説明

ゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体

【課題】初心者でもグループ対抗でのレースゲームを十分に楽しむことができるように操作インターフェース環境を改善した。
【解決手段】複数の移動体がグループを形成してレースゲームを行うため、移動体毎に設定される走行性能に基づいて移動体の移動制御を行う移動体制御部112と、移動体の移動状態を監視する移動状態監視部113と、任意の移動体の移動状態がドリフト状態であることに基づいて、その移動体の特殊パラメータを増加させる更新処理を行う特殊パラメータ更新部114と、操作部160に対する特定の操作に基づいて特殊パラメータの使用量を決定するとともに、決定された特殊パラメータの使用量に応じて移動体の走行性能を変化させる走行性能変更部115とを含み、特殊パラメータ更新部114が、任意の移動体がドリフト状態であることに基づいて、同一グループに属する他の移動体の特殊パラメータを増加させる更新処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、仮想的な3次元空間であるゲーム空間(オブジェクト空間)において所与の視点(仮想カメラ)から見える画像を生成するゲームシステム(画像生成システム)が知られており、いわゆる仮想現実を体験できるものとして人気が高い。レースゲームを楽しむことができるゲームシステムを例に取れば、プレーヤは、操作部(ゲームコントローラ等)を用いて移動体(車、船、飛行機等)に関する操作(ステアリング操作、シフト操作、アクセル操作、ブレーキ操作等)を行い、他のプレーヤ(コンピュータプレーヤも含まれる)の移動体と順位やタイムを競争することでレースゲームを楽しむ。
【0003】
ところで、上述したレースゲームを行わせるゲームシステムにおいて、移動体を横滑りさせながらコーナーを曲がるといういわゆるドリフト状態(所定の移動状態)になった場合に、ニトロパラメータ(特殊パラメータ)をチャージ(増加)させて、操作部に対する特定の操作によってニトロパラメータを消費(使用)して移動体を急加速させて有利にレースを進めることができるようにしたゲームシステムが提供されている(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】「リッジレーサー6マニュアル(RIDGE RACER6 MANUAL)」、株式会社ナムコ(現:株式会社バンダイナムコゲームス)、2005年12月発売のXbox360用ソフト“リッジレーサー6(RIDGE RACER6)”に同梱、p10−11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のゲームシステムでは、移動体をドリフト状態にさせる操作が初心者には難しいため、ニトロパラメータを消費して移動体を急加速させることによりレースを有利に進めることができないという状況にあった。このため複数のプレーヤがグループを形成して、グループ同士が対抗してレースゲームを行うような場合、同一グループ内でのプレーヤ間の技量の差がレースゲームの結果を大きく左右してしまい、特に移動体をドリフト状態にさせる操作技術に不慣れなプレーヤ(初心者)を抱えるグループでは、初心者がニトロパラメータをチャージすることができないことに起因して他のグループとのデッドヒートを十分に楽しむことができないという難点があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作に不慣れな初心者がグループにいる場合であってもグループ対抗でのレースゲームを十分に楽しむことができるように操作インターフェース環境を改善したゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、複数の移動体がグループを形成してレースゲームを行うためのゲームシステムであって、前記移動体毎に設定される走行性能に基づいて前記移動体の移動制御を行う移動体制御部と、前記移動体の移動状態を監視する移動状態監視部と、所与の移動体の移動状態が所定の移動状態であることに基づいて、当該所与の移動体の特殊パラメータを増加させる更新処理を行う特殊パラメータ更新部と、操作部に対する特定の操作に基づいて特殊パラメータを使用して移動体の走行性能を変化させる走行性能変更部と、を含み、前記特殊パラメータ更新部が、前記所与の移動体が前記所定の移動状態であることに基づいて、同一グループに属する他の移動体が使用可能な特殊パラメータを増加させる更新処理を行うゲームシステムに関するものである。また本発明は、上記各部としてコンピュータを機能させるプログラム及びそのようなプログラムを記憶するコンピュータに読み取り可能な情報記憶媒体に関するものである。
【0007】
「走行性能」とは、移動体の加速度、移動速度、最高速度等を意味し、「走行性能を変化させる」というのは、加速度、移動速度、最高速度等を決定する演算係数を変更することの他に、変化前の加速度、移動速度、最高速度等に対して任意の値を加算あるいは減算することなども含まれる。
【0008】
また「特殊パラメータ」は、移動体単位で設定され、各移動体に関して特殊パラメータを個別に使用可能である場合の他に、グループ単位で設定され、各グループに属する各移動体に関して特殊パラメータを共通に使用可能である場合も含まれる。
【0009】
本発明によれば、グループに属するいずれかの移動体が所定の移動状態となったことに基づいて、特殊パラメータが増加する場合に、その移動体が属するグループに属する他の移動体が使用可能な特殊パラメータを増加させるようにしたので、操作に不慣れな初心者であっても、同一グループ内に操作に熟練したプレーヤがいれば、初心者であっても特殊パラメータを使用してレースゲームを有利に進めることができるようになる。このため本発明によれば、操作に不慣れな初心者がグループにいる場合であってもグループ対抗でのレースゲームを十分に楽しむことができる操作インターフェース環境を提供することができる。
【0010】
(2)また本発明のゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記移動状態監視部が、同一グループに属する少なくとも2つの前記移動体が、所定の距離範囲内において前記所定の移動状態であるか否かを監視し、前記特殊パラメータ更新部が、前記所定の距離範囲内において前記所定の移動状態であった前記少なくとも2つの移動体については、特殊パラメータの増加量を変化させるようにしてもよい。
【0011】
このようにすれば、同一グループに属するプレーヤ同士で積極的に協力しながら、特殊パラメータを増加させていくことができるため、同一グループ内でのプレーヤ間の連帯感を高めながらレースゲームを行わせることができるようになる。
【0012】
(3)また本発明のゲームシステムでは、移動体毎に前記所定の距離範囲を識別表示する処理を行う表示制御部を含むようにしてもよい。また本発明のプログラム及び情報記憶媒体では、上記表示制御部としてコンピュータを機能させるようにしてもよい。
【0013】
このようにすれば、いずれの距離範囲で自身の操作する移動体を所定の移動状態にさせれば特殊パラメータの増加量が変化するのかが認識しやすくなるため、操作インターフェース環境のさらなる向上を図ることができる。
【0014】
(4)また本発明のゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記特殊パラメータが、移動体毎に設定され、前記特殊パラメータ更新部が、前記所与の移動体が前記所定の移動状態であることに基づいて、同一グループに属する他の移動体の特殊パラメータを増加させる更新処理を行い、所定条件の成立に基づいて、同一グループに属する移動体の間で一方の移動体の特殊パラメータを減少させるとともに、他方の移動体の特殊パラメータを一方の移動体の特殊パラメータの減少量に応じて増加させる更新処理を行うようにしてもよい。
【0015】
このようにすれば、同一グループに属するプレーヤ間で特殊パラメータの引き渡しが任意に行えるようになるため、プレーヤ間の連帯感をより一層高めさせることができ、操作に不慣れな初心者を救済しやすくなる操作インターフェース環境を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0017】
図1に本実施形態のゲームシステム(画像生成システム)の機能ブロック図の例を示す。なお本実施形態のゲームシステムは図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0018】
操作部160は、プレーヤが移動体の操作データを入力するためのものであり、その機能は、レバー、ボタン、ステアリング、マイク、タッチパネル型ディスプレイ、或いは筺体などにより実現できる。記憶部170は、処理部100や通信部196などのワーク領域となるもので、その機能はRAM(VRAM)などにより実現できる。
【0019】
情報記憶媒体180(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部100は、情報記憶媒体180に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体180には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)が記憶される。
【0020】
表示部190は、本実施形態により生成された画像を出力するものであり、その機能は、CRT、LCD、タッチパネル型ディスプレイ、或いはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などにより実現できる。音出力部192は、本実施形態により生成された音を出力するものであり、その機能は、スピーカ、或いはヘッドフォンなどにより実現できる。
【0021】
携帯型情報記憶装置194は、プレーヤの個人データやゲームのセーブデータなどが記憶されるものであり、この携帯型情報記憶装置194としては、メモリカードや携帯型ゲーム装置などがある。通信部196は外部(例えばホスト装置や他の画像生成システム)との間で通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
【0022】
なお本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(データ)は、ホスト装置(サーバー)が有する情報記憶媒体からネットワーク及び通信部196を介して情報記憶媒体180(記憶部170)に配信してもよい。このようなホスト装置(サーバー)の情報記憶媒体の使用も本発明の範囲内に含めることができる。
【0023】
処理部100(プロセッサ)は、操作部160からの操作データやプログラムなどに基づいて、ゲーム処理、画像生成処理、或いは音生成処理などの処理を行う。処理部100は記憶部170内の主記憶部172をワーク領域として各種処理を行い、処理部100の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。
【0024】
処理部100は、ゲーム処理部110、描画部120、音生成部130を含む。なおこれらの一部を省略する構成としてもよい。
【0025】
ゲーム処理部110は、ゲーム開始条件が満たされた場合にゲームを開始する処理、ゲームを進行させる処理、移動体やコースなどのオブジェクト(表示物)を配置する処理、オブジェクトを表示する処理、ゲーム結果を演算する処理、或いはゲーム終了条件が満たされた場合にゲームを終了する処理などを行う。特に本実施形態では、レースゲームの進行を制御する処理として、移動体がオブジェクト空間(ゲーム空間)に設定されたコースを周回するタイムを計測しており、グループの中で最後に周回を終えた移動体のタイムをグループのタイムとして、グループ同士のタイムを比較判定してグループの順位を決定する処理を行っている。もちろんグループに属する全ての移動体の周回タイムを合計したタイムをグループのタイムとして処理するようにしてもよいし、グループの中で最も早く周回を終えた移動体のタイムをグループのタイムとして処理するようにしてもよい。
【0026】
特に本実施形態のゲームシステムでは、ゲーム処理部110が、表示制御部111、移動体制御部112、移動状態監視部113、特殊パラメータ更新部114、走行性能変更部115、通信制御部116を含む。
【0027】
表示制御部111は、表示部190に表示される画像(オブジェクト画像)の表示制御を行う。具体的には、表示すべきオブジェクト(車(移動体)、コース、建物、樹木、柱、壁、マップ)を発生させたり、オブジェクトの表示や表示位置を指示したり、オブジェクトを消滅させたりするなどの表示制御を行う。即ち発生したオブジェクトをオブジェクトリストに登録したり、オブジェクトリストを描画部120等に転送したり、消滅したオブジェクトをオブジェクトリストから削除したりするなどの表示制御を行う。
【0028】
また表示制御部111は、プレーヤの入力情報等により、プレーヤ移動体(プレーヤの操作対象となる移動体)やオブジェクトの移動や動作が発生した場合に、発生した移動や動作の様子を示す画像を表示部190に表示するための制御を行う。
【0029】
特に本実施形態のゲームシステムでは、ゲーム空間を3次元のオブジェクト空間によって設定するようになっており、表示制御部111は、オブジェクト空間設定処理、仮想カメラ制御処理なども行う。
【0030】
オブジェクト空間設定処理では、車(移動体)、飛行機(移動体)、コース、建物、樹木、柱、壁、マップなどの表示物を表す各種オブジェクト(ポリゴン、自由曲面又はサブディビジョンサーフェスなどのプリミティブで構成されるオブジェクト)をオブジェクト空間に配置設定する処理を行う。即ちワールド座標系でのオブジェクトの位置や回転角度(向き、方向と同義)を決定し、その位置(X、Y、Z)にその回転角度(X、Y、Z軸回りでの回転角度)でオブジェクトを配置する。
【0031】
仮想カメラ制御処理では、オブジェクト空間内の所与(任意)の視点から見える画像を生成するための仮想カメラ(視点)の制御処理を行う。具体的には、仮想カメラの位置(X、Y、Z)又は回転角度(X、Y、Z軸回りでの回転角度)を制御する処理(視点位置、視線方向あるいは画角を制御する処理)を行う。
【0032】
例えば仮想カメラにより移動体(例えば、車、飛行機等)を後方から撮影する場合には、移動体の位置又は回転の変化に仮想カメラが追従するように、仮想カメラの位置又は回転角度(仮想カメラの向き)を制御する。この場合には、後述する移動体制御部112で求められた移動体の位置、回転角度又は速度などの情報に基づいて、仮想カメラを制御できる。或いは、仮想カメラを、予め決められた回転角度で回転させたり、予め決められた移動経路で移動させる制御を行ってもよい。この場合には、仮想カメラの位置(移動経路)又は回転角度を特定するための仮想カメラデータに基づいて仮想カメラを制御する。なお、仮想カメラ(視点)が複数存在する場合には、それぞれの仮想カメラについて上記の制御処理が行われる。
【0033】
移動体制御部112は、移動体(例えば、車、飛行機等)の移動・動作演算(移動・動作シミュレーション)を行う。すなわち操作部160によりプレーヤが入力した操作データや、プログラム(移動・動作アルゴリズム)や、各種データ(モーションデータ)などに基づいて、移動体をオブジェクト空間内で移動させたり、移動体を動作(モーション、アニメーション)させたりする処理を行う。具体的には、移動体の移動情報(位置、回転角度、速度、或いは加速度)や動作情報(移動体を構成する各パーツの位置、或いは回転角度)を、1フレーム(1/60秒)毎に順次求めるシミュレーション処理を行う。なおフレームは、移動体の移動・動作処理(シミュレーション処理)や描画処理を行う時間の単位である。
【0034】
特に本実施形態では、移動体制御部112が、移動体毎に設定される走行性能に基づいてオブジェクト空間(ゲーム空間)において移動体を移動させる制御を行う。具体的には、操作部160からの操作データに基づいて移動体を移動させる制御を開始し、移動体毎に設定される走行性能である加速係数に基づいてフレーム単位での移動量(移動体の移動速度)を算出するとともにフレーム単位での移動体の回転量(移動体の回転速度)を算出して移動体の座標変換マトリクスMを求める。なお各移動体には、走行性能として移動速度の上限値である最高速度も設定されており、移動体のフレーム単位での移動量は、移動体毎の最高速度によってリミットされる。そして第K−1のフレームでの移動体の頂点座標PK−1に座標変換マトリクスMを乗算して第Kのフレームでの移動体の頂点座標P(=PK−1×M)を求めている。
【0035】
また移動体制御部112は、移動体が所定速度以上(例えば、100km/h以上)でオブジェクト空間内のコース上を走行している際に、移動体の姿勢変更を指示するステアリング操作が行われると、移動体が横滑りを開始するように制御している。そして、移動体が横滑りを開始した後に移動体の加速を指示するアクセル操作が行われると、移動体制御部112は、移動体の移動状態を、いわゆるドリフト状態(所定の移動状態の一例)に制御する。このドリフト状態では、移動体の姿勢(向き)が保持されたまま、移動体が高速で横滑りをしている状態であって、例えば、移動体にコーナーを曲がらせる際に、ドリフト状態でコーナー(カーブ)を曲がらせると、通常のステアリング操作によって移動体が徐々に姿勢を変えながらコーナーを曲がる場合に比べて素早くコーナーを曲がりきることができるように制御している。
【0036】
移動状態監視部113は、移動体の移動状態を監視する処理を行う。具体的には、各移動体が移動体制御部112によってドリフト状態に制御されているか否かを監視しており、移動体がドリフト状態に制御されている場合には、移動体毎に用意されるドリフトフラグをオンに設定し主記憶部172に記憶する。
【0037】
また本実施形態では、オブジェクト空間(ゲーム空間)内を走行する複数の移動体が2以上の移動体を単位としてグループ分けされており、移動状態監視部113は、同一グループに属する少なくとも2つの移動体が、オブジェクト空間の所定の距離範囲であるツインドリフト範囲内においてドリフト状態であるか否かを監視している。なお各移動体が属するグループの設定情報は、ゲーム開始に先立ってプレーヤの操作部160からの選択操作等に基づいて主記憶部172に保存されている。そしてツインドリフト範囲内においてドリフト状態である移動体が複数存在する場合には、移動状態監視部113が、ツインドリフト範囲内においてドリフト状態である各移動体のツインドリフトフラグをオンに設定し主記憶部172に記憶する。なお表示制御部111によって移動体毎にツインドリフト範囲(所定の距離範囲)を識別表示する処理を行うようにしてもよい。
【0038】
特殊パラメータ更新部114は、オブジェクト空間(ゲーム空間)内に設定されたコースを走行している移動体の移動状態がドリフト状態であることに基づいて、その移動体の特殊パラメータを増加させる更新処理を行う。具体的には、主記憶部172に設定されている移動体毎のドリフトフラグの設定状態に基づいてオブジェクト空間内のコースを走行している各移動体の移動状態がドリフト状態であるか否かを判断して、ドリフトフラグがオンに設定されている移動体の特殊パラメータを増加させる処理を行う。特殊パラメータの増加量については、ドリフト状態での移動体の速度やドリフト状態の継続時間などに応じて変動するようになっており、特殊パラメータ更新部114は、例えば、ドリフト状態での移動体の速度が速いほど特殊パラメータの増加量が大きくなり、またドリフト状態の継続時間が長くなるほど特殊パラメータの増加量が大きくなるように特殊パラメータの増加量を決定する。
【0039】
また特殊パラメータ更新部114は、所与の移動体がドリフト状態であることに基づいて、その移動体と同一グループに属する他の移動体の特殊パラメータも増加させる更新処理を行う。すなわち本実施形態では、グループ内の1の移動体がドリフト状態に制御されていれば、ドリフトフラグがオンに設定されていない移動体についても特殊パラメータを増加させる処理を行う。
【0040】
また特殊パラメータ更新部114は、オブジェクト空間(ゲーム空間)のツインドリフト範囲内(所定の距離範囲内)においてドリフト状態であった少なくとも2つの移動体については、特殊パラメータの増加量を変化させる処理を行う。具体的には、特殊パラメータの増加量に所定の係数(>1)を乗算して、ツインドリフトフラグがオンに設定されている場合には、移動体が単独でドリフト状態に制御された場合よりも特殊パラメータの増加量が大きくなるように変化させている。
【0041】
また特殊パラメータ更新部114が、所定条件の成立に基づいて、同一グループに属する移動体の間で一方の移動体の特殊パラメータを減少させるとともに、他方の移動体の特殊パラメータを一方の移動体の特殊パラメータの減少量に応じて増加させる更新処理を行うことができるようにしてもよい。例えば、操作部160に対して所定の操作を行うことで、同一グループに属する移動体の間で特殊パラメータの引き渡しを行うことができるようになれば、プレーヤ間の連帯感をより一層高めさせることができ、操作に不慣れな初心者を救済しやすくなる操作インターフェース環境を提供することができる。また例えば、同一グループに属する移動体同士が接触もしくは所定の距離範囲に接近した場合など、同一グループに属する移動体同士の位置関係が所定の位置関係となった場合に、同一グループに属する移動体の間で特殊パラメータの引き渡しを行うことができるようにしてもよい。このとき移動体が接触したか否かの判定は、ボリュームデータを用いたヒットチェックなどによって行うことができ、移動体が所定の距離範囲に接近したか否かの判定は、移動体の代表点の位置座標などに基づいて行うことができる。もちろん同一グループに属する移動体同士の位置関係が所定の位置関係になったことに基づいて、特殊パラメータの引き渡しを行うための操作が許可されるようにしてもよい。
【0042】
なお特殊パラメータの増加率は、オブジェクト空間(ゲーム空間)に設定されたコース上を移動体が走行するレースゲームにおいては、移動体がコース上のいずれの位置においてドリフト状態に制御されているかによって変化させるようにしてもよい。例えば、コース上に設けられた直線部分とコーナー部分とでは、特殊パラメータの増加率が変化するようにしてもよい。この場合にはコース上の直線部分において移動体がドリフト状態になった時よりもコース上のコーナー部分において移動体がドリフト状態になった時の方が特殊パラメータの増加率が高くなるように設定することができる。またコース上のコーナー部分においても緩やかなコーナー部分と急なコーナー部分とにおいて特殊パラメータの増加率を変化させるようにしてもよい。この場合には、コーナー部分の曲率半径に基づいて、曲率半径が小さいほど特殊パラメータの増加率が高くなるように設定することができる。
【0043】
走行性能変更部115は、操作部160に対する特定の操作に基づいて特殊パラメータの使用量を決定するとともに、決定された特殊パラメータの使用量に応じて移動体の走行性能を変化させる処理を行う。具体的には、操作部160の特定のボタン操作に対して特殊パラメータの使用を指示する機能を割り当てておき、当該特定のボタン操作が行われたことに基づいて特殊パラメータの使用量を判定する。本実施形態では、特殊パラメータの使用量を3段階に分けて指示することができるようになっており、特殊パラメータの使用量が大きいほど移動体の走行性能が変化した特殊状態が長時間維持されるようになっている。そして特殊パラメータを使用量が決定されると、移動体の加速係数に所定の係数(>1)を乗算することで、移動体を急加速可能な状態に走行性能を変化させる。また特殊パラメータが使用されると、加速係数が変化するばかりではなく、移動体の移動速度の上限を定める最高速度も上昇させている。
【0044】
通信制御部116は、他のゲームシステムに送信するパケットを生成する処理、パケット送信先のゲームシステムのネットワークアドレスを指定する処理、受信したパケットを記憶部170に保存する処理、受信したパケットを解析する処理、その他のパケットの送受信に関する通信部196の制御処理等を行う。特に本実施形態では、レースゲームをネットワーク(例えば、インターネット)を利用して実行するために必要なデータパケット及びコマンドパケットを生成する制御や、通信部196を介してデータパケット及びコマンドパケットを送受信させる制御を行う。
【0045】
描画部120は、処理部100で行われる種々の処理(ゲーム処理)の結果に基づいて描画処理を行い、これにより画像を生成し、表示部190に出力する。いわゆる3次元ゲーム画像を生成する場合には、まず表示物(オブジェクト、モデル)を定義する各頂点の頂点データ(頂点の位置座標、テクスチャ座標、色データ、法線ベクトル或いはα値等)を含む表示物データ(オブジェクトデータ、モデルデータ)が入力され、入力された表示物データに含まれる頂点データに基づいて、頂点処理が行われる。なお頂点処理を行うに際して、必要に応じてポリゴンを再分割するための頂点生成処理(テッセレーション、曲面分割、ポリゴン分割)を行うようにしてもよい。頂点処理では、頂点の移動処理や、座標変換(ワールド座標変換、カメラ座標変換)、クリッピング処理、透視変換、あるいは光源処理等のジオメトリ処理が行われ、その処理結果に基づいて、表示物を構成する頂点群について与えられた頂点データを変更(更新、調整)する。そして、頂点処理後の頂点データに基づいてラスタライズ(走査変換)が行われ、ポリゴン(プリミティブ)の面とピクセルとが対応づけられる。そしてラスタライズに続いて、画像を構成するピクセル(表示画面を構成するフラグメント)を描画するピクセル処理(フラグメント処理)が行われる。ピクセル処理では、テクスチャの読出し(テクスチャマッピング)、色データの設定/変更、半透明合成、アンチエイリアス等の各種処理を行って、画像を構成するピクセルの最終的な描画色を決定し、透視変換されたオブジェクトの描画色を描画バッファ174(ピクセル単位で画像情報を記憶できるバッファ。VRAM、レンダリングターゲット)に出力(描画)する。すなわち、ピクセル処理では、画像情報(色、法線、輝度、α値等)をピクセル単位で設定あるいは変更するパーピクセル処理を行う。これにより、オブジェクト空間内に設定された仮想カメラ(所与の視点)から見える画像が生成される。なお、仮想カメラ(視点)が複数存在する場合には、それぞれの仮想カメラから見える画像を分割画像として1画面に表示できるように画像を生成することができる。
【0046】
なお描画部120が行う頂点処理やピクセル処理は、シェーディング言語によって記述されたシェーダプログラムによって、ポリゴン(プリミティブ)の描画処理をプログラム可能にするハードウェア、いわゆるプログラマブルシェーダ(頂点シェーダやピクセルシェーダ)により実現されてもよい。プログラマブルシェーダでは、頂点単位の処理やピクセル単位の処理がプログラム可能になることで描画処理内容の自由度が高く、ハードウェアによる固定的な描画処理に比べて表現力を大幅に向上させることができる。
【0047】
そして描画部120は、表示物を描画する際に、ジオメトリ処理、テクスチャマッピング、隠面消去処理、αブレンディング等を行う。
【0048】
ジオメトリ処理では、表示物に関して、座標変換、クリッピング処理、透視投影変換、或いは光源計算等の処理が行われる。そして、ジオメトリ処理後(透視投影変換後)の表示物データ(表示物の頂点の位置座標、テクスチャ座標、色データ(輝度データ)、法線ベクトル、或いはα値等)は、主記憶部172に保存される。
【0049】
テクスチャマッピングは、記憶部170に記憶されるテクスチャ(テクセル値)を表示物にマッピングするための処理である。具体的には、表示物の頂点に設定(付与)されるテクスチャ座標等を用いて記憶部170からテクスチャ(色(RGB)、α値などの表面プロパティ)を読み出す。そして、2次元の画像であるテクスチャを表示物にマッピングする。この場合に、ピクセルとテクセルとを対応づける処理や、テクセルの補間としてバイリニア補間などを行う。
【0050】
隠面消去処理としては、描画ピクセルのZ値(奥行き情報)が格納されるZバッファ(奥行きバッファ)を用いたZバッファ法(奥行き比較法、Zテスト)による隠面消去処理を行うことができる。すなわちオブジェクトのプリミティブに対応する描画ピクセルを描画する際に、Zバッファに格納されるZ値を参照する。そして参照されたZバッファのZ値と、プリミティブの描画ピクセルでのZ値とを比較し、描画ピクセルでのZ値が、仮想カメラから見て手前側となるZ値(例えば小さなZ値)である場合には、その描画ピクセルの描画処理を行うとともにZバッファのZ値を新たなZ値に更新する。
【0051】
αブレンディング(α合成)は、α値(A値)に基づく半透明合成処理(通常αブレンディング、加算αブレンディング又は減算αブレンディング等)のことである。例えば、通常αブレンディングでは、α値を合成の強さとして線形補間を行うことにより2つの色を合成した色を求める処理を行う。
【0052】
なお、α値は、各ピクセル(テクセル、ドット)に関連づけて記憶できる情報であり、例えばRGBの各色成分の輝度を表す色情報以外のプラスアルファの情報である。α値は、マスク情報、半透明度(透明度、不透明度と等価)、バンプ情報などとして使用できる。
【0053】
音生成部130は、処理部100で行われる種々の処理の結果に基づいて音処理を行い、BGM、効果音、又は音声などのゲーム音を生成し、音出力部192に出力する。
【0054】
なお、本実施形態の画像生成システムは、1人のプレーヤのみがプレイできるシングルプレーヤモード専用のシステムにしてもよいし、複数のプレーヤがプレイできるマルチプレーヤモードも備えるシステムにしてもよい。また複数のプレーヤがプレイする場合に、これらの複数のプレーヤに提供するゲーム画像やゲーム音を、1つの端末を用いて生成してもよいし、ネットワーク(伝送ライン、通信回線)などで接続された複数の端末(ゲーム機、携帯電話)を用いて分散処理により生成してもよい。
【0055】
2.本実施形態の手法
まず図2を参照しながら、従来のゲームシステムにおいて行われてきた特殊パラメータの更新手法を説明する。
【0056】
従来の手法では、ドリフト状態に制御されている移動体のみが特殊パラメータの更新対象となるように制御されていた。このため例えば、図2に示すように、第1のプレーヤが操作するプレーヤ移動体PC1と第2のプレーヤが操作するプレーヤ移動体PC2とが同一のグループを形成して他のグループとグループ対抗でレースゲームを行うような場合に、プレーヤ移動体PC2がゲーム空間に設定されたコースC上をドリフト状態で曲がったとしてもプレーヤ移動体PC2の特殊パラメータは、P21からP22(=P21+α)に増加するが、プレーヤ移動体PC1は、通常のステアリング操作で徐々に姿勢を変えながらコースC上を曲がっているため、プレーヤ移動体PC1の特殊パラメータはP11に維持される。
【0057】
このように第2のプレーヤが操作技術に熟練しており、第1のプレーヤが操作技術に不慣れである場合には、第1のプレーヤが特殊パラメータを増加させることができないために、特殊パラメータの使用により自身の操作するプレーヤ移動体PC1を急加速させることができないという事態が発生しやすい。
【0058】
そこで本実施形態では、図3に示すように、操作の熟練した第2のプレーヤがプレーヤ移動体PC2をドリフト状態にさせてゲーム空間に設定されたコースC上を曲がっていくと、第2のプレーヤが操作するプレーヤ移動体PC2の特殊パラメータがP21からP22(=P21+β)に増加するばかりでなく、通常のステアリング操作でコースC上を曲がっていった第1のプレーヤのプレーヤ移動体PC1の特殊パラメータもP11からP12(P11+β)に増加するように更新される。
【0059】
本実施形態の手法によれば、グループに属するいずれかの移動体がドリフト状態となったことに基づいて、その移動体の特殊パラメータが増加する場合に、同一グループに属する他の移動体の特殊パラメータも増加させるようにしたので、操作に不慣れな初心者であっても、同一グループ内に操作に熟練したプレーヤがいれば、特殊パラメータを使用してレースゲームを有利に進めることができるようになる。このため本実施形態の手法によれば、操作に不慣れな初心者がグループにいる場合であってもグループ対抗でのレースゲームを十分に楽しむことができる操作インターフェース環境を提供することができる。
【0060】
特に本実施形態のレースゲームのように、グループ内でコースの周回が最も遅かった移動体のタイムをグループ間の順位を判定する基準として使用した場合などには、本実施形態の手法を適用することによって、遅れをとりやすい初心者を救済しやすくなるため、プレーヤ間の操作技量の差を特殊パラメータの使用によって埋めることができるようになってグループ同士のデッドヒートを演出しやすいようにレースゲームの進行を制御することができるようになる。
【0061】
なお、図3に示した例のように移動体単位で特殊パラメータを設定する場合とは異なり、グループ単位で特殊パラメータを設定した場合においても、グループに属する任意の移動体がドリフト状態に制御されれば、その移動体が属するグループ内で共通に使用可能な特殊パラメータが増加するため、同様に初心者がいてもグループ対抗のレースゲームを十分に楽しむことができるように操作インターフェース環境を改善することができる。
【0062】
また本実施形態では、図4に示すように、コースC上を走行するプレーヤ移動体PCに対してツインドリフト範囲(所定の距離範囲)を設定している。
【0063】
具体的には、図4に示すように、コースCに対して進行方向に沿ったローカル座標軸Dを設定し、このローカル座標軸D上の距離範囲によってツインドリフト範囲Rを設定している。
【0064】
より詳細に説明すると、プレーヤ移動体PCの位置を示す代表点Aを通るローカル座標軸Dと直交するローカル座標軸Bを求めて、ローカル座標軸Dとローカル座標軸Bとの交点から距離Lthの範囲をツインドリフト範囲Rとして設定している。このツインドリフト範囲Rは、コースC上に存在するプレーヤ移動体PCの全てに対して設定している。なお距離Lthを半径とする円形状の範囲をツインドリフト範囲Rとして設定するようにしてもよい。
【0065】
そして本実施形態では、上述したように設定されるツインドリフト範囲Rを利用して、特殊パラメータの増加量を変化させる手法を採用している。
【0066】
具体的には、図5(A)及び図5(B)に示すように、プレーヤ移動体PC1の代表点A1を通るローカル座標軸B1とプレーヤ移動体PC2の代表点A2を通るローカル座標軸B2とのローカル座標軸Dにおける距離Lを求めて、距離Lと各プレーヤ移動体PC1、PC2のツインドリフト範囲R1、R2を指定する距離Lthとの比較判定結果に応じて特殊パラメータの増加量を変化させている。なお図5(A)及び図5(B)に示す例では、プレーヤ移動体PC1とプレーヤ移動体PC2とはいずれもドリフト状態に制御されているものとする。
【0067】
まず図5(A)に示す例では、プレーヤ移動体PC1のツインドリフト範囲R1とプレーヤ移動体PC2のツインドリフト範囲R2とがオーバーラップする範囲R12の中にプレーヤ移動体PC1の代表点A1とプレーヤ移動体PC2の代表点A2とが含まれている。すなわち、図5(A)に示す例では、プレーヤ移動体PC1の代表点A1を通るローカル座標軸B1とプレーヤ移動体PC2の代表点A2を通るローカル座標軸B2とのローカル座標軸D上での距離LがLthを下回ることになるため、プレーヤ移動体PC1とプレーヤ移動体PC2とが互いのツインドリフト範囲R1、R2の中でドリフト状態に制御されていると判定される。
【0068】
次に図5(B)に示す例では、プレーヤ移動体PC1のツインドリフト範囲R1とプレーヤ移動体PC2のツインドリフト範囲R2とがオーバーラップする範囲R12の中にプレーヤ移動体PC1の代表点A1とプレーヤ移動体PC2の代表点A2とがいずれも含まれていない。すなわち図5(B)に示す例では、プレーヤ移動体PC1の代表点A1を通るローカル座標軸B1とプレーヤ移動体PC2の代表点A2を通るローカル座標軸B2とのローカル座標軸D上での距離LがLthを上回ることになるため、プレーヤ移動体PC1は、プレーヤ移動体PC2のツインドリフト範囲R2の外でドリフト状態であると判定され、プレーヤ移動体PC2は、プレーヤ移動体PC1のツインドリフト範囲R1の外でドリフト状態であると判定される。
【0069】
そして本実施形態では、図5(A)に示すようにツインドリフト範囲内で複数のプレーヤ移動体PC1、PC2がともにドリフト状態であった場合には、プレーヤ移動体PC1、PC2の特殊パラメータの増加量が図5(B)に示す場合に比べて大きくなるように変化させている。図5(A)及び図5(B)に示す手法によれば、同一グループに属するプレーヤ同士で積極的に協力しながら、特殊パラメータを増加させていくことができるため、同一グループ内でのプレーヤ間の連帯感を高めながらレースゲームを行わせることができるようになる。
【0070】
また本実施形態では、図6に示すようにゲーム画面において観察される他のプレーヤが操作するプレーヤ移動体PCのツインドリフト範囲Rを識別可能に表示する手法を採用している。このようにすれば、いずれの距離範囲まで近づいて自身の操作するプレーヤ移動体をドリフト状態にさせれば特殊パラメータの増加量が変化するのかが認識しやすくなるため、操作インターフェース環境のさらなる向上を図ることができる。
【0071】
3.本実施形態の処理
次に図7〜図11を参照しながら、本実施形態の手法を実現する処理例を詳細に説明する。
【0072】
図7は、特殊パラメータの更新処理の一例を示すフローチャートである。
【0073】
まず各移動体のドリフトフラグをチェックして、各移動体がドリフト状態に制御されているか否かを判定する(ステップS10)。チェック対象の移動体がドリフト状態に制御されていると判断された場合には(ステップS10でY)、パラメータ設定条件を取得する(ステップS11)。具体的には、移動体の速度やドリフト状態の継続時間、ツインドリフトフラグの設定状態を取得する。
【0074】
次に、ステップS11で取得されたパラメータ設定条件に従って特殊パラメータの増加量を設定し(ステップS12)、特殊パラメータを増加させる更新処理を実行する(ステップS13)。
【0075】
図8及び図9は、2体の移動体がペアとなってペア対抗でレースゲームを行う場合における特殊パラメータの分配処理の一例を示すフローチャートである。
【0076】
まず処理対象の移動体に対してペアとなる移動体が存在するか否かを判定する(ステップS20)。ペアとなる移動体が存在する場合には(ステップS20でY)、特殊パラメータが自然に一定量ずつ増加し続ける状態に設定されているか否かを判定する(ステップS21)。本実施形態のゲームシステムでは、ドリフト状態に依らずに移動体が走行していれば一定量ずつ特殊パラメータを増加させるゲーム状態を設定可能になっており、そのようなゲームモードに設定されている場合には(ステップS21でY)、ステップS22〜S27の処理が実行される。
【0077】
具体的には、処理対象の移動体に関して設定された特殊パラメータの総量が所定の容量を超えたか否かを判定する(ステップS22)。
【0078】
そして特殊パラメータの総量が所定の容量を超えている場合には(ステップS22でY)、容量を超過した分の値を全て予備バッファに加算する(ステップS23)。一方、特殊パラメータの総量が所定の容量を超えていない場合には(ステップS22でN)、特殊パラメータの増加量(一定)のうち半分に相当する値を予備バッファに加算する(ステップS24)。
【0079】
次に予備バッファの値がしきい値を超えたか否かを判定し(ステップS25)、予備バッファの値がしきい値を超えている場合には(ステップS25でY)、予備バッファからしきい値分に相当する値を分配バッファに移動してから(ステップS26)、パラメータ分配フラグをオンに設定する(ステップS27)。一方、予備バッファの値がしきい値を超えなかった場合には(ステップS25でN)、ステップS26〜S27の処理はバイパスされるため、予備バッファの値がしきい値を超えるまで特殊パラメータの分配は行われないようになっている。
【0080】
ところで、ステップS21の判定処理において、特殊パラメータが自然に一定量ずつ増加し続ける状態に設定されていないと判断された場合には(ステップS21でN)、図9に示すステップS28〜S34の処理が実行される。
【0081】
具体的には、処理対象の移動体に関して特殊パラメータが増加する更新処理(図7参照)が行われたか否かを判定する(ステップS28)。
【0082】
そして特殊パラメータが増加したと判断された場合には(ステップS29でY)、特殊パラメータの総量が所定の容量を超えたか否かを判定する(ステップS29)。このとき特殊パラメータの総量が所定の容量を超えている場合には(ステップS29でY)、容量を超過した分の値を全て予備バッファに加算する(ステップS30)。一方、特殊パラメータの総量が所定の容量を超えていない場合には(ステップS29でN)、特殊パラメータの増加量(一定)のうち半分に相当する値を予備バッファに加算する(ステップS31)。
【0083】
また特殊パラメータが増加していないと判断された場合には(ステップS28でN)、予備バッファの値が0より大きいか否かを判断する(ステップS32)。ステップS30あるいはステップS31において予備バッファに値が加算されている場合には、予備バッファの値が0より大きいと判断され(ステップS32でY)、この場合には、予備バッファの値を全て分配バッファに移動してから(ステップS33)、パラメータ分配フラグをオンに設定する(ステップS34)。
【0084】
続いて図8に再び戻って、パラメータ分配フラグが設定された後の処理について説明する。
【0085】
パラメータ分配フラグがオンである場合には(ステップS35でY)、分配バッファの値を処理対象の移動体のペアとして設定されている移動体(ペア対象)の特殊パラメータとして加算する(ステップS36)。最後にパラメータ分配フラグと分配バッファの値をリセットして処理を終了する(ステップS37)。
【0086】
図10は、複数の移動体がツインドリフト範囲内でドリフト状態となることにより特殊パラメータの増加量を変化させる処理の一例を示すフローチャートである。
【0087】
まず処理対象の移動体に対してペアとなる移動体(ペア対象)が存在するか否かを判定する(ステップS40)。ペアとなる移動体が存在する場合には(ステップS40でY)、処理対象の移動体と、その移動体とペアとなる移動体との双方のツインドリフトフラグを一旦オフにリセットする(ステップS41)。次に図5に示したように、処理対象の移動体とペア対象の移動体とのコース座標上(ローカル座標軸D上)での相対距離Lを算出する(ステップS42)。
【0088】
そして相対距離Lが一定値Lth以内である場合であって(ステップS43でY)、処理対象の移動体とペア対象の移動体との双方がドリフト状態である場合には(ステップS44でY)、各移動体のツインドリフトフラグをオンに設定する(ステップS45)。このツインドリフトフラグは、図7で説明したようにパラメータ設定条件として取得され、特殊パラメータの増加量を決定する際に参照される。
【0089】
図11は、特殊パラメータを使用した移動体について走行性能の変化させる処理の一例を示すフローチャートである。
【0090】
まずゲームコントローラ(操作部)に対する入力に基づいて特殊パラメータの使用要求が発生したか否かを判断する(ステップS50)。特殊パラメータの使用要求が発生したと判断された場合には(ステップS50でY)、プレーヤが操作する移動体の特殊パラメータが所定値以上であるか否かを判断する(ステップS51)。
【0091】
本実施形態では、特殊パラメータを所定の容量を3分割した単位毎に使用可能に設けられており、少なくとも1単位分に相当する値(所定の容量の1/3に相当する値)以上であれば、特殊パラメータを使用可能であると判断される。
【0092】
そして特殊パラメータが所定値以上であると判断された場合には(ステップS51でY)、ゲームコントローラに対する入力内容に応じて特殊パラメータの使用量と、その使用量に応じた走行性能の変化状態の持続時間を設定する(ステップS52)。続いて、走行性能である移動体の加速係数に所定の係数を乗算して移動体の加速性能を変更するとともに、移動体の最高速度(例えば、300km/h)を予め定められた最高速度(例えば、350km/h)に変更する(ステップS53)。またこのときステップS52で設定した持続時間のカウント処理を開始する。
【0093】
このようにしてステップS53において移動体は走行性能が変化した状態になって、ゲームコントローラへのアクセル操作に基づいて急加速することができるようになる。そして移動体の走行性能を変化させている期間では、ステップS52で設定した持続時間が終了するまで、特殊パラメータの使用量の分だけ徐々に減少させている更新処理が行われる(ステップS54、ステップS55でN)。
【0094】
そしてステップS53でカウントを開始した持続時間が終了したと判断された場合には(ステップS55でY)、加速係数や最高速度をデフォルトに復帰して処理を終了する(ステップS56)。
【0095】
4.応用例
4.1 クライアント/サーバシステム
本実施形態のゲームシステムは、単体の装置によって各ゲーム処理を実行するようになっているが、サーバ装置と複数のクライアント装置から構成されるシステム(以下、「クライアント/サーバシステム」という。)に適用することができるようになっている。
【0096】
この場合に、クライアントサーバシステムは、図12に示すように、基本的なゲーム処理を行うサーバ装置Sと、レースゲームに参加する各プレーヤから操作データを受信し、かつ、サーバ装置と必要なデータ及び命令の送受信を行う複数のクライアント装置Cと、から構成される。
【0097】
本例においてサーバ装置Sは、クライアント装置Cに対して、例えば、ブロードキャスト方式でデータ通信を行うことによって、上述のように、ゲーム開始条件が満たされた場合にゲームを開始する処理やゲームを進行させる処理などレースゲームを実行する際に必要な各種の処理を行う。
【0098】
具体的には、このサーバ装置Sは、各レースゲームの実行中には、各クライアント装置Cを識別するための識別データに基づいて各クライアント装置Cとデータパケットやコマンドパケットの送受信を行う。
【0099】
また、このサーバ装置Sは、各クライアント装置Cの識別データに基づいて、各プレーヤにおける操作データの受信、各プレーヤの移動体の移動状態の監視処理、特殊パラメータの分配処理、ツインドリフトフラグの設定処理の実行及び処理結果の各クライアント装置Cへの送信、及び、各移動体のツインドリフト範囲を識別表示するゲーム画像を表示部190に表示させるためのデータの送信など各種の処理を行う。
【0100】
各クライアント装置Cは、操作部160を介して受信した操作データを識別データとともにサーバ装置Sに送信するとともに、種々の画像を描画させるためのデータを受信し、表示部190に表示させる。
【0101】
また上述の他にサーバ装置Sは、各プレーヤの移動体の特殊パラメータの残量(特殊パラメータの最新の更新結果)を表示させるゲーム画像を表示部190に表示させるためのデータを各クライアント装置Cに対して送信する処理などを行うようにしてもよい。この場合、クライアント装置Cは、グループ設定情報などに基づいて、同一グループに属するプレーヤの移動体に関する特殊パラメータの残量のみをゲーム画像において表示するようにしてもよいし、全プレーヤの移動体に関する特殊パラメータの残量をゲーム画像において表示するようにしてもよい。またゲーム画像においてコース全体における移動体の位置関係を把握可能にするレーダーマップ(コースマップ)が表示されている場合には、各移動体に対応する位置に特殊パラメータの残量を表示するようにしてもよい。またサーバ装置Sからクライアント装置Cに対して送信された各プレーヤの移動体の特殊パラメータの残量を表示させるデータは、プレーヤが所定のアイテムを使用するなど所定のイベントが発生したことに基づいて、そのプレーヤのクライアント装置Cにおけるゲーム画像の生成に使用されるようにしてもよい。
【0102】
4.2 ピアツーピアシステム
本実施形態のゲームシステムは、単体の装置によって各ゲーム処理を実行するようになっているが、複数の端末装置のみから構成され、各端末装置にて連動させてゲーム処理を実行するシステム(以下、「ピアツーピアシステム」という。)に適用することができるようになっている。
【0103】
この場合には、ピアツーピアシステムは、図13に示すように、必要なデータ及び命令を相互に送受させつつ、個々にゲーム処理を実行しつつも各ゲーム処理を連動させるように制御可能な複数の端末装置Tから構成される。
【0104】
各端末装置Tは、他の端末装置Tと連動しつつ、上述のように、ゲーム開始条件が満たされた場合にゲームを開始する処理やゲームを進行させる処理などレースゲームを実行する際に必要な各種の処理を行うようになっている。
【0105】
具体的には、各端末装置Tは、各レースゲームの実行中には、他の端末装置Tを識別するための識別データに基づいて、それぞれデータパケット及びコマンドパケットの送受信を行うようになっており、当該識別データに基づいて、各プレーヤにおける操作データの受信、各プレーヤの移動体の移動状態の監視処理、特殊パラメータの分配処理、ツインドリフトフラグの設定処理の実行、及び、各移動体のツインドリフト範囲を識別表示するゲーム画像の描画など各種の処理を行う。
【0106】
特に、この各端末装置Tは、プレーヤの操作データが操作部160を介して各端末装置Tに入力されると、当該入力された操作データに基づいて各種のゲーム処理を実行するとともに、当該入力された操作データを他の端末装置Tに送信する。
【0107】
また、この各端末装置Tは、操作部160を介して入力された操作データに基づいて自己の装置が担当する移動体をオブジェクト空間において移動させる制御を行うとともに、他の端末装置Tから送信された操作データに基づいて該当する移動体をオブジェクト空間において移動させる制御も行う。
【0108】
すなわち、ピアツーピアシステムの場合には、各端末装置Tは、当該各端末装置Tにて操作データが入力される移動体(すなわち、担当する移動体)以外の移動体の操作データについては、他の端末装置Tから受信し、操作部160を介して入力された操作データと受信した操作データに基づいて上述した各種のゲーム処理を行うようになっている。
【0109】
なお、上述のピアツーピアシステムでは、各端末装置T毎に、入力された操作データと受信した操作データに基づいて各種のゲーム処理を行うようになっているが、勿論、操作データだけでなく、各プレーヤの移動体の移動状態の監視処理、特殊パラメータの分配処理、ツインドリフトフラグの設定処理などの各種の処理に関するデータの送受信を行うことができる。
【0110】
また上述の他に各端末装置Tは、各プレーヤの移動体の特殊パラメータの残量(特殊パラメータの最新の更新結果)を表示させるゲーム画像を表示部190に表示させるためのデータを互いに送受信する処理などを行うようにしてもよい。この場合、各端末装置Tは、グループ設定情報などに基づいて、同一グループに属するプレーヤの移動体に関する特殊パラメータの残量のみをゲーム画像において表示するようにしてもよいし、全プレーヤの移動体に関する特殊パラメータの残量をゲーム画像において表示するようにしてもよい。またゲーム画像においてコース全体における移動体の位置関係を把握可能にするレーダーマップ(コースマップ)が表示されている場合には、各移動体に対応する位置に特殊パラメータの残量を表示するようにしてもよい。また各端末装置Tが互いに送受信する各プレーヤの移動体の特殊パラメータの残量を表示させるデータは、プレーヤが所定のアイテムを使用するなど所定のイベントが発生したことに基づいて、そのプレーヤの端末装置Tにおけるゲーム画像の生成に使用されるようにしてもよい。
【0111】
なお、本発明は、上記実施形態で説明したものに限らず、種々の変形実施が可能である。例えば、明細書又は図面中の記載において広義や同義な用語として引用された用語は、明細書又は図面中の他の記載においても広義や同義な用語に置き換えることができる。
【0112】
また、各プレーヤの移動体の移動状態の監視処理、特殊パラメータの分配処理、ツインドリフトフラグの設定処理についても上記実施形態で説明したものに限定されず、これらと均等な手法も本発明の範囲に含まれる。
【0113】
また、上記実施形態では、移動体として車両を操作するレースゲームを例にとり説明したがこれに限られず、船舶又は飛行機などの各種の移動体を操作するゲーム等に適用可能である。
【0114】
また、本発明は、種々のゲームに適用できる。そして、本発明は、業務用ゲームシステム、家庭用ゲームシステム、多数のプレーヤが参加する大型アトラクションシステム、シミュレータ、マルチメディア端末、ゲーム画像を生成するシステムボード、携帯電話等の種々の画像生成システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本実施形態のゲームシステムの機能ブロック図。
【図2】本実施形態の手法を説明するための図。
【図3】本実施形態の手法を説明するための図。
【図4】本実施形態の手法を説明するための図。
【図5】本実施形態の手法を説明するための図。
【図6】本実施形態の手法を説明するための図。
【図7】本実施形態の具体的な処理例を示すフローチャート。
【図8】本実施形態の具体的な処理例を示すフローチャート。
【図9】本実施形態の具体的な処理例を示すフローチャート。
【図10】本実施形態の具体的な処理例を示すフローチャート。
【図11】本実施形態の具体的な処理例を示すフローチャート。
【図12】本実施形態の応用例を示すネットワークシステムの説明図。
【図13】本実施形態の応用例を示すネットワークシステムの説明図。
【符号の説明】
【0116】
100 処理部、110 ゲーム処理部、
111 表示制御部、112 移動体制御部、113 移動状態監視部、
114 特殊パラメータ更新部、115 走行性能変更部、116 通信制御部、
120 描画部、130 音生成部、
160 操作部、170 記憶部、172 主記憶部、174 描画バッファ、
180 情報記憶媒体、190 表示部、192 音出力部、
194 携帯型情報記憶装置、196 通信部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体がグループを形成してレースゲームを行うためのプログラムであって、
前記移動体毎に設定される走行性能に基づいて前記移動体の移動制御を行う移動体制御部と、
前記移動体の移動状態を監視する移動状態監視部と、
所与の移動体の移動状態が所定の移動状態であることに基づいて、当該所与の移動体の特殊パラメータを増加させる更新処理を行う特殊パラメータ更新部と、
操作部に対する特定の操作に基づいて特殊パラメータを使用して移動体の走行性能を変化させる走行性能変更部としてコンピュータを機能させ、
前記特殊パラメータ更新部が、
前記所与の移動体が前記所定の移動状態であることに基づいて、同一グループに属する他の移動体が使用可能な特殊パラメータを増加させる更新処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記移動状態監視部が、
同一グループに属する少なくとも2つの前記移動体が、所定の距離範囲内において前記所定の移動状態であるか否かを監視し、
前記特殊パラメータ更新部が、
前記所定の距離範囲内において前記所定の移動状態であった前記少なくとも2つの移動体については、特殊パラメータの増加量を変化させることを特徴とするプログラム。
【請求項3】
請求項2において、
移動体毎に前記所定の距離範囲を識別表示する処理を行う表示制御部としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記特殊パラメータが、移動体毎に設定され、
前記特殊パラメータ更新部が、
前記所与の移動体が前記所定の移動状態であることに基づいて、同一グループに属する他の移動体の特殊パラメータを増加させる更新処理を行い、
所定条件の成立に基づいて、同一グループに属する移動体の間で一方の移動体の特殊パラメータを減少させるとともに、他方の移動体の特殊パラメータを一方の移動体の特殊パラメータの減少量に応じて増加させる更新処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項5】
コンピュータにより読み取り可能な情報記憶媒体であって、請求項1〜4のいずれかに記載のプログラムを記憶していることを特徴とする情報記憶媒体。
【請求項6】
複数の移動体がグループを形成してレースゲームを行うためのゲームシステムであって、
前記移動体毎に設定される走行性能に基づいて前記移動体の移動制御を行う移動体制御部と、
前記移動体の移動状態を監視する移動状態監視部と、
所与の移動体の移動状態が所定の移動状態であることに基づいて、当該所与の移動体の特殊パラメータを増加させる更新処理を行う特殊パラメータ更新部と、
操作部に対する特定の操作に基づいて特殊パラメータを使用して移動体の走行性能を変化させる走行性能変更部と、を含み、
前記特殊パラメータ更新部が、
前記所与の移動体が前記所定の移動状態であることに基づいて、同一グループに属する他の移動体が使用可能な特殊パラメータを増加させる更新処理を行うことを特徴とするゲームシステム。

【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−61843(P2008−61843A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243385(P2006−243385)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000134855)株式会社バンダイナムコゲームス (1,157)
【Fターム(参考)】