説明

コグニティブ無線システム、コグニティブ無線端末、無線接続制御装置、およびハンドオーバー制御方法

【課題】ユーザの利便性の向上を踏まえて、無線通信の品質低下を可及的に抑制し得る、コグニティブ無線端末によるハンドオーバーを実現するコグニティブ無線システムを提供する。
【解決手段】コグニティブ無線システムにおいて、コグニティブ無線端末における複数の無線中継装置のそれぞれからの受信強度に関する情報および複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて、該複数の無線中継装置のうち該コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となり得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度を決定する。そして、候補無線中継装置のハンドオーバー優先度がコグニティブ無線端末に通知されることで、該コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置を介して、該候補無線中継装置のハンドオーバー優先度に従って該コグニティブ無線端末と該候補無線中継装置との接続準備が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるコグニティブ無線通信が可能な端末による、無線システムが異なる基地局間でのハンドオーバーを制御するコグニティブ無線システム、当該コグニティブ無線端末、そのハンドオーバー制御に供される無線接続制御装置、およびハンドオーバー制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線アクセスネットワーク(RAN)では、無線システムごとに無線端末と基地局との間で用いられる運用周波数が管理されることを前提として、無線端末ごとにある無線システムの環境下で、最適なハンドオーバーの候補となる基地局が割り当てられていた。一方で、異なる無線システム間でハンドオーバーを行うことを認める場合、現在無線通信が行われている無線システムでの通信が不可となった時点で、改めて異なる無線システムでの通信が開始される。この場合、ユーザにおいては、一度通信が多少なりとも遮断されるため利便性は良くない。
【0003】
そこで、異なる無線システム間での無線端末のハンドオーバーを円滑に行う技術が、たとえば特許文献1に開示されている。当該技術では、異なる無線システム間で選択的に無線通信が可能なコグニティブ無線端末において、通信中の無線システムで通信速度が低下した場合には、異なる無線システム間に共通に設けられたプラットフォームを介して異なる無線システムにシームレスにハンドオーバーが行われることを可能となるように、コグニティブ無線端末でのリコンフィギュレーションが実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−206933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コグニティブ無線端末によって異なる無線システム間でハンドオーバーを行う場合、如何に速やかに無線システム間で無線通信を切り替えるかがユーザの利便性の観点から重要である。一方で、無線通信を行うコグニティブ無線端末と、各無線システムに対応する基地局やアクセスポイント等の無線中継装置との相対位置関係は一定ではないことから、ハンドオーバーを行うタイミングを決定することは容易ではない。仮に上述の従来技術のように無線通信中の通信速度の低下をトリガーとして、ハンドオーバー先の無線システムに係る無線中継装置を決定しようとしても、その決定には一定の時間を要するものであり、また、決定までの時間においてはユーザは低下した通信速度での無線通信環境に晒されることになり、ユーザの利便性が必ずしも好ましい状況とは言えない。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ユーザの利便性の向上を踏まえて、無線通信の品質低下を可及的に抑制し得る、コグニティブ無線端末によるハンドオーバーを実現するコグニティブ無線システム、コグニティブ無線端末、無線接続制御装置、およびハンドオーバー制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、上記課題を解決するために、コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となる候補無線中継装置に関するハンドオーバーの優先度を決定し、その優先度に従
って後に発生し得るハンドオーバーに備えて、コグニティブ無線端末と候補無線中継装置との接続準備を行う構成とした。これにより、現在無線通信が行われている無線中継装置との通信は維持された状態で、ハンドオーバーのための接続準備が、いわばそのバックグランド的に行われることになるため、ハンドオーバーの実行時点には可及的に速やかなハンドオーバーが実現される。
【0008】
詳細には、本発明は、複数の異なる無線システムを選択的に用いて、選択された無線システムに対応する無線中継装置を介して無線通信可能なコグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御するコグニティブ無線システムであって、前記コグニティブ無線端末の無線通信を中継する中継装置であって無線システムの異なる複数の無線中継装置と、前記複数の無線中継装置のそれぞれと前記コグニティブ無線端末との無線通信を管理し、該コグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御する無線接続制御装置と、を備える。そして、前記無線接続制御装置は、前記コグニティブ無線端末における前記複数の無線中継装置のそれぞれからの受信強度に関する情報および前記複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて、該複数の無線中継装置のうち該コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となり得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度を決定し、前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度が前記コグニティブ無線端末に通知されることで、該コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置を介して、該候補無線中継装置のハンドオーバー優先度に従って該コグニティブ無線端末と該候補無線中継装置との接続準備が行われる。
【0009】
本発明に係るコグニティブ無線システムには、コグニティブ無線端末が接続可能な無線システムの異なる複数の無線中継装置と、それらの無線中継装置と当該コグニティブ無線端末との無線通信を管理する無線接続制御装置が設けられる。この無線接続制御装置は、各無線中継装置に対して通信が可能な立場におかれることから、無線中継装置の無線通信の負荷状態を取得し得る立場にあり、また無線中継装置を介してコグニティブ無線端末が有する情報を取得し得る立場にもある。ここで、コグニティブ無線端末は、自己が無線通信可能な無線中継装置に対する受信強度の強さに関する情報を収集でき、以て無線中継装置を介して無線接続制御装置が、その受信強度に関する情報を取得することが可能である。なお、本発明に係る無線中継装置は、コグニティブ無線端末が無線通信を行う際に、端末とネットワーク側とを中継する装置であり、たとえば、いわゆる基地局やアクセスポイント等の装置、設備が例示できる。また、受信強度に関する信号として、受信電力そのものに関する信号でもよいが、受信号強度(RSSI: Received Signal Strength Indicator)や、SNR(Signal to Noise Ration)、SIR(Signal to Interference Ratio)、SINR(Signal to
Noise plus Interference Ratio)、CIR(Carrier to Interference Ratio)等も採用でき
る。
【0010】
そこで、無線接続制御装置は、無線中継装置の負荷状態とコグニティブ無線端末における各無線中継装置に対する受信強度に関する情報に基づいて、当該コグニティブ無線端末におけるハンドオーバーの候補無線中継装置の優先度(上記「ハンドオーバー優先度」に相当する。)を決定する。このハンドオーバー優先度は、コグニティブ無線端末が異なる無線システム間でハンドオーバーを行おうとする場合、コグニティブ無線端末が接続される無線中継装置の優先度(順序)を意味するものであり、無線通信の品質確保の観点から、受信強度の強さに関する情報と無線中継装置の負荷状態に基づいて決定される。すなわち、当該優先度は、コグニティブ無線端末と無線中継装置との無線通信を良好に維持し得る環境の担保の観点から決定されるものである。
【0011】
そして、上記ハンドオーバー優先度が決定され、それがコグニティブ無線端末に通知されると、コグニティブ無線端末は現時点で無線通信が行われている無線中継装置との通信を維持した状態で、当該無線中継装置を介してそのハンドオーバー優先度に従って、次に
ハンドオーバーし得る候補無線中継装置との接続準備が行われることになる。これにより、コグニティブ無線端末は、この接続準備状態を介することで、無線中継装置間を実際にハンドオーバーする際に、それまで無線通信中だった無線中継装置との接続が遮断されると直ちに、接続準備状態にある候補無線中継装置との無線通信を開始することができる。したがって、本発明に係るコグニティブ無線システムは、ユーザの利便性を損なうことなくシームレスな無線通信を提供することが可能となる。
【0012】
なお、上記のようにコグニティブ無線端末が行う接続準備は、ハンドオーバー時に直ちに候補無線中継装置との無線通信を開始できるようにするための所定の処理であり、具体的な処理の内容はシステムに含まれる無線中継装置とコグニティブ無線端末に依存する。また、上記接続準備を行ったコグニティブ無線端末は、準備後に必ずしもその候補無線中継装置と無線通信を開始しなければならないわけではない。候補無線中継装置に対して接続準備が行われた後で、現在無線通信を行っている無線中継装置からの受信強度が低下しないようであれば、敢えて候補無線中継装置との無線通信を開始する必要はない。一方で、ある候補無線中継装置に対して接続準備を行った後に、受信強度の変化に伴って候補無線中継装置が変化した場合には、既に行った接続準備を破棄し、新たな候補無線中継装置との接続準備を実行してもよい。
【0013】
ここで、上記コグニティブ無線システムにおいて、前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度は、前記コグニティブ無線端末によるハンドオーバーが直ちに行われるべきとする最高優先度、該ハンドオーバーの優先度を最低とする最低優先度、および該最高優先度と該最低優先度の間にハンドオーバーの実行優先度が設定され該コグニティブ無線端末にハンドオーバーの準備を促す中間優先度の少なくとも三段階の優先度を有してもよい。この場合、前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度が前記コグニティブ無線端末に通知されると、前記中間優先度が付与された前記候補無線中継装置に対して、該コグニティブ無線端末が無線通信中の無線中継装置を介して接続準備を行ってもよい。
【0014】
コグニティブ無線端末において、受信強度の検知が可能であったとしても、その強度が微弱であった場合、もしくは相応に強度が強かったとしても対応する無線中継装置の負荷状態が高かった場合には、その無線中継装置を介した無線通信の品質は良好とはなりにくいと考えられる。そこで、このような場合には、上記最低優先度が設定される。一方で、受信強度が良好であり且つ対応する無線中継装置の負荷状態が高くない状態であれば、良好な無線通信が期待できるため、直ちにハンドオーバーを実行する上記最高優先度が設定される。そして、これら2つの優先度の間に位置する中間優先度では、今後のコグニティブ無線端末と無線中継装置の状況の変化次第では良好な無線通信が期待できる状態になり得ることを踏まえ、上述した接続準備が行われる。このように、ハンドオーバー優先度として上記のように少なくとも三段階の優先度を設定することで、無線システムの異なる無線中継装置間においてより円滑なハンドオーバーを実現することが可能となる。
【0015】
もちろん、中間優先度が設定された候補無線中継装置において、その優先度が時間経過とともに低下し、たとえば上記最低優先度に変更される場合がある。そのような場合には、上記のとおり、設定されていた接続準備を破棄し、新たな接続準備が実行されればよい。
【0016】
ここで、上記コグニティブ無線システムにおいて、前記接続準備は、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置との通信が保持された状態で、該無線通信中の無線中継装置を介して該コグニティブ無線端末から前記中間優先度が付与された前記候補無線中継装置に、該候補無線中継装置が読み取り可能な接続準備指示が送信され、該接続準備指示に従って該コグニティブ無線端末と該候補無線中継装置が無線通信を開始することが可能となる状態を形成する処理であってもよい。すなわち、現在無線通信中の無線中継装
置を介して中間優先度が付与された候補無線中継装置に対して、読み取り可能な接続準備指示をコグニティブ無線端末から発信することで、コグニティブ無線端末と直接無線通信が行われていない当該候補無線中継装置に対して、上記接続準備を行うことが可能となる。
【0017】
ここで、本発明に係るコグニティブ無線システムにおいては、無線接続制御装置は複数台設けられてもよく、好ましくは各無線接続制御装置が無線通信を管理する無線中継装置のエリアは異なる。なお、無線通信接続制御装置の管理するエリア間においては、その一部が重複しても構わない。具体的には、前記無線接続制御装置は、第一エリア内に存在する複数の第一無線中継装置のそれぞれと前記コグニティブ無線端末との無線通信を管理する第一制御装置とする。そして、本発明に係るコグニティブ無線システムは、前記第一エリアとは異なる第二エリア内に存在し、無線システムが異なる複数の第二無線中継装置のそれぞれと前記コグニティブ無線端末との無線通信を管理し、該コグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御する第二制御装置を、更に備えてもよく、その場合、第一制御装置と第二制御装置との間で、前記コグニティブ無線端末の候補無線中継装置へのハンドオーバーに関する情報が共有される。
【0018】
このように第一制御装置と第二制御装置との間で上記情報が共有されることで、各制御装置が対応可能な管理エリア以外の情報を利用して、コグニティブ無線端末のハンドオーバーのための上述した接続準備を円滑に行うことが可能となる。なお、本発明に係るコグニティブ無線システムにおいては更なる無線接続制御装置を含めてもよいが、その場合、各無線接続制御装置が互いに他のすべての制御装置のそれぞれと情報共有が可能となるように必ずしも接続される必要はなく、例えば、ハブとなる制御装置を介して間接的に各無線接続制御装置同士が情報共有可能となるように接続されてもよい。すなわち、ある無線接続制御装置から別の制御装置へとつながる何らかの情報共有ルートが確保されていれば、どのような共有形態であっても構わない。
【0019】
そして、上記コグニティブ無線システムにおいて、前記コグニティブ無線端末が前記第一エリア内の一の第一無線中継装置と無線通信中であるときに、前記第二エリア内の一の第二無線中継装置に対して前記中間優先度が付与された場合、該コグニティブ無線端末は、該一の第一無線中継装置および前記第一制御装置を介し、更に前記第二制御装置を経て該一の第二無線中継装置に対して、該一の第二無線中継装置が読み取り可能な接続準備指示が送信され、該接続準備指示に従って該コグニティブ無線端末と該一の第二無線中継装置が無線通信を開始することが可能となる状態が設定されるようにシステムが構成されてもよい。すなわち、現在無線通信中の第一エリア内の第一無線中継装置、それに情報共有可能に接続されている第二制御装置を介して、中間優先度が付与された一の第二無線中継装置に対して読み取り可能な接続準備指示をコグニティブ無線端末から発信することで、コグニティブ無線端末と直接無線通信が行われていない候補無線中継装置であるその一の第二無線中継装置に対して、上記接続準備を行うことが可能となる。
【0020】
ここで、本発明をコグニティブ無線端末の側面からも捉えることが可能である。すなわち、複数の異なる無線システムを選択的に用いて、選択された無線システムに対応する無線中継装置を介して無線通信可能なコグニティブ無線端末であって、前記コグニティブ無線端末の無線通信を中継する中継装置であって無線システムの異なる複数の無線中継装置からの受信強度を検出する受信強度検出部と、前記複数の無線中継装置からの受信強度に関する情報を、前記コグニティブ無線端末が無線通信中の無線中継装置を介して、該複数の無線中継装置間での前記コグニティブ無線端末によるハンドオーバーを制御する無線接続制御装置に通知する通知部と、前記通知部によって通知された受信強度情報および前記複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて前記無線接続制御装置によって決定された、該複数の無線中継装置のうち前記コグニティブ無線端末のハンドオーバー先とな
り得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度に従って、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置を介して、該候補無線中継装置との接続準備を行う、接続準備部と、を備える。当該コグニティブ無線端末においても、上記コグニティブ無線システムと同じように、ユーザの利便性を損なうことなくシームレスな無線通信を提供することが可能である。また、上記コグニティブ無線システムに関して開示した技術的思想は、技術的な齟齬が生じない限りにおいて、本発明に係るコグニティブ無線端末にも適用可能である。
【0021】
また、本発明を無線接続制御装置の側面からも捉えることが可能である。すなわち、本発明は、複数の異なる無線システムを選択的に用いて、選択された無線システムに対応する無線中継装置を介して無線通信可能なコグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御する無線接続制御装置であって、前記コグニティブ無線端末の無線通信を中継する中継装置であって無線システムの異なる複数の無線中継装置からの受信強度に関する情報を、該コグニティブ無線端末から、前記コグニティブ無線端末が無線通信中の無線中継装置を介して受け付ける受付部と、前記受付部によって受け付けられた受信強度情報および前記複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて該複数の無線中継装置のうち前記コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となり得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度を決定する決定部と、前記決定部による決定結果を、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置を介して、該候補無線中継装置との接続準備を行うことが可能となるように、該コグニティブ無線端末に送信する結果送信部と、を備える。当該無線接続制御装置においても、上記コグニティブ無線システムと同じように、ユーザの利便性を損なうことなくシームレスな無線通信を提供することが可能である。また、上記コグニティブ無線システムに関して開示した技術的思想は、技術的な齟齬が生じない限りにおいて、本発明に係る無線接続制御装置にも適用可能である。
【0022】
更には、本発明をハンドオーバー制御方法の側面からも捉えることが可能である。すなわち、本発明は、複数の異なる無線システムを選択的に用いて、選択された無線システムに対応する無線中継装置を介して無線通信可能なコグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御するハンドオーバー制御方法であって、前記コグニティブ無線端末の無線通信を中継する中継装置であって無線システムの異なる複数の無線中継装置からの受信強度を検出する検出ステップと、前記検出ステップで検出された受信強度の情報および前記複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて該複数の無線中継装置のうち前記コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となり得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度を決定する決定ステップと、前記決定ステップで決定された前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度に従って、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置を介して、該コグニティブ無線端末と該候補無線中継装置との接続準備を行う接続準備ステップと、を含む。当該ハンドオーバー制御方法においても、上記コグニティブ無線システムと同じように、ユーザの利便性を損なうことなくシームレスな無線通信を提供することが可能である。また、上記コグニティブ無線システムに関して開示した技術的思想は、技術的な齟齬が生じない限りにおいて、本発明に係るハンドオーバー制御方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0023】
ユーザの利便性の向上を踏まえて、無線通信の品質低下を可及的に抑制し得る、コグニティブ無線端末によるハンドオーバーを実現するコグニティブ無線システム、コグニティブ無線端末、無線接続制御装置、およびハンドオーバー制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るコグニティブ無線システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すコグニティブ無線システムに含まれる制御装置およびそこで基地局と無線通信を行うコグニティブ無線端末の有する機能部をイメージ化した機能ブロック図である。
【図3】図1に示すコグニティブ無線システムで実行されるハンドオーバー制御に関する第一のフローチャートである。
【図4】図3に示すハンドオーバー制御が実行される際に制御装置で決定されるハンドオーバー優先度の具体例を示す図である。
【図5】図1に示すコグニティブ無線システムで実行されるハンドオーバー制御に関する第二のフローチャートである。
【図6】本発明の別の実施例に係るコグニティブ無線システムの概略構成を示す図である。
【図7】図6に示すコグニティブ無線システムで実行されるハンドオーバー制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るコグニティブ無線システム、該システムに組み込まれる無線接続制御装置(以下、単に「制御装置」ともいう)、該システム内の基地局に対してコグニティブ無線通信が可能なコグニティブ無線端末(以下、単に「無線端末」ともいう)、該システムで行われる該無線端末によるハンドオーバーの制御方法について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
図1に示すコグニティブ無線システム1には、無線通信方式が異なる複数種類の無線システムに供される基地局が含まれる。具体的には、第一の無線システム(たとえば、WiMAX)で無線通信を行うための基地局BS11、BS12、BS13と、第二の無線システム(たとえば、LTE)で無線通信を行うための基地局BS21、BS22と、第3の無線システム(たとえば、WiFi)で無線通信を行うためのアクセスポイントAP31、AP32、AP33が、コグニティブ無線システム1に含まれる。このコグニティブ無線システム1は、無線エリアA1において無線通信のサービスが提供されている上記第一〜第三の無線システムの各基地局等から、各無線システムのシステム情報と使用周波数情報をエリア内に存在するコグニティブ無線端末(図1においては、UE1とUE2の二台の端末が示されている。)に対して報知するヘテロジニアス型コグニティブ無線システムである。これにより、コグニティブ無線端末UE1等が、無線システムを跨いだハンドオーバー制御が可能となる。なお、各基地局等を介した無線通信を実現するために要する中継器等の設備については、周知技術であるため本明細書および図面での言及は割愛する。
【0027】
ここで、コグニティブ無線システム1でのハンドオーバー制御の詳細について説明する。コグニティブ無線システム1には、上記各無線システムに対応する複数種類の基地局等に加えて、これらの基地局等に対して通信可能に接続された制御装置2が含まれる。この制御装置2は、各基地局等と無線端末との無線通信を管理し、該無線端末による基地局等間でのハンドオーバーの一役を担う装置である。すなわち、種類の異なる無線システムに供される各種の基地局等を束ねる形態にて、制御装置2は、これらの基地局等と無線端末との無線通信を制御する。なお、制御装置2と各基地局等との接続形態は、有線および無線の何れかでもよく、両形態が混合されてもよい。
【0028】
たとえば、図1に示すように無線端末UE1が基地局BS11を介して無線通信を行っている場合に、その無線端末UE1が移動することで基地局BS11からの受信強度が弱まり、それに隣接する別の無線システムに係る基地局BS21又はアクセスポイントAP
31からの受信強度の方が強くなる場合がある。このような場合には、無線端末UE1は、基地局BS11から基地局BS21又はアクセスポイントAP31にハンドオーバーを実行し、ハンドオーバー後の基地局等を介して無線通信を行った方が、通信状態が安定したものとなり得る。そして、制御装置2は、ハンドオーバーのための所定の条件が成立した場合には、異なる無線システム間を跨ぐようにハンドオーバーを実行する。
【0029】
ここで、図2〜図4に基づいて、制御装置2によるハンドオーバー制御を説明する。図2は、制御装置2および無線端末UE1の有する機能部をイメージ化した機能ブロック図である。図2に示す制御装置2および無線端末UE1は、実質的にはCPU、メモリ等を含むコンピュータに相当し、そこで制御プログラムが実行されることで図2に示す各機能ブロックによる機能が実現される。なお、図2においては、無線端末としてはUE1のみが記載されているが、本発明に係るコグニティブ無線端末については、同様の機能部を有する。また、基地局等についてもBS11、BS21、AP31のみが記載されているがこれは例示であり、その他の基地局BS12等も含まれる。図3は、コグニティブ無線システム1で実行されるハンドオーバー制御に関するフローチャートである。図4は、図3に示すハンドオーバー制御が実行される際に制御装置2で決定されるハンドオーバー優先度の具体例を示す図である。
【0030】
制御装置2は、受付部21、決定部22、結果送信部23を有しており、無線端末UE1は、受信強度検出部11、通知部12、接続準備部13を有している。これらの機能部はあくまでも例示であり、制御装置2および無線端末UE1は、所定の目的達成のためにこれらの機能部以外の機能部を有していても構わない。ここで、無線端末UE1の受信強度検出部11は、受信可能な各基地局等からの報知情報に基づいて、その基地局等からの受信強度を検出し、検出に際してはたとえばRSSIや、SNR、SIR、SINR、CIR等のパラメー
タを利用できる。そして、無線端末UE1の通知部12は、検出された上記受信強度に関する情報を制御装置2に通知する機能部である。この通知部12による通知は、その時点で無線端末UE1が無線通信を行っている基地局(図1に示す場合であれば、基地局BS11)を介して制御装置2に対して行われる。
【0031】
そして、通知部12によって通知された受信強度に関する情報は、制御装置2の受付部21で受け付けられ、その後、決定部22によって行われる処理に供される。決定部22は、受け付けられた上記受信強度に関する情報と、制御装置2側で把握している各基地局等の負荷状態とに基づいて、本発明に係るハンドオーバー優先度の決定処理を行う機能部である。このハンドオーバー優先度は、無線エリアA1に存在する無線端末のそれぞれに対して決定されるものであるが、その詳細については後述する。そして、結果送信部23は、無線エリアA1内の無線端末に対して、対応するハンドオーバー優先度を送信する機能部である。
【0032】
そして、制御装置2の結果送信部23から送信されたハンドオーバー優先度を受け取った無線端末UE1においては、接続準備部13が、その優先度に従って現在無線通信を行っている基地局等を介して、ハンドオーバー先とされる候補無線中継装置に対して、実際にハンドオーバーが実行される時点での処理が円滑に行われるように接続準備の処理を予め行う。この接続準備処理は、ハンドオーバー元の基地局等との無線通信は維持された状態において、ハンドオーバー先となる基地局等との接続をバックグランド的に行う処理である。したがって、この準備処理によって、ハンドオーバー先の基地局等との無線通信が行われるわけではなく、あくまでも当該準備処理は、その無線通信が直ちに実行に移すことができるように行われる事前処理である。この準備処理についても、その詳細は図3に基づいて後述する。
【0033】
以上を踏まえて、コグニティブ無線システム1において無線端末UE1と制御装置2と
の間で行われるハンドオーバー制御について、図3に基づいて説明する。図3に示すハンドオーバー制御は、無線端末UE1と基地局BS11との間で無線通信が維持されている状態から、基地局BS21へとハンドオーバーを行うための制御である。先ず、S101では、無線端末UE1の受信強度検出部11によって、無線端末UE1が報知情報を受信可能な無線中継装置からの受信強度に関する情報が収集される。そして、通知部12によって、その時点で無線端末UE1と無線通信中の状態にある無線中継装置(本実施例では、基地局BS11)に対して、収集された受信強度に関する情報が送信される。このS101の処理は、所定の時間間隔で実行される。
【0034】
送信された受信強度に関する情報を受け取った基地局BS11は、その情報を制御装置2へ転送し(S102の処理)、制御装置2の受付部21によって受け付けられる(S103の処理)。制御装置2においては、基地局BS11を介して無線端末UE1から受け取った受信強度に関する情報に基づいて、該無線端末UE1のハンドオーバーに関する優先度を決定する(S104の処理)。このハンドオーバー優先度の決定処理は、上述の決定部22によって行われ、無線端末UE1での受信強度が大きいほどハンドオーバー優先度は高く設定され、また無線端末UE1との無線通信を中継する基地局等の負荷状態が大きいほどハンドオーバー優先度は低く設定される。これは、受信強度が大きいほど、無線端末UE1と基地局等との間での無線通信状態が良好に維持できるからであり、また、基地局等の負荷状態が大きいほどハンドオーバー後の無線通信処理を速やかに実行することが困難となるからである。具体的には、本実施例では、受信強度と基地局等の負荷状態に基づいて、ハンドオーバー優先度を、最高優先度“A”、中間優先度“B”、最低優先度“C”に分類して、無線端末UE1と各基地局等との間の優先度が何れかに決定される。
【0035】
最高優先度“A”は、無線端末UE1が直ちにハンドオーバーを行うべきとする優先度であり、逆に最低優先度“C”は、無線端末UE1のハンドオーバーは行われるべきではないとする優先度である。そして、中間優先度“B”は、最高優先度“A”と最低優先度“C”との間に位置する優先度であり、最高優先度“A”のように直ちにハンドオーバーを行うべきとする受信強度や基地局等の負荷状態は得られていないが、今後、無線端末UE1の置かれる電波状況や基地局等の負荷状態が好転し、最高優先度“A”となり得る可能性が高い状況にあることを反映するものである。参考に、図4に、制御装置2で決定されたハンドオーバー優先度の一例を示す。なお、図4には、無線端末UE1が受信可能な基地局等(すなわち、無線端末UE1との無線通信を中継可能な基地局等)として、基地局BS11、BS21、アクセスポイントAP31を例示しているが、たとえば図1に示す他の基地局BS12等からも無線端末UE1が受信可能であれば、それに対するハンドオーバー優先度も決定される。また、制御装置2では、該制御装置2が管理する基地局等と無線通信を行う、無線端末UE1以外のコグニティブ無線端末(たとえば、無線端末UE2)についても、そこから届けられた受信強度に関する情報に基づいて、同様に当該無線端末に対応するハンドオーバー優先度が決定されている。
【0036】
制御装置2で決定された無線端末UE1に対応するハンドオーバー優先度は、結果送信部23によって、現時点で該無線端末UE1が無線通信中の基地局BS11を介して転送され(S105の処理)、無線端末UE1によって受信される(S106の処理)。ハンドオーバー優先度を受け取った無線端末UE1では、その内容に応じてハンドオーバーに関する所定の処理を実行する。ここで、受け取ったハンドオーバー優先度の中に最高優先度“A”が設定されている基地局等が含まれていれば、その基地局等とのハンドオーバーを直ちに実行する。図4に示す実施例では、基地局BS11に対して最高優先度“A”が設定されているが、この基地局BS11は、現時点において既に無線端末UE1と無線通信を確立しているため、実質的にはハンドオーバー処理を行う必要はなく、その無線通信状態が維持されることになる。
【0037】
このような場合、次に中間優先度“B”が設定されている基地局等が存在していれば、その優先度に基づいて、接続準備部13によって、将来起こり得るハンドオーバー処理に対する接続準備が行われる。図4に示す実施例では、基地局BS21に対して中間優先度“B”が設定されていることから、接続準備部13は、基地局BS11との接続状態を維持しながら、基地局BS21に対して接続準備を行う。具体的には、接続準備部13が、「無線端末UE1と基地局BS21との接続準備を行う」旨の接続準備指示を、基地局BS11に対して送信する(S107の処理)。この接続準備指示は、そのヘッダには、基地局BS11から基地局BS21へ転送する旨が含まれ、その本体には、基地局BS21が読み取り可能な状態で、無線端末UE1との接続準備に関する指示が含まれている。そのため、S108においてこの接続準備指示を受信した基地局BS11は、ヘッダの内容に従って当該指示を基地局BS21へと転送する(S109の処理)。なお、基地局BS11と基地局BS21との間では、無線システムの種類が異なっているため、実際には、この接続準備指示は制御装置2を介して送られる。それを受け取った基地局BS21は、当該指示の本体に含まれる指示内容に従って、無線端末UE1との接続準備を開始する(S110の処理)。
【0038】
この接続準備は、仮にハンドオーバー処理の実行タイミングを迎えた際に、直ちにハンドオーバー先での無線通信を開始できるようにするための準備処理である。たとえば、ハンドオーバー先の基地局等(候補無線中継装置)と無線端末UE1との認証処理等が、準備処理の一つとして挙げられる。これらの処理を事前に完了させておくことで、ハンドオーバー実行時には、ハンドオーバー先と無線端末UE1との無線通信を速やかに且つ円滑に実行することが可能となる。基地局BS21での接続準備処理が終了すると、基地局BS21から基地局BS11を介して接続準備の完了を示す信号が無線端末UE1へ転送される(S111の処理)。この結果、無線端末UE1では上記接続準備が完了したことを認識できるようになる(S112の処理)。
【0039】
上述の接続準備処理が完了した状態において、無線端末UE1がハンドオーバー処理を行うべき状況になると、無線端末UE1から現時点で無線通信中の基地局BS11と、ハンドオーバー先とされている基地局BS21に対してハンドオーバー要求が出され(S113の処理)、基地局BS11では実行中の無線通信が遮断され(S114の処理)、基地局BS21では、接続準備状態から直ちに無線通信が開始される(S115の処理)。なお、通信開始直前は、まだ無線端末UE1と基地局21とは無線通信は確立されていないため、無線端末UE1からのハンドオーバー要求は、実際には制御装置2を介して基地局2へ送られる。また、無線端末UE1から基地局BS21への通信遮断のためのハンドオーバー要求については、当該要求が出される時点において既に無線端末UE1と基地局BS11との間で通信ができない状態となっていることもあり得るため、必ずしも必要とはされない。具体的なコグニティブ無線システムの状況に応じて、当該通信遮断のためのハンドオーバー要求は行われるようにしてよい。
【0040】
上述の態様に代えて、制御装置2から無線端末UE1へ送られたハンドオーバー優先度において、中間優先度“B”が設定された基地局等が存在していない場合には、S107〜S112の接続準備処理は行われない。また、仮に無線端末UE1が現時点で無線通信中にある基地局等のハンドオーバー優先度が最高優先度“A”ではなく、それ以外の基地局等に対して最高優先度“A”が付与されている場合には、S107〜S112の接続準備処理に代えて最高優先度“A”が付与された基地局等へのハンドオーバー処理が直ちに実行される。
【0041】
図3に示すハンドオーバー制御により、無線端末UE1のハンドオーバーが接続準備状態を経て行われることで、安定的な且つ速やかなハンドオーバーが実現される。そのため、ハンドオーバー時の無線通信の品質低下を可及的に抑制し得、以てユーザの利便性の向
上が図られる。
【0042】
<変形例>
図5に、図3に示すハンドオーバー制御の変形例を示す。図5に示す変形例では、図3に示すS112の処理(無線端末UE1側での接続準備の完了確認)が行われた状態を前提として、ハンドオーバー制御が行われることになる。したがって、図5におけるS201の処理は、図3に示すS112の処理に相当する。そして、図5におけるS202〜S207までの処理は、それぞれ図3におけるS101〜S106の処理に相当するため、これらの処理の詳細については、説明は割愛する。
【0043】
ここで、S207において、無線端末UE1が制御装置2からハンドオーバー優先度を受信したとき、その内容を、直前に受信したハンドオーバー優先度の内容と比較し、接続準備処理を行うべき基地局等に変更がないか判定する。無線端末UE1が移動する等の要因で、直前のハンドオーバー制御において接続準備が行われた基地局等(本実施例では基地局BS11)は、無線端末UE1に対して常に中間優先度“B”の状態にあるとは限らない。そこで、接続準備を行うべきとする中間優先度“B”の状態の変化に応じて、無線端末UE1との接続準備の対象となる基地局等を適切に切り替える処理が、S208以降に行われる。
【0044】
S208では新たに制御装置2から受け取ったハンドオーバー優先度において、中間優先度“B”が設定された基地局等に変更がないか判定し、変更があると判定される場合には、その変更を行うことを決定する。なお、本実施例では、既に基地局BS21に対して接続準備が行われていた状態において(図3に示すハンドオーバー制御が行われた状態)、中間優先度“B”が基地局BS21ではなくアクセスポイントAP31に設定変更されたケースに言及する。
【0045】
この場合、既に実行されていた無線端末UE1と基地局BS21との接続準備を破棄すべく、破棄指示が無線端末UE1から基地局21へと送られ(S209の処理)、この破棄指示を受け取った基地局BS21は、事前の接続準備を破棄する(S210の処理)。なお、図5においては、説明の都合のため、無線端末UE1から直接基地局BS21へ破棄指示の送信が図示されているが、上記のとおり、この時点では無線端末UE1と基地局21とは無線通信自体はまだ確立されていないため、実際には、無線通信中の基地局BS11、制御装置2を経由して、当該破棄指示の送信が行われる。
【0046】
上記破棄指示の送信を行う一方で、S211以降の処理で、新たに接続準備の対象とされたアクセスポイントAP31に対して接続準備が行われる。なお、S211〜S216までの処理は、図3に示すS107〜S112のそれぞれの処理と実質的に同じであるので、それらの詳細な説明は割愛する。この新たな接続準備処理により、現在無線通信が確立されている基地局BS11を介して、新たにアクセスポイントAP31と無線端末UE1との接続準備が実行されることになる。
【0047】
なお、図5に示すハンドオーバー制御では、新たに中間優先度“B”が設定されたアクセスポイントへの接続準備の切替が行われたが、仮に制御装置2から無線端末UE1に送られたハンドオーバー優先度に中間優先度“B”が設定された基地局等が存在していない場合には、基地局BS21との接続準備を破棄する一方で、新たな接続準備は行わなくてもよい。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明に係るコグニティブ無線システムの第二の実施例について、図6および図7に基づいて説明する。第二の実施例に係るコグニティブ無線システムは、第一の実施例
に係るコグニティブ無線システムを一単位のシステムとしたとき、その単位システムが複数含まれるシステムであり、単位システム間で無線端末のハンドオーバー制御に必要とされる情報が共有されるシステムである。
【0049】
具体的には、図6に示すように、本実施例に係るコグニティブ無線システム1は、無線エリアA1を管理する制御装置2と、無線エリアA2を管理する制御装置3を含み、更にこれらの制御装置を全体的に統括する制御装置4をも含む。なお、本実施例では説明を簡便にするために二つの無線エリアにしか言及していないが、更なる無線エリアおよびそれを管理する制御装置を含むように、コグニティブ無線システム1は構成されてもよい。制御装置2については、上記実施例1と同様であるので詳細な説明は割愛するとともに、図6には基地局BS11,BS21、AP31が代表的に記載されている。また、制御装置
3についても、発揮する機能は制御装置2と同じであり、また管理する無線エリアA2内には、基地局BS11と無線システムが共通する基地局40と、基地局BS21と無線システムが共通する基地局50と、アクセスポイントAP31と無線システムが共通するアクセスポイントAP60とが含まれる。そして、制御装置2および制御装置3は直接的に、および制御装置4を介して間接的に通信可能とされている。
【0050】
ここで、現時点においては、無線端末UE1が、無線エリアA1内に位置するアクセスポイントAP31と無線通信中である場合の、該無線端末UE1のハンドオーバー制御について説明する。無線エリアA1と無線エリアA2とは隣接するエリアであるため、無線端末UE1の移動経路等によっては、ハンドオーバー先である候補無線中継装置が、無線エリアA1内の基地局等ではなく、無線エリアA2内の基地局等となる場合もある。この場合は、それぞれの無線エリアを管理する制御装置が、直接的に又は間接的に連携することで、第一の実施例で示したハンドオーバー制御と実質的に同様の制御を実現することが可能となる。
【0051】
具体的に図7に基づいて、本実施例に係るハンドオーバー制御について説明する。まず、S301では、無線端末UE1の受信強度検出部11によって、無線端末UE1が報知情報を受信可能な無線中継装置からの受信強度に関する情報が収集される。本実施例では、無線端末UE1は、無線エリアA1に隣接する無線エリアA2内の基地局BS50からも受信可能であるため、基地局BS50の受信強度に関する情報も収集される。そして、通知部12によって、その時点で無線端末UE1と無線通信中の状態にある無線中継装置(本実施例では、アクセスポイントAP31)に対して、収集された受信強度に関する情報が送信される。その後、送信された受信強度に関する情報を受け取ったアクセスポイントAP31は、その情報を制御装置2へ転送し(S302の処理)、制御装置2の受付部21によって受け付けられる(S303の処理)。
【0052】
ここで、制御装置2としては自己が管理する基地局等以外の基地局(基地局BS50)からの受信強度に関する情報を無線端末UE1から受け取ることになる。そこで、制御装置2は、基地局BS50がどの無線エリアを管理する基地局であるか確認するために、制御装置を統括する制御装置4に対して問合せを行う(S304の処理)。そして、その問合せに対して、基地局BS50の属する無線エリアおよびそこを管理する制御装置3について、制御装置4が回答を行う(S305の処理)。これにより、制御装置2は、制御装置3が管理する各基地局等について、直接問い合わせることが可能となる。そこで、S306においては、上記基地局BS50の負荷状態について制御装置3への問合せが、制御装置2から実行される。その問合せに対して、制御装置3から基地局BS50の負荷状態に関する回答が行われ(S307の処理)、それを制御装置2が受け取る。
【0053】
そして、制御装置2は、無線端末UE1から受け付けた受信強度に関する情報と、自己が管理する基地局等の負荷状態、および制御装置3に問い合わせた基地局等の負荷状態に
基づいて、無線端末UE1のためのハンドオーバー優先度の決定を行う(S308の処理)。ハンドオーバー優先度の具体的な内容については、図4に示す通りである。
【0054】
制御装置2で決定された無線端末UE1に対応するハンドオーバー優先度は、結果送信部23によって、現時点で該無線端末UE1が無線通信中のアクセスポイントAP31を介して転送され(S309の処理)、無線端末UE1によって受信される(S310の処理)。ハンドオーバー優先度を受け取った無線端末UE1では、第一の実施例で示した通り、その内容に応じてハンドオーバーに関する所定の処理を実行することになる。本実施例では、無線端末UE1が受け取ったハンドオーバー優先度では、現在無線通信中のアクセスポイントAP31に対して最高優先度“A”が設定され、且つ基地局BS50に対して中間優先度“B”が設定されていたとする。この場合は、第一の実施例で示したように、アクセスポイントAP31との無線通信は維持した状態で、基地局BS50に対して接続準備処理が行われる。
【0055】
具体的には、無線端末UE1の接続準備部13が、「無線端末UE1と基地局BS50との接続準備を行う」旨の接続準備指示を、アクセスポイントAP31に対して送信する(S311の処理)。この接続準備指示は、そのヘッダには、アクセスポイントAP31から基地局BS50へ転送する旨が含まれ、その本体には、基地局BS50が読み取り可能な状態で、無線端末UE1との接続準備に関する指示が含まれている。そのため、S312においてこの接続準備指示を受信したアクセスポイントAP31は、ヘッダの内容に従って当該指示を基地局BS50へと転送する(S313の処理)。なお、アクセスポイントAP31と基地局BS50との間では、無線システムの種類が異なっているため、実際には、この接続準備指示は制御装置2および制御装置3を介して送られる(S314およびS315の処理)。それを受け取った基地局BS50は、当該指示の本体に含まれる指示内容に従って、無線端末UE1との接続準備を開始する(S316の処理)。基地局BS50での接続準備処理が終了すると、基地局BS50からアクセスポイントAP31を介して接続準備の完了を示す信号が無線端末UE1へと転送される(S317の処理)。この結果、無線端末UE1では上記接続準備が完了したことを認識できるようになる(S318の処理)。
【0056】
図7に示すハンドオーバー制御により、無線端末UE1のハンドオーバーが接続準備状態を経て行われることで、安定的な且つ速やかなハンドオーバーが実現される。そのため、ハンドオーバー時の無線通信の品質低下を可及的に抑制し得、以てユーザの利便性の向上が図られる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・・コグニティブ無線システム
2、3、4・・・・制御装置(無線接続制御装置)
A1、A2・・・・無線エリア
UE1、UE2・・・・無線端末
BS11〜13、21〜23、40、50・・・・基地局
AP31〜33、60・・・・アクセスポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる無線システムを選択的に用いて、選択された無線システムに対応する無線中継装置を介して無線通信可能なコグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御するコグニティブ無線システムであって、
前記コグニティブ無線端末の無線通信を中継する中継装置であって無線システムの異なる複数の無線中継装置と、
前記複数の無線中継装置のそれぞれと前記コグニティブ無線端末との無線通信を管理し、該コグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御する無線接続制御装置と、を備え、
前記無線接続制御装置は、前記コグニティブ無線端末における前記複数の無線中継装置のそれぞれからの受信強度に関する情報および前記複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて、該複数の無線中継装置のうち該コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となり得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度を決定し、
前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度が前記コグニティブ無線端末に通知されることで、該コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置を介して、該候補無線中継装置のハンドオーバー優先度に従って該コグニティブ無線端末と該候補無線中継装置との接続準備が行われる、
コグニティブ無線システム。
【請求項2】
前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度は、前記コグニティブ無線端末によるハンドオーバーが直ちに行われるべきとする最高優先度、該ハンドオーバーの優先度を最低とする最低優先度、および該最高優先度と該最低優先度の間にハンドオーバーの実行優先度が設定され該コグニティブ無線端末にハンドオーバーの準備を促す中間優先度の少なくとも三段階の優先度を有し、
前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度が前記コグニティブ無線端末に通知されると、前記中間優先度が付与された前記候補無線中継装置に対して、該コグニティブ無線端末が無線通信中の無線中継装置を介して接続準備を行う、
請求項1に記載のコグニティブ無線システム。
【請求項3】
前記接続準備は、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置との通信が保持された状態で、該無線通信中の無線中継装置を介して該コグニティブ無線端末から前記中間優先度が付与された前記候補無線中継装置に、該候補無線中継装置が読み取り可能な接続準備指示が送信され、該接続準備指示に従って該コグニティブ無線端末と該候補無線中継装置が無線通信を開始することが可能となる状態を形成する処理である、
請求項2に記載のコグニティブ無線システム。
【請求項4】
前記無線接続制御装置は、第一エリア内に存在する複数の第一無線中継装置のそれぞれと前記コグニティブ無線端末との無線通信を管理する第一制御装置であって、
前記コグニティブ無線システムは、
前記第一エリアとは異なる第二エリア内に存在し、無線システムが異なる複数の第二無線中継装置のそれぞれと前記コグニティブ無線端末との無線通信を管理し、該コグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御する第二制御装置を、更に備え、
第一制御装置と第二制御装置との間で、前記コグニティブ無線端末の候補無線中継装置へのハンドオーバーに関する情報が共有される、
請求項2又は請求項3に記載のコグニティブ無線システム。
【請求項5】
前記コグニティブ無線端末が前記第一エリア内の一の第一無線中継装置と無線通信中であるときに、前記第二エリア内の一の第二無線中継装置に対して前記中間優先度が付与さ
れた場合、該コグニティブ無線端末は、該一の第一無線中継装置および前記第一制御装置を介し、更に前記第二制御装置を経て該一の第二無線中継装置に対して、該一の第二無線中継装置が読み取り可能な接続準備指示が送信され、該接続準備指示に従って該コグニティブ無線端末と該一の第二無線中継装置が無線通信を開始することが可能となる状態が設定される、
請求項4に記載のコグニティブ無線システム。
【請求項6】
複数の異なる無線システムを選択的に用いて、選択された無線システムに対応する無線中継装置を介して無線通信可能なコグニティブ無線端末であって、
前記コグニティブ無線端末の無線通信を中継する中継装置であって無線システムの異なる複数の無線中継装置からの受信強度を検出する受信強度検出部と、
前記複数の無線中継装置からの受信強度に関する情報を、前記コグニティブ無線端末が無線通信中の無線中継装置を介して、該複数の無線中継装置間での前記コグニティブ無線端末によるハンドオーバーを制御する無線接続制御装置に通知する通知部と、
前記通知部によって通知された受信強度情報および前記複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて前記無線接続制御装置によって決定された、該複数の無線中継装置のうち前記コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となり得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度に従って、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置を介して、該候補無線中継装置との接続準備を行う、接続準備部と、
を備える、コグニティブ無線端末。
【請求項7】
前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度は、前記コグニティブ無線端末によるハンドオーバーが直ちに行われるべきとする最高優先度、該ハンドオーバーの優先度を最低とする最低優先度、および該最高優先度と該最低優先度の間にハンドオーバーの実行優先度が設定され該コグニティブ無線端末にハンドオーバーの準備を促す中間優先度の少なくとも三段階の優先度を有し、
前記無線接続制御装置から前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度が前記コグニティブ無線端末に通知されると、前記接続準備部は、前記中間優先度が付与された前記候補無線中継装置に対して、該コグニティブ無線端末が無線通信中の無線中継装置を介して接続準備を行う、
請求項6に記載のコグニティブ無線端末。
【請求項8】
前記接続準備部は、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置との通信が保持された状態で、該無線通信中の無線中継装置を介して該コグニティブ無線端末から前記中間優先度が付与された前記候補無線中継装置に、該候補無線中継装置が読み取り可能な接続準備指示を送信し、
前記接続準備指示に従って該コグニティブ無線端末と該候補無線中継装置が無線通信を開始することが可能となる状態が形成される、
請求項7に記載のコグニティブ無線端末。
【請求項9】
複数の異なる無線システムを選択的に用いて、選択された無線システムに対応する無線中継装置を介して無線通信可能なコグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御する無線接続制御装置であって、
前記コグニティブ無線端末の無線通信を中継する中継装置であって無線システムの異なる複数の無線中継装置からの受信強度に関する情報を、該コグニティブ無線端末から、前記コグニティブ無線端末が無線通信中の無線中継装置を介して受け付ける受付部と、
前記受付部によって受け付けられた受信強度情報および前記複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて該複数の無線中継装置のうち前記コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となり得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度を決定する決定部と、
前記決定部による決定結果を、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置
を介して、該候補無線中継装置との接続準備を行うことが可能となるように、該コグニティブ無線端末に送信する結果送信部と、
を備える、無線接続制御装置。
【請求項10】
複数の異なる無線システムを選択的に用いて、選択された無線システムに対応する無線中継装置を介して無線通信可能なコグニティブ無線端末による無線中継装置間でのハンドオーバーを制御するハンドオーバー制御方法であって、
前記コグニティブ無線端末の無線通信を中継する中継装置であって無線システムの異なる複数の無線中継装置からの受信強度を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された受信強度の情報および前記複数の無線中継装置のそれぞれの負荷状態に基づいて該複数の無線中継装置のうち前記コグニティブ無線端末のハンドオーバー先となり得る候補無線中継装置のハンドオーバー優先度を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定された前記候補無線中継装置のハンドオーバー優先度に従って、前記コグニティブ無線端末と無線通信中の無線中継装置を介して、該コグニティブ無線端末と該候補無線中継装置との接続準備を行う接続準備ステップと、
を含む、ハンドオーバー制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate