コイル状物品の多段積みシステム及多段積み方法
【課題】浮きコイルの発生を防止してコイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができるコイル状物品の多段積みシステムを提供する。
【解決手段】本システム1は、クレーン2の吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の中心点間距離が、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の半径の和を超えたか否かを判断する判断手段9と、前記判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記吊具の開放動作を規制する吊具開放規制手段10と、を備える。
【解決手段】本システム1は、クレーン2の吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の中心点間距離が、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の半径の和を超えたか否かを判断する判断手段9と、前記判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記吊具の開放動作を規制する吊具開放規制手段10と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状物品の多段積みシステム及多段積み方法に関し、さらに詳しくは、浮きコイルの発生を防止してコイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができるコイル状物品の多段積みシステム及多段積み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレーンを用いてコイル状物品を隣接する一対のコイル状物品の間に2段以上多段積みすることが知られている(特許文献1参照)。
上記特許文献1には、金属帯コイルを大きさに応じて予めグループ分けし、各グループ毎で金属帯コイルを多段積みすることが開示されている。
しかし、上記特許文献1では、金属帯コイルを各グループ毎で多段積みしているので、コイル管理が煩雑となり、さらにコイル置場として広大なスペースを必要とするといった問題がある。
【0003】
そこで、上記問題を解決する技術として、コイル状物品をグループ分けすることなく多段済みすることが考えられる。しかし、このような多段積みでは、例えば、図6に示すように、上段側のコイル状物品が、下段側のコイル状物品に接触せずに隣接する上段側のコイル状物品に接触して多段積みされる状態P(以下、この状態を「浮きコイル」と称する。)が生じる場合がある。この場合、隣接する上段側のコイル状物品の移動や経時変化等により上段側のコイル状物品(浮きコイル)を支えられなくなり、コイル状物品の落下事故が発生して物品の損害はもとより人身事故を起こさせる恐れがある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−2682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、浮きコイルの発生を防止してコイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができるコイル状物品の多段積みシステム及多段積み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の中心点間距離(Ca,Cb)が、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する第1判断手段と、前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記吊具の開放動作を規制する第1吊具開放規制手段と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
2.前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記上段側コイル状物品が浮きコイルであることを前記クレーンの運転士に報知する浮きコイル報知手段を更に備える上記1.記載のコイル状物品の多段積みシステム。
3.前記第1判断手段は、床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して前記中心点間距離が前記半径の和を超えたか否かを判断する上記1.又は上記2.に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
4.前記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を取得する第1位置情報取得手段と、コイル状物品の半径情報を予め記憶するコイル情報記憶手段と、前記第1位置情報取得手段で取得された前記上段側コイル状物品及び前記下段側コイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報、並びに前記コイル情報記憶手段に記憶された前記上段側コイル状物品及び前記下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、前記中心点間距離及び前記半径の和を算出する第1算出手段と、を更に備える上記1.乃至上記3.のいずれかに記載のコイル状物品の多段積みシステム。
5.クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該一対の下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さ(z2、z2’)が、一致するか否かを判断する第2判断手段と、前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に前記吊具の開放動作を規制する第2吊具開放規制手段と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
6.前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に、前記上段側コイル状物品が浮きコイルであることを前記クレーン運転士に報知する浮きコイル報知手段を更に備える上記5.記載のコイル状物品の多段積みシステム。
7.前記第2判断手段は、床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが一致するか否かを判断する上記5.又は上記6.に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
8.前記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の中心点水平位置情報を取得する第2位置情報取得手段と、前記コイル状物品の半径情報を予め記憶し、且つ該コイル状物品の中心点水平位置情報及び中心点高さ情報を記憶可能なコイル情報記憶手段と、前記第2位置情報取得手段で取得された前記上段側コイル状物品の中心点水平位置情報、前記コイル情報記憶手段に記憶された前記一対の下段側コイル状物品の中心点水平位置情報及び中心点高さ情報、並びに上段側及び前記下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さを算出する第2算出手段を更に備える上記5.及至7のいずれかの一項に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
9.上記1.乃至上記4.のいずれかに記載のコイル状物品の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法であって、前記クレーンの吊具に吊下げられた前記上段側コイル状物品を隣接する一対の前記下段側コイル状物品に多段積みする際に、前記第1判断手段によって、前記中心点間距離(Ca,Cb)が前記半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する工程と、
前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記第1吊具開放規制手段によって前記吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積み方法。
10.上記5.及至8のいずれか一項に記載のコイル状物品の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法があって、前記クレーンの吊具に吊下げられた前記上段側コイル状物品を隣接する一対の前記下段側コイル状物品に多段積みする際に、前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なるか否かを判断する工程と、前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に前記第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコイル状物品の多段積みシステムによると、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、第1判断手段によって、上段側及び下段側コイル状物品の中心点間距離が、上段側及び下段側コイル状物品の半径の和を超えたか否かが判断され、その第1判断手段によって、中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合、即ち、上段側コイル状物品が浮きコイルであると判断された場合、第1吊具開放規制手段によって、吊具の開放動作が規制される。その後、クレーンが巻き上げられて吊具に吊下げられた上段側コイル状物品は他の隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みされる。これにより、上段側及び下段側コイル状物品における中心点間距離と半径の和との比較といった簡易な演算を用いて、上段側コイル状物品が浮きコイルであるか否かを確実に判断することができる。また、上段側コイル状物品が浮きコイルである場合に吊具の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイル状物品が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。また、コイル状物品をグループ分けする必要がないので、コイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
【0008】
また、本発明のコイル状物品の多段積みシステムによると、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、第2判断手段によって、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さが一致するかが判断され、その第2判断手段によって一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合、即ち、上段側コイル状物品が浮きコイルであると判断された場合、第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作が規制される。その後、クレーンが巻き上げられて吊具に吊下げられた上段側コイル状物品は、他の隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みされ、若しくは床面に平置きされる。
ここで、仮想中心点高さとは各コイル状物品の水平位置がそのままで上段側コイル状物品と下段側コイル状物品が接する場合の上段側コイル状物品の中心点高さを意味する。従って、吊上げられているために高さの検出が難しい上段側コイルの高さ位置情報を必要としないので、上段側コイル状物品が浮きコイルであるか否かをより簡単かつ高精度に判断することができる。また、上段側コイル状物品が浮きコイルである場合に吊具の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイル状物品が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。更に、コイル状物品をグループ分けする必要がないので、コイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
また、浮きコイル報知手段を更に備える場合、浮きコイル報知手段によって、上段側コイル状物品が浮きコイルであることをクレーンの運転士に報知され、運転士は浮きコイルの発生をより確実に把握することができる。
また、各判断手段が床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して判断する場合、浮きコイルであるか否かをより正確に判断することができる。
更に、各位置情報取得手段と、コイル情報記憶手段と、各算出手段と、を更に備える場合は、各算出手段によって、各位置情報取得手段で取得された上段側及び下段側コイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報、並びにコイル情報記憶手段に記憶された上段側及び下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、中心点間距離及び半径の和が算出される。そして、前記各判断手段によって、その算出された中心点間距離が半径の和を超えたか否かが判断される。
【0009】
本発明のコイル状物品の多段積み方法によると、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、第1判断手段によって、上段側及び下段側コイル状物品の中心点間距離が、上段側及び下段側コイル状物品の半径の和を超えたか否かが判断され、その第1判断手段によって、中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合、即ち、上段側コイル状物品が浮きコイルであると判断された場合、第1吊具開放規制手段によって、吊具の開放動作が規制される。その後、クレーンが巻き上げられて吊具に吊下げられた上段側コイル状物品は他の隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みされる。これにより、上段側及び下段側コイル状物品における中心点間距離と半径の和との比較といった簡易な演算を用いて、上段側コイル状物品が浮きコイルであるか否かを確実に判断することができる。また、上段側コイル状物品が浮きコイルである場合に吊具の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイル状物品が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。また、コイル状物品をグループ分けする必要がないので、コイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
【0010】
また、本発明のコイル状物品の多段積み方法によると、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、第2判断手段によって、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さが一致するか否かが判断され、その第2判断手段によって一対の上段側コイル状物品の仮想中心点高さと異なると判断された場合、第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制される。その後、クレーンが巻き上げられて吊具に吊下げられた上段側コイル状物品は他の隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みされ、若しくは床面に平置きされる。
このように上段側コイル状物品の高さ位置情報を必要とすることなく、上段側コイル状物品が浮きコイルであるか否かをより簡単かつ高精度に判断することができる。また、上段側コイル状物品が浮きコイルである場合に吊具の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイル状物品が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。更に、コイル状物品をグループ分けする必要がないので、コイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.第1のコイル状物品の多段積みシステム
本実施形態1.に係る第1の多段積みシステムは、以下に述べる第1判断手段及び第1吊具開放規制手段を備えている。この多段積みシステムは、例えば、後述する浮きコイル報知手段を更に備えることができる。また、この多段積みシステムは、例えば、後述する第1位置情報取得手段、コイル情報記憶手段及び第1算出手段を更に備えることができる。
【0012】
上記「第1判断手段」は、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、上段側及び下段側コイル状物品の中心点間距離(Ca,Cb)が、上段側及び下段側コイル状物品の半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する手段である限り、その構成、判断形態、タイミング等は特に問わない(図5参照)。
上記第1判断手段は、例えば、床面高低差や物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正及び/又は物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して、中心点間距離が半径の和を超えたか否かを判断することができる。これにより、浮きコイルをより正確に判断することができる。
【0013】
上記「第1吊具開放規制手段」は、上記第1判断手段によって中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合に、吊具の開放動作を規制する手段である限り、その構成、規制形態、タイミング等は特に問わない。
【0014】
上記「浮きコイル報知手段」は、上記第1判断手段によって中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合に、上段側コイル状物品が浮きコイルであることをクレーンの運転士に報知する手段である限り、その構成、報知形態、タイミング等は特に問わない。
上記浮きコイル報知手段による報知形態としては、例えば、警告表示装置に警告情報を表示させる形態、警告ランプを点灯又は点滅させる形態、警告ブザーを鳴らす形態等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0015】
上記「第1位置情報取得手段」は、上記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を取得する手段である限り、その構成、取得形態、タイミング等は特に問わない。
上記第1位置情報取得手段は、例えば、上記クレーンの吊具の巻き降ろし動作中に上記クレーン制御手段から吊具への物品加重解除情報を取得した際に、クレーン制御手段からコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を取得することができる。
【0016】
上記「コイル情報記憶手段」は、コイル状物品の半径情報を予め記憶する手段である限り、その構成、記憶形態、タイミング等は特に問わない。
上記コイル情報記憶手段は、例えば、上記第1位置情報取得手段により取得されたコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を記憶することができる。
【0017】
上記「第1算出手段」は、上記第1位置情報取得手段で取得された上段側及び下段側コイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報、並びに上記コイル情報記憶手段に記憶された上段側及び下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、上記中心点間距離及び半径の和を算出する手段である限り、その構成、算出形態、タイミング等は特に問わない。
【0018】
2.第2のコイル状物品の多段積みシステム
本実施形態2.に係る第2の多段積みシステムは、以下に述べる第2判断手段及び第2吊具開放規制手段を備えている。この多段積みシステムは、例えば、後述する浮きコイル報知手段を更に備えることができる。また、この多段積みシステムは、例えば、後述する第2位置情報取得手段、コイル情報記憶手段及び第2算出手段を更に備えることができる。
【0019】
上記「第2判断手段」は、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さが一致するか否かを判断する手段である限り、その構成、判断形態、タイミング等は特に問わない(例えば図8〜図11参照)。
ここで、上記「中心点水平位置」とは、例えば、図8に例示するコイル状物品の中心点の水平方向を表すY軸上の位置(コイル状物品C2におけるy2)を表す。また、中心点水平位置の値は、任意に選択することができ、特定の位置を原点とする絶対値としてもよいし、2つのコイル状物品間の相対値としてもよい。更に、上記「中心点高さ」とは、例えば、図8に例示するコイル状物品の中心点の垂直方向を表すZ軸上の位置を表す。この値は、任意に選択することができ、床面等の特定の位置を原点とする絶対値としてもよいし、2つのコイル状物品間の相対値としてもよい。
また、上記「仮想中心点高さ」は、例えば、各コイル状物品の中心点水平位置をそのままにして上段側コイル状物品と下段側コイル状物品が接するとした場合の、算出して得られた上段側コイル状物品の中心点の高さ(コイル状物品C1におけるz1)を意味する。つまり、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに下段側コイル状物品の中心点高さから算出することができる。具体的には、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の中心点水平位置差と、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径の和と、を直角三角形の2辺として、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の高低差を求め、得られた高低差に下段側コイル状物品の中心点高さを足して算出することができる。
更に、上段側コイル状物品は、一対の下段側コイル状物品の間に積まれるため、それぞれの上段側コイル状物品C2と下段側コイル状物品C1、C3とを組み合わせた場合の上記「一対の仮想中心点高さz2、z2’」が得られる。
上記第2判断手段は、例えば、床面高低差や物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正及び/又は物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して、一対の仮想中心高さが一致するか否かを判断することができる。これにより、浮きコイルをより正確に判断することができる。
更に、第2判断手段は、一対の仮想中心点高さz2、z2’が一致するか異なるか否かを判断する前に、一対の仮想中心点高さz2、z2’が上段側コイルC2の半径r2よりも小さいかどうかを判断することができる(例えば図12のステップS7’を参照)。仮想中心点高さz2、z2’が半径r2よりも大きい又は等しい場合は、上段側コイルC2が2段目以上であるため、続けて一対の仮想中心点高さz2、z2’が一致するか異なるか否かを判断する。更に、仮想中心点高さz2、z2’が半径r2よりも小さい場合は、上段側コイルC2が1段目の平置きであることを意味するため、第2吊具開放規制手段を実行しない(例えば図12のステップS8’を参照)。このような平置きの判断を行うことによって、処理中の段数に関わらず本多段積み方法を適用することができ、多段積みを容易に行うことができる。
【0020】
上記「第2吊具開放規制手段」は、上記第2判断手段によって一対の仮想中心点高さz2、z2’が異なると判断された場合に、吊具の開放動作を規制する手段である限り、その構成、規制形態、タイミング等は特に問わない。
【0021】
上記「浮きコイル報知手段」は、上記第2判断手段によって一対の仮想中心点高さz2、z2’が異なると判断された場合に、上段側コイル状物品が浮きコイルであることをクレーンの運転士に報知する手段である限り、その構成、報知形態、タイミング等は特に問わない。
上記浮きコイル報知手段による報知形態としては、例えば、警告表示装置に警告情報を表示させる形態、警告ランプを点灯又は点滅させる形態、警告ブザーを鳴らす形態等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0022】
上記「第2位置情報取得手段」は、上記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の水平位置情報を取得する手段である限り、その構成、取得形態、タイミング等は特に問わない。
上記第2位置情報取得手段は、例えば、上記クレーンの吊具の巻き降ろし動作中に上記クレーン制御手段から吊具への物品加重解除情報を取得した際に、クレーン制御手段からコイル状物品の水平位置情報を取得することができる。
【0023】
上記「コイル情報記憶手段」は、各コイル状物品の半径情報、中心点水平位置情報及び中心点高さ情報を記憶する手段である限り、その構成、記憶形態、タイミング等は特に問わない。
上記コイル情報記憶手段に記憶されるコイル状物品の半径情報は、任意の方法で登録することができ、例えば多段積みを行う前に予め登録することができる。また、コイル状物品の半径を測定する手段を設けてその手段から得られた半径情報を登録することもできる。
上記コイル情報記憶手段に記憶されるコイル状物品の中心点水平位置情報は、任意の方法で登録することができ、例えばクレーンの動作を制御するクレーン制御手段から取得して記憶することができる。更に、多段積みを行う前に予め登録することができる。
上記コイル情報記憶手段に記憶されるコイル状物品の中心点高さ情報zは、最下段のコイル状物品の半径情報rを最下段のコイル状物品の中心点高さ情報zとして記憶し、下から2段目以上のコイル状物品の中心点高さ情報zは、第2算出手段で得られた仮想中心点高さ情報z2を中心点高さ情報zとして記憶することができる。
【0024】
上記「第2算出手段」は、上記第2位置情報取得手段で取得された上段側コイル状物品の水平位置情報、並びに上記コイル情報記憶手段に記憶された上段側及び下段側コイル状物品の半径情報r1、r2、r3及び中心点水平位置情報y1、y2、y3、並びに下段側コイル状物品の中心点高さ情報z1、z3に基づいて、上記上段側コイル状物品の一対の仮想中心点高さz2、z2’を算出する手段である限り、その構成、算出形態、タイミング等は特に問わない。
また、算出する仮想中心点高さz2、z2’の値及び/又は仮想中心点高さz2、z2’の比較は、盤木等の床面の養生による補正、更に物品種類等により装備する保護具の厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮した値が用いられる。
例えば、所定間隔毎の水平位置yの床面の高さの変化を予め求めておき、その高さの変化を仮想中心点高さz2、z2’に加えて補正することができる。
【0025】
3.第1のコイル状物品の多段積み方法
本実施形態3.に係る多段積み方法は、上述の第1の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法であって、上記クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に2段以上に多段積みする際に、上記第1判断手段によって、中心点間距離(Ca,Cb)が半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する工程と、第1判断手段によって中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合に、上記第1吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とする。
【0026】
4.第2のコイル状物品の多段積み方法
本実施形態4.に係る多段積み方法は、上述の第2の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法であって、上記クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に2段以上に多段積みする際に、上記第2判断手段によって、一対の仮想中心点高さ(z2、z2’)が一致するか否かを判断する工程と、第2判断手段によって一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に、上記第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とする。
【実施例】
【0027】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本実施例では、本発明に係る「コイル状物品」として鋼板製のコイルを例示する。
1.実施例1
(1)多段積みシステムの構成
実施例1に係る多段積みシステム1は、図1に示すように、クレーン2の吊具3に吊下げられた上段側コイルC2を浮かすことなく、コイル置場E(保管エリア)に載置済みの隣接する一対の下段側コイルC1,C3に多段積みするためのシステムである。この多段積みシステム1は、図2に示すように、置場管理コンピュータ5及びクレーン制御ユニット6(本発明に係る「クレーン制御手段」として例示する。以下「CR制御ユニット」と称する。)を備えている。
【0028】
上記置場管理コンピュータ5は、後述する各種処理を実行するプログラムとして機能する第1位置情報取得手段7、第1算出手段8、第1判断手段9、第1吊具開放規制手段10及び浮きコイル報知手段11を備えている。この置場管理コンピュータ5には、コイル置場Eに載置されるコイルの半径情報、質量情報等が予め記憶されるデータベース12(本発明に係る「コイル情報記憶手段」として例示する。)と接続されている。
【0029】
上記CR制御ユニット6は、運転士により入力手段13を介して操作入力される指令に基づいて、クレーン2の吊具3の水平移動、昇降移動、コイルの把持・開放動作等を制御するようになっている。このCR制御ユニット6には、クレーン運転士に上段側コイルC2が浮きコイルであることを警告表示する警告表示装置として用いられる表示装置14がと接続されている。また、このCR制御ユニット6は、吊具3に吊下げられたコイルの高さ位置情報z及び水平位置情報y(列情報)を計測可能とされている。
【0030】
上記第1位置情報取得手段7は、クレーン2の吊具3の巻き降ろし動作中に、置場管理コンピュータ5がCR制御ユニット6から吊具3への物品加重解除情報を取得した際に、CR制御ユニット6からそのコイルの高さ位置情報z及び水平位置情報yを取得する処理を実行する(図3のステップS1参照)。
【0031】
上記第1算出手段8は、図5に示すように、上記第1位置情報取得手段7で取得された上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の高さ位置情報z1,z2,z3及び水平位置情報y1,y2,y3、並びに上記データベース12に予め記憶された上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の半径情報r1,r2,r3に基づいて、上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の中心点間距離Ca,Cb及び半径の和r1+r2,r2+r3を算出する処理を実行する(図3のステップS5参照)。具体的には、上段側コイルC2及び下段側コイルC1の中心点間距離Caは、(y2−y1)の二乗と(z2−z1)の二乗との和の平方根として求められる。また、上段側コイルC2及び下段側コイルC3の中心点間距離Cbは、(y3−y2)の二乗と(z2−z3)の二乗との和の平方根として求められる。
【0032】
上記第1判断手段9は、吊具3に吊下げられた上段側コイルC2を隣接する一対の下段側コイルC1,C3に多段積みする際に、上段側及び下段側コイルC1〜C3の中心点間距離Ca,Cbが、上段側及び下段側コイルC1〜C3の半径の和r1+r2,r2+r3を超えたか否かを判断する処理を実行する(図3のステップS6参照)。
【0033】
上記第1吊具開放規制手段10は、上記第1判断手段9によって中心点間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3を超えたと判断された場合に、吊具3の開放動作を規制する処理を実行する(図4のステップS8参照)。具体的には、CR制御ユニット6へ吊具3の緊急停止起動信号を送信する。
【0034】
上記浮きコイル報知手段11は、上記第1判断手段9によって中心点間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3を超えたと判断された場合に、上段側コイルC2が浮きコイルであることをクレーン運転士に報知する処理を実行する(図4のステップS8参照)。具体的には、CR制御ユニット6の表示装置14へ浮きコイルの警告表示信号を送信して警告表示装置として機能させる。
【0035】
(2)多段積みシステムの作用
次に、上記多段積みシステム1の作用について説明する。
先ず、置場管理コンピュータ5では、図3に示すように、クレーン2の巻き降ろし動作中に、CR制御ユニット6から吊具3への物品加重解除を取得した際に、CR制御ユニット6から吊具3に吊下げられたコイルの高さ位置情報z及び水平位置情報yが取得される(ステップS1参照)。尚、その取得されたコイルの高さ位置情報z及び水平位置情報yはデータベース12に記憶される。
【0036】
次に、そのコイルの高さ位置情報zがその半径情報rと同じか否かが判断される(ステップS2参照)。このとき、必要に応じて、盤木等の床面の養生による補正値tを考慮して、そのコイルの高さ位置情報zと半径情報rとが比較される。具体的には、図7に示すように、盤木15の高さをH、盤木15の間隔を2W、コイルCの半径をr、盤木15の上面からコイルCの中心までの高さをS、コイルCの下端と床面Fからの距離を補正値tとすると、t=S+H−r(但し、Sはrの二乗とWの二乗との差の平方根)により求められる。そして、半径情報rに補正値tを加えた値と位置情報zとが比較される。そして、その判断結果によりコイルの高さ位置情報zと半径情報r(必要に応じて補正値tを加えた値)とが同じである場合には、そのコイルは平置き(1段面目)であるため当該ロジックより離脱される(ステップS3参照)。
【0037】
一方、その判断結果によりコイルの高さ位置情報zと半径情報rとが同じでない場合には、その上段側コイルC2の水平位置情報yに隣接する設定範囲内の一対の下段側コイルC1,C3の高さ位置情報z1,z3及び水平位置情報y1,y3をデータベース12から取得する(ステップS4参照)。
【0038】
次いで、その一対の下段側コイルC1,C3に対する浮きコイル検証の処理を実行する(ステップS5参照)。このとき、その取得された高さ位置情報z1〜z3及び水平位置情報y1〜y3、並びに上記データベース12に予め記憶された半径情報r1〜r3に基づいて、上段側及び下段側コイルC1〜C3の中心点間距離Ca,Cb及び半径の和r1+r2,r2+r3が算出される。
【0039】
その後、その算出された中心間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3を超えたか否かが判断される(ステップS6参照)。このとき、必要に応じて、物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正、更に厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して、中心間距離Ca,Cbと半径の和r1+r2,r2+r3とが比較される。そして、その判断結果により中心間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3と同じである場合には、その上段側コイルC2は浮きコイルでないと判定され、当該ロジックより離脱される(ステップS7参照)。
【0040】
一方、その判断結果により中心間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3を超えている場合には、その上段側コイルC2は浮きコイルであると判定され、CR制御ユニット6へ吊具開放の緊急停止信号及び浮きコイルの警告表示信号が送信される(図4のステップS8参照)。
【0041】
そして、緊急停止信号を受信したCR制御ユニット6は、吊具3の開放停止とクレーン操作制限とを実施する。このクレーン操作制限では、吊具緊縮(吊具把持)及び巻き上げ操作を除く他の操作が全て制限される(ステップS9参照)。また、警告表示信号を受信したCR制御ユニット6は、表示装置14に上段側コイルC2が浮きコイルであることを示す警告情報を表示する。次に、クレーン運転士により吊具緊縮・巻き揚げ操作が起動される。そして、吊具3への物品加重付加により、吊具3に吊下げられたコイルの置場位置情報が解除される(ステップS10参照)。
【0042】
その後、置場管理コンピュータ5では、CR制御ユニット6による置場位置情報の解除情報が取得される(ステップS11参照)。次に、置場位置情報のリセットにより浮きコイルの警告解除を実行する(ステップS12参照)。次いで、浮きコイル状態が解除されたことで、当該ロジックより離脱される(ステップS13参照)。
【0043】
(3)実施例1の効果
以上より、本実施例1の多段積みシステム1によると、置場管理コンピュータ5が、クレーン2の吊具3の巻き降ろし動作中にCR制御ユニット6から吊具3への物品加重解除情報を取得した際に、CR制御ユニット6からコイルCの高さ位置情報z及び水平位置情報yを取得して、その取得された位置情報z1〜z3,y1〜y3及び予め記憶される半径情報r1〜r3に基づいて、上段側及び下段側コイルC1〜C3における中心点間距離Ca,Cb及び半径の和r1+r2,r2+r3を算出し、両者の比較で浮きコイルを判断するようにしたので、中心点間距離Ca,Cbと半径の和r1+r2,r2+r3との比較といった簡易な演算を用いて、上段側コイルC2が浮きコイルであるか否かを確実に判断することができる。また、上段側コイルC2が浮きコイルである場合に吊具3の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイルC2が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。また、コイルをグループ分けする必要がないので、コイルをスペース効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
また、本実施例1では、上段側コイルC2が浮きコイルである場合に、置場管理コンピュータ5の浮きコイル報知手段11によってCR制御ユニット6に警告表示信号が送信され、CR制御ユニット6では警告表示装置として用いられる表示装置14に警告情報を表示してクレーン運転士に報知するようにしたので、運転士は浮きコイルの発生をより確実に把握することができる。
【0044】
2.実施例2
(1)多段積みシステムの構成
実施例2に係る多段積みシステム1は、CR制御ユニット6からコイルCの高さ位置情報zを取得することなく図1に示すように、クレーン2の吊具3に吊下げられた上段側コイルC2を浮かさないように、コイル置場Eに載置済みの隣接する一対の下段側コイルC1,C3に多段積みするためのシステムである。この多段積みシステム1は、実施例1と同様に、図2に示すように、置場管理コンピュータ5及びCR制御ユニット6を備えている。
【0045】
また、上記置場管理コンピュータ5は、後述する各種処理を実行するプログラムとして機能する第2位置情報取得手段7’、第2算出手段8’、第2判断手段9’、第2吊具開放規制手段10’及び浮きコイル報知手段11を備えている。この置場管理コンピュータ5には、コイル置場Eに載置されるコイルの半径情報、質量情報、水平位置情報、中心点高さ情報等が記憶されるデータベース12と接続されている。また、半径情報及び質量情報は、多段積みを行う前に予め記憶されている。
尚、CR制御ユニット6、第2位置情報取得手段7’及び表示装置14の構成及び作用は、実施例1と同様である。
【0046】
上記第2算出手段8’は、図8〜図11に示すように、上記第2位置情報取得手段7’で取得された上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の水平位置情報y1,y2,y3、上記データベース12に予め記憶された上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の半径情報r1,r2,r3、並びにデータベース12に予め記憶された下段側コイルC1,C3の中心点高さ情報z1、z3に基づいて、上段側コイルC2の一対の仮想中心点高さz2、z2’を算出する処理を実行する。
具体的には、上段側コイルC2の下段側コイルC1に接している場合に対応する仮想中心点高さz2は、(r1+r2)2−(y2−y1)2の平方根と下段側コイルの高さz1との和として求められる。
また、上段側コイルC2の下段側コイルC3に接している場合に対応する仮想中心点高さz2’は、(r2+r3)2−(y3−y2)2の平方根と下段側コイルの高さz3との和として求められる。
【0047】
上記第2判断手段9’は、図12に示すように、吊具3に吊下げられた上段側コイルC2を隣接する一対の下段側コイルC1,C3に多段積みする際に、第2算出手段8’で得られた仮想中心点高さz2、z2’が上段側コイルC2の半径情報r2よりも小さいかどうかを判断する処理を実行する(ステップS7’を参照)。仮想中心点高さz2、z2’が半径情報r2よりも小さい又は等しい場合は、上段側コイルC2が1段目の平置きであることを意味するため、第2吊具開放規制手段10’を実行しない(ステップS8’を参照)。
また、仮想中心点高さz2、z2’が半径情報r2よりも大きい場合は、上段側コイルC2が2段目以上であるため、続けて第2算出手段8’で得られた仮想中心点高さz2、z2’が一致するか異なるか否かを判断する処理を実行する(ステップS9’を参照)。仮想中心点高さz2、z2’が一致する場合は、浮きコイルの状態ではないため、第2吊具開放規制手段10’を実行しない(ステップS10’を参照)。
【0048】
上記第2吊具開放規制手段10’は、上記第2判断手段9’によって仮想中心点高さz2、z2’が異なると判断された場合に(図9〜図11参照)、吊具3の開放動作を規制する処理を実行する(図4のステップS8参照)。具体的には、CR制御ユニット6へ吊具3の緊急停止起動信号を送信する。
【0049】
上記浮きコイル報知手段11は、上記第2判断手段9’によって仮想中心点高さz2、z2’が異なると判断された場合に、上段側コイルC2が浮きコイルであることをクレーン運転士に報知する処理を実行する(図4のステップS8参照)。具体的には、CR制御ユニット6の表示装置14へ浮きコイルの警告表示信号を送信して警告表示装置として機能させる。
【0050】
(2)多段積みシステムの作用
次に、上記多段積みシステム1の作用について説明する。
まず、置場管理コンピュータ5では、図12に示すように、クレーン2の巻き降ろし動作中に、CR制御ユニット6から吊具3への物品加重解除を取得した際に、CR制御ユニット6から吊具3に吊下げられた上段側コイルC2の水平位置情報y2が取得される(ステップS1’参照)。尚、その取得された水平位置情報y2はデータベース12に記憶される。
【0051】
次に、上段側コイルC2の水平位置情報y2から前後に隣接する範囲となる、半径情報r2の範囲の水平位置に、既に載置済みの下段側コイルがあるかどうかを判断する。この判断は、データベース12中の各コイルの水平位置情報y、高さ位置情報z及び半径情報rを取得し(ステップS2’参照)、その後、各コイルの水平載置範囲y±rと上段側コイルC2の水平載置範囲y2±r2とが重なっているかどうかを判断する(ステップS3’参照)。このとき重ならない場合は、載置されていないと判断する。尚、各水平載置範囲は、盤木等の床面の養生による補正、更に物品種類等により装備する保護具の厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮した値が用いられる。
上段側コイルC2の水平載置範囲と、全ての下段側コイルの水平載置範囲とが重ならなかった場合は、コイルC2が1段目に平置きされていると判断することができ、当該ロジックより離脱される(ステップS4’参照)。また、上段側コイルC2の半径情報r2を上段側コイルC2の高さ位置情報z2としてデータベース12に記憶され、更に上段にコイルを積載するときに用いられる。
【0052】
また、上段側コイルC2の水平載置範囲に重なる、前側の下段側コイルC1又は/及び後側の下段側コイルC3が、複数見つかった場合は、高さ位置情報zが最も大きなコイルを下段側コイルC1、C3とする(ステップS5’参照)。
【0053】
次いで、検出した一対の下段側コイルC1,C3に対する浮きコイル検証の処理を実行する(ステップS6’参照)。
始めに、上段側コイルC2の水平載置範囲の前後に、下段側コイルC1、C3が見つかった場合は、下段側コイルC1、C3の高さ位置情報z1、z3及び半径情報r1、r3をデータベース12から取得し、その後、下段側コイルC1の水平位置情報y1、高さ位置情報z1及び半径情報r1と、上段側コイルC2の水平位置情報y2及び半径情報r2とから高さ位置情報z2を求める。また、下段側コイルC3の水平位置情報y3、高さ位置情報z3及び半径情報r3と、上段側コイルC2の水平位置情報y2及び半径情報r2とから高さ位置情報z2’を求める。
【0054】
次いで、その算出された仮想中心点高さz2、z2’の一方又は両方が上段側コイルC2の半径情報r2よりも小さいかどうかを判断する(ステップS7’参照)。仮想中心点高さz2、z2’が上段側コイルC2の半径情報r2よりも小さい場合は、その上段側コイルC2は平置き(1段目)と判定され、当該ロジックより離脱される(ステップS8’参照)。また、上段側コイルC2の半径情報r2を上段側コイルC2の高さ位置情報z2としてデータベース12に記憶され、更に上段にコイルを積載するときに用いられる。
尚、この比較は、必要に応じて、物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正、更に厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して行われる。
【0055】
その後、算出された仮想中心点高さz2、z2’が一致するかどうかを判断する(ステップS9’参照)。この比較も、必要に応じて、物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正、更に厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して行われる。
そして、仮想中心点高さz2、z2’が一致する場合には、その上段側コイルC2は浮きコイルでないと判定され、当該ロジックより離脱される(ステップS10’参照)。また、上段側コイルC2の半径情報r2を上段側コイルC2の高さ位置情報z2としてデータベース12に記憶され、更に上段にコイルを積載するときに用いられる。
【0056】
一方、仮想中心点高さz2とz2’が異なる場合には、その上段側コイルC2は浮きコイルであると判定され、CR制御ユニット6へ吊具開放の緊急停止信号及び浮きコイルの警告表示信号が送信される(図4のステップS8参照)。その後の処理は実施例1と同様である(図4のステップS9〜S13参照)。
【0057】
(3)実施例2の効果
以上より、本実施例2の多段積みシステム1によると、CR制御ユニット6から取得された位置情報y2及び予め記憶されているデータベース12から取得された載置コイルの水平位置情報yと高さ位置情報z、並びに半径情報rに基づいて、まず、半径情報r2のみからの上段側コイルC2の仮想中心点高さを算出しその高さと、下段コイル側の中心高さz1及びz3と半径情報rに基づく上段側コイルC2の一対の仮想中心点高さz2とz2’を算出して、それらの比較で浮きコイルを判断するようにしたので、載置コイルの水平位置情報y及び高さ位置情報zと各コイルの半径情報rのみから算出して判定することができる。また、載置されたコイルの高さ位置情報zは、平置きされた1段目のコイルの半径情報から算出され、2段目以上も水平位置情報と半径情報から高さ位置は算定されている。従って、載置及び多段積みする際に、CR制御ユニット6から吊具3に吊下げられたコイルの高さ位置情報の取得を必要としないので、吊具3に吊下げられた上段側コイルC2が浮きコイルであるか否かをより簡単かつ高精度に判断することができる。
【0058】
尚、本発明においては、上記実施例1、2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1、2では、コイルを2段積みする際の2段目の浮きコイルを防止する形態を主に例示したが、これに限定されず、例えば、コイルを3段以上に多段積みする際の3段目以上の浮きコイルを防止するシステムとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
コイル状物品を多段積みする際の2段目以上での浮きコイルを防止する技術として広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1に係る多段積み作用を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る多段積みシステムを示すブロック図である。
【図3】実施例1に係る多段積みシステムの作用を説明するためのフローチャート図である。
【図4】実施例1に係る多段積みシステムの作用を説明するためのフローチャート図である。
【図5】実施例1に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図である。
【図6】浮きコイル状態を示す概略図である。
【図7】盤木によるコイルの支持を説明するための説明図である。
【図8】実施例2に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図であり、正常な状態を示す。
【図9】実施例2に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図であり、コイルC2がコイルC1側で浮いた状態を示す。
【図10】実施例2に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図であり、コイルC2がコイルC1側で浮いた状態を示す。
【図11】実施例2に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図であり、コイルC2が1段目に平置きされている状態を示す。
【図12】実施例2に係る多段積みシステムの作用を説明するためのフローチャート図である。
【符号の説明】
【0061】
1;多段積みシステム、2;クレーン、3;吊具、5;置場管理コンピュータ、6;クレーン制御ユニット(CR制御ユニット)、7;第1位置情報取得手段、7’;第2位置情報取得手段、8;算出手段、8’;算出手段、9;第1判断手段、9’;第2判断手段、10;第1吊具開放規制手段、10’;第2吊具開放規制手段、11;浮きコイル報知手段、12;データベース、C2;上段側コイル、C1,C3;下段側コイル、Ca,Cb;中心間距離、r1+r2,r2+r3;半径の和、z2、z2’;仮想中心点高さ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状物品の多段積みシステム及多段積み方法に関し、さらに詳しくは、浮きコイルの発生を防止してコイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができるコイル状物品の多段積みシステム及多段積み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレーンを用いてコイル状物品を隣接する一対のコイル状物品の間に2段以上多段積みすることが知られている(特許文献1参照)。
上記特許文献1には、金属帯コイルを大きさに応じて予めグループ分けし、各グループ毎で金属帯コイルを多段積みすることが開示されている。
しかし、上記特許文献1では、金属帯コイルを各グループ毎で多段積みしているので、コイル管理が煩雑となり、さらにコイル置場として広大なスペースを必要とするといった問題がある。
【0003】
そこで、上記問題を解決する技術として、コイル状物品をグループ分けすることなく多段済みすることが考えられる。しかし、このような多段積みでは、例えば、図6に示すように、上段側のコイル状物品が、下段側のコイル状物品に接触せずに隣接する上段側のコイル状物品に接触して多段積みされる状態P(以下、この状態を「浮きコイル」と称する。)が生じる場合がある。この場合、隣接する上段側のコイル状物品の移動や経時変化等により上段側のコイル状物品(浮きコイル)を支えられなくなり、コイル状物品の落下事故が発生して物品の損害はもとより人身事故を起こさせる恐れがある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−2682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、浮きコイルの発生を防止してコイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができるコイル状物品の多段積みシステム及多段積み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の中心点間距離(Ca,Cb)が、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する第1判断手段と、前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記吊具の開放動作を規制する第1吊具開放規制手段と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
2.前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記上段側コイル状物品が浮きコイルであることを前記クレーンの運転士に報知する浮きコイル報知手段を更に備える上記1.記載のコイル状物品の多段積みシステム。
3.前記第1判断手段は、床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して前記中心点間距離が前記半径の和を超えたか否かを判断する上記1.又は上記2.に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
4.前記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を取得する第1位置情報取得手段と、コイル状物品の半径情報を予め記憶するコイル情報記憶手段と、前記第1位置情報取得手段で取得された前記上段側コイル状物品及び前記下段側コイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報、並びに前記コイル情報記憶手段に記憶された前記上段側コイル状物品及び前記下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、前記中心点間距離及び前記半径の和を算出する第1算出手段と、を更に備える上記1.乃至上記3.のいずれかに記載のコイル状物品の多段積みシステム。
5.クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該一対の下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さ(z2、z2’)が、一致するか否かを判断する第2判断手段と、前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に前記吊具の開放動作を規制する第2吊具開放規制手段と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
6.前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に、前記上段側コイル状物品が浮きコイルであることを前記クレーン運転士に報知する浮きコイル報知手段を更に備える上記5.記載のコイル状物品の多段積みシステム。
7.前記第2判断手段は、床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが一致するか否かを判断する上記5.又は上記6.に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
8.前記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の中心点水平位置情報を取得する第2位置情報取得手段と、前記コイル状物品の半径情報を予め記憶し、且つ該コイル状物品の中心点水平位置情報及び中心点高さ情報を記憶可能なコイル情報記憶手段と、前記第2位置情報取得手段で取得された前記上段側コイル状物品の中心点水平位置情報、前記コイル情報記憶手段に記憶された前記一対の下段側コイル状物品の中心点水平位置情報及び中心点高さ情報、並びに上段側及び前記下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さを算出する第2算出手段を更に備える上記5.及至7のいずれかの一項に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
9.上記1.乃至上記4.のいずれかに記載のコイル状物品の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法であって、前記クレーンの吊具に吊下げられた前記上段側コイル状物品を隣接する一対の前記下段側コイル状物品に多段積みする際に、前記第1判断手段によって、前記中心点間距離(Ca,Cb)が前記半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する工程と、
前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記第1吊具開放規制手段によって前記吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積み方法。
10.上記5.及至8のいずれか一項に記載のコイル状物品の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法があって、前記クレーンの吊具に吊下げられた前記上段側コイル状物品を隣接する一対の前記下段側コイル状物品に多段積みする際に、前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なるか否かを判断する工程と、前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に前記第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコイル状物品の多段積みシステムによると、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、第1判断手段によって、上段側及び下段側コイル状物品の中心点間距離が、上段側及び下段側コイル状物品の半径の和を超えたか否かが判断され、その第1判断手段によって、中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合、即ち、上段側コイル状物品が浮きコイルであると判断された場合、第1吊具開放規制手段によって、吊具の開放動作が規制される。その後、クレーンが巻き上げられて吊具に吊下げられた上段側コイル状物品は他の隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みされる。これにより、上段側及び下段側コイル状物品における中心点間距離と半径の和との比較といった簡易な演算を用いて、上段側コイル状物品が浮きコイルであるか否かを確実に判断することができる。また、上段側コイル状物品が浮きコイルである場合に吊具の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイル状物品が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。また、コイル状物品をグループ分けする必要がないので、コイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
【0008】
また、本発明のコイル状物品の多段積みシステムによると、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、第2判断手段によって、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さが一致するかが判断され、その第2判断手段によって一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合、即ち、上段側コイル状物品が浮きコイルであると判断された場合、第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作が規制される。その後、クレーンが巻き上げられて吊具に吊下げられた上段側コイル状物品は、他の隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みされ、若しくは床面に平置きされる。
ここで、仮想中心点高さとは各コイル状物品の水平位置がそのままで上段側コイル状物品と下段側コイル状物品が接する場合の上段側コイル状物品の中心点高さを意味する。従って、吊上げられているために高さの検出が難しい上段側コイルの高さ位置情報を必要としないので、上段側コイル状物品が浮きコイルであるか否かをより簡単かつ高精度に判断することができる。また、上段側コイル状物品が浮きコイルである場合に吊具の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイル状物品が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。更に、コイル状物品をグループ分けする必要がないので、コイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
また、浮きコイル報知手段を更に備える場合、浮きコイル報知手段によって、上段側コイル状物品が浮きコイルであることをクレーンの運転士に報知され、運転士は浮きコイルの発生をより確実に把握することができる。
また、各判断手段が床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して判断する場合、浮きコイルであるか否かをより正確に判断することができる。
更に、各位置情報取得手段と、コイル情報記憶手段と、各算出手段と、を更に備える場合は、各算出手段によって、各位置情報取得手段で取得された上段側及び下段側コイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報、並びにコイル情報記憶手段に記憶された上段側及び下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、中心点間距離及び半径の和が算出される。そして、前記各判断手段によって、その算出された中心点間距離が半径の和を超えたか否かが判断される。
【0009】
本発明のコイル状物品の多段積み方法によると、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、第1判断手段によって、上段側及び下段側コイル状物品の中心点間距離が、上段側及び下段側コイル状物品の半径の和を超えたか否かが判断され、その第1判断手段によって、中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合、即ち、上段側コイル状物品が浮きコイルであると判断された場合、第1吊具開放規制手段によって、吊具の開放動作が規制される。その後、クレーンが巻き上げられて吊具に吊下げられた上段側コイル状物品は他の隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みされる。これにより、上段側及び下段側コイル状物品における中心点間距離と半径の和との比較といった簡易な演算を用いて、上段側コイル状物品が浮きコイルであるか否かを確実に判断することができる。また、上段側コイル状物品が浮きコイルである場合に吊具の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイル状物品が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。また、コイル状物品をグループ分けする必要がないので、コイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
【0010】
また、本発明のコイル状物品の多段積み方法によると、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、第2判断手段によって、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さが一致するか否かが判断され、その第2判断手段によって一対の上段側コイル状物品の仮想中心点高さと異なると判断された場合、第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制される。その後、クレーンが巻き上げられて吊具に吊下げられた上段側コイル状物品は他の隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みされ、若しくは床面に平置きされる。
このように上段側コイル状物品の高さ位置情報を必要とすることなく、上段側コイル状物品が浮きコイルであるか否かをより簡単かつ高精度に判断することができる。また、上段側コイル状物品が浮きコイルである場合に吊具の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイル状物品が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。更に、コイル状物品をグループ分けする必要がないので、コイル状物品を効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.第1のコイル状物品の多段積みシステム
本実施形態1.に係る第1の多段積みシステムは、以下に述べる第1判断手段及び第1吊具開放規制手段を備えている。この多段積みシステムは、例えば、後述する浮きコイル報知手段を更に備えることができる。また、この多段積みシステムは、例えば、後述する第1位置情報取得手段、コイル情報記憶手段及び第1算出手段を更に備えることができる。
【0012】
上記「第1判断手段」は、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、上段側及び下段側コイル状物品の中心点間距離(Ca,Cb)が、上段側及び下段側コイル状物品の半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する手段である限り、その構成、判断形態、タイミング等は特に問わない(図5参照)。
上記第1判断手段は、例えば、床面高低差や物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正及び/又は物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して、中心点間距離が半径の和を超えたか否かを判断することができる。これにより、浮きコイルをより正確に判断することができる。
【0013】
上記「第1吊具開放規制手段」は、上記第1判断手段によって中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合に、吊具の開放動作を規制する手段である限り、その構成、規制形態、タイミング等は特に問わない。
【0014】
上記「浮きコイル報知手段」は、上記第1判断手段によって中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合に、上段側コイル状物品が浮きコイルであることをクレーンの運転士に報知する手段である限り、その構成、報知形態、タイミング等は特に問わない。
上記浮きコイル報知手段による報知形態としては、例えば、警告表示装置に警告情報を表示させる形態、警告ランプを点灯又は点滅させる形態、警告ブザーを鳴らす形態等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0015】
上記「第1位置情報取得手段」は、上記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を取得する手段である限り、その構成、取得形態、タイミング等は特に問わない。
上記第1位置情報取得手段は、例えば、上記クレーンの吊具の巻き降ろし動作中に上記クレーン制御手段から吊具への物品加重解除情報を取得した際に、クレーン制御手段からコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を取得することができる。
【0016】
上記「コイル情報記憶手段」は、コイル状物品の半径情報を予め記憶する手段である限り、その構成、記憶形態、タイミング等は特に問わない。
上記コイル情報記憶手段は、例えば、上記第1位置情報取得手段により取得されたコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を記憶することができる。
【0017】
上記「第1算出手段」は、上記第1位置情報取得手段で取得された上段側及び下段側コイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報、並びに上記コイル情報記憶手段に記憶された上段側及び下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、上記中心点間距離及び半径の和を算出する手段である限り、その構成、算出形態、タイミング等は特に問わない。
【0018】
2.第2のコイル状物品の多段積みシステム
本実施形態2.に係る第2の多段積みシステムは、以下に述べる第2判断手段及び第2吊具開放規制手段を備えている。この多段積みシステムは、例えば、後述する浮きコイル報知手段を更に備えることができる。また、この多段積みシステムは、例えば、後述する第2位置情報取得手段、コイル情報記憶手段及び第2算出手段を更に備えることができる。
【0019】
上記「第2判断手段」は、クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さが一致するか否かを判断する手段である限り、その構成、判断形態、タイミング等は特に問わない(例えば図8〜図11参照)。
ここで、上記「中心点水平位置」とは、例えば、図8に例示するコイル状物品の中心点の水平方向を表すY軸上の位置(コイル状物品C2におけるy2)を表す。また、中心点水平位置の値は、任意に選択することができ、特定の位置を原点とする絶対値としてもよいし、2つのコイル状物品間の相対値としてもよい。更に、上記「中心点高さ」とは、例えば、図8に例示するコイル状物品の中心点の垂直方向を表すZ軸上の位置を表す。この値は、任意に選択することができ、床面等の特定の位置を原点とする絶対値としてもよいし、2つのコイル状物品間の相対値としてもよい。
また、上記「仮想中心点高さ」は、例えば、各コイル状物品の中心点水平位置をそのままにして上段側コイル状物品と下段側コイル状物品が接するとした場合の、算出して得られた上段側コイル状物品の中心点の高さ(コイル状物品C1におけるz1)を意味する。つまり、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに下段側コイル状物品の中心点高さから算出することができる。具体的には、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の中心点水平位置差と、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の半径の和と、を直角三角形の2辺として、上段側コイル状物品及び下段側コイル状物品の高低差を求め、得られた高低差に下段側コイル状物品の中心点高さを足して算出することができる。
更に、上段側コイル状物品は、一対の下段側コイル状物品の間に積まれるため、それぞれの上段側コイル状物品C2と下段側コイル状物品C1、C3とを組み合わせた場合の上記「一対の仮想中心点高さz2、z2’」が得られる。
上記第2判断手段は、例えば、床面高低差や物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正及び/又は物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して、一対の仮想中心高さが一致するか否かを判断することができる。これにより、浮きコイルをより正確に判断することができる。
更に、第2判断手段は、一対の仮想中心点高さz2、z2’が一致するか異なるか否かを判断する前に、一対の仮想中心点高さz2、z2’が上段側コイルC2の半径r2よりも小さいかどうかを判断することができる(例えば図12のステップS7’を参照)。仮想中心点高さz2、z2’が半径r2よりも大きい又は等しい場合は、上段側コイルC2が2段目以上であるため、続けて一対の仮想中心点高さz2、z2’が一致するか異なるか否かを判断する。更に、仮想中心点高さz2、z2’が半径r2よりも小さい場合は、上段側コイルC2が1段目の平置きであることを意味するため、第2吊具開放規制手段を実行しない(例えば図12のステップS8’を参照)。このような平置きの判断を行うことによって、処理中の段数に関わらず本多段積み方法を適用することができ、多段積みを容易に行うことができる。
【0020】
上記「第2吊具開放規制手段」は、上記第2判断手段によって一対の仮想中心点高さz2、z2’が異なると判断された場合に、吊具の開放動作を規制する手段である限り、その構成、規制形態、タイミング等は特に問わない。
【0021】
上記「浮きコイル報知手段」は、上記第2判断手段によって一対の仮想中心点高さz2、z2’が異なると判断された場合に、上段側コイル状物品が浮きコイルであることをクレーンの運転士に報知する手段である限り、その構成、報知形態、タイミング等は特に問わない。
上記浮きコイル報知手段による報知形態としては、例えば、警告表示装置に警告情報を表示させる形態、警告ランプを点灯又は点滅させる形態、警告ブザーを鳴らす形態等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0022】
上記「第2位置情報取得手段」は、上記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の水平位置情報を取得する手段である限り、その構成、取得形態、タイミング等は特に問わない。
上記第2位置情報取得手段は、例えば、上記クレーンの吊具の巻き降ろし動作中に上記クレーン制御手段から吊具への物品加重解除情報を取得した際に、クレーン制御手段からコイル状物品の水平位置情報を取得することができる。
【0023】
上記「コイル情報記憶手段」は、各コイル状物品の半径情報、中心点水平位置情報及び中心点高さ情報を記憶する手段である限り、その構成、記憶形態、タイミング等は特に問わない。
上記コイル情報記憶手段に記憶されるコイル状物品の半径情報は、任意の方法で登録することができ、例えば多段積みを行う前に予め登録することができる。また、コイル状物品の半径を測定する手段を設けてその手段から得られた半径情報を登録することもできる。
上記コイル情報記憶手段に記憶されるコイル状物品の中心点水平位置情報は、任意の方法で登録することができ、例えばクレーンの動作を制御するクレーン制御手段から取得して記憶することができる。更に、多段積みを行う前に予め登録することができる。
上記コイル情報記憶手段に記憶されるコイル状物品の中心点高さ情報zは、最下段のコイル状物品の半径情報rを最下段のコイル状物品の中心点高さ情報zとして記憶し、下から2段目以上のコイル状物品の中心点高さ情報zは、第2算出手段で得られた仮想中心点高さ情報z2を中心点高さ情報zとして記憶することができる。
【0024】
上記「第2算出手段」は、上記第2位置情報取得手段で取得された上段側コイル状物品の水平位置情報、並びに上記コイル情報記憶手段に記憶された上段側及び下段側コイル状物品の半径情報r1、r2、r3及び中心点水平位置情報y1、y2、y3、並びに下段側コイル状物品の中心点高さ情報z1、z3に基づいて、上記上段側コイル状物品の一対の仮想中心点高さz2、z2’を算出する手段である限り、その構成、算出形態、タイミング等は特に問わない。
また、算出する仮想中心点高さz2、z2’の値及び/又は仮想中心点高さz2、z2’の比較は、盤木等の床面の養生による補正、更に物品種類等により装備する保護具の厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮した値が用いられる。
例えば、所定間隔毎の水平位置yの床面の高さの変化を予め求めておき、その高さの変化を仮想中心点高さz2、z2’に加えて補正することができる。
【0025】
3.第1のコイル状物品の多段積み方法
本実施形態3.に係る多段積み方法は、上述の第1の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法であって、上記クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に2段以上に多段積みする際に、上記第1判断手段によって、中心点間距離(Ca,Cb)が半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する工程と、第1判断手段によって中心点間距離が半径の和を超えたと判断された場合に、上記第1吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とする。
【0026】
4.第2のコイル状物品の多段積み方法
本実施形態4.に係る多段積み方法は、上述の第2の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法であって、上記クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に2段以上に多段積みする際に、上記第2判断手段によって、一対の仮想中心点高さ(z2、z2’)が一致するか否かを判断する工程と、第2判断手段によって一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に、上記第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とする。
【実施例】
【0027】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本実施例では、本発明に係る「コイル状物品」として鋼板製のコイルを例示する。
1.実施例1
(1)多段積みシステムの構成
実施例1に係る多段積みシステム1は、図1に示すように、クレーン2の吊具3に吊下げられた上段側コイルC2を浮かすことなく、コイル置場E(保管エリア)に載置済みの隣接する一対の下段側コイルC1,C3に多段積みするためのシステムである。この多段積みシステム1は、図2に示すように、置場管理コンピュータ5及びクレーン制御ユニット6(本発明に係る「クレーン制御手段」として例示する。以下「CR制御ユニット」と称する。)を備えている。
【0028】
上記置場管理コンピュータ5は、後述する各種処理を実行するプログラムとして機能する第1位置情報取得手段7、第1算出手段8、第1判断手段9、第1吊具開放規制手段10及び浮きコイル報知手段11を備えている。この置場管理コンピュータ5には、コイル置場Eに載置されるコイルの半径情報、質量情報等が予め記憶されるデータベース12(本発明に係る「コイル情報記憶手段」として例示する。)と接続されている。
【0029】
上記CR制御ユニット6は、運転士により入力手段13を介して操作入力される指令に基づいて、クレーン2の吊具3の水平移動、昇降移動、コイルの把持・開放動作等を制御するようになっている。このCR制御ユニット6には、クレーン運転士に上段側コイルC2が浮きコイルであることを警告表示する警告表示装置として用いられる表示装置14がと接続されている。また、このCR制御ユニット6は、吊具3に吊下げられたコイルの高さ位置情報z及び水平位置情報y(列情報)を計測可能とされている。
【0030】
上記第1位置情報取得手段7は、クレーン2の吊具3の巻き降ろし動作中に、置場管理コンピュータ5がCR制御ユニット6から吊具3への物品加重解除情報を取得した際に、CR制御ユニット6からそのコイルの高さ位置情報z及び水平位置情報yを取得する処理を実行する(図3のステップS1参照)。
【0031】
上記第1算出手段8は、図5に示すように、上記第1位置情報取得手段7で取得された上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の高さ位置情報z1,z2,z3及び水平位置情報y1,y2,y3、並びに上記データベース12に予め記憶された上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の半径情報r1,r2,r3に基づいて、上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の中心点間距離Ca,Cb及び半径の和r1+r2,r2+r3を算出する処理を実行する(図3のステップS5参照)。具体的には、上段側コイルC2及び下段側コイルC1の中心点間距離Caは、(y2−y1)の二乗と(z2−z1)の二乗との和の平方根として求められる。また、上段側コイルC2及び下段側コイルC3の中心点間距離Cbは、(y3−y2)の二乗と(z2−z3)の二乗との和の平方根として求められる。
【0032】
上記第1判断手段9は、吊具3に吊下げられた上段側コイルC2を隣接する一対の下段側コイルC1,C3に多段積みする際に、上段側及び下段側コイルC1〜C3の中心点間距離Ca,Cbが、上段側及び下段側コイルC1〜C3の半径の和r1+r2,r2+r3を超えたか否かを判断する処理を実行する(図3のステップS6参照)。
【0033】
上記第1吊具開放規制手段10は、上記第1判断手段9によって中心点間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3を超えたと判断された場合に、吊具3の開放動作を規制する処理を実行する(図4のステップS8参照)。具体的には、CR制御ユニット6へ吊具3の緊急停止起動信号を送信する。
【0034】
上記浮きコイル報知手段11は、上記第1判断手段9によって中心点間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3を超えたと判断された場合に、上段側コイルC2が浮きコイルであることをクレーン運転士に報知する処理を実行する(図4のステップS8参照)。具体的には、CR制御ユニット6の表示装置14へ浮きコイルの警告表示信号を送信して警告表示装置として機能させる。
【0035】
(2)多段積みシステムの作用
次に、上記多段積みシステム1の作用について説明する。
先ず、置場管理コンピュータ5では、図3に示すように、クレーン2の巻き降ろし動作中に、CR制御ユニット6から吊具3への物品加重解除を取得した際に、CR制御ユニット6から吊具3に吊下げられたコイルの高さ位置情報z及び水平位置情報yが取得される(ステップS1参照)。尚、その取得されたコイルの高さ位置情報z及び水平位置情報yはデータベース12に記憶される。
【0036】
次に、そのコイルの高さ位置情報zがその半径情報rと同じか否かが判断される(ステップS2参照)。このとき、必要に応じて、盤木等の床面の養生による補正値tを考慮して、そのコイルの高さ位置情報zと半径情報rとが比較される。具体的には、図7に示すように、盤木15の高さをH、盤木15の間隔を2W、コイルCの半径をr、盤木15の上面からコイルCの中心までの高さをS、コイルCの下端と床面Fからの距離を補正値tとすると、t=S+H−r(但し、Sはrの二乗とWの二乗との差の平方根)により求められる。そして、半径情報rに補正値tを加えた値と位置情報zとが比較される。そして、その判断結果によりコイルの高さ位置情報zと半径情報r(必要に応じて補正値tを加えた値)とが同じである場合には、そのコイルは平置き(1段面目)であるため当該ロジックより離脱される(ステップS3参照)。
【0037】
一方、その判断結果によりコイルの高さ位置情報zと半径情報rとが同じでない場合には、その上段側コイルC2の水平位置情報yに隣接する設定範囲内の一対の下段側コイルC1,C3の高さ位置情報z1,z3及び水平位置情報y1,y3をデータベース12から取得する(ステップS4参照)。
【0038】
次いで、その一対の下段側コイルC1,C3に対する浮きコイル検証の処理を実行する(ステップS5参照)。このとき、その取得された高さ位置情報z1〜z3及び水平位置情報y1〜y3、並びに上記データベース12に予め記憶された半径情報r1〜r3に基づいて、上段側及び下段側コイルC1〜C3の中心点間距離Ca,Cb及び半径の和r1+r2,r2+r3が算出される。
【0039】
その後、その算出された中心間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3を超えたか否かが判断される(ステップS6参照)。このとき、必要に応じて、物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正、更に厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して、中心間距離Ca,Cbと半径の和r1+r2,r2+r3とが比較される。そして、その判断結果により中心間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3と同じである場合には、その上段側コイルC2は浮きコイルでないと判定され、当該ロジックより離脱される(ステップS7参照)。
【0040】
一方、その判断結果により中心間距離Ca,Cbが半径の和r1+r2,r2+r3を超えている場合には、その上段側コイルC2は浮きコイルであると判定され、CR制御ユニット6へ吊具開放の緊急停止信号及び浮きコイルの警告表示信号が送信される(図4のステップS8参照)。
【0041】
そして、緊急停止信号を受信したCR制御ユニット6は、吊具3の開放停止とクレーン操作制限とを実施する。このクレーン操作制限では、吊具緊縮(吊具把持)及び巻き上げ操作を除く他の操作が全て制限される(ステップS9参照)。また、警告表示信号を受信したCR制御ユニット6は、表示装置14に上段側コイルC2が浮きコイルであることを示す警告情報を表示する。次に、クレーン運転士により吊具緊縮・巻き揚げ操作が起動される。そして、吊具3への物品加重付加により、吊具3に吊下げられたコイルの置場位置情報が解除される(ステップS10参照)。
【0042】
その後、置場管理コンピュータ5では、CR制御ユニット6による置場位置情報の解除情報が取得される(ステップS11参照)。次に、置場位置情報のリセットにより浮きコイルの警告解除を実行する(ステップS12参照)。次いで、浮きコイル状態が解除されたことで、当該ロジックより離脱される(ステップS13参照)。
【0043】
(3)実施例1の効果
以上より、本実施例1の多段積みシステム1によると、置場管理コンピュータ5が、クレーン2の吊具3の巻き降ろし動作中にCR制御ユニット6から吊具3への物品加重解除情報を取得した際に、CR制御ユニット6からコイルCの高さ位置情報z及び水平位置情報yを取得して、その取得された位置情報z1〜z3,y1〜y3及び予め記憶される半径情報r1〜r3に基づいて、上段側及び下段側コイルC1〜C3における中心点間距離Ca,Cb及び半径の和r1+r2,r2+r3を算出し、両者の比較で浮きコイルを判断するようにしたので、中心点間距離Ca,Cbと半径の和r1+r2,r2+r3との比較といった簡易な演算を用いて、上段側コイルC2が浮きコイルであるか否かを確実に判断することができる。また、上段側コイルC2が浮きコイルである場合に吊具3の開放動作を規制するようにしたので、上段側コイルC2が浮きコイルとして多段積みされることを防止できる。また、コイルをグループ分けする必要がないので、コイルをスペース効率良く且つ容易に多段積みすることができる。
また、本実施例1では、上段側コイルC2が浮きコイルである場合に、置場管理コンピュータ5の浮きコイル報知手段11によってCR制御ユニット6に警告表示信号が送信され、CR制御ユニット6では警告表示装置として用いられる表示装置14に警告情報を表示してクレーン運転士に報知するようにしたので、運転士は浮きコイルの発生をより確実に把握することができる。
【0044】
2.実施例2
(1)多段積みシステムの構成
実施例2に係る多段積みシステム1は、CR制御ユニット6からコイルCの高さ位置情報zを取得することなく図1に示すように、クレーン2の吊具3に吊下げられた上段側コイルC2を浮かさないように、コイル置場Eに載置済みの隣接する一対の下段側コイルC1,C3に多段積みするためのシステムである。この多段積みシステム1は、実施例1と同様に、図2に示すように、置場管理コンピュータ5及びCR制御ユニット6を備えている。
【0045】
また、上記置場管理コンピュータ5は、後述する各種処理を実行するプログラムとして機能する第2位置情報取得手段7’、第2算出手段8’、第2判断手段9’、第2吊具開放規制手段10’及び浮きコイル報知手段11を備えている。この置場管理コンピュータ5には、コイル置場Eに載置されるコイルの半径情報、質量情報、水平位置情報、中心点高さ情報等が記憶されるデータベース12と接続されている。また、半径情報及び質量情報は、多段積みを行う前に予め記憶されている。
尚、CR制御ユニット6、第2位置情報取得手段7’及び表示装置14の構成及び作用は、実施例1と同様である。
【0046】
上記第2算出手段8’は、図8〜図11に示すように、上記第2位置情報取得手段7’で取得された上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の水平位置情報y1,y2,y3、上記データベース12に予め記憶された上段側及び下段側コイルC1,C2,C3の半径情報r1,r2,r3、並びにデータベース12に予め記憶された下段側コイルC1,C3の中心点高さ情報z1、z3に基づいて、上段側コイルC2の一対の仮想中心点高さz2、z2’を算出する処理を実行する。
具体的には、上段側コイルC2の下段側コイルC1に接している場合に対応する仮想中心点高さz2は、(r1+r2)2−(y2−y1)2の平方根と下段側コイルの高さz1との和として求められる。
また、上段側コイルC2の下段側コイルC3に接している場合に対応する仮想中心点高さz2’は、(r2+r3)2−(y3−y2)2の平方根と下段側コイルの高さz3との和として求められる。
【0047】
上記第2判断手段9’は、図12に示すように、吊具3に吊下げられた上段側コイルC2を隣接する一対の下段側コイルC1,C3に多段積みする際に、第2算出手段8’で得られた仮想中心点高さz2、z2’が上段側コイルC2の半径情報r2よりも小さいかどうかを判断する処理を実行する(ステップS7’を参照)。仮想中心点高さz2、z2’が半径情報r2よりも小さい又は等しい場合は、上段側コイルC2が1段目の平置きであることを意味するため、第2吊具開放規制手段10’を実行しない(ステップS8’を参照)。
また、仮想中心点高さz2、z2’が半径情報r2よりも大きい場合は、上段側コイルC2が2段目以上であるため、続けて第2算出手段8’で得られた仮想中心点高さz2、z2’が一致するか異なるか否かを判断する処理を実行する(ステップS9’を参照)。仮想中心点高さz2、z2’が一致する場合は、浮きコイルの状態ではないため、第2吊具開放規制手段10’を実行しない(ステップS10’を参照)。
【0048】
上記第2吊具開放規制手段10’は、上記第2判断手段9’によって仮想中心点高さz2、z2’が異なると判断された場合に(図9〜図11参照)、吊具3の開放動作を規制する処理を実行する(図4のステップS8参照)。具体的には、CR制御ユニット6へ吊具3の緊急停止起動信号を送信する。
【0049】
上記浮きコイル報知手段11は、上記第2判断手段9’によって仮想中心点高さz2、z2’が異なると判断された場合に、上段側コイルC2が浮きコイルであることをクレーン運転士に報知する処理を実行する(図4のステップS8参照)。具体的には、CR制御ユニット6の表示装置14へ浮きコイルの警告表示信号を送信して警告表示装置として機能させる。
【0050】
(2)多段積みシステムの作用
次に、上記多段積みシステム1の作用について説明する。
まず、置場管理コンピュータ5では、図12に示すように、クレーン2の巻き降ろし動作中に、CR制御ユニット6から吊具3への物品加重解除を取得した際に、CR制御ユニット6から吊具3に吊下げられた上段側コイルC2の水平位置情報y2が取得される(ステップS1’参照)。尚、その取得された水平位置情報y2はデータベース12に記憶される。
【0051】
次に、上段側コイルC2の水平位置情報y2から前後に隣接する範囲となる、半径情報r2の範囲の水平位置に、既に載置済みの下段側コイルがあるかどうかを判断する。この判断は、データベース12中の各コイルの水平位置情報y、高さ位置情報z及び半径情報rを取得し(ステップS2’参照)、その後、各コイルの水平載置範囲y±rと上段側コイルC2の水平載置範囲y2±r2とが重なっているかどうかを判断する(ステップS3’参照)。このとき重ならない場合は、載置されていないと判断する。尚、各水平載置範囲は、盤木等の床面の養生による補正、更に物品種類等により装備する保護具の厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮した値が用いられる。
上段側コイルC2の水平載置範囲と、全ての下段側コイルの水平載置範囲とが重ならなかった場合は、コイルC2が1段目に平置きされていると判断することができ、当該ロジックより離脱される(ステップS4’参照)。また、上段側コイルC2の半径情報r2を上段側コイルC2の高さ位置情報z2としてデータベース12に記憶され、更に上段にコイルを積載するときに用いられる。
【0052】
また、上段側コイルC2の水平載置範囲に重なる、前側の下段側コイルC1又は/及び後側の下段側コイルC3が、複数見つかった場合は、高さ位置情報zが最も大きなコイルを下段側コイルC1、C3とする(ステップS5’参照)。
【0053】
次いで、検出した一対の下段側コイルC1,C3に対する浮きコイル検証の処理を実行する(ステップS6’参照)。
始めに、上段側コイルC2の水平載置範囲の前後に、下段側コイルC1、C3が見つかった場合は、下段側コイルC1、C3の高さ位置情報z1、z3及び半径情報r1、r3をデータベース12から取得し、その後、下段側コイルC1の水平位置情報y1、高さ位置情報z1及び半径情報r1と、上段側コイルC2の水平位置情報y2及び半径情報r2とから高さ位置情報z2を求める。また、下段側コイルC3の水平位置情報y3、高さ位置情報z3及び半径情報r3と、上段側コイルC2の水平位置情報y2及び半径情報r2とから高さ位置情報z2’を求める。
【0054】
次いで、その算出された仮想中心点高さz2、z2’の一方又は両方が上段側コイルC2の半径情報r2よりも小さいかどうかを判断する(ステップS7’参照)。仮想中心点高さz2、z2’が上段側コイルC2の半径情報r2よりも小さい場合は、その上段側コイルC2は平置き(1段目)と判定され、当該ロジックより離脱される(ステップS8’参照)。また、上段側コイルC2の半径情報r2を上段側コイルC2の高さ位置情報z2としてデータベース12に記憶され、更に上段にコイルを積載するときに用いられる。
尚、この比較は、必要に応じて、物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正、更に厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して行われる。
【0055】
その後、算出された仮想中心点高さz2、z2’が一致するかどうかを判断する(ステップS9’参照)。この比較も、必要に応じて、物品種類等により装備する保護具等の厚さ補正、更に厚さ補正に加えて物品のゆがみ等の形状による誤差範囲を考慮して行われる。
そして、仮想中心点高さz2、z2’が一致する場合には、その上段側コイルC2は浮きコイルでないと判定され、当該ロジックより離脱される(ステップS10’参照)。また、上段側コイルC2の半径情報r2を上段側コイルC2の高さ位置情報z2としてデータベース12に記憶され、更に上段にコイルを積載するときに用いられる。
【0056】
一方、仮想中心点高さz2とz2’が異なる場合には、その上段側コイルC2は浮きコイルであると判定され、CR制御ユニット6へ吊具開放の緊急停止信号及び浮きコイルの警告表示信号が送信される(図4のステップS8参照)。その後の処理は実施例1と同様である(図4のステップS9〜S13参照)。
【0057】
(3)実施例2の効果
以上より、本実施例2の多段積みシステム1によると、CR制御ユニット6から取得された位置情報y2及び予め記憶されているデータベース12から取得された載置コイルの水平位置情報yと高さ位置情報z、並びに半径情報rに基づいて、まず、半径情報r2のみからの上段側コイルC2の仮想中心点高さを算出しその高さと、下段コイル側の中心高さz1及びz3と半径情報rに基づく上段側コイルC2の一対の仮想中心点高さz2とz2’を算出して、それらの比較で浮きコイルを判断するようにしたので、載置コイルの水平位置情報y及び高さ位置情報zと各コイルの半径情報rのみから算出して判定することができる。また、載置されたコイルの高さ位置情報zは、平置きされた1段目のコイルの半径情報から算出され、2段目以上も水平位置情報と半径情報から高さ位置は算定されている。従って、載置及び多段積みする際に、CR制御ユニット6から吊具3に吊下げられたコイルの高さ位置情報の取得を必要としないので、吊具3に吊下げられた上段側コイルC2が浮きコイルであるか否かをより簡単かつ高精度に判断することができる。
【0058】
尚、本発明においては、上記実施例1、2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1、2では、コイルを2段積みする際の2段目の浮きコイルを防止する形態を主に例示したが、これに限定されず、例えば、コイルを3段以上に多段積みする際の3段目以上の浮きコイルを防止するシステムとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
コイル状物品を多段積みする際の2段目以上での浮きコイルを防止する技術として広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1に係る多段積み作用を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る多段積みシステムを示すブロック図である。
【図3】実施例1に係る多段積みシステムの作用を説明するためのフローチャート図である。
【図4】実施例1に係る多段積みシステムの作用を説明するためのフローチャート図である。
【図5】実施例1に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図である。
【図6】浮きコイル状態を示す概略図である。
【図7】盤木によるコイルの支持を説明するための説明図である。
【図8】実施例2に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図であり、正常な状態を示す。
【図9】実施例2に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図であり、コイルC2がコイルC1側で浮いた状態を示す。
【図10】実施例2に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図であり、コイルC2がコイルC1側で浮いた状態を示す。
【図11】実施例2に係る浮きコイルの判断処理を説明するための説明図であり、コイルC2が1段目に平置きされている状態を示す。
【図12】実施例2に係る多段積みシステムの作用を説明するためのフローチャート図である。
【符号の説明】
【0061】
1;多段積みシステム、2;クレーン、3;吊具、5;置場管理コンピュータ、6;クレーン制御ユニット(CR制御ユニット)、7;第1位置情報取得手段、7’;第2位置情報取得手段、8;算出手段、8’;算出手段、9;第1判断手段、9’;第2判断手段、10;第1吊具開放規制手段、10’;第2吊具開放規制手段、11;浮きコイル報知手段、12;データベース、C2;上段側コイル、C1,C3;下段側コイル、Ca,Cb;中心間距離、r1+r2,r2+r3;半径の和、z2、z2’;仮想中心点高さ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の中心点間距離(Ca,Cb)が、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する第1判断手段と、
前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記吊具の開放動作を規制する第1吊具開放規制手段と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項2】
前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記上段側コイル状物品が浮きコイルであることを前記クレーンの運転士に報知する浮きコイル報知手段を更に備える請求項1記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項3】
前記第1判断手段は、床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して前記中心点間距離が前記半径の和を超えたか否かを判断する請求項1又は2に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項4】
前記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を取得する第1位置情報取得手段と、
コイル状物品の半径情報を予め記憶するコイル情報記憶手段と、
前記第1位置情報取得手段で取得された前記上段側コイル状物品及び前記下段側コイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報、並びに前記コイル情報記憶手段に記憶された前記上段側コイル状物品及び前記下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、前記中心点間距離及び前記半径の和を算出する第1算出手段と、を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項5】
クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該一対の下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さ(z2、z2’)が、一致するか否かを判断する第2判断手段と、
前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に前記吊具の開放動作を規制する第2吊具開放規制手段と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項6】
前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に、前記上段側コイル状物品が浮きコイルであることを前記クレーン運転士に報知する浮きコイル報知手段を更に備える請求項5記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項7】
前記第2判断手段は、床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが一致するか否かを判断する請求項5又は6に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項8】
前記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の中心点水平位置情報を取得する第2位置情報取得手段と、
前記コイル状物品の半径情報を予め記憶し、且つ該コイル状物品の中心点水平位置情報及び中心点高さ情報を記憶可能なコイル情報記憶手段と、
前記第2位置情報取得手段で取得された前記上段側コイル状物品の中心点水平位置情報、前記コイル情報記憶手段に記憶された前記一対の下段側コイル状物品の中心点水平位置情報及び中心点高さ情報、並びに上段側及び前記下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さを算出する第2算出手段を更に備える請求項5及至7のいずれかの一項に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル状物品の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法であって、
前記クレーンの吊具に吊下げられた前記上段側コイル状物品を隣接する一対の前記下段側コイル状物品に多段積みする際に、前記第1判断手段によって、前記中心点間距離(Ca,Cb)が前記半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する工程と、
前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記第1吊具開放規制手段によって前記吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積み方法。
【請求項10】
請求項5及至8のいずれか一項に記載のコイル状物品の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法があって、
前記クレーンの吊具に吊下げられた前記上段側コイル状物品を隣接する一対の前記下段側コイル状物品に多段積みする際に、前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なるか否かを判断する工程と、
前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に前記第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項1】
クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の中心点間距離(Ca,Cb)が、該上段側コイル状物品及び該下段側コイル状物品の半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する第1判断手段と、
前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記吊具の開放動作を規制する第1吊具開放規制手段と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項2】
前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記上段側コイル状物品が浮きコイルであることを前記クレーンの運転士に報知する浮きコイル報知手段を更に備える請求項1記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項3】
前記第1判断手段は、床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して前記中心点間距離が前記半径の和を超えたか否かを判断する請求項1又は2に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項4】
前記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報を取得する第1位置情報取得手段と、
コイル状物品の半径情報を予め記憶するコイル情報記憶手段と、
前記第1位置情報取得手段で取得された前記上段側コイル状物品及び前記下段側コイル状物品の高さ位置情報及び水平位置情報、並びに前記コイル情報記憶手段に記憶された前記上段側コイル状物品及び前記下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、前記中心点間距離及び前記半径の和を算出する第1算出手段と、を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項5】
クレーンの吊具に吊下げられた上段側コイル状物品を隣接する一対の下段側コイル状物品に多段積みする際に、該上段側コイル状物品及び該一対の下段側コイル状物品の半径及び中心点水平位置、並びに該下段側コイル状物品の中心点高さから算出される該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さ(z2、z2’)が、一致するか否かを判断する第2判断手段と、
前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に前記吊具の開放動作を規制する第2吊具開放規制手段と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項6】
前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に、前記上段側コイル状物品が浮きコイルであることを前記クレーン運転士に報知する浮きコイル報知手段を更に備える請求項5記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項7】
前記第2判断手段は、床面高低差や保護具の厚さ補正及び/又は各コイル状物品の形状による誤差範囲を考慮して前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが一致するか否かを判断する請求項5又は6に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項8】
前記クレーンの動作を制御するクレーン制御手段からコイル状物品の中心点水平位置情報を取得する第2位置情報取得手段と、
前記コイル状物品の半径情報を予め記憶し、且つ該コイル状物品の中心点水平位置情報及び中心点高さ情報を記憶可能なコイル情報記憶手段と、
前記第2位置情報取得手段で取得された前記上段側コイル状物品の中心点水平位置情報、前記コイル情報記憶手段に記憶された前記一対の下段側コイル状物品の中心点水平位置情報及び中心点高さ情報、並びに上段側及び前記下段側コイル状物品の半径情報に基づいて、該上段側コイル状物品の該一対の仮想中心点高さを算出する第2算出手段を更に備える請求項5及至7のいずれかの一項に記載のコイル状物品の多段積みシステム。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル状物品の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法であって、
前記クレーンの吊具に吊下げられた前記上段側コイル状物品を隣接する一対の前記下段側コイル状物品に多段積みする際に、前記第1判断手段によって、前記中心点間距離(Ca,Cb)が前記半径の和(r1+r2,r2+r3)を超えたか否かを判断する工程と、
前記第1判断手段によって前記中心点間距離が前記半径の和を超えたと判断された場合に、前記第1吊具開放規制手段によって前記吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積み方法。
【請求項10】
請求項5及至8のいずれか一項に記載のコイル状物品の多段積みシステムを用いるコイル状物品の多段積み方法があって、
前記クレーンの吊具に吊下げられた前記上段側コイル状物品を隣接する一対の前記下段側コイル状物品に多段積みする際に、前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なるか否かを判断する工程と、
前記第2判断手段によって、前記上段側コイル状物品の前記一対の仮想中心点高さが異なると判断された場合に前記第2吊具開放規制手段によって吊具の開放動作を規制する工程と、を備えることを特徴とするコイル状物品の多段積みシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−195535(P2008−195535A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191343(P2007−191343)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(594052674)豊田スチールセンター株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(594052674)豊田スチールセンター株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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