説明

コイル部品

【課題】コイル部品の表面部分におけるクラックを低減させること。
【解決手段】コイル部品は、フェライト基体1と、フェライト基体1内に設けられたコイル導体2と、フェライト基体1に埋設された応力緩和部3とを含んでいる。コイル導体2は、平面視において複数周巻かれた形状を有している。応力緩和部3は、平面透視においてコイル導体2のうち隣り合う導体パターン21および22の間に配置されているとともに、縦断面視においてフェライト基体1の表面部に部分的に露出されるようにフェライト基体1に埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電子機器等において用いられるコイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話等の電子機器においてコイル部品が用いられている。例示的なコイル部品は、フェライト基体と、フェライト基体内に設けられたコイル導体とを含んでいる。コイル導体は、例えば平面的に複数周巻かれた形状を有しており、隣り合う導体パターンを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2005−158975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイル部品を構成するフェライト基体と導体パターンとの熱膨張率の違いによって、コイル部品の表面部に応力が集中してしまい、コイル部品の表面部分に例えばクラックが生じる等の可能性があった。コイル部品の表面部分にクラックが生じた場合、コイル部品の電気的特性に影響がある可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様によれば、コイル部品は、フェライト基体と、フェライト基体内に設けられたコイル導体と、フェライト基体に埋設された応力緩和部とを含んでいる。コイル導体は、平面視において複数周巻かれた形状を有している。応力緩和部は、平面透視においてコイル導体のうち隣り合う導体パターン間に配置されているとともに、縦断面視においてフェライト基体の表面部に部分的に露出されるようにフェライト基体に埋設されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一つの態様によるコイル部品は、応力緩和部を含んでおり、応力緩和部が、平面透視においてコイル導体のうち隣り合う導体パターン間に配置されているとともに縦断面視においてフェライト基体の表面部に部分的に露出されるようにフェライト基体に埋設されていることによって、コイル部品の表面部における応力の集中が低減されており、例えばコイル部品の表面部にクラックが生じる可能性が低減されている。特に、応力緩和部が平面透視においてコイル導体のうち隣り合う導体パターン間に配置されていることによって、特に応力が集中しやすい隣り合う導体パターン間におけるクラック等の不具合が低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるコイル部品を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示されたコイル部品の平面透視図である。
【図3】図1に示されたコイル部品の縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるコイル部品における応力に関するシミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるコイル部品を示す平面透視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるコイル部品を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態におけるコイル部品を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態におけるコイル部品における応力に関するシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のいくつかの実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態におけるコイル部品は、図1に示されているように、フェライト基体1と、フェライト基体1内に設けられたコイル導体2と、フェライト基体1に埋設された応力緩和部3とを含んでいる。図1において、コイル部品は、仮想のxyz空間内に設けられており、上方向とは仮想のz軸の正方向のことをいう。
【0010】
フェライト基体1は、複数のフェライト層11〜13を含んでおり、複数のフェライト層11〜13は互いに積層されている。複数のフェライト層11〜13のうちフェライト基体1の表面部に位置するフェライト層11および13を表面フェライト層11および13といい、表面フェライト層11および13の間に設けられたフェライト層12を介在フェライト層12という。フェライト基体1の材料例は、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe,SrFeまたはCuFeである。
【0011】
コイル導体2は、平面的に複数周巻かれた形状を有しており、図2に示されているように、例えば符号21および22によって示された部分のように互いに隣り合う導体パターンを有している。図1および図2に示された例において、コイル部品は、平面的に複数巻きされた複数のコイル導体2を有しており、複数のコイル導体2は互いに電気的に接続されている。コイル導体2の材料例は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)または銀合金である。
【0012】
応力緩和部3は、平面透視において、コイル導体2の隣り合う導体パターン間に設けられており、例えば図2に示された例において、応力緩和部3の一部は、隣り合う導体パターン21および22の間に設けられている。本実施形態において、応力緩和部3は、平面透視において、コイル導体2の隣り合う導体パターンには重ならないように設けられている。図3に示されているように、応力緩和部3は、表面フェライト層11および13に設けられていることによって、フェライト基体1の表面に部分的に露出されるようにフェライト基体1に埋設されている。応力緩和部3は、フェライト基体1よりも低いヤング率を有している。フェライト基体1の例示的なヤング率が170GPaであるに対して、応力緩和部3の
例示的なヤング率は126GPaである。応力緩和部3は、フェライト基体1よりも低い透
磁率を有している。フェライト基体1の例示的な比透磁率が500であるに対して、応力緩
和部3の例示的な比透磁率は1である。応力緩和部3は、非磁性フェライトまたは低透磁率フェライトから成る。
【0013】
本実施形態のコイル部品において、応力緩和部3が、平面透視においてコイル導体2のうち隣り合うパターン間に配置されているとともに縦断面視においてフェライト基体1の表面に部分的に露出されるようにフェライト基体1に埋設されていることによって、コイル部品の表面部における応力の集中が低減されており、例えばコイル部品の表面部にクラック等が生じる可能性が低減されている。なお、応力緩和部3が非磁性フェライトまたは低透磁率フェライトから成る場合、コイル導体に大きな電流を流したとしても飽和が起こりにくいためインダクタンス値の直流重畳特性が改善される。
【0014】
本実施形態のコイル部品における応力に関するシミュレーション結果について図4(a)および(b)を参照して説明する。図4(b)に示された比較例は、本実施形態における応力緩和部を有さずに、コイル部品の表面部が全てフェライト基体から成るものである
。図4(a)に示された本実施形態の構造においては、応力緩和部を有していることによって、隣り合う導体パターン間において応力が分散されており、図4(b)に示された比較例の表面部における応力値957MPaに比べて、図4(a)に示された本実施形態の構
造における表面部の応力値は639MPaと小さくなっている。
【0015】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態におけるコイル部品について図5および図6を参照して説明する。第2の実施形態のコイル部品において、第1の実施形態におけるコイル部品と異なる構成は、隣り合う導体パターン21および22に対する応力緩和部材3の位置関係である。その他の構成は第1の実施形態における構成と同様である。応力緩和部材3は、隣り合う導体パターン21および22を部分的に覆うように設けられている。
【0016】
図5に示されているように、応力緩和部3は、平面透視において隣り合う導体パターン21および22と部分的に重なっている。すなわち、図6に示されているように、応力緩和部3の一部が、縦断面視において隣り合う導体パターン21および22上にも設けられている。
【0017】
本実施形態のコイル部品において、応力緩和部材3が平面透視において隣り合う導体パターン21および22に重なっていることによって、コイル部品のインダクタンス値の直流重畳特性が向上されている。
【0018】
導体パターン21および22との重なり幅が増加されることによって、導体パターン21および22のそれぞれにおいて発生する磁束が相互に影響を及ぼすことが低減されるため、大きな電流を流しても磁束が飽和しにくくなり、インダクタンス値の直流重畳特性が改善される。シミュレーション結果においては、重なり幅が±0μm(すなわち重なっていない状態)である場合のインダクタンス値が0.12μHであるのに対して、重なり幅が+35μmである場合のインダクタンス値は0.13μHと向上されている。
【0019】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態におけるコイル部品について図7を参照して説明する。第3の実施形態のコイル部品において、第1の実施形態におけるコイル部品と異なる構成は、隣り合う導体パターン21および22に対する応力緩和部材3の位置関係である。その他の構成は第1の実施形態における構成と同様である。応力緩和部材3の一部は、縦断面視において、隣り合う導体パターン21および22の間にも設けられている。応力緩和部材3は、コイル部品の表面部から隣り合う導体パターン21および22の間の領域にかけて設けられている。
【0020】
本実施形態のコイル部品において、応力緩和部材3の一部が縦断面視において隣り合う導体パターン21および22の間にも設けられていることによって、コイル部品の表面部における応力の集中がさらに低減されている。図8に示されているように、図4(b)に示された比較例の表面部における応力値が957MPaであるのに対して、本実施形態における
例Aおよび例Bの表面部における応力値は、重なり深さが増大するほど小さくなっている。
【0021】
なお、本実施形態における応力緩和部材3の一部が縦断面視において隣り合う導体パターン21および22の間にも設けられという構造については、第2の実施形態における構成にも適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 フェライト基体
11〜13 フェライト層
2 コイル導体
21、22 導体パターン
3 応力緩和部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト基体と、
該フェライト基体内に設けられており、平面透視において複数周巻かれた形状を有しているコイル導体と、
平面透視において前記コイル導体のうち隣り合う導体パターン間に配置されているとともに、縦断面視において前記フェライト基体の表面部に部分的に露出されるように前記フェライト基体に埋設されている応力緩和部とを備えているコイル部品。
【請求項2】
前記応力緩和部材が、平面透視において隣り合う前記導体パターンに重なっていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
前記応力緩和部材の一部が、縦断面視において、隣り合う前記導体パターン間に設けられていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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