説明

コイン処理装置

【課題】 正当にコインを投入しないで不当に利益を得るような不正を防止する。
【解決手段】 コイン投入口3から投入されたコインCを選別するコイン選別部13の下流側に、コイン転動方向に対して順番に3個のコインセンサ14,15,16が設けられている。このうち、コインセンサ14,16はコインを非接触状態で検出し、コインセンサ15にはコインに接触することによりコインを検出する作動片が設けられている。制御部では、3個のコインセンサ14,15,16の順に検出が行われない場合およびコインセンサ15による検出時間が予め設定した時間よりも長い場合は不正行為と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシンや弾球遊技機等の遊技機あるいは自動販売機のようにコイン(硬貨に限らず、メダル、トークン等の遊技媒体を含む)を使用する機器に付設されるコイン処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のコイン処理装置においては、コインを棒状体等の先端に取り付け、一旦投入されたコインを引き抜く等の不正が発生しており、これを防止する対策を施した構造が採用されている。すなわち、コイン投入口から投入されコイン選別部を通過した正規コインを検出するコイン受付信号出力センサとコイン逆流チェック用センサとを備え、これら両センサをコイン転動通路中の上流と下流とに位置付け、下流に設けたコイン逆流チェック用センサによって棒状体によるコインの引き抜き等の不正を検出するものがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−81555号公報(段落「0015」および「0016」、図1および図4)
【特許文献2】特開2004−166806号公報(段落「0025」および「0038」〜「0040」、図5および図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のコイン処理装置においては、コイン受付信号出力センサとコイン逆流チェック用センサを誤認識させることにより、正当にコインを投入しないで不当に利益を得るような不正を完全には防止できないという問題があった。すなわち、棒状体に替えて先端部に2個のLEDを埋設した透明な長尺状のプラスチック板を用意し、このプラスチック板に埋設した各LEDをコイン受付信号出力センサとコイン逆流チェック用センサとのそれぞれに位置付ける。この状態で各LEDを順次発光させることにより、両センサではコインが恰も通過したと誤認識してしまうため、不正が行われてしまうというものである。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、正当にコインを投入しないで不当に利益を得るような不正を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、コインが投入されるコイン投入口と、このコイン投入口から投入されたコインを径方向に転動させるコイン転動通路と、このコイン転動通路中を転動するコインを選別するコイン選別部と、このコイン選別部を通過した正規コインを検出する複数のコインセンサとを備えたコイン処理装置において、前記複数のコインセンサを前記コイン選別部の下流側に設け、これら複数のコインセンサのうちの少なくとも一つに、前記コイン転動通路中を転動するコインとの接触によって検出する作動部材を設けたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記作動部材によって検出するコインセンサを他のコインセンサのうちの少なくと1つよりもコイン転動方向下流側に設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、透明な長尺状のプラスチック板の先端部に埋設したLEDをコインセンサに位置付け、LEDを発光させることによりコインセンサに対してコインが通過したと誤認識させようとする不正を行おうとすると、プラスチック板が作動部材に接触したままの状態になる。したがって、制御部において、作動部材を設けたコインセンサによる検出時間が、予め設定した設定時間よりも長くなった場合に、プラスチック板による不正が行われていると判断させることにより、正当にコインを投入しないで不当に利益を得るような不正を防止できる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、透明な長尺状のプラスチック板に埋設したLEDを各コインセンサに対応させる際に、上流側のLEDを点灯させる以前に、下流側に設けたコインセンサの作動部材がプラスチック板に接触するため、下流側のコインセンサが上流側のコインセンサよりも先に検出してしまう。このため、コインセンサの検出の順番が正常でないと判断されるため、不正行為を規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係るコイン処理装置の正面図、図2は図1におけるII-II 線断面図で、同図(A)はコインが投入される直前の状態を示し、同図(B)は正規コインをコインセンサによって検出している状態を示し、図3は同じくコイン処理装置の構成を示すブロック図である。
【0010】
図1で全体を符号1で示すコイン処理装置は、略正方形に形成された基板2を備えており、この基板2の左側上端にはコイン投入口3が設けられている。このコイン投入口3の横幅Lは、正規コインC1の直径よりもわずかに大きく形成されており、このコイン投入口3に正規コインC1よりも直径が大きく形成された疑似コインは投入できないように構成され、このコイン投入口3が大径疑似コインの外径を選別する選別部として機能する。4は基板2に設けられコイン投入口3から投入されたコインCが径方向に転動するコイン転動通路であって、コイン投入口3の直下に設けられた垂直通路5と、この垂直通路5から図中右下がりに傾斜した傾斜通路6とによって構成されており、傾斜通路6を通過した正規コインC1はコイン収納部7に収納される。
【0011】
8はレール部材であって、基板2に軸9を介して紙面の表裏方向へ揺動自在に支持されており、図示を省略したソレノイドを駆動源として紙面の表裏方向へ揺動され、表面方向へ揺動させることにより上端に形成したレール部10が傾斜通路6に進出し、このレール部10が傾斜通路6を転動するコインCを支承するコイン軌道を構成している。一方、レール部材8をソレノイドによって裏面側に揺動させることによりレール部10が傾斜通路6から退避し、傾斜通路6を転動してきたコインCが傾斜通路6から落下し、コイン返却部11に返却されるように構成されている。
【0012】
13は従来から広く知られているコインの外径を選別するコイン選別部であって、正規コインC1はこのコイン選別部13を通過してコイン収納部7へ収納され、正規コインよりも小径の疑似コインC2はコイン選別部13からコイン返却部11に返却される。
【0013】
傾斜通路6の終端側、すなわちコイン選別部13のコイン転動方向下流側には、コインの転動方向上流側から3つのコインセンサ14,15,16が設けられおり、これらコインセンサ14,15,16は正規コインC1を同時に検出できる程度に互いに近接している。このうち2つのコインセンサ14,16は傾斜通路6の上部側に設けられ、コインセンサ15は傾斜通路6の下部側に設けられている。コインセンサ14,16は、傾斜通路6を挟むようにして設けられた発光素子と受光素子とによって構成され、これら両素子間を通過する正規コインC1が発光素子から発光された光を遮断することによりコインの検出が行われる光センサを形成している。
【0014】
一方、コインセンサ15は、傾斜通路6を転動する正規コインC1が接触することにより揺動する作動部材としての作動片17と、この作動片17を介して正規コインC1を検出する光センサ18と、作動片17を付勢する引張りコイルばね19とによって概ね構成されている。作動片17は、図2に示すように、基板2に一体に突設した軸支承部20に横架された軸21に揺動自在に支持されており、正規コインC1が接触する作動部22と、傾斜通路6内を逆流する部材を係止する係止部23と、光センサ18をON,OFFする光遮断部24とによって形成されている。
【0015】
作動片17の作動部22は平面視において略直角三角形に形成され、引張りコイルばね19の引張力によって基板2に設けた窓25から傾斜通路6内に臨み、傾斜部22aがコイン転動方向上流側(矢印B方向)を指向し、垂直部22bがコイン転動方向下流側(矢印A方向)を指向している。作動片17の係止部23は、傾斜通路6内を逆流する部材が垂直部22bに接触し、この部材によって作動片17を引張りコイルばね19の引張力に抗して軸21を中心として時計方向に回動させようとすると、窓25の端縁25aに係合し、作動片17の回動を規制する。27は基板2から一体に突設されたセンサホルダー27であって、センサホルダー27の先端部には二股状に分岐したホルダー部28,28が設けられている。各ホルダー部28,28には、光センサ18を構成する発光素子と受光素子が収納されており、これらホルダー部28,28間に作動片17の光遮断部24が進退するように構成されている。
【0016】
このような構成において、コイン投入口3から投入されコイン選別部13によって選別された正規コインC1が、作動片17の作動部22の傾斜部22aに当接することにより、作動片17が図2(B)に示すように引張りコイルばね19の引張力に抗して、軸21を中心として図中反時計方向へ回動する。作動片17が反時計方向へ回動することにより、光遮断部24がセンサホルダー27のホルダー部28,28間に進出するため、光センサ28によってコインが検出される。29は基板2に対向し転動通路4を形成するフラッパであって、図示を省略した返却レバーを操作することにより、基板2から離間し、転動通路4中のコインをコイン返却部11に返却する。なお、引張りコイルばね19の引張力は、正規コインC1の転動を阻害しない程度で、かつ作動片17の姿勢を保持できる程度の最小限の大きさに設定している。
【0017】
図3において、30は各コインセンサ14,15,16からの検出結果によって不正行為が行われているか否かを判断する制御部である。すなわち、正規コインC1を、コインセンサ14、コインセンサ15、コインセンサ16の順序で検出し、かつこれら3つのコインセンサ14,15,16が同時に検出するタイミングが存在する場合は、不正行為が行われていない正常な状態と判断する。また、コインセンサ15による検出時間が、予め設定した時間Tよりも長い場合は制御部30において不正行為が行われていると判断する。すなわち、制御部30に設けられたタイマー31によってコインセンサ15の検出時間T1を計時し、制御部30においては、検出時間T1と予め設定された時間Tと比較し、T1<Tであれば不正行為が行われていない正常な状態と判断する。一方、制御部30においては、T1>Tであれば不正行為が行われていると判断し、報知手段32として、このコイン処理装置1が付設される遊技機の表示部(いずれも図示せず)に異常表示がされるように制御する。
【0018】
次に、このように構成されたコイン処理装置1において、コインの処理動作および不正が行われたときの検出方法について説明する。先ず、正規コインC1が投入された場合の処理動作について説明する。コイン投入口3から投入された正規コインC1は、コイン選別部13によって選別されコイン選別部13を通過して傾斜通路6を転動し、コインセンサ14、コインセンサ15、コインセンサ16の順序で検出され、かつこれら3つのコインセンサ14,15,16によって同時に検出されるタイミングが存在する。また、制御部30のタイマー31によって計時されるコインセンサ15の検出時間T1が、制御部30において予め設定された時間Tよりも短いため、制御部30においては、不正行為が行われていない正常な状態と判断するので、正規コインC1はコイン転動通路4の終端からコイン収納部7に収納される。
【0019】
次に、例えば、先端部に3個のLEDを埋設した透明な長尺状のプラスチック板によってコインセンサ14,15,16を誤検出させ不正しようとする場合について説明する。プラスチック板をコイン投入口3から投入し、3個のLEDを各コインセンサ14,15,16に対応させ、コインセンサ14,15,16が恰も正規コインC1が通過したと誤認識させるように、各LEDを点灯、消灯、点灯させる。このとき、コインセンサ14に対応させたLEDの消灯させる以前に、コインセンサ15に対応するプラスチック板が作動片22の作動部22に接触するため、下流側のコインセンサ15が上流側のコインセンサ14よりも先にプラスチック板を検出してしまう。このため、制御部30においては、コインセンサ14,15,16による検出の順番が正常ではなく異常と判断し、このコイン処理装置1が付設された遊技機の表示部に異常表示がされる。
【0020】
また、3個のLEDを各コインセンサ14,15,16に対応させ、コインセンサ14,16を連続的に点灯、消灯を繰り返し、恰も正規コインC1が複数個通過したような不正を行おうとした場合は、コインセンサ15の作動片がプラスチック板に接触したままの状態になる。このため、制御部30においては、コインセンサ15の検出時間T1と予め設定された時間Tと比較し、T1>Tであるため不正行為が行われていると判断し、報知手段32によって異常表示がされるように制御する。
【0021】
なお、本実施の形態においては、コインセンサ15をコインセンサ14とコインセンサ16との間に設けたが、コインセンサ16の下流側に設けてもよい。また、コインセンサ16を設けたが、少なくともコインセンサ14とコインセンサ15とを設ければよい。また、コインセンサ14,16を光センサとしたが、コインと非接触状態で検出できる静電センサや超音波センサ等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るコイン処理装置の正面図である。
【図2】図1におけるII-II 線断面図で、同図(A)はコインが投入される直前の状態を示し、同図(B)は正規コインをコインセンサによって検出している状態を示す。
【図3】本発明に係るコイン処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1…コイン処理装置、3…コイン投入口、4…コイン転動通路、7…コイン収納部、8…レール部材、11…コイン返却部、13…コイン選別部、14,15,16…コインセンサ、17…作動片、18…光センサ、30…制御部、31…タイマー、32…報知手段、C…コイン、C1…正規コイン、C2…小径疑似コイン。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインが投入されるコイン投入口と、このコイン投入口から投入されたコインを径方向に転動させるコイン転動通路と、このコイン転動通路中を転動するコインを選別するコイン選別部と、このコイン選別部を通過した正規コインを検出する複数のコインセンサとを備えたコイン処理装置において、前記複数のコインセンサを前記コイン選別部の下流側に設け、これら複数のコインセンサのうちの少なくとも一つに、前記コイン転動通路中を転動するコインとの接触によって検出する作動部材を設けたことを特徴とするコイン処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のコイン処理装置において、前記作動部材によって検出するコインセンサを他のコインセンサのうちの少なくとも1つよりもコイン転動方向下流側に設けたことを特徴とするコイン処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−280451(P2006−280451A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101284(P2005−101284)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【出願人】(000144153)株式会社三共 (5,148)
【出願人】(301025313)株式会社データ・アート (6)
【Fターム(参考)】