説明

コイル装置および磁気共鳴イメージング装置

【課題】血流を高信号で取得する。
【解決手段】受信コイル30および送信コイル40を有するコイル装置を備える。コイル装置のコイル筐体に、ピニオン27および28を設け、コイル装置の送信コイル40に、ピニオン27および28に歯合するラック43および44を設ける。動力発生源は、中央処理装置の制御を受けて、ピニオン27および28を回転させるための信号を生成する。この信号によって、ピニオン27および28を回転させ、送信コイル40を、初期位置Pから距離Dだけ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体にRFパルスを送信するコイル装置および磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血流を撮影する方法として、TOF(Time Of Flight)法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-090061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TOF法では、RFパルスの影響を受けていない血流を励起面に流入させ、励起面から信号を収集する。励起面に流入した血流は高信号となるが、励起面内の背景組織は低信号となるので、背景組織が抑制され血流が描出された画像を得ることができる。
【0005】
しかし、実際には、血流は励起面に流入するまでに、RFパルスの影響を受けてしまい、血流信号が低下してしまうことがある。この場合、血流と背景組織とのコントラストが小さくなってしまい、画質が劣化してしまうという問題がある。したがって、血流信号ができるだけ低下しないようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、被検体にRFパルスを送信する送信コイルと、前記被検体から磁気共鳴信号を受信する受信コイルと、を有するコイル装置であって、前記送信コイルは、移動可能に構成されている、コイル装置である。
【0007】
本発明の第2の態様は、被検体にRFパルスを送信する送信コイルを内蔵するマグネットを備えた磁気共鳴イメージング装置であって、前記送信コイルは、移動可能に構成されている、磁気共鳴イメージング装置である。
【発明の効果】
【0008】
送信コイルを移動可能にすることにより、血流の撮影に適した位置に送信コイルを移動させることができ、血流を高信号で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の形態のコイル装置を備えた磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【図2】コイル装置100の斜視図である。
【図3】コイル装置100の側面図である。
【図4】コイル部2の斜視図である。
【図5】コイル部2の分解斜視図である。
【図6】コイル筐体20の断面図である。
【図7】送信コイル40を図5に示すラインLで分断し、平面状に展開した図である。
【図8】コイル部2の断面図である。
【図9】送信コイル40を移動させたときの様子を示す図である。
【図10】被検体の撮影に使用されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【図11】被検体の頭部にコイル装置100が設置された様子を示す図である。
【図12】被検体がボアに搬送された様子を示す図である。
【図13】設定された撮影スラブSLを示す図である。
【図14】送信パルスRFの影響を受ける領域を概略的に示す図である。
【図15】送信コイル40を初期位置Pからずらしたときの様子を示す図である。
【図16】第2の形態のコイル部の分解斜視図である。
【図17】コイル筐体20Aの断面図である。
【図18】送信コイル40Aを図16に示すラインLで分断し、平面状に展開した図である。
【図19】コイル部2の断面図である。
【図20】送信コイル40Aを移動させたときの様子を示す図である。
【図21】第3の形態のコイル部の分解斜視図である。
【図22】第4の形態のコイル部の分解斜視図である。
【図23】コイル筐体20Bの断面図である。
【図24】コイル部2の断面図である。
【図25】送信コイル40Bを移動させたときの様子を示す図である。
【図26】第4の形態におけるコイル筐体20Cの斜視図である。
【図27】図1に示すMRI装置50とは別の構造のMRI装置50Aを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態のコイル装置を備えた磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【0011】
磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」と呼ぶ。MRI:Magnetic Resonance Imaging)50は、マグネット51、テーブル52、動力発生源53、コイル装置100などを有している。
【0012】
マグネット51は、超伝導コイル51aと、勾配コイル51bと、RFコイル51cとを有している。超伝導コイル51aは静磁場B0を印加し、勾配コイル51bは勾配磁場を印加し、RFコイル51cはRFパルスの送信と被検体61の磁気共鳴信号の受信とを行う。また、マグネット51はボア51dを有しており、ボア51dの中に被検体61が収容される。
【0013】
テーブル52は、クレードル52aを有している。クレードル52aは、ボア51d内に移動できるように構成されている。クレードル52aによって、被検体61はボア51dに搬送される。
【0014】
コイル装置100は、被検体61の頭部に取り付けられている。コイル装置100は、RFパルスの送信と、被検体61からの磁気共鳴信号の受信とを行う。コイル装置100については、後に詳しく説明する。
【0015】
動力発生源53は、テーブル52に内蔵されている。動力発生源53は、コイル装置100の送信コイル40(例えば図11(b)参照)を移動させるための動力を発生する。
【0016】
MRI装置50は、更に、シーケンサ54、送信器55、勾配磁場電源56、受信器57、中央処理装置58、操作部59、および表示部60を有している。
【0017】
シーケンサ54は、中央処理装置58の制御を受けて、被検体61を撮影するための情報を送信器55および勾配磁場電源56に送る。
【0018】
送信器55は、シーケンサ54から送られた情報に基づいて、送信コイル51cおよびコイル装置100の送信コイル40(例えば、図5参照)を制御する制御信号を出力する。
【0019】
勾配磁場電源56は、シーケンサ54から送られた情報に基づいて、勾配コイル51bを制御する制御信号を出力する。
【0020】
受信器57は、マグネット51のRFコイル51c又はコイル装置100で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、信号処理により得たれたデータを中央処理装置58に出力する。
【0021】
中央処理装置58は、動力発生源53、シーケンサ54、表示部60などに必要な情報を伝送したり、受信器57から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MRI装置50の各種の動作を実現するように、MRI装置50の各部の動作を制御する。中央処理装置58は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。
【0022】
操作部59は、オペレータ62により操作され、種々の情報を中央処理装置58に入力する。表示部60は種々の情報を表示する。
【0023】
MRI装置50は、上記のように構成されている。次に、コイル装置100について説明する。
【0024】
図2は、コイル装置100の斜視図、図3は、コイル装置100の側面図である。
コイル装置100は、コイル装置100の土台となる基部1を有している。基部1には、送信コイルおよび受信コイルを有するコイル部2が取り付けられている。また、基部1には、被検体の頭部を支持する支持部3が取り付けられている。
【0025】
図4は、コイル部2の斜視図、図5は、コイル部2の分解斜視図である。
コイル部2は、円筒形状に構成されている。コイル部2は、図5に示すように、コイル筐体20と、受信コイル30と、送信コイル40とを有している。コイル筐体20は、受信コイル30および送信コイル40が収容できるように構成されている。
【0026】
図6は、コイル筐体20の断面図である。
図6(a)は、z軸に垂直な面F1でコイル筐体20を分断したときの断面図、図6(b)は、x軸に垂直な面F2でコイル筐体20を分断したときの断面図である。
【0027】
コイル筐体20は、内側壁21と、中間壁22と、外側壁23とを有している。内側壁21で囲まれた空間24は、被検体の頭部を収容するための収容空間を形成している。内側壁21と中間壁22とに挟まれる空間25は、受信コイル30を収容するための受信コイル収容空間を形成している。中間壁22と外側壁23とに挟まれる空間26は、送信コイル40を収容するための送信コイル収容空間を形成している。また、中間壁22には、2つのピニオン27および28が備えられている。ピニオン27および28は、それぞれ、送信コイル40のラック43および44(図5参照)に歯合するように構成されているものである。
コイル筐体20は、上記のように構成されている。
【0028】
図5に戻って説明を続ける。
コイル部2は、コイル筐体20の他に、受信コイル30および送信コイル40を有している。
【0029】
受信コイル30は、受信コイル支持体31と、コイル導体32とを有している。受信コイル支持体31は、コイル導体32を支持するものであり、円筒形状に構成されている。コイル導体32は、受信コイル支持体31の外面31aに形成されている。
【0030】
送信コイル40は、送信コイル支持体41と、コイル導体42とを有している。
送信コイル支持体41は、コイル導体42を支持するものであり、円筒形状に構成されている。コイル導体42は、送信コイル支持体41の外面41aに形成されている。また、送信コイル支持体41の内面41bには、2つのラック43および44が形成されている(図7参照)。
【0031】
図7は、送信コイル40を図5に示すラインLで分断し、平面状に展開した図である。図7では、送信コイル支持体41の内面41bが示されている。
【0032】
ラック43および44は、それぞれ、コイル筐体20のピニオン27および28(図6参照)に歯合するように構成されているものである。ラック43および44は、送信コイル40の前端面41cから後端面41dにまで延在するように形成されている。
【0033】
受信コイル30および送信コイル40をコイル筐体20(図6参照)に収容することによって、コイル部2が構成される。
【0034】
図8は、コイル部2の断面図である。
図8(a)は、z軸に垂直な面F1でコイル部2を分断したときの断面図、図8(b)は、x軸に垂直な面F2でコイル部2を分断したときの断面図である。
【0035】
受信コイル30は、コイル筐体20の受信コイル収容空間25に収容されており、コイル筐体20の内側壁21に固定されている。
【0036】
送信コイル40は、コイル筐体20の送信コイル収容空間26に収容されている。送信コイル40のラック43および44は、それぞれ、コイル筐体20のピニオン27および28に歯合している。ピニオン27および28は、動力発生源53(図1参照)の動力によって正回転および逆回転するように構成されている。ピニオン27および28が正回転すると、送信コイル40は、z方向に移動し、ピニオン27および28が逆回転すると、送信コイル40は、−z方向に移動する(図9参照)。
【0037】
図9は、送信コイル40を移動させたときの様子を示す図である。
図9(a)は、送信コイル40が初期位置Pに位置しているときの図、図9(b)は、送信コイル40を位置Pに移動させたときの図である。
【0038】
ピニオン27および28が正回転すると、送信コイル40がz方向に移動する。送信コイル40の移動距離Dは、ピニオン27および28の回転数によって調整することができる。ピニオン27および28を逆回転させると、送信コイル40を初期位置Pに戻すことができる。
【0039】
尚、コイル筐体の外側壁23と、送信コイル40のコイル導体42との間には、隙間が設けられている。したがって、コイル導体42に損傷を与えずに、送信コイル40を移動させることができる。
コイル装置100は、上記のように構成されている。
【0040】
図10は、被検体の撮影に使用されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
第1の形態では、3DTOF(3D Time Of Flight)法を利用したパルスシーケンスPSを繰り返し実行することによって、頭部の血流を撮影する。尚、本発明は、3Dのシーケンスではなく、2Dのシーケンスを用いて撮影するときにも適用できる。また、パルスシーケンスは、スピンエコーやグラディエントエコーなど、種々の手法のシーケンスを用いることができる。
【0041】
次に、コイル装置100を用いて、被検体を撮影する方法について、具体的に説明する。尚、以下では、説明の便宜上、コイル装置100の送信コイル40を初期位置Pから動かさずに被検体を撮影する場合について先に説明し、次に、コイル装置100の送信コイル40を初期位置からずらして被検体を撮影する場合について説明する。
【0042】
被検体を撮影する場合、先ず、被検体をクレードルに寝かせて、被検体の頭部にコイル装置を設置する(図11参照)。
【0043】
図11は、被検体の頭部にコイル装置100が設置された様子を示す図である。
図11(a)は、被検体、テーブル、およびマグネットを横から見た図、図11(b)は、図11(a)に示すコイル装置100および被検体の頭部の拡大図である。
【0044】
図11では、コイル装置100の送信コイル40は、初期位置Pに位置している。被検体にコイル装置100を設置したら、クレードルを移動させて、被検体をボアに搬送する(図12参照)。
【0045】
図12は、被検体がボアに搬送された様子を示す図である。
被検体をボアに搬送した後、スカウト画像データを取得するためのスカウトスキャンを行う。スカウトスキャンでは、マグネット51のRFコイル51cを用いて、RFパルスの送信および磁気共鳴信号の受信を行ってもよいし、コイル装置100を用いて、RFパルスの送信および磁気共鳴信号の受信を行ってもよい。オペレータは、スカウトスキャンにより得られたスカウト画像データに基づいて、被検体の頭部に撮影スラブを設定する(図13参照)。
【0046】
図13は、設定された撮影スラブSLを示す図である。
撮影スラブSLを設定した後、図10に示すパルスシーケンスPSを繰り返し実行し、血流のデータを収集する。パルスシーケンスPSを実行する場合、コイル装置100を用いて、RFパルスの送信および磁気共鳴信号の受信を行う。
【0047】
図13には、撮影スラブSLに流入する前の動脈血として、撮影スラブSLに近い動脈血AR1と、撮影スラブSLから遠い動脈血AR2が示されている。
【0048】
パルスシーケンスPSを実行すると、コイル装置100の送信コイル40から、送信パルスRFが送信される。送信パルスRFを送信する場合、理想的には、撮影スラブSLの内側のみがRFパルスの影響を受け、撮影スラブSLの外側ではRFパルスの影響は受けないことが望ましい。しかし、実際には、撮影スラブSLの周囲に位置するスピンは、送信パルスRFの影響を受ける(図14参照)。
【0049】
図14は、送信パルスRFの影響を受ける領域を概略的に示す図である。
図14では、送信パルスRFの影響を受ける領域の大まかな範囲を、符号「Q」で示してある。したがって、撮影スラブSLにまだ流入していない動脈血AR1およびAR2は、撮影スラブSLに流入するまでの間に、送信パルスRFの影響を受けて、スピンの縦磁化が低下する。特に、撮影スラブSLから離れている動脈血AR2は、撮影スラブSLに近い動脈血AR1よりも、送信パルスRFの影響を受ける回数が多いので、スピンの縦磁化はかなり減少する。したがって、送信コイル40を初期位置Pから動かさずに撮影すると、撮像スラブSLの外側の動脈血は、撮像スラブSLに流入するまでに縦磁化が低下してしまうので、動脈血の流入効果(inflow効果)を十分に得ることができない恐れがある。そこで、第1の形態では、送信コイル40を初期位置Pからずらして撮影を行う(図15参照)。
【0050】
図15は、送信コイル40を初期位置Pからずらしたときの様子を示す図である。
動力発生源53(図1参照)は、中央処理装置58の制御を受けて、ピニオン27および28を回転させるための信号を生成する。この信号によって、ピニオン27および28が回転し、送信コイル40が移動する。図15では、送信コイル40は、初期位置Pから距離Dだけ移動している。これによって、送信パルスRFの影響を受ける領域は、QからQ′に移動するので、動脈血AR1およびAR2は、送信パルスRFの影響を受ける領域Q′から外れる。したがって、動脈血AR1およびAR2は、十分な大きさの縦磁化を保持した状態で撮影スラブSLに流入するので、動脈血の十分な流入効果を得ることができ、動脈血の信号強度を高くすることができる。尚、移動距離Dの値は、デフォルト値として事前に設定しておいてもよいし、撮影スラブSLの位置に基づいて計算により求めてもよい。また、移動距離Dの候補値として、複数の値を事前に設定しておき、複数の候補値の中から、撮影スラブSLの位置に対応する候補値を選択することにより、移動距離Dを決定してもよい。
【0051】
また、第1の形態では、送信コイル40と受信コイル30は別のコイルで構成されているので、送信コイル40が移動しても、受信コイル30は予め決まった位置に固定される。したがって、頭部が収容される空間のほぼ全領域に渡って、受信コイル30のコイル感度をほぼ均一に保持することができ、より高品質な画像を取得することができる。尚、上記の説明では、動脈血を描出する例について説明しているが、本発明は、静脈血を描出させる場合にも適用することができる。
【0052】
第1の形態では、動力発生源からの動力を送信コイル40に伝える伝動機構として、ラック・アンド・ピニオン機構が用いられている。しかし、ウォームギア機構やリンク機構など、ラック・アンド・ピニオン機構とは別の伝動機構を用いてもよい。
【0053】
尚、第1の形態では、コイル筐体20にピニオンが備えられており、送信コイル40にラックが備えられているが、コイル筐体20にラックを備え、送信コイル40にピニオンを備えてもよい。
【0054】
(2)第2の形態
第2の形態のコイル装置は、コイル部の構造を除いて、第1の形態のコイル装置100と同一構造である。したがって、第2の形態の説明に当たっては、コイル部について主に説明する。
【0055】
図16は、第2の形態のコイル部の分解斜視図である。
第2の形態のコイル部2は、コイル筐体20Aと、受信コイル30Aと、送信コイル40Aとを有している。コイル筐体20Aは、受信コイル30Aおよび送信コイル40Aが収容できるように構成されている。
【0056】
図17は、コイル筐体20Aの断面図である。
図17(a)は、z軸に垂直な面F1でコイル筐体20Aを分断したときの断面図、図17(b)は、x軸に垂直な面F2でコイル筐体20Aを分断したときの断面図である。
【0057】
コイル筐体20Aは、内側壁21と、中間壁22と、外側壁23とを有している。内側壁21で囲まれた空間24は、被検体の頭部を収容するための収容空間を形成している。内側壁21と中間壁22とに挟まれる空間25は、受信コイル30を収容するための受信コイル収容空間を形成している。中間壁22と外側壁23とに挟まれる空間26は、送信コイル40を収容するための送信コイル収容空間を形成している。また、外側壁23には、2つのピニオン27および28が備えられている。ピニオン27および28は、それぞれ、送信コイル40のラック43および44(図16参照)に歯合するように構成されている。
コイル筐体20Aは、上記のように構成されている。
【0058】
図16に戻って説明を続ける。
コイル部2は、コイル筐体20Aの他に、受信コイル30Aおよび送信コイル40Aを有している。受信コイル30Aは、第1の形態の受信コイル30と同一構造であるので、説明は省略する。
【0059】
送信コイル40Aは、送信コイル支持体41と、コイル導体42とを有している。
送信コイル支持体41は、コイル導体42を支持するものであり、円筒形状に構成されている。コイル導体42は、送信コイル支持体41の内面41bに形成されている。また、送信コイル支持体41の外面41aには、2つのラック43および44が形成されている(図18参照)。
【0060】
図18は、送信コイル40Aを図16に示すラインLで分断し、平面状に展開した図である。図18では、送信コイル支持体41の外面41aが示されている。
【0061】
ラック43および44は、それぞれ、コイル筐体20Aのピニオン27および28に歯合するように構成されているものである。ラック43および44は、送信コイル40の前端面41cから後端面41dにまで延在するように形成されている。
【0062】
受信コイル30Aおよび送信コイル40Aをコイル筐体20A(図17参照)に収容することによって、コイル部2が構成される。
【0063】
図19は、コイル部2の断面図である。
図19(a)は、z軸に垂直な面F1でコイル部2を分断したときの断面図、図19(b)は、x軸に垂直な面F2でコイル部2を分断したときの断面図である。
【0064】
受信コイル30Aは、コイル筐体の受信コイル収容空間25に収容されており、コイル筐体の内側壁21に固定されている。
【0065】
送信コイル40Aは、コイル筐体の送信コイル収容空間26に収容されている。送信コイル40Aのラック43および44は、それぞれ、コイル筐体のピニオン27および28に歯合している。ピニオン27および28が正回転すると、送信コイル40Aは、z方向に移動し、ピニオン27および28が逆回転すると、送信コイル40Aは、−z方向に移動する(図20参照)。
【0066】
図20は、送信コイル40Aを移動させたときの様子を示す図である。
図20(a)は、送信コイル40Aが初期位置Pに位置しているときの図、図9(b)は、送信コイル40Aを位置Pに移動させたときの図である。
【0067】
ピニオン27および28が正回転すると、送信コイル40Aがz方向に移動する。送信コイル40Aの移動距離Dは、ピニオン27および28の回転数によって調整することができる。ピニオン27および28を逆回転させると、送信コイル40Aを初期位置Pに戻すことができる。
【0068】
尚、コイル筐体の中間壁22と、送信コイル40Aのコイル導体42との間には、隙間が設けられている。したがって、コイル導体42に損傷を与えずに、送信コイル40Aを移動させることができる。
【0069】
(3)第3の形態
第3の形態のコイル装置は、コイル部の構造を除いて、第1の形態のコイル装置100と同一構造である。したがって、第3の形態の説明に当たっては、コイル部について主に説明する。
【0070】
図21は、第3の形態のコイル部の分解斜視図である。
第3の形態のコイル部2は、送信コイル40のコイル導体42が、送信コイル支持体41の内部に埋め込まれている点を除いて、第1の形態のコイル部2と同一構造である。このように、コイル導体42は、送信コイル支持体41の内面又は外面に形成する必要はなく、埋込型にしてもよい。埋込型にすると、コイル筐体の送信コイル収容空間26(例えば図6参照)に、コイル導体42の損傷を防止するための隙間が不要となる。したがって、コイル筐体の送信コイル収容空間26を狭くすることができ、コイル装置の小型化が可能となる。
【0071】
(4)第4の形態
第4の形態では、空気圧を利用して送信コイルを移動させる例について説明する。
【0072】
図22は、第4の形態のコイル部の分解斜視図である。
第4の形態のコイル部2は、コイル筐体20Bと、受信コイル30Bと、送信コイル40Bとを有している。コイル筐体20Bは、受信コイル30Bおよび送信コイル40Bが収容できるように構成されている。
【0073】
図23は、コイル筐体20Bの断面図である。
図23(a)は、z軸に垂直な面F1でコイル筐体20Bを分断したときの断面図、図23(b)は、x軸に垂直な面F2でコイル筐体20Bを分断したときの断面図である。
【0074】
コイル筐体20Bは、内側壁21と、中間壁22と、外側壁23とを有している。内側壁21で囲まれた空間24は、被検体の頭部を収容するための収容空間を形成している。内側壁21と中間壁22とに挟まれる空間25は、受信コイル30Bを収容するための受信コイル収容空間を形成している。中間壁22と外側壁23とに挟まれる空間26は、送信コイル40Bを収容するための送信コイル収容空間を形成している。
【0075】
コイル筐体20Bの前面には、送信コイル収容空間26に空気を供給するための供給ホース261と、供給ホース261からの空気を送信コイル収容空間26に流入させるか否かを制御するための空気弁261aとが設けられている。空気弁261aが開くことによって、供給ホース261の空気が送信コイル収容空間26に流入する。更に、コイル筐体20Bの前面には、送信コイル収容空間26の空気を外部に排出するための排出ホース262と、送信コイル収容空間26の空気を外部に排出するか否かを制御するための排出弁262aとが設けられている。送信コイル収容空間26の空気は、排出弁262aが開くことによって、排出ホース262から外部に排出される。
【0076】
コイル筐体20Bの後面には、送信コイル収容空間26に空気を供給するための供給ホース263と、供給ホース263からの空気を送信コイル収容空間26に流入させるか否かを制御するための空気弁263aとが設けられている。空気弁263aが開くことによって、供給ホース263の空気が送信コイル収容空間26に流入する。また、コイル筐体20Bの後面には、送信コイル収容空間26の空気を外部に排出するための排出ホース264と、送信コイル収容空間26の空気を外部に排出するか否かを制御するための排出弁264aとが設けられている。送信コイル収容空間26の空気は、排出弁264aが開くことによって、排出ホース264から外部に排出される。
コイル筐体20Bは、上記のように構成されている。
【0077】
図22に戻って説明を続ける。
コイル部2は、コイル筐体20Bの他に、受信コイル30Bおよび送信コイル40Bを有している。受信コイル30Bは、第1の形態の受信コイル30と同一構造であるので、説明は省略する。
【0078】
送信コイル40Bは、送信コイル支持体41と、送信コイル支持体41に埋め込まれたコイル導体42とを有している。
【0079】
受信コイル30Bおよび送信コイル40Bをコイル筐体20Bに収容することによって、コイル部2が構成される。
【0080】
図24は、コイル部2の断面図である。
図24(a)は、z軸に垂直な面F1でコイル部2を分断したときの断面図、図24(b)は、x軸に垂直な面F2でコイル部2を分断したときの断面図である。
【0081】
受信コイル30Bは、コイル筐体の受信コイル収容空間25に収容されており、コイル筐体の内側壁21に固定されている。
【0082】
送信コイル40Bは、コイル筐体の送信コイル収容空間26(図23参照)に収容されている。送信コイル40Bは、コイル筐体の中間壁22と外側壁23に密着しながらスライドできるように構成されている。送信コイル40Bは、コイル筐体の中間壁22と外側壁23に密着しているので、コイル筐体の送信コイル収容空間26(図23参照)は、送信コイル40Bの前側の収容空間26aと、送信コイル40Bの後側の収容空間26bとに分かれる。
【0083】
供給ホース261から前側の収容空間26aに空気を供給すると、前側の収容空間26aの空気圧が大きくなり、送信コイル40Bをz方向に押す。送信コイル40Bは、コイル筐体の中間壁22と外側壁23に密着しながらスライドできるように構成されているので、送信コイル40Bはz方向に移動する。一方、供給ホース263から後側の収容空間26bに空気を供給すると、後側の収容空間26bの空気圧が大きくなり、送信コイル40Bを−z方向に押す。送信コイル40Bは、コイル筐体の中間壁22と外側壁23に密着しながらスライドできるように構成されているので、送信コイル40Bは−z方向に移動する(図25参照)。
【0084】
図25は、送信コイル40Bを移動させたときの様子を示す図である。
図25(a)は、送信コイル40Bが初期位置Pに位置しているときの図、図25(b)は、送信コイル40Bを位置Pに移動させたときの図である。
【0085】
先ず、図25(a)に示すように、空気弁261aおよび264aを開いた状態にし、空気弁262aおよび263aを閉じた状態にして、供給ホース261から前側の収容空間26aに空気を供給する。この状態で空気を供給すると、前側の収容空間26aの空気圧が大きくなるので、送信コイル40はz方向に移動する。このとき、後側の空気弁264aは開いているので、後側の収容空間26bの空気は、排出ホース264から外部に排出される。したがって、図25(b)に示すように、送信コイル40Bを位置Pに移動させることができる。送信コイル40Bの移動距離Dは、前側の収容空間26aに供給される空気量によって調整することができる。送信コイル40Bを初期位置Pに戻すには、4つの空気弁261a〜264aの開閉を逆にして、供給ホース263から空気を供給すればよい。
【0086】
このように、空気圧を利用して送信コイル40Bを移動させてもよい。尚、第4の形態では、空気の供給と排出を別々のホースを用いて行っているが、空気の供給と排出との両方を兼ねるホースを用いてもよい。
【0087】
(5)第5の形態
第5の形態のコイル装置は、コイル筐体の構造を除いて、第1の形態のコイル装置100と同一構造である。したがって、第5の形態の説明に当たっては、コイル筐体について主に説明する。
【0088】
図26は、第5の形態におけるコイル筐体20Cの斜視図である。
図26(a)は、コイル筐体20Cの分解前の図、図26(b)は、コイル筐体20Cの分解後の図である。
【0089】
コイル筐体20Cは、コイル筐体本体201と、蓋部202とを有している。蓋部202は、コイル筐体本体201に対して、着脱自在に装着できるように構成されている。コイル筐体本体201は、内側壁21と、中間壁22と、外側壁23とを有している。内側壁21で囲まれた空間24は、被検体の頭部を収容するための収容空間を形成している。内側壁21と中間壁22とに挟まれる空間25は、受信コイル30を収容するための受信コイル収容空間を形成している。中間壁22と外側壁23とに挟まれる空間26は、送信コイル40を収容するための送信コイル収容空間を形成している。また、中間壁22には、2つのピニオン27および28が備えられている。
【0090】
コイル筐体20Cは、上記のように構成されている。第5の形態では、コイル筐体20Cの蓋部202を開けることによって、コイル筐体20Cに収容される受信コイルおよび送信コイルを自由に交換することができる。したがって、必要に応じて、撮影に適した送信コイル又は受信コイルを用いることができ、より高品質な画像を得ることができる。
【0091】
尚、第2〜第4の形態についても、送信コイル又は受信コイルを交換可能に構成してもよい。
【0092】
(6)第6の形態
図27は、図1に示すMRI装置50とは別の構造のMRI装置50Aを示す図である。
【0093】
MRI装置50Aは、マグネット51の内部に、送信コイル51eを備えているが、その他の構成は、図1に示すMRI装置50と同じである。送信コイル51eは、第1〜第5の形態に示したコイル装置の送信コイルと同様に、z軸方向に移動できるように構成されている。このように、移動可能な送信コイル51eを、マグネット51に備えてもよい。送信コイル51eを備えることによって、コイル装置100(図1参照)を用いなくても、動脈血の十分な流入効果が得られた画像を取得することができる。
【0094】
また、送信コイル51eを複数備え、撮影部位の位置に応じて、複数の送信コイル51eを個別に移動させることができるようにしてもよい。複数の送信コイル51eを備えることによって、より最適な送信コイルを用いてRFパルスを送信することが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1 基部
2 コイル部
3 支持部
20、20A、20B、20C コイル筐体
21 内側壁
22 中間壁
23 外側壁
24 収容空間
25 受信コイル収容空間
26 送信コイル収容空間
27、28 ピニオン
30、30A、30B、30C 受信コイル
31 受信コイル支持体
32 コイル導体
40、40A、40B、40C 送信コイル
41 送信コイル支持体
41a 外面
41b 内面
42 コイル導体
43、44 ラック
50、50A MRI装置
51 マグネット
51e 送信コイル
52 テーブル
52a クレードル
51a 超伝導コイル
51b 勾配コイル
51c RFコイル
51d ボア
53 動力発生源
54 シーケンサ
55 送信器
56 勾配磁場電源
57 受信器
58 中央処理装置
59 操作部
60 表示部
61 被検体
62 オペレータ
100 コイル装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にRFパルスを送信する送信コイルと、
前記被検体から磁気共鳴信号を受信する受信コイルと、
を有するコイル装置であって、
前記送信コイルは、移動可能に構成されている、コイル装置。
【請求項2】
前記送信コイルを移動させるための動力を前記送信コイルに伝える伝動機構を有する、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記伝動機構は、ラック・アンド・ピニオン機構である、請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記送信コイルを収容する送信コイル収容空間を有するコイル筐体を備え、
前記コイル筐体にピニオンが備えられ、
前記送信コイルに、前記ピニオンに歯合するラックが備えられる、請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記送信コイルを収容する送信コイル収容空間を有するコイル筐体を備え、
前記コイル筐体にラックが備えられ、
前記送信コイルに、前記ラックに歯合するピニオンが備えられる、請求項3に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記伝動機構は、ウォームギア機構又はリンク機構である、請求項2に記載のコイル装置。
【請求項7】
空気圧を利用して前記送信コイルを移動させる、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記送信コイルを収容する送信コイル収容空間を有するコイル筐体を備え、
前記コイル筐体は、
前記送信コイル収容空間に空気を供給するための供給ホースと、
前記供給ホースからの空気を前記送信コイル収容空間に流入させるか否かを制御するための空気弁と、を有する、請求項7に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記コイル筐体は、
前記送信コイル収容空間の空気を外部に排出するための排出ホースと、
前記送信コイル収容空間の空気を外部に排出するか否かを制御するための排出弁と、を有する、請求項8に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記送信コイルは、交換可能に構成されている、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項11】
被検体にRFパルスを送信する送信コイルを内蔵するマグネットを備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記送信コイルは、移動可能に構成されている、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記送信コイルを移動させるための動力を発生する動力発生源と、
前記動力発生源からの動力を前記送信コイルに伝える伝動機構と、
を有する、請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−213459(P2012−213459A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79607(P2011−79607)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】