)を1:500の希釈率で含有する溶液に再懸濁し、暗所において室温で30分間回転撹拌した。次いで、Sorvall CW-2 Cell washerを用いてビーズ複合体を2% BSAで1回洗浄し、ビーズを沈殿させた。
【0142】
FITC/Alexa-488色素を併用することにより、FITCからの蛍光シグナルを更に増幅した。ビーズ上のFITC/Alexa-488およびCy5からの蛍光シグナルを、フローサイトメーター(Canto、BD、カリフォルニア州サンノゼ)で製造者の説明書に従って測定したビーズ毎の蛍光の変化として検出した。少なくとも5000事象の平均蛍光強度(MFI)を、装置(Diva)のソフトウェア(BD、カリフォルニア州サンノゼ)を用いて各サンプルについて算出した。
【0143】
実施例4 ゲノム核酸中の遺伝子異常を検出するアッセイの結果
FITC/Alexa-488およびCy-5からのシグナルの比率を測定した。この比率はHER-2:17-SSCの比を表す。コントロール個体およびコントロールサンプルから得られた結果に基づいて、2.14(平均値±3 SD)の比率をHER-2遺伝子増幅とみなした。
【0144】
実施例4の方法を用いて得られた結果をFISH、免疫組織化学(IHC)、およびELISA法で得られた結果と比較した。
【0145】
血清サンプルを用いて、本発明の方法とFISHおよびIHCの結果では、それぞれ90.5%および90%の一致率であった。本発明の方法を用いて血清サンプルから得られたHER-2のレベルを、ELISA法で12.3ng/mlの血清をカットオフとして得られたHER-2レベルと更に比較した。2つの方法の結果の一致率は52%であった。この一致率は、ELISAおよびIHC/細胞に基づく試験法で報告されているものと同様であった。1) Kong SYら:Serum HER-2 concentration in patients with primary breast cancer. J Clin Pathol 59:373-736, 2006;2) Fornier MNら:Serum HER-2 extracellular domain in metastatic breast cancer patients treated with weekly trastuzumab and paclitaxel: association with HER-2 status by immunohistochemistry and fluorescence in situ hybridization and with response rate. Ann Oncol 16:234-239, 2005。
【0146】
乳癌患者由来のパラフィン包埋組織サンプルを実施例4の方法とIHCおよび慣例的なFISH法で試験した。IHC 3+のサンプルまたは慣例的FISH法でサンプルとコントロールのシグナル比が2.2より高いサンプルのいずれかのみがHER-2増幅陽性であるとみなされ、IHC 0/1+染色であるか、または慣例的FISH法でサンプルとコントロールのシグナル比が1.8未満である場合は、HER-2増幅陰性と解釈される。IHC2+のサンプルは不確定(または不確か)と分類される。
【0147】
試験した122症例のうち、慣例的FISH法および実施例4の方法で得られた結果が一致したのは103症例であった。慣例的FISH法で比が2.2より大きかった4症例においては実施例4の方法では陰性であり、慣例的FISH法で陰性(比が1.8以下)であった15症例においては実施例4の方法では陽性であった。全体として、慣例的FISH法と実施例4の方法の一致率は84.4%であった(P<0.001)。
【0148】
試験した80症例のうち、IHCおよび実施例4の方法で得られた結果が一致したのは63症例であった。IHC法でHER-2の過剰発現が陽性であった8症例においては実施例4の方法では陰性であり、IHC法で陰性であった9症例においては実施例4の方法では陽性であった。全体として、IHCと実施例4の方法の一致率は78.8%であった(P<0.001)。
【0149】
特に記載しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で提供する全てのヌクレオチド配列は5'から3'への方向で表す。
【0150】
本明細書において例証的に記載した本発明は、適宜、任意の要素(単数または複数)、制限(単数または複数)を欠いた状態で実施してもよいが、それらについては本明細書には具体的に開示していない。従って、例えば“含む”、“包含する”、“含有する”等の用語は広義かつ無制限に解釈すべきである。更に、本明細書で使用する用語および表現は制限ではなく説明のための用語として使用するものであり、それらの用語および表現の使用においては、表記および説明する特長の同等物またはその一部のいずれをも除外することを意図せず、認識されるように、本発明の特許請求の範囲内で種々の改変を行うことができる。
【0151】
従って、好ましい態様および更なる特長によって本発明を具体的に開示したが、当業者は本明細書において具体化した本発明の改変、改良、および変更の手段をとってもよく、それらの改変、改良、および変更は本発明の範囲内に含まれるとみなされることは理解されるべきである。本明細書に記載する物質、方法、および実施例は好ましい態様を表すもので、例証であって、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0152】
本発明について、本明細書において広範かつ一般的に記載した。包括的な開示の中に含まれるより狭い分類および亜群もそれぞれ本発明の一部を成す。これには、その属から対象物を除外する条件または負の限定付きの本発明の包括的な説明が含まれ、除外されたものが本明細書に具体的に記載されているか否かは関係がない。
【0153】
更に、本発明の特長または観点をマーカッシュグループで記載する場合、当業者に認識されるように、本発明はマーカッシュグループの任意の個別メンバーまたはメンバーのサブグループでも記述される。
【0154】
本明細書に記載する全ての文献、特許出願、特許、および他の文献は、そのそれぞれが個別で参照により組み込まれるのと同じ程度に、参照によりその全体が明確に本明細書に組み込まれる。不一致がある場合は、本明細書(定義を含む)が制御する。
【0155】
他の態様を添付の特許請求の範囲に記載する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム核酸中の標的配列を検出する方法であり、以下:
a.該標的配列を含有するゲノム核酸サンプルを該標的配列に特異的なプローブと接触させ、該ゲノム核酸および該標的配列にハイブリダイズした該プローブを含有する複合体を固相支持体上に形成させること(ここで、該プローブは検出可能な標識を含有し、該ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で該固相支持体に固定され、そして該ゲノム核酸の該標的配列の増幅は行われていない);そして
b.該標識と該固相支持体の結合を検出することによって該ゲノム核酸中の該標的配列の存在を検出すること
を含む上記方法。
【請求項2】
該固相支持体が結合対の第1のメンバーを含有し、該ゲノム核酸が結合対の第2のメンバーを含有し、結合対メンバーの結合によって該ゲノム核酸が該固相支持体に固定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該ゲノム核酸が該固相支持体に共有結合される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該固相支持体がビーズ、マイクロウェル・プレート、またはガラス表面である、請求項1から3のいずれか一項に記載される方法。
【請求項5】
該結合対がリガンド-受容体、ホルモン-受容体、または抗原-抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
該結合対がビオチンおよびストレプトアビジンまたはストレプトアビジンの変異体である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
該プローブがオリゴヌクレオチド、人工染色体、断片化人工染色体、ゲノムDNA 、RNA、またはペプチド核酸である、請求項1から6のいずれか一項に記載される方法。
【請求項8】
プローブの長さが少なくとも50ヌクレオチドである、請求項1から7のいずれか一項に記載される方法。
【請求項9】
検出可能標識がフルオロフォア、ナノ粒子、同位元素、化学発光化合物、酵素、またはハプテンである、請求項1から8のいずれか一項に記載される方法。
【請求項10】
該複合体をフローサイトメトリーによって固相支持体上で検出する、請求項1から9のいずれか一項に記載される方法。
【請求項11】
プローブの検出可能標識に結合する標識された試薬を検出することによって該複合体を検出する、請求項1から10のいずれか一項に記載される方法。
【請求項12】
該標識された試薬が検出可能標識に特異的な標識された抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項13】
該ゲノム核酸が試験サンプル中に含有され、該試験サンプルが細胞、組織、体液、糞便、パラフィン包埋組織、細胞ライセート、または組織ライセートである、請求項1から12のいずれか一項に記載される方法。
【請求項14】
ゲノム核酸中の遺伝子異常の存在または不存在を検出する方法であり、以下:
a.ゲノム核酸サンプルを該遺伝子異常に特異的なプローブと接触させ、(もし該遺伝子異常が該ゲノム核酸中に存在すれば)該ゲノム核酸および該プローブを含有する複合体を固相支持体上に形成させること(ここで、該ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で該固相支持体に固定され、該ゲノム核酸の該標的配列の増幅は行われていない);
b.標識と該固相支持体の結合を検出することによって該遺伝子異常の存在を検出すること
を含む上記方法。
【請求項15】
該遺伝子異常が染色体転座であり、該プローブの第1の部分が第1の染色体転座のある領域にハイブリダイズし、該プローブの第2の部分が第2の染色体転座のある領域にハイブリダイズする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
遺伝子異常が特定の染色体セグメントまたは遺伝子に関係する重複または欠失である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
該固相支持体が結合対の第1のメンバーを含有し、該ゲノム核酸が結合対の第2のメンバーを含有し、結合対メンバーの結合によって該ゲノム核酸が該固相支持体に固定される、請求項14から16のいずれか一項に記載される方法。
【請求項18】
該ゲノム核酸が固相支持体に共有結合によって固定される、請求項14から16のいずれか一項に記載される方法。
【請求項19】
該ゲノム核酸がゲノムDNAである、請求項14から18のいずれか一項に記載される方法。
【請求項20】
該固相支持体がビーズ、マイクロウェル・プレート、またはガラス表面である、請求項14から19のいずれか一項に記載される方法。
【請求項21】
該結合対がリガンド-受容体、ホルモン-受容体、または抗原-抗体である、請求項17記載の方法。
【請求項22】
該結合対がビオチンおよびストレプトアビジンまたはストレプトアビジンの変異体である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
該プローブがオリゴヌクレオチド、人工染色体、断片化人工染色体、ゲノムDNA 、RNA、またはペプチド核酸である、請求項14から22のいずれか一項に記載される方法。
【請求項24】
プローブの長さが少なくとも50ヌクレオチドである、請求項14から23のいずれか一項に記載される方法。
【請求項25】
プローブをフルオロフォア、ナノ粒子、同位元素、化学発光化合物、酵素、またはハプテンで標識する、請求項14から24のいずれか一項に記載される方法。
【請求項26】
該複合体をフローサイトメトリーによって固相支持体上で検出する、請求項14から25のいずれか一項に記載される方法。
【請求項27】
プローブの検出可能標識に結合する標識された試薬を検出することによって該複合体を検出する、請求項14から26のいずれか一項に記載される方法。
【請求項28】
該標識された試薬が検出可能標識に特異的な標識された抗体である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該ゲノム核酸が試験サンプル中に含有され、該試験サンプルが細胞、組織、体液、糞便、パラフィン包埋組織、細胞ライセート、または組織ライセートである、請求項14から28のいずれか一項に記載される方法。
【請求項30】
ゲノム核酸中の遺伝子異常の存在または不存在を検出する方法であり、以下:
a.遺伝子異常を含有するゲノム核酸サンプルを該遺伝子異常に特異的な第1のプローブと接触させ、該ゲノム核酸および該第1のプローブを含有する第1の複合体を固相支持体上に形成させること(ここで、該プローブは検出可能な標識を含有し、該ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で該固相支持体に固定され、そして、該ゲノム核酸の該標的配列の増幅は行われていない);
b.参照核酸を該参照核酸に特異的な第2のプローブと接触させ、参照核酸および該第2のプローブを含有する第2の複合体を固相支持体上に形成させること(ここで、該第2のプローブは検出可能な標識を含有する);
c.形成された該第1の複合体の量の測定を、複合体に結合した該第1のプローブの検出可能な標識を検出することによって行い、形成された第2の複合体の量の測定を、複合体に結合した該第2のプローブの検出可能な標識を検出することによって行うこと;そして
d.該第1の複合体の量と該第2の複合体の量を比較すること(ここで、2つの複合体の量の差異は遺伝子異常を示す)
を含む上記方法。
【請求項31】
該参照核酸が染色体中のハウスキーピング遺伝子またはシングルコピー配列である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
該ゲノム核酸および該参照核酸を同一のサンプルから得る、請求項30から31のいずれか一項に記載される方法。
【請求項33】
該ゲノム核酸および該参照核酸を異なるサンプルから得る、請求項30から32のいずれか一項に記載される方法。
【請求項34】
該第1のプローブおよび該第2のプローブの検出可能標識が異なる、請求項30から33のいずれか一項に記載される方法。
【請求項35】
該第1のプローブおよび該第2のプローブが同一であり、該ゲノム核酸および該参照核酸を異なるサンプルから得る、請求項30から31および33から34のいずれか一項に記載される方法。
【請求項36】
ゲノム核酸中の遺伝子異常の存在または不存在を検出する方法であり、以下:
a.遺伝子異常を含有するゲノム核酸サンプルを遺伝子異常に特異的な第1のプローブと接触させ、該ゲノム核酸および第1のプローブを含有する第1の複合体を固相支持体上に形成させること(ここで、該プローブは検出可能な標識を含有し、該ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で該固相支持体に固定され、そして、該ゲノム核酸の該標的配列の増幅は行われていない);
b.ゲノム核酸サンプルを参照核酸に特異的な第2のプローブと接触させ、参照核酸および第2のプローブを含有する第2の複合体を固相支持体上に形成させること(ここで、該第2のプローブは検出可能な標識を含有する);
c.形成された該第1の複合体の量の測定を、複合体に結合した該第1のプローブの検出可能な標識を検出することによって行い、形成された第2の複合体の量の測定を、複合体に結合した該第2のプローブの検出可能な標識を検出することによって行うこと;
d.該第1および該第2の複合体の量の比率を求めること;そして
e.得られた該比率を参照サンプル由来のゲノム核酸を用いて同様に得た比率と比較すること(ここで、比率の差異は遺伝子異常を示す)
を含む上記方法。
【請求項37】
遺伝子異常が特定の染色体セグメントまたは遺伝子に関係する重複または欠失である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
該第1の複合体および第2の複合体をフローサイトメトリーによって固相支持体上で検出する、請求項36から37のいずれか一項に記載される方法。
【請求項39】
該第1のプローブおよび該第2のプローブの長さが少なくとも50ヌクレオチドである、請求項36から38のいずれか一項に記載される方法。
【請求項40】
該固相支持体が結合対の第1のメンバーから成り、該ゲノム核酸が結合対の第2のメンバーから成り、結合対メンバーの結合によって該ゲノム核酸が該固相支持体に固定される、請求項36から39のいずれか一項に記載される方法。
【請求項41】
該結合対がビオチンおよびストレプトアビジンまたはストレプトアビジンの変異体である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
該ゲノム核酸がゲノムDNAである、請求項36から41のいずれか一項に記載される方法。
【請求項43】
該参照核酸が染色体中のハウスキーピング遺伝子またはシングルコピー配列である、請求項36から42のいずれか一項に記載される方法。
【請求項44】
個体における疾患を診断する方法であり、以下:
a.個体由来のゲノム核酸サンプルを該疾患に特異的な核酸配列に相補的なプローブと接触させ、(もし該ゲノム核酸が該疾患に特異的な核酸配列を含有すれば)該ゲノム核酸および該プローブを含有する複合体を固相支持体上に形成させること(ここで、該プローブは検出可能な標識を含有し、該ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で該固相支持体に固定され、該ゲノム核酸の該標的配列の増幅は行われていない);
b.該固相支持体上に形成された該複合体の量の測定を、該支持体に結合した検出可能な標識の量を検出することによって行うこと;そして
c.形成された複合体の量を、同様の条件下でアッセイした参照サンプル由来のゲノム核酸を用いて形成された複合体の量と比較すること(ここで、該個体から形成された複合体の量と参照サンプルとの差異によって該疾患が診断される)
を含む上記方法。
【請求項45】
該参照サンプルを正常な個体から得る、請求項44記載の方法。
【請求項46】
方法を用いて癌に罹患している疑いのある個体の腫瘍量を測定する、請求項44から45のいずれか一項に記載される方法。
【請求項47】
該参照サンプルを試験サンプルを得た後に同じ個体から得る、請求項44から46のいずれか一項に記載される方法。

【公表番号】特表2011−505137(P2011−505137A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536056(P2010−536056)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083673
【国際公開番号】WO2009/073345
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】