説明

ゲーム装置、ゲームプログラムおよび記憶媒体

【課題】ゲーム画面の外観に応じた音量で音声を発生することのできるゲーム装置、ゲームプログラムおよびゲームプログラム等を記憶した記憶媒体を提供する。
【解決手段】ゲーム空間内の所定位置に遮音ラインL1等の基準位置を設定する。ゲーム音声が発生すると、その発生位置とキャラクタ位置との距離を算出し、この距離に応じて基本音量を決定する。さらに、発生位置と遮音ラインの位置に応じて音量補正を行う。例えば遮音ラインを超えると音量を低下させる。この補正した音量でゲーム音声を発する。これにより、ゲーム画面の外観に応じた音量で音声を発生する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゲーム装置、このゲーム装置を駆動するゲームプログラムおよびこのゲームプログラムを記憶した記憶媒体に関し、特に音声の音量制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
CPUの情報処理機能を用いたビデオゲームが普及しており、ゲームを実行するためのハードウェアとしては、テレビに接続する専用のゲーム機であるいわゆる据え置き型ゲーム機、パーソナルコンピュータ、携帯型ビデオゲーム機、等が普及している。これらのゲーム機で実行されるゲームプログラムとして、例えばハンティングアクションゲームの一種である「モンスターハンターポータブル
(登録商標)」が有る。このゲームは多様なゲーム空間で主キャラクタであるハンターと敵キャラクタであるモンスターとが戦う設定のゲームである(非特許文献1参照)。
【0003】
モンスターは足音、鳴き声など種々のゲーム音声を発するように構成され、その音量は主キャラクタに聞こえている音をシミュレーションするために、モンスターとハンターとの距離に応じて制御されるようになっている。例えばモンスターとハンターの距離が近い場合、大きい音量でゲーム音声を発音するようになっている。
【0004】
【非特許文献1】モンスターハンターポータブル公式ガイドブック(2006年3月8日初版発行 制作・販売元:株式会社エンターブレイン
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにゲームが展開されるゲーム空間は多様であり、海岸等の音を遮るものがない平地のみではなく、種々の起伏を有するゲーム空間が設定されている。例えば洞窟、崖などの音の伝搬を妨げる遮音物が存在するゲーム空間も設定されている。
しかし、従来のゲームにおいては、ゲーム音声の音量をモンスターとハンターとの距離に応じて変化させるのみであったため、遮音物の陰に隠れているモンスターの音声であっても、ハンターに対する直線距離が近ければ大きな音量で発音されてしまっていた。
【0006】
このように、モンスターとハンターとの間に遮音物があり、ゲーム画面ではモンスターが見えていないにもかかわらず、モンスターの鳴き声が大きな音量で聞こえてしまうと、ゲーム空間を映したゲーム画面と音声とが大きく異なってしまい、ゲームの臨場感を損なってしまうという問題が有った。
【0007】
この発明は、ゲーム空間の形状に応じた音声を発生することのできるゲーム装置、ゲームプログラムおよびゲームプログラム等を記憶した記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明であるゲーム装置は、仮想のゲーム空間を設定し、ゲームの進行に応じて前記ゲーム空間内の所定位置でゲーム音声が発生する発音イベントを生成するとともに、前記ゲーム空間内に前記ゲーム音声の聴取位置を設定するゲーム進行制御部と、発音イベントに対応するゲーム音声の音声データを記憶した音声データ記憶部と、発音イベントが発生したとき、前記音声データを読み出して、その発音イベントの発生位置である発音位置および前記聴取位置に応じた音量で前記ゲーム音声を生成する音声信号生成部と、 を備えたゲーム装置であって、
前記ゲーム進行制御部は、前記ゲーム空間に音量境界線を設定し、前記音声信号生成部は、前記発音位置と前記聴取位置と前記音量境界線との位置関係に応じて、前記ゲーム音声の音量を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記音声信号生成部は、前記発音位置と聴取位置との距離に応じて基本音量を決定し、さらに、前記発音位置と前記聴取位置と前記音量境界線との位置関係に応じてこの基本音量を補正することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1,2の発明において、前記音声信号生成部は、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟む位置にあるとき、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟まない位置にあるときよりも、前記ゲーム音声の音量を小さく制御することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記音声信号生成部は、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟む位置にあるとき、前記ゲーム音声を遮音して出力しないよう制御することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、上記発明において、前記音量境界線は、前記ゲーム空間の地形に基づいて設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、上記発明において、前記ゲーム進行制御部は、ゲーム空間内に表示され、利用者の操作によって活動する主キャラクタの位置を聴取位置として設定することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明であるゲームプログラムは、制御部を備えたゲーム装置に、仮想のゲーム空間を設定するゲーム空間設定手順、前記ゲーム空間の所定位置に音量境界線を設定する音量境界線設定手順、前記ゲーム空間の所定位置にゲーム音声の聴取位置を設定する聴取位置設定手順、ゲームの進行に応じて、前記ゲーム空間内の所定位置で音声信号を生成する音声信号生成手順、前記音声信号の発音位置、前記聴取位置および前記音量境界線の位置関係に応じて音量を決定する音量決定手順、を実行させることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記音量決定手順は、前記発音位置と聴取位置との距離に応じて基本音量を決定し、さらに、前記発音位置と前記聴取位置と前記音量境界線との位置関係に応じてこの基本音量を補正する手順であることを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項7,8の発明において、前記音量決定手順は、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟む位置にあるとき、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟まない位置にあるときよりも、前記ゲーム音声の音量を小さく制御する手順であることを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記音量決定手順は、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟む位置にあるとき、前記ゲーム音声を遮音して出力しないよう制御する手順であることを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項7〜10の発明において、前記音量境界線設定手順は、洞窟の入口や山の斜面等の前記ゲーム空間の地形に基づいて前記音量境界線を設定する手順であることを特徴とする。
【0019】
請求項12の発明は、請求項7〜11の発明において、前記聴取位置決定手順は、ゲーム空間内に表示され、利用者の操作によって活動する主キャラクタの位置を聴取位置として設定する手順であることを特徴とする。
【0020】
請求項13の発明は、請求項7〜12に記載のゲームプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ゲーム空間に遮音領域を設定し、発音イベントの発生位置とこの遮音領の位置関係に応じて音量を制御するため、ゲーム画面の外観に応じた発音制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、この発明が適用される携帯型ビデオゲーム機の概略の外観図である。携帯型ビデオゲーム機は、中央にカラー液晶のディスプレイ4、その左に方向キー3、右側にボタン群2(△○×□ボタン)が配置されている。図示しないメディア装着部にゲームプログラム、ゲームデータが記録されているゲームメディアがセットされ、電源がオンされることにより、ゲームがスタートする。遊技者は、左手で方向キー4、右手でボタン群2を操作してゲーム中のキャラクタ等を操作する。また、音声信号の出力部として内蔵スピーカおよびイヤホン端子も設けられている(図2参照)。
【0024】
ゲームメディアには、たとえば、モンスターハンターポータブル(登録商標)等のゲームプログラム、デームデータが記憶されている。ゲーム「モンスターハンターポータブル(登録商標)」は、遊技者が操作する主キャラクタであるハンターが、洞窟や海岸等の複数のゲーム空間で、敵キャラクタであるモンスターと戦うゲームである。ゲームの進行に応じて、BGMのほか、キャラクタが歩く足音、武器等が摺れる音、モンスターの鳴き声、波の音等の様々な音声(ゲーム音声)が発生する。
【0025】
図2は、同携帯型ビデオゲーム機1の内部構成を示すブロック図である。
携帯型ビデオゲーム機1は、CPU11、描画データ生成プロセッサ12、RAM(Random Access Memory)13、ROM(Read Only Memory)14、描画処理プロセッサ15、VRAM(Video-RAM)16、表示部17、音声処理プロセッサ18、アンプ19、スピーカ20、イヤホン端子21、操作部22、メディアインタフェース23、無線LANモジュール24およびバス25を含んでいる。
【0026】
このうち、CPU11、描画データ生成プロセッサ12、RAM13、ROM14、描画処理プロセッサ15、音声処理プロセッサ18、操作部22、メディアインタフェース23および無線LANモジュール24が、バス25によって相互にデータ伝送可能に接続されている。
【0027】
メディアインタフェース23は、図示しないメディア装着部にセットされたゲームメディア5にアクセスしてゲームプログラム等を読み出す機能部である。ゲームメディア5には、上述したようにゲームプログラムおよびゲームデータが記憶されている。ゲームデータは、キャラクタや背景の画像データ、ステータスなどの情報表示用の画像データ、効果音やBGMなどの音声データ、文字や記号によるメッセージデータ、および、図7,図8に示す各種テーブルを含んでいる。CPU11は、ゲームメディア5に記録されているゲームプログラム、ゲームデータの全部または一部をRAM13に読み込み、遊技者による操作部22の操作に応じてこれを実行する。
【0028】
RAM13には、メディアインタフェース23によってゲームメディア5から読み込まれたゲームプログラムおよびゲームデータを格納するロードエリア、および、CPU11がゲームプログラムを処理するためのワークエリアが設定される。RAM13のロードエリアには、ゲームの進行に応じて必要なゲームプログラムとゲームデータとがゲームメディア5から読み込まれる。
【0029】
ROM14には、ディスクローディング機能などのゲーム装置1の基本的機能やゲームメディア5に記憶されているゲームプログラム、ゲームデータの読み出しを制御する基本プログラムが記憶されている。
【0030】
CPU11は、上記のようにゲームメディア5からRAM13に読み込まれたゲームプログラムを実行することより、ゲーム進行を制御する。より具体的には、操作部22から遊技者の操作信号が入力されると、CPU11は、ゲームプログラムに従ってその操作信号に対する所定のゲーム進行処理を行い、その処理結果をゲーム進行を示す画像(以下、「ゲーム画像」という。)として表示部17に表示するとともに、ゲーム進行を示す音声信号(以下、「ゲーム音声」という。)をスピーカ20やイヤホン端子21に出力する。ゲームプログラムは、ゲームの進行を制御するメインプログラムであるゲーム進行処理プログラム、ゲーム中の音声(ゲーム音声)の発生を制御する発音イベント処理プログラム等から構成されている。
【0031】
ゲーム進行に伴うゲーム画像の描画は、CPU11の指示により、描画処理プロセッサ15が行う。CPU11は、操作部22から入力される遊技者の操作信号に基づき、表示部17に表示すべきゲーム画像の内容を決定し、その内容に対して必要な描画データを描画データ生成プロセッサ12に生成させ、その描画データを描画処理プロセッサ15に転送して描画処理を行わせる。描画処理プロセッサ15は、1/60秒毎にゲーム画像を描画生成し、生成したゲーム画像をVRAM16に書き込む。表示部17は、半透過型カラー液晶ディスプレイとバックライトLED(Light Emitting Diode)を有し、VRAM16に書き込まれたゲーム画像を表示する。
【0032】
また、CPU11は、ゲームの進行に応じて、スピーカ20から出力すべき効果音やBGM等の音声を決定し、その音声を発音するための音声データをRAM13から読み出して、音声処理プロセッサ18に入力する。すなわち、CPU11は、後述の発音イベントが発生すると、その発音イベントに応じた音声データをRAM13から読み出して音声処理プロセッサ18に入力する。RAM13に記憶されている音声データは、ゲームメディア5からロードされたものである。
【0033】
音声処理プロセッサ18は、DSP(Digital Signal Processor)で構成されており、CPU11 から入力された音声データに対して所定の効果(例えば、リバーブ、コーラスなど)を付与したのちアナログ信号に変換して、アンプ19に出力する。アンプ19は、音声処理プロセッサ18から入力された音声信号を増幅したのち、スピーカ20およびイヤホン端子21に出力する。なお、スピーカ20は、装置本体の左右の両端部にそれぞれ一個ずつ設けられ、ステレオ出力が可能になっている。なお、RAM13に記憶されている音声データは、CPU11が読み出して音声処理プロセッサ18に供給してもよく、音声処理プロセッサ18が直接RAM13にアクセスして音声データを読み出すようにしてもよい。
【0034】
操作部22は、前記ボタン群2(△○×□ボタン)、方向キー3を含み、遊技者の操作を受け付けて、その操作内容に応じた操作信号をCPU11に入力する。方向キー3は、主として操作者が操作するキャラクタである主キャラクタの移動方向を指示するための操作子である。また、「○」、「△」、「×」、「□」の4個のボタンからなるボタン群2は、主キャラクタの特定の動作(たとえば、ジャンプ、屈む、走る等)を指示するための操作子である。また、操作部22には、これら操作子以外に、電源の入/切を行うための電源スイッチ等が含まれる。
【0035】
メディアインタフェース23は、メディア装着部に装着されたゲームメディア5にアクセスするインタフェースである。ゲームメディア5は、半導体メモリのほか、光ディスクの一種であるUMD
(Universal Media Disc)(登録商標)を採用することができる。
【0036】
無線LANモジュール24は、通信規格IEEE802.11b(使用周波数帯2.4GHz、通信速度11Mbps)に準拠した無線LANによって他のゲーム装置1とデータ通信を行い、ネットワークを構成するための通信モジュールである。
【0037】
この携帯型ビデオゲーム機1では、ゲーム進行制御において、発音イベントが発生すると、その発音イベントがゲーム空間内のどの位置で発生したかによってゲーム音声の音量、およびゲーム音声に付与する効果を制御する。ここで、CPU11(ゲーム進行制御プログラム(メインプログラム)および発音イベント処理プログラム)によるゲーム音声の発生処理について説明する。
【0038】
図3は、ゲーム空間の一例を説明する図である。図4は、ゲーム空間のディスプレイ4への表示例を示す図である。
ゲーム空間とは、CPU11がゲームプログラムやゲームデータによるゲーム進行処理において仮想的に生成する空間であり、CPU11は、このゲーム空間内で、ハンターやモンスターを活動させ、ゲーム音声を発生させる。
【0039】
上述したゲーム「モンスターハンターポータブル(登録商標)」の場合、ゲーム空間は、たとえば洞窟、砂漠、ジャングル、雪山、海岸等の特徴づけがなされており、ゲームデータとしては、上記ゲーム空間の特徴づけに対応した背景をゲーム画面に表示するため描画データや、上記ゲーム空間の特徴を表現するようなゲーム音声が記憶されている。たとえばゲーム音声としては、海岸の場合には波の音、雪山の場合には吹雪の風の音等である。また、各キャラクタが発生するゲーム音声も記憶されている。モンスターの場合には足音、鳴き声等の音である。
【0040】
図3は、例えば洞窟につながる砂漠のゲーム空間を示す図である。CPU11は、3次元のゲーム空間を仮想的に設定しているが、この図は、そのゲーム空間の平面図(xz平面)である。なお、ゲーム機のディスプレイ4には、図4に示すように水平方向の視線でゲーム画面がレンダリング表示されるため、高さ方向がy軸となり、図3に示す平面図は、x−z平面となる。
【0041】
同図では、右側(東側)の通路101と左下側(南西側)の通路103が洞窟につながっており、上側の通路102は他の砂漠につながっている。通路101付近にハンター100が存在し、通路103付近にモンスター300が存在する。なお、実際にはさらに多数のモンスターが存在するが、同図においては説明を容易にするため、ハンター100と1つのモンスター300を示している。ハンター100やモンスター300等のキャラクタが動くと、足音、装備が摺れる音、鳴き声等の発音イベントが発生する。キャラクタの移動や発音イベントの発生は、CPU11が実行するゲーム進行制御プログラムによる処理である。この発音イベントが発生すると、CPU11が実行するもう一つの処理である発音イベント処理プログラムは、その発音イベントの内容を取得する。取得した発音イベントの内容に、どのキャラクタが発生したどの種類の音(例えば足音、鳴き声など)であるかが記載されている。発音イベント処理プログラムは、この種類の音のRAM13に記憶している音声データを再生(読み出し)して音声処理プロセッサ18に入力する。
【0042】
また、発音イベント処理プログラムは、発生した発音イベントの発音位置を取得する。発音位置とは、その発音イベントが発生した位置を特定するための情報であり、ゲーム空間内のx,y,z座標値で取得される。これらの情報は、メインプログラムがゲームを進行させるうえで自動的に生成しており、メインプログラムから取得すればよい。
【0043】
発音イベント処理プログラムは、発音位置を取得すると、この発音位置とハンターの位置との距離を求め、基本音量を決定する。基本音量はハンターとモンスターの位置が近いほど大きく、遠いほど小さくする。同図の例では、モンスターの位置Aの座標値とハンターBの座標値を取得し、これらの座標間の距離を求める。距離が小さくなるほど音量は大きくなり(距離0で最大値)、距離が大きくなるほど音量は小さくなる。
【0044】
また、発音イベント処理プログラムは、発音イベントが発生したとき、ゲーム空間内に遮音ラインが設定されているか否かを判断し、遮音ラインが設定されている場合には、この遮音ラインに応じた音量制御(補正)を行う。
【0045】
図5(A)は、ゲーム空間に遮音ラインが有る場合の音量制御を示す図である。なお、図3と共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。同図(A)では、洞窟105内にモンスター300が存在し、洞窟105の外側にハンター100が存在する。同図(A)の例においても、発音イベント処理プログラムは、発音イベントが発生したとき、発生した発音イベントの発音位置を取得する。発音イベント処理プログラムは、発音位置を取得すると、この発音位置とハンターの位置との距離を求め、基本音量を決定する。このとき、発音イベント処理プログラムは、このゲーム空間に遮音ラインが設定されているか否かを判断する。遮音ラインは、各ゲーム空間に1または複数ライン設定されており、ライン両端のxyz座標で特定される。なお、遮音ラインは、1次(または高次)方程式で表してもよく、また、複数のプロット座標値や高次方程式等で特定することができる折れ線や曲線であってもよい。
【0046】
同図(A)に示す例では、洞窟の入り口107を通過する遮音ラインL1が設定されている。発音イベント処理プログラムは、設定されている遮音ラインL1の座標に応じて同図(B)や同図(C)に示すテーブルに従った音量補正を行う。この音量制御テーブルおよび前記遮音ラインは、このゲーム空間を作成するためのゲームデータの一部としてゲームメディア5に記憶されており、このゲーム空間(ステージ)のゲームを実行するとき、ゲームメディア5からRAM13にロードされる。
【0047】
同図(B)に示すテーブルでは、遮音ラインL1を境界として補正音量を指定している。すなわち、遮音ラインL1から洞窟内部方向への距離(+の距離)の位置にハンターが存在する場合には、上記距離に応じた基本音量を100%で発音するが、遮音ラインL1から洞窟外部方向への距離(−の距離)の位置にハンターが存在する場合には、上記距離に応じた基本音量を50%に補正して発音する。すなわち、同図(A)におけるハンターの位置であるポイントBでは距離に応じた基本音量の50%でモンスター300の発生する音声が発音される。また、同図(C)に示すテーブルでは、遮音ラインL1から洞窟内部方向への距離(+の距離)の位置にハンターが存在する場合には、上記距離に応じた基本音量を100%で発音するが、遮音ラインL1から洞窟外部方向への距離(−の距離)の位置にハンターが存在する場合には、上記距離に応じた基本音量を0%に補正、すなわち無音とする。このように、遮音ラインL1を境界として補正量が大きく不連続に変更され、洞窟の内部と外部が全く異なる音響空間であるような音声制御(音量制御)をすることができる。
【0048】
音声制御テーブルは、同図(B)、(C)に示したものに限定されない。このテーブルでは、遮音ラインL1から+の距離の範囲は全て同じ値であり、−の距離の範囲でも全て同じ値であるが距離に応じて値を変化させるようテーブルを構成してもよい。また、同じゲーム空間であっても、発生したゲーム音声、たとえばモンスターの種類等に応じて音量制御テーブルを切り換えるようにしてもよい。
【0049】
なお、上述のゲーム「モンスターハンターポータブル(商標登録)」では、図6に示すように、それぞれ洞窟,砂漠,ジャングル,雪山,海岸等に特徴づけられた複数のゲーム空間K1〜K10が通路を介して接続され、主キャラクタであるハンターが、ゲーム空間を移動しながら敵キャラクタであるモンスターを狩猟してゆく。ゲーム空間を移動するごとに、そのゲーム空間に対応した遮音ライン等の設定変更が行われる。遮音ライン有無およびその位置および遮音ラインからの距離に応じた音量制御テーブルは、各ゲーム空間毎に設定すればよい。また、1つのテーブルを複数のゲーム空間で併用してもよい。
また、図5では、洞窟内で発生したゲーム音声を洞窟外で減衰させる制御をしているが、その逆、すなわち洞窟外で発生したゲーム音声を洞窟内で減衰させるようにしてもよい。この場合において、同じゲーム空間内で洞窟内で発生したゲーム音声の音量制御テーブルと洞窟外で発生したゲーム音声の音量制御テーブルを別々に設けてもよく、数値を逆にする等して併用してもよい。
【0050】
図5の例では、洞窟の入り口、すなわち、ゲーム音声の音量が不連続に変化する境界線を遮音ラインL1としたが、図7に示すように、音量が不連続に変化する境界線でない位置に遮音ラインL2を設定し、この遮音ラインL2から所定の距離の位置を境界線として、ゲーム音声の音量を不連続に変化させるようにしてもよい。
図7(A)は、ゲーム空間の下辺部に遮音ラインL2を設定した例を示す図である。なお、図5と共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。同図(A)の例においても、発音イベント制御プログラムは、発音イベントが発生したとき、発生した発音イベントの発音位置を取得する。発音イベント制御プログラムは、発音位置を取得すると、この発音位置とハンターの位置との距離を求め、基本音量を決定する。また、同時に発音イベント制御プログラムは、このゲーム空間に遮音ラインが設定されているかを判断する。
【0051】
同図(A)に示す例では、洞窟の入り口107から所定距離れたゲーム空間の下辺の位置に遮音ラインL2が設定されている。発音イベント処理プログラムは、設定されている遮音ラインL2からの距離に応じて同図(B)に示すテーブルに従った音量の制御(補正)を行う。同図(B)に示すテーブルでは、遮音ラインL2を基準とする発音位置までの距離に応じて音量の変更割合(%)を指定しており、洞窟の入口の位置で音量の変更割合が大きく減少するように値が設定されている。すなわち、遮音ラインL2から洞窟の入り口107に相当する位置までは、音量が減衰するような割合(同図では0%)が設定され、洞窟の入口107よりも洞窟の内側では音量が減衰しないような割合(100%)が指定されている。このように、洞窟の入口を境界として音量が不連続に変化するような制御を行うのであれば、基準線である遮音ラインの設定位置はどこであってもよい。いずれにしても、発音位置(モンスターの位置)と聴取位置(ハンターの位置)とが、音量が不連続に変化する境界線を跨いでいる場合には、音量が減衰するように制御することでそのゲーム空間の音響特性をよりリアルに表現することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、洞窟の入口を例に挙げて説明したが、遮音ラインが設定されるゲーム空間、すなわち、音量が不連続に変化する境界線を有するゲーム空間、たとえば障害物や遮音壁等を有するゲーム空間であればどのようなゲーム空間においても、上記遮音ラインによる音量制御(修正)を適用することができる。
【0053】
以上は、ゲーム空間に直線または曲線の境界線を設定し、ゲーム音声の発音位置(モンスターの位置)と聴取位置(ハンターの位置)とがその境界線を跨いでいる場合には、ゲーム音声の音量を減衰させるように制御する音量制御について説明したが、音量が不連続に変化する境界線は閉じた環状であってもよい。以下、境界線を円状に設定した実施形態について説明する。
【0054】
図8(A)は、ゲーム空間をx方向からみた平面図(yz平面)である。また、同図(B)は同じゲーム空間をy方向からみた平面図(xz平面)である。このゲーム空間は、山108を有するゲーム空間であり、主キャラクタであるハンター100が山頂の丘108Aに居るとき、この山108の斜面108Bに遮られて、直近の麓で発生した(モンスター300の)ゲーム音声が聞こえない設定にされている。このため、同図(A)に示すように山頂上方の点Bを頂点とし、ほぼ山の斜面に沿った円錐109を設定し、その円錐と地表面(xz平面)との交点の円周を境界線(遮音ライン)として、この円周の内側を遮音領域として、この遮音領域内で発生したゲーム音声は音量を減衰させるように制御する。この境界線となる円周は、山頂上方の点Bをxz平面に投影した点Cを中心とする半径rの円周である。この円周は、遮音点Cの座標および半径rからなるゲームデータとしてゲームメディア5に記憶されている。また、同図(C)に記載した音量制御テーブルもゲームデータとしてゲームメディア5に記憶されている。同図(C)の音量制御テーブルは、円周状の遮音ラインを境界として、その内側(−の距離側)は遮音領域として音量を基本音量の0%に制御し、その外側(+の距離側)は、通常の領域として音量を基本音量の100%に制御するように指定している。
【0055】
発音イベント処理プログラムは、発音イベントが発生したとき、発生した発音イベントの発音位置を取得する。発音位置を取得すると、この発音位置とハンターの位置との距離を求め、基本音量を決定する。このとき、CPU11は、y方向からみたxz平面で距離を求め、高さ方向の距離は考慮しない。すなわち、同図(B)に示した平面図において、ハンター100とモンスター300の距離を求める。
そして、CPU11は、遮音ラインが有るか否かを判断する。この例では、遮音点(ポイントC)および半径rで決定される円周状の遮音ラインが設定されている。発音イベント発生位置と遮音ラインとの距離、および、基本音量に基づいて今回の発音イベントの音量を決定する。
【0056】
この環状の遮音ラインは、山のように頂点(ピーク)を有する地形のほか、高さ方向に大きく変化する地形または構造物(高層ビル,タワー等)の頂点をxz平面に投影した点の遮音領域の表現形態として有効である。
なお、yz平面において円錐の母線の角度(ポイントBを頂点とする内角)は丘などの形状にあわせて適宜設定する。また、近似する形状は円錐に限るものではない。
【0057】
このように、高さ方向の距離も考慮して、三次元に距離を求めていたのではCPU11の処理負担が増大するが、図8に示した例であれば、テーブルを参照する簡略な処理で音量制御を行うことができる。
【0058】
次に、図9は、同携帯型ビデオゲーム機の動作を説明するフローチャートである。
同図(A)は、ゲームスタート時の動作を説明するフローチャートである。電源がオンされると、そのとき、メディア装着部にセットされているゲームメディア5からメインプログラムおよびメインデータをロードして(S1)、ゲームをスタートさせる(S2)。このときロードされるデータ中には、図5、図7、図8に示したテーブル群も含まれている。そして、遊技者の操作によってゲーム空間が選択されると(S3)、そのゲーム空間用のゲームプログラムおよびゲームデータを、ゲームメディア5からRAM13にロードする(S4)。このときロードされるゲームデータには、そのゲーム空間で発音される音声データが含まれている。
【0059】
こののち、図5、図7、図8に示したテーブル例からこのゲーム空間に対応するテーブルを選択し(S5)、このゲーム空間にハンター、モンスター等のキャラクタを配置する(S6)。そして、このゲーム空間を舞台として展開されるゲームをスタートする(S7)。そして、このゲーム空間を舞台とするゲームが終了すると(S8)、次のゲーム空間を選択するためにS3にもどる。
【0060】
同図(B)は、発音イベントに応じて実行される発音イベント処理動作を示すフローチャートである。発音イベントが発生する毎にこの処理が実行される。発音イベントとは、上述したように、ゲーム中で音声を発生させるべきゲーム進行処理を指し、たとえば、モンスターが鳴き声をあげる動作の画像が描画されたとき、鳴き声の発音イベントが発生する。
【0061】
この発音イベント処理動作は、発音イベントが発生したとき、メインプログラムによってサブルーチンとして起動される。または、この発音イベント処理動作は、一定間隔で繰り返し実行され、実行毎に発音イベントレジスタを確認する。そして、発音イベントレジスタにメインプログラムが登録した発音イベントがある場合は、その発音イベントを処理する。
【0062】
発音イベント処理では、まず発生した発音イベントの種類およびその発音位置を取得する(S10,S11)。イベントの種類とは、発音すべきモンスターの種類や、足音、鳴き声等の発生する音声の種類を示す情報である。また、発音位置とはその発音イベントが発生した位置を特定するための情報であり、ゲーム空間内のx,y,z座標値で取得される。これらの情報は、メインプログラムがゲームを進行させるうえで自動的に生成しており、メインプログラムから取得すればよい。
【0063】
発音位置を取得すると、この発音位置とハンターの位置との距離を求め、音量を決定する(S12)。音量はハンターとモンスターの位置が近いほど大きく、遠いほど小さくする。そして、この距離を引数としてテーブルを参照して音量補正量を取得する(S13)。テーブルは、同図(A)のゲームスタート処理のS5で選択されたものを用いる。
【0064】
S13で取得した音量補正量に基づいて音量値を決定し(S14)、イベント種類に対応する音声データをRAM13から読み出して音声処理プロセッサ18に入力する(S15)。
【0065】
これにより、発音イベントの発生位置に応じた音量補正値をテーブルを参照するのみの簡略な処理で行うことができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、遮音ライン、遮音点により、音量を補正する例を示したが、エフェクト(効果)の強さを変更するようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、ゲームプログラムの例としてモンスターハンターポータブル(登録商標)を示したが、本発明の音量制御方式は携帯型ゲーム機に限るものではない。いわゆる据え置き型ゲーム機においても本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明が適用される携帯型ビデオゲーム機の概略の外観図
【図2】同携帯型ビデオゲーム機の内部構成を示すブロック図
【図3】ゲーム空間の一例を説明する図
【図4】携帯型ビデオゲーム機のディスプレイに表示されるゲーム画像の例を示す図
【図5】ゲーム空間に遮音ラインが有る場合の音量制御を示す図
【図6】複数のゲーム空間が通路を介して接続されている形態を説明する図
【図7】ゲーム空間に遮音ラインが有る場合の別の例を示す図
【図8】ゲーム空間に高さ方向に大きく変化する地形が存在する場合の例を示す図
【図9】携帯型ビデオゲーム機の動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0068】
1…携帯型ビデオゲーム機
2…ボタン群
3…方向キー
4…ディスプレイ
5…ゲームメディア
11…CPU
13…RAM
18…音声処理プロセッサ
20…スピーカ
21…イヤホン端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想のゲーム空間を設定し、ゲームの進行に応じて前記ゲーム空間内の所定位置でゲーム音声が発生する発音イベントを生成するとともに、前記ゲーム空間内に前記ゲーム音声の聴取位置を設定するゲーム進行制御部と、
発音イベントに対応するゲーム音声の音声データを記憶した音声データ記憶部と、
発音イベントが発生したとき、前記音声データを読み出して、その発音イベントの発生位置である発音位置および前記聴取位置に応じた音量で前記ゲーム音声を生成する音声信号生成部と、
を備えたゲーム装置であって、
前記ゲーム進行制御部は、前記ゲーム空間に音量境界線を設定し、前記音声信号生成部は、前記発音位置と前記聴取位置と前記音量境界線との位置関係に応じて、前記ゲーム音声の音量を制御することを特徴とするゲーム装置。
【請求項2】
前記音声信号生成部は、前記発音位置と聴取位置との距離に応じて基本音量を決定し、さらに、前記発音位置と前記聴取位置と前記音量境界線との位置関係に応じてこの基本音量を補正する請求項1に記載のゲーム装置。
【請求項3】
前記音声信号生成部は、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟む位置にあるとき、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟まない位置にあるときよりも、前記ゲーム音声の音量を小さく制御する請求項1または請求項2に記載のゲーム装置。
【請求項4】
前記音声信号生成部は、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟む位置にあるとき、前記ゲーム音声を遮音して出力しないよう制御する請求項3に記載のゲーム装置。
【請求項5】
前記音量境界線は、前記ゲーム空間の地形に基づいて設定される請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のゲーム装置。
【請求項6】
前記ゲーム進行制御部は、ゲーム空間内に表示され、利用者の操作によって活動する主キャラクタの位置を聴取位置として設定する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のゲーム装置。
【請求項7】
制御部を備えたゲーム装置に、
仮想のゲーム空間を設定するゲーム空間設定手順、
前記ゲーム空間の所定位置に音量境界線を設定する音量境界線設定手順、
前記ゲーム空間の所定位置にゲーム音声の聴取位置を設定する聴取位置設定手順、
ゲームの進行に応じて、前記ゲーム空間内の所定位置で音声信号を生成する音声信号生成手順、
前記音声信号の発音位置、前記聴取位置および前記音量境界線の位置関係に応じて音量を決定する音量決定手順、
を実行させるためのゲームプログラム。
【請求項8】
前記音量決定手順は、前記発音位置と聴取位置との距離に応じて基本音量を決定し、さらに、前記発音位置と前記聴取位置と前記音量境界線との位置関係に応じてこの基本音量を補正する手順である請求項7に記載のゲームプログラム。
【請求項9】
前記音量決定手順は、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟む位置にあるとき、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟まない位置にあるときよりも、前記ゲーム音声の音量を小さく制御する手順である請求項7または請求項8に記載のゲームプログラム。
【請求項10】
前記音量決定手順は、前記発音位置と前記聴取位置とが前記音量境界線を挟む位置にあるとき、前記ゲーム音声を遮音して出力しないよう制御する手順である請求項9に記載のゲームプログラム。
【請求項11】
前記音量境界線設定手順は、前記ゲーム空間の地形に基づいて前記音量境界線を設定する手順である請求項7乃至請求項10のいずれかに記載のゲームプログラム。
【請求項12】
前記聴取位置決定手順は、ゲーム空間内に表示され、利用者の操作によって活動する主キャラクタの位置を聴取位置として設定する手順である請求項7乃至請求項11のいずれかに記載のゲームプログラム。
【請求項13】
請求項8乃至請求項12のいずれかに記載のゲームプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−188308(P2008−188308A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27349(P2007−27349)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000129149)株式会社カプコン (192)
【Fターム(参考)】