説明

コイル部品

【課題】磁芯の密度を全体的に高めることにより磁気効率が良く、信頼性に優れたコイル部品を得ることを目的とするものである。
【解決手段】金属磁性体粉末と結合材を混ぜた磁性材料15を加圧成形してなる磁芯16と、この磁芯16の内部に埋め込まれた導線を螺旋状に巻回してなるコイル12とを備え、コイル12の巻回軸を含みこの巻回軸を上下にして断面を見たとき、コイル12の断面の外形形状を、中央部の幅を上下端の幅よりも大きくなるように構成したものであり、このようにすることにより圧粉成形するときに磁性材料15の流れが良くなり、密度を均一化でき、電気的特性、および信頼性に優れたコイル部品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に用いられるコイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンに代表されるCPUなどのLSIを組み込んだ電子機器の軽薄短小化が進み、これら電子機器を駆動するDC/DCコンバータなどの電源回路部は、駆動周波数を300kHz〜1MHzへ高周波化したり、駆動電源を低電圧大電流化するなどして搭載する電子部品を小型化、薄型化して電子機器の軽薄短小化に対応している。
【0003】
このような電源回路部に用いられるチョークコイルなどのコイル部品は、フェライト材よりも飽和磁束密度の大きい鉄を主成分とした金属磁性材料を粉末にすることにより高周波電流に対する渦電流損を小さくした金属磁性体粉末を用い、この金属磁性体粉末と熱硬化性樹脂からなる結合材とを混合した磁性材料に、コイルを埋設して加圧成形することにより、小型、薄型で高周波大電流に対応している。
【0004】
次に、このような従来のコイル部品について図面を参照して説明する。
【0005】
図13は従来のコイル部品の透過斜視図、図14は図13のA−A線の断面図である。
【0006】
図13、図14に示すように、従来のコイル部品は、中央に中空の中芯部1を有する絶縁皮膜銅線を巻回したコイル2と、このコイル2の両端部の引き出し線3と、この引き出し線3と接続した導電性の金属平板を加工して形成した端子4と、鉄を主成分とした金属磁性材料を粉末にした金属磁性体粉末と熱硬化性樹脂を混合し、これを顆粒状に造粒した磁性材料5を加圧成形して形成した磁芯6とからなり、コイル2と端子4の一部を成形金型(図示していない)内に配置し、この成形金型にコイル2と端子4の一部を覆うように磁性材料5を充填した後、コイル2の上下方向よりパンチ(図示していない)で2〜4t/cm2の加圧成形することによりコイル2を埋設した磁芯6を形成し、この加圧成形した磁芯6に150〜180℃の温度で1〜2時間の熱処理を施して熱硬化性樹脂を硬化させた後、端子4を磁芯6の側面から底面に向けて折り曲げ加工してコイル部品を構成していた。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−217941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来のコイル部品では、コイル2を顆粒状に造粒した磁性材料5に埋設して加圧成形しているので、パンチで加圧するにつれてコイル2の上面および下面に位置した磁性材料5が、コイル2の中芯部1やコイル2の外周部の磁性材料5よりも先に圧縮度が大きくなって強固なものとなるために、このコイルの上面と下面の磁性材料5の強固な部分がコイル2の無い中芯部1やコイル2の外周部の磁性材料5を十分に加圧することの妨げとなっていた。つまり、コイルの上面および下面の部分に比べてコイルの無い中芯部1や外周部では圧縮度が小さくなるために、中芯部1の磁芯6の密度が小さくなり、結果として磁気効率の悪いものとなってしまう。
【0010】
また、圧縮度が小さくなるコイル2の無い中芯部1やコイル2の外周部では磁性材料5の密度が小さいために、磁芯6を熱処理したときのコイル2の絶縁皮膜銅線の絶縁皮膜の樹脂が熱膨張することにより発生する上下方向の応力を受けてクラック7が生じやすくなり、中芯部1では、図14に示すようにコイル2のコイルの高さ寸法の中央付近でクラック7が発生しやすく、コイル2の外周部分では、図15に示すように端子4の埋め込み部分のエッジ部分近傍からクラック7が発生しやすくなっていた。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、金属磁性体粉末からなる磁芯にコイルを埋設したコイル部品において、全体的に磁芯の金属磁性体粉末の密度を高めることにより磁気効率が良く、磁芯のクラックの発生を抑制した信頼性に優れたコイル部品を得ることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために、金属磁性体粉末と結合材を混ぜて加圧成形してなる磁芯と、この磁芯の内部に埋め込まれた導線を螺旋状に巻回してなるコイルとを備え、コイルの巻回軸を含みこの巻回軸を上下にして断面を見たとき、コイルの断面の外形形状を、中央部の幅を上下端の幅よりも大きくなるように構成したものである。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、加圧成形する時に、金属磁性体粉末が中芯部および外周部に流れ込み易くなり、全体的に磁芯の金属磁性体粉末の密度を高めることができ、電気的特性および信頼性に優れたコイル部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の透過斜視図
【図2】図1のB−B線断面図
【図3】本発明の一実施の形態における融着層付絶縁皮膜銅線の断面図
【図4】本発明の一実施の形態における他の例を示すコイルの断面図
【図5】本発明の一実施の形態における他の例を示すコイルの断面図
【図6】本発明の一実施の形態における他の例を示すコイルの断面図
【図7】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図8】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図9】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図10】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図11】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図12】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図13】従来のコイル部品の透過斜視図
【図14】図13のA−A線断面図
【図15】従来のコイル部品の端子側側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態におけるコイル部品について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態におけるコイル部品の透過斜視図であり、図2は図1のB−B線断面図である。この図2はコイルの巻回軸を含む面で切断し、巻回軸を上下にして見たときの断面図を示している。図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態におけるコイル部品は、表面に絶縁コーティングをした絶縁皮膜銅線21を螺旋状に巻回してなり、中央に中空の中芯部11を有したコイル12と、このコイル12の両端部の引き出し線13と、この引き出し線13と接続したりん青銅板などの金属板からなる端子14と、鉄を主成分とした金属磁性材料を粉末にした金属磁性体粉末とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる結合材を混合し、これを顆粒状に造粒した磁性材料15からなる磁芯16を備えており、コイル12と端子14の一部を磁性材料15に埋設させて加圧成形することによりコイル12と一体に磁芯16を形成し、この加圧成形した磁芯16を熱処理して結合材の熱硬化性樹脂を硬化した後、磁芯16の側面から露出した端子14に磁芯16の側面から底面に向けて折り曲げ加工を施してコイル部品を構成している。
【0017】
なお、コイル12を磁性材料15に埋設させて加圧成形する際に、コイル12の形状を維持するためには、図3に示すように、銅線17の表面に絶縁樹脂からなる絶縁層18を皮膜した絶縁皮膜銅線21の表面に、エポキシ樹脂などからなる融着層19をコーティングした融着層19付きの絶縁皮膜銅線21を用いることが望ましく、隣接する絶縁皮膜銅線21を融着層19で固定しておくとよい。
【0018】
ここで、コイル12の断面の外形形状は、図2に示すように中央部の幅をa、上下端の幅をbとすると、b<aとなるようにしている。このようにすることにより、コイル12の断面の外形形状上で、コイル12の上下部から巻回軸の中央方向に向かって傾斜ができるため、顆粒状に造粒した磁性材料15を加圧成形するときに、加圧するにつれて磁性材料15がコイル12の上面および下面から中芯部11および外周部分に加圧によって流れ込み易くなり、コイル12の上面および下面に位置した磁性材料15がコイル12の中芯部11および外周部よりも先に強固に圧縮されることを防止して、全体的に磁芯16の密度を高めることができ、また密度が均一化するためクラック等が生じにくくなる。
【0019】
また、加圧成形した磁芯16を熱処理して結合材を熱硬化するときに、絶縁皮膜銅線21の絶縁層18の樹脂や融着層19の樹脂が熱膨張して、磁芯16の上下方向に応力が生じる。このとき、コイル12を形成した絶縁皮膜銅線21は、加圧成形の圧力により絶縁皮膜銅線21の断面形状が図2に示すように隣接する絶縁皮膜銅線21の間で円弧状から直線状に変形して密に接触しているために、絶縁層18や融着層19の樹脂の熱膨張の応力の影響を受けやすくなる。この熱膨張による応力は、従来のコイル部品のようにコイル2の断面形状が矩形形状の場合では、磁芯6の上下方向に応力が集中しやすくなり、磁芯6にクラックが発生しやすくなるが、本願発明のようにコイル12の上部と下部を傾斜した構成とすることにより、図2において矢印cに示すように熱膨張による応力の方向を分散させることができるので、磁芯16の中芯部11や外周部にクラックが発生しにくくなる。
【0020】
さらに、コイル12の断面の外形形状が矩形状の従来のコイル部品に比べ、本願発明のようにコイル12の上部と下部を傾斜した構成にすることにより、同じ巻数に対してコイル12の断面の周囲をまわる磁路長を短くすることができるため、磁気効率の向上を図ることができ、電気特性も向上する。
【0021】
なお、顆粒状に造粒した磁性材料15の流れを良くするには、コイル12の上部と下部の傾斜した面積を広くすることがよく、2b≦aとすることが、より望ましい。
【0022】
また、本実施の形態では、コイル12の断面の外形形状を六角形(図2において破線で示した形状)のもので説明したが、図4〜図6の本発明の一実施の形態における他の例を示すコイルの断面図に示すように、図4のひし形にしたものや、図5の三角形にしたもの、また図6の八角形にしたものでも本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0023】
次に、本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法について、図7〜図12を用いて説明する。
【0024】
まず、ノズル20に直径が約0.12mmの絶縁皮膜銅線21を通し、巻線シャフト23を回転させて絶縁皮膜銅線21を所定回数巻きつけることによりコイル12を形成する(図7)。ここで絶縁皮膜銅線21の銅線17の表面には絶縁材料としてポリイミドアミドからなる絶縁層18が0.01mmの厚さで形成され、その表面にはさらに未硬化のエポキシ樹脂からなる融着層19が0.005mmの厚さで形成されている。また巻線シャフト23は中央部で細くなるように、円錐をつなぎ合わせた形状となっており、中央部で分割できるような割型となっている。
【0025】
コイル12は、巻線シャフト23の最も狭くなった部分から巻き始め、ノズル20を移動させながら絶縁皮膜銅線21を整列に巻きつけ、巻線シャフト23の幅全体に巻きつけた後、さらに外側に絶縁皮膜銅線21を重ねて巻線シャフト23の幅全体に巻きつける。これを所定回数繰り返して巻線シャフト23の形状に合わせて絶縁皮膜銅線21を巻きつけることにより、コイル12の外形の断面形状が巻回軸の中央側からコイル12の上下部の方向に広がるように傾斜した部分を形成し、続けて、絶縁皮膜銅線21を外側に重ね合わせる巻き層ごとにノズル20の移動幅を狭くしながら巻きつけ、これを所定回数繰り返すことにより、コイル12の外形の断面形状が上下部から巻回軸の中央側の方向に狭くなるように傾斜した部分を形成する。このとき、巻線シャフト23に巻きつけた絶縁皮膜銅線21の温度が約160〜180℃になるように巻線シャフト23に熱風を当てながら絶縁皮膜銅線21を巻回する。こうすることにより融着層19を硬化させながら絶縁皮膜銅線21を巻回するので、上下部から中央側の方向に傾斜したコイル12を形成するときでもコイル12の形状が崩れることがない。
【0026】
この後、巻線シャフト23を中央部分で分離させて、巻線シャフト23からはずすことにより、図8のような上下部から巻回軸の中央方向に向かって傾斜を有したコイル12を得ることができる。このときも、コイル12の断面の外形形状が、中央部の幅が上下端の幅よりも大きくなるようになっているが、融着層19によってお互いが固定されているためにコイル12の形状が崩れることはない。
【0027】
次に、りん青銅板などの金属平板を加工した端子14にコイル12の引き出し線13を電気溶接などで接続を行う(図9)。端子14は個片で形成したり、連続したフープ状に形成してもよく、生産性を考慮すると連続したフープ状にすることが望ましい。
【0028】
次に、貫通孔24を有した上ダイ金型25、下ダイ金型26と、貫通孔24に挿通するとともに摺動自在な上パンチ27、下パンチ28を有した金型(図10(a))に、端子14を上ダイ金型25と下ダイ金型26で挟み込んで支持し、コイル12を金型内に配置する(図10(b))。そして、下パンチ28を所定の位置に配置し、鉄を主成分とした金属磁性材料を粉末にした金属磁性体粉末とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる結合材を混合し、これを顆粒状に造粒した磁性材料15を金型内に所定量充填する(図10(c))。その後、上パンチ27および下パンチ28をコイル12の巻回軸方向(図10(d)において矢印の方向)に上下から2〜4t/cm2の加圧力で加圧成形することにより磁芯16を形成する(図10(d))。このとき、コイル12の断面の外形形状の上下部に傾斜ができているため、顆粒状に造粒した磁性材料15を加圧成形するときに、上パンチ27と下パンチ28で加圧するにつれて磁性材料15がコイル12の上面および下面から中芯部11および外周部に流れ込み易くなり、全体的に磁芯16の密度を高めることができ、また磁芯16の密度を均一化するためクラック等が発生しにくくなる。
【0029】
次に、加圧成形した磁芯16を金型から取り出し(図11)、160〜180℃/1〜2時間の熱処理を行い、磁性材料15の結合材を硬化する。
【0030】
そして最後に、フープ状の端子14の余剰部分を所定の位置で切断し、磁芯16の側面から底面に向けて折り曲げ加工を行うことにより(図12)、コイル部品を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るコイル部品は、全体的に磁芯の金属磁性体粉末の密度を高めることができ、電気的特性および信頼性に優れたコイル部品を得ることが、産業上有用である。
【符号の説明】
【0032】
11 中芯部
12 コイル
13 引き出し線
14 端子
15 磁性材料
16 磁芯
17 銅線
18 絶縁層
19 融着層
20 ノズル
21 絶縁皮膜銅線
23 巻線シャフト
24 貫通孔
25 上ダイ金型
26 下ダイ金型
27 上パンチ
28 下パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性体粉末と結合材を混ぜて加圧成形してなる磁芯と、この磁芯の内部に埋め込まれた導線を螺旋状に巻回してなるコイルとを備え、前記コイルの巻回軸を含み前記巻回軸を上下にした断面を見たとき、前記コイルの断面の外形形状を、中央部の幅を上下端の幅よりも大きくなるように構成したコイル部品。
【請求項2】
前記コイルの断面の外形形状を、前記中央部の幅を前記上下端の幅の2倍以上となるようにした請求項1記載のコイル部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−89595(P2012−89595A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233224(P2010−233224)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】