説明

コインセレクタにおける誤検知防止装置及び誤検知防止装置を備えたコインセレクタ

【課題】
本発明の第1の目的は、コインがジャンプしても早期にガイドレールに接しつつ転動させることができるコインセレクタの誤検知防止装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、コインがジャンプしても直径を誤判定しないコインセレクタを提供することである。
本発明の第3の目的は、コインがジャンプしてもコインを誤選別しない小型のコインセレクタを提供することである。
【解決手段】
コインが転動するガイドレールに沿って配置されたセンサによってコインの物理的特性を検知し、前記検知ユニットによって検知した物理的特性に基づいてコインの真偽を判別するようにしたコインセレクタにおいて、前記検知ユニットよりも上流において転動するコインを前記ガイドレールに向かって付勢する付勢装置を設けたことを特徴とするコインセレクタにおける誤検知防止装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドレール上を転動するコインの真偽を判別するコインセレクタに関する。
詳しくは、ガイドレール上を転動するコインがバウンドすることによる誤検知を防止するコインセレクタの誤検知防止装置に関する。
さらに詳しくは、異なる直径のコインが使用可能なコインセレクタのためのシンプルな構造の誤検知防止装置に関する。
さらには、異なる直径のコインを誤選別しないコインセレクタに関する。
なお、本コインセレクタは、コイン式ゲーム機や自動販売機等に使用可能である。
本明細書において、「コイン」とは、コイン、メダルおよびトークン等の総称である。
【背景技術】
【0002】
第1の従来技術として、投入されたコインの物理的特性が転動するガイドレールに沿って配置されたセンサによって検知され、その検知された物理的特性が基準値と比較されてコインの真偽が判別されるようにしたコインセレクタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この第1従来技術において、ほぼ垂直に落下したコインは、斜めに伸びるガイドレールに衝突した後、当該ガイドレール上を転動する。
この転動過程において、センサによりコインの物理的特性、例えば、直径、厚み及び材質が検知される。
【0003】
コイン直径の検知は、コインがガイドレールに接触していることを前提にしている。
しかし、コインは前述のようにほぼ垂直に落下した後、ガイドレールに衝突するため、衝突の衝撃によりガイドレールに対し二、三回僅かな量バウンドした後、ガイドレールに接触しつつ転動する。
センサをコインがバウンドする範囲に配置した場合、コインがバウンドしたときにセンサに対しコインが相対することがある。
この場合、コインは見かけ上大径になるため、コインは誤判定されることがある。
また、バイメタルコインの場合、コインの中央部が中央部の材質センサに十分に相対せず、材質が誤検知されることがある。
したがって、コインのバウンドが収まった後のガイドレールに相対してセンサを配置することが好ましい。
しかし、装置の小型化が求められる状況において、ガイドレールを長くすることは、装置の大型化になるため、俄に採用できない。
【0004】
そこで、第2の従来技術として、コインがガイドレールに衝突した衝撃を緩和し、早期にコインをガイドレールに常時接しつつ転動させるため、衝撃緩衝機能を有するガイドレールが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかし、投入口にコインを勢いよく投入された場合、又は、コインが回転力を付与されて投入された場合、ガイドレールによって衝撃が緩衝されるが、未だ不十分であり、コインがジャンプすることがある。
このジャンプによって、前述のようにコインが誤判定される問題がある。
【0006】
【特許文献1】特公昭56―51396号(図1及び図3、第4頁)
【特許文献2】実用新案登録第2583935号(図1−3、3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、コインがジャンプしても早期にガイドレールに接しつつ転動させることができるコインセレクタの誤検知防止装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、コインがジャンプしても直径を誤判定しないコインセレクタを提供することである。
本発明の第3の目的は、コインがジャンプしてもコインを誤選別しない小型のコインセレクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明にかかるコインセレクタの誤検知防止装置は以下のように構成される。
コインが転動するガイドレールに沿って配置されたセンサによってコインの物理的特性を検知し、前記検知ユニットによって検知した物理的特性に基づいてコインの真偽を判別するようにしたコインセレクタにおいて、少なくとも前記検知ユニットよりも上流において転動するコインを前記ガイドレールに向かって付勢する付勢装置を設けたことを特徴とするコインセレクタにおける誤検知防止装置である。
【発明の効果】
【0009】
この構成において、コインがガイドレールに対しバウンドした場合、バウンドしたコインはガイドレールに向かって付勢装置によって付勢され、直ぐさまガイドレールに押し付けられる。
付勢装置によってガイドレールに押し付けられたコインは、その後ガイドレールに接しつつ転動し、検知ユニットの配置部に達する。
したがって、コインはガイドレールに接触した状態で検知ユニットによって直径、材質等の物理的特性を検知される。
その後、この検知に基づいてコインの真偽が判別される。
したがって、コインは常にガイドローラに接した状態で直径等に関する物理的特性を検知ユニットによって検知されるので、誤判定されることがない。
また、付勢装置によって強制的にコインをガイドレールに向けて付勢するので、ガイドレールを長くしなくとも良く、コインセレクタを小型化できる利点がある。
【0010】
本発明は、前記付勢装置がブラシであることが好ましい。
ブラシは弾性変形するため、コインの転動に対し抵抗が小さく、コインの転動速度を殆ど減速させないので、スピーディにコインの真偽判別ができる利点がある。
さらに、強制的にコインをガイドレールに押し付けるので、ランニングコストが不要である利点を有する。
さらにまた、ブラシは入手が容易であるため、安価に製造できる利点がある。
【0011】
本発明は、前記ブラシがコインの転動方向に傾斜していることが好ましい。
ブラシがコインの転動方向に傾斜している場合、コインはガイドレールとブラシとにより形成される楔空間に進入するため、進行抵抗が小さく、コインの転動速度を殆ど減速させないので、スピーディにコインの真偽判別ができる利点がある。
【0012】
本発明は、傾斜するガイドレールに沿って配置したコインの物理的特性を検知するセンサと、前記センサに相対するガイドレールに対しコインの直径以上離れて少なくとも前記センサよりも上流に配置された付勢装置と、前記ガイドレールの下流に配置され、かつ、前記センサの検知に基づいて正貨と偽貨を振り分けるゲートとよりなる誤検知防止装置を備えたコインセレクタであることが好ましい。
【0013】
この構成において、投入されたコインは、ガイドレールに衝突しバウンドする。
バウンドしたコインはガイドレールに向かって付勢装置によって付勢され、直ぐさま強制的にガイドレールに押し付けられる。
付勢装置によってガイドレールに押し付けられたコインは、その後ガイドレールに接しつつ転動し、センサ部に達する。
したがって、コインはガイドレールに接触した状態でセンサによって直径等に関する物理的特性を検知される。
その後、この検知に基づいてコインの真偽が判別され、この判別に基づいてゲートが作動する。
そして、正貨の場合、ゲートによって受け入れ口へ振り分けられ、偽貨の場合返却口へ振り分けられる。
したがって、コインは常にガイドレールに接した状態で直径等に関する物理的特性をセンサによって検知されるので、誤判定されず、ゲートによって確実に正貨と偽貨に振り分けることが出来る。
また、付勢装置によって強制的にコインをガイドレールに向けて付勢するので、ガイドローラを長くせずともよく、コインセレクタを小型化できる利点がある。
【0014】
本発明は、前記付勢装置が、繊維が前記ガイドレールに向かって伸びるブラシであることが好ましい。
この構成において、転動するコインはブラシによってガイドレールに強制的に押し付けられる。
したがって、バウンドしているコインは強制的にガイドレールに接触させられる。
よって、コインは、センサに相対する部位においはガイドレールに接触しているため、直径等が誤検知されることがないので、誤判定されず、ゲートによって確実に正貨と偽貨に振り分けることが出来る。
また、付勢装置によって強制的にコインをガイドレールに向けて付勢するので、コインセレクタを小型化できる利点がある。
さらに、ブラシは市場において容易に入手することができるので、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の最良の形態は、傾斜するガイドレールに沿って配置したコインの物理的特性を検知するセンサと、前記センサに相対するガイドレールに対しコインの直径以上離れて前記センサよりも上流に配置されたブラシと、前記ガイドレールの下流に配置され、かつ、前記センサの検知に基づいて正貨と偽貨とに振り分けるゲートとよりなる誤検知防止装置を備えたコインセレクタである。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例のコインセレクタの正面図及び判別装置のブロック図である。
図2は、本発明の実施例のコインセレクタのドアを開放した状態の斜視図である。
図3は、本発明の実施例のコインセレクタの分解斜視図である。
図4は、本発明の実施例のコインセレクタの構造を説明する説明図である。
図5は、本発明の実施例のコインセレクタのガイドレールの取り付け部の拡大断面図である。
図6は、本発明の実施例のコインセレクタの作用説明図である。
【0017】
図1において、コインセレクタ100は、上下方向に伸びる本体102と、本体102の一端部に縦軸を支点にピボット運動可能に取り付けられたドア104を含んでいる。
コインセレクタ100は、本体102に固定された突起106を利用して、ゲーム機等に取り付けられる。
本体102は、断面チャンネル形であって、ほぼ垂直に伸びる本体側平面108と、その両端に位置する左側壁110及び右側壁112とを含んでいる。
ドア104は、本体側平面108に対しコインの厚みよりも僅かに大きい間隔で平行に上下方向に伸びるドア側平面114を有している。
【0018】
ドア104のドア側平面110の左側上部には弧状の第1ガイドレール116、第1ガイドレール116に連続して斜め下方に伸びる直状の検知部ガイドレール118が取り付けられている。
また、これらガイドレール116及び118に対し、使用コインの最大直径よりも大きい間隔を空けて弧状の上側ガイド120が本体102の本体側平面106から突出して取り付けられている。
【0019】
第1ガイドレール116の下方にL形の下側ガイドレール122が配置されている。
上側ガイド120の下端部の下方であって、かつ、右側壁112に隣接して上下方向に伸びる直状の側部ガイド124が配置されている。
これらにより、本体102の左上部において、本体側平面108、左側壁110、ドア側平面114及び上側ガイド120とでほぼ垂直に伸び、かつ、断面矩形の導入通路126を構成している。
【0020】
導入通路126に続いて本体側平面108、検知ガイドレール118、ドア側平面114及び上側ガイド120とで断面矩形の斜めに下方に延びる検知通路128を構成している。
検知通路128に続いて本体側平面108、下側ガイド122、ドア側平面114及び上側ガイド120、側部ガイド124とで断面矩形の振分通路130を構成している。
これら導入通路126、検知通路128及び振分通路130で大凡S形(図1参照)のコイン通路130を構成している。
【0021】
上部ガイド120の下方の振分通路130には、ゲート132が配置されている。
ゲート130は、アングル形に形成されたキャンセル片134とソレノイド136によって構成され、投入されたコインを正貨又は偽貨に振り分ける機能を有する。
キャンセル片134は、通常、ソレノイド136に内蔵されたスプリング(図示せず)によりドア側平面114から引っ込んだ位置に保持される。
【0022】
投入コインが正貨に判別された場合、ソレノイド136が励磁されてキャンセル片134が振分通路130に突出され、落下してくるコインを図1において左方へガイドする。
左方へガイドされたコインは、振分体138の左方の返却口140から落下し、ゲーム機の返却口(図示せず)へ戻される。
投入コインが偽貨に判別された場合、キャンセル片134は振分通路130に突出されない。
【0023】
したがって、第1ガイドレール116の右端から自然落下したコインは、振分体138の右方の返却口142から落下する。
なお、本実施例において、コインがよりスムーズに落下するよう導入通路126、検知通路128及び振分通路130に相対する本体側平面108及びドア側平面114に低摩擦シート144及び146が貼付してある。
低摩擦シート144及び146は、例えばポリスライダー(商品名)である。
【0024】
検知通路128に相対してコインの物理的特性を検知する検知ユニット148が配置されている。
検知ユニット148は、コインの直径、材質及び厚み等に関する物理的特性を検知する機能を有している。
本実施例においては、上部ガイド120近傍の検知通路128に相対して配置した直径センサ150及び第1ガイドレール116の下端部に祖対して配置した厚み・材質センサ152を含んでいる。
【0025】
直径センサ150は、本体側平面108の裏面に取り付けた本体側センサ(図示せず)とドア側平面114の裏面に取り付けたドア側センサ(図示せず)により構成されている。
本実施例において前記センサは、コイルを巻き付けたポットコアが検知通路128を挟んで相対配置されている。
厚み・材質センサ152は、二つのコイルを巻き付けたポットコアが検知通路128を挟んで相対配置されている。
【0026】
なお、厚み・材質センサ152は、厚みセンサ及び材質センサに分けて配置することができる。
直径センサ150のコイル及び厚み・材質センサ152の二つのコイルは、それぞれ個別の発振回路154、156、158に接続され、検知対象に応じた周波数の高周波電流が印加されている。
また、発振回路154、156、158はそれぞれ検波回路160、162、164に接続されている。
【0027】
検波回路160、162、164はそれぞれA/D変換回路166、168、170に接続されている。
これらA/D変換回路166、168、170は、判別装置172、例えばマイクロプロセッサに接続され、これらの出力がそれぞれ基準値と比較される。
そして、センサ150及び152の出力全てが基準値内にある場合、正貨と判別され、一つでも基準値外の場合、偽貨と判別される。
偽貨と判別された場合、ソレノイド136は励磁されず、キャンセル片134は振分通路130に突出しない。
【0028】
よってコインは検知ガイドレール118の下端から振分通路130に落下し、側部ガイド124に案内されつつほぼ真下へ落下し、返却口142から落下する。
投入コインが正貨に判断された場合、ドライバ174を介してソレノイド136が所定時間励磁され、キャンセル片134が振分通路130に突出される。
これにより、正貨はキャンセル片134に案内されて振分体138の左側(図1)に案内され、受入口140から落下する。
【0029】
次に本発明に係る誤検知防止装置178である付勢装置180を説明する。
付勢装置180は、少なくとも検知通路128において検知ガイドレール118上を転動するコインをガイドレール118の転動面182に押し付ける機能を有している。
この機能を達成するため、上部ガイド120の第1ガイドレール116の転動面182と相対する下向き面184に弾性を有する繊維186を複数植え込み、付勢ブラシ188を構成している。
【0030】
繊維186の先端は、コインが検知通路128の検知ガイドレール118の上面である転動面182を転動する際、当該コインの上部周面に接触して下向きに所定の力で押し付けることが出来るよう設定されている。
最大径コインが使用される場合、コインに接する繊維186がコインの転動に対して大きな抵抗にならないよう、繊維186の有する弾性力と変形量が定められる。
すなわち、スピーディな判別が可能なようにコインの転動速度を大幅に減速しないようにしてある。
また、最小径コインが使用される場合も、コインを所定の力で転動面182に押し付けることができるよう繊維186の長さと弾性力が定められる。
【0031】
換言すれば、検知通路128のコインの転動方向に対し直交する方向の寸法(通路の高さ)は、使用最大径コインの直径と繊維186の弾力によって定められる。
また、繊維186は検知通路128におけるコインの進行方向線Dに対し鋭角をなすことが好ましい。
繊維186が鋭角をなすことにより、コインから斜めに押し上げられるため、コインの転動抵抗を小さくできるためである。
【0032】
なお、使用コインの直径差が大きく、一種類の上部ガイド120とブラシ188では対応出来ない場合、上側ガイド120を本体102に対し容易に着脱できるように取り付けることが好ましい。
また、ブラシ188の上流側の繊維186は、コインが検知ガイドレール118に案内される前から第1ガイドレール116に押し付けるようにしてある。
検知ガイドレール118の転動面182上をコインが転動する以前から、コインをガイドレールの転動面に確実に接触させるためである。
【0033】
繊維186は、コインと摩擦接触するため、耐久性及びコストを考慮し、例えばポリアミド繊維を用いることが好ましい。
しかし、獣毛や植物繊維等を用いることができる。
例えば、上部ガイド120の下向面184にコインの転動方向Dに対し傾斜する植毛穴を複数穿孔し、その植毛穴にV状に折り曲げた単繊維又は複数の繊維を押し込んで接着し、ブラシ188を構成する。
【0034】
なお、付勢装置180は、上部ガイド120の下向面184に検知通路128に沿って空気噴射口設け、検知ガイドレール116に向けて圧縮空気を吹き付けることにより、コインを転動面182に接触させるようにすることができる。
また、第1ガイドレール116は、導入通路126を落下したコインが第1ガイドレール116に衝突してバウンドすることを可及的に抑制するため、ドア104に対し僅かに移動可能なように、フレキシブル装置190によって取り付けることが好ましい。
換言すれば、フレキシブル装置190は、衝突したコインの衝撃を緩和する機能を有する。
【0035】
次にフレキシブル装置190を図5を参照して説明する。
第1第1ガイドレール116は、その中間から側方に伸びるステー192を介して転動面194に対し直角方向に伸びる取り付け部196においてドア104に取り付けられている。
【0036】
取り付け部196に円形の通孔198が穿孔されている。
ドア側平面114の裏面側に円形の台座200が形成され、この台座200のネジ孔202にブッシュ204を嵌め合わせたネジ206がねじ込まれている。
通孔198は、ブッシュ204の外径よりも僅かに大径、例えば0.2ミリ大径である。
また、ネジ206の頭部208の裏面と取り付け部196の側面との間には約0.1ミリの隙間を空けるため、間隔調整用のリング形のスペーサ210が複数介在されている。
【0037】
さらに、取り付け部196とドア104の裏面との間に衝撃吸収体212が介設されている。
この衝撃吸収体212は、一端面がドア裏面に接着され、取り付け部196に対して接触するようにしてある。
また、衝撃吸収体212は、反発力が小さく衝撃を緩衝する機能を有する。
【0038】
衝撃吸収体212は、例えば、ウレタンフォーム等で作られている。
第1ガイドレール116は、ドア104に形成したスリット214を通ってコイン通路130に突出している。
この構造によれば、取り付け部196は、ブッシュ204及びネジの頭部208との間に、所謂「ガタ」を有しているため、この範囲で第1ガイドレール116は自由に動くことができ、かつ、衝撃を吸収する。
なお、衝撃吸収体212は、使用しないことができる。
【0039】
図4に示すように、第1ガイドレール116の支軸であるブッシュ204は、第1ガイドレール116の下端部上方に位置するため、第1ガイドレール116は、自己モーメントにより時計方向へ回動する。
しかし、第1ガイドレール116から側方に突出する突部214の上面(図示せず)が、スリット214の下面によって停止され、第1ガイドレール116の下流端が検知ガイドレール118の最上流端に対し面一になった状態で停止される。
【0040】
したがって、第1ガイドレール116に衝突した際のコインの衝撃は、この僅かな移動及び衝撃吸収体212により緩衝される。
コインはガイドレール116上から検知ガイドレール118上に転動する。
この検知ガイドレール118の転動面182上を転動する際、コインの最大直径部は直径センサ150と相対する。
コインは直径センサ150に相対した後、厚み・材質センサ152に相対する。
コインが検知ガイドレール118の転動面182上を転動する際もブラシ188によって転動面182に押し付けられている。
【0041】
その後、コインは検知ガイドレール118の下端から落下し、振分通路130を自由落下する。
前記、直径センサ150及び厚み・材質センサ152からの信号が判別装置172において正貨と判別された場合、ソレノイド136は励磁され、キャンセル片134が振分通路130に突出されるので、コインはキャンセル片134によって右方へ案内され、受入口140から落下する。
判別装置172が投入コインを偽貨に判別した場合、ソレノイド136が励磁されないので、キャンセル片134が振分通路130に突出されず、コインはほぼ垂直に落下して返却口142から落下する。
【0042】
なお、糸吊り防止体218が、本体側平面108から振分通路130の上部位置に突出するよう設けられている。
この糸吊り防止体218は、三角形の頂部においてピボット運動可能に本体102に固定された軸(図示せず)に取り付けられ、自己モーメントによって振分通路130に突出するよう設定されている。
【0043】
したがって、コインが振分通路130を落下する場合、コインの下端部が三角形の斜面を押すことによって本体側平面108に押し込まれるため、コインの落下を妨げることがない。
コインが通過した後、糸吊り防止体218は自己モーメントによって振分通路130に突出する。
このため、つり下げたコインを引き上げようとしても、糸吊り防止体218の下面によって阻止されるため、一度正貨と判別されたコインを引き上げることはできない。
なお、218はドア104のカバーである。
【0044】
次に本実施例の作用を図6を参照して説明する。
まず、小径の正貨コインCが投入されたケースを説明する。
コインCは、導入通路126をほぼ垂直に落下した後、第1ガイドレール116の上面に衝突する
これにより、第1ガイドレール116は、ブッシュ204と通孔198及びネジ206の裏面とスペーサ210のガタの範囲で動くことができる。
【0045】
また、この動きは衝撃吸収体212によって減衰されるので、コインCの第1ガイドレール116に衝突した際の衝撃は大幅に緩衝される。
換言すれば、コインCが第1ガイドレール116に衝突した反動によるバウンドは、極めて小さい。
次に、コインCは第1ガイドレール116の転動面194上を転動した後、検知ガイドレール118の転動面182上に移動する。
【0046】
検知ガイドレール118に達する直前からブラシ188の上流側の繊維186がコインCの外周面に接触し、コインCは第1ガイドレール116の上面及び検知ガイドレール118上面に押し付けられる。
したがって、コインCが第1ガイドレール116に衝突した反動によってバウンドしても、前記押し付け力により第1ガイドレール116及び検知ガイドレール118に強制的に押し付けられる。
【0047】
換言すれば、コインCの直径部が直径センサ150に相対する直前から検知ガイドレール118に接触し、弾むことがない。
したがって、直径センサ150は、コインCが検知ガイドレール118と接触した状態の真の直径に関するコインCの物理的特性を検知することができる。
また、コインが厚み・材質センサ152と相対する場合も、前記のようにブラシ188によって転動面182に押し付けられるので、センサ152はコインCの所定の面と相対し、真の厚み・材質に関するコインCの物理的特性を検知することができる。
【0048】
ブラシ188を通過したコインCは、前述のように、正貨の場合、キャンセル片134によって受入口140へ案内され、偽貨の場合、返却口142へ案内される。
ブラシ188を構成する繊維186がコインの転動方向Dに対し傾斜しているため、コインCは第1ガイドレール116または検知ガイドレール118と繊維186で構成される楔空間に進行する。
したがって、転動するコインCに対する繊維186による進行抵抗を小さくできる利点がある。
【0049】
なお、図6に鎖線で示す最大径コインCMの場合、繊維186の撓み量が多くなるが、その撓み量を適当に設定することにより、コインCMの転動速度が所定値よりも遅くならないよう設定する。
換言すれば、第1ガイドレール116または検知ガイドレール118と上側ガイド120下向面184との距離を適宜設定することにより、又は、繊維186の弾性を適宜選択することにより、コインCの転動速度を所定値以上に確保し、スピーディなコインの選別を可能とする。
【0050】
なお、本実施例において、第1ガイドレール116を移動可能に設置することにより、コインCとの衝突を緩衝するようにしたが、第1ガイドレール116を固定状態にし、検知ガイドレール118と一体化することができる。
しかし、第1ガイドレール116を可動にしてコインCの衝撃力を緩和することにより、短いガイドレールであってもコインCのバウンドを防止できるので、装置を小型にすることができる。
なお、コインCの衝撃力を緩和する構造は、同様の機能を有する他の構造に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明の実施例のコインセレクタの正面図及び判別装置のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施例のコインセレクタのドアを開放した状態の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例のコインセレクタの分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施例のコインセレクタの構造を説明する説明図である。
【図5】図5は、本発明の実施例のコインセレクタのガイドレールの取り付け部の拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例のコインセレクタの作用説明図である。
【符号の説明】
【0052】
C コイン
118 ガイドレール
132 ゲート
148 検知ユニット
150、152 センサ
180 付勢装置
186 繊維
188 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイン(C)が転動するガイドレール(118)に沿って配置された検知ユニット(148)によってコインの物理的特性を検知し、前記検知ユニットによって検知した物理的特性に基づいてコインの真偽を判別するようにしたコインセレクタにおいて、
少なくとも前記検知ユニットよりも上流において、転動するコインを前記ガイドレールに向かって付勢する付勢装置(180)を設けたことを特徴とするコインセレクタにおける誤検知防止装置。
【請求項2】
前記付勢装置がブラシ(188)である請求項1のコインセレクタにおける誤検知防止装置。
【請求項3】
前記ブラシがコインの転動方向に傾斜している請求項2のコインセレクタにおける誤検知防止装置。
【請求項4】
傾斜するガイドレール(118)に沿って配置したコインの物理的特性を検知するセンサ(150、152)と、
前記センサに相対する前記ガイドレールに対しコインの直径以上離れて少なくとも前記センサよりも上流に配置された付勢装置(180)と、
前記ガイドレールの下流に配置され、かつ、前記センサの検知に基づいて正貨と偽貨を振り分けるゲート(132)と
を備える誤検知防止装置を備えたコインセレクタ。
【請求項5】
前記付勢装置が繊維(186)が前記ガイドレールに向かって伸びるブラシである請求項4の誤検知防止装置を備えたコインセレクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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