説明

ゲート装置

【課題】簡易な構成で、通路の通行可否を判定する利用者と、この利用者が所持している無線通信媒体と、の対応づけが適正に行えるゲート装置を提供する。
【解決手段】自動改札機1は、アンテナユニット2に設けられている複数の受信アンテナ素子31を切換ながら、無線通信媒体3からの電波を受信する。そして、各受信アンテナ素子31で受信した電波の位相、および振幅にかかる情報に基づいて、アンテナユニット2における電波の到来角度を検出する。自動改札機1は、検出した電波の到来角度に基づいて、通路に進入して通路を通行する利用者に対応づける無線通信媒体3を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駅の改札口に設置され、駅構内に入場する利用者や、駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う自動改札機等、通路における利用者の通行を制限するゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲート装置として、駅構内に入場する利用者や、駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う自動改札機があった。従来の自動改札機は、改札通路の入口付近に設けられたアンテナに翳された無線通信媒体との無線通信により、この無線通信媒体が記憶する乗車券情報を読み取る。自動改札機は、無線通信媒体をアンテナに翳した利用者について、この無線通信媒体から読み取った乗車券情報に基づいて改札通路の通行可否を判定する。自動改札機は、改札通路通行を許可しないと判定すると、改札通路の出口付近に設けられている扉を閉し、この利用者が改札通路を通行するのを禁止する。反対に、通行を許可すると判定すると、改札通路の扉を開し、この利用者が改札通路を通行するのを許可する。
【0003】
また、最近では、改札通路を通行する利用者が、適正な乗車券情報を記憶した無線通信媒体を所持していれば、その無線通信媒体をアンテナに翳すことなく、改札通路を通行することができる自動改札機が提案されはじめている(例えば、特許文献1参照)。この種の自動改札機は、無線通信媒体との無線通信エリアを比較的大きく設定することになるので、複数の無線通信媒体が無線通信エリア内に同時に存在する状況を考慮する必要がある。具体的に言うと、改札処理を適正に行うために、無線通信エリア内に位置する複数の無線通信媒体の中から、改札処理を行う対象の利用者が所持している無線通信媒体を特定する必要がある。特許文献1では、複数のアンテナを改札通路に沿って配置し、アンテナ毎に設けた無線通信部で受信している無線通信媒体からの電波の電界強度の変化に基づいて、改札通路を通行している利用者(改札処理を行う利用者)と、その利用者が所持している無線通信媒体と、を対応づけている。
【特許文献1】特開平6−36096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている自動改札機では、改札通路に沿って配置したアンテナ毎に、無線通信媒体と無線通信を行う無線通信部を設けなければならない。また、利用者が改札通路を通行している間、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体毎に、各アンテナで受信している電波について、時間経過にともなう強度変化を検出しなければならない。このため、特許文献1に記載されている自動改札機は、構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0005】
この発明の目的は、簡易な構成で、通路の通行可否を判定する利用者と、この利用者が所持している無線通信媒体と、の対応づけが適正に行えるゲート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のゲート装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0007】
(1)通路の入口周辺の上方、または下方に配置したアンテナユニットを利用して、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体と無線通信を行い、その無線通信媒体が記憶する判定情報を取得する無線通信手段と、
前記無線通信手段により取得した判定情報に基づいて、前記通路における利用者の通行可否を判定する通行可否判定手段と、を備え、
前記無線通信手段は、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体毎に、前記アンテナユニットにおける電波の到来方向を検出し、ここで検出した電波の到来方向に基づいて、前記通行可否判定手段が前記通路における利用者の通行可否を判定するのに用いる前記判定情報を記憶している無線通信媒体を決定する手段である。
【0008】
この構成では、アンテナユニットを通路の入口周辺の上方または下方に配置し、無線通信エリアを通路の入口周辺に形成している。無線通信手段が、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体毎に、無線通信を行って、アンテナユニットにおける電波の到来方向を検出する。検出した電波の到来方向から、通路に進入して通行する利用者が所持している無線通信媒体を判断する。
【0009】
アンテナユニットにおける無線通信媒体からの電波の到来角度は、このアンテナユニットと、この無線通信媒体と、の相対的な位置関係で決まる。ここで言う、到来角度とは、鉛直方向に対する角度である。具体的に言うと、到来角度は、鉛直方向に対する、アンテナユニットと無線通信媒体とを結ぶ直線の傾きである。無線通信媒体は、この無線通信媒体を所持している利用者の移動にともなって、その位置が変化する。すなわち、利用者が所持する無線通信媒体を決定するときの当該利用者の位置(以下、決定位置と言う。)と、アンテナユニットと、の相対的な位置関係に基づいて、当該利用者が所持する無線通信媒体からの電波の到来角度が規定される。例えば、決定位置を通路の入口とし、アンテナユニットを通路の入口の上方、または下方に配置した場合には、アンテナユニットにおける電波の到来角度が略0°に規定されるので、到来角度が最小である無線通信媒体を、決定位置である通路の入口にいる利用者に対応づければよい。また、決定位置である通路の入口にいる利用者が所持している無線通信媒体からの電波の到来角度が、例えば略20°に規定されるように、アンテナユニットを通路の入口から少しずらして配置した場合には、アンテナユニットにおける電波の到来角度が最も20°に近い無線通信媒体を、決定位置である通路の入口にいる利用者に対応づければよい。
【0010】
なお、決定位置についても、通路の入口とはせずに、通路の入口の少し手前の位置や、通路の入口から少し通路内に入った位置にしてもよい。
【0011】
したがって、無線通信媒体と、利用者と、の対応づけが適正に行える。また、無線通信媒体と無線通信を行う無線通信手段を簡易な構成で実現できる。
【0012】
(2)前記アンテナユニットは、複数の受信アンテナ素子が前記通路に沿う第1の方向に並べられており、
前記無線通信手段は、前記アンテナユニットの複数の受信アンテナ素子を切り換え、各受信アンテナ素子で受信した電波に基づいて、前記第1の方向について電波の到来方向を検出する手段である。
【0013】
この構成では、通路に沿う第1の方向について、電波の到来方向を検出することができる。
【0014】
(3)前記アンテナユニットは、複数の受信アンテナ素子が前記通路に沿う第1の方向、およびこの第1の方向に直交する第2の方向に並べられており、
前記無線通信手段は、前記アンテナユニットの複数の受信アンテナ素子を切り換え、各受信アンテナ素子で受信した電波に基づいて、前記第1の方向、および前記第2の方向について電波の到来方向を検出する手段である。
【0015】
この構成では、通路に沿う第1の方向、およびこの第1の方向に直交する第2の方向について、電波の到来方向を検出することができる。
【0016】
(4)前記無線通信手段は、前記第1の方向における電波の到来方向が、予め定められた第1の範囲内の角度である無線通信媒体の中から、前記通行可否判定手段が前記通路における利用者の通行可否を判定するのに用いる前記判定情報を記憶している無線通信媒体を決定する手段である。
【0017】
この構成では、第1の方向における電波の到来方向が、予め定められた第1の範囲内の角度である無線通信媒体が存在しない場合、利用者に対して無線通信媒体を対応づけない。したがって、通路に進入して通行する利用者が無線通信媒体を所持していない場合に、この利用者の後にいる別の利用者が所持している無線通信媒体を誤って対応づけるのを防止できる。
【0018】
(5)前記無線通信手段は、前記第1の方向における電波の到来方向が、予め定められた第1の範囲内の角度であり、且つ前記第2の方向における電波の到来方向が、予め定められた第2の範囲内の角度である無線通信媒体の中から、前記通行可否判定手段が前記通路における利用者の通行可否を判定するのに用いる前記判定情報を記憶している無線通信媒体を決定する手段である。
【0019】
この構成では、複数の通路が略平行に並んでいるときに、隣の通路を通行する利用者が所持する無線通信媒体を、通行可否を判定する利用者に誤って対応づけるのを防止できる。
【0020】
(6)前記通路への利用者の進入を検知する利用者検知手段を備え、
前記無線通信手段は、前記利用者検知手段により前記通路への利用者の進入が検知されたときに、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体毎に、前記アンテナユニットにおける電波の到来方向を検出する手段である。
【0021】
この構成では、通路における通行可否を判定する利用者がいないときに、通信エリア内に存在する無線通信媒体との無線通信等にかかる処理を行わないので、装置の処理負荷が抑えられる。
【0022】
(7)前記アンテナユニットは、前記通路の入口周辺の上方に配置しており、
前記無線通信手段は、検出された電波の到来方向が同じである複数の無線通信媒体を検出した場合、これらの無線通信媒体の中から判定情報が大人用である無線通信媒体を、前記通行可否判定手段が前記通路における利用者の通行可否を判定するのに用いる前記判定情報を記憶している無線通信媒体に決定する手段である。
【0023】
この構成では、大人と子供が連なって通路に進入するときにも、利用者と、無線通信媒体と、の対応づけが適正に行える。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、簡易な構成で、利用者と、この利用者が所持している無線通信媒体と、の対応づけが適正に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明にかかるゲート装置の実施形態である自動改札機について説明する。
【0026】
図1は、この発明の実施形態である自動改札機を示す概略図であり、図2はこの実施形態の自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。この実施形態の自動改札機1は、駅の改札口に設置される。自動改札機1には、天井に取り付けたアンテナユニット2が接続されている。このアンテナユニット2は、改札通路(以下、単に通路と言う。)の入口の略真上に取り付けられている。また、自動改札機1は、無線通信部11、通行可否判定部12、および扉開閉部13を備えている。アンテナユニット2は、無線通信部11に接続されている。
【0027】
無線通信部11は、アンテナユニット2を利用して、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体3と無線通信を行う。無線通信部11と、無線通信媒体3との間における無線通信は、例えばUHF帯の電波を利用している。無線通信部11の無線通信エリアは、図1に示すように、通路の入口周辺である。無線通信媒体3は、無線通信機能を有しているICカードである。無線通信媒体3は、自媒体を識別する識別コードや、乗車券情報(この発明で言う判定情報に相当する。)を記憶している。ここで言う乗車券情報とは、定期券やプリペイド券に係る情報だけでなく、前回利用時における入出場情報等も含まれている。また、無線通信部11は、アンテナユニット2における、無線通信媒体3からの電波の到来方向を検出する機能を有している。無線通信部11は、通路に進入して通行する利用者と、この利用者が所持している無線通信媒体3と、を対応づけ、この利用者に対応づけた無線通信媒体3が記憶する乗車券情報を無線通信により取得する。無線通信部11は、取得した乗車券情報を通行可否判定部12に通知する。
【0028】
通行可否判定部12は、無線通信部11から通知された乗車券情報に基づいて、通路における利用者の通行可否を判定する。すなわち、利用者が所持している無線通信媒体3に記憶されている乗車券情報が、駅構内に入場、または駅構内から出場することができる乗車券情報であるかどうかを判定する。通行可否判定部12は、判定結果を扉開閉部13に通知する。扉開閉部13は、通路の出口側に設けられた扉13aを開閉する。扉開閉部13は、通行可否判定部12から通知された判定結果が通行可であれば扉13aを開し、反対に通行否であれば扉13aを閉する。また、通行可否判定部12は、通行可と判定した場合、無線通信部11に対して、無線通信媒体3が記憶する乗車券情報の更新を指示する。このとき、通行可否判定部12は、乗車券情報の更新内容も無線通信部11に通知する。無線通信部11は、アンテナユニット2を利用した無線通信により、無線通信媒体3に対して乗車券情報の更新を要求する。
【0029】
ここで、アンテナユニット2について説明する。図3は、アンテナユニットの構成を示す図である。アンテナユニット2は、4つの受信アンテナ素子31(31a〜31d)と、1つの送信アンテナ素子32と、を一列に並べた構成である。送信アンテナ素子32の両側に、受信アンテナ素子31が2つずつ配置されている。アンテナユニット2は、受信アンテナ素子31および送信アンテナ素子32の並び方向が通路に沿う方向(すなわち、通路における利用者の通行方向)になるように、天井に取り付けられる。
【0030】
次に、無線通信部11について詳細に説明する。図4は、無線通信部の構成を示すブロック図である。無線通信部11は、コントロール部21、位相制御部22、発振部23、変調部24、切換部25、復調部26、および到来方向検出部27を備えている。コントロール部21は、通行可否判定処理部12との間におけるデータ通信を行うとともに、通路に進入して通行する利用者と、この利用者が所持している無線通信媒体3と、の対応づけ等にかかる処理を行う。また、コントロール部21は、無線通信部11内の各部の動作を制御する。
【0031】
位相制御部22は、発振部23から出力される基準周波数の信号(基準信号)の位相を制御する。発振部23から出力された基準信号は、変調部24および復調部26に入力される。変調部24は、発振部23から入力された基準信号を搬送波とし、コントロール部21から指示された送信データに基づく送信信号を生成する。変調部24は、直交変調により送信信号を生成する。変調部24には、送信アンテナ素子32が接続されている。変調部24は、生成した送信信号を送信アンテナ素子32から送信する。
【0032】
切換部25は、コントロール部21からの指示にしたがって、復調部26に接続される受信アンテナ素子31(31a〜31d)を切り換える。復調部26は、切換部25が選択しているいずれかの受信アンテナ素子31で受信された受信信号を直交復調し、I信号、およびQ信号を抽出する。到来方向検出部27は、1つの無線通信媒体3について、受信アンテナ素子31毎に受信された受信信号について復調部26で抽出されたI信号、およびQ信号から位相や振幅にかかる情報を取得し、この無線通信媒体3から発信された電波の到来方向を検出する。到来方向検出部27には、受信アンテナ素子31毎に受信された信号から抽出されたI信号、およびQ信号から取得した位相や振幅にかかる情報から、アンテナユニット2における電波の到来方向を検出する処理を実行するマイコンが設けられている。アンテナユニット2における電波の到来方向とは、特定の受信アンテナ素子31(この実施形態では、アンテナ素子31aとする。)における電波の到来方向である。上述したように、受信アンテナ素子31a〜31dを通路に沿う方向に配置しているので、到来方向検出部27で検出される電波の到来方向は、図5に示すように、通路に沿う方向における鉛直方向との角度(到来角度)である。この実施形態の自動改札機1は、通路の入口にいる利用者に対して、その利用者が所持する無線通信媒体3を対応づける。この実施形態では、図5に示すように、通路の入口に近い利用者が所持している無線通信媒体3ほど、アンテナユニット2における電波の到来角度が小さくなる(φ1<φ2<φ3)。また、到来方向検出部27は、I信号、およびQ信号から受信信号に含まれている受信データを抽出し、コントロール部21に入力する機能も有している。
【0033】
無線通信部11は、無線通信媒体3毎に到来方向検出部27で検出した電波の到来方向に基づいて、通路に進入して通行する利用者と、この利用者が所持している無線通信媒体3と、の対応づけを行うとともに、この利用者に対応づけた無線通信媒体3との無線通信により取得した乗車券情報を通行可否判定部12に通知する。
【0034】
次に、この実施形態にかかる自動改札機1の動作について説明する。図6は、この実施形態にかかる自動改札機の動作を示すフローチャートであり、図7は、無線通信部、および無線通信媒体のタイミングチャートである。図7(A)は無線通信部におけるコマンドの送信を示しており、図7(B)は無線通信媒体のレスポンスを示しており、図7(C)は無線通信部における無線通信媒体からのレスポンスの受信を示している。
【0035】
この実施形態の自動改札機1は、無線通信部11が無線通信エリア内に位置している無線通信媒体3の存在有無を検知するためのポーリングを実行するタイミング(ポーリングタイミング)になったかどうかを判定する(s1)。このとき、切換部25は、受信アンテナ素子31aを選択している。この実施形態の自動改札機1は、無線通信部11が一定時間間隔(例えば、数ms間隔)でポーリングを行う。無線通信部11は、s1でポーリングタイミングであると判定すると、ポーリングを実行する(s2)。s2では、送信アンテナ素子32からポーリングコマンドが送信される(図7に示すT1)。無線通信エリア内に位置する無線通信媒体3は、このポーリングコマンドを受信すると、自媒体の識別コードをレスポンスとして送信する。
【0036】
無線通信部11は、s2でポーリングを実行してから、所定時間経過するまでの間に、無線通信媒体3からのレスポンスを受信したかどうかを判定する(s3)。無線通信部11は、s3でレスポンスを受信していないと判定すると、無線通信エリア内に位置している無線通信媒体3が無いと判断し、s1に戻る。無線通信部11は、s2でポーリングを実行すると、無線通信媒体3からのレスポンスを受信する毎に、受信したレスポンスを復調し、無線通信媒体3の識別コードを取得している。図7では、s2にかかるポーリングに対して、識別コートが「bbbbb」、「aaaaa」、および「ccccc」である3つの無線通信媒体3がレスポンスを返した場合を示している。無線通信部11は、s3で無線通信媒体3からのレスポンスを受信したと判定すると、レスポンスを受信した無線通信媒体3毎に、アンテナユニット2における電波の到来角度を検出する到来角度検出処理を行う(s4)。
【0037】
図8は、このs4にかかる到来角度検出処理を示すフローチャートである。まず、無線通信部11は、今回レスポンスを受信した無線通信媒体3の中から、1つの無線通信媒体3を選択する(s21)。図7では、s21で識別コードが「bbbbb」である無線通信媒体3を選択した場合を示している。無線通信部11は、選択した無線通信媒体3に対して、識別番号の応答要求を送信する(s22)。この応答要求に対して、選択されている識別番号の無線通信媒体3(ここでは、識別コードが「bbbbb」である無線通信媒体3)が、自媒体の識別コードをレスポンスとして送信する。無線通信部11は、s22にかかる応答要求に対する、無線通信媒体3からのレスポンスを受信すると、この受信信号の位相、および振幅にかかる情報を抽出する(s24)。そして、アンテナユニット2の全ての受信アンテナ素子31a〜31dで、選択している無線通信媒体3からのレスポンスを受信したかどうかを判定する(s25)。無線通信部11は、s24でレスポンスを受信していない受信アンテナ素子31a〜31dがあると判定すると、切換部25においてレスポンスを受信していない受信アンテナ素子31a〜31dを選択する切換を行い(s26)、s22に戻る。
【0038】
s26にかかる受信アンテナ素子31a〜31dの切換は、受信アンテナ素子31a、受信アンテナ素子31b、受信アンテナ素子31c、受信アンテナ素子31dの順番に行われる。無線通信部11は、s22〜s26にかかる処理を行うことで、選択している無線通信媒体3から送信されてきた受信信号である電波を、各受信アンテナ素子31a〜31dで受信したときの、位相、および振幅にかかる情報を取得する。無線通信部11は、到来角度検出部27において、各受信アンテナ素子31a〜31dで受信した電波の、位相、および振幅にかかる情報から、選択している無線通信媒体3からの、アンテナユニット2における電波の到来角度を検出する(s27)。到来角度検出部17のマイコンは、各受信アンテナ素子31a〜31dで受信した電波の、位相、および振幅にかかる情報から、電波の到来角度を算出するプログラムを実行することにより、s27にかかる処理を行う。
【0039】
無線通信部11は、s27にかかる処理が完了すると、切換部27が選択している受信アンテナ素子31を、受信アンテナ素子31aに切り換える(s28)。無線通信部11は、今回s3でレスポンスを受信した全ての無線通信媒体3について、電波の到来角度を検出したかどうかを判定する(s29)。無線通信部11は、、アンテナユニット2における電波の到来角度を検出していない無線通信媒体3があると、電波の到来角度を検出していない無線通信媒体3を選択し(s30)、s22に戻る。無線通信部11は、s27で全ての無線通信媒体3について、アンテナユニット2における電波の到来角度を検出したと判定すると、このs4にかかる到来角度検出処理を終了する。図7では、識別コートが「bbbbb」、「aaaaa」、「ccccc」である無線通信媒体3を、この順番に選択した場合を示している。
【0040】
無線通信部11は、s4にかかる到来角度検出処理を完了すると、通路に進入して通行する利用者に対応づける無線通信媒体3を決定する(s5)。s5では、s4にかかる到来角度検出処理で検出された電波の到来角度が最小であった無線通信媒体3を、利用者に対応づける無線通信媒体3に決定する。上述したように、通路の入口に近い利用者が所持している無線通信媒体3ほど、アンテナユニット2における電波の到来角度が小さいことから、アンテナユニット2における電波の到来角度が最小であった無線通信媒体3を、通路に進入して通路を通行する利用者に対応づけることで、利用者と無線通信媒体3との対応づけが適正に行える。
【0041】
図7では、識別コードが「aaaaa」である無線通信媒体3を利用者に対応づけた場合を示している。無線通信部11は、s5で利用者に対応づける無線通信媒体3を決定すると、ここで決定した無線通信媒体3に対して記憶している乗車券情報の送信要求を送信する(s6)(図7に示すT2)。この乗車券情報の送信要求に対して、該当する無線通信媒体3が記憶している乗車券情報をレスポンスとして送信する。無線通信部11は、無線通信媒体3から送信されてきたレスポンスを受信すると(s7)、このレスポンスから乗車券情報を抽出する(s8)。そして、s8で抽出した乗車券情報を通行可否判定部12に通知する。
【0042】
通行可否判定部12は、無線通信部11から通知された乗車券情報に基づいて、対応づけられている利用者に対する通路の通行可否を判定する(s9)。通行可否判定部12は、s9における判定結果を扉開閉部13に通知する。扉開閉部13は、s9で通行否と判定されていると、扉13aを閉し(s10)、通路における利用者の通行を制限する。反対に、通行可と判定されていると、扉13aを開し(s11)、通路における利用者の通行を許可する。また、通行可否判定部12は、s9で通路の通行を許可すると判定すると、無線通信部11に対して、この利用者が所持する無線通信媒体3が記憶する乗車券情報の更新を要求する。このとき、通行可否判定部12は、乗車券情報の更新内容を無線通信部11に通知している。無線通信部11は、該当する無線通信媒体3に対して、乗車券情報の更新指示を送信する(s12)(図7に示すT3)。s12で送信する更新指示には、乗車券情報の更新内容が含まれている。該当する無線通信媒体3は、この更新指示を受信すると、記憶している乗車券情報を更新し、更新完了をレスポンスとして返す。無線通信部11において、無線通信媒体3から乗車券情報の更新完了にかかるレスポンスを受信すると(s13)(図7に示すT4)、s1に戻る。
【0043】
このように、この実施形態の自動改札機1は、1つの無線通信部11で利用者と、この利用者が所持する無線通信媒体3と、の対応づけが適正に行える。したがって、装置本体を簡易な構成にできる。
【0044】
また、上記実施形態では、アンテナユニット2を天井に取り付けるとしたが、アンテナユニット2を床面に取り付けても、同様の効果を奏する。
【0045】
また、上記実施形態では、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体3の中で、アンテナユニット2における電波の到来角度が最小である無線通信媒体3を、通路に進入して通路を通行する利用者に対応づけるとしたが、アンテナユニット2における電波の到来角度が最小であり、且つこの到来角度が予め定めた範囲の角度、例えば0°〜5°、である無線通信媒体3を、通路に進入して通路を通行する利用者に対応づけるようにしてもよい。言い換えれば、電波の到来角度が予め定めた範囲の角度内である無線通信媒体3が存在しない場合、通路に進入して通行する利用者に無線通信媒体3を対応づけない。このようにすれば、通路に進入して通行する利用者が無線通信媒体3を所持していない場合に、この利用者の後にいる別の利用者が所持している無線通信媒体3を誤って対応づけるのを防止できる。
【0046】
また、図9に示すように、通路の入口に、利用者の進入を検知する進入検知素子14aを設け、この進入検知素子14aによる検知結果を無線通信部11に通知する進入検知部14を設けてもよい。進入検知素子14aは、例えば、透過型の光センサや、反射型の光センサを用いればよい。無線通信部11は、進入検知部14から通路への利用者の進入が通知されたときに、図6のs1でポーリングタイミングになったと判定する。これにより、通路における通行可否を判定する利用者がいないときに、通信エリア内に存在する無線通信媒体3との無線通信等にかかる処理を行わない。したがって、装置本体の処理負荷を抑えることができる。
【0047】
また、この場合、通路に進入した利用者の位置を特定することができるので、アンテナユニット2における電波の到来角度を予測することができる。したがって、アンテナユニット2における電波の到来角度が最小であり、且つこの到来角度が予め定めた範囲の角度である無線通信媒体3を、通路に進入して通路を通行する利用者に対応づけることで、無線通信媒体3を所持していない利用者に対して、他人の無線通信媒体3を対応づけるという事態の発生が、略確実に防止できる。
【0048】
また、アンテナユニット2における無線通信媒体3からの電波の到来角度は、このアンテナユニット2と、この無線通信媒体3と、の相対的な位置関係で決まる。具体的に言うと、到来角度は、鉛直方向に対する、アンテナユニット2と無線通信媒体3とを結ぶ直線の傾きである。無線通信媒体3は、この無線通信媒体3を所持している利用者の移動にともなって、その位置が変化する。すなわち、利用者が所持する無線通信媒体3を決定するときの当該利用者の位置(以下、決定位置と言う。)と、アンテナユニット2と、の相対的な位置関係に基づいて、当該利用者が所持する無線通信媒体3からの電波の到来角度が規定される。上記実施形態は、決定位置を通路の入口とし、アンテナユニット2を通路の入口の上方に配置することで、決定位置である通路の入口にいる利用者が所持している無線通信媒体3からの電波の到来角度が略0°に規定される場合である。このことから、上記実施形態では、上述したように、アンテナユニット2における電波の到来角度が最小である無線通信媒体3を、決定位置である通路の入口にいる利用者に対応づけている。したがって、アンテナユニット2を通路の入口から少しずらして配置し、決定位置である通路の入口にいる利用者が所持している無線通信媒体3からの、アンテナユニット2における電波の到来角度が、例えば略20°に規定されるように構成した場合には、アンテナユニット2における電波の到来角度が最も20°に近い無線通信媒体3を、決定位置である通路の入口にいる利用者に対応づければよい。
【0049】
なお、決定位置についても、通路の入口に限らず、通路の入口の少し手前の位置や、通路の入口から少し通路内に入った位置にすることもできる。
【0050】
また、図10に示すように、大人と子供が続いて通路の入口に向かっている場合、子供が後であると、アンテナユニット2における電波の到来方向が同じになることがある。これは、大人と子供とで、無線通信媒体3を所持する高さが異なることが原因である。そこで、大人用の無線通信媒体3と、子供用の無線通信媒体3と、について検出されたアンテナユニット2における電波の到来角度が同じである場合、大人用の無線通信媒体3を、通路に進入して通行する利用者に対応づけるようにしてもよい。この場合、無線通信媒体3の識別コードから、大人用であるか、子供用であるかの判別が行えるようにしておけばよい。例えば、識別コードの最上位桁で、大人用の無線通信媒体3であるか、子供用の無線通信媒体であるかを、判定できるように、識別コードを付与しておけばよい。
【0051】
なお、図10では、アンテナユニット2が天井に取り付けられている場合であり、アンテナユニット2が床面に取り付けられている場合には、大人用の無線通信媒体3と、子供用の無線通信媒体3と、について検出されたアンテナユニット2における電波の到来角度が同じである場合、子供用の無線通信媒体3を、通路に進入して通行する利用者に対応づければよい。
【0052】
また、カメラ等の撮像装置を利用し、通路に進入した利用者を撮影した撮像画像を処理て、利用者が大人であるか、子供であるかを判断して、通路に進入して通路を通行する利用者に対応づける無線通信媒体3を決定するようにしてもよい。
【0053】
さらに、図11に示すように、複数の自動改札機1を並べて使用する場合に、隣接する2つの通路において、一方の通路を通行する利用者が所持している無線通信媒体3を、他方の通路を通行する利用者に誤って対応づけるのを防止するために、図12に示すアンテナユニット2を用いてもよい。図12に示すアンテナユニット2は、通路に沿う方向に並べた4つの受信アンテナ素子31(31a〜31d、31e〜31h)を2列設けている。送信アンテナ素子32は、1つである。これにより、無線通信部11において、鉛直方向に対して、通路に沿う方向の電波の到来角度に加えて、鉛直方向に対して、通路に沿う方向に直交する方向の電波の到来角度も検出できる。そして、無線通信部11が、鉛直方向に対して、通路に沿う方向に直交する方向の電波の到来角度が予め定めた範囲(例えば、−10°〜10°)でない無線通信媒体3については、利用者に対応づけない。これにより、隣接する2つの通路において、一方の通路を通行する利用者が所持している無線通信媒体3を、他方の通路を通行する利用者に誤って対応づけるのを防止することができる。
【0054】
なお、この発明にかかるゲート装置は、自動改札機1だけでなく、通路における利用者の通行を制限する他の種類の装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施形態である自動改札機を示す概略図である。
【図2】この発明の実施形態である自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】アンテナユニットの構成を説明する図である。
【図4】この発明の実施形態である自動改札機の無線通信部の構成を示す図である。
【図5】アンテナユニットにおける電波の到来角度を説明する図である。
【図6】この実施形態にかかる自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【図7】無線通信部における無線通信媒体との無線通信にかかるタイミングチャートである。
【図8】到来角度検出処理を示すフローチャートである。
【図9】別の実施形態である自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。
【図10】大人と子供とが続いて通路の入口に向かっている場合に、アンテナユニット2における電波の到来方向が同じになる場合を説明する図である。
【図11】複数の自動改札機1が並べられている状態を示す図である。
【図12】別の実施形態にかかるアンテナユニットの構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
1−自動改札機
2−アンテナユニット
3−無線通信媒体
11−無線通信部
12−通行可否判定部
13−扉開閉部
21−コントロール部
25−きり換え部
27−到来方向検出部
31(31a〜31h)−受信アンテナ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路の入口周辺の上方、または下方に配置したアンテナユニットを利用して、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体と無線通信を行い、その無線通信媒体が記憶する判定情報を取得する無線通信手段と、
前記無線通信手段により取得した判定情報に基づいて、前記通路における利用者の通行可否を判定する通行可否判定手段と、を備え、
前記無線通信手段は、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体毎に、前記アンテナユニットにおける電波の到来方向を検出し、ここで検出した電波の到来方向に基づいて、前記通行可否判定手段が前記通路における利用者の通行可否を判定するのに用いる前記判定情報を記憶している無線通信媒体を決定する手段である、ゲート装置。
【請求項2】
前記アンテナユニットは、複数の受信アンテナ素子が前記通路に沿う第1の方向に並べられており、
前記無線通信手段は、前記アンテナユニットの複数の受信アンテナ素子を切り換え、各受信アンテナ素子で受信した電波に基づいて、前記第1の方向について電波の到来方向を検出する手段である、請求項1に記載のゲート装置。
【請求項3】
前記アンテナユニットは、複数の受信アンテナ素子が前記通路に沿う第1の方向、およびこの第1の方向に直交する第2の方向に並べられており、
前記無線通信手段は、前記アンテナユニットの複数の受信アンテナ素子を切り換え、各受信アンテナ素子で受信した電波に基づいて、前記第1の方向、および前記第2の方向について電波の到来方向を検出する手段である、請求項1に記載のゲート装置。
【請求項4】
前記無線通信手段は、前記第1の方向における電波の到来方向が、予め定められた第1の範囲内の角度である無線通信媒体の中から、前記通行可否判定手段が前記通路における利用者の通行可否を判定するのに用いる前記判定情報を記憶している無線通信媒体を決定する手段である、請求項2または3に記載のゲート装置。
【請求項5】
前記無線通信手段は、前記第1の方向における電波の到来方向が、予め定められた第1の範囲内の角度であり、且つ前記第2の方向における電波の到来方向が、予め定められた第2の範囲内の角度である無線通信媒体の中から、前記通行可否判定手段が前記通路における利用者の通行可否を判定するのに用いる前記判定情報を記憶している無線通信媒体を決定する手段である、請求項3に記載のゲート装置。
【請求項6】
前記通路への利用者の進入を検知する利用者検知手段を備え、
前記無線通信手段は、前記利用者検知手段により前記通路への利用者の進入が検知されたときに、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体毎に、前記アンテナユニットにおける電波の到来方向を検出する手段である、請求項1〜5のいずれかに記載のゲート装置。
【請求項7】
前記アンテナユニットは、前記通路の入口周辺の上方に配置しており、
前記無線通信手段は、検出された電波の到来方向が同じである複数の無線通信媒体を検出した場合、これらの無線通信媒体の中から判定情報が大人用である無線通信媒体を、前記通行可否判定手段が前記通路における利用者の通行可否を判定するのに用いる前記判定情報を記憶している無線通信媒体に決定する手段である、請求項1〜6のいずれかに記載のゲート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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