説明

コイル部品、トランス及びスイッチング電源装置

【課題】コイル巻線における発熱に対する放熱性をより高める。
【解決手段】コイル部品1は、第1軸線A1の周りに巻回される第1コイル巻線2Aと、第2軸線A2の周りに巻回され第1コイル巻線2Aに並設される第2コイル巻線2Bと、第1コイル巻線2Aの一方の端部である第2の端子部26と、第2コイル巻線2Bの一方の端部である第2の端子部26と、を電気的に接続する接続部材3と、接続部材5に取り付けられ電気絶縁性且つ熱伝導性を有する熱伝導性部材5を備え、第1及び第2コイル巻線2A,2Bを流れる電流により、第1コイル巻線2Aの開口14内を貫き、第2コイル巻線2Bの開口16内を開口14内を貫く方向とは逆方向に貫く磁束を生じるように、第1及び第2コイル巻線2A,2Bのそれぞれが巻回される。これにより、第1及び第2コイル巻線2A,2Bにおいて発生する熱を熱伝導性部材5から放熱させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品、トランス及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の搭載部品として、高電圧を低電圧に変換、あるいは、低電圧を高電圧に変換するDC−DCコンバータ等のスイッチング電源装置が知られている。スイッチング電源装置に用いられるコイル部品の一つとして、特許文献1記載のものが知られている。特許文献1記載のコイル部品は、2つの磁芯脚部(両脚部)と、2つの磁芯基部とを有し、両脚部と基部を一方向に周回する磁束が形成されるように、それぞれの脚部に巻線が巻回された構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−4217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のコイル部品を、例えばスイッチング電源装置のチョークコイルとして用いた場合、コイル部品を構成するコイルには大量の電流が流れるためコイルによる発熱が大きく、この発熱の影響により、コイル自体の劣化やコイル部品の周辺に配置される各機器等の機能の低下等を招く可能性がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、コイル巻線における発熱に対する放熱性をより高めたコイル部品、トランス及びスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコイル部品は、第1軸線の周りに巻回され、その中央に開口を有する第1コイル巻線と、前記第1軸線に沿う第2軸線の周りに巻回され前記第1コイル巻線に並設され、その中央に開口を有する第2コイル巻線と、前記第1コイル巻線の一方の端部と、前記第2コイル巻線の一方の端部と、を電気的に接続する接続部材と、前記接続部材に接するように設けられた電気絶縁性を有する熱伝導性部材と、を備え、前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線を流れる電流により、前記第1コイル巻線の前記開口内を貫き、さらに前記第2コイル巻線の前記開口内を前記第1コイル巻線の前記開口内を貫く方向とは逆の方向に貫く磁束を生じるように、前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線のそれぞれが巻回されることを特徴とする。
【0007】
上記のコイル部品によれば、第1コイル巻線と第2コイル巻線との端部同士を電気的に接続する接続部材に対して電気絶縁性を有する熱伝導性部材がさらに接続されることにより、第1及び第2コイル巻線において発生する熱を熱伝導性部材から放熱させることができるため、第1及び第2コイル巻線における発熱に対する放熱性がより高められる。
【0008】
ここで、前記接続部材は、前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線の端部のうち、前記第1軸線及び第2軸線の延びる方向に沿って前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線に対して同一の方向にある端部同士を接続する態様とすることができる。
【0009】
また、前記第1コイル巻線と前記第2コイル巻線とは、同一形状の部材からなる態様とすることができる。
【0010】
この場合、同一形状の部材を第1及び第2コイル巻線として用いることができるため、それぞれのコイル巻線を個別に作製する工程を省略することができ、コイル巻線を作成する際の作業量を軽減することができる。
【0011】
また、前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線のそれぞれは、有端リング状の板状のコイル部材を複数連結させてなる態様とすることができる。このように、第1コイル巻線及び第2コイル巻線のそれぞれが板状のコイル部材を連結することにより形成される場合、これらのコイル巻線を流れる電流は非常に大きくなるため、熱伝導性部材を取り付けることで放熱をすることにより、コイル部品等の機能の低下をより適切に回避することができる。
【0012】
さらに、前記第1コイル巻線と前記第2コイル巻線とを挟み込む一対の磁性体コア部材を備える態様とすることができる。上記の熱伝導性部材による放熱に係る効果は、一対の磁性体コア部材により第1コイル巻線及び第2コイル巻線が挟み込まれた構成である場合に効果的に用いられる。
【0013】
本発明のトランスは、上記のコイル部品を備えることを特徴とする。この場合、コイル巻線からの放熱性がより高められたコイル部品を用いたトランスを得ることができる。
【0014】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、上記のコイル部品を備えることを特徴とする。この場合、コイル巻線からの放熱性がより高められたコイル部品を用いたスイッチング電源装置を得ることができる。
【0015】
また、上記のスイッチング電源装置においては、前記接続部材は、前記スイッチング電源装置の筺体に対して、前記熱伝導性部材が接する態様とすることができる。
【0016】
上記のようにスイッチング電源装置の筺体に対して熱伝導性部材が接することにより、接続部材が熱伝導性部材を介して接続され、例えばスイッチング電源装置の筺体がヒートシンクの一部として機能する場合には、コイル巻線から発生する熱をこの筺体に対して熱伝導性部材を介してより効果的に放出することができるため、コイル巻線の発熱に対する放熱性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コイル巻線における発熱に対する放熱性をより高めたコイル部品、トランス及びスイッチング電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1のコイル部品に含まれるコイル巻線の平面図であり、(b)はコイル巻線の底面図である。
【図3】コイル巻線の側面図である。
【図4】コイル部品の他の形態を示す斜視図である。
【図5】図4のコイル部品の底面側からの斜視図である。
【図6】(a)は図4のコイル部品の一部の構成を説明する平面図であり、(b)はコイル部品の一部の構成を説明する底面図である。
【図7】(a)は図6(a)のコイル部品のVIIA−VIIA線における端面を示す図であり、(b)は図6(a)のコイル部品のVIIB−VIIB線における端面を示す図である。
【図8】磁性体コア部材を更に備えるコイル部品の分解斜視図である。
【図9】本実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図10】本実施形態に係るスイッチング電源装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
まず、図1〜図3を参照して、本実施形態に係るコイル部品の構成を説明する。図1は、本実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。図2は、図1のコイル部品の底面側からの斜視図である。図2(a)は、コイル部品を構成するコイル巻線の平面図であり、図2(b)は、このコイル巻線の底面図である。また、図3は、コイル巻線の側面図である。
【0021】
図1に示すコイル部品1は、インダクタンス素子、コンバータ、インバータ等のスイッチング電源装置、ノイズフィルタ等に用いられるものである。コイル部品1は、導体板からなる2つのコイル巻線2(第1コイル巻線2A及び第2コイル巻線2B)と、この2つのコイル巻線2(2A,2B)の間を電気的に直列に接続する接続部材(接続用バスバー)3と、接続部材3に接続される電気絶縁性を有する部材である熱伝導性部材(放熱部材)5と、を含んで構成される。
【0022】
本実施形態に係るコイル部品1では、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bが同一形状の部材であるコイル巻線2により構成される。コイル巻線2は、図1〜図3に示すように、間を隔てて並設された有端リング状であり且つ板状の第1及び第2のコイル部材10,12を、所定の巻き方向に連なるように連結させたものである。
【0023】
有端リング状の第1及び第2のコイル部材10,12はいわゆるC字状を呈しており、中央に円形状の開口14,16を有している。また、第1及び第2のコイル部材10,12の一端と他端との間は、内周から外周まで延びるスリット20,22になっている。第1コイル部材10と第2のコイル部材12とは、開口14,16が連通するように同軸上に重なり合っている。なお、第1コイル部材10と第2のコイル部材12とは、スリット20とスリット22との位置をずらした状態で(つまりこれらが連通しないように)重なり合っている。そのため、第1のコイル部材10の他端部が第2のコイル部材12の一端部と重なり合うことになる。なお第1及び第2のコイル部材10,12の形状は上記のC字状の有端リング状に限られず、例えば楕円形状や、四角形状等の他の形状であってもよい。
【0024】
第1のコイル部材10の一端部には、開口14の中心軸線に対し外方に向かって突出する第1の端子部(電気的接続端子部)24が一体的に設けられており、第1のコイル部材10の他端部はU字状の連結部18を介して第2のコイル部材12の一端部に連結されている。第2のコイル部材12の他端部には、開口16の中心軸線に対し外方に向かって突出する第2の端子部26が一体的に設けられている。
【0025】
第1のコイル部材10の内周縁には、外方に向けて切り込まれた切込部30が形成されている。さらに、第1のコイル部材10の外周縁のうち、開口14の中心軸線と切込部30とを結ぶ線を延長した領域には、第1のコイル部材10の外周縁が径方向に大きくなるように、外方に膨らんだ突出部34が設けられる。
【0026】
一方、第2のコイル部材12の内周縁には、外方に向けて切り込まれた切込部32が形成されている。さらに、第2のコイル部材12の外周縁のうち、開口16の中心軸と切込部32とを結ぶ線を延長した領域には、第2のコイル部材12の外周縁が径方向に大きくなるように、外方に膨らんだ突出部36が設けられる。
【0027】
切込部30,32は、第1及び第2のコイル部材10,12の厚さ方向に貫通している。開口14,16の中心軸線方向から見ると、切込部30,32は、開口14,16の周縁に沿って所定の幅を有しており、開口14,16の径方向に所定の奥行きを有している。また、第1のコイル部材10に設けられる切込部30と、第2のコイル部材12に設けられる切込部32とは、開口14,16の中心軸線方向から見たときに、互いに異なる位置に設けられる。また、第1のコイル部材10に設けられる突出部34と、第2のコイル部材12に設けられる突出部36とは、それぞれ第1及び第2のコイル部材10,12の外周縁に沿って所定の幅を有しており、外周縁が外方へ所定の幅だけ突出するように設けられる。
【0028】
また、突出部34,36はそれぞれ開口14,16の中心軸線と切込部30,32とを結んだ直線を延長した外周縁に設けられる。これにより、切込部30,32の形成領域における第1及び第2のコイル部材10,12の幅(導体板の幅)を確保し、切込部30,32の周囲で第1及び第2のコイル部材10,12が細くなり、発熱等の原因となる電気抵抗が増加することを回避している。このように本実施形態では、切込部30,32の形成領域における第1及び第2のコイル部材10,12の幅を、突出部34,36を設けることにより確保して、導体板の幅と厚みとで決まる各コイル部材10,12の断面積の減少による電気抵抗の増加を抑えている。なお、突出部34,36は、開口14,16の中心軸線方向から見ると互いに異なる位置に設けられる。
【0029】
さらに、第1及び第2のコイル部材10,12はそれぞれ突出部34,36とは異なる突出部33,35を備える。突出部33は、第1のコイル部材10の外周のうち上述の突出部34とは異なる位置(例えば、図2(a)に示すように、コイル巻線2が巻回される軸線を基準として連結部18に対して90度となる位置)に設けられる。また、突出部35は、第2のコイル部材12の外周のうち上述の突出部36とは異なる位置(例えば、図2(b)に示すように、コイル巻線2が巻回される軸線を基準として連結部18に対して−90度となる位置)に設けられる。このように、第1及び第2のコイル部材10,12は、複数の突出部を備えていてもよい。
【0030】
以上の構成を有するコイル巻線2は、電気伝導性が高い一枚の基板を打ち抜き加工することで形成可能である。より具体的には、銅板、アルミニウム板等の基板から、第1の端子部24と、第1の端子部24に連続する第1のコイル部材10と、第2のコイル部材12と、第2のコイル部材12に連続する第2の端子部26と、第1及び第2のコイル部材10,12を連結するI字状の連結部18と、を打ち抜き加工により得る。そして、連結部18をU字状に屈曲させることによって第1のコイル部材10と第2のコイル部材12とを所定の間隙をもって重ね合わせる。これにより、導体板からなるコイル巻線2が完成する。なお、コイル巻線2はこのような折り曲げコイルに限られず、例えば、コイル部材と連結部とをねじ留めしたものであってもよいし、溶接したものであってもよい。また、リベットで固定してもよい。
【0031】
本実施形態に係るコイル部品1では、図1に示すように、並設される2つのコイル巻線2(第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2B)の双方の第2の端子部26が接続部材3を介して接続された構成を備える。このとき、第1コイル巻線2Aは第1軸線A1の周りに巻回された構成であり、第2コイル巻線2Bは第1軸線A1に平行な第2軸線A2の周りに巻回された構成である。なお、第1軸線A1と第2軸線A2とは実質的に平行であればよく、例えば、製造時等に発生する誤差による傾きを許容して、一方が他方に沿っていればよい。
【0032】
ここで、接続部材3は、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bの双方の第2の端子部26を接続するために、第2コイル巻線2Bの第1の端子部24の下部を通過するように折り曲げられる。そして、図1に示す第2軸線A2の上方から見た場合に、接続部材3と第2コイル巻線2Bの第1の端子部24とが重なるように立体的に交差して配置される。
【0033】
コイル部品1を構成する第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bとは、同一部材からなるため、各コイル巻線のそれぞれを図1の上面から底面方向に向かって見た場合に、コイルの巻回する方向は同じである。そして、上記のように、接続部材3により、第1軸線A1及び第2軸線A2に沿って第1コイル巻線2A及び第2コイル巻線2Bに対して同一の方向に配置される第2の端子部26同士が接続される。これにより、並設された第1コイル巻線2A及び第2コイル巻線2Bを一のコイル端面側から(例えば、図1の上面から底面方向に向かって)見たときに、第1コイル巻線2A及び第2コイル巻線2Bの端子部24,26のうちの奥側(底面側から上面方向を見た場合には手前側)の端子部同士が接続部材3により接続される構成となる。さらに、図1に示すように、並設される2つのコイル巻線2(2A,2B)の並び方向に、第1コイル巻線2Aの第1の端子部24及び第2の端子部26、第2コイル巻線2Bの第1の端子部24及び第2の端子部26が、この順序となるように配置される。この接続部材3と2つのコイル巻線2の第2端子部26とは、それぞれネジ38により固定される。
【0034】
これにより、第1コイル巻線2Aの第1の端子部24に入力された電流は、第1のコイル部材10、連結部18、第2のコイル部材12の順で流れ、第1コイル巻線2Aの第2の端子部26まで流れた後、接続部材3を介して第2コイル巻線2Bの第2端子部26に入力される。そして、第2コイル巻線2Bの第2コイル部材12、連結部18、第1のコイル部材10の順で流れ、第2コイル巻線2Bの第1の端子24から出力される。このとき、各コイル巻線のそれぞれを図1の上面から底面方向に向かって、コイルにおける電流経路の巻回方向を見た場合には、第1コイル巻線2Aの巻回方向と第2コイル巻線2Bとの巻回方向は異なり、したがって、第1コイル巻線2Aの開口14内を貫く磁束の向きと、第2コイル巻線2Bの開口16内を貫く磁束の向きは逆方向となる。すなわち、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bが並設されていることから、一方のコイルの開口を貫き、他方のコイルの開口を逆方向に貫き一周する磁束の流れ道である磁路が存在する。これにより、コイル部品1は4ターンのコイルとして機能する。
【0035】
さらに、図1に示すように、接続部材3にはネジ37により熱伝導性部材5が接続部材3に対して接するように取り付けられる。この熱伝導性部材5は、電気絶縁性と熱伝導性とを有する材料からなり、例えばシリコーンシート等が好適に用いられる。上記のように熱伝導性部材5は電気絶縁性の材料からなるため、第1コイル巻線2A、接続部材3、及び第2コイル巻線2Bを流れる電流は熱伝導性部材5に流れることはない。しかしながら熱伝導性部材5は熱伝導性を有するため、第1コイル巻線2A、接続部材3、及び第2コイル巻線2Bに電流が流れることにより発生する熱は、熱伝導性部材5に対して伝導される。なお、熱伝導性部材5を取り付けるネジ37は、裏面において熱伝導性部材5よりも長く突出し、後述のスイッチング電源装置に対してコイル部品1を取り付けるときにも用いられる。また、ネジ37と接続部材3の間には、絶縁部材37aが設けられる。これは、接続部材3を流れる電流がネジ37を介して他の装置等へと流れることを防止するために設けられるものである。この絶縁部材37aは、ネジ37が挿入される接続部材3のネジ穴の内周縁を覆うように設けられる。
【0036】
次に、本実施形態に係るコイル部品の他の形態について図4〜7を用いて説明する。以下で説明するコイル部品4は、コイル巻線2(2A,2B)に対して絶縁部材が一体成形されている点が上述のコイル部品1と相違する。図4は、本実施形態における他の形態であるコイル部品を示す斜視図である。図5は、図4のコイル部品の底面側からの斜視図である。図6(a)は、図4のコイル部品の一部の構成を説明する平面図であり、図6(b)は、図4のコイル部品の一部の構成を説明する底面図である。図7(a)は、図6(a)のコイル部品VIIA−VIIA線における端面を示す図であり、図7(b)は、図6(a)のコイル部品のVIIB−VIIB線における端面を示す図である。
【0037】
図4に示すように、コイル部品4には、2つのコイル巻線2(2A,2B)の第1及び第2のコイル部材10,12の一部領域をそれぞれ覆うように絶縁材料である樹脂部40が設けられる。具体的には、後述の磁性体コア部材と対向する第1及び第2のコイル部材10,12の最外の板面、隣接する第1及び第2のコイル部材10,12の間、第1及び第2のコイル部材の内周縁が樹脂部40により覆われる。また、本実施形態に示すコイル部品1では、第1及び第2のコイル部材10,12の外周縁についても樹脂部40により覆われる。なお、樹脂部40に用いられる絶縁材料としては、例えばPBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂やPPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂等が、耐熱性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性等の特性に優れていることから好適に用いられる。
【0038】
樹脂部40は、2つのコイル巻線2(2A,2B)のうち、第1の端子部24及び第2の端子部26を除く第1及び第2のコイル部材10,12の表面を覆う。また、樹脂部40により、中央にはコイル巻線2の軸線方向に沿って開口52,54が形成される。すなわち、コイル部品1はコイル部材10,12と同様に中空状となる。この開口52,54は、例えば後述の磁性体コア部材の脚部を挿通することができるように設けられる。
【0039】
また、図5、図6(b)に示すように、底面側には樹脂部40により構成された外部に突出する凸部50a,50bを備える。これは、後述の磁性体コア部との間の位置決めを行うために設けられたものである。さらに、樹脂部40は、図7(a),(b)等に示すように、第1のコイル部材10と第2のコイル部材12の間を埋めるように構成される。ただし、コイル巻線2の突出部34,36の表面の一部領域と、第2コイル部材12において、開口14,16の中心軸線に沿って第1のコイル部材10の切込部30に対応する領域の一部と、第1コイル部材10において、開口14,16の中心軸線に沿って第2のコイル部材12の切込部32に対応する領域の一部とでは、コイル巻線2の表面を樹脂部40が被覆する構成ではなく、コイル巻線2が外部に露出する構成となる。以下、このコイル巻線2が露出される領域について説明する。
【0040】
まず、コイル巻線2の突出部34,36は、その表面のうち、開口14,16の中心軸線に垂直な面(すなわち、図6(a)、(b)における表面34a,34b,36a,36b)は、外部に露出される。そして、突出部34,36の外周はそれぞれ樹脂部44,46により覆われる。このように、突出部34,36の表面の一部領域が外部に露出されることにより、この露出された部分から例えば熱伝導性の部材を介して外部に設けられた熱伝導性部材と電気的には絶縁されて接続することにより、コイル巻線2からの放熱を行うことができる。また、突出部34,36の外周はそれぞれ樹脂部44,46により覆われることにより、コイル部品1の周囲に配置される他の装置等との接触した際の絶縁性を保つことができる。また、コイル巻線2の外周が樹脂部40に覆われており、且つ、突出部34,36の外周も樹脂部44,46により覆われることにより、本実施形態のようにコイル部品4が樹脂部40により覆われたコイル巻線2を2つ並設した構成となる場合には、コイル部品4の2つのコイル巻線2間の絶縁性を保つことができる。
【0041】
さらに、コイル部品4では、上述のように、第2コイル部材12において、開口14,16の中心軸線に沿って第1のコイル部材10の切込部30に対応する領域の一部と、第1コイル部材10において、開口14,16の中心軸線に沿って第2のコイル部材12の切込部32に対応する領域の一部と、が外部に露出される。具体的には、図4、図6、図7に示すように、切込部30に対しても他の内周縁と同様の厚さの樹脂部40により覆われる。これにより、図7(a)に示すように、第2コイル部材12において、開口14,16の中心軸線に沿って第1のコイル部材10の切込部30に対応する領域が、樹脂部40により覆われた切込部30と比較して、内周縁内方へ突出する構成となる。そして、この突出する領域(第1のコイル部材10の切込部30に対応する第2のコイル部材12の領域)の一部である面43aとその裏面43bとが外部に露出される。なお、外部に露出される面43a及びその裏面43bの内側(内周部分)は、図7(a)に示すように、第1及び第2のコイル部材10,12の他の内周部分と同様に樹脂部40により覆われる構成となる。これにより、コイル部品1の開口52,54の内周縁は全て樹脂部40により覆われる。これにより、開口52,54に挿入される磁性体コア部材とコイル巻線2との間での絶縁性を保つことができる。
【0042】
なお、第1のコイル部材10において、開口14,16の中心軸線に沿って第2のコイル部材12の切込部32に対応する領域についても同様の形状となる。すなわち、上述の第1のコイル部材10の切込部30に対応する第2コイル部材12の領域と同様に、図7(b)に示すように、第2のコイル部材12の切込部32に対応する領域に対応する第1コイル部材10の領域が、切込部32と比較して内周縁内方へ突出する構成となる。そして、この突出する領域の一部である面41aとその裏面41bとが外部に露出される。なお、外部に露出される面41a及びその裏面41bの内側(内周部分)は、図7(b)に示すように、第1及び第2のコイル部材10,12の他の内周部分と同様に樹脂部40により覆われる構成となる。
【0043】
さらに、コイル部品4では、コイル巻線2を構成する第1及び第2のコイル部材10,12に設けられた突出部33,35がそれぞれ外部に完全に露出する態様となっている(すなわち、突出部の外周も樹脂部40により覆われていない)。これらの突出部33,35のように、樹脂部40に覆われずに外部に露出される領域は、必ずしもその外周が樹脂部40に覆われる必要はない。
【0044】
以上のように、上述の外部に露出される領域(突出部33,35及び突出部34,36の面34a,34b,36a,36bと、切込部30,32に対応する領域である面41a,41b,43a,43b)が設けられることにより、当該領域が樹脂部40により覆われる場合と比較して、コイル巻線2の熱を外部に効率よく放出することができる。
【0045】
さらに、上述のコイル部品4では、接続部材3が第2コイル巻線2Bの第1の端子部24の下部を通過するように、図4における図示下方に折り曲げられ、接続部材3が第1及び第2コイル巻線2A,2Bの第2の端子部26よりも下方となる位置に熱伝導性部材5が取り付けられる。これにより、図5に示すように、第1及び第2コイル巻線2A,2Bの底面を覆う樹脂部40の縁部の上部にも延びるように(すなわち、樹脂部40の下方にもぐりこむように)、より表面積が大きな熱伝導性部材5をコイル部品4に対して取り付けることができる。このため、この熱伝導性部材5による伝熱効果をより高めることができる。
【0046】
上述のコイル部品4は、例えば以下の方法により製造される。まず、第1のコイル部材10及び第2のコイル部材12が連結部18により接続されたコイル巻線2を2個(第1コイル巻線2A及び第2コイル巻線2Bとして)準備する。次に、この2個のコイル巻線2のそれぞれを樹脂部40の形状に構成された金型内に設置しインサート部品とし、樹脂を金型内に注入することによりモールド成形し、第1のコイル部材10及び第2のコイル部材12の周囲の一部を樹脂部40が一体成形されたコイル巻線2を得ることができる。次いで、この樹脂部40が一体成形された2個のコイル巻線2を並設し、コイル巻線2の第2端子部26をそれぞれ導電性の接続部材3に対してネジ38により固定し、さらに、この接続部材3に対して熱伝導性部材5をネジ37により固定することにより、コイル部品4が得られる。なお、熱伝導性部材5とネジ37との固定をネジ37により行わず、例えば、熱伝導性部材5にはネジ37の径よりも十分大きな径を有する開口を設けておき、コイル部品4を後述のスイッチング電源装置等に取り付ける際に、コイル部品4をネジ37を用いてスイッチング電源装置に対して固定する時点でコイル部品4とスイッチング電源装置との間に熱伝導性部材5を挟みこんだ状態で、コイル部品4に対して熱伝導性部材5が接するように設けられる態様としてもよい。さらに、例えば熱伝導性部材5が粘着性を有する材料からなる場合には、熱伝導性部材5を接続部材3に対して密着させること等により、接続部材3に接するように設けることもできる。
【0047】
なお、成形時の成形圧力(すなわち金型内に樹脂を注入する際の圧力)により、コイル巻線2が変形して短絡が発生することがある。しかし、成形時にコイル巻線2が仮に変形した場合であっても、一体成形後にはコイル巻線2に短絡が発生しているかを確認することが困難である。このため、コイル部品4に対して樹脂部40を一体成形する際には、成形圧力によるコイル巻線2の変形を防止する目的から、第1及び第2のコイル部材10,12に設けられた突出部34,36と、第2コイル部材12において、開口14,16の中心軸線に沿って第1のコイル部材10の切込部30に対応する領域の一部と、第1コイル部材10において、開口14,16の中心軸線に沿って第2のコイル部材12の切込部32に対応する領域の一部と、を成形金型により機械的に固定する。これにより、成形時のコイル巻線2の変形の発生が抑制される。なお、機械的に固定する領域は樹脂により覆われることなく、外部に露出する領域(すなわち、突出部34,36の面34a,34b,36a,36bと、切込部30,32に対応する領域である面41a,41b,43a,43b)となる。
【0048】
上記のコイル部品1,4は、更に磁性体コア部材を備えたコイル部品70とすることができる。コイル部品70は、例えば、後述するスイッチング電源装置のチョークコイルとして機能する。以下、上述のコイル部品4に更に磁性体コア部材を設けることによりコイル部品70を構成した形態について説明する。図8は、本実施形態に係るコイル部品70の分解斜視図である。
【0049】
図8に示すように、コイル部品70は、コイル巻線2(2A,2B)の表面が樹脂部40により覆われたコイル部品4と、一対の磁性体コア部材8,9と、を備えている。図8に示すように、磁性体コア部材8,9は、コイル部品4の開口52,54の中心軸線に沿ってコイル部品1を挟むように配置される。開口52,54は磁性体コア部材8,9の脚部が貫通する貫通孔である。一対の磁性体コア部材8,9で挟まれた状態において、第1及び第2の端子部24,26と、熱伝導性部材5が接続された接続部材3とは、磁性体コア部材8,9から突出された構成となる。
【0050】
磁性体コア部材8,9は、フェライト粉末を圧粉成形して得られるいわゆるU型コアとI型コアである。より具体的には、磁性体コア部材8は、長手方向を有する平板状の基部80と、基部80の一方の主面に突設された2本の円柱状の脚部81,82とからなっており、脚部81と脚部82とは、基部80に空間的に離間して接続されている。一方、磁性体コア部材9は、長手方向を有する平板状の基部90からなっている。
【0051】
磁性体コア部材8の脚部81,82はそれぞれコイル部品4の開口52,54に挿入され貫通している。開口52,54にそれぞれ挿入された脚部81,82は、磁性体コア部材9の基部90と当接する。
【0052】
また、磁性体コア部材8の基部80の一方の主面は、コイル部品4の一方の主面(図4に示される上面側)の樹脂部40に当接する。また、磁性体コア部材9の基部90の一方の主面は、コイル部品1の他方の主面(図5に示される底面)の樹脂部40に当接する。このとき、樹脂部40に設けられた凸部50a,50bが基部90の長手方向において対向する2つ側面とそれぞれ当接することにより、磁性体コア部材9とコイル部品4との間の幅方向の位置ズレの発生が抑制される。なお、コイル部品4の樹脂部40に設けられた凸部50a,50bは、それぞれ基部90の長手方向の外周に沿ってリブ状に形成されているが、凸部の形状は上記に限られず、例えば、基部90の外周に沿って短手方向を含む数箇所に設ける態様とすることもできるし、基部90に凹部を設けて、これと対応する位置に凸部を形成することによりコイル部品4と磁性体コア部材9との位置を当接位置を決定する態様とすることもできる。
【0053】
上記の構成を有するコイル部品70では、第1コイル巻線2Aの第1の端子部24に電流を入力し、第2コイル巻線2Bの第1の端子部24から出力した場合に、第1コイル巻線2Aの中心を貫通する脚部81の内部に生じる磁束の向き(第1の向き)と、第2コイル巻線2Bの中心を貫通する脚部82の内部に生じる磁束の向き(第2の向き)が異なるように、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bとが巻回されているため、第1及び第2のコイル巻線2A,2Bを流れる電流により、脚部81、82の内部と基部90の内部とを一周する磁路が形成される。従って、コイル部品70は4ターンのコイルとして機能する。このコイル部品70は、上記の構成を有することにより、例えばコイルを一定方向に積層させることにより4ターンのコイルを設けた場合と比較して、低背化が可能で放熱に優れるという効果を奏する。また、例えば、2つの2ターンコイルを八の字型(めがね巻線型)に接続して設けた場合と比較した場合には、接続部材3や、接続部材3に取り付けられた熱伝導性部材5からの放熱効果に優れるという効果を奏する。
【0054】
次に、上記のコイル部品70が好適に用いられるスイッチング電源装置について説明する。図9は、スイッチング電源装置100の回路図である。また、図10は、スイッチング電源装置100の斜視図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置100は、DC−DCコンバータとして機能するものであり、例えば100Vから500V程度の電圧を蓄電する高圧バッテリ等から供給される高圧の直流入力電圧Vinを低圧の直流出力電圧Voutに変換し、12〜16V程度の電圧を蓄電する低圧バッテリ等へ供給する。
【0055】
このスイッチング電源装置100は、図10に示すように、スイッチング電源装置100の筺体の一部であるベースプレート101を有し、このベースプレート101上に、入力平滑コンデンサ(入力フィルタ)130と、スイッチング回路120と、メイントランス140と、整流回路150と、チョークコイル(コイル部品)70と、平滑コンデンサ162と、からなる平滑回路160と、が固定されている。ベースプレート101は、その裏面が例えば水冷・空冷等により冷却される。すなわち、ベースプレート101はヒートシンクとしての機能を備える。
【0056】
このスイッチング電源装置100は、より具体的には、1次側高圧ライン121と1次側低圧ライン122との間に設けられたスイッチング回路120及び入力平滑コンデンサ130と、1次側及び2次側トランスコイル部141,142を有するメイントランス140と、2次側トランスコイル部142に接続された整流回路150と、整流回路150に接続された平滑回路160と、を備えている。
【0057】
スイッチング回路120は、スイッチング素子S1〜S4で構成されたフルブリッジ型の回路構成とされている。スイッチング回路120は、例えば駆動回路(不図示)から供給される駆動信号に応じて、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを入力交流電圧に変換する。
【0058】
入力平滑コンデンサ130は、入力端子T1、T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化する。トランス140は、スイッチング回路120で生成された入力交流電圧を変圧し、出力交流電圧を出力する。1次側及び2次側トランスコイル部141,142の巻数比は、変圧比によって適宜設定されている。ここでは、1次側トランスコイル部141の巻数を、2次側トランスコイル部142の巻数よりも多くしている。2次側トランスコイル部142は、センタータップ型のものであり、接続部C及び出力ラインLOを介して出力端子T3に導かれている。
【0059】
整流回路150は、整流ダイオード151A,151Bからなる単層全波整流型のものである。各整流ダイオード151A,151Bのカソードは、2次側トランスコイル部142に接続されている一方、アノードは、接地ラインLGに接続され、出力端子T4に導かれている。これにより、整流回路150は、トランス140からの出力交流電圧の各半短波期間を、個別に整流して直流電圧を生成する。
【0060】
平滑回路160は、チョークコイル(コイル部品)70と出力平滑コンデンサ162とを含んで構成されている。チョークコイル70は、出力ラインLOに挿入配置されている。出力平滑コンデンサ162は、出力ラインLOにおいてチョークコイル70と接地ラインLGとの間に接続されている。これにより、平滑回路160は、整流回路150で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、この直流出力電圧Voutを出力端子T3,T4から低圧バッテリ等へ供給する。
【0061】
ここで、図10に示すように、チョークコイル(コイル部品)70がスイッチング電源装置100のベースプレート101上に載置される際に、コイル部品70に含まれる熱伝導性部材5が、ネジ37及びネジ39により、ベースプレート101と接するように固定される。これによりチョークコイル70に含まれる第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bとを電気的に接続する接続部材3は、ネジ37により、熱伝導性部材5を介してベースプレート101(スイッチング電源装置100の筺体)に対して接続される。これにより、チョークコイル70に電流が流れた際に第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bにおいて発生する熱は、接続部材3から熱伝導性部材5を介して、ヒートシンクとして機能するベースプレート101に対して伝導される。したがって、熱伝導性部材5を介してベースプレート101と接続しない場合と比較して、コイル巻線2(2A,2B)において発生する熱の放熱性をより高めることができる。
【0062】
以上のように構成されたスイッチング電源装置100において、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされて入力交流電圧が生成され、トランス140の1次側トランスコイル部141へと供給される。そして、生成された入力交流電圧が変圧され、2次側トランスコイル部142から出力交流電圧として出力される。そして、この出力交流電圧が整流回路150によって整流されると共に平滑回路160によって平滑化され、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力されることとなる。なお、スイッチング電源装置100においてコイル部品4が用いられるのは、上記実施形態に示すチョークコイル70に限られない。すなわち、コイル部品4は、メイントランス140に対しても好適に用いられる。
【0063】
以上のように、本実施形態に係るコイル部品1によれば、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bとを電気的に接続する接続部材3に対して、電気絶縁性且つ熱伝導性を有する熱伝導性部材5が接続されていることため、第1及び第2コイル巻線2A,2Bにおいて発生する熱を熱伝導性部材5から効果的に放熱することができる。
【0064】
また、上記のコイル部品4のように、第1コイル巻線2A及び第2コイル巻線2Bの周囲及び内周縁が樹脂部40により覆われていることにより、コイル部品4を挟む磁性体コア部材8,9との絶縁及び隣接するコイル部材10,12間における絶縁が達成される。そして、コイル部品4のように第1コイル巻線2A及び第2コイル巻線2Bの周囲が樹脂部40により覆われている場合、第1コイル巻線2A及び第2コイル巻線2Bの表面からの放熱が制限される。したがって、熱伝導性部材5が設けられない場合と比較して、本実施形態に示すように接続部材3に対して熱伝導性部材5が接続されることによる放熱効果がより顕著となる。
【0065】
また、上記のコイル部品1をスイッチング電源装置100に用いることにより、第1及び第2コイル巻線2A,2Bにおいて発生する熱が接続部材3から熱伝導性部材5を介してスイッチング電源装置100の筐体を構成するベースプレート101に対して伝導させるため、より効果的に放熱を行うことができる。なお、このコイル部品1をメイントランス140に用いる場合であっても、同様に、コイル巻線2から効果的に放熱を行うことができるコイル部品1を用いたトランスを得ることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0067】
例えば、上記実施形態では、コイル部品4として、並設された2つのコイル巻線2(2A,2B)の表面が樹脂部40により被覆されることにより磁性体コア部材と対向する最外のコイル部材(第1及び第2のコイル部材10,12)の板面、隣接する第1及び第2のコイル部材10,12の間、及び第1及び第2のコイル部材10,12の内周縁における絶縁が達成される構成について説明したが、この絶縁の達成は樹脂部40により被覆された構成によるものでなくてもよい。例えば、コイル部品1に対して、上記の部位における絶縁が達成されるようにボビン等の部品を取り付ける態様とすることもできる。
【0068】
また、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bとは同じ形状の部材(コイル巻線2)からなる構成について説明したが、互いに異なる形状であってもよい。また、コイルの巻回数についても、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bとの間で異なっていてもよい。すなわち、コイル巻線2(2A,2B)のコイル部材の数は、各々において1つ以上であればよい。また、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bの第2端子部26は、接続部材3とネジ38によりそれぞれ接続される構成について説明したが、接続部材3とコイル巻線2(2A,2B)とは、例えばリベットで固定されていてもよい。また、接続部材3は、溶接によりコイル巻線2(2A,2B)の双方又は一方と接続されていてもよい。さらに、コイル巻線2(2A,2B)のいずれか一方と接続部材3とが一体化した状態で例えば打ち抜き加工等により成形されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bとが平面上に並設されたような構成について説明したが、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bとは、例えば、段差を持って並設されていてもよい。この場合、第1コイル巻線2Aと第2コイル巻線2Bと端子部を接続する接続部材3は、上記実施形態の態様から適宜変形されて用いることができる。
【0070】
また、コイル部品1では熱伝導性部材5が接続部材3に接続されている構成について説明しているが、コイル部品1の熱伝導性部材5は、接続部材3とは異なる場所にさらに設けられる構成であってもよい。例えば、コイル巻線2(2A,2B)の外部に露出している部分に対して熱伝導性部材を取り付ける構成とすることもできる。
【0071】
また、第1のコイル部材10及び第2のコイル部材12に設けられた突出部34,36の位置は適宜変更することができる。また、突出部34,36の数についても変更することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、突出部34,36の外周はそれぞれ樹脂部44,46により覆われて、突出部34,36の一部の表面が露出している態様について説明しているが、この樹脂部44,46は、他の装置等と接触した際の絶縁性を保つために設けられているものであり、必須ではない。すなわち、突出部34,36の表面の一部領域に限られず、突出部33,35のように全ての表面が露出している態様であってもよい。
【0073】
また、一対の磁性体コア部材8,9の形状は、上記実施形態に示すように一方の磁性体コア部材8が脚部81,82を備えるいわゆるUI型の形状に限られない。例えば、磁性体コア部材8,9の双方が脚部を備えるいわゆるUU型の形状や、脚部81,82を備えていない空芯コアとすることもできる。
【0074】
また、スイッチング電源装置の構成は図9,10に限られない。すなわち、本実施形態に係るコイル部品1は、例えばインバータ等にも好適に用いられる。
【符号の説明】
【0075】
1,4…コイル部品、2…コイル巻線、3…接続部材、5…熱伝導性部材、8,9…磁性体コア部材、10…第1のコイル部材、12…第2のコイル部材、14,16…開口、18…連結部、20,22…スリット、30,32…切込部、34,36…突出部、40…樹脂部、70…チョークコイル(コイル部品)、100…スイッチング電源装置、140…メイントランス。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線の周りに巻回され、その中央に開口を有する第1コイル巻線と、
前記第1軸線に沿う第2軸線の周りに巻回され前記第1コイル巻線に並設され、その中央に開口を有する第2コイル巻線と、
前記第1コイル巻線の一方の端部と、前記第2コイル巻線の一方の端部と、を電気的に接続する接続部材と、
前記接続部材に接するように設けられた電気絶縁性を有する熱伝導性部材と、
を備え、
前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線を流れる電流により、前記第1コイル巻線の前記開口内を貫き、さらに前記第2コイル巻線の前記開口内を前記第1コイル巻線の前記開口内を貫く方向とは逆の方向に貫く磁束を生じるように、前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線のそれぞれが巻回される
ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記接続部材は、前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線の端部のうち、前記第1軸線及び第2軸線の延びる方向に沿って前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線に対して同一の方向にある端部同士を接続する
ことを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1コイル巻線と前記第2コイル巻線とは、同一形状の部材からなることを特徴とする請求項1又は2記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1コイル巻線及び前記第2コイル巻線のそれぞれは、有端リング状の板状のコイル部材を複数連結させてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1コイル巻線と前記第2コイル巻線とを挟み込む一対の磁性体コア部材を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のコイル部品を備えることを特徴とするトランス。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のコイル部品を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記接続部材は、前記スイッチング電源装置の筺体に対して、前記熱伝導性部材が接することを特徴とする請求項7記載のスイッチング電源装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−225633(P2010−225633A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68193(P2009−68193)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】