説明

コイル部品の製造方法及び樹脂の評価方法

【課題】 コアに対して適切な樹脂を選択することが可能なコイル部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 この製造方法は、一平面に沿って形成されるコイルとそれに沿って設けられるコアとを備え、コイルとコアとの間に樹脂が介在しているコイル部品の製造方法であって、コアと同種の材料によって形成されると共に、溝が形成されている基板を準備する準備工程(S01)と、溝に樹脂を充填する充填工程(S02)と、溝を跨ぐようにフェライトスティックを基板に載置する載置工程(S03)と、樹脂を硬化させて、溝に跨っている部分におけるフェライトスティックの凹み量を計測する計測工程(S04)と、当該計測結果に応じて樹脂を選定する選定工程(S05)と、当該選定した樹脂と、コイルと、コアとによってコイル部品を作製する作製工程(S06)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品の製造方法及び樹脂の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
張り合わせ構造の薄型コイル部品において、異種材料間の接合性を改善したものが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。下記特許文献1に記載のコイル部品は、磁性体板と平面コイルとを接着性樹脂層を介して貼り合わせたものであって、接着性樹脂層を構成する接着性樹脂の特性(ガラス転移温度、線膨張係数、ヤング率)をある範囲内に収めることで接合性を向上させようとしている(下記特許文献の段落番号0016等参照)。
【特許文献1】特開2004−146655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1においては、コイル部品の接合性をリフローサイクル試験によって評価している。上記特許文献1に記載のリフローサイクル試験は、最高温度230℃,4分で10回のサイクルを行っている。しかしながら、より厳しい熱環境で耐えることができるコイル部品が求められる場合があり、その場合には、上記特許文献1に記載のコイル部品では対応することができない。
【0004】
また、より厳しい熱環境で耐えることができるコイル部品を提供するためには、用いる樹脂と他の部品(例えばコア)とを組み合わせた場合の挙動を検証する必要があるが、上記特許文献1においてはその点について何ら開示されていない。
【0005】
そこで本発明では、コイルとコアとの間に樹脂が介在しているコイル部品の製造方法であって、コアに対して適切な樹脂を選択することが可能なコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。また、コアに対して適切な樹脂を選択するための樹脂の評価方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコイル部品の製造方法は、一平面に沿って形成されるコイルとコイルに沿って設けられるコアとを備え、コイルとコアとの間に樹脂が介在しているコイル部品の製造方法であって、コアと同種の材料によって形成されると共に、少なくとも一つの凹部が形成されている基板を準備する準備工程と、凹部に樹脂を充填する充填工程と、凹部を跨ぐように評価用部材を基板に載置する載置工程と、樹脂を硬化させて、凹部に跨っている部分における評価用部材の凹み量を計測する計測工程と、当該計測結果に応じて樹脂を選定する選定工程と、当該選定した樹脂と、コイルと、コアとによってコイル部品を作製する作製工程と、を備える。
【0007】
本発明によれば、コアと同種の材料によって形成される基板に形成された凹部に樹脂を充填し、その状態で硬化させた後に評価用部材の凹み量を計測するので、実際にコイル部品を作製した状態での樹脂の収縮量を適切に評価できる。従って、コアに対して適切な樹脂を選択してコイル部品を製造することが可能となる。
【0008】
また本発明のコイル部品の製造方法では、選定工程においては、計測工程において計測された凹み量が4μm以下の樹脂を選定することも好ましい。凹み量が4μm以下の樹脂を選定するので、収縮量がコイル部品の品質に与える影響を効果的に低減できる。
【0009】
また本発明のコイル部品の製造方法では、基板を形成する材料と、評価用部材を形成する材料とが同種であることも好ましい。基板を形成する材料と評価用部材を形成する材料が同種であるから、例えばコイル部品を同じ材料によって形成される2つの部材によって構成する場合に適切な樹脂を選択することができる。
【0010】
また本発明のコイル部品の製造方法では、基板を形成する材料と、評価用部材を形成する材料とが異種であることも好ましい。基板を形成する材料と評価用部材を形成する材料が異種であるから、例えばコイル部品を異なる材料によって形成される2つの部材によって構成する場合に適切な樹脂を選択することができる。
【0011】
また本発明のコイル部品の製造方法では、コアは、コイルをその間に挟んで配置される一対の第1のコア部分及び第2のコア部分を有しており、基板を形成する材料は第1のコア部分を形成する材料と同種であり、評価用部材を形成する材料は第2のコア部分を形成する材料と同種であることも好ましい。基板の材料を第1のコア部分の材料に、評価用部材の材料を第2のコア部分の材料に、それぞれ合わせているのでより適切な樹脂を選択できる。
【0012】
本発明の樹脂の評価方法は、平面に沿って形成されるコイルとコイルに沿って設けられるコアとを備え、コイルとコアとの間に樹脂が介在しているコイル部品における樹脂の評価方法であって、コアと同種の材料によって形成されると共に、少なくとも一つの凹部が形成されている基板を準備する準備工程と、凹部に樹脂を充填する充填工程と、凹部を跨ぐように評価用部材を基板に載置する載置工程と、樹脂を硬化させて、凹部に跨っている部分における評価用部材の凹み量を計測する計測工程と、当該計測結果に応じて樹脂を選定する選定工程と、を備える。
【0013】
本発明によれば、コアと同種の材料によって形成される基板に形成された凹部に樹脂を充填し、その状態で硬化させた後に評価用部材の凹み量を計測するので、実際にコイル部品を作製した状態での樹脂の収縮量を適切に評価できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コアに対して適切な樹脂を選択することが可能なコイル部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の知見は、例示のみのために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0016】
本発明の実施形態であるコイル部品の製造方法及び樹脂の評価方法を説明するのに先立って、本実施形態の製造方法によって製造されるコイル部品について図1を参照しながら説明する。図1は、コイル部品1の斜視図である。コイル部品1は表面実装型のコイル部品である。コイル部品1は、平板状のコア構造体10(コア)と、他の基板と電気的に接続される外部端子20とを備えている。コア構造体10は、主に平板状の上部フェライトコア11(第1のコア部分)及び主に平板状の下部フェライトコア12(第2のコア部分)から構成されており、上部フェライトコア11と下部フェライトコア12が組み合わされることで全体として平板状の形状をなしている。
【0017】
コイル構造体10の分解斜視図を図2に示す。上部フェライトコア11は、矩形平板状の平板部111と、その平板部111に対して垂直に延びる外脚部112とを有している。外脚部112は一対設けられており、一方の外脚部112は平板部111の一辺から、他方の外脚部112はその一辺と平行な辺から、それぞれ同じ方向に延びている。従って、外脚部112が下部フェライトコア12に立脚するように上部フェライトコア11を配置すると、上部フェライトコア11の平板部111と下部フェライトコア12との間に空隙が形成される。
【0018】
下部フェライトコア12は、矩形平板状の平板部121と、その平板部121の中央部分から突出する突起部122を有している。突起部122は、角柱形状をなしている凸部である。下部フェライトコア12の平板部121に上部フェライトコア11の脚部112の先端面を突き合わせてコア構造体10を構成すると、実質的に閉磁路となった外殻部が構成されると共に、外殻部の内側に突起部122が配されることになる。
【0019】
図1の状態から外部端子20を取り除いた状態の斜視図を図3に示す。図3に示すように、コア構造体10を構成する上部フェライトコア11と下部フェライトコア12との間における空隙部分にコイル基板30が納められている。
【0020】
コイル基板30は保護樹脂層33によって覆われている。保護樹脂層33の周囲には接着樹脂層40が設けられている。従って、コイル基板30とコア構造体10との間には保護樹脂層33及び接着樹脂層40が介在している。保護樹脂層33はコイル基板30を保護するために設けられている樹脂層である。
【0021】
接着樹脂層40は、保護樹脂層33で覆われたコイル基板30をコア構造体10に対して固定するための樹脂層である。接着樹脂層40は、エポキシ樹脂に球状のゴムフィラーを混入した樹脂で形成されている。接着樹脂層40には更に球状のシリカが混入されている。接着樹脂層40に用いられる樹脂は、エポキシ、フェノール、アクリルといった樹脂及びそれらの混合樹脂である。ゴムフィラーの材料としては、シリコーンが用いられることが好ましく、ブタジエンゴムやアクリルゴムでもよい。
【0022】
コア構造体10の空隙が臨む端面からは、コイル基板30の一端面が露出している。この一端面においては、絶縁板31、導出端電極32、及び保護樹脂層33が露出している。絶縁板31はコイル基板30を構成する基幹部分となる基板である。導出端電極32は後述するコイルに電気的に接続されており、図1に示した外部端子20とも電気的に接続される部分である。
【0023】
コイル基板30について図4を参照しながら説明する。図4はコイル基板30の平面図である。コイル基板30の中央部分には穴35が形成されている。導体材料によって形成されたコイル34が、穴35を囲むように配置されている。コイル34は、穴35に望む部分から外側に向かって、穴35を囲むように渦巻き状に形成されている。コイル34はコイル基板30の両面に形成されていて、それぞれ導出端電極32に電気的に接続されている。
【0024】
コイル基板30の一方の面に形成されているコイル34が接続されている導出端電極32と、他方の面に形成されているコイル34が接続されている導出端電極32とは、それぞれコイル基板30の対向する辺に設けられている。また、コイル基板30の両面に設けられているコイル34は、穴35の周縁部に形成された表裏コンタクト部36によって互いに電気的に接続されている。従って、コイル基板30の一方の辺に設けられている導出端電極32と、他方の辺に設けられている導出端電極32との間に電圧を印加すると、コイル基板30の一方の面に形成されているコイル34から、他方の面に形成されているコイル34へと流れる電流が生じる。
【0025】
コイル基板30の穴35には下部フェライトコア12の突起部122が挿入される。この様子を説明するために、図3における下部フェライトコア12の突起部122近傍での断面図を図5に示す。図5に示すように、下部フェライトコア12の突起部122はコイル基板30の穴35に挿入されている。上部フェライトコア11の外脚部112と、下部フェライトコア12の突起部122とはほぼ同じ長さとなるように形成されている。従って、上部フェライトコア11と下部フェライトコア12とを所定間隔をあけて配置すると、突起部122の先端と上部フェライトコア11との間には空隙が生じ、微小ギャップ41を形成できる。同様に、外脚部112の先端と下部フェライトコア12との間にも空隙が生じ、微小ギャップ42を形成できる。
【0026】
本実施形態の場合、下部フェライトコア12の突起部122が形成されている面と、上部フェライトコア11の外脚部112が形成されている面とのそれぞれに沿って接着樹脂層40が形成され、コイル基板30を挟み込むように固定している。従って、微小ギャップ41及び42にはそれぞれ接着樹脂層40が充填形成されている。
【0027】
この微小ギャップ41及び42は、コイル基板30のコイル34に流れる電流で、上部フェライトコア11及び下部フェライトコア12が磁気飽和するのを緩和するために設けられている。コア構造体10は、その一辺が数mm以下の超小型形状をしていることから、微小ギャップ41及び42の寸法(突起部122の先端と上部フェライトコア11との間の距離、外脚部112の先端と下部フェライトコア12との間の距離)は好ましくは0.1〜100μm、更に好ましくは0.1〜50μmに設定される。
【0028】
コイル34及び表裏コンタクト部36の表面には酸化膜34aが形成されている。酸化膜34aはコイル34及び表裏コンタクト部36の表面に一様に形成されている。従って、コイル基板30の周囲に配置される保護樹脂層33は、コイル34の各巻き線の間に一様に入り込む。この結果、コイル34と保護樹脂層33との間に微小空洞が形成されにくくなり、コイル34と保護樹脂層33との密着性がより向上する。
【0029】
引き続いて、コイル部品1の製造方法及び樹脂の評価方法について説明する。図6は、コイル部品1の製造方法の手順を示す図である。まず、上部フェライトコア11及び下部フェライトコア12と同種の材料によって形成されている基板を準備する(ステップS01)。また、フェライトスティック(評価用部材)も準備する。フェライトスティックは、幅5mm、厚み0.3mm、長さ80mmの角柱状部材である。
【0030】
基板6及びフェライトスティック7の形状を図7に示す。図7に示す基板6は、その主面61を掘り下げて3本の溝611,612,613(凹部)が形成されている。溝611〜613は、基板6の互いに対向する側面62から側面63に渡って形成されている。本実施形態の場合、基板6は、上部フェライトコア11(下部フェライトコア12)に用いるフェライト基板を厚み2mm、縦70mm、横70mmの板状に加工したものが用いられている。基板6は、その加工された板に、深さ0.2mm、幅5.0mmの溝611〜613を20mmピッチで3本形成することで作製される。この溝の形成は、スライサーによる研磨加工で行う。
【0031】
以降の説明は、図6に加えて、図8も参照しながら説明する。図8は、図6に示す製造方法の手順に沿って、図7に示す基板6の状態を示す図である。図8の(A)〜(G)は、基板6の溝612に相当する部分の断面を示した図である。ステップS01においては、図8の(A)に示すように、基板6の溝612には何も充填されていない状態である。
【0032】
続いて、基板6の溝611〜613に樹脂R1を充填する(図6のステップS02、図8の(B))。ここで溝611〜613に充填する樹脂R1は、コイル部品1の保護樹脂層33を形成する樹脂を用いる。樹脂R1を硬化させた後、溝611〜613の略半分程度の深さに樹脂R1が残るように余分な樹脂を除去する(図8の(C))。
【0033】
続いて、基板6の溝611〜613に充填されている樹脂R1に重ねて樹脂R2を充填する(図8の(D))。溝611〜613から溢れ出した樹脂R2をスキージによって除去する(図8の(E))。
【0034】
続いて、樹脂R2を満たした溝611〜613と垂直に交わる方向に沿って、3本の溝611〜613全てにまたがるように、フェライトスティック7を20mmピッチで載置する(図6のステップS03、図8の(F))。フェライトスティック7を載置した後に、基板6に向けて加圧しながら、基板6の主面61とフェライトスティック7との間に介在している樹脂を押し流す。
【0035】
続いて、コイル部品1の接着樹脂層40を形成する樹脂を硬化させるのと同様の条件で硬化させる(図6のステップS04、図8の(G))。硬化後、3本の溝611〜613の中央の溝612における、フェライトスティック7上部の凹み量を段差計によって測定する。この凹み量を組み込み硬化収縮量とする。
【0036】
続いて、組み込み硬化収縮量に基づいて、樹脂を選定する(図6のステップS05)。選定の例を図9を参照しながら説明する。図9は、樹脂1〜10を上述の樹脂R2に相当するものとして組み込み硬化収縮量を測定した結果を示している。また、完成後クラック、試験後クラック、剥離、特性変動率についても測定した結果を示している。
【0037】
完成後クラックは、各樹脂を用いてコイル部品1を作製した場合に、その完成後における上部フェライトコア11又は下部フェライトコア12へ発生するクラックである。試験後クラックは、コイル部品1の熱衝撃試験後における上部フェライトコア11又は下部フェライトコア12へ発生するクラックである。
【0038】
熱衝撃試験は、低温が−55℃で高温が+125℃の温度変化を、656サイクル与える試験である。尚、1サイクルは、低温30分、高温30分である。剥離は、この熱衝撃試験を行った後に発生する剥離である。
【0039】
特性変動率は、リフロー試験を2回行った後のコイル部品1のインダクタンスの変化率を示している。リフロー試験は、1回当たり、260℃をピークとしてイン〜アウトを7分づつ行っている。
【0040】
図9に示す例では、樹脂1〜3は、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂である。樹脂4〜10は、エポキシ樹脂に球状のシリカ及び球状のゴムフィラー(シリコーンゴム)を混入した樹脂である。
【0041】
図9によれば、各樹脂の組み込み硬化収縮量と、各樹脂を用いてコイル部品1を作製した場合に発生するクラック等との間には相関関係があることが分かる。組み込み硬化収縮量が4μm以下である樹脂6〜10を用いると、完成後クラック、試験後クラック、剥離のいずれも発生せず、特性変動率も極めて低く抑えることができる。従って、組み込み硬化収縮量が4μm以下である樹脂6〜10を選択する。
【0042】
図6に戻り、選択した樹脂を用いてコイル部品1を作製する(ステップS06)。コイル部品1の作製方法について、図1〜5を併せて参照しながらより具体的に説明する。まず、コイル部品1に用いられるコイル基板30を作製する。
【0043】
コイル基板30の作成方法を説明する。まず、絶縁板31を準備する。この絶縁板31は板厚が60μmのものであって、ガラスクロスにBTレジンが含浸されており、既に穴35が形成されているものとする。
【0044】
続いて、絶縁板31の全面に下地層を無電解めっきにてそれぞれ同時に形成する。この絶縁板31の全面に同時に形成した下地層それぞれの上にフォトレジスト層をそれぞれ同時に電着成膜する。この表面及び裏面に形成したフォトレジスト層において、コイル34を形成しようとするパターンに沿ってフォトリソグラフィ法で表面及び裏面の片面毎に露光を行い、その後表面及び裏面同時に現像し、除去部を形成する。
【0045】
このようにパターン形成したフォトレジスト層をめっきマスクとして、除去部に相当する部分に選択的に電解めっき法により、表面及び裏面の両面同時にコイル用めっき層を形成する。このコイル導体用めっき層を形成した後、めっきマスクとしてのフォトレジスト層を表面及び裏面の両面同時に剥離除去する。
【0046】
この状態から、コイル用めっき層が形成されている部分以外の下地層をエッチングして除去し、下地部60をコイル用メッキ層と絶縁板31との間に残す。
【0047】
その後、選択めっきマスク無しで、電解めっき法によりコイル用めっき層を電着により更に成長形成させる。これにより、コイル34としての十分な肉厚の導体部が得られる。隣り合うコイル間の間隔が15μm以下になるまで高密度にコイル34を成長形成させることができる。
【0048】
コイル用めっき層の形成完了によりコイル34を絶縁板31の両面に形成し終えた後、コイル34の表面に酸化膜34aを形成する。その後、保護樹脂層33を絶縁板31の両面に印刷し、保護樹脂層33でコイル34を被覆して保護することでコイル基板30が完成する。
【0049】
このように作製したコイル基板30と、上部フェライトコア11と、下部フェライトコア12と、のそれぞれに接着樹脂層40となる樹脂を塗布する。この樹脂は、上述のステップS05で選択された樹脂である。その後、上部フェライトコア11と下部フェライトコア12との間にコイル基板30を挟んで接着し、コイル部品1を得る。
【0050】
尚、樹脂の評価方法としての実施形態は、上述したステップS01〜S05によって実現される。
【0051】
上述した本実施形態によれば、上部フェライトコア11と同種の材料によって形成される基板6に形成された溝611〜613に樹脂R1及びR2を充填し、その状態で硬化させた後にフェライトスティック7の凹み量を計測するので、実際にコイル部品1を作製した状態での樹脂R1及びR2の収縮量を適切に評価できる。従って、上部フェライトコア11及び下部フェライトコア12に対して適切な樹脂を選択してコイル部品1を製造することが可能となる。
【0052】
尚、本実施形態では、コイル部品1の形状に合わせて基板6に溝611〜613を形成したが、実際に製造するものの形態によっては丸穴といった凹部を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態である製造方法によって製造されるコイル部品の外観を示す図である。
【図2】図1のコア構造体を示す図である。
【図3】図1のコイル部品から外部端子を取った様子を示す図である。
【図4】図3のコイル基板の平面図である。
【図5】図3のコイル部品の中央付近における断面図である。
【図6】本発明の実施形態である製造方法の手順を示す図である。
【図7】図6に示す製造方法に用いられる基板の構成を示す図である。
【図8】図6に示す製造方法の手順に沿って、図7の基板の状態を示す図である。
【図9】本実施形態において選択される樹脂の例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1…コイル部品、10…コア構造体、11…上部フェライトコア、12…下部フェライトコア、20…外部端子、30…コイル基板、31…絶縁板、32…導出端電極、33…保護樹脂層、34…コイル、36…表裏コンタクト部、40…接着樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一平面に沿って形成されるコイルと前記コイルに沿って設けられるコアとを備え、前記コイルと前記コアとの間に樹脂が介在しているコイル部品の製造方法であって、
前記コアと同種の材料によって形成されると共に、少なくとも一つの凹部が形成されている基板を準備する準備工程と、
前記凹部に樹脂を充填する充填工程と、
前記凹部を跨ぐように評価用部材を前記基板に載置する載置工程と、
前記樹脂を硬化させて、前記凹部に跨っている部分における前記評価用部材の凹み量を計測する計測工程と、
当該計測結果に応じて樹脂を選定する選定工程と、
当該選定した樹脂と、前記コイルと、前記コアとによって前記コイル部品を作製する作製工程と、
を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記選定工程においては、前記計測工程において計測された凹み量が4μm以下の樹脂を選定することを特徴とする、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記基板を形成する材料と、前記評価用部材を形成する材料とが同種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記基板を形成する材料と、前記評価用部材を形成する材料とが異種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記コアは、前記コイルをその間に挟んで配置される一対の第1のコア部分及び第2のコア部分を有しており、
前記基板を形成する材料は前記第1のコア部分を形成する材料と同種であり、前記評価用部材を形成する材料は前記第2のコア部分を形成する材料と同種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
一平面に沿って形成されるコイルと前記コイルに沿って設けられるコアとを備え、前記コイルと前記コアとの間に樹脂が介在しているコイル部品における前記樹脂の評価方法であって、
前記コアと同種の材料によって形成されると共に、少なくとも一つの凹部が形成されている基板を準備する準備工程と、
前記凹部に樹脂を充填する充填工程と、
前記凹部を跨ぐように評価用部材を前記基板に載置する載置工程と、
前記樹脂を硬化させて、前記凹部に跨っている部分における前記評価用部材の凹み量を計測する計測工程と、
当該計測結果に応じて樹脂を選定する選定工程と、
を備える樹脂の評価方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−261582(P2006−261582A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80230(P2005−80230)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】