説明

コイル部品及びその製造方法

【課題】 製造工数の低減,製造コストの削減及びコイル部品のサイズダウンを図るとともに、全体の放熱性をより高める。
【解決手段】 平角線Wfを用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する平角線Wfの両端に一体のコイル端子部を有するコイル部を備えてなるコイル部品を構成するに際して、導電性素材Eにより形成した所定の厚さを有するプレート基材Prからコイル本体部3及びコイル端子部4p,4qに対応する部位を一体に打ち抜いたコイル基材Pcに対する曲げ処理により製作したコイル部2と、コイル本体部3における各ターン部3t…間に挿入することにより各ターン部3t…間の電気的絶縁を行う絶縁素材Dにより形成した一又は二以上の絶縁片部5pa,5pb…,5qa,5qb…を所定間隔置きに設けたセパレータ部材5p,5qとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角線を用いたコイル本体部と一体のコイル端子部を有するコイル部を備えるコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平角線を用いたコイル部を備えるコイル部品、特に、平角線を用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する平角線の両端に一体に形成したコイル端子部を有するコイル部を備えたコイル部品としては、特許文献1〜4で開示されるコイル部品が知られている。
【0003】
特許文献1には、基板取付用の面装着端子と端末処理端子とを有するとともに磁芯位置決め用の係合溝を有する磁芯取付用端子台と、係合溝で磁芯取付用端子台の内側に位置決め固定される一対のE型コアと、一対のE型コアの円柱状部の周囲に設けられていて平角線を環状に巻回してなるコイルとを備え、コイルの引き出し端部に形成された穴に端末処理端子を挿通接続した構成を有するインダクタンス素子及び該素子用コイルが開示されている。特許文献2には、偏平帯状をなす絶縁平角線導体を、その平面がコイル中心線の方向に対し交差するようにエッジワイズ状に巻回加工して形成されるコイルを、継ぎ目の無い磁路を形成する鉄心に装着したインダクタンス要素部品が開示されている。特許文献3には、ベースの裏面の矩形凹部には四角形状の穴が設けてあり、ベースの一縁部に短形凹部に臨ませて切り欠きが設けてあるとともに、端子の底面に固着用リブが設けてあり、また、端子を、ベースに設けた切り欠き及び短形凹部に嵌着し、両端子の固着用リブを、矩形凹部に設けた穴内へ折曲させることによって端子がベースに固着してあり、エッジワイズコイルの両端部は端子に各別に当接させてあり、エッジワイズコイルの両端部は、半田によって端子に固定してあるインダクタが開示されている。特許文献4には、平角線をエッジワイズ巻きしたコイルと、このコイルの軸線方向の端面に各々設けられた絶縁性の樹脂からなる上側カバーおよび下側カバーと、これら上側カバーおよび下側カバーを間に挟んで閉磁路を形成する上側コアおよび下側コアとを備え、かつコイルは、エッジワイズ巻き部分から引き出されて一対の端子となる先端部が、それぞれ面外方向に屈曲されて下側カバーに形成された貫通孔内に挿通されてなるチョークコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−245217号公報
【特許文献2】特開平10−308315号公報
【特許文献3】特開2001−155932号公報
【特許文献4】特開2010−219473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した平角線を用いたコイル部を備える従来のコイル部品は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、コイル部を製作する場合、絶縁塗料(ポリイミド樹脂等)を表面に塗布した平角線材料をロール状に巻いた材料ロールを用意し、この材料ロールから繰り出される平角線材料を曲げ処理してコイル本体部を製作するとともに、コイル本体部を製作したなら、材料ロールから切断し、この後、コイル本体部から導出する平角線の両端部をコイル端子部として形成する。この際、コイル端子部を形成する部位から絶縁塗料を除去するとともに、必要により折曲げ形成したり円孔等を形成し、さらに、円孔等が大きい場合には、コイル端子部を潰すことにより面積を広くする。このように、従来のコイル部品は、コイル本体部を製作した後に、コイル端子部を形成する工程が必須となるため、製造工数の増加、更には製造コストの上昇を招く。
【0007】
第二に、コイル端子部は、平角線を直接利用して形成するため、製作できる形状等は限定される。即ち、コイル端子部が複雑な形状やより大きい形状等に形成する場合、平角線によっては対応できない場合も少なくない。この場合、別途製作した別体のコイル端子部を平角線の先端に接続(結合)する必要があるなど、部品点数の増加に伴うコイル部品の構成煩雑化及びサイズアップを招くとともに、更なる製造工数の増加及びコストアップを招く。
【0008】
第三に、コイル部は、平角線が密着して巻かれるため、放熱性を確保することが容易でない。特に、この種のコイル部品は、大電流を流して使用することも多く、発熱量が大きくなることから、全体の放熱性を高めることは重要な課題となるが、絶縁塗料を塗布した平角線の積層構造になるコイル部を有する従来のコイル部品は、放熱性が必ずしも良好であるとは言えない。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したコイル部品及びその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコイル部品1は、上述した課題を解決するため、平角線Wfを用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する平角線Wfの両端に一体のコイル端子部を有するコイル部を備えてなるコイル部品を構成するに際して、導電性素材Eにより形成した所定の厚さを有するプレート基材Prからコイル本体部3及びコイル端子部4p,4qに対応する部位を一体に打ち抜いたコイル基材Pcに対する曲げ処理により製作したコイル部2と、コイル本体部3における各ターン部3t…間に挿入することにより各ターン部3t…間の電気的絶縁を行う絶縁素材Dにより形成した一又は二以上の絶縁片部5pa,5pb…,5qa,5qb…を所定間隔置きに設けたセパレータ部材5p,5qとを具備してなることを特徴とする。
【0011】
一方、本発明に係るコイル部品の製造方法は、平角線Wfを用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する平角線Wfの両端に一体のコイル端子部を有するコイル部を備えてなるコイル部品を製造するに際し、導電性素材Eにより形成した所定の厚さを有するプレート基材Prからコイル本体部3及びコイル端子部4p,4qに対応する部位を一体に打ち抜いてコイル基材Pcを製作するコイル基材製作工程(S2)と、コイル基材Pcに対する曲げ処理によりコイル本体部3を製作するコイル本体部製作工程(S4)と、コイル部2に、絶縁素材Dにより形成した一又は二以上の絶縁片部5pa,5pb…,5qa,5qb…を所定間隔置きに設けたセパレータ部材5p,5qを組付け、絶縁片部5pa,5pb…,5qa,5qb…をコイル本体部3における各ターン部3t…間に挿入して各ターン部3t…間の電気的絶縁を行うセパレータ部材組付工程(S5,S6)と、を備えてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、好適な態様により、コイル部2に対して、絶縁素材Dにより形成したコイルボビン12を介して組付ける磁性材Mにより形成したコア11を設けることができる。この際、コア11は、一対のE型に形成したコア半部11u,11dの組合わせ(又はE型の第一コア分割部とI形の第二コア分割部の組合わせ)により構成できる。他方、セパレータ部材5p…は、支持基部5pm…及びこの支持基部5pm…から直角方向へ所定間隔置きに突出させた絶縁片部5pa,5pb…により一体形成できる。なお、コイル部2に対して、径方向における略180〔゜〕対向する位置から組付ける二つのセパレータ部材5p,5qを用いることができる。さらに、セパレータ部材5p,5qとコア11を当接させてセパレータ部材5p,5qに対する位置規制を行うことができる。したがって、製造する際には、セパレータ部材組付工程(S5,S6)後、コイル部2に対して、コイルボビン12を介してコア11を組付けるとともに、セパレータ部材5p,5qとコア11を当接させてセパレータ部材5p,5qに対する位置規制を行うコア組付工程(S7,S8)を設けることができる。なお、製造する際には、必要により、コイル基材製作工程(S2)後又はコイル本体部製作工程(S4)後、コイル端子部4p,4qに対する追加処理を行う追加処理工程(S3)を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係るコイル部品1及びその製造方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 導電性素材Eにより形成した所定の厚さを有するプレート基材Prからコイル本体部3及びコイル端子部4p,4qに対応する部位を一体に打ち抜いたコイル基材Pcを用いるため、コイル本体部3を製作した後にコイル端子部4p,4qを形成する工程が不要となり、製造工数の低減、更には製造コストの削減を図ることができる。なお、このようなプレート基材Prを利用するため、特に、ターン数の少ないコイル部品1の製造に最適となる。
【0015】
(2) コイル端子部4p,4qが複雑な形状或いは大きな形状等であっても、平角線Wfの両端に一体形成できるため、別途接続(結合)する別体のコイル端子部は不要となる。したがって、コイル端子部4p,4qの煩雑化を回避し、コイル部品1全体のサイズダウンを図れるとともに、更なる製造工数の低減及びコストダウンに寄与できる。
【0016】
(3) コイル本体部3における各ターン部3t…間に挿入することにより各ターン部3t…間の電気的絶縁を行う絶縁素材Dにより形成した一又は二以上の絶縁片部5pa,5pb…,5qa,5qb…を所定間隔置きに設けたセパレータ部材5p,5qを有するため、コイル本体部3の表面に塗布する絶縁塗料が不要になるとともに、各ターン部3t…間に挿入した絶縁片部5pa,5pb…により放熱空間を設けることができる。したがって、大電流を流して使用するコイル部品1であっても、全体の放熱性をより高めることができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、セパレータ部材5p…を、支持基部5pm…及びこの支持基部5pm…から直角方向へ所定間隔置きに突出させた絶縁片部5pa,5pb…により一体形成すれば、一体部品として形成できるため、プラスチック素材等の絶縁素材Dを用いて安価に製造可能となり、組付容易性及び組付安定性を高めることができるとともに、支持基部5pm…により、コイル本体部3の周面と他の部品(コア等)との絶縁を図ることができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、コイル部2に対して、径方向における略180〔゜〕対向する位置から組付ける二つのセパレータ部材5p,5qを設ければ、各ターン部3t…間における隙間の均等性及び安定性を確保できるとともに、各セパレータ部材5p…の小型化に寄与できる。また、放熱空間もより広くできるため、更なる放熱性の向上に寄与できる。
【0019】
(6) 好適な態様により、セパレータ部材5p,5qとコア11を当接させてセパレータ部材5p,5qに対する位置規制を行うようにすれば、セパレータ部材5p,5qを、別途の固定手段を用いることなくコイル部2に対しても固定できるため、更なる部品点数の削減及び製造工数の低減に寄与できる。
【0020】
(7) 好適な態様により、製造時に、コイル基材製作工程(S2)後又はコイル本体部製作工程(S4)後、コイル端子部4p,4qに対する追加処理を行う追加処理工程(S3)を設ければ、必要に応じてコイル端子部4p,4qに対する追加処理を行うことができる。即ち、実質的なコイル端子部4p,4qの形成は、コイル基材製作工程(S2)で行われるため、例えば、段差部を形成するなど、コイル基材製作工程(S2)で不足した処理を追加処理工程(S3)により補完することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好適実施形態に係るコイル部品の製造方法を説明するための製造工程図、
【図2】同コイル部品の分解図、
【図3】同コイル部品に用いるコイル部の斜視図、
【図4】同コイル部品に用いるセパレータ部材の平面図、
【図5】同コイル部品の製造方法の説明図、
【図6】同コイル部品の断面正面図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係るコイル部品1を構成する主要部品について、図2〜図6を参照して説明する。
【0024】
2はコイル部である。コイル部2は、図2及び図3に示すように、平角線Wfを用いたコイル本体部3及びこのコイル本体部3から導出する平角線Wfの両端に一体のコイル端子部4p,4qを有する。例示するコイル本体部3のターン数は3.5回であり、一回分をターン部3tで示す。また、一方のコイル端子部4pは、平角線Wfよりも広幅に形成し、接続用の円孔4phを有するとともに、平角線Wfの先端(一端)からクランク形に折曲した段差部4psを有する。他方のコイル端子部4qも、平角線Wfよりも広幅に形成し、接続用の円孔4qhを有するとともに、平角線Wfの先端(他端)から直角方向に延設させた延設部4qvを有する。
【0025】
5p,5qはセパレータ部材である。一方のセパレータ部材5pは、図2及び図4に示すように、支持基部5pm及びこの支持基部5pmから直角方向へ所定間隔置きに突出させた三つの絶縁片部5pa,5pb,5pcを有し、絶縁素材Dであるプラスチック素材等により一体成形する。セパレータ部材5pは、各絶縁片部5pa…をコイル本体部3における各ターン部3t…間に挿入して各ターン部3t…間の電気的絶縁を行うことができる。各絶縁片部5pa…は、図4に示すように、平角線Wfに沿った形状を有し、その長さは、例示の場合、コイル本体部3の全周長に対して概ね1/4〜1/3程度に選定した。また、支持基部5pmは、後述するコア11の内面に当接可能に形成する。例示の場合、当接するコア11の内面は平坦面となるため、支持基部5pmにおける当接部位も平坦面に形成し、コア11の内面によりセパレータ部材5pが位置規制(固定)されるように考慮する。
【0026】
このように、セパレータ部材5pを、支持基部5pm及びこの支持基部5pmから直角方向へ所定間隔置きに突出させた絶縁片部5pa,5pb…により一体形成すれば、一体部品として形成できるため、プラスチック素材等の絶縁素材Dを用いて安価に製造可能となり、組付容易性及び組付安定性を高めることができるとともに、支持基部5pm…により、コイル本体部3の周面と他の部品、具体的には、コア11の内面に対する絶縁を図ることができる利点がある。なお、他方のセパレータ部材5qも一方のセパレータ部材5pと同様に形成する。したがって、この場合、二つのセパレータ部材5p,5pを用意し、一方をセパレータ部材5pとし、他方をセパレータ部材5qとして使用すればよい。他方のセパレータ部材5qにおいて、5qa,5qb…は絶縁片部を示す。
【0027】
12はコイルボビンである。コイルボビン12は、第一ボビン分割部12mと第二ボビン分割部12sの組合わせにより構成する。第一ボビン分割部12mと第二ボビン分割部12sは、それぞれ絶縁素材Dであるプラスチック素材等により一体成形する。この場合、第一ボビン分割部12mは、コイル本体部3の内部空間に挿入するボビン筒部12mcとこのボビン筒部12mcの一端に一体形成することによりコイル本体部3の一方の端面側を覆うリング形のボビンバリア部12mbを有する。また、第二ボビン分割部12sはコイル本体部3の他方の端面側を覆うリング形のボビンバリア部として形成する。
【0028】
11はコアである。コア11は、一対のコア半部11uと11dの組合わせにより構成する。各コア半部11u,11dは、それぞれ磁性材Mにより一体成形する。一方のコア半部11uは、全体をE型に形成し、中央に、ボビン筒部12mc(コイル本体部3)の内部空間に挿入する円柱形に突出したインナコア部11uiを有するとともに、コイル本体部3の外側に位置するコの字形のアウタコア部11uoを有する。なお、他方のコア半部11dも一方のコア半部11uと同様に成形する。したがって、この場合、二つのコア半部11u,11uを用意し、一方をコア半部11uとして、他方をコア半部11dとして使用すればよい。他方のコア半部11dにおいて、11diはインナコア部、11doはアウタコア部11uoをそれぞれ示す。
【0029】
次に、本実施形態に係るコイル部品の製造方法について、図2〜図6を参照しつつ図1に示す製造工程図に従って説明する。
【0030】
なお、コア11を構成する一対のコア半部11u及び11dは、予め別途の焼成工程等により製造して用意するとともに、コイルボビン12を構成する第一ボビン分割部12m及び第二ボビン分割部12sは、予め別途の成形工程等により製造して用意する。
【0031】
以下、コイル部品1の製造手順について説明する。最初に、プレート基材Prを用意する(ステップS1)。図5(a)に、一例として矩形状のプレート基材Prを仮想線で示す。プレート基材Prは、例えば、銅素材等の導電性素材Eにより、前述した平角線Wfと同じ厚さに形成する。まず、プレート基材Prからコイル本体部3及びコイル端子部4p,4qに対応する部位を一体に打ち抜くコイル基材製作工程を行う(ステップS2)。この場合、プレート基材Prをプレス機等にセットし、このプレート基材Prから、型(パンチ)を用いて、図5(a)に示す複数のコイル基材Pc…を打ち抜き形成する。このコイル基材Pcは、直線状の平角線Wfを有するとともに、この平角線Wfの両端にコイル端子部4p,4qを有する。例示の場合、一方のコイル端子部4pは、平角線Wfよりも広幅に形成され、接続用の円孔4phを有するとともに、他方のコイル端子部4pは、平角線Wfよりも広幅に形成され、接続用の円孔4qhを有するとともに、平角線Wfの先端(他端)から直角方向に延設させた延設部4qvを有し、各コイル端子部4p,4qがこの時点で形成される。
【0032】
次いで、コイル基材製作工程で得られたコイル基材Pcに対して、追加処理工程により追加処理を行う(ステップS3)。例示するコイル部2は、図3に示すように、段差部4psを有するため、コイル基材Pcをプレス機等にセットし、コイル端子部4pに対して段差部4psを形成する。図5(b)に段差部4psを形成したコイル基材Pcを示す。なお、例示は、一方のコイル端子部4pに対してのみ段差部4psを形成した場合を示したが、他方のコイル端子部4qにも同様に設けることができる。このように、コイル基材製作工程後、コイル端子部4p,4qに対する追加処理を行う追加処理工程を設ければ、必要に応じてコイル端子部4p,4qに対する追加処理を行うことができる。即ち、実質的なコイル端子部4p,4qの形成は、コイル基材製作工程で行われるため、例示のように、段差部4psを形成するなど、コイル基材製作工程で不足した処理を追加処理工程により補完することができる。
【0033】
この後、コイル本体部製作工程に移行し、コイル基材Pcに対する曲げ処理(湾曲形成)によりコイル本体部3を製作する(ステップS4)。この場合、コイル基材Pcにおけるコイル端子部4pと4q間は平角線Wfとして形成されるため、この平角線Wfの部位を、曲げローラ等を通して曲げ処理し、図3に示すコイル本体部3を製作する。以上の工程を経て図3に示すコイル部2を得ることができる。
【0034】
次いで、コイル部2に、セパレータ部材5p…を組付け、絶縁片部5pa,5pb…をコイル本体部3における各ターン部3t…間に挿入するセパレータ部材組付工程を行う(ステップS5,S6)。この場合、図2に示すように、二つのセパレータ部材5p,5qを用意し、一方のセパレータ部材5pの各絶縁片部5pa,5pb,5pcを図2に示すように、コイル本体部3の周面側から各ターン部3t…間に挿入して各ターン部3t…間の電気的絶縁を行う。この状態を図6に示す。他方のセパレータ部材5qも、当該コイル本体部3の径方向における略180〔゜〕対向する位置から同様に組付けを行う。このように、コイル部2に対して、径方向における略180〔゜〕対向する位置から組付ける二つのセパレータ部材5p,5qを設ければ、各ターン部3t…間における隙間の均等性及び安定性を確保できるとともに、各セパレータ部材5p…の小型化に寄与できる。また、放熱空間もより広くできるため、更なる放熱性の向上に寄与できる利点がある。
【0035】
この後、図2に示すように、コイルボビン12を介してコア11を組付けるコア組付工程を行う(ステップS7,S8)。この場合、コイルボビン12は、第一ボビン分割部12m及び第二ボビン分割部12sにより構成するとともに、コア11は、一対のコア半部11u及び11dにより構成するため、これらの組付順序は問わず、組付性を考慮して任意の順序で組付けることができる。例えば、図2のように配した場合には、一方のコア半部11dのインナコア部11diに第二ボビン分割部12sを装着した後、セパレータ部材5p,5qを組付けたコイル部2をインナコア部11diに装着することができる。次いで、第一ボビン分割部12mをインナコア部11diに装着した後、他方のコア半部11uを第一ボビン分割部12mに装着することができる。
【0036】
これにより、図6の組付状態にすることができる。この場合、セパレータ部材5p…には、コア11の内面に当接する部位を平坦面に形成した支持基部5pm…を有するため、コア11を組付けた際には、セパレータ部材5p…の支持基部5pm…がコア11の内面に当接し、セパレータ部材5p,5qが位置規制(固定)されるとともに、コイル本体部3の周面とコア11の内面間が絶縁される。このように、セパレータ部材5p…とコア11を当接させてセパレータ部材5p…に対する位置規制を行うようにすれば、セパレータ部材5p…を、別途の固定手段を用いることなくコイル部2に対しても固定できるため、更なる部品点数の削減及び製造工数の低減に寄与できる利点がある。また、コイルボビン12及びコア11を組付けた際には、組付けた状態でコア11の外面にテーピングを施して固定する(ステップS9)。そして、汚れを除去するなどの必要な仕上げ処理を行うとともに、必要な検査(性能検査,外観検査等)を行えば、図6に示す目的のコイル部品1を得ることができる(ステップS10,S11)。
【0037】
よって、このような本実施形態に係るコイル部品1及びその製造方法によれば、導電性素材Eにより形成した所定の厚さを有するプレート基材Prからコイル本体部3及びコイル端子部4p,4qに対応する部位を一体に打ち抜いたコイル基材Pcを用いるため、コイル本体部3を製作した後にコイル端子部4p,4qを形成する工程が不要となり、製造工数の低減、更には製造コストの削減を図ることができる。なお、このようなプレート基材Prを利用するため、特に、ターン数の少ないコイル部品1の製造に最適となる。しかも、コイル端子部4p,4qが複雑な形状或いは大きな形状等であっても、平角線Wfの両端に一体形成できるため、別途接続(結合)する別体のコイル端子部は不要となる。したがって、コイル端子部4p,4qの煩雑化を回避し、コイル部品1全体のサイズダウンを図れるとともに、更なる製造工数の低減及びコストダウンに寄与できる。さらに、コイル本体部3における各ターン部3t…間に挿入することにより各ターン部3t…間の電気的絶縁を行う絶縁素材Dにより形成した一又は二以上の絶縁片部5pa,5pb…,5qa,5qb…を所定間隔置きに設けたセパレータ部材5p,5qを有するため、コイル本体部3の表面に塗布する絶縁塗料が不要になるとともに、各ターン部3t…間に挿入した絶縁片部5pa,5pb…により放熱空間を設けることができる。したがって、大電流を流して使用するコイル部品1であっても、全体の放熱性をより高めることができる。
【0038】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0039】
例えば、コア11は、一対のE型に形成したコア半部11u,11dの組合わせにより構成した場合を示したが、E型の第一コア分割部とI形の第二コア分割部の組合わせにより構成してもよい。また、追加処理工程は、コイル基材製作工程後に行う場合を示したが、コイル本体部製作工程後に行ってもよいとともに、この追加処理工程は、必要により設けることができる。したがって、例えば、例示したコイル部2のような段差部4ps等を形成しない場合には、必ずしも設けることを要しない。さらに、コア11及びコイルボビン12を組付けた場合を示したが、コア11及びコイルボビン12を設けないインダクタ、即ち、コイル部2にセパレータ部材5p,5qを組付けたのみの単純なインダクタとして構成してもよい。この際には、コイル部2にセパレータ部材5p,5qを固定するテーピング手段等の別途の固定手段を要する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るコイル部品及びその製造方法は、平角線を用いたコイル本体部に一体のコイル端子部を有する、インダクタ,トランス等の各種コイル部品に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1:コイル部品,2:コイル部,3:コイル本体部,3t…:ターン部,4p:コイル端子部,4q:コイル端子部,5p,5q:セパレータ部材,5pa,5pb…:絶縁片部,5qa,5qb…:絶縁片部,5pm…:支持基部,11:コア,11u,11d:コア半部,12:コイルボビン,Wf:平角線,E:導電性素材,D:絶縁素材,M:磁性材,Pr:プレート基材,Pc:コイル基材,(S2):コイル基材製作工程,(S3):追加処理工程,(S4):コイル本体部製作工程,(S5,S6):セパレータ部材組付工程,(S7,S8):コア組付工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角線を用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する前記平角線の両端に一体のコイル端子部を有するコイル部を備えてなるコイル部品において、導電性素材により形成した所定の厚さを有するプレート基材から前記コイル本体部及び前記コイル端子部に対応する部位を一体に打ち抜いたコイル基材に対する曲げ処理により製作したコイル部と、前記コイル本体部における各ターン部間に挿入することにより各ターン部間の電気的絶縁を行う絶縁素材により形成した一又は二以上の絶縁片部を所定間隔置きに設けたセパレータ部材とを具備してなることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記コイル部に対して絶縁素材により形成したコイルボビンを介して組付ける磁性材により形成したコアを備えることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
前記コアは、一対のE型に形成したコア半部の組合わせ,又はE型の第一コア分割部とI形の第二コア分割部の組合わせにより構成することを特徴とする請求項2記載のコイル部品。
【請求項4】
前記セパレータ部材は、支持基部及びこの支持基部から直角方向へ所定間隔置きに突出させた前記絶縁片部により一体形成することを特徴とする請求項1,2又は3記載のコイル部品。
【請求項5】
前記コイル部に対して、径方向における略180〔゜〕対向する位置から組付ける二つの前記セパレータ部材を備えることを特徴とする請求項4記載のコイル部品。
【請求項6】
前記セパレータ部材と前記コアを当接させて前記セパレータ部材に対する位置規制を行うことを特徴とする請求項4又は5記載のコイル部品。
【請求項7】
平角線を用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する前記平角線の両端に一体のコイル端子部を有するコイル部を備えてなるコイル部品の製造方法であって、導電性素材により形成した所定の厚さを有するプレート基材から前記コイル本体部及び前記コイル端子部に対応する部位を一体に打ち抜いてコイル基材を製作するコイル基材製作工程と、前記コイル基材に対する曲げ処理によりコイル本体部を製作するコイル本体部製作工程と、前記コイル部に、絶縁素材により形成した一又は二以上の絶縁片部を所定間隔置きに設けたセパレータ部材を組付け、前記絶縁片部を前記コイル本体部における各ターン部間に挿入して各ターン部間の電気的絶縁を行うセパレータ部材組付工程と、を備えてなることを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項8】
前記コイル基材製作工程後又は前記コイル本体部製作工程後、前記コイル端子部に対する追加処理を行う追加処理工程を備えることを特徴とする請求項7記載のコイル部品の製造方法。
【請求項9】
セパレータ部材組付工程後、前記コイル部に対して絶縁素材により形成したコイルボビンを介して磁性材により形成したコアを組付けるとともに、前記セパレータ部材と前記コアを当接させて前記セパレータ部材に対する位置規制を行うコア組付工程を備えることを特徴とする請求項7又は8記載のコイル部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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