説明

コイル

【課題】ヒートシンクによる放熱が容易なコイルを提供する。
【解決手段】コイル(1)は、積層された上側基板(11)及び下側基板(12)と、上記基板(11,12)の面上に放射状に配列された複数の線分状の導電パターン(31,32)と、上記基板(11,12)の間で上記各導電パターン(31,32)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって、上記複数の導電パターン(31,32)が螺旋状に接続された導電ライン(81,82)を形成する接続部(45,55)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロイダル型のコイルに関し、特に、放熱の容易性向上に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トロイダル型のコイルが知られている。例えば、特許文献1には、この種のコイルが開示されている。トロイダル型のコイルは、環状の磁性体コアとその磁性体コアに金属線が巻回された巻線部とを備えている。このようなコイルは、例えば、回路中のノイズを除去するためのノイズフィルタとして用いられる。上記コイルが電子機器の回路に接続されると、電源ライン或いは通信ライン等の外部ラインを経由して電子機器の回路に侵入する高調波のノイズが除去される。トロイダル型のコイルは、磁束のほとんどが磁性体コアの中を通るため、磁束漏れが少なく、隣接部品に悪影響を及ぼすことなくノイズを除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−148023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトロイダル型のコイルは、外形が環状であるとともに、金属線によって巻線部の表面に凹凸が形成された複雑な形状である。そのため、例えば、上記コイルの巻線部にヒートシンクを接触させてコイルを放熱する場合、接触面が平坦な簡易形状のヒートシンクでは上記コイルとの間の接触面積を大きくできず、高い放熱性を得ることが困難であった。また、コイル全体を放熱や保護のために樹脂成型する場合も、コイルの形状が複雑で寸法精度が高くないため精度良く行なえず、コストアップや大型化を招いていた。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な形状のヒートシンクでも高い放熱性が容易に得られ、寸法精度の高いコイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、積層された複数の基板(11,12,111〜114)と、上記複数の基板(11,12,111〜114)の内少なくとも両端の基板(11,12,111,114)の面上に、放射状に配列された複数の線分状の導電パターン(31,32,131〜134)と、上記導電パターン(31,32,131〜134)が配列された基板(11,12,111〜114)の間で、上記各導電パターン(31,32,131〜134)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって、上記複数の導電パターン(31,32,131〜134)が螺旋状に接続された導電ライン(81,82)を形成する接続部(45,55,145〜147,155〜157)とを備えたコイルである。
【0007】
上記第1の発明では、基板(11,12,111〜114)上に放射状に配列された複数の導電パターン(31,32,131〜134)と他の基板(11,12,111〜114)上に放射状に配列された複数の導電パターン(31,32,131〜134)とが螺旋状に接続されることで、トロイダル型の導電ライン(81,82)を有するコイルが形成される。上記コイルでは、両端の基板(11,12,111,114)の面上に、導電ライン(81,82)の一部となる導電パターン(31,32,131,134)が形成されている。そのため、上記コイルは、磁性体コアに導電ラインとなる金属線が巻回された従来のトロイダル型のコイルに比べ、導電ラインの形成された面が平坦になる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記導電ライン(81,82)の内側に磁性体コア(13)を備えているものである。
【0009】
導電ライン(81,82)に電流が流れると、その導電ライン(81,82)の内側に磁束が発生する。上記第2の発明では、導電ライン(81,82)の内側に磁性体コア(13)が設けられているため、磁性体コア(13)が設けられていない場合に比べ、上記磁束は大きくなる。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記接続部(45,55,145〜147,155〜157)は、スルーホール接続によって上記導電パターン(31,32,131〜134)の端部同士を電気的に接続しているものである。
【0011】
上記第3の発明では、スルーホール接続によって、断面積の小さい接続部(45,55,145〜147,155〜157)が精度よく形成される。
【0012】
第4の発明は、上記第1または第2の発明において、上記接続部(45,55)は、ヘッダ接続によって上記導電パターン(31,32)の端部同士を電気的に接続しているものである。
【0013】
上記第4の発明では、ヘッダ接続するためのヘッダのピンが各導電パターン(31,32,)の端部に形成された孔に挿入されて接続されるため、上記接続部(45,55)の強度が大きい。さらに、ヘッダのベース部を基板(11,12)の間に挟むことによって、磁性体コア(13)を埋め込むための空間(S)が形成される。
【0014】
第5の発明は、上記第2の発明において、上記磁性体コア(13)は、上記両端の基板(11,12)の何れか一方の基板(11)と該基板に隣接する基板(12)との間に跨るように設けられ、上記両端の基板(11,12)の内、上記磁性体コア(13)が跨る基板(11)は、フレキシブル基板である。
【0015】
上記第5の発明では、フレキシブル基板である基板(11)を撓ませて設けることによって、フレキシブル基板である基板(11)とその基板(11)に隣接する基板(12)との間に磁性体コア(13)を埋め込むための空間(S)が形成される。
【0016】
第6の発明は、上記第1乃至第5の何れか1の発明において、上記導電パターン(31,32,131〜134)は、外側のパターン幅が内側のパターン幅よりも大きいものである。
【0017】
上記第6の発明では、導電ライン(81,82)の一部である導電パターン(31,32,131〜134)の外側のパターン幅が内側のパターン幅よりも大きいため、各導電パターン(31,32,131〜134)の平均断面積が大きくなり、導電ライン(81,82)の平均断面積を大きくできる。
【0018】
第7の発明は、上記第1乃至第6の何れか1の発明において、上記導電パターン(131〜134)が配列された基板(111〜114)は、上記導電ライン(81,82)の巻回軸を基準に積層方向の両側にそれぞれ複数設けられ、上記接続部(145,155)は、上記巻回軸を基準に積層方向の一方の基板(112)と他方の基板(113)との間で上記各導電パターン(132,133)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって、上記一方の基板(112)及び他方の基板(113)の複数の導電パターン(132,133)を螺旋状に接続するとともに、上記一方の基板(112)の各導電パターン(132)と上記巻回軸を基準に積層方向において該一方の基板(112)と同じ側に位置する基板(111)の各導電パターン(131)とを内側の端部同士及び外側の端部同士の電気的な接続で並列に接続し、上記他方の基板(113)の各導電パターン(133)と上記巻回軸を基準に積層方向において該他方の基板(113)と同じ側に位置する基板(114)の各導電パターン(134)とを内側の端部同士及び外側の端部同士の電気的な接続で並列に接続することによって、上記導電ライン(81,82)を形成しているものである。
【0019】
上記第7の発明では、導電ライン(81,82)は、2つの基板(112,113)の間で導電パターン(132,133)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって螺旋状に形成された部分に、他の基板(111,114)の導電パターン(131,134)が並列に接続されて形成されている。このように、導電パターン(131,134)が並列に接続された部分を形成すると、実質的に導電ライン(81,82)の断面積が大きくなって、導電ライン(81,82)の抵抗値が小さくなる。
【0020】
第8の発明は、上記第1乃至第6の何れか1の発明において、上記導電パターン(131〜134)が配列された基板(111〜114)は、上記導電ライン(81,82)の巻回軸を基準に積層方向の両側にそれぞれ複数設けられ、上記接続部(146,147,156,157)は、上記巻回軸を基準に積層方向の一方に位置する基板(111,112)と他方に位置する基板(113,114)との間で上記各導電パターン(131〜134)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって、上記導電パターン(131〜134)が配列された各基板(111〜114)の導電パターン(131〜134)を順次直列に接続して、複数の螺旋径を有する上記導電ライン(81,82)を形成しているものである。
【0021】
上記第8の発明では、積層された基板(111〜114)の間で導電パターン(131〜134)が順次直列に接続されている。そのため、螺旋径の異なる巻回が交互に施された導電ライン(81,82)が形成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、積層された複数の基板(11,12,111〜114)の内、少なくとも両端の基板(11,12,111,114)の面上に、コイル(1)の導電ライン(81,82)の一部である導電パターン(31,32,131,134)を形成するようにした。上記コイル(1)は、磁性体コアに導電ラインとなる金属線が巻回された従来のトロイダル型のコイルに比べて、導電ラインの形成された面が平坦である。そのため、ヒートシンクを両端の基板(11,12,111,114)の導電パターン(31,32,131,134)に接触させてコイル(1)を放熱する場合、ヒートシンクの接触面が両端の基板(11,12,111,114)面に対応した簡易形状のヒートシンクであっても、大きな接触面積を確保することができ、高い放熱性を容易に得ることができる。
【0023】
また、本発明のコイル(1)は、複数の基板(11,12,111〜114)の間を接着して積層するだけで絶縁することが可能であり、従来のコイルのように巻回された金属線とコアとを絶縁するための樹脂成型が不要で容易に高い絶縁性を得ることができる。
【0024】
また本発明のコイル(1)は、積層された基板(11,12,111〜114)によって形成されているため、その両端の基板(11,12,111,114)の面上にコンデンサ等の回路部品を設けることができ、更に、その回路部品を両端の基板(11,12,111,114)面上の導電パターン(31,32,131,134)、つまり、導電ライン(81,82)に接続することができる。これにより、導電ライン(81,82)と回路部品とを繋ぐ接続配線を短くして接続配線の抵抗値を小さくできると共に、回路構成部を省スペース化できる。
【0025】
第2の発明によれば、上記コイル(1)は、磁性体コア(13)が設けられていない場合に比べて導電ライン(81,82)の内側で発生する磁束が大きくなるため、コイルとしての能力をより高めることができる。
【0026】
第3の発明によれば、スルーホール接続によって、上記コイル(1)に断面積の小さい接続部(45,55,145〜147,155〜157)が精度よく形成されるため、小さい導電ライン(81,82)を安定して形成することができる。
【0027】
第4の発明によれば、ヘッダ接続によって、上記接続部(45,55)の接続強度を大きくできるため、上記コイル(1)の耐久性を高くできる。また、ヘッダのベース部を基板(11,12)の間に挟むことによって磁性体コア(13)を埋め込むための空間(S)が形成される。そのため、その空間(S)を形成するために磁性体コア(13)に隣接する基板(11,12)を加工する必要がなくなり、コイル(1)の製造工程を削減できる。
【0028】
第5の発明によれば、フレキシブル基板である基板(11)を撓ませて設けることによって、フレキシブル基板である基板(11)とその基板(11)に隣接する基板(12)との間に磁性体コア(13)を埋め込むための空間(S)が形成される。そのため、その空間(S)を形成するために磁性体コア(13)に隣接する基板(11,12)を加工する必要がなくなり、コイル(1)の製造工程を削減できる。
【0029】
さらに、フレキシブル基板である基板(11)を撓ませて設けることによって、基板(11)中の導電パターン(31)が積層方向に湾曲するため、導電ライン(81,82)の巻回形状を円形に近づけることができ、コイルとしての能力をより安定して得ることできる。
【0030】
第6の発明によれば、上記コイル(1)の導電ライン(81,82)の一部である導電パターン(31,32,131〜134)の外側のパターン幅が内側のパターン幅よりも大きいため、各導電パターン(31,32,131〜134)の平均断面積を大きくし、導電ライン(81,82)の平均断面積を大きくできる。これにより、導電ライン(81,82)の抵抗値を小さくでき、導電ライン(81,82)に流れる電流を大きくすることができる。
【0031】
第7の発明によれば、導電ライン(81,82)は、2つの基板(112,113)の間で導電パターン(132,133)を接続することによって螺旋状に形成された部分に、他の基板(111,114)の導電パターン(131,134)が並列に接続されて形成されている。このように、導電パターン(131,134)が並列に接続された部分を形成すると、実質的に導電ライン(81,82)の断面積が大きくなって、導電ライン(81,82)の抵抗値を小さくできるので、導電ライン(81,82)に流れる電流を大きくすることができる。
【0032】
第8の発明によれば、積層された(111〜114)の間で導電パターン(131〜134)が順次直列に接続されるため、螺旋径の異なる螺旋が交互に施された導電ライン(81,82)が形成される。このような導電ライン(81,82)の場合、大きい螺旋の内側に小さい螺旋を形成することで、巻回軸の単位長さにおける巻回数を増やすことができる。これにより、発生する磁束を大きくでき、コイルとしての能力をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、実施形態1に係るコイルの断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るコイルの上側基板の上面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るコイルの下側基板の下面図である。
【図4】図4は、実施形態1に係るコイルの導電パターンの接続状況を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態1の変形例1に係るコイルの断面図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例2に係るコイルの断面図である。
【図7】図7は、実施形態1の変形例2に係るコイルの上面図である。
【図8】図8は、実施形態1の変形例3に係るコイルの上側基板の上面図である。
【図9】図9は、実施形態2に係るコイルの断面図である。
【図10】図10は、実施形態2に係るコイルの第1基板の上面図である。
【図11】図11は、実施形態2に係るコイルの第2基板の上面図である。
【図12】図12は、実施形態2に係るコイルの第3基板の下面図である。
【図13】図13は、実施形態2に係るコイルの第4基板の下面図である。
【図14】図14は、実施形態2に係るコイルの導電パターンの接続状況を示す斜視図である。
【図15】図15は、実施形態3に係るコイルの断面図である。
【図16】図16は、実施形態3に係るコイルの第1基板の上面図である。
【図17】図17は、実施形態3に係るコイルの第2基板の上面図である。
【図18】図18は、実施形態3に係るコイルの第3基板の下面図である。
【図19】図19は、実施形態3に係るコイルの第4基板の下面図である。
【図20】図20は、実施形態3に係るコイルの導電パターンの接続状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態及び変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0035】
《発明の実施形態1》
本実施形態のコイル(1)は、例えば、モータを駆動するためのインバータ装置の電源ラインに接続され、電流に含まれるコモンモードノイズを除去するためのものである。図1に示すように、コイル(1)は、2つの基板(11,12)と磁性体コア(13)とを備えている。
【0036】
上記基板(11,12)は、絶縁性を有する硬質基材によって形成された平板状のプリント基板である。上記2つの基板(11,12)は、絶縁性の接着剤によって基板(11,12)の厚さ方向に接着され、積層されている。上側基板(11)の下面及び下側基板(12)の上面にはトロイダル状に凹陥した凹部がそれぞれ形成され、上側基板(11)の凹部と下側基板(12)の凹部とが対向して、上側基板(11)と下側基板(12)との間に環状の空間(S)が形成されている。
【0037】
上記磁性体コア(13)は、環状に形成された板材であり、上記空間(S)に埋め込まれている。磁性体コア(13)は、フェライトや珪素鋼板等の鉄芯材料によって形成されている。
【0038】
図2及び図3に示すように、上記2つの基板(11,12)には、配線部(21,22)がそれぞれ設けられている。上側配線部(21)は上側基板(11)の上面に、下側配線部(22)は下側基板(12)の下面に形成されている。上側配線部(21)には、複数の線分状の導電パターン(31a〜31f,31i〜31n)が放射状に配列されている。下側配線部(22)には、上側配線部(21)の導電パターン(31a〜31f,31i〜31n)とは配列状態の異なる複数の線分状の導電パターン(32b〜32g,32h〜32m)が放射状に配列されている。さらに、下側配線部(22)には、導電パターン(32b)と導電パターン(32m)との間に2本の第1接続線(62a,62b)が形成され、導電パターン(32g)と導電パターン(32h)との間に2本の第2接続線(72a,72b)が形成されている。2本の第2接続線(72a,72b)の内側の端部は、導電パターン(32g)及び導電パターン(32h)の内側の端部にそれぞれ接続されている。各配線部(21,22)の導電パターン(31,32)は、基板(11,12)の面方向において、外側の端部が上記空間(S)の外周面よりも外周側に、内側の端部が上記空間(S)の内周面よりも内周側にそれぞれ位置するように設けられている。導電パターン(31,32)、第1接続線(62a,62b)及び第2接続線(72a,72b)は、銅箔のエッチングや、金や銀等の金属を含むペースト材料を塗布焼成することによって形成される。
【0039】
また、各基板(11,12)の配線部(21,22)には、複数のスルーホール(41,42,51,52)が形成されている。上側配線部(21)には、各導電パターン(31a〜31f,31i〜31n)の内側の端部に内側スルーホール(41a〜41f,41i〜41n)が形成され、外側の端部に外側スルーホール(51a〜51f,51i〜51n)が形成されている。下側配線部(22)には、各導電パターン(32b〜32g,32h〜32m)及び第1接続線(62a,62b)の内側の端部に内側スルーホール(42a〜42g,42h〜42n)が形成され、外側の端部に外側スルーホール(52b〜52g,52h〜52m)が形成されている。上記スルーホール(41,42,51,52)は、各導電パターン(31,32)及び第1接続線(62a,62b)の端部に貫通穴を形成し、その貫通穴の内壁に金属を被覆することによって形成されている。このようにして、上記スルーホール(41,42,51,52)は、導電パターン(31,41)及び第1接続線(62a,62b)に電気的に接続されている。
【0040】
図4に示すように、上側配線部(21)の内側スルーホール(41a〜41f,41i〜41n)と下側配線部(22)の内側スルーホール(42a〜42f,42i〜42n)とは、基板(11,12)の積層方向において、それぞれ対向配置されている。そして、対向配置された内側スルーホール(41,42)同士がそれぞれはんだ接続されて、内側接続部(45a〜45f,45i〜45n)が形成されている。また、上側配線部(21)の外側スルーホール(51a〜51f,51i〜51n)と下側配線部(22)の外側スルーホール(52b〜52g,52h〜52m)とは、基板(11,12)の積層方向において、それぞれ対向配置されている。そして、対向配置された外側スルーホール(51,52)同士がはんだ接続されて、外側接続部(55a〜55f,55i〜55n)が形成されている。つまり、内側接続部(45)及び外側接続部(55)は、スルーホール接続によって、上側配線部(21)の導電パターン(31)及び下側配線部(22)の導電パターン(32)の端部同士を電気的に接続している。
【0041】
このように、内側接続部(45)及び外側接続部(55)が形成されることによって、導電パターン(31,32)が螺旋状に接続された第1導電ライン(81)及び第2導電ライン(82)が形成される。
【0042】
上記第1導電ライン(81)は、第1接続線(62a)、内側接続部(45a)、導電パターン(31a)、外側接続部(55a)、導電パターン(32b)、内側接続部(45b)、…、外側接続部(55g)、導電パターン(32g)、第2接続線(72a)が順次接続されて形成されている。このように、第1導電ライン(81)は、磁性体コア(13)を巻回しながら磁性体コア(13)の周方向に半周分延びて形成される。
【0043】
上記第2導電ライン(82)は、第1接続線(62b)、内側接続部(45n)、導電パターン(31n)、外側接続部(55n)、導電パターン(32m)、内側接続部(45m)、…、外側接続部(55i)、導電パターン(32h)、第2接続線(72b)が順次接続されて形成されている。このように、第2導電ライン(82)は、磁性体コア(13)を巻回しながら磁性体コア(13)の周方向に半周分延びて形成される。第2導電ライン(82)は、第1導電ライン(81)とは反対方向に、同数巻回されている。
【0044】
このように、環状の磁性体コア(13)の周囲に第1導電ライン(81)及び第2導電ライン(82)が巻回されることによって、トロイダル型のコイル(1)が形成される。インバータ装置において、上記コイル(1)は、第1接続線(61a,62b)が電源側に接続され、第2接続線(71a,72b)が負荷側に接続される。電源側(または負荷側)から各導電ライン(81,82)に同相のノイズ(コモンモードノイズ)が流れると、各導電ライン(81,82)の内側で発生する磁束が磁性体コア(13)内部で強め合うため、上記ノイズに対して大きなインピーダンスが形成される。これにより、上記ノイズの流れを阻止することができる。
【0045】
−実施形態1の効果−
本実施形態では、積層された上側基板(11)及び下側基板(12)の面上に、コイル(1)の導電ライン(81,82)の一部である導電パターン(31,32)を形成するようにした。上記コイル(1)は、磁性体コアに導電ラインとなる金属線が巻回された従来のトロイダル型のコイルに比べて、導電ラインの形成された面が平坦である。そのため、ヒートシンクを導電パターン(31,32)に接触させてコイル(1)を放熱する場合、接触面が両端の基板(11,12)面に対応して平坦な簡易形状のヒートシンクであっても、大きな接触面積を確保することができ、高い放熱性を容易に得ることができる。
【0046】
また、本実施形態のコイル(1)は、上側基板(11)と下側基板(12)との間を接着して積層するだけで絶縁することが可能であり、従来のコイルのように巻回された金属線とコアとを絶縁するための樹脂成型が不要で容易に高い絶縁性を得ることができる。
【0047】
また本実施形態では、積層された基板(11,12)によって形成されているため、その両端の基板(11,12)の面上にコンデンサ等の回路部品を設けることができ、更に、その回路部品を両端の基板(11,12)面上の導電パターン(31,32)、つまり、導電ライン(81,82)に接続することができる。これにより、導電ライン(81,82)と回路部品とを繋ぐ接続配線を短くして接続配線の抵抗値を小さくできると共に、回路構成部を省スペース化できる。
【0048】
また本実施形態のコイル(1)では、スルーホール接続によって断面積の小さい接続部(45,55)が精度よく形成されるため、小さい導電ライン(81,82)を安定して形成することができる。
【0049】
〈実施形態1の変形例1〉
実施形態1の変形例1は、上記実施形態1の上側基板(11)の導電パターン(31)と下側基板(12)の導電パターン(32)とを接続する接続方法を変更したものである。上記実施形態1では、上側基板(11)の導電パターン(31)と下側基板(12)の導電パターン(32)とをスルーホール接続していたが、実施形態1の変形例1では、ヘッダ接続するようにした。
【0050】
本変形例では、図5に示すように、上側基板(11)と下側基板(12)との間に、同心円状に配置された2つの環状のピンヘッダ(14,17)が設けられている。内側に位置する第1ヘッダ(14)及び外側に位置する第2ヘッダ(17)は、環状に形成された板状のベース部(15,18)と、該ベース部(15,18)に環状に配列され、該ベース部(15,18)を貫通して両側の基板(11,12)に向かって突出した複数のピン(16,19)とを有している。第1ヘッダ(14)のベース部(15)と第2ヘッダ(17)のベース部(18)との間には、上側基板(11)及び下側基板(12)によって閉じられた空間(S)が形成され、該空間(S)内に磁性体コア(13)が埋め込まれている。
【0051】
上記第1ヘッダ(14)の各ピン(16)は、基板(11,12)の積層方向において対向配置された上側配線部(21)の内側スルーホール(41a〜41f,41i〜41n)及び下側配線部(22)の内側スルーホール(42a〜42f,42i〜42n)に挿入され、上側配線部(21)の内側スルーホール(41a〜41f,41i〜41n)と下側配線部(22)の内側スルーホール(42a〜42f,42i〜42n)とを電気的に接続している。また、上記第2ヘッダ(17)の各ピン(19)は、基板(11,12)の積層方向において対向配置された上側配線部(21)の外側スルーホール(51a〜51f,51i〜51n)及び下側配線部(22)の外側スルーホール(52b〜52g,52h〜52m)に挿入され、上側配線部(21)の外側スルーホール(51a〜51f,51i〜51n)と下側配線部(22)の外側スルーホール(52b〜52g,52h〜52m)とを電気的に接続している。つまり、第1ヘッダ(14)のピン(16)及び内側スルーホール(41,42)によって内側接続部(45)が形成され、第2ヘッダ(17)のピン(19)及び外側スルーホール(51,52)によって外側接続部(55)が形成されている。以上のように、本変形例では、各接続部(45,55)がヘッダ接続によって上側基板(11)及び下側基板(12)の導電パターン(31,32)の端部同士を電気的に接続することによって、導電パターン(31,32)が螺旋状に接続された第1導電ライン(81)及び第2導電ライン(82)が形成されている。
【0052】
本変形例では、ヘッダのピン(16,19)が各スルーホール(41,42,51,52)に挿入されて電気的に接続されているため、接続部(45,55)の強度が大きく、コイルの耐久性を高めることができる。また、2つのピンヘッダ(14,17)のベース部(15,18)を上側基板(11)と下側基板(12)との間に挟むことによって、磁性体コア(13)を埋め込む空間(S)が形成されている。そのため、その空間(S)を形成するために、磁性体コア(13)に隣接する基板(11,12)を加工する必要がなくなり、コイル(1)の製造工程を削減できる。その他の構成、作用及び効果は、上記実施形態と同様である。
【0053】
〈実施形態1の変形例2〉
実施形態1の変形例2は、上記実施形態1の上側基板(11)を変更したものである。上記実施形態1では、上側基板(11)が硬質の基材で形成されていた。これに対し、実施形態1の変形例2では、上側基板(11)をフレキシブル基板にした。
【0054】
本変形例では、図6及び図7に示すように、磁性体コア(13)が、下側基板(12)の上面に形成された環状の凹部にはめ込まれた状態で、下側基板(12)の上面から突出している。そして、環状のフレキシブル基板である上側基板(11)が、その突出した磁性体コア(13)を覆うように、中央部が上側に膨出し、内周部及び外周部が下側基板(12)に密着している。このように、磁性体コア(13)は、上側基板(11)と下側基板(12)との間で跨るように設けられている。そして、実施形態1と同様に、上側基板(11)と下側基板(12)との間で、導電パターン(31,32)の内側の端部同士及び外側の端部同士がスルーホール接続され、導電パターン(31,32)が螺旋状に接続された第1導電ライン(81)及び第2導電ライン(82)が形成されている。
【0055】
本変形例では、上側基板(11)の中央部が上側に膨出するように上側基板(11)を撓ませることによって、上側基板(11)と下側基板(12)との間に磁性体コア(13)を埋め込むための空間(S)が形成される。そのため、その空間(S)を形成するために上側基板(11)を加工する必要がなくなり、コイル(1)の製造工程を削減できる。また、上側基板(11)の中央部が上側に膨出すると、上側基板(11)の導電パターン(31)が基板(11,12)の積層方向に湾曲するため、第1導電ライン(81)及び第2導電ライン(82)の巻回形状を円形に近づけることができ、コイルとしての能力をより安定して得ることできる。尚、その他の構成、作用及び効果は、上記実施形態と同様である。
【0056】
〈実施形態1の変形例3〉
実施形態1の変形例3は、上記実施形態1の各導電パターン(31,32)の形状を変更したものである。上記実施形態1では、各導電パターン(31,32)の内側のパターン幅と外側のパターン幅とが同等であった。これに対し、実施形態1の変形例3では、図8に示すように、導電パターン(31,32)の形状を略扇形にして、外側のパターン幅が内側のパターン幅よりも大きくなるようにした。このように、各導電パターン(31,32)の形状を変更すると、導電ライン(81,82)の一部である導電パターン(31,32)の平均断面積を大きくし、導電ライン(81,82)の平均断面積を大きくできる。これにより、導電ライン(81,82)の抵抗値を小さくでき、導電ライン(81,82)に流れる電流を大きくすることができる。
【0057】
〈実施形態1のその他の変形例〉
上記実施形態1では、2層の基板が積層されてコイル(1)を形成していた。しかし、基板は2層に限らず、例えば、3層以上の基板が積層され、少なくともその両端の基板に導電パターンが形成されていても構わない。
【0058】
また、上記実施形態1では、2つの導電ライン(81,82)が形成されていたが、これに限らず、例えば、磁性体コア(13)を巻回しながら磁性体コア(13)の周方向に1周分延びた導電ラインが1つ形成されても構わない。
【0059】
また、上記実施形態1では、2つの導電ライン(81,82)が反対方向に巻回されていたが、巻回方向はこれに限らず、同じ方向に巻回されていても構わない。
【0060】
〈実施形態2〉
実施形態2は、上記実施形態1の基板の層数及び導電パターンの接続状態を変更したものである。上記実施形態1では、基板は2層であり、上側基板(11)の導電パターン及び下側基板(12)の全ての導電パターンを直列に接続して、導電ライン(81,82)を形成していた。これに対し、実施形態2では、基板を4層とし、各基板の一部の導電パターンを並列に接続して、導電ライン(81,82)を形成するようにした。
【0061】
実施形態2では、図9に示すように、第1〜第4の基板(111〜114)が積層されている。第2基板(112)の下面及び第3基板(113)の上面には、環状に凹陥した凹部がそれぞれ形成され、第2基板(112)の凹部と第3基板(113)の凹部とが対向することによって、第2基板(112)と第3基板(113)との間に環状の空間(S)が形成されている。そして、上記磁性体コア(113)は、上記空間(S)内に埋め込まれている。図10〜図13に示すように、第1〜第4の基板(111〜114)には、それぞれ第1〜第4配線部(121〜124)が設けられ、第1〜第4配線部(121〜124)は複数の導電パターン(131〜134)と該各導電パターンの内側の端部に形成された内側スルーホール(141〜144)と外側の端部に形成された外側スルーホール(151〜154)とを有している。第1配線部(121)及び第2配線部(122)は、各基板(111,112)の上面に設けられ、同じ配列の導電パターン(131,132)が形成されている。一方、第3配線部(123)及び第4配線部(124)は、各基板(113,114)の下面に設けられ、上記第1配線部(121)とは異なるが、同じ配列の導電パターン(133,134)が形成されている。第4配線部(124)には、第1接続線(162a,162b)及び第2接続線(172a,172b)が2本ずつ形成されている。
【0062】
図14に示すように、第1配線部(121)の内側スルーホール(141a〜141f,141i〜141n)、第2配線部(122)の内側スルーホール(142a〜142f,142i〜142n)、第3配線部(123)の内側スルーホール(143a〜143f,143i〜143n)、第4配線部(124)の内側スルーホール(144a〜144f,144i〜144n)は、基板(111〜114)の積層方向において、それぞれ対向配置されている。そして、対向配置された内側スルーホール(141〜144)同士がそれぞれはんだ接続され、内側接続部(145a〜145f,145i〜145n)が形成されている。また、第1配線部(121)の外側スルーホール(151a〜151f,151i〜151n)、第2配線部(122)の外側スルーホール(152a〜152f,152i〜152n)、第3配線部(123)の外側スルーホール(153b〜153g,153h〜153m)、第4配線部(124)の外側スルーホール(154b〜154g,154h〜154m)は、基板(111〜114)の積層方向において、それぞれ対向配置されている。そして、対向配置された外側スルーホール(151〜154)同士がはんだ接続され、外側接続部(155a〜155f,155i〜155n)が形成されている。つまり、内側接続部(145)及び外側接続部(155)は、スルーホール接続によって、第1〜第4配線部(121〜124)の各導電パターン(131〜134)の端部同士をそれぞれ電気的に接続している。
【0063】
このように、内側接続部(145)及び外側接続部(155)が形成されることによって、第2基板(112)と第3基板(113)との間に巻回軸を有した導電ライン(81,82)が形成される。導電ライン(81,82)は、巻回軸を基準に積層方向の一方に位置する第2基板(112)と他方に位置する第3基板(113)との間で導電パターン(132,133)の内側の端部同士及び外側の端部同士をそれぞれ電気的に接続することによって、第2基板(112)及び第3基板(113)の複数の導電パターン(132,133)が螺旋状に接続されている。さらに、導電ライン(81,82)は、第2基板(112)の各導電パターン(132)と巻回軸を基準に積層方向において第2基板(112)と同じ側に位置する第1基板(111)の各導電パターン(131)とを内側の端部同士及び外側の端部同士の電気的な接続で並列に接続している。さらに、導電ライン(81,82)は、第3基板(113)の各導電パターン(133)と巻回軸を基準に積層方向において第3基板(113)と同じ側に位置する第4基板(114)の各導電パターン(134)とを内側の端部同士及び外側の端部同士の電気的な接続で並列に接続している。このように、導電ライン(81,82)において、導電パターン(131,134)が並列に接続された部分を形成すると、実質的に導電ライン(81,82)の断面積が大きくなって、導電ライン(81,82)の抵抗値が小さくでき、導電ライン(81,82)に流れる電流を大きくすることができる。尚、上記実施形態2では、基板(111〜114)が4層に積層されているが、基板の層数は5層以上であっても良い。その場合、巻回軸は、基板の層数が偶数であれば積層方向において中央の2層の基板の層間に位置し、基板の層数が奇数であれば積層方向において中央の基板の内部に位置する。その他の構成、作用及び効果は上記実施形態1と同様である。
【0064】
〈実施形態3〉
実施形態3は、上記実施形態2の導電パターンの接続状態を変更したものである。上記実施形態2では、各基板の導電パターン(131〜134)を直列及び並列に接続して導電ライン(81,82)を形成していた。これに対し、実施形態3では、各基板の導電パターン(131〜134)を直列に接続して導電ライン(81,82)を形成するようにした。
【0065】
実施形態3では、図15に示すように、上記実施形態2と同様に、第1〜第4基板(111〜114)が積層され、第2基板(112)と第3基板(113)との間の環状の空間(S)内に磁性体コア(113)が埋め込まれている。そして、第1基板(111)及び第2基板(112)の上面に第1配線部(121)及び第2配線部(122)が、第3基板(113)及び第4基板(114)の下面に第3配線部(123)及び第4配線部(124)がそれぞれ設けられている。図16〜図19に示すように、第1〜第4配線部(121〜124)には、それぞれ配列の異なる複数の導電パターン(131〜134)と該各導電パターン(131〜134)の内側の端部に内側スルーホール(141〜144)と外側の端部に外側スルーホール(151〜154)とが、それぞれ形成されている。さらに、第2配線部(122)及び第3配線部(123)には、上記内側スルーホール(141〜144)及び外側スルーホール(151〜154)とは別に、スルーホール(162,172,173)が形成され、第3配線部(123)には、第1接続線(162a,162b)及び第2接続線(172a,172b)が2本ずつ形成されている。
【0066】
図20に示すように、第2配線部(122)の内側スルーホール(142b〜142g,142h〜142m)、第3配線部(123)のスルーホール(163a〜163f,163i〜163n)、第4配線部(124)の内側スルーホール(144a〜144f,144i〜144n)は、基板(111〜114)の積層方向において、それぞれ対向配置されている。そして、対向配置されたスルーホール(142,144,163)同士がそれぞれはんだ接続され、第1内側接続部(146a〜146f,146i〜146n)が形成されている。第1配線部(121)の内側スルーホール(141a〜141f,141i〜141n)、第2配線部(122)のスルーホール(162a〜162f,162i〜162n)、第3配線部(123)の内側スルーホール(143a〜143f,143i〜143n)は、基板(111〜114)の積層方向において、それぞれ対向配置されている。そして、対向配置されたスルーホール(141,143,162)同士がそれぞれはんだ接続され、第2内側接続部(147a〜147f,147i〜147n)が形成されている。第1配線部(121)の外側スルーホール(151a〜151f,151i〜151n)、第2配線部(122)のスルーホール(172a〜172f,172i〜172n)、第3配線部(123)のスルーホール(173a〜173f,173i〜173n)、第4配線部(124)の外側スルーホール(154a〜154f,154i〜154n)は、基板(111〜114)の積層方向において、それぞれ対向配置されている。そして、対向配置されたスルーホール(151,154,172,173)同士がそれぞれはんだ接続され、第1外側接続部(156a〜156f,156i〜156n)が形成されている。第2配線部(122)の外側スルーホール(152b〜152g,152h〜152m)、第3配線部(123)の外側スルーホール(153b〜153g,153h〜153m)は、基板(111〜114)の積層方向において、それぞれ対向配置されている。そして、対向配置された外側スルーホール(152,153)同士がそれぞれはんだ接続され、第2外側接続部(157b〜157g,157h〜157m)が形成されている。つまり、内側及び外側の接続部(146,147,156,157)は、スルーホール接続によって、各基板(111〜114)の導電パターン(131〜134)の端部同士をそれぞれ電気的に接続している。
【0067】
このように、内側及び外側の接続部(146,147,156,157)が形成されることによって、各基板(111〜114)の導電パターン(131〜134)が螺旋状に接続された導電ライン(81,82)が形成される。詳細には、第1外側接続部(156)が第1基板(111)と第4基板(114)との間で導電パターン(131,134)の外側の端部同士を電気的に接続し、第1内側接続部(146)が第4基板(114)と第2基板(112)との間で導電パターン(132,134)の内側の端部同士を電気的に接続し、第2外側接続部(157)が第2基板(112)と第3基板(113)との間で導電パターン(132,133)の外側の端部同士を電気的に接続し、第2内側接続部(147)が第3基板(113)と第1基板(111)との間で導電パターン(131,133)の内側の端部同士を電気的に接続することによって、各導電パターン(131〜134)を順次直列に接続し、2つの螺旋径を有する導電ライン(81,82)が形成されている。上記導電ライン(81,82)の巻回軸は、第2基板(112)と第3基板(113)との間に位置している。つまり、本実施形態のコイル(1)は、その巻回軸を基準に積層方向の両側に、導電パターン(131〜134)が配列された基板(111〜114)が2層ずつ設けられ、上記内側及び外側の接続部(146,147,156,157)が、上記巻回軸を基準に積層方向の一方に位置する基板(111,112)と他方に位置する基板(113,114)との間で各導電パターン(131〜134)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって、各導電パターン(131〜134)を順次直接に接続して、上記導電ライン(81,82)を形成している。
【0068】
このように、積層された基板(111〜114)の間で導電パターン(131〜134)が順次直列に接続されるため、螺旋径の異なる螺旋が交互に施された導電ライン(81,82)が形成される。このような導電ライン(81,82)の場合、大きい螺旋の内側に小さい螺旋を形成することで、巻回軸の単位長さにおける巻回数を増やすことができる。これにより、発生する磁束を大きくでき、コイルとしての能力をより高めることができる。尚、上記実施形態3では、基板(111〜114)が4層に積層されているが、基板の層数は5層以上であっても良い。その場合、巻回軸は、基板の層数が偶数であれば積層方向において中央の2層の基板の層間に位置し、基板の層数が奇数であれば積層方向において中央の基板の内部に位置する。また、上記実施形態3では、積層された4層の基板(111〜114)に対して、第1基板(111)、第4基板(114)、第2基板(112)、第3基板(113)の順に各導電パターン(131〜134)の端部同士を接続してコイル(1)を形成していたが、導電パターン(131〜134)の接続順序はこれに限らない。その他の構成、作用及び効果は上記実施形態1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、高調波のノイズを除去するコイルとして有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 コイル
11 上側基板(基板)
12 下側基板(基板)
15 磁性体コア
31,32 導電パターン
45 内側接続部(接続部)
55 外側接続部(接続部)
81 第1導電ライン(導電ライン)
82 第2導電ライン(導電ライン)
111 第1基板(基板)
112 第2基板(基板)
113 第3基板(基板)
114 第4基板(基板)
131,132,133,134 導電パターン
145 内側接続部(接続部)
146 第1内側接続部(接続部)
147 第2内側接続部(接続部)
155 外側接続部(接続部)
156 第1外側接続部(接続部)
157 第2外側接続部(接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の基板(11,12,111〜114)と、
上記複数の基板(11,12,111〜114)の内少なくとも両端の基板(11,12,111,114)の面上に、放射状に配列された複数の線分状の導電パターン(31,32,131〜134)と、
上記導電パターン(31,32,131〜134)が配列された基板(11,12,111〜114)の間で、上記各導電パターン(31,32,131〜134)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって、上記複数の導電パターン(31,32,131〜134)が螺旋状に接続された導電ライン(81,82)を形成する接続部(45,55,145〜147,155〜157)とを備える
ことを特徴とするコイル。
【請求項2】
請求項1において、
上記導電ライン(81,82)の内側に磁性体コア(13)を備えている
ことを特徴とするコイル。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記接続部(45,55,145〜147,155〜157)は、スルーホール接続によって上記導電パターン(31,32,131〜134)の端部同士を電気的に接続している
ことを特徴とするコイル。
【請求項4】
請求項1または2において、
上記接続部(45,55)は、ヘッダ接続によって上記導電パターン(31,32)の端部同士を電気的に接続している
ことを特徴とするコイル。
【請求項5】
請求項2において、
上記磁性体コア(13)は、上記両端の基板(11,12)の何れか一方の基板(11)と該基板に隣接する基板(12)との間に跨るように設けられ、
上記両端の基板(11,12)の内、上記磁性体コア(13)が跨る基板(11)は、フレキシブル基板である
ことを特徴とするコイル。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項において、
上記導電パターン(31,32,131〜134)は、外側のパターン幅が内側のパターン幅よりも大きい
ことを特徴とするコイル。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項において、
上記導電パターン(131〜134)が配列された基板(111〜114)は、上記導電ライン(81,82)の巻回軸を基準に積層方向の両側にそれぞれ複数設けられ、
上記接続部(145,155)は、上記巻回軸を基準に積層方向の一方の基板(112)と他方の基板(113)との間で上記各導電パターン(132,133)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって、上記一方の基板(112)及び他方の基板(113)の複数の導電パターン(132,133)を螺旋状に接続するとともに、上記一方の基板(112)の各導電パターン(132)と上記巻回軸を基準に積層方向において該一方の基板(112)と同じ側に位置する基板(111)の各導電パターン(131)とを内側の端部同士及び外側の端部同士の電気的な接続で並列に接続し、上記他方の基板(113)の各導電パターン(133)と上記巻回軸を基準に積層方向において該他方の基板(113)と同じ側に位置する基板(114)の各導電パターン(134)とを内側の端部同士及び外側の端部同士の電気的な接続で並列に接続することによって、上記導電ライン(81,82)を形成している
ことを特徴とするコイル。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項において、
上記導電パターン(131〜134)が配列された基板(111〜114)は、上記導電ライン(81,82)の巻回軸を基準に積層方向の両側にそれぞれ複数設けられ、
上記接続部(146,147,156,157)は、上記巻回軸を基準に積層方向の一方に位置する基板(111,112)と他方に位置する基板(113,114)との間で上記各導電パターン(131〜134)の内側の端部同士及び外側の端部同士を電気的に接続することによって、上記導電パターン(131〜134)が配列された各基板(111〜114)の導電パターン(131〜134)を順次直列に接続して、複数の螺旋径を有する上記導電ライン(81,82)を形成している
ことを特徴とするコイル。

【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図17】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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