説明

コイン送出装置

【課題】コインの詰まりを解消できると共に、ピンの加工や設置作業を容易に行うことができる。
【解決手段】コインCが供給され下部側からコインCを排出するホッパ2と、ホッパ2の下方に設けられてコインCが供給されるベース部3と、ベース部3上端面のベース板3aに設けられてコインCが入り込むと共にコインCをベース板3aと接した状態に保持するコイン穴4aを有しコインCと共に周方向に回転可能な円板状の回転ディスク4と、回転ディスク4を回転駆動させるモータ(駆動機構)5と、ベース板3aから突出していて回転ディスク4の一方の回転方向の回転と共に移動するコインCが接触することでコインCをコイン排出通路11にガイドするピン14を有するガイドピン12とを備える。ベース板3aには、外周にテーパー面15aが形成された突起部15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊戯用機械のスロットマシン等に設置されて、メダル、コイン(以下、両者を「コイン」と総称する)を送り出すコイン送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットマシンなどの遊技機に内蔵されているコイン送出装置は、ホッパに貯留されている多数枚のメダルを、ホッパの下側に設けられてコインが入り込む複数のコイン穴を備える回転ディスクの回転動作により、コインを1枚ずつベース板に沿って平面的に回転させ、ベース板から突出するピンに衝突させることにより、メダルを回転ディスクの回転方向からコイン払出通路側へと方向を転換させてコインを払い出している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなコイン送出装置では、ホッパのコインがベース板の面に対して斜め方向からコイン穴に入り込むとコインが重なってベースと回転ディスクの間に詰まってしまい、コインの払い出しが停止してしまうことがある。そして、このようにコインが詰まった場合には、回転ディスクを逆回転させてコインの詰まりを解消させている。
回転ディスクが逆回転すると、まず、図5(a)に示すように、逆回転方向A2に逆回転する回転ディスクと共に回転したコインCは、ベース板31から突出するピン32と接触する。そして、このピン32には、逆回転したコインCが接触する側にテーパー面(傾斜面)32aが形成されているので、図5(b)〜(e)に示すように、逆回転するコインCは、このテーパー面32aに沿ってベース板31から離れてピン32を乗り越えている。このピン32は、板バネ33に設置されており、板バネ33から突出した状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3341837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコイン送出装置では以下のような問題があった。
ピン32に形成されたテーパー面32aは、逆回転したコインCが接触する側に形成されていなければならず、テーパー面32aの加工や、テーパー面32aが加工されたピン32を板バネ33に正確に設置することに労力を要していた。
そして、ピン32のテーパー面32aの向きや角度が適切でないと、コインCがピン32を乗り越えることができず、コインCの詰まりを解消できないことがあった。
【0006】
本発明は、上述する問題に鑑みてなされたもので、コインの詰まりを確実に解消できると共に、ピンの加工や設置作業を容易にすることができるコイン送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るコイン送出装置は、コインが供給され下部側からコインを排出するホッパと、前記ホッパの下方に設けられて前記ホッパから排出されたコインが供給され前記コインを1枚ずつ排出するコイン排出通路を有するベース板と、前記ベース板上面に設けられて前記ホッパから供給されたコインが入り込むと共に前記コインを前記ベース板と接した状態に保持するコイン穴を有し前記コイン穴に保持されたコインと共に周方向に回転可能な円板状の回転ディスクと、前記回転ディスクを回転駆動させる駆動機構と、前記ベース板上面から突出していて前記回転ディスクの一方の回転方向の回転と共に移動するコインが接触することで前記コインを前記コイン排出通路にガイドするピンとを備えるコイン送出装置であって、前記ベースには、前記一方の回転方向における前記ピンの前方に、外周にテーパー面が形成された突起部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、ベース板には、回転ディスクの一方の回転方向におけるピンの前方に外周にテーパー面が形成された突起部が設けられていることにより、回転ディスクとベース板の間にコインが詰まって、回転ディスクを詰まったコインと共に他方の回転方向に回転(逆回転)させる際に、コインが突起部と接触して、突起部のテーパー面に沿ってベース板から離れる方向に移動しピンを乗り越えることができるので、逆回転してコインの詰まりを確実に解消することができる。
また、ピンにテーパー面が形成されていた従来のコイン送出装置と比べて、本発明ではピンにテーパー面を形成する必要が無いので、ピンの加工が容易であると共に、ピンを設置する際にピンの方向を考慮することがなくピンの設置が行いやすい。
【0009】
また、本発明に係るコイン送出装置では、前記突起部は前記ベース板と一体に成形されていることが好ましい。
本発明では、突起部はベース板と一体に成形されていることにより、ベース板に突起部を容易に成形することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベース板に外周にテーパー面が形成された突起部が設けられていることにより、回転ディスクとベース板との間にコインが詰まって、回転ディスクを逆回転させる際に、コインが突起部のテーパー面に沿ってベース板から離れピンを乗り越えることができるので、逆回転してコインの詰まりを解消することができる。また、ピンにテーパー面を形成する必要が無いので、ピンの加工や設置が行いやすく、ピンの設置にかかる労力を低減させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態によるコイン送出装置の一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態によるコイン送出装置のベース板と回転ディスクを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態によるコイン送出装置のベース板の上面を示す図である。
【図4】(a)〜(e)は本発明の実施の形態によるコイン送出装置における逆回転するコインの移動を説明する図である。
【図5】(a)〜(e)は従来のコイン送出装置における逆回転するコインの移動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態によるコイン送出装置について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1に示す本実施の形態によるコイン送出装置1は、スロットマシンなどのゲーム機に搭載されている。コイン送出装置1は、コインCが供給され下部側からコインCを排出するホッパ2と、ホッパ2の下方に設けられたベース部3と、ベース部3の上部に設けられた回転ディスク4と、回転ディスク4を回転させるモータ(駆動機構)5と、ベース部3上端面のベース板3aの上面から突出するピン14を備えるガイド部材12と、ベース板3aから突出する突起部15とから概略構成される。
【0013】
図1、2に示すように、ベース部3には上端面に傾斜したベース板3aが設けられていて、ベース板3aには、コインCをベース板3a外に排出するコイン排出通路11が設けられている。このコイン排出通路11は傾斜した上板3aの上部側に位置している。
また、ベース板3aには、回転ディスク4の平面形状よりやや大きい平面形状の凹部3bが形成されていて、この凹部3bはコイン排出通路11とつながっている。この凹部3bは、コイン排出通路11以外からコインCが外方へ移動することを防止している。
【0014】
図2および図3に示すように、コイン排出通路11には、排出されるコインCが一枚ずつ排出されるように規制するバネ材で形成された規制部16が形成されている。規制部16はコインCの通路をコインC(図2参照)の幅(径)よりも若干狭くなるように塞いでおり、排出されるコインCはこの規制部16を押し開けて排出される。
また、規制部16と連動してコイン排出通路11から排出されるコインCの枚数を測定するためのセンサー17が備えられている。
【0015】
図2に示すように、回転ディスク4は、ベース板3aの上部にその面方向をベース板3aの面方向と合わせて設置されている。回転ディスク4は、周方向に回転可能な円板状に形成されて、厚さ方向に貫通するコイン穴4aを複数備えている。本実施の形態では、コイン穴4aは回転ディスク4の回転軸を中心として周方向に互いに間隔をあけて6個配列されている。
コイン穴4aは、回転ディスク4の軸方向においてホッパ2側からベース部3側に向って径が漸次縮小されており、ベース部3側がコインCよりもやや大きい径に形成されている。
【0016】
コイン穴4aに入り込んだコインCは、その面方向が回転ディスク4の面方向と同じ状態となり、下側の面がベース板3aと接している。そして、コインCは側面がコイン穴4aに保持されている。
モータ5はベース部3に内蔵されており(図1参照)、その出力軸5aはベース板3aを垂直に貫通し、回転ディスク4と連結されている。
回転ディスク4が回転することによって、コイン穴4aに保持されたコインCはベース板3aに沿って回転ディスク4と共に回転する。
回転ディスク4は、コインCを払い出す場合に回転方向A1に回転する。
【0017】
図1および図3に示すように、ガイド部材12は板バネ13と板バネ13の一方の面から突出する2本の円柱状のピン14とから構成されている。ガイド部材12は、ベース板3aに形成された2つのピン挿入孔3cにベース部3の内部側(ベース板3aの裏側)からピン14が挿入され、板バネ13がベース板3aの裏側に固定された状態に設置される。
2本のピン14は、板バネ13の同じ端部側に設けられており、板バネ13はピン14付近でベース板3aへ固定されず、ピン14から離れた端部側でベース板3aへ固定される。板バネ13はこのようにベース板3aへ固定されることによって弾性変形可能となる。
本実施の形態では板バネ13は、平板状の1枚のバネ鋼から構成されている。なお、板バネ13は平板状のバネ鋼を所定の角度で曲げた構成としてもよく、複数枚のバネ鋼を重ねた構成としてもよい。
【0018】
ピン14は、ベース板3aの回転ディスク4と重なる部分で、回転ディスク4と共に回転するコインCが接触する位置に設置されている。ピン14は、回転ディスク4と共に回転するコインCをコイン排出通路11側へガイドするためのものであり、回転ディスク4の回転軸4bを中心に回転するコインCの移動方向をコイン排出通路11側へ方向を転換させる位置に設置されている。ピン挿入孔3cもこの位置に設けられている。
【0019】
図2に示すように、2つのピン14は近接して設けられているが、回転ディスク4の回転軸4bからの距離と回転軸4bを中心とする周方向の位置が異なる。
2つのピン14a、14b位置関係は、回転軸4bから遠いほうのピン14aが回転軸4bに近いほうのピン14bよりも、回転ディスク4の回転方向A1において前方に位置している。ピン14aは、コインCの中心が回転によって描く円の外側に位置しており、ピン14bは、この円の内側に位置している。
回転ディスク4は、その裏面(ベース板3aと対向する面)に、回転時に各ピン14a、14bと接触しないための溝部4cがそれぞれ形成されていて、各ピン14a、14bはそれぞれ溝部4c内に入った状態となる。
【0020】
ベース板3aには、2つのピン14a、14bのうち回転ディスク4の回転方向A1において前方に設置されたピン14aの更に前方に、このピン14aと所定の間隔をあけてベース板3aから突出する突起部15が形成されている。
突起部15は、外周にテーパー面15aを備える円錐台形状であり、ベース板3aと一体に成形されている。突起部15はピン14aと略同じ高さに形成されていて、回転ディスク4の溝部4c内にピン14aと共に入った状態となる。
【0021】
次に、上述したコイン送出装置1の動作について説明する。
図1に示すホッパ2よりベース部3上に多数枚のコインCが供給され、コインCが回転ディスク4のコイン穴4aに入り込む。
そして、コイン送出装置1がコインC払い出しの指示を受けると、モータ5が回転方向A1の方向に回転して回転ディスク4がコイン穴4aのコインCと共に回転する。
回転ディスク4と共に回転するコインCは、ピン14と接触すると回転ディスク4外方のコイン排出通路11側へガイドされる。
【0022】
コイン排出通路11へガイドされるコインCは、まず、2つのピン14のうち回転ディスク4の回転軸4bに近く、回転方向A1の後方にあるピン14bと接触する。そして、ピン14bに接触したままコインCが回転方向A1に移動しようとするため、回転ディスク4の回転軸4bから離れる方向に移動する。そして、コインCはピン14aと接触し、更に回転ディスク4の回転軸4bから離れる方向にガイドされる。
そして、コインCは、規制部16を押してコイン排出通路11へ移動しベース部3から排出されてコイン送出装置1外へ払い出される。
このとき、センサー17によって払い出されたコインCの枚数が計測されており、所定の枚数のコインCが排出された後にモータ5の回転駆動が停止して回転ディスク4が停止する。
【0023】
ホッパ2からベース板3a上へ供給される多数枚のコインCは、それらの向きが統一されていなく、コイン穴4aに対して多方向から入り込むことになる。
このとき、コイン穴4aは、ホッパ2側からベース部3側に向って径が漸次縮小されているので、ほとんどのコインCはコイン穴4aへの所定の向きで入り込むが、コインCがコイン穴4aに対して斜め方向から入り込んでベース板3aと回転ディスク4との間にコインCが詰まってしまうことがある。
【0024】
コインCが詰まった場合には、コインCを払い出す場合と逆回転方向A2にモータ5を回転させる駆動を行う。
回転ディスク4を逆回転方向A2に回転させることによって、回転ディスク4と共に詰まったコインCも逆回転方向A2に回転する。図4(a)に示すように、逆回転方向A2に回転したコインCは、突起部15と接触し、図4(b)〜(e)に示すように、突起部15のテーパー面15aに沿ってベース板3aから離れる方向に移動してピン14a、14bを乗り越えている。
そして、回転ディスク4と共に詰まったコインCが逆回転方向A2に回転することでコインCの詰まりが解消される。
コインCの詰まりが解消された後に、回転ディスク4の逆回転駆動を停止させる。
【0025】
次に、上述した本実施の形態によるコイン送出装置1の効果について説明する。
本実施の形態によるコイン送出装置1は、ベース板3aにテーパー面15aを備える突起部15が形成されていることにより、コインCが詰まった場合に、回転ディスク4をコインCと共に逆回転方向A2に回転させるとコインCが突起部15のテーパー面15aに沿って移動し、ピン14a、14bを乗り越えて逆回転するので、コインCの詰まりを解消できる効果を奏する。
【0026】
また、従来のコイン送出装置では、図5に示すように、ピン32にテーパー面32aが形成されていて、コインCが詰まって逆回転方向A2に回転させる場合にピン32に形成されたテーパー面32aに沿って移動させてコイン穴からコインCを排出させていたので、ピン32にテーパー面32aを加工したり、方向を考慮してピン32を板バネ33に設置したりしなければならなく手間がかかっていた。しかし、本実施の形態では、従来と比べてピン14の加工が容易であると共に、ピン14と板バネ13を接合する際に方向を考慮する必要がないので、板バネ13へのピン14の設置にかかる労力を低減させる事ができる。
また、突起部15はベース3の上板3aに一体に形成されているので、設置が容易である。
【0027】
以上、本発明によるコイン送出装置1の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態では、突起部15は、外周にテーパー面15aを備える円錐台形状であるが、逆方向に回転するコインCが接触する面にテーパー面を備えていればよく、直方体や円柱などの外周の一部にテーパー面を形成した形状としてもよい。
また、上記の実施の形態では、突起部15はピン14と略同じ高さに形成されているが、突起部15の高さはコインCが突起部15のテーパー面15aにガイドされてピン14を乗りこえることができれば、ピン14よりも高くても低くてもよい。
また、上記の実施の形態では、回転ディスク4に対してコイン穴4aを6つ設けているが、任意の個数のコイン穴4aを設けてもよい。
また、上記の実施の形態では、突起部15はベース板3aと一体に成形されているが、一体成形でなく、ベース板3aに突起部15を接着、または取付固定した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 コイン送出装置
2 ホッパ
3 ベース部
3a ベース板
4 回転ディスク
4a コイン穴
5 モータ
11 コイン排出通路
12 ガイド部材
14、14a、14b ピン
15 突起部
15a テーパー面
A1 回転方向(一方の回転方向)
C コイン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインが供給され下部側からコインを排出するホッパと、
前記ホッパの下方に設けられて前記ホッパから排出されたコインが供給され前記コインを1枚ずつ排出するコイン排出通路を有するベース板と、
前記ベース板上面に設けられて前記ホッパから供給されたコインが入り込むと共に前記コインを前記ベース板と接した状態に保持するコイン穴を有し前記コイン穴に保持されたコインと共に周方向に回転可能な円板状の回転ディスクと、
前記回転ディスクを回転駆動させる駆動機構と、
前記ベース板上面から突出していて前記回転ディスクの一方の回転方向の回転と共に移動するコインが接触することで前記コインを前記コイン排出通路にガイドするピンとを備えるコイン送出装置であって、
前記ベースには、前記一方の回転方向における前記ピンの前方に、外周にテーパー面が形成された突起部が設けられていることを特徴とするコイン送出装置。
【請求項2】
前記突起部は前記ベース板と一体に成形されていることを特徴とする請求項1に記載のコイン送出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−118808(P2011−118808A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277490(P2009−277490)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000175412)三喜工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】