説明

コア孔充填装置およびコア孔充填方法

【課題】流動性が高い充填材を用いる場合においても、作業者の熟練度によることなく隙間を生じさせずにコア孔を充填することができ、建物の耐久性の確保および作業時間の短縮を図ることが可能なコア孔充填装置およびコア孔充填方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるコア孔充填装置200の構成は、コアを採取することにより建物の壁面100に生じたコア孔110を充填するコア孔充填装置であって、コア孔を充填するための充填材300をコア孔に導出する充填管220と、充填管の略先端に配置された略円板状の部材であって、コア孔よりも大きい直径を有し、略中心に充填管が挿通される挿通孔を有し、少なくとも外周部が柔軟性を有する多孔質材料からなる隔壁部材211と、充填材を充填管を通じてコア孔の隔壁部材より奥側に圧入する充填材圧入装置290と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアを採取することにより建物の壁面に生じたコア孔を充填するコア孔充填装置およびコア孔充填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製建造物(以下、建物と称する。)の耐久性を診断するための方法の1つとして、コア抜き調査(コアボーリング)がある。コア抜き調査では、ボーリングマシンを用いて建物の壁からコンクリートコア(以下、コアと称する。)を採取する。そして、採取したコアの圧縮強度等を測定することにより建物の耐久性を診断する。
【0003】
上述したようにコアは建物の壁や柱等から採取されるため、コア採取後の建物の壁面には孔(以下、コア孔と称する。)が生じる。かかるコア孔を放置しておくと、そこから雨水や空気等が浸入し劣化促進の一因となるおそれがある。また建物の美観が損なわれるという観点からもコア孔を放置することは好ましくない。このため、通常、コア抜きを行った後にはコア孔の充填が行われる。
【0004】
コア孔を充填するための充填材としては、セメント、砂等と水を混合したモルタルやグラウトが多く用いられている。また従来のコア孔充填方法としては、朝顔充填方法、団子詰め方法、圧入方法が主流である。図8は、従来のコア孔充填方法を説明する図である。図8(a)は朝顔充填方法を説明する図、図8(b)は団子詰め方法を説明する図、図8(c)は圧入方法を説明する図である。
【0005】
図8(a)に示す朝顔充填方法では、まず図8(a−1)に示すように、壁10に生じたコア孔10aの入口に衝立12(朝顔と称されることもある)を設置する。次に図8(a−2)に示すように、衝立12の上方から充填材20をコア孔に流し込む。そして、充填材20がコア孔の上端を越えて衝立12上に溢れたら、充填を終了する。そして、図8(a−3)に示すように衝立12を設置した状態で所定時間養生する。その後、図8(a−4)に示すように、衝立12を外し、壁から突出した充填材20aを切削する。
【0006】
図8(b)に示す団子詰め方法では、まず図8(b−1)に示すように、壁10に生じたコア孔10aに、団子状にした充填材20を押し込み、これを、押圧棒14等を用いて押圧し、コア孔に密着させる。そして、図8(b−2)に示すように、更に団子状の充填材20を押し込み、押圧する。これを繰り返すと図8(b−3)に示す状態となる。その後、図8(b−4)に示すように、壁からはみ出た充填材20をコテ16等で除去して仕上げを行う。
【0007】
図8(c)に示す圧入方法では、まず図8(c−1)に示すように、注入口18aおよび排出口18bを有する冶具18を壁に装着する。次に、図8(c−2)に示すように注入口を介してコア孔10aに充填材20を充填する。そして、充填材20が排出口から排出され始めたら充填を終了し、冶具を設置した状態で所定時間養生する。その後、壁から冶具を取り外す。
【0008】
また上記説明した方法以外に特許文献1にも、構造物に形成されている深孔内に材料を充填する充填装置および充填方法が開示されている。特許文献1に記載の技術は上述した団子詰め方法を改良したものであり、これによれば、深孔の先端側から材料を充填しつつ内部の空気を外部に逃がすことが実現され、信頼性が高く且つ高品質な深孔内への材料の充填が可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−307036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、図8に示す従来の充填方法では、気泡等により充填材に隙間が生じる可能性があった。このように隙間が生じることは、建物の構造上および耐久性の観点から好ましくない。
【0011】
したがって、従来の充填方法を用いたコア孔の充填では、充填後のコア孔に隙間が生じないよう細心の注意を払って作業を行う必要があり、作業時間の長時間化を招いていた。また作業結果の良し悪しは作業者の熟練度によるところが大きいという問題点もあった。
【0012】
また特許文献1に記載の充填装置および充填方法は、充填材が固体状(流動性が低い物質)の場合には好適に用いることができるが、充填材が液体状(流動性が高い物質)の場合に適用することが困難であった。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑み、流動性が高い充填材を用いる場合においても、作業者の熟練度によることなく隙間を生じさせずにコア孔を充填することができ、建物の耐久性の確保および作業時間の短縮を図ることが可能なコア孔充填装置およびコア孔充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかるコア孔充填装置の代表的な構成は、コアを採取することにより建物の壁面に生じたコア孔を充填するコア孔充填装置であって、コア孔を充填するための充填材をコア孔に導出する充填管と、充填管の略先端に配置された略円板状の部材であって、コア孔よりも大きい直径を有し、略中心に充填管が挿通される挿通孔を有し、少なくとも外周部が柔軟性を有する多孔質材料からなる隔壁部材と、充填材を充填管を通じてコア孔の隔壁部材より奥側に圧入する充填材圧入装置と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、隔壁部材の外周部が柔軟性を有するため、かかる隔壁部材をコア孔に挿入すると、その外周部が変形してコア孔の側面と密着する。これにより、コア孔の隔壁部材より奥側の空間は隔壁部材で密閉される。充填材圧入装置により充填管を通じてコア孔に充填材を圧入すると、空間内の空気は、多孔質材料からなる外周部の細孔を通じて密閉された空間の外へ追い出される。そして、空間内が充填材によって充満すると、充填材は多孔質材料を通過することができず、充填材を圧入するに従って隔壁部材がコア孔の開口部に向かって押し出される。すなわち、充填材圧入装置により充填材を圧入するだけで、隔壁部材が開口部に向かって押し出され、コア孔奥側に空気による隙間が生じることなく開口部まで充填材を充填することができる。したがって、作業者の熟練度によることなく隙間を生じさせずにコア孔を充填することができ、建物の耐久性の確保および作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0016】
また外周部を柔軟性を有する多孔質材料としたことで、当該コア孔充填装置がコア孔内を円滑に移動することが可能となる。詳細には、コア孔の側面は、必ずしも平坦であるとは限らず、むしろコアボーリングによって削られることで凹凸が生じていることが多い。このため、仮に隔壁部材の外周部が柔軟性を有さない材料で構成されると、外周部がコア孔の側面の凸部で引っかかり、当該コア孔充填装置がコア孔の入口側に移動できなくなり、コア孔が完全に充填されなくなってしまう。そこで、上記構成のように外周部を柔軟性を有する多孔質材料とすることで、コア孔が側面に凹凸を有する形状であったとしても、外周部はその形状に追従して変形することができる。これにより、当該コア孔充填装置は、充填材に押し出されながら移動してコア孔の入口付近まで到達するため、コア孔内を完全に充填することが可能となる。
【0017】
上記の隔壁部材は、外周部を含む多孔質材料からなる円板形状の多孔質部と、多孔質部よりも小さい直径を有し、且つ略中心に充填管が挿通される挿通孔を有する略円板状の第1押さえ板とを含み、第1押さえ板は、多孔質部のコア孔奥側の面に当接して多孔質部を固定するとよい。
【0018】
多孔質材料は柔軟性を有するため、隔壁部材を多孔質材料のみで構成すると、隔壁部材が充填材圧入装置から圧入される充填材の圧力に負けて変形してしまう可能性がある。そして、変形により隔壁部材とコア孔の側面との間に隙間が生じると、その隙間から充填材が漏出し、コア孔の充填に支障を来たしてしまう。
【0019】
そこで、上記構成のように、特に、隔壁部材が外周部を含んで全体が多孔質材料からなる場合、すなわち隔壁部材が多孔質部を有する場合、多孔質部のコア孔奥側の面に第1押さえ板を設ける。これにより、外周部だけに多孔質材料を残し、多孔質部が第1押さえ板により支えられるため、多孔質部(隔壁部材)の変形を防止することができ、コア孔充填を好適に行うことが可能となる。また第1押さえ板の直径を多孔質部よりも小さくすることで、コア孔の側面は、第1押さえ板ではなく多孔質部の多孔質材料と接触することとなる。このため、充填装置のコア孔内での円滑な移動が妨げられることがない。
【0020】
上記の隔壁部材は、充填管の先端に、第1押さえ板と略同一形状の第2押さえ板を更に含み、多孔質部を第1および第2押さえ板で挟み込むことによって充填管に固定するとよい。これにより、隔壁部材(多孔質部)を充填管に更に確実に固定することが可能となる。さらに、隔壁部材(多孔質部)に適度な緊張と剛性を与えることができ、コア孔の側面との隙間の発生や充填材の漏出をより確実に防止することが可能となる。
【0021】
上記の充填管は、硬質材料からなるパイプであるとよい。かかる構成によれば、充填管の変形が生じにくくなるため、かかる充填管の水平を容易に保つことができる。これにより、充填管に固定された隔壁部材および押さえ板(第1押さえ板および第2押さえ板)の姿勢も保たれるため、これらの部材の傾きが生じない。したがって、隔壁部材によるコア孔内の密閉状態を好適に維持することができ、コア孔を確実に充填することが可能となる。
【0022】
当該コア孔充填装置は、充填管のコア孔に導入される側と反対側の端部を封止するキャップを更に備えるとよい。
【0023】
かかる構成により、コア孔へ充填された充填材の養生時における、充填管の、コア孔に導入される側と反対側の端部、すなわち充填材圧入装置が接続される側の端部からの充填材の流出を防止することが可能となる。したがって、コア孔充填の確実性を向上させることが可能となる。
【0024】
上記の充填管は、コア孔に導入される側と反対側の端部に螺子部を有し、キャップは、内面に螺子部と螺合する螺孔部を有するとよい。かかる構成により、充填管の螺子部とキャップの螺孔部を螺合させ、キャップにより充填管の端部を容易且つ確実に封止することができる。
【0025】
当該コア孔充填装置は、充填管の姿勢を保持する保持冶具を更に備えるとよい。これにより、充填管の水平な姿勢をより確実に保持することが可能となる。
【0026】
上記の保持治具は、充填管を挿通可能に保持する第1保持部と、第1保持部と異なる位置で充填管を挿通可能に保持する第2保持部と、当該保持治具を壁面に固定する固定部と、を有するとよい。
【0027】
上記構成のように、第1保持部と、これと異なる位置に配置される第2保持部とを有することで、充填管が2点で支持されるため、充填管の水平な姿勢をより確実に保持することができる。また保持治具を壁面に固定する固定部を設けることで、かかる保持冶具を介して充填管を壁面に固定することが可能となる。したがって、充填管の姿勢の安定性を向上させることができる。更に、固定部により保持冶具ひいては充填管をも壁面に固定可能となることで、これらを作業員により保持する必要がなくなる。このため、作業の手間を軽減し、且つ作業員の人員削減が図れる。
【0028】
上記の保持治具は、固定部が設けられ、第1保持部を位置調整可能に固定する枠体を更に有し、第2保持部は第1保持部に固定されているとよい。
【0029】
上記構成によれば、固定部により枠体(保持冶具)を壁面に固定した後に、かかる枠体に収容された第1保持部の位置調節を行うことが可能となる。そして、第2保持部が第1保持部に固定されていることで、第1保持部の位置調節を行ったとしても、第1保持部および第2保持部の相対的な位置は変わらない。このため、これらの部材間における位置のずれが生じない。
【0030】
上記の保持治具は、第1保持部と第2保持部とを連結する連結部材を更に備え、第1保持部は、略中央に充填管を挿通する挿通孔を有する略円板形状の部材であって、第2保持部は、充填管を挿通する挿通孔を備えた金具であって、連結部材は、第1保持部と第2保持部の互いの挿通孔をずらす方向に第2保持部の位置を調整可能であるとよい。
【0031】
かかる構成によれば、第1保持部の挿通孔、および第2保持部の挿通孔に充填管を挿通することで、かかる充填管を保持冶具に容易に保持させることができる。また連結部材により、第1保持部と第2保持部の互いの挿通孔をずらす方向に第2保持部の位置を調整できることで、保持冶具を固定する壁面の状態や、これに設けられたコア孔の位置に応じた微調整が可能となる。
【0032】
上記の連結部材は、第2保持部材と一体に成型されるとよい。これにより、当該コア孔充填装置の部品点数を減らし、コストの削減を図ることが可能となる。
【0033】
上記の固定部は、枠体に形成される、壁面に設置したアンカーボルトに固定されるための長孔であるとよい。
【0034】
コア採取時に用いられるボーリングマシンは、アンカーボルトにより壁面に固定される。したがって、かかる構成によれば、そのアンカーボルトを保持冶具の固定においても用いることができ、部品点数の削減が図れる。またコア採取時のボーリングマシンの固定にアンカーボルトを用いる際には、壁面にアンカーボルトを打ち込むための穴が掘穿される。したがって、コア孔充填時においてもアンカーボルトを用いることで、その穴を利用することができる。これにより、コア孔充填時に、保持冶具を固定するための穴を別途設ける必要がなくなるため、作業工程の削減を図ることが可能となる。
【0035】
上記課題を解決するために、本発明にかかるコア孔充填方法の代表的な構成は、コアを採取することにより建物の壁面に生じたコア孔を充填するコア孔充填方法であって、少なくとも外周部が柔軟性を有する多孔質材料からなる略円板状の隔壁部材が略先端に配置された充填管を、隔壁部材を配置された側からコア孔に導入し、隔壁部材をコア孔の奥部の突当り面の近傍に配置し、コア孔を充填するための充填材を、充填管を介して隔壁部材より突き当たり面側に圧入し、充填材の圧力によって隔壁部材をコア孔の開口部まで押し出すことにより、コア孔を充填材によって充填することを特徴とする。
【0036】
上述したコア孔充填装置における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該コア孔充填方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明にかかるコア孔充填装置およびコア孔充填方法によれば、流動性が高い充填材を用いる場合においても、作業者の熟練度によることなく隙間を生じさせずにコア孔を充填することができ、建物の耐久性の確保および作業時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態にかかるコア孔充填装置を説明する図である。
【図2】充填冶具を説明する図である。
【図3】保持冶具を説明する図である。
【図4】充填冶具の組み立てを説明する図である。
【図5】保持冶具の組み立てを説明する図である。
【図6】充填装置の壁面への設置を説明する図である。
【図7】コア孔充填方法を説明するための図である。
【図8】従来のコア孔充填方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0040】
図1は本実施形態にかかるコア孔充填装置を説明する図である。なお、図1では、コア孔充填装置200(以下、充填装置200と称する)を壁面100および壁面100が有する複数のコア孔110の1つに設置した状態を示しているが、設置の詳細については後述する。
【0041】
図1に示すように、充填装置200は、充填冶具210と、保持冶具230と、充填材圧入装置290とを備える。
【0042】
充填冶具210は、コア孔110内に挿入され、かかるコア孔110への充填材の充填に用いられる冶具である。図2は、充填冶具210を説明する図である。図2(a)は充填冶具210の斜視図であり、図2(b)は充填冶具210の断面図および側面図である。図2に示すように、充填冶具210は、隔壁部材211と、充填管220と、キャップ226を有する。
【0043】
隔壁部材211は、コア孔110の充填時にコア孔110内を密閉するための略円板状の部材である。隔壁部材211は、多孔質部212と、第1押さえ板214と、第2押さえ板216とを有する。
【0044】
多孔質部212は、柔軟性を有する多孔質材料からなり、コア孔110よりも大きい直径を有する略円板状の部材であって、後述する充填管220の略先端に配置される。かかる多孔質部212は、その略中心に充填管220が挿通される挿通孔212aを有する。これにより、挿通孔212aに充填管220を挿通し、かかる充填管220を通じてコア孔110の多孔質部212よりも奥側の空間に充填材を充填することが可能となる。
【0045】
また多孔質部212は、後述する第1押さえ板214および第2押さえ板216より外側に位置する部分である外周部212bを有する。本実施形態においては多孔質部212全体を多孔質材料から構成したため、外周部212bも当然にして多孔質材料から構成される。このように、外周部212bが多孔質材料で構成されることにより、隔壁部材211をコア孔110に挿入すると、外周部212bが変形してコア孔110の側面と密着し、コア孔110の隔壁部材211より奥側の空間は多孔質部212で密閉される。
【0046】
そして、充填管220を通じてコア孔110の密閉された空間に充填材を圧入すると、空間内の空気は、充填材により押し出され、外周部212b(多孔質材料)の細孔を通じて密閉された空間の外へ追い出される。したがって、充填材を圧入するだけで、コア孔110内の空気が追い出されて充填材が充填されるため、コア孔110内に空気による隙間が生じることがない。このため、作業者の熟練度によることなく隙間を生じさせずにコア孔110を充填することができ、建物の耐久性の確保および作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0047】
また外周部212bを多孔質材料から構成したことで、コア孔110の側面が凹凸を有する形状であったとしても、外周部212bはその形状に追従して変形することができる。これにより、隔壁部材211がコア孔110の凸部で引っかかり止ってしまうという事態が生じないため、充填装置200(隔壁部材211)は、充填材に押し出されながらコア孔110内を円滑に移動してその入口付近まで到達する。したがって、コア孔110を完全に充填することが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態においては、隔壁部材211が、外周部212bおよびそれ以外の部分のすべてが多孔質材料から構成される多孔質部212を有する構成としたが、これに限定するものでなく、隔壁部材211は、少なくとも外周部212bを多孔質材料から構成されれば足りる。したがって、例えば多孔質部212(隔壁部材211)の外周部212b以外の部分、すなわち本実施形態にかかる多孔質部212の、第1押さえ板214または第2押さえ板216と当接する部分を硬質材料(柔軟性を有さない材料)から構成し、外周部212bのみを多孔質材料で構成してもよい。これによっても、上述したような隔壁部材211のコア孔110内の円滑な移動を可能とすることができる。
【0049】
ただし、外周部212bを硬質材料から構成することは好ましくない。これは、外周部212bが硬質材料で構成されると、外周部212bがコア孔110の側面の凸部で引っかかり、隔壁部材211がコア孔110の入口側に移動できなくなり、コア孔110が完全に充填されなくなってしまうからである。
【0050】
第1押さえ板214および第2押さえ板216は、多孔質部212よりも小さい直径を有する略円板状の部材であり、その略中心に、充填管220が挿通される挿通孔214aおよび挿通孔216aを各々有する。これにより、挿通孔214aおよび挿通孔216aに充填管220を挿通させ、コア孔110内の多孔質部212(隔壁部材211)により密閉された空間に充填材を導入することが可能となる。
【0051】
上記の2枚の第1押さえ板214および第2押さえ板216のうち、第1押さえ板214は、充填管220の先端に固定され、多孔質部212のコア孔110奥側の面(先端側の面)に当接して配置される。これにより、第1押さえ板214を用いて多孔質部212の外周部212b以外の部分の変形を防ぐことができる。詳細には、全体が柔軟性を有する多孔質材料からなる多孔質部212は、充填材圧入装置290から圧入される充填材の圧力に負けて変形してしまう可能性がある。かかる変形が生じるのが外周部212bのみであれば問題ないが、外周部212b以外においても、すなわち多孔質部212全体が変形すると、多孔質部212とコア孔110の側面との間に隙間が生じ、その隙間から充填材が漏出し、コア孔110の充填に支障を来たしてしまう。
【0052】
そこで、本実施形態のように、多孔質部212のコア孔110奥側の面に第1押さえ板214を設ける。これにより、多孔質部212が第1押さえ板214により支えられるため、多孔質部212全体が変形してしまうことを防ぎ、コア孔110の充填を好適に行うことを可能となる。
【0053】
第2押さえ板216は、多孔質部212の手前側の面に当接して配置される。そして、第2押さえ板216は、多孔質部212を介して第1押さえ板214と固定される。これにより、多孔質部212は第1押さえ板214および第2押さえ板216で挟み込まれた状態で充填管220に固定される。したがって、多孔質部212(隔壁部材211)を充填管220に確実に固定することが可能となる。
【0054】
なお、上述したように第1押さえ板214および第2押さえ板216の直径は、多孔質部212よりも小さく形成している。これにより、コア孔110の側面と第1押さえ板214および第2押さえ板216との接触を回避することができる。仮に、第1押さえ板214および第2押さえ板216の直径を多孔質部212以上とすると、コア孔110の側面は多孔質部212ではなく第1押さえ板214および第2押さえ板216と接触してしまい、充填装置200のコア孔110内での円滑な移動が阻害されてしまうため好ましくない。
【0055】
ただし、第1押さえ板214および第2押さえ板216の直径が多孔質部212よりも小さくなりすぎると、第1押さえ板214および第2押さえ板216がその機能を十分に発揮できなくなるため好ましくない。したがって、第1押さえ板214および第2押さえ板216の半径と多孔質部212の半径の差はある程度の範囲内に留めておくべきであり、その差は15mm〜20mm程度が好ましい。しかし、この範囲に限定するものではなく、コア孔110の径、およびこれによって変化する多孔質部212の径等に応じて適宜変更することが可能である。
【0056】
また、第1押さえ板214と第2押さえ板216との間隔は、多孔質部212の厚みよりも狭くすることが好ましく、更に好ましくは、多孔質部212の厚みよりも10mm程度狭いとよい。これにより、第1押さえ板214および第2押さえ板216により挟持された際の多孔質部212の安定性をより好適に確保することができる。
【0057】
また本実施形態では、多孔質部212の両面に押さえ板を設けたが、これに限定するものではなく、多孔質部212の支持のみを目的とするのであれば、いずれか一方の面にのみ設ければ足りる。なお、いずれか一方とする場合には、多孔質部212のコア孔110の奥側の面に設けることが好ましい。これにより、多孔質部212を好適に支持することができる。
【0058】
更に、本実施形態とは異なり、隔壁部材211を、外周部のみを多孔質部材で構成し、外周部以外を柔軟性を有さない材料(硬質材料)で構成する場合には、必ずしも第1押さえ板214および第2押さえ板216を設ける必要はない。また本実施形態においては、第2押さえ板216を充填管220に固定する構成としたが、これに限定するものではなく、第1押さえ板214を充填管220に固定する構成としてもよい。
【0059】
充填管220は、充填材をコア孔110に導出する管である。本実施形態において、充填管220は、硬質材料からなるパイプである。充填管220は、充填材を流通させる役割とは別に、後述する第1保持部240と第2保持部250によって支持することにより、隔壁部材211の姿勢を保持する役割を有している。すなわち、充填管220を硬質材料とすることにより、充填管220の変形が生じにくくなるため、その水平を容易に保つことができ、充填管220に固定された隔壁部材211(多孔質部212および第1押さえ板214、第2押さえ板216)の姿勢をも保つことが可能となる。したがって、コア孔110内における隔壁部材211の傾きの発生を防ぐことができる。このため、多孔質部212によるコア孔110内の密閉状態を好適に維持することができ、コア孔110を確実に充填することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態においては、充填管220に硬質材料からなるパイプを用いたが、これに限定するものではなく、硬質材料以外の材料を用いることも可能である。ただし、硬質材料以外の材料、すなわち軟質材料を用いる場合には、隔壁部材211がコア孔の軸心に対して直交する姿勢を保持するように、他の支持部材やガイド部材を設けることが好ましい。
【0061】
また本実施形態において、充填管220は、隔壁部材211に接続された短い第1充填管222と、第1充填管222に螺合させて着脱可能な長い第2充填管224とから構成される。これにより、充填管220、ひいては当該充填装置200の可搬性を向上させることができる。
【0062】
第1充填管222は、その先端に上述した隔壁部材211が装着され、その末端(コア孔110に導入される側と反対側の端部)に螺子部222aを有する。これにより、後述する第2充填管224またはキャップ226を第1充填管222に装着することが可能となる。
【0063】
第2充填管224は、一端が第1充填管222に接続され、他端には後述する充填材圧入装置290のホース290aが接続される。かかる第2充填管224は、第1充填管222に接続される側の端部の内面に螺孔部224aを有する。これにより、第1充填管222の螺子部222aと第2充填管224の螺孔部224aとを螺合させ、これらを確実に接続することができる。
【0064】
隔壁部材211をコア孔110の奥部に挿入したとき、後述する保持冶具230が充填管220を支持するためには、充填管220はある程度の長さを有する必要がある。一方、充填後に養生をするとき、および運搬時には、充填管220はむしろ短い方が好ましい。そこで上記のように充填管220を第1充填管222と第2充填管224に分割可能としたことにより、いずれの状態においても好適に取り回すことが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態においては、充填管220を第1充填管222および第2充填管224からなる2つの充填管で構成した。しかし本発明はこれに限定するものではなく、かかる充填管220は、これらを一体としたものでもよいし、3つ以上の部材を接続してなるものでもよい。ただし、仮に充填管220を第1充填管222および第2充填管224を一体とした構成とすると、部品点数を削減できるという利点がある反面、充填終了後に充填管220全体に残存する充填材の量が増加するため、充填材のロス量が多くなってしまうという欠点を有する。したがって、本実施形態のように充填管220を2以上の部材で構成することが好ましい。
【0066】
キャップ226は、充填管220のコア孔110に導入される側と反対側の端部(本実施形態においては第1充填管222の隔壁部材211等を装着されていない側の端部)を封止する部材である。これにより、養生時における、充填管220のコア孔110に導入される側と反対側の端部からの充填材の流出を防止することが可能となる。
【0067】
またキャップ226は、その開口部の内面に、充填管220(本実施形態においては第1充填管222)の螺子部222aと螺合する螺孔部226aを有する。これにより、第1充填管222の螺子部222aとキャップ226の螺孔部226aを螺合させ、充填管220の端部を容易且つ確実に封止することができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、キャップ226は螺孔部226aを有しているが、これに限定するものではない。例えば、キャップ226の開口部の内面が充填管220の端部と密着する形状である場合等、キャップ226が充填管220からの充填材の流出を防止できる形状または寸法を有する場合には、キャップ226に螺孔部226aを設ける必要はない。
【0069】
保持冶具230は、壁面100に設置され、充填管220の姿勢を保持するための冶具である。図3は保持冶具230を説明する図である。図3(a)は保持冶具230の斜視図であり、図3(b)は保持冶具230の平面図であり、図3(c)は保持冶具230の断面図である。図3に示すように、保持冶具230は、第1保持部240と、第2保持部250と、連結部材260と、枠体270とを備える。
【0070】
第1保持部240および第2保持部250は、それぞれ異なる位置に配置され、共に充填管220を挿通可能に保持する。これにより、充填管220が第1保持部240および第2保持部250の2つの部材(2点)で支持されるため、充填管220の水平な姿勢を確実に保持することができる。
【0071】
本実施形態において、第1保持部240は略円板形状の部材であり、その略中央に充填管220を挿通する挿通孔240aを有する。これにより、第1保持部240の挿通孔に充填管220を挿通することで、かかる充填管220を保持冶具230に容易に保持させることができる。
【0072】
第2保持部250は、充填管220を挿通する挿通孔250aを有する金具である。これにより、第2保持部250の挿通孔250aに充填管220を挿通することで、かかる充填管220を保持冶具230に容易に保持させることができる。
【0073】
上記の第2保持部250は、挿通孔250aに立設される螺子状の連結部250bを有する。これにより、第2保持部250を後述する連結部材260に接続させることが可能となる。また連結部材260が螺子状であることで、第2保持部250の位置を調節することができる。なお、位置調節の詳細については後述する。
【0074】
連結部材260は、L字状の部材であり、その一端が第1保持部240に接続され、他端に第2保持部250が接続されることでこれらを連結する。これにより、連結部材260を介して第1保持部240と第2保持部250が固定されるため、第1保持部240が後述する枠体270に収容された後にその位置調節が行われても、第1保持部240および第2保持部250の相対的な位置は変わらない。このため、第1保持部240および第2保持部250の部材間における位置のずれが生じない。なお、第1保持部240の位置調節については後に詳述する。
【0075】
本実施形態において、連結部材260は、第2保持部250を接続される側の端部に螺孔部260aを有する。これにより、かかる螺孔部260aに第2保持部250の螺子状の連結部250bを螺合し、これらを容易且つ確実に接続することができる。
【0076】
また連結部材260が螺孔部260aを有し、第2保持部250が連結部を有する構成であることで、連結部材260は、第1保持部240と第2保持部250の互いの挿通孔をずらす方向に第2保持部250の位置を調整可能となる。詳細には、図3(c)に示す破線矢印の方向に第2保持部250を回転させると、連結部250bが螺孔部260aを通過し、第2保持部250は実線矢印の方向に移動する。そして、第2保持部250を破線矢印と反対の方向に回転させると、連結部250bが螺孔部260aを上記と反対の方向に通過し、第2保持部250は実線矢印と反対の方向に移動する。したがって、保持冶具230を固定する壁面の状態や、これに設けられたコア孔110の位置に応じて、第2保持部250の位置の微調整が可能となる。
【0077】
なお、上記の回転方向はあくまでも例示であり、第2保持部250を破線矢印の方向に回転させると、第2保持部250は実線矢印と反対の方向に移動することとしてもよい。
【0078】
また本実施形態では、連結部材260により第2保持部250と第1保持部240を連結したが、これに限定するものではなく、連結部材260と第2保持部250材を一体に成型してもよい。これにより、当該充填装置200の部品点数を減らし、コストの削減を図ることが可能となる。
【0079】
枠体270は、第1保持部240を位置調整可能に壁面100に固定する部材である。これにより、連結部材260を介して第2保持部250を固定された第1保持部240、ひいては第1保持部240および第2保持部250に保持された充填管220を壁面に固定することが可能となる。
【0080】
上記の枠体270は、当該保持冶具230を壁面100に固定する固定部272を有する。これにより、枠体270に固定された保持冶具230を介して充填管220を壁面に固定し、充填管220の姿勢の安定性を向上させることができる。また固定部272(枠体)により保持冶具230ひいては充填管220をも壁面に固定可能となることで、これらを作業員により保持する必要がなくなる。このため、作業の手間を軽減し、且つ作業員の人員削減が図れる。
【0081】
本実施形態において、固定部272は、枠体270に形成される、壁面100に設置したアンカーボルト102(図1参照)に固定されるための長孔である。これにより、コア採取時に用いられるボーリングマシン(図示せず)を壁面100に固定するためのアンカーボルト102を保持冶具230の固定においても用いることができ、部品点数の削減が図れる。またコア孔充填時においてもアンカーボルト102を用いることで、コア採取時にアンカーボルト102を打ち込むために壁面100に掘穿される穴120(図1参照)を再度利用することができる。これにより、コア孔充填時に、保持冶具230を固定するための穴を別途設ける必要がなくなるため、作業工程の削減を図ることが可能となる。
【0082】
また固定部272を単なる円孔ではなく長孔とすることで、コア孔充填時に枠体270を壁面100に設置しアンカーボルト102で仮止めをした後に、かかる枠体270をスライドさせ、その位置調節を行うことができる。
【0083】
上記の枠体270は、第1保持部240を枠体270に固定するボルト274と、かかるボルト274を支持するボルト支持部276を更に有する。これにより、ボルト支持部276を介してボルト274により第1保持部240を枠体270に固定し、且つ第1保持部240の位置調節をすることが可能となる。
【0084】
第1保持部240の位置調節は、詳細には図3(c)に示すように、第2保持部250が固定された第1保持部240を枠体270に収容しボルト274により仮止めすると、第1保持部240は枠体270内で、図3(b)に示す矢印の方向に回転することが可能となる。このような第1保持部240の位置調節を可能としたのは、コア孔充填時に第1保持部240に固定された連結部材260の、第1保持部240に対して垂直となる部分をコア孔軸と平行にするためである。これにより、第1保持部240および第2保持部250により保持された充填管220の荷重は、連結部250bにおいて確実に受け止められ、第1保持部240および第2保持部250はより安定した状態で充填管220を保持することができる。
【0085】
充填材圧入装置290(以下、圧入装置290と称する。)は、充填管220を通じて、充填材をコア孔110の隔壁部材211より奥側に圧入する。圧入装置290は、充填材を圧入可能であるものであればよく、例えば、手押しポンプ、電動ポンプ等を好適に用いることができる。また圧入装置は、これを充填管に接続するためのホース290aを有する。
【0086】
次に、上述した充填装置200の組み立て、および充填装置200の壁面100への設置を説明する。以下の説明では、まず充填装置200を構成する部材の組み立て方法を説明した後に、充填装置200の壁面100への設置方法を説明する。
【0087】
図4は、充填冶具210の組み立てを説明する図である。充填冶具210を組み立てる場合、まず図4(a)に示すように、第1押さえ板214を固定された第1充填管222を多孔質部212の挿通孔212aに挿通させ、多孔質部212と第1押さえ板214とを当接させる。これにより充填冶具210は図4(b)に示す状態となる。次に、多孔質部212を挿通された第1充填管222を第2押さえ板216の挿通孔216aに挿通させ、多孔質部212と第2押さえ板216とを当接させ、螺子やボルト等でこれらを固定する。これにより、充填冶具210は図2(a)に示す状態となる。そして、第1充填管222の螺子部222aと第2充填管224の螺孔部224aとを螺合すると、図4(c)に示すように、当該充填冶具210が組み立てられる。
【0088】
図5は保持冶具230の組み立てを説明する図である。保持冶具230を組み立てる場合、まず図5に示すように、連結部材260を介して第2保持部250を固定された第1保持部240を、枠体270に収容する。そして、収容された第1保持部240を、ボルト274を用いて枠体270に固定する。これにより、図3(a)に示すように当該保持冶具230が組み立てられる。
【0089】
図6は充填装置200の壁面への設置を説明する図である。充填装置200を壁面100へ設置する場合、まず上述のように組み立てた充填冶具210を、充填管220の隔壁部材211を配置された側の端部からコア孔110内部に挿入する。これにより、図6(a)に示す状態となる。
【0090】
次に、上述したように組み立てた保持冶具230を、第1保持部240の挿通孔240aおよび第2保持部250の挿通孔250aに、壁面100から突出している充填管220を挿通させながら壁面100に当接させる。これにより、図6(b)に示す状態となる。このとき、仮に連結部材260の、第1保持部240に対して垂直となる部分がコア孔軸と平行になっていない場合には、第1保持部240を回転させて位置調節を行うことができる。また第1保持部240および第2保持部250に保持された充填管220がコア孔軸に対して略平行となっていない場合には、第2保持部250を回転させて位置調節を行うことができる。
【0091】
そして、図6(b)に示す状態の充填装置の固定部と、壁面に設けられたアンカーボルト用の穴120との位置合わせを行い、固定部をアンカーボルト102により固定する。その後、充填管(本実施形態においては第2充填管)の端部に、圧入装置のホースを接続する。これにより、充填装置は図1に示す状態となり、壁面100に固定される。
【0092】
なお、充填装置200の壁面100への設置は、必ずしも上記説明した順番に行う必要はなく、適宜変更してよい。
【0093】
以下、コア孔充填方法の詳細について説明する。図7は、コア孔充填方法を説明するための図である。上述したコア孔充填装置200を用いてコア孔110を充填する際には、まず隔壁部材211が略先端に配置された充填管220を、隔壁部材211を配置された側からコア孔110に導入し、図7(a)に示すように、隔壁部材211をコア孔110の突当り面に当接させる(隔壁部材211を突き当り面の近傍に配置する)。
【0094】
次に、図7(b)に示すように、コア孔110を充填するための充填材300を、圧入装置290から充填管220を介してコア孔110に充填する。これにより、充填材300のコア孔110への充填が行われると共に、隔壁部材211が押し出されてコア孔110の入口側に移動する。そして、図7(c)に示すように、充填材300によりコア孔110から押し出されてきた隔壁部材211の、コア孔110の突当り面110aと対向しない面が壁面100と略面一となったら充填材300の充填を終了する。その後、図7(d)に示すように、保持冶具230(枠体270)を壁面から取り外し、第2充填管224を第1充填管222から取り外し、第1充填管222にキャップ226を螺合し、充填管220の隔壁部材211を配置されていない側の端部を封止した状態で所定時間養生を行う。
【0095】
養生が終了した後にコア孔110から保持冶具230を取り出すと、図7(e)に示すようにコア孔110の大部分は充填材で埋められて、隔壁部材211のあった位置がくぼんだ状態となる。そして、上記のくぼみに、コテ等(図示せず)を用いて充填材302を充填する(仕上げ作業)。これにより、コア孔110内に隙間が生じることなく、かかるコア孔110が充填材により充填される。
【0096】
上記説明したように、本発明にかかるコア孔充填装置およびコア孔充填方法によれば、隔壁部材211の外周部212bが柔軟性を有するため、コア孔110に挿入された隔壁部材211はその外周部212bが変形してコア孔110の側面と密着する。これにより、コア孔110の隔壁部材211より奥側の空間は隔壁部材211で密閉され、充填管220を通じてコア孔110に充填材を圧入すると、その圧力により隔壁部材211がコア孔110の開口部に向かって押し出され、隔壁部材211により密閉された空間に充填材が充填される。仮に、空間内に空気が残存する場合であっても、多孔質材料からなる外周部212bの細孔を通じて密閉された空間の外へ追い出されるため、コア孔110内に空気による隙間が生じることがない。したがって、作業者の熟練度によることなく隙間を生じさせずにコア孔110を充填することができ、建物の高耐久性の確保および作業時間の短縮を図ることが可能となる。また外周部212bを柔軟性を有する多孔質材料としたことで、当該コア孔充填装置200がコア孔110内を円滑に移動することが可能となる。
【0097】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、コアを採取することにより建物の壁面に生じたコア孔を充填するコア孔充填装置およびコア孔充填方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
10…壁、10a…コア孔、12…衝立、14…押圧棒、16…コテ、18…冶具、18a…注入口、18b…排出口、20…充填材、20a…充填材、100…壁面、102…アンカーボルト、110…コア孔、200…充填装置、210…充填冶具、211…隔壁部材、212…多孔質部、212a…挿通孔、212b…外周部、214…第1押さえ板、214a…挿通孔、216…第2押さえ板、216a…挿通孔、220…充填管、222…第1充填管、222a…螺子部、224…第2充填管、224a…螺孔部、226…キャップ、226a…螺孔部、230…保持冶具、240…第1保持部、240a…挿通孔、250…第2保持部、250a…挿通孔、250b…連結部、260…連結部材、260a…螺孔部、270…枠体、272…固定部、274…ボルト、276…ボルト支持部、290…圧入装置、300…充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを採取することにより建物の壁面に生じたコア孔を充填するコア孔充填装置であって、
前記コア孔を充填するための充填材を該コア孔に導出する充填管と、
前記充填管の略先端に配置された略円板状の部材であって、前記コア孔よりも大きい直径を有し、略中心に前記充填管が挿通される挿通孔を有し、少なくとも外周部が柔軟性を有する多孔質材料からなる隔壁部材と、
前記充填材を前記充填管を通じて前記コア孔の前記隔壁部材より奥側に圧入する充填材圧入装置と、
を備えることを特徴とするコア孔充填装置。
【請求項2】
前記隔壁部材は、
前記外周部を含む多孔質材料からなる円板形状の多孔質部と、
前記多孔質部よりも小さい直径を有し、且つ略中心に前記充填管が挿通される挿通孔を有する略円板状の第1押さえ板とを含み、
前記第1押さえ板は、前記多孔質部のコア孔奥側の面に当接して該多孔質部を固定することを特徴とする請求項1に記載のコア孔充填装置。
【請求項3】
前記隔壁部材は、前記充填管の先端に、前記第1押さえ板と略同一形状の第2押さえ板を更に含み、
前記多孔質部を前記第1および第2押さえ板で挟み込むことによって前記充填管に固定することを特徴とする請求項2に記載のコア孔充填装置。
【請求項4】
前記充填管は、硬質材料からなるパイプであることを特徴とする請求項1に記載のコア孔充填装置。
【請求項5】
当該コア孔充填装置は、前記充填管の前記コア孔に導入される側と反対側の端部を封止するキャップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のコア孔充填装置。
【請求項6】
前記充填管は、前記コア孔に導入される側と反対側の端部に螺子部を有し、
前記キャップは、内面に前記螺子部と螺合する螺孔部を有することを特徴とする請求項5記載のコア孔充填装置。
【請求項7】
当該コア孔充填装置は、前記充填管の姿勢を保持する保持冶具を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のコア孔充填装置。
【請求項8】
前記保持治具は、
前記充填管を挿通可能に保持する第1保持部と、
前記第1保持部と異なる位置で前記充填管を挿通可能に保持する第2保持部と、
当該保持治具を前記壁面に固定する固定部と、
を有することを特徴とする請求項7に記載のコア孔充填装置。
【請求項9】
前記保持治具は、前記固定部が設けられ、前記第1保持部を位置調整可能に固定する枠体を更に有し、
前記第2保持部は前記第1保持部に固定されていることを特徴とする請求項8に記載のコア孔充填装置。
【請求項10】
前記保持治具は、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部材を更に備え、
前記第1保持部は、略中央に前記充填管を挿通する挿通孔を有する略円板形状の部材であって、
前記第2保持部は、前記充填管を挿通する挿通孔を備えた金具であって、
前記連結部材は、前記第1保持部と前記第2保持部の互いの挿通孔をずらす方向に該第2保持部の位置を調整可能であることを特徴とする請求項9に記載のコア孔充填装置。
【請求項11】
前記連結部材は、前記第2保持部材と一体に成型されることを特徴とする請求項10に記載のコア孔充填装置。
【請求項12】
前記固定部は、前記枠体に形成される、前記壁面に設置したアンカーボルトに固定されるための長孔であることを特徴とする請求項9に記載のコア孔充填装置。
【請求項13】
コアを採取することにより建物の壁面に生じたコア孔を充填するコア孔充填方法であって、
少なくとも外周部が柔軟性を有する多孔質材料からなる略円板状の隔壁部材が略先端に配置された充填管を、該隔壁部材を配置された側から前記コア孔に導入し、
前記隔壁部材を前記コア孔の奥部の突当り面の近傍に配置し、
前記コア孔を充填するための充填材を、前記充填管を介して前記隔壁部材より前記突き当たり面側に圧入し、
前記充填材の圧力によって前記隔壁部材を前記コア孔の開口部まで押し出すことにより、前記コア孔を前記充填材によって充填することを特徴とするコア孔充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−52492(P2011−52492A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204019(P2009−204019)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(504244368)株式会社 八洋コンサルタント (2)
【Fターム(参考)】