説明

コアレスコイルの製造装置及び製造方法

【課題】特性に優れるレーストラック形状のコアレスコイルを得ること。
【解決手段】レーストラック形状の巻治具1に線材2を巻線して得られるコアレスコイルの製造装置100において、軸中心に回転するスピンドル軸4と、巻治具1をスピンドル軸4の軸直角方向の断面がレーストラック形状となるようにスピンドル軸4の端部に支持する巻治具支持機構22、27と、巻治具1における直線部81に巻線された線材2の膨らみ部83を加熱しながら直線部81に対して押圧する線材修正機構7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアレスコイルの製造装置及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアレスコイルとして音響機器等に用いられるボイスコイルが知られている。ボイスコイルの形状としては円形状が一般的であり、その理由としては以下の通りである。まず、ボイスコイルが円形状の場合、巻線が容易であること。また、ボイスコイル内周に配置される永久磁石の形状は円形状であるため、ボイスコイルが円形状の場合、永久磁石をボイスコイル内周に配置し易いこと。さらに、ボイスコイルが円形状の場合、ボイスコイルが振動する際、ボイスコイルに均一に力が発生するため、ボイスコイルに取り付けられた振動体の振動が安定し、スピーカー音が安定すること。
【0003】
ボイスコイルを携帯電話機に用いる場合、近年の携帯電話機の小型化、薄型化に伴い、ボイスコイルにも小型化、薄型化が要求される。その一方で、携帯電話機にはスピーカー音の出力増大という要求があり、ボイスコイルの外径を大きくする必要がある。このため、携帯電話機の小型化に伴い、携帯電話機の実装面に占めるボイスコイルの面積が大きくなり、ボイスコイルは携帯電話機の小型化の阻害要因となっていた。
【0004】
特許文献1には、円形状に代わりレーストラック形状のボイスコイルを用いた携帯電話機が開示されている。ボイスコイルの形状がレーストラック形状の場合、ボイスコイルの長手方向の寸法を大きくすることによってボイスコイルの断面積を大きくすることができると共に、携帯電話機内部に対してデットスペースの少ない有効な配置とすることができる。このように、ボイスコイルの形状をレーストラック形状とすることによって、ボイスコイルの断面積を大きくすることができるためコイルターン数を減らすことができ、かつボイスコイルを携帯電話機内部に無駄なく配置することができる。したがって、携帯電話機の小型化が可能となる。
【0005】
また、コイルターン数を減らすことによってボイスコイルを小型化しても、ボイスコイルの断面積は円形状の場合と比較して大きいため、コイルターン数の減少を補いスピーカー音の出力増大を実現することができる。
【特許文献1】特開2000−201396
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーストラック形状のボイスコイルは、レーストラック形状の巻治具に巻線することによって製造される。この場合、巻治具の曲線部に巻線される線材のテンションは大きいのに対して、巻治具の直線部に巻線される線材のテンションは小さい。このため、巻治具の直線部における線材に膨らみが生じる場合がある。
【0007】
線材に膨らみがある場合、ボイスコイル内周とボイスコイル内周に配置される永久磁石外周との隙間が大きくなるため、コイル通電時にボイスコイルと永久磁石との間にて作用する力が弱くなり、ボイスコイルの特性が悪くなる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、特性に優れるレーストラック形状のコアレスコイルを得ることができる製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レーストラック形状の巻治具に線材を巻線して得られるコアレスコイルの製造装置において、軸中心に回転するスピンドル軸と、前記巻治具を前記スピンドル軸の軸直角方向の断面がレーストラック形状となるように前記スピンドル軸に支持する巻治具支持手段と、前記巻治具における直線部に巻線された線材の膨らみ部を加熱しながら前記直線部に対して押圧する加熱押圧手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーストラック形状の巻治具に線材を巻線する過程において、巻治具の直線部に巻線された線材に膨らみが生じた場合でも、その膨らみを加熱押圧手段によって直線に修正することができる。これにより、コアレスコイル内周とコアレスコイル内周に配置される永久磁石外周との隙間を所望の間隔とすることができるため、特性に優れるコアレスコイルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1、図2を参照して本発明の実施の形態に係るコアレスコイルの製造装置100について説明する。図1はコアレスコイルの製造装置100を示す斜視図であり、図2はコアレスコイルの製造装置100を示す断面図である。
【0013】
製造装置100は、携帯電話機等の小型通信機器に搭載されるボイスコイル等のコアレスコイルを製造するものであり、レーストラック形状のコアレスコイルを製造するものである。
【0014】
製造装置100は、巻治具1の外周に線材2を巻線することによってコアレスコイルを製造するものであり、線材2を巻治具1に供給する線材供給機構3と、巻治具1を伴って軸中心に回転するスピンドル軸4と、スピンドル軸4を軸中心に回転させる軸回転機構5と、スピンドル軸4を軸方向に移動させる軸移動機構6と、巻治具1に巻線された線材2の膨らみを修正する加熱押圧手段としての線材修正機構7とを備える。
【0015】
巻治具1は、断面がレーストラック形状、つまり二つの直線部を介して二つの半円をつなげた形状である。巻治具1は、巻治具支持手段としての巻治具支持機構8によって、巻治具1におけるスピンドル軸4の軸直角方向の断面がレーストラック形状となるようにスピンドル軸4の端部に支持される。
【0016】
線材2は、外周に融着層が被覆された自己融着線材であり、巻治具1の外周に巻線された線材2を加熱処理し融着層を溶融させ、線材相互間を融着固化させることによって、自己支持型のコアレスコイルが得られる。
【0017】
線材供給機構3は、基台11に立設する第一ヘッド12上に配置される。線材供給機構3は、線材2を繰り出すノズル15と、ノズル15をスピンドル軸4の軸方向に沿って移動させるためのノズル移動モータ16と、ノズル移動モータ16の出力軸に連結されたボールねじ17と、ボールねじ17に螺合する移動板18と、移動板18に取り付けられノズル15を支持するガイド19と、移動板18を挿通し支持する支持棒20とを備える。この構成により、ノズル15は、スピンドル軸4の軸方向に沿って移動することができ、巻治具1への線材2の巻線時に線材2に送りをかけることができる。
【0018】
スピンドル軸4は、基台11に立設する第二ヘッド13を貫通しスプライン結合した円筒形状の収容軸30内を軸受31を介して挿通している。スピンドル軸4は、収容軸30に対して相対回転は可能であるが、軸方向の相対移動は不能となるように軸受31によって支持されている。
【0019】
スピンドル軸4の端部には、巻治具1が貫通すると共に巻治具1を摺動可能に支持する第一板状部22が連結されている。スピンドル軸4は円筒形状であり、スピンドル軸4の中空部には、棒状部材である巻治具支持軸23が挿通し、巻治具支持軸23の端部には巻治具1が結合している。
【0020】
巻治具支持軸23は、スピンドル軸4内周に結合された軸受24a、24bによって、スピンドル軸4に対して軸方向の相対回転及び軸方向への相対移動が可能となるように支持されている。
【0021】
巻治具1と軸受24aとの間には弾性部材としてのスプリング27が介装され、このスプリング27によって巻治具1はスピンドル軸4に連結されている。これにより、スピンドル軸4の移動に伴って巻治具1も移動する。このようにして巻治具1はスピンドル軸4の端部に配置され、第一板状部22とスプリング27にて巻治具支持機構8が構成される。
【0022】
第一ヘッド12には、スピンドル軸4と同軸上に第二スピンドル軸40が回転可能に挿通支持されている。第二スピンドル軸40の端部には第二板状部41が連結され、第一板状部22と第二板状部41とは平行に対峙して配置される。スピンドル軸4と第二スピンドル軸40は、軸回転機構5によって同期して回転する。
【0023】
軸回転機構5は、基台11上に配置されたスピンドルモータ50と、スピンドル50の出力軸に連結され第一ヘッド12及び第二ヘッド13を挿通する長軸51と、長軸51の先端側に連結されスピンドル軸4にスピンドルモータ50の回転を伝達するための第一伝達機構52と、長軸51の基端側に連結され第二スピンドル軸40にスピンドルモータ50の回転を伝達するための第二伝達機構53とを備える。
【0024】
第一伝達機構52は、長軸51に連結された第一プーリー55と、スピンドル軸4にスプライン結合した第二プーリー56と、第一プーリー55と第二プーリー56とを連結するベルト57とを備える。この構成により、スピンドルモータ50の回転が第一伝達機構52を介してスピンドル軸4に伝達される。なお、スピンドル軸4と第二プーリー56とはスプライン結合しているため、スピンドル軸4は第二プーリー56に対して軸方向に相対移動することができる。
【0025】
第二伝達機構53は、長軸51に連結された第一プーリー58と、第二スピンドル軸40に連結された第二プーリー59と、第一プーリー58と第二プーリー59とを連結するベルト60とを備える。この構成により、スピンドルモータ50の回転が第二伝達機構53を介して第二スピンドル軸40に伝達される。
【0026】
第一伝達機構52と第二伝達機構53とによって、スピンドル軸4と第二スピンドル軸40とは同期して回転する。
【0027】
軸移動機構6は、基台11に立設する第三ヘッド14に取り付けられた前後移動モータ61と、前後移動モータ61の出力軸に連結されスピンドル軸4と平行に延在するボールねじ62と、収容軸30が貫通結合し、かつボールねじ62が螺合する移動板63とを備える。この構成により、前後移動モータ61が駆動すると、ボールねじ62に螺合する移動板63がスピンドル軸4の軸方向に移動し、それに伴い移動板63に結合した収容軸30もスピンドル軸4の軸方向に移動する。そして、収容軸30とスピンドル軸4とは、軸方向は軸受31を介して一体であるため、スピンドル軸4は収容軸30と共に軸方向に移動する。
【0028】
軸移動機構6によって、スピンドル軸4を対向する第二スピンドル軸に向かって移動させ、巻治具1の端面を第二板状部41に当接させることによって、第一板状部22と第二板状部41とは巻治具1の鍔部となり、巻治具1に巻線される線材2の巻幅規制板として機能することになる。
【0029】
製造装置100は、巻治具1に巻線された線材を取り外すための線材取外機構9も備える。線材取外機構9は、第三ヘッド14に取り付けられたエアシリンダ65と、エアシリンダ65に供給される圧縮空気によって往復運動するピストン66と、ピストン66先端に取り付けられた爪部26とを備える。
【0030】
巻治具支持軸23における巻治具1とは逆端付近には、巻治具1に巻線された線材を取り外す際に爪部26と係合する係合部25が設けられている。通常の状態では、爪部26と係合部25は、所定の間隔をもって配置されている。
【0031】
巻治具1への巻線が終了した後には、エアシリンダ65を駆動させピストン66を後退させることによって、ピストン66先端の爪部26を巻治具支持軸23の係合部25に係合させ、巻治具支持軸23をスピンドル軸4に対して相対的に後退させる。これにより、巻治具支持軸23先端の巻治具1はスプリング27を圧縮しながらスピンドル軸4の内部に収容されると共に、巻治具1に巻線された線材2は第一板状部22によって移動が規制される。このように、巻治具1を巻治具外周の線材2に対して相対移動させることによって、線材2が巻芯である巻治具1から外れる。
【0032】
線材取外機構9、巻治具支持軸23、及び係合部25にて巻治具移動機構が構成される。
【0033】
線材修正機構7は、平面状に形成された押圧部71を介して巻治具1に巻線された線材2を加熱する加熱器としてのセラミックヒータ72と、セラミックヒータ72を移動させ線材2の膨らみ部を巻治具1の直線部に対して押圧する加熱器移動機構73とを備える。
【0034】
加熱器移動機構73は、加熱器移動機構73を支持する筐体74と、加熱器移動モータ75と、加熱器移動モータ75の回転が伝達されスピンドル軸4と垂直な方向に延在するボールねじ76と、ボールねじ76に螺合する移動体77と、移動体77に連結しセラミックヒータ72の押圧部71が巻治具1の直線部に対峙するようにセラミックヒータ72を支持する加熱器ホルダ78とを備える。この構成により、セラミックヒータ72はスピンドル軸4と垂直な方向に移動することができ、セラミックヒータ72の押圧部71が巻治具1における直線部に巻線された線材2を加熱しながら押圧することができる。
【0035】
次に、製造装置100の動作について説明する。なお、製造装置の動作は、巻線装置100に搭載された図示しないコントローラにて制御される。
【0036】
まず、軸移動機構6を駆動し、巻治具1と共にスピンドル軸4を第二スピンドル軸40に向かって前進させ、巻治具1の端面を第二スピンドル軸40端部の第二板状部41に当接させる。
【0037】
巻治具1に巻線することによって得られるコアレスコイルの巻幅を調整するには、巻治具1が第二板状部41に当接した状態にて、軸移動機構6を駆動しスピンドル軸4をさらに前進させる。これにより、スピンドル軸4先端の第一板状部22は巻治具1に対して相対移動し、巻治具1はスプリング27を圧縮しながらスピンドル軸4内部に入り込み、第一板状部22と第二板状部41との距離が短くなる。このように、第一板状部22と第二板状部41との距離を調整することによって、コアレスコイルの巻幅寸法を調整することができる。
【0038】
次に、ノズル15先端から繰り出されている線材2を図示しないクランプによって保持すると共に、線材供給機構3のノズル移動モータ16を駆動してノズル15をスピンドル軸4の軸方向に移動させ、線材2を巻治具1の端部に配置する。
【0039】
軸回転機構5を駆動し、第一伝達機構52及び第二伝達機構53を介してスピンドル軸4と第二スピンドル軸40とを同期して回転させる。これにより、線材2は、ノズル15から繰り出され、巻治具1の外周に巻き付けられる。
【0040】
スピンドル軸4及び第二スピンドル軸40の回転に同期してノズル移動モータ16を駆動し、ノズル16をスピンドル軸4に沿って数回往復運動させ、線材2を巻治具1に巻線する。
【0041】
図3は、巻治具1に線材2が巻線された状態のスピンドル軸4の軸直角方向の断面を示す図である。線材2を巻治具1に巻線する際、図3に示すように、レーストラック形状の巻治具1の曲線部80では、線材2が曲線部に強く押し付けられるため、線材2のテンションは強くなる。これに対して、巻治具1の直線部81では、線材2は直線部に強く押し付けられないため、線材2のテンションは弱くなる。このように、巻治具1の直線部81では線材2の巻治具1に押し付けられる力は弱く、外側に膨らみ易くなる。
【0042】
巻治具1への線材2の巻線終了後、巻治具1の直線部81における線材2の膨らみ部83を線材修正機構7によって修正する。具体的には、まず、軸回転機構5を駆動し、巻治具1を直線部81がセラミックヒータ72の押圧部71と平行になるように配置する。
【0043】
次に、加熱器移動機構73を駆動し、セラミックヒータ72を移動させ、セラミックヒータ72の押圧部71を巻治具1の直線部81における線材2の膨らみ部83に押し付ける。これにより、膨らみ部83は、セラミックヒータ72によって加熱されながら押圧され、図4に示すように、直線へと成形される。
【0044】
また、セラミックヒータ72は、線材2の融着層を溶融できる温度に温度制御されているため、押圧部71が線材2に押し付けられることによって、線材2は融着層を介して融着固化する。
【0045】
所定時間、セラミックヒータ72によって線材2を押圧した後、加熱器移動機構73を駆動し、セラミックヒータ72を移動させ線材2の押圧を解除する。その後、軸回転機構5を駆動し、巻治具1を180°回転させ、巻治具1のもう一方の直線部81をセラミックヒータ72の押圧部71に対峙させる。そして、上記した方法と同様に、セラミックヒータ72にて巻治具1のもう一方の直線部81における線材2の膨らみ部83を押圧する。このようにして、線材2は、レーストラック形状の巻治具1に沿った形状に成形される。
【0046】
線材2の膨らみ部83を直線に成形した後、セラミックヒータ72を初期の位置に戻し、ノズル15と巻治具1の間の線材2をクランプ(図示せず)により保持し、カッター(図示せず)により切断する。
【0047】
次に、巻治具1に巻線された線材2を巻治具1から取り外す動作について説明する。
【0048】
まず、軸移動機構6を駆動しスピンドル軸4を後退させる。その後、線材取外機構9を駆動しピストン66を後退させることによって、ピストン66先端の爪部26と巻治具支持軸23の係合部25を係合させ、巻治具支持軸23を後退させる。
【0049】
これにより、巻治具支持軸23先端の巻治具1は、スプリング27を圧縮しながらスピンドル軸4の内部に収容されると共に、巻治具1外周の線材2の移動は第一板状部22によって規制される。この結果、巻治具1外周に巻線された線材2は巻治具1から外れ、シュート85に落下し収容ボックス86内に収められる。
【0050】
その後、ピストン66を前進させ爪部26と係合部25との係合を解除することによって、圧縮されていたスプリング27の圧縮が開放される。これにより、巻治具1はスプリング27によって付勢され元の位置に戻る。
【0051】
以上のように、製造装置100によって、レーストラック形状のコアレスコイルを製造することができる。
【0052】
以上の実施の形態によれば、レーストラック形状の巻治具1に線材2を巻線する過程において、巻治具1の直線部81に巻線された線材2に膨らみが生じた場合でも、その膨らみをセラミックヒータ72によって直線に成形することができる。これにより、巻治具1の形状に沿ったレーストラック形状のコアレスコイルを製造することができ、コアレスコイル内周とコアレスコイル内周に配置される永久磁石外周との隙間を所望の間隔とすることができるため、特性に優れるコアレスコイルを得ることができる。
【0053】
以下に、図5を参照して、本実施の形態の他の態様について説明する。
【0054】
上記した製造装置100の構成の他に、図5に示すように、巻治具1に巻線された線材2全体に、ノズル91を通して熱風を吹き付ける熱風吹付装置90を設けるようにしてもよい。これにより、巻治具1に巻線された線材2全体の融着層を溶融することができるため、線材相互間をより強固に融着固化させることができる。
【0055】
また、巻治具1内部にヒータを内蔵させてもよい。これにより、線材2の内周側からも線材2を加熱することができ、線材2の融着層を内周側からも溶融することができるため、線材相互間をより強固に融着固化させることができる。また、巻治具1の温度が一定に保たれるため、巻治具1の外径の熱変化が抑えられ、成形されるコアレスコイルの寸法が一定に保たれる。
【0056】
また、線材取外機構9を駆動し、巻治具1をスピンドル軸4の内部に収容しても、線材2と巻治具1とが熱によって接着し、巻治具1に巻線された線材2が巻治具1から外れ難いことがある。このような場合の対策として、製造装置100に図5に示すような線材排出機構95を設けるようにしてもよい。
【0057】
線材排出機構95の排出バー96は、モータとボールねじとによって直角三軸方向に移動することができ、巻治具1に接着したコアレスコイルを落下させることができる。
【0058】
また、上記実施の形態では、スプリング27は通常の状態では負荷がかかっていない状態であり、巻治具1から線材を取り外す際に爪部26と係合部25とを係合させスプリング27を圧縮するようにした。しかし、スプリング27を巻治具1と軸受24aとの間に常に圧縮して配置するようにしてもよい。
【0059】
この場合には、巻治具1は第一板状部22から突出する方向に付勢されるため、爪部26と係合部25とを図5に示すように常に係合させ、巻治具1の移動を規制するようにすればよい。このように構成することによって、シリンダ65を駆動させ爪部26を移動させることにより、巻治具1をスピンドル軸4とは独立して動作させることができる。
【0060】
上記のように爪部26と係合部25とを常に係合させる構成とした場合、軸移動機構6によってスピンドル軸4を前進させるには、それに伴って巻治具1も前進するように構成する必要がある。その方法としては、例えば、スピンドル軸4の前進量と同じ距離だけピストン66が同期して前進するようにシリンダ65を設定すればよい。
【0061】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ボイスコイルの製造装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係るコアレスコイルの製造装置100を示す斜視図である。
【図2】同じくコアレスコイルの製造装置100を示す断面図である。
【図3】巻治具に線材が巻線された状態を示す断面図である。
【図4】線材の膨らみ部を押圧する状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るコアレスコイルの製造装置100の他の態様を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
100 コアレスコイルの製造装置
1 巻治具
2 線材
3 線材供給機構
4 スピンドル軸
5 軸回転機構
6 軸移動機構
7 線材修正機構
8 巻治具支持機構
9 線材取外機構
15 ノズル
22 第一板状部
25 係合部
26 爪部
27 スプリング
30 収容軸
40 第二スピンドル軸
41 第二板状部
71 押圧部
72 セラミックヒータ
80 曲線部
81 直線部
83 膨らみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーストラック形状の巻治具に線材を巻線して得られるコアレスコイルの製造装置において、
軸中心に回転するスピンドル軸と、
前記巻治具を前記スピンドル軸の軸直角方向の断面がレーストラック形状となるように前記スピンドル軸に支持する巻治具支持手段と、
前記巻治具における直線部に巻線された線材の膨らみ部を加熱しながら前記直線部に対して押圧する加熱押圧手段と、
を備えることを特徴とするコアレスコイルの製造装置。
【請求項2】
前記線材は外周に融着層が被覆された自己融着線材であり、
前記加熱押圧手段は、前記巻治具に巻線された線材相互を前記融着層を介して融着固化させることを特徴とする請求項1に記載のコアレスコイルの製造装置。
【請求項3】
前記加熱押圧手段は、
平面状に形成された押圧部を介して前記線材を加熱する加熱器と、
前記加熱器を移動させ前記線材の膨らみ部を押圧する加熱器移動機構と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコアレスコイルの製造装置。
【請求項4】
前記巻治具支持手段は、
前記スピンドル軸端部に連結され、前記巻治具が貫通すると共に当該巻治具を摺動可能に支持する板状部と、
前記巻治具と前記スピンドル軸内周との間に介装された弾性部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコアレスコイルの製造装置。
【請求項5】
前記スピンドル軸を軸方向に移動させる軸移動機構と、
前記スピンドル軸と同軸上に配置されると共に同期して回転する第二のスピンドル軸と、
前記第二のスピンドル軸の端部に連結され、前記板状部と対峙する第二の板状部と、を備え、
前記巻治具の端面が前記第二の板状部に当接した状態において、前記軸移動機構にて前記板状部を前記巻治具に対して相対移動させ、前記板状部と前記第二の板状部との距離を調整することによってコアレスコイルの巻幅寸法を調整することを特徴とする請求項4に記載のコアレスコイルの製造装置。
【請求項6】
前記巻治具を前記弾性部材が圧縮する方向に動作させる巻治具移動機構を備え、
前記巻治具に線材が巻線された状態において、前記巻治具移動機構にて前記巻治具を前記スピンドル軸内部に収容すると共に、前記板状部にて前記線材の移動を規制することによって、前記巻治具外周から前記線材が取り外されてなることを特徴とする請求項4に記載のコアレスコイルの製造装置。
【請求項7】
前記巻治具に巻線された線材全体に熱風を吹き付ける熱風吹付装置を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコアレスコイルの製造装置。
【請求項8】
前記巻治具の内部にヒータを内蔵することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコアレスコイルの製造装置。
【請求項9】
レーストラック形状の巻治具に線材を巻線して得られるコアレスコイルの製造方法において、
前記巻治具に線材を巻線した後、前記巻治具における直線部に巻線された線材の膨らみ部を加熱しながら前記直線部に対して押圧することを特徴とするコアレスコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−180360(P2007−180360A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378640(P2005−378640)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】