説明

コイル状部材の分離装置

【課題】コイルばねのような絡みやすいコイル状部材を、圧縮空気を用いることなく容易に分離し、簡易な構成で、経済性、環境性ともに良好な分離装置を実現する。
【解決手段】一端側にブロアファンFを接続した送風管2の途中に水平部21を設け、その下流に設けた垂直部22の上端に、分離板41を天井面とする分離部4を配置する。水平部21に垂直方向からコイルばねSの投入管路3を接続して、傾斜壁形状の先端部31を水平部21内に突出させ、先端の合流口32を下流に向けて開口することで、合流口32近傍に発生する吸い込み力によってコイルばねSを水平部21から垂直部22へ向けて吸引搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルばねのような絡みやすいコイル状部材を分離して移送するための分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組立ライン等に供給されるコイルばねの絡みを解きほぐし、組付作業を容易にするために分離装置が用いられる。従来技術として、特許文献1のばね分離装置は、前後に開口した吹抜通路に圧縮空気を噴出するノズルを設け、出口側の開口に連通させて設けた分離室に、噴出する空気とばねとを分離する多数の透孔を設けた分離板を配置している。吹抜通路は上下方向に形成され、ノズル下方の入口側開口に、パーツフィーダの排出口に続くU字形状の吸引ホースを接続し、出口側の開口から上方に、圧縮空気とばねが噴出するようにして、分離板にばねを衝突させて分離する。
【0003】
また、特許文献2には、ばねを分離する衝突面部を備えた筐体と、筐体底部に設けられて、絡みついたばねを振動により進行方向へ揃えるばね通路と、ばね通路の底面に設けられて、ばね通路を流れる絡みついたばねを、衝突面部へ衝突させるばね衝突手段を備えたばね分離装置が開示されている。ばね衝突手段は、例えば、ばね通路の底面に圧縮空気吹き出し口を形成し、吹き出し口を通過するばねを吹き上げて、直上の衝突面部へ衝突させるようになっている。また、ばね通路の進入側と排出側に圧縮空気供給口を設けて、ばねの送り速度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−93119号公報
【特許文献2】特許第3579521号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される装置は、吸引ホースから吹抜通路の上方へ向かう強い空気流を形成するために、圧縮空気を作動源とする高速・大風量の吸引搬送装置を必要とする。この吸引搬送装置は、図8に示すように、本体101に続く配管内部を吹抜通路の一部とし、本体101側面に接続する供給ノズル102に圧縮空気を供給することにより、吹抜通路に吸引・吐出流を創出して、真空吸引を行ない、部品搬送を行う。供給ノズル102には、作動原となる圧縮空気を作るエアーコンプレッサーを接続する必要があり、エアー消費量すなわちエネルギー消費量が多くなる上、騒音も大きい。
【0006】
特許文献2に記載される装置は、圧縮空気の供給を必要とする点で、特許文献1の装置と同様の問題がある。また、圧縮空気吹き出し口に加えて、進入側および排出側にもそれぞれ圧縮空気供給口を設けているため、エアー消費量が増加する。しかも、絡みついたばねを分離しやすくするために、進入側では圧縮空気吹き出し口へ向けてばねの流れを遅くし、圧縮空気吹き出し口の直上をばねがゆっくり通過する方がよく、処理速度が遅くなる。一方、排出側では溜まったばねを排出するために、ばねの流れを速めており、進入側と排出側でそれぞればねの送り速度を調整する機構が必要となって、装置構成が複雑となりやすい。
【0007】
このように、従来の装置は、大量の圧縮空気を用いて分離・搬送を行っており、エネルギー消費量が多く、装置コストおよび運転コストが増加する。また、近年、環境対策としてCO排出量の削減が求められているが、エネルギー消費量が多くなるのに伴いCO排出量が大きくなる問題がある。
【0008】
そこで、本願発明は、コイルばねのような絡みやすいコイル状部材を、圧縮空気を用いることなく容易に分離することができ、簡易な構成で、経済性、環境性ともに良好な分離装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、コイル状部材の分離装置であって、
一端側にブロアファンを接続した送風管の途中に水平部を設け、該水平部の下流に、他端側に配置した分離板へ向けて上方向へ延びる垂直部を設けるとともに、
上記水平部となる管壁に、コイル状部材の投入管路を上方から接続して、該投入管路の先端部を、上記水平部内に突出位置させ、かつ、該先端部を、上記水平部内の流れの上流側ほど突出長さが長くなる傾斜壁形状として、該傾斜壁の先端に形成されるコイル状部材の合流口を下流に向けて開口させ、該合流口近傍に発生する吸い込み力によってコイル状部材を上記水平部から上記垂直部へ向けて吸引搬送することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明において、上記送風管は、上記垂直部の他端側に、上記分離板を天井面とする分離部を備え、上記垂直部を上昇する流れとともにコイル状部材を上記分離板に衝突させた後、上記分離部の側面に開口する搬送通路へ送出する。
【0011】
本発明の請求項3に記載の発明において、上記コイル状部材の投入管路は、上記水平部に対して垂直方向に接続し、上記水平部内に突出して上記合流口となる上記先端部の先端開口面を、上記投入管路と直交する面に対して傾斜する面とする。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明における上記先端開口面の、上記投入管路と直交する面に対する傾斜角度を、10〜30度の範囲に設定する。
【0013】
本発明の請求項5に記載の発明において、上記コイル状部材の投入管路は、上記水平部に対して垂直方向より上流側に傾斜して接続し、上記水平部内に突出して上記合流口となる上記先端部の先端開口面を、上記投入管路と直交する面とする。
【0014】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明における上記コイル状部材の投入管路の、上記水平部の垂直方向に対する傾斜角度を、10〜30度の範囲に設定する。
【0015】
本発明の請求項7に記載の発明は、上記コイル状部材の投入管路の側方に、コイル状部材の収容部を設け、該収容部内のコイル状部材を上記投入管路の基端側に供給する供給手段を設ける。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1の分離装置において、ブロアファンに通電すると、送風管内に一端側から他端側へ向かう空気流が形成される。送風管の水平部内には投入管路の先端部が突出しており、先端部を下流に向けて開口する傾斜壁形状とすることで、合流口近傍に吸い込み力を発生させることができる。このエジェクタ効果により、投入管路から落下するコイル状部材の吹き戻しを生じることなく、合流口から速やかに垂直部方向へ吸引搬送し、他端側の分離板に衝突させて、絡み合ったコイル状部材を分離することができる。
【0017】
本発明の分離装置は、ブロアファンを用いて効率的にコイル状部材を搬送することができ、圧縮エアを用いない簡易な構成で、容易にコイル状部材を分離することができる。よって、エネルギー消費量、CO排出量を削減することができ、経済性、環境性に優れる。
【0018】
本発明の請求項2に記載の発明のように、好適には、垂直部に続く分離部を設けて、その天井面を分離板とすることができる。これにより、コイル状部材を送風管内の空気流とともに垂直部から分離部へ上昇させ、天井面の分離板によって容易に分離することができる。また、側面に開口する搬送通路を設けることで、分離したコイル状部材を、供給ライン等へ容易に搬送供給することができる。
【0019】
本発明の請求項3に記載の発明のように、具体的には、投入管路を水平部に対して垂直に接続し、投入口から垂直に落下させることができる。この時、投入管路の先端を傾斜面として下流へ向けて配置すれば、上流側の傾斜壁が抵抗となって、合流口近傍に吸い込み力を発生させることができる。
【0020】
本発明の請求項4に記載の発明のように、投入管路は、より具体的には、傾斜する先端開口面と投入管路と直交する面のなす角度が10〜30度の範囲にあると、エジェクタ効果により合流口に吸い込み力を発生させる効果が高い。
【0021】
本発明の請求項5に記載の発明のように、投入管路を水平部に垂直に接続せず、垂直方向に対して上流側に傾斜させて配置することもできる。この場合は、先端開口面を投入管路のと直交する面とすれば、下流へ向けて合流口を配置することができ、また、上流側の傾斜壁が抵抗となって、合流口近傍に吸い込み力を発生させることができる。
【0022】
本発明の請求項6に記載の発明のように、投入管路は、より具体的には、水平部の垂直方向に対して傾斜角度が10〜30度の範囲にあると、エジェクタ効果により合流口に吸い込み力を発生させる効果が高い。
【0023】
本発明の請求項7に記載の発明のように、投入管路の側方にコイル状部材の収容部を設けると、供給手段により投入管路の基端側にコイル状部材を供給し、投入管路内を落下させて、容易に先端側の合流口から、送風管内へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態における分離装置の全体斜視図であり、(b)は、(a)の要部断面図である。
【図2】(a)は、第1実施形態の分離装置の平面図、(b)、(c)は、第1実施形態の分離装置の側面図である。
【図3】(a)、(b)は、第1実施形態の分離装置の効果を説明するための模式的な図であり、(c)は、第1実施形態の要部断面図である。
【図4】(a)は、本発明の第2実施形態における分離装置の要部断面図であり、(b)は、(b)は、投入管路の接合角度と吹き戻しの関係を示す図、(c)は、第2実施形態の分離装置の効果を説明するための模式的な図である。
【図5】本発明の第3実施形態における分離装置の全体斜視図である。
【図6】(a)は、第3実施形態の分離装置の側面図、(b)は、第3実施形態の分離装置の平面図である。
【図7】(a)は、本発明の分離装置のエアー消費量に対する効果を説明するための図であり、(b)は騒音に対する効果を説明するための図である。
【図8】従来の分離装置において用いられる圧縮空気を用いる吸引搬送装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の第1実施形態となるコイル状部材の分離装置1について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の分離装置1の全体構成を示す図であり、図2に、その平面図および側面図を示す。本発明で対象とするコイル状部材は、例えば、図1(b)に示すコイルばねSであり、線材が螺旋状に巻かれた形状であるために、絡みや重なりが生じやすい。なお、本発明の分離装置1は、同様の形状を有するコイル状部材であれば、コイルばね以外のいずれにも好適に使用することができる。
【0026】
図1(a)において、分離装置1は、ブロアファンFに接続される送風管2と、送風管2の途中に接続されるコイルばねSの投入管路3と、分離板41を備える分離部4を有している。また、投入管路3にコイルばねを供給する供給部5が設けられる。供給部5は、テーブルT上に載置されるコイルばね収容部51を有し、テーブルTの下方にブロアファンFが設置される。送風管2は、一端側(図の下端側)が、ブロアファンFに接続され、他端側(図の上端側)が、分離部4に接続される。
【0027】
電気式のブロアファンFは、図示しない電源に接続されるモータによってファンを回転させ、背面側の空気を吸引して送風管2内に所定の風量で送風する。図2(b)、(c)に示すように、送風管2は、テーブルTの下方でブロアファンFに接続され、テーブルTを垂直方向に貫通した後、水平方向に湾曲して、テーブルT上面と平行に延びる水平部21を形成する。送風管2は、水平部21の下流側で再び垂直方向に湾曲し、分離部4へ向けて上方向へ延びる垂直部22を形成する。
【0028】
分離部4は、天井面を分離板41とする箱状体で、底面42の中央に送風管2の垂直部22が接続している。分離板41は、送風逃がしのため、板面に多数の通孔を有する多孔板で構成され、これによって垂直部22を上昇する空気流が分離板41を通過して、外部に排出可能となっている。本発明では、コイルばねSを送風によって舞い上がらせて、空気流とともに垂直部22を上昇する分離板41に衝突させ、絡み合ったコイルばねSを分離することができる。
【0029】
分離部4は、一側面が開口して、斜め下方へ延びる搬送シュート43が一体的に設けられている。また、分離部4の底面42は、搬送シュート43へ向けて下り傾斜する傾斜面となっている。これにより、分離されたコイルばねSが落下すると、底面42の傾斜面を下って、搬送シュート43から搬送路44へ移送される。これら搬送シュート43および搬送路44が、搬送通路を形成している。
【0030】
図1に示す本実施形態において、投入管路3は、円筒容器状のコイルばね収容部51の側方に、垂直方向(図の上下方向)に配置される。投入管路3の基端側(図の上端側)開口には、コイルばねSの投入口52が取り付けられ、投入口52の周縁部には、コイルばね収容部51側の一部を除いて立壁が設けられている。これにより、コイルばね収容部51に収容されるコイルばねSが、投入口52から投入管路3の基端側開口へ案内され、投入管路3内を落下するように形成されている。
【0031】
図2(a)〜(c)に示すように、投入口52は、コイルばね収容部51の上端縁部から外周方向へ突出して設けられ、投入管路3の基端部の直上に位置する。供給部5は、供給手段として、コイルばねSが収容される収容部51底面を、駆動部53にて昇降可能に設けており、これによりコイルばね収容部51の底面上昇時に、一度に複数のコイルばねSを投入口52へ供給することができる。
【0032】
投入管路3の先端側(図の下端側)は、投入口52の下方へ垂直方向に延び、送風管2の水平部21の略中央部に、上方から接続している。この接続部の断面構造を、図1(b)に拡大して示す。本発明では、投入管路3の先端部31を、送風管2の管壁を貫通して水平部21内に突出させるとともに、先端が斜めに傾斜する形状としている。具体的には、先端開口面をコイルばねの合流口32として、軸と直交する断面に対して傾けた傾斜面とし、送風管2の水平部21を流れる空気流の下流側を向くように配置する。傾斜角度αは、好適には10度〜30度の範囲で適宜設定するのがよい。この数値範囲については、後述する。
【0033】
この時、先端部31を形成する管路壁33は、水平部21内の流れの上流側ほど突出長さが長くなる傾斜壁形状となる。この管路壁33がコイルばねSの合流口32を取り囲んで、背面からの空気流に対する抵抗となり、先端部31近傍に負圧を発生させて、合流口32から下流へコイルばねSを吸い込み可能とする。これにより、投入管路3に投入されるコイルばねSを、送風管2内の流れに合流させて分離部4へ送ることができる。
【0034】
次に、図3を参照しながら、本発明の分離装置1の作動について説明する。図1、2に示した分離装置1において、ブロアファンFに通電すると、送風管2内に水平部21を通過して、垂直部22から分離部4へ向かう空気流が形成される。一方、コイルばねSの供給部5は、コイルばね収容部51の底面が駆動部53によって昇降動作を繰り返すのに伴い、収容されるコイルばねSを、上端部外周の投入口52に順次移送し、投入管路3に供給する。
【0035】
この動作により、複数のコイルばねSが投入管路3にまとめて投入され、投入管路3内を落下する。ここで、図3(a)に示すように、送風管2の水平部21の管壁に、垂直な投入管路3を接続した構成では、送風管2内の強い流れ(例えば、23m/s)に、比較的小型で軽いコイルばねSが押し上げられて、管内に吹き戻し(例えば、4.6m/s)が生じることが判明した。つまり、空気流とともにコイルばねSを分離部3に移送するには、送風管2内に十分強い風の流れを形成する必要があるが、投入管路3を単純に接続しただけでは、接続部にコイルばねSが滞留し、詰まってしまうことになる。
【0036】
そこで、本発明の構成では、図3(b)に示すように、投入管路3の先端部31を斜めに切断した形状として、送風管2の水平部21から内部に突出させる。先端の合流口32は、例えば15度程度傾斜させて、流れの下流側を向くように配置される。この時、図示するように、合流口32の背面側に位置する管路壁33によって、送風管2内の流れが矢印で示すように迂回し、合流口32付近に負圧が発生することで吸い込み力を生み出す。このエジェクタ効果によって、コイルばねSの吹き戻し現象がなくなり、図3(a)と同じ風速条件で吸い込み(例えば、3.7m/s)が生じるために、コイルばねSの詰まりも解消される。
【0037】
具体的には、図3(c)のように、投入管路3の合流口32の傾斜角度αが10度〜30度の範囲であれば、同様にエジェクタ効果による吸い込み力を発生させ、コイルばねSを吸引搬送することができる。また、送風管2のパイプ径a(例えば、φ60mm程度)に対して、投入管路3のパイプ径bは、より小径であるとよい(例えば、φ40mm程度)。投入管路3の先端部31は、送風管2内の流れを過度に妨げないように、最大突出長cが設定されるとよく、通常は、送風管2の半径より短く設定される(例えば、15mm程度)。これらの関係を適切に設定することにより、圧縮エアを用いずに、ブロアファンFによる送風のみで、比較的強い風速の空気流(例えば、20m/s前後)を形成することができる。
【0038】
送風管2の水平部21内に吸引されたコイルばねSは、十分強い空気流によって垂直部22を上昇し、分離部4の分離板41に衝突する。これにより、複数のコイルばねSが絡みあったまま搬送されても、容易に絡みをほぐすことができる。落下したコイルばねSは分離部4の底面42に沿って、搬送シュート43から搬送路44へ移動する。このようにして、容易かつ効果的にコイルばねSを分離することができる。
【0039】
図4は、本発明の第2実施形態であり、送風管2の水平部21に接続される投入管路3の接続構造のみ、上記第1実施形態と異なっている。それ以外の構造は、第1実施形態と同様であり、説明を省略する。本発明では、上述したように、投入管路3の先端部31が、水平部21内に突出し、管路壁33が空気流の上流側ほど突出長さが長くなる傾斜壁形状であれば、同様の効果が得られる。したがって、投入管路3は、必ずしも軸と垂直に接続される必要はなく、本実施形態では、図4(a)に示すように、投入管路3自体を傾斜させている。
【0040】
本実施形態においても、投入管路3は、水平部21に上方から接続されるが、水平部21の軸と垂直な方向に対して、流れの上流側に傾けて接続し、合流口32となる先端開口面が流れの下流側を向くようにする。本実施形態では、投入管路3の先端開口面を、投入管路3の軸と直交する面としており、傾斜面とはしていない。これにより、送風管2の水平部21内に突出する先端部31が、上流側に傾斜する管路壁33を有する形状となり、先端開口面にて形成される合流口32の近傍に、エジェクタ効果により吸い込み力を発生させることができる。供給部5、分離部4その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0041】
したがって、供給部5から投入口52に投入されるコイルばねSを、合流口32から水平部21へ吸引し、垂直部22を経て分離部4へ向かう空気流によって、分離板41に衝突させることができる。この場合も、水平部21の軸と垂直な方向に対する、投入管路3の傾斜角度αは、10度〜30度の範囲に設定されるのがよい。この時、第1実施形態と同様に、ブロアファンFによる送風で、エジェクタ効果が得られる。例えば、送風管2内の風の流れが23m/sである時、図4(c)の右図に示すように、傾斜角度αを15度とすることで、合流口32の近傍に吸い込み力(例えば、3.7m/s)を発生させ、速やかにコイルばねSを吸引搬送することができる。
【0042】
図4(b)は、第2実施形態の構成において、投入管路3を水平部21に接続する際の傾斜角度と管路径を変更して、吹き戻しの発生への影響を調べたものである。図示するように、送風管2のパイプ径a(φ60)に対して、投入管路3のパイプ径bが小さくなるほど(φ60〜φ40)、あるいは水平部21の軸直方向に対する傾斜角度が大きくなるほど(0度〜20度)、吹き戻しが小さくなっている。特に、傾斜角度が10度以上であれば、投入管路3のパイプ径bがφ40と送風管2のパイプ径aの2/3程度に設定することで、先端部31付近に負圧が発生することが確認された。
【0043】
ここで、図4(c)の左図は、第2実施形態の構成において、送風管2の水平部21内に先端部31を突出させない場合であり、投入管路3の傾斜角度αが15度の時、エジェクタ効果による吸い込み力は1m/sであった。これに対し、同一条件において、先端部31を突出させた本実施形態の構成では、図4(c)の右図に示すように、吸い込み力が3.7m/sと増大している。このように、投入管路3を傾斜させて接続し、さらに、先端部31を送風管2内に突出する傾斜壁形状とすることで、吹き戻しをなくし、十分な吸い込み力を得ることができる。
【0044】
図5、6は、本発明の第3実施形態における分離装置であり、供給部5および搬送通路の構成が異なっている。それ以外の構造は、第1実施形態と同様であり、説明を省略する。本実施形態において、供給部5のコイルばね収容部51は、直方体容器状で、容器底面54を振動発生装置55にて振動させることにより、収容するコイルばねSを徐々に移動させる構成となっている。
【0045】
コイルばね収容部51の一端側(図の左端側)には、供給手段としての昇降部6が設けられる。図6(a)、(b)に示すように、昇降部6の上面61は、底面54の一部となるとともに、一端側(図の左端側)に向けて傾斜する傾斜面となっており、図示しないエアシリンダ等の公知の昇降機構により上下動可能に構成されている。上面61は、最上部位置にて、投入管路3の基端開口に取り付けた投入口52の側方に位置し、コイルばねSを投入口52へ供給する機能を有する。投入口52には、開口周縁部を囲う立壁が、昇降部6の上面61に面する位置を除いて形成されている。
【0046】
投入管路3の形状は、上記第1実施形態と同様で、送風管2の水平部21の上方から垂直方向に接続し、先端部31が水平部21内に突出している。先端部31は、先端開口面が投入管路3の軸と直交する面に対して傾斜して、水平部21の流れの下流を向く合流口32となり、その上流側を囲う傾斜壁形状の管路壁33を有している。したがって、合流口32近傍に負圧が発生し、エジェクタ効果による吸い込み力で投入管路3に投入されたコイルばねSが、合流口32から水平部21内に吸い込まれる。そして、空気流とともに垂直部22から分離部6に導入させ、絡み合ったコイルばねSを分離板41に衝突させて、分離することができる。
【0047】
また、本実施形態では、分離部4側方に設けた搬送シュート43の下端開口に続く搬送路44を直線状とし、コイルばね収容部51の長辺上端縁部に沿って配置している。したがって、分離部4を通過した後、搬送路44の一端側から他端側へ整列搬送される間に、重なったり絡み合ったりして搬送路44からはみ出したコイルばねSを、コイルばね収容部51の振動と自重でコイルばね収容部51に落下させることができる。落下したコイルばねSは、コイルばね収容部51内のコイルばねSとともに、再び送風管2へ供給される。
【0048】
このような構成とすることで、ブロアファンFによる送風のみで、より効率的にコイルばねSを分離部4に供給し、分離したコイルばねを、搬送シュート43および搬送路44からなる搬送通路を経て、次工程へ1個ずつ整列させて送出することができる。
【0049】
以上のように、本発明によれば、圧縮空気を用いずに、コイルばねSを送風管2の空気流に乗せて搬送することができる。すなわち、図7(a)、(b)に示すように、エアー消費量(年間)を0にすることができ、かつ騒音を低減することができる。したがって、エネルギー消費量が大幅に削減され、CO排出量の削減による環境性の向上が期待できる。
【0050】
上記実施形態では、本発明の分離対象となるコイル状部材をコイルばねSとしたが、線材を螺旋状に巻いた形状のコイル状部材であれば、同様の効果が得られる。さらにコイル状部材に限らず、絡みや重なりが生じやすい形状の小型部品の分離にも好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の分離装置を採用することで、絡みや重なりが生じやすいコイル状部材を、詰まりを生じることなく送風管へ合流させ、容易に分離部へ搬送して分離できる。よって、効率よい部品供給が可能であり、各種製品の製造工程に利用されて、生産性の向上に大きく寄与するすることができる。
【符号の説明】
【0052】
F ブロアファン
S コイルばね(コイル状部材)
T テーブル
1 分離装置
2 送風管
21 水平部
22 垂直部
3 投入管路
31 先端部
32 合流口
33 管路壁
4 分離部
41 分離板
42 底面
43 搬送シュート(搬送通路)
44 搬送路(搬送通路)
5 供給部
51 コイルばね収容部(収容部)
52 投入口
53 駆動部
54 底面
55 振動発生装置
6 昇降部(供給手段)
61 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にブロアファンを接続した送風管の途中に水平部を設け、該水平部の下流に、他端側に配置した分離板へ向けて上方向へ延びる垂直部を設けるとともに、
上記水平部となる管壁に、コイル状部材の投入管路を上方から接続して、該投入管路の先端部を、上記水平部内に突出位置させ、かつ、該先端部を、上記水平部内の流れの上流側ほど突出長さが長くなる傾斜壁形状として、該傾斜壁の先端に形成されるコイル状部材の合流口を下流に向けて開口させ、該合流口近傍に発生する吸い込み力によってコイル状部材を上記水平部から上記垂直部へ向けて吸引搬送することを特徴とするコイル状部材の分離装置。
【請求項2】
上記送風管は、上記垂直部の他端側に、上記分離板を天井面とする分離部を備え、上記垂直部を上昇する流れとともにコイル状部材を上記分離板に衝突させた後、上記分離部の側面に開口する搬送通路へ送出する請求項1記載のコイル状部材の分離装置。
【請求項3】
上記コイル状部材の投入管路は、上記水平部に対して垂直に接続し、上記水平部内に突出して上記合流口となる上記先端部の先端開口面を、上記投入管路と直交する面に対して傾斜する面とする請求項1または2記載のコイル状部材の分離装置。
【請求項4】
上記先端開口面の、上記投入管路と直交する面に対する傾斜角度を、10〜30度の範囲に設定する請求項3記載のコイル状部材の分離装置。
【請求項5】
上記コイル状部材の投入管路は、上記水平部の垂直方向に対して上流側に傾斜して接続し、上記水平部内に突出して上記合流口となる上記先端部の先端開口面は、上記投入管路と直交する面とする請求項1または2記載のコイル状部材の分離装置。
【請求項6】
上記コイル状部材の投入管路の、上記水平部の垂直方向に対する傾斜角度を、10〜30度の範囲に設定する請求項5記載のコイル状部材の分離装置。
【請求項7】
上記コイル状部材の投入管路の側方に、コイル状部材の収容部を設け、該収容部内のコイル状部材を上記投入管路の基端側に供給する供給手段を設ける請求項1ないし6のいずれか1項に記載のコイル状部材の分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−43709(P2013−43709A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180506(P2011−180506)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】