説明

コグニティブ無線通信システム,及び当該コグニティブ無線通信システムに設けられるホワイトスペースセンシングデータベース,及びコグニティブ無線通信方法

【課題】コグニティブ無線通信システムにおいて,ソース間で情報が交換されることによる情報伝達の遅延を回避したり,センシングコストを抑えたりすることを目的とする。
【解決手段】本発明のコグニティブ無線通信システムは,スペクトラムセンサーと,コグニティブエンジンと,規制情報データベースと,ホワイトスペースセンシングデータベースとを含む。ホワイトスペースセンシングデータベースは,スペクトラムセンサーとコグニティブエンジンとの間,及び規制情報データベースとコグニティブエンジンとの間に設けられる。そして,ホワイトスペースセンシングデータベースは,スペクトラムセンサーからセンシング情報を取得するとともに,規制情報データベースから規制情報を取得する。コグニティブエンジンは,ホワイトスペースセンシングデータベースから取得した情報に基づいてコグニティブ無線通信の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,コグニティブ無線通信システム,及び当該コグニティブ無線通信システムに用いられるホワイトスペースセンシングデータベース,及びコグニティブ無線通信方法に関し,特に,データベースを用いてコグニティブ通信を行うコグニティブ無線通信システム,当該コグニティブ無線通信システムに設けられるホワイトスペースセンシングデータベース,並びにコグニティブ無線通信方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
コグニティブ無線通信システムは,コグニティブ無線通信を行うためのシステムである。具体的には,コグニティブ無線通信システムは,コグニティブエンジン,スペクトラムセンサー,及びデータベースを備えている。ここで,スペクトラムセンサーは,スペクトラムセンシングを行ってセンシング情報を得るためのものである。データベースには,規制情報が格納されている。そして,コグニティブエンジンは,スペクトラムセンサーからのセンシング情報と,データベースからの規制情報とに基づいて,スペクトラム利用に関連する決定処理を行って,コグニティブ無線通信を制御するように構成されている。
【0003】
すなわち,コグニティブ無線通信システムでは,スペクトラム利用に関連する決定処理を行うために,規制情報とセンシング情報の双方が用いられる。しかし,通常は,それら2種類の情報は,互いに異なるソースに由来したものであり,互いに異なる特性を持っている。具体的には,規制情報は,極めて固定的な情報であり,認可された格納場所(データベース)から取得することが可能である。一方で,センシング情報は,動的に変動するものであり,スペクトラムセンサーから取得することが可能である。
【0004】
ところで,米連邦通信委員会(FCC)は,下記非特許文献1を公開した。その非特許文献1によれば,規制情報の格納場所(データベース)は,インターネット内に位置させなければならないとされているだけでなく,その規制情報の格納場所が完全に一群の規制情報を保持しなければならないとされている。また,この非特許文献1によって,コグニティブエンジンとして,動作前に規制情報の格納場所から規制情報を取得しなければならないタイプのものがいくつか仕様として規定された。
【0005】
しかし,交換対象となるいくつかのメッセージは,インターネットの最善最適化という性質のために,損失する可能性があったり,また,再送される必要があったりする。そのような交換対象となるメッセージは,コグニティブ無線と規制情報の格納場所との間で何度か行き来する必要があり,それ故に,コグニティブ無線は,長い遅延時間を必要とする。そして,この長い遅延時間は,実時間で動的に変化するスペクトラムのアクセスを困難にする。なお,FCCによる規制情報の格納場所は,保護されたサービスに関する情報を含むように構成されるにとどまり,現在のところ,センシング情報を保持するように構成されていない。
【0006】
なお,近年の研究では,生のセンシング情報や前処理されたセンシング情報を,無線通信システムを構成する複数の構成要素間で共有することで,センシングの品質を高めるとともに,スペクトラムの利用効率を高めることができることが分かっている。しかしながら,センシング情報は,動的に変動するとともに,ある局在位置にのみ有用であるにすぎない。
【0007】
そこで,センシング情報の共有,格納,及びデータ処理が求められている。しかし,一方で,センシング情報にとっては,規制情報の格納場所が適切な格納場所ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“SECOND REPORT AND ORDER AND MEMORANDUM OPINION AND ORDER”,FCC(米連邦通信委員会),文書番号 FCC 08−260,2008年11月14日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は,コグニティブエンジン,データベース,及びスペクトラムセンサーの間で情報が交換されることによる情報伝達の遅延を回避することができるコグニティブ無線通信システム及びコグニティブ無線通信方法などを提供することを第1の目的とする。また,本発明は,該コグニティブ無線通信システムに設けることが可能なデータベースを提供することも目的としている。
【0010】
また,本発明は,コグニティブエンジン及び規制情報の格納場所の間におけるデータトラフィックの量を少なくすることができるコグニティブ無線通信システム及びコグニティブ無線通信方法などを提供することを第2の目的とする。また,本発明は,該コグニティブ無線通信システムに設けることが可能なデータベースを提供することも目的としている。
【0011】
さらに,本発明の他の目的は,本明細書により明らかとなる。例えば,本発明は,コグニティブ無線通信システムを構成する各要素(各端末)のセンシングコストを抑えることや,取得可能なセンシング情報の品質を高めること,さらには,新規なデータベース(後述するホワイトスペースセンシングデータベース)によって複数のセカンダリーユーザーの情報を管理することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面は,コグニティブ無線通信システムに関する。このコグニティブ無線通信システムは,データベースを用いてコグニティブ無線通信を行うことが可能である。
【0013】
上記コグニティブ無線通信システムは,スペクトラムセンサーと,コグニティブエンジンと,規制情報データベースと,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)とを含む。ここで,スペクトラムセンサーは,コグニティブ無線通信を行うために必要なセンシングを行うものである。コグニティブエンジンは,コグニティブ無線通信の制御を行うものである。規制情報データベースは,コグニティブ無線通信を制御するための規制情報を格納するためのデータベースである。ホワイトスペースセンシングデータベースは,スペクトラムセンサーとコグニティブエンジンとの間,及び規制情報データベースとコグニティブエンジンとの間に設けられたデータベースである。
【0014】
このホワイトスペースセンシングデータベースは,スペクトラムセンサーから,センシングの結果を示すセンシング情報を取得するための第1取得手段と,規制情報データベースから,規制情報を取得するための第2取得手段とを含んでいる。これにより,規制情報データベースの規制情報が,コグニティブエンジンの近くにあるホワイトスペースセンシングデータベースにバックアップされる。そして,コグニティブエンジンは,ホワイトスペースセンシングデータベースから取得した情報に基づいて,コグニティブ無線通信の制御を行う。
【0015】
このように,ホワイトスペースセンシングデータベースが介在することで,必要な情報が集約され,その結果,コグニティブエンジンへの情報の伝達を速やかに行うことができる。すなわち,情報伝達の遅延を回避することができる。また,コグニティブエンジンが規制情報データベースにアクセスする必要がないので,そのトラフィックの量を少なくすることができる。
【0016】
また,本発明の好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースが,第1取得手段が取得したセンシング情報をスペクトラムセンサーに供給するように構成されている。この場合,スペクトラムセンサーは,ホワイトスペースセンシングデータベースから供給されたセンシング情報に基づいて,センシングすべき周波数帯を決定する。これにより,センシングすべき周波数帯を狭くすることができ,その結果,センシングコストを抑えることができる。
【0017】
さらに,本発明のより好ましい側面では,スペクトラムセンサーが,ホワイトスペースセンシングデータベースから供給されたセンシング情報に基づいて,センシングすべき時間及び頻度の少なくとも一方をさらに決定する。これにより,センシングコストをさらに抑えることができる。
【0018】
また,本発明の好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースが,スペクトラムセンサーから取得したセンシング情報と,規制情報データベースから取得した規制情報とを処理して,コグニティブ無線通信の制御に必要なデータを生成する手段を含んでいる。この場合,コグニティブエンジンは,ホワイトスペースセンシングデータベースが生成したデータに基づいてコグニティブ無線通信の制御を行う。これにより,コグニティブエンジンが行う処理に必要な負荷や時間を軽減することができる。
【0019】
さらに,本発明のより好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段が,ある周波数帯についてのセンシング情報と,別の周波数帯についてのセンシング情報とを統合する処理を行う。これにより,例えば,センシング情報の品質を高めることができる。
【0020】
さらに,本発明のより好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースが,格納手段をさらに含んでいる。この格納手段は,第1取得手段がスペクトラムセンサーから取得したセンシング情報を時刻に関する情報とともに格納するための手段である。この場合,ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段は,格納手段によって格納されたセンシング情報に基づいて,時間の経過にともなって変動するセンシング情報に関する情報を生成する。これにより,例えば,長い期間にわたって収集した時系列的なセンシング情報を取得することができる。その情報を利用することにより,例えば,利用される頻度が高い周波数帯に関する情報や,利用される頻度が低い周波数帯に関する情報を取得することができる。そして,そのような情報をコグニティブエンジンに送信することで,センシングが必要な周波数帯を狭くすることができ,その結果,センシングコストを抑えることができる。
【0021】
又は,本発明のより好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースが,コグニティブ無線通信を行う複数のセカンダリーユーザーに関する情報を取得するための第3取得手段をさらに含む。これにより,複数のセカンダリーユーザーを管理することができる。この場合,ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段は,スペクトラムセンサーから取得したセンシング情報と,規制情報データベースから取得した規制情報と,複数のセカンダリーユーザーに関する情報とを処理して,コグニティブ無線通信の制御に必要なデータを生成する。そして,コグニティブエンジンは,ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段が生成したデータに基づいて,コグニティブ無線通信の制御を行う。
【0022】
また,本発明の好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースが,コグニティブエンジンを含む無線ネットワークの位置を示す位置情報を取得する第4取得手段をさらに含む。この場合,ホワイトスペースセンシングデータベースの第2取得手段は,規制情報データベースに格納されている複数の規制情報から,位置情報に関連する規制情報を取得する。これにより,例えば,ホワイトスペースセンシングデータベースに格納される規制情報のデータ量を少なくすることができる。
【0023】
また,本発明の好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースが,規制情報データベースを含む。これにより,規制情報を速やかに取得することができる。
【0024】
又は,本発明の別の好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースの第2取得手段が,規制情報データベースと情報を交換するためのインターフェイスを含む。これにより,確実に規制情報を取得することができる。
【0025】
また,本発明の好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースが,他のホワイトスペースセンシングデータベースと通信可能に構成されている。これにより,ホワイトスペースセンシングデータベース間で情報を共有することができる。
【0026】
また,本発明の好ましい側面では,規制情報データベースが,インターネット上のサーバーに設けられている。このように,規制情報データベースが,ユーザー端末から離れた場所にあっても,コグニティブエンジンは,規制情報を取得することができる。
【0027】
さらに,本発明のより好ましい側面では,スペクトラムセンサー及びコグニティブエンジンが,コグニティブ無線通信を行うことが可能な所定のエリア内に配置されている。この場合,ホワイトスペースセンシングデータベースは,インターネットとその所定のエリアとの間に設けられている。これにより,コグニティブエンジンは,ホワイトスペースセンシングデータベースを介して,規制情報を取得することができる。
【0028】
またさらに,本発明のさらに好ましい側面では,ホワイトスペースセンシングデータベースが,基地局に設けられている。これにより,コグニティブエンジンは,ホワイトスペースセンシングデータベースを介して,規制情報を確実に取得することができる。
【0029】
本発明の第2の側面は,ホワイトスペースセンシングデータベースに関する。このホワイトスペースセンシングデータベースは,上述したコグニティブ無線通信システムに設けられるものであり,従来にはない新規なデータベースである。このようなホワイトスペースセンシングデータベースをコグニティブ無線通信システム(例えば,従来のコグニティブ無線通信システム)に設けることで,第1の側面によって得られる効果と同等の効果を奏することができる。
【0030】
本発明の第3の側面は,コグニティブ無線通信方法に関する。このコグニティブ無線通信方法は,データベースを含むコグニティブ無線通信システムを用いてコグニティブ無線通信を行うためのものである。したがって,この側面によっても,第1の側面によって得られる効果と同等の効果を奏することができる。
【0031】
また,本発明の他の側面は,上述したコグニティブ無線通信方法を実現するためのプログラム(アルゴリズム)や,当該プログラムを格納した記録媒体に関する。これらの側面によっても,第1の側面や第3の側面と同等の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば,コグニティブ無線通信システムにおいて,コグニティブエンジン,データベース,及びスペクトラムセンサー間で情報が交換されることによる情報伝達の遅延を回避することができる。また,本発明によれば,コグニティブ無線通信システムにおいて,コグニティブエンジン及び規制情報の格納場所の間におけるデータトラフィックの量を少なくすることができる。さらには,本発明によって,該コグニティブ無線通信システムに設けることが可能なデータベースや,対応するコグニティブ無線通信方法などを提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は,本発明のコグニティブ無線通信システムの構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図2】図2は,図1に示すコグニティブ無線通信システムにおいてスペクトラムセンサーが取得するセンシング情報の一例を模式的に示す図である。
【図3】図3(a)〜図3(c)は,図1に示すコグニティブ無線通信システムにおいて規制情報の格納場所(規制情報データベース)に格納されている規制情報の一例を模式的に示す図である。
【図4】図4は,図1に示したようなホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)の構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)と規制情報データベース30の機能などを示す図である。
【図6】図6は,図1に示したようなホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40と他の構成要素との関係の一例を説明するための模式図である。
【図7】図7は,図1に示したようなホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40と他の構成要素との関係の別の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態を説明する。しかしながら,以下説明する形態はある例であって,当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
【0035】
図1は,本発明のコグニティブ無線通信システムの構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0036】
図1に示すコグニティブ無線通信システム1は,複数のスペクトラムセンサー(SS)10と,少なくとも1つのコグニティブエンジン(CE)20とをロジカル要素(logical entity)として含んでいる。これらのロジカル要素は,インターフェイスを介して互いに直接的に又は間接的に接続されており,それにより,ネットワークを形成している。ネットワークの形成エリアは,図1に示すように,所定の地理的なエリアを形成している。また,コグニティブ無線通信システム1は,規制情報の格納場所(regulatory repositoty)としての規制情報データベース30を含む。この規制情報データベースは,図1に示す例では,ユーザー端末とは離れた場所,例えば,インターネット2上(より詳細には,サーバー内)に設けられている。
【0037】
さらに,コグニティブ無線通信システム1は,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40をロジカル要素として含んでいる。ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,図1に示す例では,スペクトラムセンサー(SS)10とコグニティブエンジン(CE)20との間,及び規制情報データベース30とコグニティブエンジン(CE)20との間に設けられている。そして,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,少なくとも,規制情報データベース30と無線通信可能に接続されている。また,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,コグニティブエンジン(CE)20やスペクトラムセンサー(SS)30にも接続されている。なお,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,必ずしも規制情報データベース30に接続されている必要はなく,その場合には,後述するように,規制情報データベース30の機能と同等の機能を有する。
【0038】
コグニティブ無線通信システム1の各構成要素について説明する。
【0039】
スペクトラムセンサー(SS)10は,コグニティブ無線通信を行うために必要なセンシングを行うためのものである。センシングによって,現在のスペクトラムの利用状況に関する情報(プライマリーユーザーによるスペクトラムの利用に関する情報やセカンダリーユーザーによるスペクトラムの利用に関する情報)を取得することができ,さらに,その情報から,利用可能な周波数帯に関する情報も取得することができる。そして,スペクトラムセンサー(SS)10は,センシングの結果としてセンシング情報を生成する。センシング情報は,センシングそのものに関する情報と,センシング制御に関する情報と,スペクトラムセンサーに関する情報とを含んでいる。このようなセンシング情報の一例を図2に示す。なお,スペクトラムセンサー(SS)10は,スタンドアローン型のものであってもよいし,通信デバイスに実装されたものであってもよい。
【0040】
コグニティブエンジン(CE)20は,コグニティブ無線通信の制御を行うためのものであり,具体的には,コグニティブ無線通信を開始するために必要な決定処理を行うためのものである。この決定処理では,ユーザー端末間などでコグニティブ無線通信を行うために利用されるスペクトラム等が決定される。本態様では,コグニティブエンジン(CE)20は,後で詳細に説明するように,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40から取得した情報に基づいて,コグニティブ無線通信の制御を行うように構成されている。特に,コグニティブエンジン(CE)20は,センシング情報を用いることで,コグニティブ無線通信システム1におけるセンシングの品質を高めたり,スペクトラムの利用効率を高めたりすることができるように,コグニティブ無線通信の制御を行う。コグニティブエンジン(CE)20は,例えば,コグニティブ無線通信におけるセカンダリーユーザーとしてのコグニティブ無線通信端末に実装されている。
【0041】
なお,コグニティブエンジン(CE)20は,従来と同様に,スペクトラムセンサー(SS)10からセンシング情報を直接的に取得するとともに,規制情報データベース30から規制情報等を直接的に取得して,取得した情報に基づいてコグニティブ無線通信の制御を行うことも可能なように構成されていてもよい。
【0042】
規制情報データベース30は,上述した非特許文献1に記載の内容に準拠したものであり,コグニティブ無線通信を制御するための情報を格納するためのものである。コグニティブ無線通信を制御するための情報には,例えば,保護対象のサービスに関する情報や,地理上の位置に関して利用が許容されているチャネル又は利用が禁止されているチャネルに関する情報がある。より具体的には,そのような情報としては,規制情報やポリシーに関する情報(以下,単にポリシー情報ともいう)がある。規制情報とは,例えば電波法に関する情報であり,その一例を図3(a)〜図3(c)に示す。図3(a)〜図3(c)に示されるように,規制情報データベース30には,センシング情報(センシング結果に関する情報),スペクトラムセンサー10の性能に関する情報,センシング制御情報,セカンダリーユーザー(例えばモードIのセカンダリーユーザー)のIDや位置に関する情報が含まれていない。また,規制情報データベース30には,センシング情報が含まれていないので,センシング情報の変化に関する情報(特には,長期間にわたるスペクトラム利用に関する情報)も含まれていない。
【0043】
ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,従来のコグニティブ無線通信システムにはない,新規なデータベースであり,例えば,ユーザー端末側の近くに設けられる。好ましくは,コグニティブ無線通信システム1において,複数のホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40を分配的又は分散的に配置する。また,好ましくは,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,標準規格に準拠している。具体的には,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,情報交換に必要な共通インターフェイス(例えば,IEEE1900.6のインターフェイス)に準拠している。
【0044】
そして,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,規制情報データベース30に保存されている規制情報(特には,地理上のエリアに関する規制情報)やポリシー情報を取得して保存(バックアップ)するデータベースとして機能するとともに,各スペクトラムセンサー(SS)10からのセンシング情報(特には,センシング情報の局在的な位置に関する情報)を保存するためのデータベースとして機能する。つまり,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,スペクトラムセンサー(SS)10から,センシングの結果を示すセンシング情報を取得するための第1取得手段と,規制情報データベース30から,規制情報を取得するための第2取得手段とを少なくとも含んで構成されている。したがって,コグニティブ無線通信システム1に,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40を設けることで,規制情報やポリシー情報とセンシング情報の双方を一元的に管理することができる。なお,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,インターネット2上(例えば,サーバー内)に設けられてもよいし,アクセスポイントの基地局(ベースステーション)に設けられてもよいし,その他の任意のノードに設けられてもよい。
【0045】
また,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,取得したセンシング情報を時刻に関する情報とともに格納するための格納手段を含んでいることが好ましい。この場合,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,格納手段によって格納されたセンシング情報に基づいて,時間の経過にともなって変動するセンシング情報に関する情報を生成する。これにより,例えば,長い期間にわたって収集した時系列的なセンシング情報を取得することができる。その情報を利用することにより,例えば,利用される頻度が高い周波数帯に関する情報や,利用される頻度が低い周波数帯に関する情報を取得することができる。そして,そのような情報をコグニティブエンジン(CE)20に送信することで,センシングが必要な周波数帯を狭くすることができ,その結果,センシングコストを抑えることができる。
【0046】
続いて,図1に示すコグニティブ無線通信システム1における動作の一例を説明する。
【0047】
図1において,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,規制情報データベース30に保存されている規制情報やポリシー情報を取得する。好ましくは,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,コグニティブエンジン(CE)20を含む無線ネットワーク(通信エリア)の位置を示す位置情報を取得しており,規制情報データベース30に格納されている複数の規制情報から,取得した位置情報に関連する規制情報を取得する。例えば,コグニティブエンジン(CE)20のカバーエリアが,半径50mである場合,規制情報としては,その半径50mを含む領域に対して適用される規制に関する情報のみが規制情報データベース30から抽出される。これにより,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40が格納しておく規制情報のデータ量を最小限に留めることができる。
【0048】
また,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,各スペクトラムセンサー(SS)10からのセンシング情報を取得する。続いて,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,コグニティブエンジン(CE)20へ,規制情報やセンシング情報に基づいた情報を供給する。これに代えて,コグニティブエンジン(CE)20がホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40にアクセスすることで,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40に格納されている情報を取得してもよい。このようにすることでコグニティブエンジン(CE)20が取得する情報は,生(未処理)の規制情報や生(未処理)のセンシング情報であってもよいし,所定のデータ処理により規制情報とセンシング情報とを融合した情報であってもよい。さらには,ここで供給される情報は,長期間にわたるスペクトラム利用に関する情報を含むことが好ましい。そして,コグニティブエンジン(CE)20は,コグニティブ無線通信を開始するのに必要な決定処理を行う。これにより,コグニティブ無線通信を実行可能な状態が整うこととなる。
【0049】
上述したように,図1に示すコグニティブ無線通信システム1では,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40がコグニティブエンジン(CE)20と規制情報データベース30との間に介在するとともに,コグニティブエンジン(CE)20とスペクトラムセンサー(SS)10との間に介在している。これにより,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,コグニティブエンジン(CE)20による決定処理に必要な情報を事前に集めることができる。その結果,コグニティブエンジン(CE)20が,規制情報データベース30から規制情報等を取得するための処理や,スペクトラムセンサー(SS)10からセンシング情報を取得するための処理にかかる負荷を軽減又は削減することができるとともに,待ち時間を少なくして,処理時間を短くするか又はなくすことができる。
【0050】
また,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40に情報を集約しておくことにより,少なくとも,コグニティブエンジン(CE)20及び規制情報データベース30との間におけるデータトラフィックの量(具体的には,共通するシグナリングチャネルでのトラフィックの量)を少なくすることができる。また,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40に情報が集約されていることにより,コグニティブエンジン(CE)20への情報伝達の遅延を回避することができる。これらの結果,スペクトラム利用効率を向上させることができる。また,規制情報データベース30に対して不必要なデータのトラフィックを少なくすることもできる。
【0051】
(好ましい態様)
さらに,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,各スペクトラムセンサー(SS)10がセンシングを行う前や,1回目のセンシングが行った後に,各スペクトラムセンサー(SS)10にセンシング情報を供給するように構成されていることが好ましい。これにより,スペクトラムセンサー(SS)10は,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40から供給されたセンシング情報に基づいて,センシングすべき周波数帯(チャネル)を決定する。これにより,センシングに要するコスト(センシングコスト)を抑えることができる。センシングコストの例は,センシングにかかる時間や消費電力である。
【0052】
より好ましくは,スペクトラムセンサー(SS)10が,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40から供給されたセンシング情報に基づいて,センシングすべき時間及び頻度の少なくとも一方をさらに決定する。これにより,センシングコストをさらに抑えることができる。
【0053】
(好ましい別の態様)
また,上述した態様において,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,好ましくは,取得した規制情報とセンシング情報の双方を前処理して,新たな情報(データ)を生成する。そして,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40が生成したデータは,コグニティブエンジン(CE)20へ供給される。前処理としては,情報の解析,情報の結合,情報の再構築,情報の整理,データのフォーマット変換が挙げられる。データのフォーマット変換は,コグニティブエンジン(CE)20等が利用しやすいフォーマットにデータを変換するものである。
【0054】
例えば,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,情報の前処理として,ソート処理,インデキシング,結合処理,再構築処理,データのフォーマット変換等を行う。これにより,コグニティブエンジン(CE)20へと早期にデータを供給することが可能となるだけでなく,コグニティブエンジン(CE)20において情報交換にかかる時間を短くすることができる。また,コグニティブエンジン(CE)20が,通常はネットワーク側に設けられている規制情報データベース30から同様の情報を取得する必要をなくすことができる。
【0055】
例えば,あるスペクトラムセンサー(SS)10が所定の周波数帯(センシング可能な範囲の一部)をセンシングし,別のスペクトラムセンサー(SS)10が別の周波数帯をセンシングする。その後,これらのスペクトラムセンサー(SS)がホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40にセンシング情報を格納する。この場合,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,周波数帯の異なるセンシング情報から,一連の周波数帯のセンシング情報を取得することができる。このようにすることで,各スペクトラムセンサー(SS)10がセンシングすべき周波数帯を狭くすることができ,その結果,センシングの精度を高めるか,又は,センシングの時間を短くすることができる。特に,スペクトラムセンサー(SS)10がセンシング可能な時間は非常に短い時間であるので,従来では,センシング可能な範囲の全てをセンシングすることは困難であり,その結果,センシング情報の品質が必ずしも優れたものであるとはいえなかった。同様に,センシング情報の品質は,環境の影響(例えば,経路損失や隠れ端末)によっても左右される。一方,この好ましい別の態様によれば,複数のスペクトラムセンサー(SS)からのセンシング情報を統合することで,所望の範囲の全てをセンシングした場合と同等の結果を得ることができ,しかも,センシング情報の品質を十分に高めることができる。また,センシングコストを抑えることもできる。
【0056】
(より好ましい態様)
ところで,センシング情報(プライマリーユーザーに関する情報やセカンダリーユーザーに関する情報)は,動的に変動する。そのため,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40が格納しているセンシング情報も頻繁に更新されることとなる。
【0057】
そこで,上記別の態様のより好ましい態様では,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,少なくともセンシング情報を時刻に関する情報とともに格納する(格納手段)。そして,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,時間の経過にともなって変動するセンシング情報に関する情報から,論理演算,統計的な手法,圧縮,学習などの公知の手法によって,例えば,長い期間にわたって収集した時系列的なセンシング情報(スペクトラムの利用状況)を取得する。例えば,その情報を利用することにより,利用される頻度が高い周波数帯に関する情報や,利用される頻度が低い周波数帯に関する情報を取得することができる。これにより,コグニティブ無線通信をより正確に制御することができる。さらには,センシングが必要な周波数帯を狭くしたり,センシングの優先順位を周波数帯ごとに決定したりすることができ,その結果,センシングコストを抑えることができる。
【0058】
(好ましいさらに別の態様)
また,上述した態様において,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,複数のセカンダリーユーザーに関する情報(例えば,スペクトラムセンサーのIDや性能に関する情報)を取得するように構成されている。このために,各セカンダリーユーザーが自らの情報をホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40に送信してもよいし,コグニティブエンジン(CE)20が収集した情報をホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40に送信してもよいし,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40が各セカンダリーユーザーにアクセスして必要な情報を入手するようにしてもよい。これにより,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40において,複数のセカンダリーユーザーの情報を管理することができることとなる。
【0059】
そして,この場合には,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,規制情報やセンシング情報(例えば,各セカンダリーユーザーのスペクトラムの利用状況に関する情報)だけでなく,複数のセカンダリーユーザーに関する情報をも用いて,コグニティブ無線通信の制御に必要なデータを生成する。例えば,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,それらの情報を用いて,具体的には,各セカンダリーユーザーが利用可能な周波数帯・時間などに関する情報を生成する。そして,コグニティブエンジン(CE)20は,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40が生成した情報に基づいて,コグニティブ無線通信の制御を行う。
【0060】
このさらに別の態様によれば,コグニティブエンジン(CE)20は,コグニティブ無線通信の制御に必要な情報を,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40から容易に入手することができる。特に,複数のセカンダリーユーザーが,複数のネットワークを構成している場合,ネットワーク間での干渉が回避されるように(つまり,複数のネットワークが共存することができるように),利用可能な周波数帯や時間帯を設定するための処理にかかる時間や処理負荷を軽減することができる。
【0061】
続いて,図1に示したようなホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40についてより詳細に説明する。図4は,図1に示したようなホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40の構成を模式的に示す図である。
【0062】
ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,図4に示すように,2つの入力インターフェイスを含む。2つの入力インターフェイスのうちの1つは,規制情報を取得するためのものであり,他方は,センシング情報を取得するためのものである。ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40に入力される情報としては,執行規制団体に関する情報,保護ユーザー及びそれらの保護エリアに関する情報,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40の現在の位置やコグニティブ無線(コグニティブ端末)の現在の位置に関する情報,並びに,センシング情報などがある。
【0063】
すなわち,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,情報取得能力をもつ。これにより,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,スペクトラムセンサー(SS)10や他の情報ソースから,センシング情報を取得することが可能となるとともに,規制情報データベース30や他の情報ソースから,規制情報やポリシー情報を取得することが可能となる。
【0064】
さらに,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,図4に示すように,3つの出力インターフェイスを含む。1つは,規制情報を原形のまま提供するためのものであり,もう1つは,生のセンシング情報を提供するためのものであり,残りの1つは,処理した情報を提供するためのものである。ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,が出力する情報としては,特定の時間における特定の周波数帯におけるコグニティブ無線の動作の実行やその禁止に関する情報,並びに,コグニティブ無線に対するアドバイザリー情報などがある。
【0065】
すなわち,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,情報供給能力をもつ。これにより,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,保存している情報を他のクライアント(例えば,コグニティブエンジン(CE)20や規制情報データベース30など)に供給して情報を共有することが可能となる。具体的には,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,クライアントから要求を受けた場合には,その旨を他の対応するクライアントに提示したり,そのクライアントからレスポンスを受けた場合には,確認のための通知を対応するクライアントへ行ったりする。
【0066】
また,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,情報保存能力をもつ。具体的には,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,センシング情報,規制情報やポリシーに関する情報を保存することが可能である。
【0067】
さらに,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,好ましい態様では,情報を体系的に整理する能力をもつ。具体的には,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,センシング情報,規制情報やポリシー情報を体系的に記録することが可能である。より好ましくは,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,保存対象のデータを分類し,ソートし,かつインデキシングした状態で記録する。これにより,情報交換のパフォーマンスを向上させることができる。
【0068】
同様に,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,好ましい態様において,生のセンシング情報のデータについて前処理する能力をもつ。具体的には,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,原形のまま保存している情報を提供することができるだけでなく,所定のアルゴリズム(プログラム)に従って処理した情報を提供することができる。処理済みの情報としては,規制情報とセンシング情報とを処理した結果が挙げられる。
【0069】
以上,詳細に説明したように,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,複数の機能を含むように構成されている。ここで,図5に,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40と規制情報データベース30の機能等を示す。図5から分かるように,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,センシング情報を保持可能である点と,ユーザー端末に相対的に近い側に設けられている点で,規制情報データベース30とは大きく異なっている。
【0070】
次に,本発明の実施態様をより詳細に説明する。
【0071】
本実施態様では,センシング情報は,例えば,スペクトラム計測情報,及び/又は,スペクトラム利用の局地的な決定に関する情報と,スペクトラム計測情報やスペクトラム利用情報の位置とタイムスタンプに関する情報と,センシング方法,センサーの規格,情報の正確性などに関する情報とを含んでいる(図2参照)。なお,センシング情報は,動的に変動するものであり,その妥当性は,短時間において有効であるとともに,地理的には相対的に狭いエリアに関して有効である。
【0072】
また,本実施態様では,規制情報やポリシー情報は,例えば,無線送信機の位置に関する情報又は動作上の地理的なエリアに関する情報と,放射出力の実効値に関する情報と,無線送信機の地表レベルからの高さに関する情報と,アンテナの地表レベルからの高さに関する情報と,コールサイン(呼び出し符号)等に関する情報とを含んでいる(図3参照)。なお,規制情報やポリシー情報は,規制情報データベース30から取得することが可能である。ここで,規制情報データベース30は,ライセンス保持者に関する情報,デバイス動作パラメーター(例えば,周波数や位置)に関する情報,及び,適用対象となる任意の特別なコンディションに関する情報を含んでいる。そして,規制情報やポリシー情報は,相対的に(センシング情報に比較して)安定的な情報であり,具体的には,相対的に広いエリアに関して頻繁に変動することはない情報である。
【0073】
図6は,図1に示したようなホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40と他の構成要素との関係の一例を説明するための模式図である。
【0074】
図6に示すホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40には,スペクトラムセンサー(SS)10からのセンシング情報と,規制情報データベース30からの規制情報等とが入力インターフェイスを介して入力される。これにより,スペクトラムセンサー(SS)10からのセンシング情報と,規制情報データベース30からの規制情報とは,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40に集約される。そして,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,センシング情報や,規制情報等を統合的に保存・管理する。したがって,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,出力インターフェイスを介して,生の情報(原形のままの情報)として,センシング情報や規制情報等を出力することが可能であるとともに,それらを処理した結果として,処理済みの情報を出力することが可能となっている。このようにすることで,コグニティブエンジン(CE)20へと情報伝達を効率的に行うことができる。
【0075】
図7には,図1に示したようなホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40と他の構成要素との関係の一例を説明するための模式図である。
【0076】
図7に示す例では,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40が規制情報データベース30を含んでいる。このため,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,内部インターフェイスを備えていればよく,これにより,規制情報を速やかに取得することができる。また,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,このセンシング情報を格納するための追加的な記憶領域を含んでいる。これにより,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,規制情報だけでなく,センシング情報をも扱うことができる。
【0077】
なお,上述した各態様において,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)が含む入力インターフェイスは,1種類であってもよい。この場合,そのホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)は,他のホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)に通信可能に接続されて,そのホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)との間で情報を共有するように構成される。また,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)が含む出力インターフェイスは,3種類に限られることはなく,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)は,例えば処理済みのデータだけを出力するように1種類の出力インターフェイスを含むものであってもよい。
【0078】
なお,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)は,コグニティブ無線通信システム1に含まれる全ての規制情報データベースが格納している規制情報の全てを管理する必要はなく,コグニティブ無線通信の制御に必要な情報(例えば,スペクトラムセンサー及びコグニティブエンジンを含むコグニティブ無線通信エリアに関する規制情報)だけを抽出して管理することが好ましい。
【0079】
なお,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)は,コグニティブエンジン(CE)が搭載されているユーザー端末に実装されていてもよい。この場合にも,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)は,コグニティブエンジン(CE)に対して,コグニティブ無線通信の制御に必要な情報を供給する。
【実施例】
【0080】
次に,本発明の実施例を説明する。本実施例では,上述した本発明によるコグニティブ無線通信システムと,従来のコグニティブ無線通信システムとを比較した。ここで,従来のコグニティブ無線通信システムは,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40を備えていない点で,本発明によるコグニティブ無線通信システムと異なる。
【0081】
まず,シグナリングのグローバルネットワークに対するトラフィックについて比較した。具体的には,コグニティブエンジン(CE)20を含むコグニティブ無線通信デバイスと,規制情報データベース30との間におけるシグナリングのトラフィックを比較した。
【0082】
そこで,まず,固定的に配置されたデバイスの数をNFとし,移動可能なデバイスの数をNMとした。なお,これらの数値は,規制情報データベース30から,利用可能なチャネルに関するリストを取得するのに必要な数である。
【0083】
そして,固定的に配置されたデバイスが,1日に1回,規制情報データベース30へとアクセスするとともに,移動可能なデバイス(インデックス番号i,速度vi)が,距離D(例えば,100m)を移動した後にその地理上な位置を更新するとした。
【0084】
ここで,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40がない従来の無線通信システムでは,全てのデバイスがインターネット2上の規制情報データベース30へとアクセスする必要がある。そこで,グローバルネットワークに対する(又は該グローバルネットワークからの)1回のアクセスについてのトラフィックの量をGとした。この場合,単位時間におけるトラフィックの総量TREGは,下記式1のように表されることとなる。
【数1】

【0085】
一方,本発明によるコグニティブ無線通信システムでは,全てのデバイスは,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40から,利用可能なチャネルのリストを入手することが可能である。この場合,規制情報データベース30からの情報は,WSDにのみにキャッシュされればよい。そこで,その場合におけるキャッシュヒットレートをh(ただし,hは,0以上1以下)とするとともに,1回のアクセスに対応するローカルネットワークでのトラフィックの量をLとした。
【0086】
この場合,単位時間におけるトラフィックの総量TWSDは,下記式2のように表されることとなる。
【数2】

【0087】
上記式2において,右辺の第1項は,ローカルエリアでのトラフィック量に対応しており,同第2項は,グローバルネットワークでのトラフィックの量に対応する。
【0088】
上記式1,2を比較すれば分かるように,ホワイトスペースセンシングデータベース()WSD40を設けることによって,グローバルネットワークに対するトラフィックの量を少なくすることができる。すなわち,本発明では,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40が規制情報データベース30からのデータを中継するためにキャッシュすることで,グローバルネットワークに対するトラフィックの量を少なくすることができることが分かった。
【0089】
続いて,本発明によるコグニティブ無線通信システムと,従来のコグニティブ無線通信システムについて,セカンダリーユーザーのセンシングに要するコスト(センシングコスト)を評価した。センシングコストは,例えば,単位時間当たりのセンシング回数で評価することができる。
【0090】
ところで,コグニティブ無線通信デバイスが利用しているチャネルは,動作チャネルともいわれている。プライマリーユーザーが存在することに起因するサービス障害の発生を少なくするために,各コグニティブ無線は,バックアップチャネルのリストを保持している。そのため,各コグニティブ無線通信デバイスは,それらのようなチャネル上でスペクトラムセンシングを定期的に行う必要がある。
【0091】
ここで,動作チャネルが所定期間top秒ごとに少なくとも1回センシングされ,かつ,各バックアップチャネルが所定期間tbk秒ごとに少なくとも1回センシングされると仮定する。さらに,N個のデバイスの各々が,1つの動作チャネルと,B個のバックアップチャネルについて,スペクトラムセンシングを行うと仮定する。
【0092】
そして,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40がない従来のコグニティブ無線通信システムでは,利用可能なチャネル間の差異を特定可能な情報がなく,全てのデバイスは,FCCのルールにしたがってセンシングを行う必要がある。この場合,プライマリーユーザーを保護するのに必要なセンシングコストCREGは,下記式3のように見積もることができる。
【数3】

【0093】
一方で,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40がある場合,ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40は,利用可能なチャネルのうちの1つが保留チャネル(例えば,テレビ用無線送信機が将来的に利用するチャネル)であるかどうかを示す情報をさらに提供可能である。そのため,そのようなチャネルは,現在のところ,プライマリーユーザーが利用し得ないことは確実であり,それ故に,デバイスは,そのチャネルに関するセンシングを定期的に行う必要もない。そこで,そのチャネルを動作チャネル又はバックアップチャネルとしてデバイスが選択する確率をp(ただし,pは,0以上1以下)とすると,プライマリーユーザーを保護するのに必要なセンシングコストCWSDは,下記式4,5のように見積もることができる。
【数4】

【0094】
上記式4は,あるデバイスが上記チャネルを動作チャネルとして選択した場合,他の(N−1)個のデバイスは,そのチャネルで動作しない場合のセンシングコストを示している。また,上記式5は,上記チャネルが動作チャネルとしてどのデバイスによっても選択されなかった場合のセンシングコストを示している。
【0095】
上記式3と,上記式4又は上記式5とを比較すれば明らかなとおり,コグニティブ無線通信システムがホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)40を含み,当該から各コグニティブ無線通信デバイスへとチャネル状態を示す付加的なフラグを送信することで,センシングコストを低減することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は,コグニティブ無線通信システム及びコグニティブ無線通信方法に適用することができる。また,本発明のホワイトスペースセンシングデータベースを従来のコグニティブ無線通信システムに適用することができる。特に好ましくは,IEEE1900.6で規定されるシステムに適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 コグニティブ無線通信システム
2 インターネット
10 スペクトラムセンサー(SS)
20 コグニティブエンジン(CE)
30 規制情報データベース
40 ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースを用いてコグニティブ無線通信を行うコグニティブ無線通信システムであって,
前記コグニティブ無線通信を行うために必要なセンシングを行うスペクトラムセンサーと,
前記コグニティブ無線通信の制御を行うコグニティブエンジンと,
前記コグニティブ無線通信を制御するための規制情報を格納するための規制情報データベースと,
前記スペクトラムセンサーと前記コグニティブエンジンとの間,及び前記規制情報データベースと前記コグニティブエンジンとの間に設けられたホワイトスペースセンシングデータベースと,
を含み,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
前記スペクトラムセンサーから,前記センシングの結果を示すセンシング情報を取得するための第1取得手段と,
前記規制情報データベースから,前記規制情報を取得するための第2取得手段と,
を含み,
前記コグニティブエンジンは,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースから取得した情報に基づいて,前記コグニティブ無線通信の制御を行う,
コグニティブ無線通信システム。
【請求項2】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,前記第1取得手段が取得したセンシング情報を前記スペクトラムセンサーに供給するように構成されており,
前記スペクトラムセンサーは,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースから供給されたセンシング情報に基づいて,センシングすべき周波数帯を決定する,
請求項1に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項3】
前記スペクトラムセンサーは,さらに,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースから供給されたセンシング情報に基づいて,センシングすべき時間及び頻度の少なくとも一方を決定する,
請求項2に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項4】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
前記スペクトラムセンサーから取得したセンシング情報と,前記規制情報データベースから取得した規制情報とを処理して,前記コグニティブ無線通信の制御に必要なデータを生成するデータ生成手段,をさらに含み,
前記コグニティブエンジンは,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段が生成したデータに基づいて,前記コグニティブ無線通信の制御を行う,
請求項1に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項5】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段は,
ある周波数帯についてのセンシング情報と,別の周波数帯についてのセンシング情報とを統合する処理を行う,
請求項4に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項6】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
前記第1取得手段が前記スペクトラムセンサーから取得したセンシング情報を,時刻に関する情報とともに格納する格納手段,
をさらに含み,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段は,
前記格納手段によって格納されたセンシング情報に基づいて,時間の経過にともなって変動するセンシング情報に関する情報を生成する,
請求項4又は5に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項7】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
前記コグニティブ無線通信を行う複数のセカンダリーユーザーに関する情報を取得するための第3取得手段,をさらに含み,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段は,
前記スペクトラムセンサーから取得したセンシング情報と,前記規制情報データベースから取得した規制情報と,前記複数のセカンダリーユーザーに関する情報とを処理して,前記コグニティブ無線通信の制御に必要なデータを生成し,
前記コグニティブエンジンは,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースのデータ生成手段が生成したデータに基づいて,前記コグニティブ無線通信の制御を行う,
請求項4に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項8】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
前記コグニティブエンジンを含む無線ネットワークの位置を示す位置情報を取得する第4取得手段,をさらに含み,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースの第2取得手段は,
前記規制情報データベースに格納されている複数の規制情報から,前記位置情報に関連する規制情報を取得する,
請求項1に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項9】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
前記規制情報データベースを含む,
請求項1に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項10】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースの前記第2取得手段は,
前記規制情報データベースと情報を交換するためのインターフェイスを含む,
請求項1に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項11】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
他のホワイトスペースセンシングデータベースと通信可能に構成されている,
請求項1に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項12】
前記規制情報データベースは,
インターネット上のサーバーに設けられており,
前記スペクトラムセンサー及び前記コグニティブエンジンは,
前記コグニティブ無線通信を行うことが可能な所定のエリア内に配置されており,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
前記インターネットと前記所定のエリアとの間に設けられている,
請求項1に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項13】
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
基地局に設けられている,
請求項12に記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項14】
データベースを用いてコグニティブ無線通信を行うコグニティブ無線通信システムに設けられるホワイトスペースセンシングデータベースであって,
前記コグニティブ無線通信システムは,
前記コグニティブ無線通信を行うために必要なセンシングを行うスペクトラムセンサーと,
前記コグニティブ無線通信の制御を行うコグニティブエンジンと,
前記コグニティブ無線通信を制御するための規制情報を格納するための規制情報データベースと,
を含んでおり,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースは,
前記スペクトラムセンサーと前記コグニティブエンジンとの間,及び前記規制情報データベースと前記コグニティブエンジンとの間に設けられ,
前記スペクトラムセンサーから,前記センシングの結果を示すセンシング情報を取得するための第1取得手段と,
前記規制情報データベースから,前記規制情報を取得するための第2取得手段と,
を含み,
これにより,前記コグニティブエンジンが,前記ホワイトスペースセンシングデータベースから取得した情報に基づいて,前記コグニティブ無線通信の制御を行うことが可能となる,
ホワイトスペースセンシングデータベース。
【請求項15】
データベースを含むコグニティブ無線通信システムを用いてコグニティブ無線通信を行うためのコグニティブ無線通信方法であって,
前記コグニティブ無線通信システムは,
前記コグニティブ無線通信を行うために必要なセンシングを行うスペクトラムセンサーと,
前記コグニティブ無線通信の制御を行うコグニティブエンジンと,
前記コグニティブ無線通信を制御するための規制情報を格納するための規制情報データベースと,
前記スペクトラムセンサーと前記コグニティブエンジンとの間,及び前記規制情報データベースと前記コグニティブエンジンとの間に設けられたホワイトスペースセンシングデータベースと,
を含んでおり,
前記コグニティブ無線通信方法は,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースが,前記スペクトラムセンサーから,前記センシングの結果を示すセンシング情報を取得する第1取得ステップと,
前記ホワイトスペースセンシングデータベースが,前記規制情報データベースから,前記規制情報を取得する第2取得ステップと,
前記コグニティブエンジンが,前記ホワイトスペースセンシングデータベースから取得した情報に基づいて,前記コグニティブ無線通信の制御を行うステップと,
を含む,
コグニティブ無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−176506(P2011−176506A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38010(P2010−38010)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環,産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】