説明

ゲートの切断装置

【課題】ゲート部を適正に切断することによって、品質の高い成形品を能率よく得る。また、熱収縮により樹脂成形体に歪みが生じて、切断刃によるゲート部の切断位置が変位したとしても、矯正の手間を省略して変位を回復させることによって、正確な切断を実行できるようにしたゲートの切断装置を提供する。
【解決手段】加熱装置6によって樹脂成形体4を加熱することで、切断刃とゲート部3との温度差を小さくしてゲート部3を切断し、クラックの発生を防止して成形品1の品質低下を抑制する。また、樹脂成形体4が自然放熱による冷却で熱収縮して歪みを生じて、切断刃によるゲート部3の切断位置Cが変位しても、樹脂成形体4を加熱することで、前記歪みおよび該歪みにより発生した切断位置Cの変位を補正させて、樹脂成形体4を熱収縮前の状態に回復させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートの切断装置に係り、さらに詳しくは、成形品と、ランナー部と、これら両者の間に介設されて当該両者を互いに連続させるためのゲート部を切断するためのゲートの切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示す4個の樹脂成形品(以下、では成形品という)1と、ランナー部2と、これら両者1,2の間に介設されて両者1,2を互いに連続させるためのゲート部3とを備えた樹脂成形体4は、樹脂成形機によって成形されたのちに、成形品取出機によって樹脂成形機外のゲートの切断装置まで搬送され、ここでゲート部3を切断位置Cで切断することによって、成形品1を分離回収するようにしている。
【0003】
ところで、ゲートの切断装置による切断作業能率の向上を図るために、たとえば、ゲート切断用エアニッパの切断刃を、予め所定温度に加熱する方式が採用されており、このように切断刃を加熱することで、ゲート部3を軟化させて切断速度を高めるようにしている。
【0004】
ところが、切断刃がゲート部3に当接した時点から、切断刃によるゲート部3の切断が完了した時点に至る切断所用時間がきわめて短いので、短時間の間に高温の切断刃によりゲート部3を加熱して軟化させることが期待できない場合がある。このように、高温の切断刃によるゲート部3の加熱軟化が期待できず、したがって、切断刃とゲート部3との温度差が大きいままでゲート部3の切断が実行されるとクラックが発生し、このクラックが成形品1にまで波及して成形品1の品質を著しく低下させることになる。
【0005】
一方、図3の樹脂成形体4が成形品取出機によって機樹脂成形機から取出されて搬送される間に、樹脂成形体4は自然放熱によって冷却される。これにより、たとえば、図4,図5に示すように、熱収縮により樹脂成形体4に歪みが生じて、切断刃によるゲート部3の切断位置Cが変位する事態を招く。すなわち、図3に示すように、切断前段階の樹脂成形体4では、樹脂成形体4と切断装置の切断刃との相対関係において、成形品1の間隔W1を所定の大きさに設定することが必要であるにもかかわらず、熱収縮により樹脂成形体4が歪んで、図4に示すようなW2>W1、W3<W1の関係になったり、図5に示すようなW4>W1の関係になって、切断刃によるゲート部3の切断位置Cが変位する事態を招き、正確な切断が妨げられるので、切断位置の矯正に手間がかかって切断作業性を低下させるばかりか、切断後における成形品1の仕上げ作業が煩雑になる。
【0006】
そこで、ランナー部2におけるゲート部3の近傍に位置決め用の突起部を設け、この突起部を嵌合する位置決め孔を成形品取出し部材に設けることで、切断位置の矯正を省略できるようにしたゲートの切断装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−313036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記特許文献1に記載されているゲートの切断装置では、突起部を位置決め孔に嵌合する前段階で熱収縮による樹脂成形体4の歪みが生じると、突起部と位置決め孔とにずれが生じて、突起部を位置決め孔に嵌合するのが困難になる。また、たとえ突起部を位置決め孔に嵌合できたとしても、ランナー部2におけるゲート部3の近傍に位置決め用の突起部が設けられることで、金型内での成形時において、突起部により樹脂のスムーズな流動が妨げられて、成形品1の成形精度を低下させる原因になる。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、ゲート部を適正に切断することによって、品質の高い成形品を能率よく得ることができ、また、自然放熱による冷却時の熱収縮により樹脂成形体に歪みが生じて、切断刃によるゲート部の切断位置が変位したとしても、矯正の手間を省略して変位を回復させることによって、正確な切断を実行できるようにしたゲートの切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るゲートの切断装置は、成形品と、ランナー部と、これら両者の間に介設されて両者を互いに連続させるためのゲート部とを備えた樹脂成形体の前記ゲート部を切断するゲートの切断装置において、前記樹脂成形体を加熱する加熱装置を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、加熱装置によって樹脂成形体が加熱されることで、切断刃とゲート部との温度差が小さい状態でゲート部の切断を実行できるので、クラックの発生が防止されて成形品の品質低下を抑制することができる。また、樹脂成形体が成形品取出機によって樹脂成形機から取出されて搬送される間に、自然放熱による冷却で熱収縮して樹脂成形体に歪みが生じて、切断刃によるゲート部の切断位置が変位しても、樹脂成形体が加熱されることで、前記歪みおよび該歪みにより発生した切断位置の変位を補正させて、樹脂成形体を熱収縮前の状態に回復させることができる。
【0012】
また、本発明は、加熱装置を、ランナー部とゲート部とを加熱するように構成することが望ましい。これによると、切断刃とゲート部との温度差が小さい状態でゲート部の切断を実行できるので、クラックの発生が防止されて成形品の品質低下を抑制することができるとともに、加熱装置による成形品の加熱が回避されることで、成形品の熱膨張や熱歪みなどを防止して、品質の低下を抑制することができる。また、樹脂成形体が成形品取出機によって樹脂成形機から取出されて搬送される間に、自然放熱による冷却で熱収縮して樹脂成形体に歪みが生じて、切断刃によるゲート部の切断位置が変位しても、ランナー部とゲート部とが加熱されることで、前記歪みおよび該歪みにより発生した切断位置の変位を補正させて、ランナー部とゲート部とを熱収縮前の状態に回復させることができる。
【0013】
さらに、本発明は、加熱装置を、ランナー部を高温で加熱し、ゲート部をそれよりも低い温度で加熱するように構成することが望ましい。これによると、自然放熱による冷却で樹脂成形体が熱収縮した場合に、最も歪みやすいランナー部が高温で加熱されることで、ランナー部の歪みおよび該ランナー部の歪みにより発生した切断位置の変位を補正させて、ランナー部を熱収縮前の状態に回復させることができる。また、ゲート部の高温化が抑えられることで、成形品の過剰な昇温が回避されるので、成形品の熱膨張や熱歪みなどを防止して、品質の低下を抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、加熱装置には、ランナー部を位置決めするための第1の位置決め手段を設け、該加熱装置の外側には、成形品を位置決めするための第2の位置決め手段を設けることが望ましい。これによると、第1の位置決め手段によって、ランナー部を加熱されやすい位置に位置決めすることで、前記歪みにより発生した切断位置の変位を補正させることができるとともに、第2の位置決め手段によって、成形品を加熱され難い位置に位置決めすることで、熱膨張や熱歪みなどを防止して、品質の低下を抑制することができる。
【0015】
さらに、本発明は、加熱装置と第2の位置決め手段とを相対移動させる移動手段を設けることが望ましい。これによると、移動手段によって加熱装置と第2の位置決め手段との間隔を調整して、ゲート部の切断位置を切断刃の切断軌道に正確に対応させて、適正な切断を実行することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加熱装置によって樹脂成形体が加熱されることで、切断刃とゲート部との温度差が小さい状態でゲート部を切断できるので、クラックの発生を防止して、品質の高い成形品を能率よく得ることができ。また、樹脂成形体が自然放熱による冷却で熱収縮して歪むことにより、切断刃によるゲート部の切断位置が変位しても、樹脂成形体が加熱されることで、前記歪みおよび該歪みにより発生した切断位置の変位を補正させて、樹脂成形体を熱収縮前の状態に回復させることができるので、変位矯正の手間を省いて正確な切断を実行するとともに、切断後における成形品の仕上げ作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、前記図3,図4および図5と同一部分には、同一符号を付して説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態を示す正面図、図2は図1の平面図であり、4個取りの樹脂成形体4を示している。図1および図2において、成形品1と、ランナー部2と、これら両者1,2の間に介設されて両者1,2を互いに連続させるためのゲート部3とを備えた樹脂成形体4は、ゲート部3を切断するためのゲートの切断装置5に載置して位置決めされる。
【0019】
ゲートの切断装置5は、樹脂成形体4を加熱する加熱装置6を備えている。この加熱装置6は、投影平面形状が角型のヒータボックス6aと、ヒータボックス6aの内部に配設される熱源6bとを有する。ヒータボックス6aは、熱伝導性にすぐれた鋼板製のもので、ベース7の上面に適宜固定されており、その表面には第1の位置決め手段8を構成する4つの位置決めピン8aが立設されている。また、熱源6bはシーズヒータからなり、この熱源6bに通電することで、ヒータボックス6aの表面は約80℃〜100℃まで昇温する。
【0020】
ヒータボックス6aの前後方向(矢印Y方向)の両側近傍には、幅方向(矢印X方向)に所定の間隔を隔てて、第2の位置決め手段9を構成する4つのホルダー9aが配置されている。これらホルダー9aは、円形のレンズである成形品1を上から落とし込んで保持できる曲率半径の円形切欠9bを備え、それぞれが移動手段10によって矢印Y方向に進退可能に配置されている。
【0021】
前記構成において、樹脂成形機から取出された樹脂成形体4は、その直後に図1のように加熱装置6におけるヒータボックス6aの表面に載置されて、第1の位置決め手段8を構成する4つの位置決めピン8aによりランナー部2の一部が若干の余裕を有した状態で挟持されて位置決めされる。このように、ランナー部2の一部が若干の余裕を有して4つの位置決めピン8aにより挟持されることで、ヒータボックス6aの表面に載置された後にランナー部2に熱膨張が生じても、4つの位置決めピン8aによってランナー部2の一部を挟持して、樹脂成形体4を位置決めすることができる。同時に、円形のレンズである成形品1を第2の位置決め手段9を構成する4つのホルダー9aの円形切欠9bに落とし込んで保持する。
【0022】
予め、シーズヒータからなる熱源6bに通電をしておくことで、ヒータボックス6aの表面は約80℃〜100℃まで昇温している。このように昇温しているヒータボックス6aの表面に樹脂成形体4が位置決めされると、ランナー部2とゲート部3とが加熱されて昇温する。このため、ゲート部3の切断位置Cを切断するゲート切断用エアニッパの切断刃が所定温度に加熱されていても、この切断刃とゲート部3との温度差が小さい状態で切断位置Cを切断できるので、クラックの発生を防止して、成形品1の品質低下を抑制することができる。
【0023】
また、樹脂成形体4が成形品取出機によって機樹脂成形機から取出されて搬送される間に、自然放熱による冷却で熱収縮して樹脂成形体に歪みが生じて、ゲート部3の切断位置Cが変位しても、ランナー部2とゲート部3とが加熱されて昇温することで、前記歪みおよび該歪みにより発生した切断位置Cの変位を補正させて、ランナー部2とゲート部3とを熱収縮前の状態に回復させることができるので、切断位置Cの正確な切断が可能になって、切断位置Cの変位を矯正する手間を省いて正確な切断を実行することができるとともに、切断後における成形品1の仕上げ作業が容易になる。
【0024】
一方、加熱装置6のヒータボックス6aによって、樹脂成形体4のランナー部2を高温で加熱し、ゲート部3をそれよりも低い温度で加熱するように構成することにより、自然放熱による冷却で樹脂成形体4が熱収縮した場合に、最も歪みやすいランナー部2が高温で加熱されることで、ランナー部2の歪みおよび該ランナー部2の歪みにより発生した切断位置Cの変位を補正させて、ランナー部2を熱収縮前の状態に回復させることができる。また、ゲート部3の高温化が抑えられることで、成形品1の過剰な昇温か回避されるので、成形品1の熱膨張や熱歪みなどを防止して、品質の低下を抑制することができる。なお、ランナー部2を高温で加熱し、ゲート部3をそれよりも低い温度で加熱するのには、熱源6bを構成しているシーズヒータの配置パターンをゲート部3側で「疎」にし、ランナー部2側で「密」にする構造または、ヒータボックス6aにおけるゲート部3近傍を熱伝導性の低い材料によって構成し、ヒータボックス6aにおけるランナー部2が載置される領域およびその近傍を熱伝導性の高い材料によって構成すればよい。
【0025】
他方、加熱装置6のヒータボックス6aには、樹脂成形体4のランナー部2を位置決めするための第1の位置決め手段8を設けているので、この第1の位置決め手段8によって、ランナー部2を加熱されやすい位置に位置決めすることで、自然放熱による冷却でランナー部2が熱収縮して歪むことで発生した切断位置Cの変位を補正させることができるとともに、第2の位置決め手段9によって、成形品1を加熱装置6により加熱され難い位置に位置決めすることで、成形品1の熱膨張や熱歪みなどを防止して、その品質の低下を抑制することができる。
【0026】
さらに、第2の位置決め手段9を構成する4つのホルダー9aは、それぞれが移動手段10によって矢印Y方向に進退可能に配置されているので、移動手段10によって、ヒータボックス6aの前後方向(矢印Y方向)の端面とホルダー9aとの間隔Lを調整することで、ゲート部3の切断位置Cをゲート切断用エアニッパにおける切断刃の切断軌道に正確に対応させて、適正な切断を実行することができる。
【0027】
なお、前記実施の形態では、加熱装置6の熱源6bとしてシーズヒータを使用しているが、その他の熱源6bとして、遠赤外線加熱や超音波振動加熱などの加熱手段を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】樹脂成形体の一例を示す平面図である。
【図4】熱収縮により樹脂成形体が歪んだ状態の一例を示す平面図である。
【図5】熱収縮により樹脂成形体が歪んだ状態の他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 成形品
2 ランナー部
3 ゲート部
4 樹脂成形体
5 ゲートの切断装置
6 加熱装置
8 第1の位置決め手段
9 第2の位置決め手段
10 移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品と、ランナー部と、これら両者の間に介設されて両者を互いに連続させるためのゲート部とを備えた樹脂成形体の前記ゲート部を切断するゲートの切断装置において、
前記樹脂成形体を加熱する加熱装置を備えていることを特徴とするゲートの切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゲートの切断装置において、
前記加熱装置は、前記ランナー部とゲート部とを加熱するように構成されていることを特徴とするゲートの切断装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のゲートの切断装置において、
前記加熱装置は、前記ランナー部を高温で加熱し、前記ゲート部をそれよりも低い温度で加熱するように構成されていることを特徴とするゲートの切断装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3に記載のゲートの切断装置において、
前記加熱装置には、前記ランナー部を位置決めするための第1の位置決め手段が設けられ、該加熱装置の外側には、前記成形品を位置決めするための第2の位置決め手段が設けられることを特徴とするゲートの切断装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載のゲートの切断装置において、
前記加熱装置と前記第2の位置決め手段とを相対移動させる移動手段が設けられていることを特徴とするゲートの切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−30486(P2007−30486A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221599(P2005−221599)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000138473)株式会社ユーシン精機 (117)
【Fターム(参考)】