説明

コイルカーとフロアプレートの連結装置

【課題】コイルスキッドとリールとの間の距離が長くなっても、フロアプレートの設置数を抑え且つ設備費の増加を抑えるとともに、コイルカーとフロアプレートの連結を簡易な機構により所定位置で切り離すことのできるコイルカーとフロアプレートの連結装置を提供する。
【解決手段】帯状材のコイルを一時保管するコイルスキッドとコイルの巻き戻し又は巻き取りリールとの間に形成されたピットの長手方向に沿ってコイルを移送するコイルカー1と、コイルカー1に連結されてコイルカーの移動に伴って引き出されてピット12を覆う伸縮可能なフロアプレート6bとの連結装置が、フロアプレート6bがピット12の一部を覆う所定位置まで引き出されるとフロアプレート6bとコイルカー1との連結を切り離す機構10,11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状材のコイルを移送するコイルカーとコイルカーが移動するピットを覆うフロアプレートとを連結するとともに移動したフロアプレートが所定位置に達すると連結を切り離すコイルカーとフロアプレートの連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼帯などの帯状材を巻いたコイルを巻き戻しリールから巻き戻して加工する際、コイルを搬入するクレーンあるいはフォークリフトとの取り合い点である、コイルを一次保管するコイルスキッドから巻き戻しリールへコイルを移送および装着するのにコイルカーが用いられている。また、コイルの加工完了後、巻き取りリールからのコイルの取り出しおよびコイルスキッドへのコイルの移送にもコイルカーが用いられている。そして、コイルカーが移動する軌条間には、コイルカーの下部に配設されているコイル昇降装置が移動できるようにピットが設けられている。このピットへの転落防止、リールやコイルスキッド廻りの点検あるいは修理のため、ピットを覆う伸縮可能なテレスコピック式のフロアプレートを設けた設備が知られている。
【0003】
図5(a)は従来技術によるテレスコピック式のフロアプレートが設けられている設備を示す平面図、(b)は同断面図で、コイル3を昇降させ、リールに装着するコイル昇降装置5を備えたコイルカー1が巻き戻しリール2側に移動した状態を示す。コイルスキッド4とコイルカー1との間のコイルカー用ピット12は、コイルカー1の移動によりコイルスキッド4側のフロアプレート6bがコイルスキッド4側の収納スペース8bから引き出されてフロアプレート6bにより覆われる。コイルカー1のモータ等の駆動装置には可撓性の電気ケーブル1aにより給電される。
【0004】
コイルカー1が巻き戻しリール2側からコイルスキッド4側へ移動する際には、コイルカー1の移動にともなって、コイルカー1に接続されたフロアプレート6bがコイルスキッド4とコイルカー1との間で縮み、一方、巻き戻しリール2の下部のリール側収納スペース8aから端部がコイルカー1に接続されているフロアプレート6aが引き出され、巻き戻しリール2とコイルカー1との間のピット12を覆うことになる。このようにして、ピット12の全体をフロアプレート6a,6bで覆うことによりピット12への転落を防止する。
【0005】
ピット12への転落防止のための従来技術として、例えば、特許文献1には、コイルカーの軌条に沿って配設した左右のガイドレールと、ガイドローラを介して左右側端を各ガイドレールに移動可能に取付けたネットとを備える安全装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、フロアプレートとなる複数の台車用の軌条をピットに沿って設け、台車間をゴムベルトとする技術が開示されている。
【特許文献1】実開昭60−151856号公報
【特許文献2】実開昭62−029815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クレーンあるいはフォークリフトとコイルカーの取り合い点であるコイルスキッドと巻き戻しリールあるいは巻き取りリールとの間の距離は、時として10mを越える長距離となることがある。このように距離が大きくなる場合、コイルカーの両サイドにテレスコピック式のフロアプレートを設けるとフロアプレートの枚数を多くしなくてはならないため、移動距離が長くなるにつれて設備費も増大してしまうという欠点がある。
【0008】
特許文献1のネットを使用する技術では、転落防止には役立つが、点検・修理にはネット上では足場が不安定であるため、作業が困難であるだけでなく、コイルカーの移動距離が長くなればなるほど、設備費が増加する欠点を持つ。
【0009】
また、特許文献2の技術も、特許文献1の技術と同様に、転落防止には役立つが、ゴムベルト上での作業は足場が不安定となり、さらに、コイルカーの移動距離が長くなればなるほど、設備費も増加する欠点を持つ。
【0010】
そこで、本発明の目的は、コイルスキッドとリールとの間の距離が長くなっても、フロアプレートの設置数を抑え且つ設備費の増加を抑えるとともに、コイルカーとフロアプレートの連結を簡易な機構により所定位置で切り離すことのできるコイルカーとフロアプレートの連結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を解決するため、本発明は、帯状材のコイルを一時保管するコイルスキッドとコイルの巻き戻し又は巻き取りリールとの間に形成されたピットの長手方向に沿ってコイルを移送するコイルカーと、コイルカーに連結されてコイルカーの移動に伴って引き出されてピットを覆う伸縮可能なフロアプレートとの連結装置が、フロアプレートがピットの一部を覆う所定位置まで引き出されるとフロアプレートとコイルカーとの連結を切り離す機構を備えたことを特徴とする。
【0012】
フロアプレートとコイルカーとの連結を切り離す機構は、前記フロアプレート先端およびコイルカーの前記フロアプレート先端に対向する位置に引っ掛け可能に正逆のL字形の掛止部を設け、前記所定位置でのフロアプレートの最もコイルカー側の車輪を支える軌条の高さをフロアプレートの掛止部が上方あるいは下方に移動してコイルカーの掛止部から外れる高さに変化させる。
【0013】
また、フロアプレートとコイルカーとの連結を切り離す所定位置を、コイルスキッド側の所定位置はコイルスキッド廻りの点検・修理が必要な範囲をフロアプレートが覆う位置とし、リール側の所定位置はリール廻りの点検・修理が必要な範囲を覆う位置とする。
【0014】
本発明では、コイルカーの両側にリール廻りおよびコイルスキッド廻りでの点検・修理等の作業用にフロアプレートを設けるもので、ピットへの転落防止のために安全柵を併用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フロアプレートがピットの一部を覆う所定位置まで引き出されると、フロアプレートとコイルカーとの連結が切り離されてピットを覆うフロアプレートの位置がリール廻りおよびコイルスキッド廻りでの点検・修理等の作業の必要な部位に限定されるので、コイルカー移動距離が長くなってもフロアプレートが増加することがなく、フロアプレート設置費用も増加することなく、設備費を安価に抑えることができる。
【0016】
また、リール廻りおよびコイルスキッド廻りのピットがフロアプレートで覆われるので、点検・修理の安全性・作業性を損ねることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の一実施例を図面に基づき説明する。
【実施例】
【0018】
図1(a)は本発明によるテレスコピック式のフロアプレートが設けられている設備を示し、コイルカーがリール側に位置する状態を示す平面図、(b)は同断面図である。図2(a)はコイルカーがリールとコイルスキッドとの間に位置する状態を示す平面図、(b)は同断面図である。
【0019】
図1において、ピット12の上のコイルカー用軌条1bを走行するコイルカー1にはコイル昇降装置5が設けられ、コイルカー1のモータ等の駆動装置には、コイルカー1に追随する可撓性の電気ケーブル1aにより給電される。
【0020】
コイルカー1が走行するピット12のリール2側には伸縮するフロアプレート6aを縮めて収納するフロアプレート収納スペース8aが設けられ、コイル3を一時保管するコイルスキッド4側には伸縮するフロアプレート6bを縮めて収納するフロアプレート収納スペース8bが設けられる。フロアプレート6a,6bは、多段にテレスコピック式に形成され、フロアプレート用軌条7を車輪により移動して伸縮可能となっている。なお、フロアプレート用軌条7はピット12の全長にわたって設ける必要はなく、フロアプレート6a,6bがピット12の一部を覆う範囲に設ければよい。
【0021】
コイルカー1がコイルスキッド4からリール2側に移動する際に、フロアプレート6bはコイルスキッド4側のフロアプレート収納スペース8bから所定位置まで引き出されて、ピット12の一部が覆われる。図1に示すように、前記所定位置はコイルスキッド廻りの点検・修理が必要な範囲を含むように設定される。
【0022】
図1の状態からコイルカー1が、図2に示すようにコイルスキッド4側へ移動する際には、コイルカー1に連結された、リール2側のフロアプレート収納スペース8aに収納されているフロアプレート6aがコイルカー1の移動に伴って引き出され、コイルカー1が所定位置まで進んだ時点で、フロアプレート6aとの連結が切り離される。前記所定位置はリール廻りの点検・修理が必要な範囲に設定される。なお、ピット12でフロアプレート6a,6bで覆われない箇所は、ピット12への転落防止を防止するために、ピット12の両側に安全柵9を設ける。
【0023】
そして、さらに、コイルカー1が移動して、コイルスキッド4側のフロアプレート6b切り離し位置を通過後は、コイルカー1が引き出されているコイルスキッド4側のフロアプレート6bを押し、フロアプレート6bが徐々に縮みながらコイルスキッド4へ移動し、移動完了時、フロアプレート6bはコイルスキッド4側のフロアプレート収納スペース8bに収納される。
【0024】
その後、コイルカー1が再びコイルスキッド側からリール2側へ移動する際には、コイルカー1が所定位置まで、コイルスキッド側のフロアプレート収納スペース8bに収納されているフロアプレート6bを引き出し、コイルカー1が所定位置まで進んだ時点で、フロアプレート6bとの連結が切り離される。さらに、コイルカー1が移動し、リール側のフロアプレート6aの切り離し位置を通過後は、コイルカー1が引き出されているリール側のフロアプレート6aを押すことにより、フロアプレート6aが徐々に縮みながらのリール2側に移動し、移動完了時、フロアプレート6aはリール側のフロアプレート収納スペース8aに収納される。
【0025】
次に、コイルカー1とフロアプレート6との連結を切り離す機構の一例について説明する。
【0026】
図3(a)は本発明によるフロアプレート収納時の状態を示す図、(b)はフロアプレート切り離し時を示す図、(c)はフロアプレート切り離し後の状態を示す図である。図4(a)は図3(a)の連結部の詳細図、(b)は図3(b)の連結部の詳細図である。
【0027】
以下の説明は、コイルスキッド側のフロアプレート6bとコイルカー1との着脱機構について説明するが、リール側のフロアプレート6aとコイルカー1との着脱機構もコイルスキッド4側のフロアプレート6bとコイルカー1との着脱機構と同様の機構であるので、その説明は省略する。
【0028】
図3(a)および図4(a)に示すように、コイルスキッド側のフロアプレート6bの端部には、フロアプレート6b側にL字型の掛止部10を設け、コイルカー1の端部には、L字型の掛止部10に対向してこの掛止部10に引っ掛かる逆L字型の掛止部11を設ける。コイルカー1のリール側への移動により、コイルカー1の逆L字型の掛止部11がフロアプレート6bのL字型の掛止部10を引っ掛け、さらにコイルカー1の移動に伴ってフロアプレート6bが引き出されていく。
【0029】
図3(b)および図4(b)に示すように、フロアプレート6bが移動する軌条7は、フロアプレート6bの掛止部10とコイルカー1の掛止部11との着脱位置においては、軌条7の高さが低く形成されている。軌条13の高さを低くした変更部13を形成することにより、フロアプレート6bの最もコイルカー寄りの車輪が沈み込み、コイルカー1の掛止部11とフロアプレート6bの掛止部10の接続が解除される。このように、コイルカー1とフロアプレート6の着脱が、L字型掛止部10と逆L字型掛止部11と軌条7の高さを変更する簡素な機構で実現できるので、本発明に係るコイルカーフロアプレート着脱装置は安価で、信頼性が高い。
【0030】
図示はしないが、コイルカーとフロアプレート端部は、コイルカー側にL字型の掛止部を設け、この掛止部に引っ掛かりフロアプレートが引き出されるようにフロアプレート端部は、逆L字型の掛止部を設けても構わない。そして、コイルカーとフロアプレートとの連結部において、当該部位のフロアプレート用の軌条を図4に示す場合と逆に高くすることにより、フロアプレート用の、最もコイルカー寄りの車輪が浮き上がることにより、コイルカーとフロアプレートとの接続が解除されるようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明によるテレスコピック式のフロアプレートが設けられている設備を示し、コイルカーがリール側に位置する状態を示す平面図、(b)は同断面図である。
【図2】コイルカーがリールとコイルスキッドとの間に位置する状態を示す平面図、(b)は同断面図である。
【図3】(a)は本発明によるフロアプレート収納時の状態を示す図、(b)はフロアプレート切り離し時を示す図、(c)フロアプレート切り離し後の状態を示す図である。
【図4】(a)は図3(a)の連結部の詳細図、(b)は図3(b)の連結部の詳細図である。
【図5】(a)は従来技術のテレスコピック式のフロアプレートが設けられている設備を示す平面図、(b)は同断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1:コイルカー
1a:電気ケーブル
1b:コイルカー用軌条
2:リール
3:コイル
4:コイルスキッド
5:コイル昇降装置
6:フロアプレート
6a:リール側のフロアプレート
6b:コイルスキッド側のフロアプレート
7:フロアプレート用軌条
8a:リール側のフロアプレート収納スペース
8b:コイルスキッド側のフロアプレート収納スペース
9:安全柵
10:L字形の掛止部
11:逆L字形の掛止部
12:ピット
13:フロアプレート用軌条の高さ変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状材のコイルを一時保管するコイルスキッドとコイルの巻き戻し又は巻き取りリールとの間に形成されたピットの長手方向に沿ってコイルを移送するコイルカーと、コイルカーに連結されてコイルカーの移動に伴って引き出されてピットを覆う伸縮可能なフロアプレートとの連結装置が、フロアプレートがピットの一部を覆う所定位置まで引き出されるとフロアプレートとコイルカーとの連結を切り離す機構を備えたことを特徴とするコイルカーとフロアプレートの連結装置。
【請求項2】
フロアプレートとコイルカーとの連結を切り離す機構は、前記フロアプレート先端およびコイルカーの前記フロアプレート先端に対向する位置に引っ掛け可能に正逆のL字形の掛止部を設け、前記所定位置でのフロアプレートの最もコイルカー側の車輪を支える軌条の高さをフロアプレートの掛止部が上方あるいは下方に移動してコイルカーの掛止部から外れる高さに変化させたことを特徴とする請求項1記載のコイルカーとフロアプレートの連結装置。
【請求項3】
フロアプレートとコイルカーとの連結を切り離す所定位置を、コイルスキッド側の所定位置はコイルスキッド廻りの点検・修理が必要な範囲をフロアプレートが覆う位置とし、リール側の所定位置はリール廻りの点検・修理が必要な範囲を覆う位置とすることを特徴とする請求項1又は2記載のコイルカーとフロアプレートの連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−196246(P2007−196246A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15590(P2006−15590)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】