コイルの端子構造
【課題】(1)コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性を確保し、(2)大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を設け、(3)難接合材を利用することが可能となるコイルの端子構造を提供する。
【解決手段】コイルの端子構造1は、金属性の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部10と、前記コイル部10の内周端部及び外周端部を折り曲げることによって、前記コイル部10の軸方向(Z方向)に引き出された端子部21及び22とを備える。そして、端子部21及び22の各々には、外部回路との接続に用いる穴23が形成されている。
【解決手段】コイルの端子構造1は、金属性の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部10と、前記コイル部10の内周端部及び外周端部を折り曲げることによって、前記コイル部10の軸方向(Z方向)に引き出された端子部21及び22とを備える。そして、端子部21及び22の各々には、外部回路との接続に用いる穴23が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属性の薄板を巻き回すことによって形成したコイルの端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルやトランスなどのコイルを、銅板を巻き回すことにより構成しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、コイルの端部と外部へ接続するための端子部との接続構造について開示されていない。
【0003】
大電流を使用する電気機器においては電流を流す導線に板状のものを用いることがよくある(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2の溶接構造では、板状導体に線材を挿入するためのU字状の切欠部を形成して、当該切欠部に線材を挿入した状態で板状導体と線材とを溶接している。
【0004】
また、板状導体ではないが、コイルの端末線と端子部との接続構造についても種々提案されている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に開示される端子構造では、端子部に設けられた挟持部で線材(端末線)を挟み込んだ状態で溶接を行い、コイルの端末線と端子部との接合部の電気的接続と溶接強度とを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−210998号公報
【特許文献2】特開2001−219270号公報
【特許文献3】特開2008−243870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3に示したように、異種材料の部材の溶接によりコイルと端子部とを接合した場合、以下のような問題点がある。
(1)溶接、ロウ付け、ハンダ付けなどの接合は、接合部に熱が加わることによる材質の変性、異種材料の部材の接合があることから材料としての連続性を欠くことになり、コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性が確保できない。
(2)また、熱が加わる接合法では、接合部の信頼性を確保するには、温度、加熱時間の管理が必要で、それなりの設備、装置が必要であり、時間もかかる。
(3)また、アルミニウムなどの難接合材への対応が難しい。電気伝導度のみから判断すれば銅が適しているが、重量の制約がある場合は、アルミニウムの使用が考慮される。しかし、アルミニウムは接合が非常に難しく、特殊な設備が必要になる。
【0007】
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、(1)コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性を確保し、(2)大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を設け、(3)難接合材を利用することが可能となるコイルの端子構造を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のコイルの端子構造は、金属性の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部と、コイル部の端部を折り曲げることによって、コイル部の軸方向に直交する平面に交差する方向に引き出された端子部とを備える。
【0009】
(1)上記構成によれば、コイル部を構成する薄板の一部で端子部を形成することにより、異種材料の部材が溶接などの方法により接合されている場合と異なり、コイル部と端子部との強度的、電気的一様性を確保することができる。
(2)また、コイル部を構成する薄板を折り曲げることによって端子部を設けているので、端子部を形成するための大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を形成することができる。
(3)また、本発明では、溶接などの接合方法を利用せず、折り曲げるだけで端子部を形成しているので、アルミニウムなどの難接合材を利用することができる。
【0010】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部に穴を形成している。このように構成すれば、外部回路との接続に関して、当該端子部の穴を用いてネジ等による締結が可能となる。
【0011】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を軸方向の所定位置で折り曲げることによって、多重構造とする。このように構成すれば、端子部の強度向上を図れる。
【0012】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を軸方向の所定位置で折り曲げることによって、端子部の軸方向の端部がコイル部の径方向に向くように配置する。このように構成すれば、端子部の外部回路との接続方向を変更することができ、接続作業が容易になる。また、コイル部の内周端部に形成された内側端子部と、コイル部の外周端部に形成された外側端子部とが、互いに径方向の反対方向に向くように配置した場合、当該端子部間の距離を離すことが可能となる。
【0013】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部の幅方向の端部に曲げ加工を施して補強部を設ける。このように構成すれば、端子部の強度向上を図れる。
【0014】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を軸方向に沿う折り曲げ線で折り曲げることによって多重構造とする。このように構成すれば、端子部の強度向上を図れる。
【0015】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向の中心位置に設けられる折り曲げ線で順次折り重ねる。このように構成すれば、端子部が多層構造になり強度向上を図れる。
【0016】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向に交互に並んだ谷折り線及び山折り線で折り畳む。このように構成すれば、端子部が多層構造になり強度向上を図れる。
【0017】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向の端部の一方が内周側に他方が外周側に配置されるように巻き込む。このように構成すれば、端子部が多層構造になり強度向上を図れる。
【0018】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向に並んだ3以上の折り曲げ線毎に所定角度ずつ折り曲げることによって、中空多角柱状の多重構造とする。このように構成すれば、端子部が中空多角柱状の多層構造になり強度向上を図れる。また、端子部を折り畳まないので、端子部の形成が容易で工数の削減を図れる。
【0019】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向の端部の一方から他方に向かって巻くことによって、中空円柱状の多重構造とする。このように構成すれば、端子部が中空円柱状の多層構造になり強度向上を図れる。また、端子部を折り畳まないので、端子部の形成が容易で工数の削減を図れる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によるコイルの端子構造では、上記のように、(1)コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性を確保し、(2)大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を設け、(3)難接合材を利用することが可能となる、という効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコイルの端子構造の斜視図である。
【図2】第1実施形態のコイルの端子構造の側面図である。
【図3】第1実施形態のコイルの端子構造の正面図である。
【図4】第1実施形態のコイルの端子構造の端子部の折り曲げ構造を説明するための斜視図である。
【図5】第2実施形態に係るコイルの端子構造の平面図である。
【図6】第2実施形態のコイルの端子構造の側面図である。
【図7】第2実施形態のコイルの端子構造の正面図である。
【図8】第3実施形態に係るコイルの端子構造の詳細を説明するための側面図である。
【図9】第3実施形態のコイルの端子構造の正面図である。
【図10】第4実施形態に係るコイルの端子構造の側面図である。
【図11】第4実施形態のコイルの端子構造の詳細を説明するための正面図である。
【図12】第4実施形態の変形例に係るコイルの端子構造の(a)側面図、(b)正面図である。
【図13】第5実施形態に係る端子部の折り曲げ構造を説明するための図である。
【図14】第6実施形態に係る端子部の折り曲げ構造を説明するための図である。
【図15】第7実施形態に係る端子部の折り曲げ構造を説明するための図である。
【図16】第8実施形態に係る端子部の折り曲げ構造を説明するための図である。
【図17】第9実施形態に係る端子部の構造を説明するための図である。
【図18】第1変形例に係るコイルの端子構造の斜視図である。
【図19】第2変形例に係るコイルの端子構造の斜視図である。
【図20】第3変形例に係るコイルの端子構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態に係るコイルの端子構造1は、リアクトルやトランスなどのコイルを備えた部品に利用される。このコイルの端子構造1は、図1〜図3に示すように、金属製の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部10と、コイル部10の端部を折り曲げることによって当該コイル部10の軸方向(Z方向)に引き出された端子部20とを備えている。
【0023】
金属製の薄板を巻き回すことによって構成されたコイル部10に電流を流すためには、他の外部回路との接続用の端子部20が必要となる。そこで、コイル部10の内周端部及び外周端部の各々を折り曲げることによって、コイル部10の軸方向(Z方向)に引き出した内側端子部21及び外側端子部22を形成している。ここでは、内側端子部21及び外側端子部22が、軸方向の同じ側(上方)に引き出されている。本実施形態では、図4に示すように、薄板の幅方向(W)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って、コイル部10の端部を折り曲げることによって、内側端子部21及び外側端子部22が軸方向(Z方向)に延在するようにしている。特に、コイル部10の内周端部は、軸方向に引き出さないと他の回路との接続が困難になるので、内側端子部21は、少なくとも軸方向に引き出されている。
【0024】
また、本実施形態の端子部21,22の各々には、ネジなどの締結部材を通過させるための穴23が設けられている。当該穴23に挿入された締結部材を他の外部回路などに締結することによって、端子構造1と他の回路との電気的接続を行なうことが可能となる。
【0025】
(1)本実施形態では、コイル部10を構成する薄板の一部で端子部20を形成することにより、異種材料の部材が溶接などの方法により接合されている場合と異なり(特許文献2及び3参照)、コイル部10と端子部20との強度的、電気的一様性を確保することができる。
(2)また、コイル部10を構成する薄板を折り曲げることによって端子部20を設けているので、端子部20を形成するための大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部20を形成することができる。
(3)また、本実施形態では、溶接などの接合方法を利用せず、折り曲げるだけで端子部20を形成しているので、アルミニウムなどの難接合材をコイル部10として利用することができる。
【0026】
また、本実施形態では、端子部20に穴23を形成することによって、外部回路との接続に関して、当該端子部20の穴23を用いてネジ等による締結が可能となる。
【0027】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るコイルの端子構造200は、図5〜図7に示すように、金属製の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部210と、コイル部210の端部を折り曲げることによって当該コイル部210の軸方向(Z方向)に引き出された端子部220とを備えている。
【0028】
この第2実施形態の端子構造200の端子部220は、その先端がコイル部210の径方向(R方向)に向くように折り曲げられている。具体的には、コイル部210の内周端部に形成される内側端子部221が径方向(R方向)の内側に向き、且つ、コイル部210の外周端部に形成される外側端子部222が径方向(R方向)の外側に向くように、コイル部210の内周端部及び外周端部が折り曲げられる。これにより、内側端子部221は、軸方向(Z方向)に延在する垂直部221aと、水平方向(径方向(R方向)内側)に延在する水平部221bとを有すると共に、外側端子部222は、軸方向(Z方向)に延在する垂直部222aと、水平方向(径方向(R方向)外側)に延在する水平部222bとを有する。そして、この第2実施形態では、水平部221b及び222bの各々に、ネジなどの締結部材を通過させるための穴223(図5参照)が設けられる。
【0029】
上記したように、本実施形態では、端子部220を軸方向(Z方向)の所定位置で折り曲げて、端子部220の軸方向(Z方向)の端部が径方向(R方向)に向くように配置することによって、端子部220の外部回路との接続方向を変更することができ、接続作業が容易になる。
【0030】
また、本実施形態では、内側端子部221と、外側端子部222とが、互いに径方向(R方向)の反対方向に向くように配置しているので、当該端子部221,222間の距離を離すことが可能となる。
【0031】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るコイルの端子構造300は、図8及び図9に示すように、金属製の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部310と、コイル部310の端部を折り曲げることによって当該コイル部310の軸方向(Z方向)に引き出された端子部320とを備えている。
【0032】
この第3実施形態の端子構造300の端子部320は、図8に示すように、2重構造になっている。この端子部320は、コイル部310の端部を軸方向(Z方向)に折り曲げた部分Sを、軸方向(Z方向)の所定の位置で折り返すことによって2重構造となっている。この第3実施形態では、コイル部310の内周端部に形成される内側端子部321、及び、コイル部310の外周端部に形成される外側端子部322の各々が2重構造になっている。当該端子部320の折返し回数は、端子部320の強度を考慮して適宜選択され、3重構造以上であっても良い。そして、端子部321及び322の各々には、ネジなどの締結部材を通過させるための穴323(図9参照)が設けられる。つまり、2枚の薄板を貫通する穴323が端子部321,322の各々に設けられている。
【0033】
上記したように、本実施形態では、端子部320を軸方向(Z方向)の所定位置で折り返して2重構造とすることによって、端子部320の強度向上を図れる。
【0034】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るコイルの端子構造400は、図10及び図11に示すように、金属製の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部410と、コイル部410の端部を折り曲げることによって当該コイル部410の軸方向(Z方向)に引き出された端子部420とを備えている。
【0035】
この第4実施形態の端子構造400の端子部420(内側端子部421、外側端子部422)の幅方向(D方向)の端部には、補強部424が設けられている。この補強部424は、端子部420の幅方向(D方向)の両端部に曲げ加工を施すことによって形成されている。そして、補強部424は、径方向(R方向)に向くように配される。なお、端子部420には、ネジなどの締結部材を通過させるための穴423(図11参照)が設けられる。
【0036】
(第4実施形態の変形例)
この第4実施形態の変形例に係る端子構造450の端子部460は、図12に示すように、上記した第4実施形態と同様に端子部460(内側端子部461、外側端子部462)に補強部464が設けられている。そして、この変形例では、端子部460の軸方向(Z方向)の先端がコイル部410の径方向(R方向)に向くように折り曲げられている。具体的には、コイル部410の内周端部に形成される内側端子部461の先端461aが径方向(R方向)の内側に向き、且つ、コイル部410の外周端部に形成される外側端子部462の先端462aが径方向(R方向)の外側に向くように、コイル部410の内周端部及び外周端部が折り曲げられる。
【0037】
上記したように、本実施形態では、端子部420及び460の幅方向(D方向)の端部に曲げ加工を施して補強部424及び464を設けることによって、端子部420及び460の強度向上を図ることができる。
【0038】
以下の第5〜第8実施形態では、軸方向に延在するように折り曲げられたコイル部の端部を、軸方向に沿う折り曲げ線で折り曲げることによって多重構造とした端子部について説明する。なお、端子部以外の構造は上記した第1実施形態と同様であるので、ここでは、端子部の折り曲げ構造について説明し、その他の説明は省略する。
【0039】
(第5実施形態)
第5実施形態に係るコイルの端子構造の端子部520は、以下の手順で折り曲げられることによって形成される。まず、図13(a)に示すように、コイル部510の端部511を、その端部511の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図13(b)に示すように、当該端部511が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、折り曲げられた端部511を、当該端部511の幅方向(D方向)の中央であって軸方向(Z方向)と平行に設けられた折線Mに沿って折り曲げる。これにより、図13(c)に示すように、2重構造の端子部520が構成される。
【0040】
(第6実施形態)
第6実施形態に係るコイルの端子構造の端子部620は、以下の手順で折り曲げられることによって形成される。まず、図14(a)に示すように、コイル部610の端部611を、その端部611の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図14(b)に示すように、当該端部611が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、折り曲げられた端部611を、軸方向(Z方向)に平行に設けられた谷折線M1、山折線M2、谷折線M3に沿って折り畳む。これにより、図14(c)に示すように、4重構造の端子部620が構成される。上記した折線M1〜M3は、山折線と谷折線とが交互に配置され、且つ、互いに等間隔で配置されている。
【0041】
(第7実施形態)
第7実施形態に係るコイルの端子構造の端子部720は、以下の手順で折り曲げられることによって形成される。まず、図15(a)に示すように、コイル部710の端部711を、その端部711の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図15(b)に示すように、当該端部711が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、図15(b)に示すように、折り曲げられた端部711を、当該端部711の幅方向(D方向)の側端部711a(図15(b))から1/4の位置に設けられた谷折線N1で折り曲げる。次に、図15(c)に示すように、図15(b)に示された端部711を、幅方向(D方向)に関して側端部711a(図15(b))から2/4の位置に設けられた谷折線N2で折り曲げる。さらに、図15(d)に示すように、図15(c)に示された端部711を、幅方向(D方向)に関して側端部711a(図15(b))から3/4の位置に設けられた谷折線N3で折り曲げる。これにより、図15(e)に示すように、4重構造の端子部720が構成される。
【0042】
なお、第7実施形態では、折線N1〜N3に沿って折り曲げることによって端子部720の幅方向(D方向)の端部の一方が内周側、且つ、他方が外周側に配置されるようにしたが、端子部720の幅方向(D方向)の端部の一方が内周側、且つ、他方が外周側に配置されれば折り曲げる必要はなく、巻き回して構成しても良い。つまり、端子部720の水平断面は角形形状であっても円形形状であっても良い。
【0043】
(第8実施形態)
第8実施形態に係るコイルの端子構造の端子部1120は、以下の手順で折り曲げられることによって形成される。まず、図16(a)に示すように、コイル部1110の端部1111を、その端部1111の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図16(b)に示すように、当該端部1111が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、図16(b)に示すように、折り曲げられた端部1111を、当該端部1111の幅方向(D方向)の側端部1111a(図16(b))から1/4の位置に設けられた谷折線P1で90°折り曲げる。次に、図16(c)に示すように、図16(b)に示された端部1111を、幅方向(D方向)に関して側端部1111a(図16(b))から2/4の位置に設けられた谷折線P2で90°折り曲げる。さらに、図16(d)に示すように、図16(c)に示された端部1111を、幅方向(D方向)に関して側端部1111a(図16(b))から3/4の位置に設けられた谷折線P3で90°折り曲げる。これにより、図16(e)に示すように、中空四角柱状の多重構造の端子部1120が構成される。図16(f)は、図16(e)に示す端子部1120を軸方向(Z方向)のZ’方向から見た図である。図16(f)に示すように、端子部1120は、中空四角柱状の多重構造となっている。
【0044】
なお、第8実施形態では、3つの折線P1〜P3に沿ってそれぞれ90°ずつ折り曲げることによって端子部1120を中空四角柱状の多重構造としたが、折線の数は4以上であってもよいし、折り曲げ角度は90°に限定されない。例えば、折線の数を5とし、折り曲げ角度をそれぞれ120°とすると、端子部1120を中空六角柱状の多重構造とすることができる。また、側端部1111aに近い折線P1から順番に折り曲げたが、折線毎に折り曲げるのであれば、折り曲げる順番は特に限定されず、側端部1111aから最も遠い折線P3から側端部1111aの方に向かって順番に折り曲げても良い。
【0045】
上記したように、本実施形態では、端子部1120を中空多角柱状の多重構造とすることによって、端子部1120の強度向上を図ることができる。また、端子部1120を折り畳まないので、端子部1120の形成が容易で工数の削減を図ることができる。
【0046】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態に係るコイルの端子構造について説明する。なお、端子部以外の構造は上記した第1実施形態と同様であるので、ここでは、端子部の構造について説明し、その他の説明は省略する。第9実施形態に係るコイルの端子構造の端子部1220は、以下の手順で折り曲げられ、巻かれることによって形成される。まず、図17(a)に示すように、コイル部1210の端部1211を、その端部1211の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図17(b)に示すように、当該端部1211が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、図17(b)に示すように、折り曲げられた端部1211を、当該端部1211の幅方向(D方向)の側端部1211aから他方の側端部1211bに向かって矢印方向(Q方向)に巻く。これにより、図17(c)に示すように、中空円柱状の多重構造の端子部1220が構成される。図17(d)は、図17(c)に示す端子部1220を軸方向(Z方向)のZ’方向から見た図である。図17(d)に示すように、端子部1220は、中空円柱状の多重構造となっている。
【0047】
上記したように、本実施形態では、端子部1220を中空円柱状の多重構造とすることによって、端子部1220の強度向上を図ることができる。また、端子部1220を折り畳まないので、端子部1220の形成が容易で工数の削減を図ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
例えば、上記実施形態では、端子部を軸方向(Z方向)に引き出すことについて説明したが、本発明はこれに限らず、図18に示す第1変形例のように、端子部820は、コイル部810の端面に対して軸方向(Z方向)に突出していれば良い。つまり、端子部820の引き出し方向(K方向)は、軸方向(Z方向)に直交する平面(コイルの端面、コイルの巻き上げ面)に交差する方向であれば良い。
【0050】
また、上記実施形態では、端子部を軸方向(Z方向)の上方に引き出す例について説明したが、本発明はこれに限らず、図19に示す第2変形例のように、端子部920を軸方向(Z方向)の下方(コイル部910の端面の下方、コイル部910の巻き上げ面の下方)に引き出しても良いし、図20に示す第3変形例のように、コイル部1010の内周端部を折り曲げることによって形成される内側端子部1021を軸方向(Z方向)の下方に、コイル部1010の外周端部を折り曲げることによって形成される外側端子部1022を軸方向の上方に配置しても良い。このように、内側端子部1021と外側端子部1022とが互いに軸方向(Z方向)の反対側に配置することによって、両端子部1021,1022を離した状態で配置することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明を利用すれば、(1)コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性を確保し、(2)大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を設け、(3)難接合材を利用することが可能なコイルの端子構造を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1,200,300,400,450 コイルの端子構造
10,210,310,410,510,610,710,810,910,1010,1110,1210 コイル部
20,220,320,420,460,520,620,720,820,920,1120,1220 端子部
21,221,321,421,461,1021 内側端子部
22,222,322,422,462,1022 外側端子部
23,223,323,423 穴
424,464 補強部
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属性の薄板を巻き回すことによって形成したコイルの端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルやトランスなどのコイルを、銅板を巻き回すことにより構成しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、コイルの端部と外部へ接続するための端子部との接続構造について開示されていない。
【0003】
大電流を使用する電気機器においては電流を流す導線に板状のものを用いることがよくある(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2の溶接構造では、板状導体に線材を挿入するためのU字状の切欠部を形成して、当該切欠部に線材を挿入した状態で板状導体と線材とを溶接している。
【0004】
また、板状導体ではないが、コイルの端末線と端子部との接続構造についても種々提案されている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に開示される端子構造では、端子部に設けられた挟持部で線材(端末線)を挟み込んだ状態で溶接を行い、コイルの端末線と端子部との接合部の電気的接続と溶接強度とを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−210998号公報
【特許文献2】特開2001−219270号公報
【特許文献3】特開2008−243870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3に示したように、異種材料の部材の溶接によりコイルと端子部とを接合した場合、以下のような問題点がある。
(1)溶接、ロウ付け、ハンダ付けなどの接合は、接合部に熱が加わることによる材質の変性、異種材料の部材の接合があることから材料としての連続性を欠くことになり、コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性が確保できない。
(2)また、熱が加わる接合法では、接合部の信頼性を確保するには、温度、加熱時間の管理が必要で、それなりの設備、装置が必要であり、時間もかかる。
(3)また、アルミニウムなどの難接合材への対応が難しい。電気伝導度のみから判断すれば銅が適しているが、重量の制約がある場合は、アルミニウムの使用が考慮される。しかし、アルミニウムは接合が非常に難しく、特殊な設備が必要になる。
【0007】
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、(1)コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性を確保し、(2)大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を設け、(3)難接合材を利用することが可能となるコイルの端子構造を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のコイルの端子構造は、金属性の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部と、コイル部の端部を折り曲げることによって、コイル部の軸方向に直交する平面に交差する方向に引き出された端子部とを備える。
【0009】
(1)上記構成によれば、コイル部を構成する薄板の一部で端子部を形成することにより、異種材料の部材が溶接などの方法により接合されている場合と異なり、コイル部と端子部との強度的、電気的一様性を確保することができる。
(2)また、コイル部を構成する薄板を折り曲げることによって端子部を設けているので、端子部を形成するための大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を形成することができる。
(3)また、本発明では、溶接などの接合方法を利用せず、折り曲げるだけで端子部を形成しているので、アルミニウムなどの難接合材を利用することができる。
【0010】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部に穴を形成している。このように構成すれば、外部回路との接続に関して、当該端子部の穴を用いてネジ等による締結が可能となる。
【0011】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を軸方向の所定位置で折り曲げることによって、多重構造とする。このように構成すれば、端子部の強度向上を図れる。
【0012】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を軸方向の所定位置で折り曲げることによって、端子部の軸方向の端部がコイル部の径方向に向くように配置する。このように構成すれば、端子部の外部回路との接続方向を変更することができ、接続作業が容易になる。また、コイル部の内周端部に形成された内側端子部と、コイル部の外周端部に形成された外側端子部とが、互いに径方向の反対方向に向くように配置した場合、当該端子部間の距離を離すことが可能となる。
【0013】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部の幅方向の端部に曲げ加工を施して補強部を設ける。このように構成すれば、端子部の強度向上を図れる。
【0014】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を軸方向に沿う折り曲げ線で折り曲げることによって多重構造とする。このように構成すれば、端子部の強度向上を図れる。
【0015】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向の中心位置に設けられる折り曲げ線で順次折り重ねる。このように構成すれば、端子部が多層構造になり強度向上を図れる。
【0016】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向に交互に並んだ谷折り線及び山折り線で折り畳む。このように構成すれば、端子部が多層構造になり強度向上を図れる。
【0017】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向の端部の一方が内周側に他方が外周側に配置されるように巻き込む。このように構成すれば、端子部が多層構造になり強度向上を図れる。
【0018】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向に並んだ3以上の折り曲げ線毎に所定角度ずつ折り曲げることによって、中空多角柱状の多重構造とする。このように構成すれば、端子部が中空多角柱状の多層構造になり強度向上を図れる。また、端子部を折り畳まないので、端子部の形成が容易で工数の削減を図れる。
【0019】
上記したコイルの端子構造において、好ましくは、端子部を当該端子部の幅方向の端部の一方から他方に向かって巻くことによって、中空円柱状の多重構造とする。このように構成すれば、端子部が中空円柱状の多層構造になり強度向上を図れる。また、端子部を折り畳まないので、端子部の形成が容易で工数の削減を図れる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によるコイルの端子構造では、上記のように、(1)コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性を確保し、(2)大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を設け、(3)難接合材を利用することが可能となる、という効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコイルの端子構造の斜視図である。
【図2】第1実施形態のコイルの端子構造の側面図である。
【図3】第1実施形態のコイルの端子構造の正面図である。
【図4】第1実施形態のコイルの端子構造の端子部の折り曲げ構造を説明するための斜視図である。
【図5】第2実施形態に係るコイルの端子構造の平面図である。
【図6】第2実施形態のコイルの端子構造の側面図である。
【図7】第2実施形態のコイルの端子構造の正面図である。
【図8】第3実施形態に係るコイルの端子構造の詳細を説明するための側面図である。
【図9】第3実施形態のコイルの端子構造の正面図である。
【図10】第4実施形態に係るコイルの端子構造の側面図である。
【図11】第4実施形態のコイルの端子構造の詳細を説明するための正面図である。
【図12】第4実施形態の変形例に係るコイルの端子構造の(a)側面図、(b)正面図である。
【図13】第5実施形態に係る端子部の折り曲げ構造を説明するための図である。
【図14】第6実施形態に係る端子部の折り曲げ構造を説明するための図である。
【図15】第7実施形態に係る端子部の折り曲げ構造を説明するための図である。
【図16】第8実施形態に係る端子部の折り曲げ構造を説明するための図である。
【図17】第9実施形態に係る端子部の構造を説明するための図である。
【図18】第1変形例に係るコイルの端子構造の斜視図である。
【図19】第2変形例に係るコイルの端子構造の斜視図である。
【図20】第3変形例に係るコイルの端子構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態に係るコイルの端子構造1は、リアクトルやトランスなどのコイルを備えた部品に利用される。このコイルの端子構造1は、図1〜図3に示すように、金属製の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部10と、コイル部10の端部を折り曲げることによって当該コイル部10の軸方向(Z方向)に引き出された端子部20とを備えている。
【0023】
金属製の薄板を巻き回すことによって構成されたコイル部10に電流を流すためには、他の外部回路との接続用の端子部20が必要となる。そこで、コイル部10の内周端部及び外周端部の各々を折り曲げることによって、コイル部10の軸方向(Z方向)に引き出した内側端子部21及び外側端子部22を形成している。ここでは、内側端子部21及び外側端子部22が、軸方向の同じ側(上方)に引き出されている。本実施形態では、図4に示すように、薄板の幅方向(W)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って、コイル部10の端部を折り曲げることによって、内側端子部21及び外側端子部22が軸方向(Z方向)に延在するようにしている。特に、コイル部10の内周端部は、軸方向に引き出さないと他の回路との接続が困難になるので、内側端子部21は、少なくとも軸方向に引き出されている。
【0024】
また、本実施形態の端子部21,22の各々には、ネジなどの締結部材を通過させるための穴23が設けられている。当該穴23に挿入された締結部材を他の外部回路などに締結することによって、端子構造1と他の回路との電気的接続を行なうことが可能となる。
【0025】
(1)本実施形態では、コイル部10を構成する薄板の一部で端子部20を形成することにより、異種材料の部材が溶接などの方法により接合されている場合と異なり(特許文献2及び3参照)、コイル部10と端子部20との強度的、電気的一様性を確保することができる。
(2)また、コイル部10を構成する薄板を折り曲げることによって端子部20を設けているので、端子部20を形成するための大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部20を形成することができる。
(3)また、本実施形態では、溶接などの接合方法を利用せず、折り曲げるだけで端子部20を形成しているので、アルミニウムなどの難接合材をコイル部10として利用することができる。
【0026】
また、本実施形態では、端子部20に穴23を形成することによって、外部回路との接続に関して、当該端子部20の穴23を用いてネジ等による締結が可能となる。
【0027】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るコイルの端子構造200は、図5〜図7に示すように、金属製の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部210と、コイル部210の端部を折り曲げることによって当該コイル部210の軸方向(Z方向)に引き出された端子部220とを備えている。
【0028】
この第2実施形態の端子構造200の端子部220は、その先端がコイル部210の径方向(R方向)に向くように折り曲げられている。具体的には、コイル部210の内周端部に形成される内側端子部221が径方向(R方向)の内側に向き、且つ、コイル部210の外周端部に形成される外側端子部222が径方向(R方向)の外側に向くように、コイル部210の内周端部及び外周端部が折り曲げられる。これにより、内側端子部221は、軸方向(Z方向)に延在する垂直部221aと、水平方向(径方向(R方向)内側)に延在する水平部221bとを有すると共に、外側端子部222は、軸方向(Z方向)に延在する垂直部222aと、水平方向(径方向(R方向)外側)に延在する水平部222bとを有する。そして、この第2実施形態では、水平部221b及び222bの各々に、ネジなどの締結部材を通過させるための穴223(図5参照)が設けられる。
【0029】
上記したように、本実施形態では、端子部220を軸方向(Z方向)の所定位置で折り曲げて、端子部220の軸方向(Z方向)の端部が径方向(R方向)に向くように配置することによって、端子部220の外部回路との接続方向を変更することができ、接続作業が容易になる。
【0030】
また、本実施形態では、内側端子部221と、外側端子部222とが、互いに径方向(R方向)の反対方向に向くように配置しているので、当該端子部221,222間の距離を離すことが可能となる。
【0031】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るコイルの端子構造300は、図8及び図9に示すように、金属製の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部310と、コイル部310の端部を折り曲げることによって当該コイル部310の軸方向(Z方向)に引き出された端子部320とを備えている。
【0032】
この第3実施形態の端子構造300の端子部320は、図8に示すように、2重構造になっている。この端子部320は、コイル部310の端部を軸方向(Z方向)に折り曲げた部分Sを、軸方向(Z方向)の所定の位置で折り返すことによって2重構造となっている。この第3実施形態では、コイル部310の内周端部に形成される内側端子部321、及び、コイル部310の外周端部に形成される外側端子部322の各々が2重構造になっている。当該端子部320の折返し回数は、端子部320の強度を考慮して適宜選択され、3重構造以上であっても良い。そして、端子部321及び322の各々には、ネジなどの締結部材を通過させるための穴323(図9参照)が設けられる。つまり、2枚の薄板を貫通する穴323が端子部321,322の各々に設けられている。
【0033】
上記したように、本実施形態では、端子部320を軸方向(Z方向)の所定位置で折り返して2重構造とすることによって、端子部320の強度向上を図れる。
【0034】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るコイルの端子構造400は、図10及び図11に示すように、金属製の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部410と、コイル部410の端部を折り曲げることによって当該コイル部410の軸方向(Z方向)に引き出された端子部420とを備えている。
【0035】
この第4実施形態の端子構造400の端子部420(内側端子部421、外側端子部422)の幅方向(D方向)の端部には、補強部424が設けられている。この補強部424は、端子部420の幅方向(D方向)の両端部に曲げ加工を施すことによって形成されている。そして、補強部424は、径方向(R方向)に向くように配される。なお、端子部420には、ネジなどの締結部材を通過させるための穴423(図11参照)が設けられる。
【0036】
(第4実施形態の変形例)
この第4実施形態の変形例に係る端子構造450の端子部460は、図12に示すように、上記した第4実施形態と同様に端子部460(内側端子部461、外側端子部462)に補強部464が設けられている。そして、この変形例では、端子部460の軸方向(Z方向)の先端がコイル部410の径方向(R方向)に向くように折り曲げられている。具体的には、コイル部410の内周端部に形成される内側端子部461の先端461aが径方向(R方向)の内側に向き、且つ、コイル部410の外周端部に形成される外側端子部462の先端462aが径方向(R方向)の外側に向くように、コイル部410の内周端部及び外周端部が折り曲げられる。
【0037】
上記したように、本実施形態では、端子部420及び460の幅方向(D方向)の端部に曲げ加工を施して補強部424及び464を設けることによって、端子部420及び460の強度向上を図ることができる。
【0038】
以下の第5〜第8実施形態では、軸方向に延在するように折り曲げられたコイル部の端部を、軸方向に沿う折り曲げ線で折り曲げることによって多重構造とした端子部について説明する。なお、端子部以外の構造は上記した第1実施形態と同様であるので、ここでは、端子部の折り曲げ構造について説明し、その他の説明は省略する。
【0039】
(第5実施形態)
第5実施形態に係るコイルの端子構造の端子部520は、以下の手順で折り曲げられることによって形成される。まず、図13(a)に示すように、コイル部510の端部511を、その端部511の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図13(b)に示すように、当該端部511が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、折り曲げられた端部511を、当該端部511の幅方向(D方向)の中央であって軸方向(Z方向)と平行に設けられた折線Mに沿って折り曲げる。これにより、図13(c)に示すように、2重構造の端子部520が構成される。
【0040】
(第6実施形態)
第6実施形態に係るコイルの端子構造の端子部620は、以下の手順で折り曲げられることによって形成される。まず、図14(a)に示すように、コイル部610の端部611を、その端部611の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図14(b)に示すように、当該端部611が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、折り曲げられた端部611を、軸方向(Z方向)に平行に設けられた谷折線M1、山折線M2、谷折線M3に沿って折り畳む。これにより、図14(c)に示すように、4重構造の端子部620が構成される。上記した折線M1〜M3は、山折線と谷折線とが交互に配置され、且つ、互いに等間隔で配置されている。
【0041】
(第7実施形態)
第7実施形態に係るコイルの端子構造の端子部720は、以下の手順で折り曲げられることによって形成される。まず、図15(a)に示すように、コイル部710の端部711を、その端部711の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図15(b)に示すように、当該端部711が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、図15(b)に示すように、折り曲げられた端部711を、当該端部711の幅方向(D方向)の側端部711a(図15(b))から1/4の位置に設けられた谷折線N1で折り曲げる。次に、図15(c)に示すように、図15(b)に示された端部711を、幅方向(D方向)に関して側端部711a(図15(b))から2/4の位置に設けられた谷折線N2で折り曲げる。さらに、図15(d)に示すように、図15(c)に示された端部711を、幅方向(D方向)に関して側端部711a(図15(b))から3/4の位置に設けられた谷折線N3で折り曲げる。これにより、図15(e)に示すように、4重構造の端子部720が構成される。
【0042】
なお、第7実施形態では、折線N1〜N3に沿って折り曲げることによって端子部720の幅方向(D方向)の端部の一方が内周側、且つ、他方が外周側に配置されるようにしたが、端子部720の幅方向(D方向)の端部の一方が内周側、且つ、他方が外周側に配置されれば折り曲げる必要はなく、巻き回して構成しても良い。つまり、端子部720の水平断面は角形形状であっても円形形状であっても良い。
【0043】
(第8実施形態)
第8実施形態に係るコイルの端子構造の端子部1120は、以下の手順で折り曲げられることによって形成される。まず、図16(a)に示すように、コイル部1110の端部1111を、その端部1111の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図16(b)に示すように、当該端部1111が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、図16(b)に示すように、折り曲げられた端部1111を、当該端部1111の幅方向(D方向)の側端部1111a(図16(b))から1/4の位置に設けられた谷折線P1で90°折り曲げる。次に、図16(c)に示すように、図16(b)に示された端部1111を、幅方向(D方向)に関して側端部1111a(図16(b))から2/4の位置に設けられた谷折線P2で90°折り曲げる。さらに、図16(d)に示すように、図16(c)に示された端部1111を、幅方向(D方向)に関して側端部1111a(図16(b))から3/4の位置に設けられた谷折線P3で90°折り曲げる。これにより、図16(e)に示すように、中空四角柱状の多重構造の端子部1120が構成される。図16(f)は、図16(e)に示す端子部1120を軸方向(Z方向)のZ’方向から見た図である。図16(f)に示すように、端子部1120は、中空四角柱状の多重構造となっている。
【0044】
なお、第8実施形態では、3つの折線P1〜P3に沿ってそれぞれ90°ずつ折り曲げることによって端子部1120を中空四角柱状の多重構造としたが、折線の数は4以上であってもよいし、折り曲げ角度は90°に限定されない。例えば、折線の数を5とし、折り曲げ角度をそれぞれ120°とすると、端子部1120を中空六角柱状の多重構造とすることができる。また、側端部1111aに近い折線P1から順番に折り曲げたが、折線毎に折り曲げるのであれば、折り曲げる順番は特に限定されず、側端部1111aから最も遠い折線P3から側端部1111aの方に向かって順番に折り曲げても良い。
【0045】
上記したように、本実施形態では、端子部1120を中空多角柱状の多重構造とすることによって、端子部1120の強度向上を図ることができる。また、端子部1120を折り畳まないので、端子部1120の形成が容易で工数の削減を図ることができる。
【0046】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態に係るコイルの端子構造について説明する。なお、端子部以外の構造は上記した第1実施形態と同様であるので、ここでは、端子部の構造について説明し、その他の説明は省略する。第9実施形態に係るコイルの端子構造の端子部1220は、以下の手順で折り曲げられ、巻かれることによって形成される。まず、図17(a)に示すように、コイル部1210の端部1211を、その端部1211の幅方向(W方向)に対して45°の位置に設けられた折線Lに沿って折り曲げる。これにより、図17(b)に示すように、当該端部1211が軸方向(Z方向)に延在するように配置される。そして、図17(b)に示すように、折り曲げられた端部1211を、当該端部1211の幅方向(D方向)の側端部1211aから他方の側端部1211bに向かって矢印方向(Q方向)に巻く。これにより、図17(c)に示すように、中空円柱状の多重構造の端子部1220が構成される。図17(d)は、図17(c)に示す端子部1220を軸方向(Z方向)のZ’方向から見た図である。図17(d)に示すように、端子部1220は、中空円柱状の多重構造となっている。
【0047】
上記したように、本実施形態では、端子部1220を中空円柱状の多重構造とすることによって、端子部1220の強度向上を図ることができる。また、端子部1220を折り畳まないので、端子部1220の形成が容易で工数の削減を図ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
例えば、上記実施形態では、端子部を軸方向(Z方向)に引き出すことについて説明したが、本発明はこれに限らず、図18に示す第1変形例のように、端子部820は、コイル部810の端面に対して軸方向(Z方向)に突出していれば良い。つまり、端子部820の引き出し方向(K方向)は、軸方向(Z方向)に直交する平面(コイルの端面、コイルの巻き上げ面)に交差する方向であれば良い。
【0050】
また、上記実施形態では、端子部を軸方向(Z方向)の上方に引き出す例について説明したが、本発明はこれに限らず、図19に示す第2変形例のように、端子部920を軸方向(Z方向)の下方(コイル部910の端面の下方、コイル部910の巻き上げ面の下方)に引き出しても良いし、図20に示す第3変形例のように、コイル部1010の内周端部を折り曲げることによって形成される内側端子部1021を軸方向(Z方向)の下方に、コイル部1010の外周端部を折り曲げることによって形成される外側端子部1022を軸方向の上方に配置しても良い。このように、内側端子部1021と外側端子部1022とが互いに軸方向(Z方向)の反対側に配置することによって、両端子部1021,1022を離した状態で配置することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明を利用すれば、(1)コイル−端子間の強度的、電気的特性の一様性を確保し、(2)大掛かりな設備、装置を必要とせず、短時間で端子部を設け、(3)難接合材を利用することが可能なコイルの端子構造を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1,200,300,400,450 コイルの端子構造
10,210,310,410,510,610,710,810,910,1010,1110,1210 コイル部
20,220,320,420,460,520,620,720,820,920,1120,1220 端子部
21,221,321,421,461,1021 内側端子部
22,222,322,422,462,1022 外側端子部
23,223,323,423 穴
424,464 補強部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部と、
前記コイル部の端部を折り曲げることによって、前記コイル部の軸方向に直交する平面に交差する方向に引き出された端子部とを備えることを特徴とする、コイルの端子構造。
【請求項2】
前記端子部に穴を形成したことを特徴とする、請求項1に記載のコイルの端子構造。
【請求項3】
前記端子部を前記軸方向の所定位置で折り曲げることによって、多重構造とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコイルの端子構造。
【請求項4】
前記端子部を前記軸方向の所定位置で折り曲げることによって、前記端子部の前記軸方向の端部が前記コイル部の径方向に向くように配置することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコイルの端子構造。
【請求項5】
前記端子部の幅方向の端部に曲げ加工を施して補強部を設けることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコイルの端子構造。
【請求項6】
前記端子部を前記軸方向に沿う折り曲げ線で折り曲げることによって多重構造とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコイルの端子構造。
【請求項7】
前記端子部を当該端子部の幅方向の中心位置に設けられる折り曲げ線で順次折り重ねることを特徴とする、請求項6に記載のコイルの端子構造。
【請求項8】
前記端子部を当該端子部の幅方向に交互に並んだ谷折り線及び山折り線で折り畳むことを特徴とする、請求項6に記載のコイルの端子構造。
【請求項9】
前記端子部を当該端子部の幅方向の端部の一方が内周側に他方が外周側に配置されるように巻き込むことを特徴とする、請求項6に記載のコイルの端子構造。
【請求項10】
前記端子部を当該端子部の幅方向に並んだ3以上の折り曲げ線毎に所定角度ずつ折り曲げることによって、中空多角柱状の多重構造とすることを特徴とする、請求項6に記載のコイルの端子構造。
【請求項11】
前記端子部を当該端子部の幅方向の端部の一方から他方に向かって巻くことによって、中空円柱状の多重構造とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコイルの端子構造。
【請求項1】
金属性の薄板を巻き回すことによって形成したコイル部と、
前記コイル部の端部を折り曲げることによって、前記コイル部の軸方向に直交する平面に交差する方向に引き出された端子部とを備えることを特徴とする、コイルの端子構造。
【請求項2】
前記端子部に穴を形成したことを特徴とする、請求項1に記載のコイルの端子構造。
【請求項3】
前記端子部を前記軸方向の所定位置で折り曲げることによって、多重構造とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコイルの端子構造。
【請求項4】
前記端子部を前記軸方向の所定位置で折り曲げることによって、前記端子部の前記軸方向の端部が前記コイル部の径方向に向くように配置することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコイルの端子構造。
【請求項5】
前記端子部の幅方向の端部に曲げ加工を施して補強部を設けることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコイルの端子構造。
【請求項6】
前記端子部を前記軸方向に沿う折り曲げ線で折り曲げることによって多重構造とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコイルの端子構造。
【請求項7】
前記端子部を当該端子部の幅方向の中心位置に設けられる折り曲げ線で順次折り重ねることを特徴とする、請求項6に記載のコイルの端子構造。
【請求項8】
前記端子部を当該端子部の幅方向に交互に並んだ谷折り線及び山折り線で折り畳むことを特徴とする、請求項6に記載のコイルの端子構造。
【請求項9】
前記端子部を当該端子部の幅方向の端部の一方が内周側に他方が外周側に配置されるように巻き込むことを特徴とする、請求項6に記載のコイルの端子構造。
【請求項10】
前記端子部を当該端子部の幅方向に並んだ3以上の折り曲げ線毎に所定角度ずつ折り曲げることによって、中空多角柱状の多重構造とすることを特徴とする、請求項6に記載のコイルの端子構造。
【請求項11】
前記端子部を当該端子部の幅方向の端部の一方から他方に向かって巻くことによって、中空円柱状の多重構造とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコイルの端子構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−205056(P2011−205056A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248485(P2010−248485)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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