説明

コネクタのケーブル接続部構造

【課題】ケーブルクランプ手段を備えたコネクタにおいて当該コネクタからのケーブルの抜けを確実に防止できるケーブル接続部構造を提供する。
【解決手段】ケーブルクランプ手段3を構成する部分円環状の第1ブロック32と部分円環状の第2ブロック33との間に、ケーブル20の外皮20bのみに食い込む複数の爪部9c・・・9cを有する一対のケーブル抜け止め用の金具9・9を装着し、これらの金具9・9を介して両ブロック間にケーブル20を挟持する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ケーブルや信号ケーブル等のケーブルが接続されるコネクタ(ケーブルコネクタ)に関し、さらに詳しくはそのケーブル接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気通信機器や電気通信設備等に電源ケーブルや信号ケーブル等のケーブルを接続する場合、ケーブルの接続側の端部にコネクタを取り付け、このコネクタを機器や設備側の対応するコネクタ部に接続することが行われる。このような場合に使用されるケーブル接続用のコネクタとして、筒状のシェルの一端側にケーブルクランプ手段を備えたコネクタがある(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
このタイプのコネクタにおけるケーブルクランプ手段は、前記シェルまたはこれに結合される筒状部と一体に形成された部分円環状(例えば略半円環状)の第1ブロック(ケーブルクランプボディ)と、この第1ブロックにネジを用いて締結されて当該第1ブロックとの間に一対の対向する凹部からなるクランプ部を形成する部分円環状の第2ブロック(ケーブルクランプハーフ)とを有する。そして、コネクタにケーブルを接続する際には、シェル内に先端側を挿通したケーブルを両ブロック間のクランプ部で挟んだ状態で、両ブロック締結用のネジを操作して両ブロックを締め付けることよって、接続されたケーブルが不用意に抜けてしまったりぐらついたりしないように固定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−83647号公報(図1)
【特許文献2】特開平10−144384号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、接続されるケーブルの種類によっては、コネクタにおけるケーブル締め付け部(クランプ部)である上記のブロックを目一杯締め付けても、ケーブルとこれを挟持するケーブルクランプ手段のブロックとの間に隙間が生じる場合がある。これは、径寸法の異なる複数種のケーブルに対応できるように一対の部分円環状のブロックを組み合わせて略円環状のクランプ部を形成するようにした上記のようなタイプのコネクタにおいては避けられないものである。接続されるケーブルの外径が、上記のブロックを目一杯締め付けた場合に形成されるクランプ部の内径(短径)に満たないような場合もあるからである。そして、上記のような隙間があると、ケーブルに対するクランプが不十分となるため、比較的小さな引っ張り力がケーブルに作用した場合でもケーブルが心線ごとコネクタから抜けてしまうことがある。
【0006】
そこで、この種のコネクタにケーブルを接続する際には、従来においてはケーブルの締め付け部分、つまりクランプ部分にビニールテープなどの絶縁性のテープ(以下、テープともいう)を厚めに巻き付け、その部分を上記両ブロックで挟んで締め付けるようにしていた。このようにすると、コネクタとケーブルとの間の隙間を無くすことができるので、ケーブルの抜けを回避することができる。
【0007】
しかしながら、上記のようにしてケーブルにテープを巻き付けた場合であっても、その巻き付けたテープが経年劣化により硬化(弾性が低下)したり脆くなったりして、テープの巻き付けによるケーブル保持効果が低下し、その結果、コネクタからケーブルが抜け易くなるという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、上述のような問題に対処するもので、一対のブロック間にケーブルを挟んで締め付けることによりケーブルをクランプする手段を備えたコネクタのケーブル接続部構造として、コネクタからのケーブルの抜けを防止できる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、筒状のシェルの一端側にケーブルクランプ手段を備え、このケーブルクランプ手段側からシェル内に、絶縁性の外皮で心線を被覆してなるケーブルが挿通されて接続されるとともに、当該ケーブルがケーブルクランプ手段によってクランプされて固定されるコネクタのケーブル接続部構造において、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、ケーブルクランプ手段が、前記シェルまたはこれに結合される筒状部と一体に形成された部分円環状の第1ブロックと、この第1ブロックにネジを用いて締結されて当該第1ブロックとの間に一対の対向する凹部からなるクランプ部を形成する部分円環状の第2ブロックとを有していて、前記クランプ部にケーブルを挿通した状態で両ブロックを締結しているネジを操作して両ブロックを締め付けることでケーブルを挟持する構成とする。
【0011】
そのうえで、上記の第1および第2ブロック間に一対のケーブル抜け止め用の金具を装着する。これらの金具は、両ブロックの対向面側の端面形状に沿うように前記凹部に対応するケーブル挟持用の部分円筒部が中央部にそれぞれ形成され且つその両側の平坦部に前記ネジの挿通孔がそれぞれ形成された構成とする。そして、これらの金具における部分円筒部の軸方向の両端縁に、両金具を介してケーブルを挟持した状態で両ブロックを締め付けたときに当該ケーブルの外皮のみに食い込む複数の爪部をそれぞれ設けた構成とする。
【0012】
具体的には、各金具における複数の爪部が、両金具間に挟持されるケーブルの軸心方向と直交する径方向から当該ケーブルの外皮のみに食い込むように、当該爪部の設けられている部分円筒部の軸方向の端縁を含む面内にあって当該部分円筒部の軸心または内方に向けて突出しており、その突出量が前記ケーブルの外皮の厚み寸法未満である構成とする。なお、前記爪部の食い込みによる効果がケーブルの周方向において均等に得られるように、各金具における複数の爪部は、当該金具における部分円筒部の両端縁に沿って略等間隔に配置するのが好ましい。また、両金具間に挟持されるケーブルの外皮に各爪部が確実に食い込むように、各爪部は、ケーブル軸心方向(挿入方向)から見て先端が部分円筒部の軸心または内方に向けて尖った三角形の形状とするのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コネクタにケーブルを接続してケーブルクランプ手段の第1および第2ブロック間に一対のケーブル抜け止め用の金具を介して当該ケーブルを挟持したときに、前記金具に設けられた複数の爪部の先端が当該ケーブルの外皮に当接する。そして、この状態から両ブロックを締め付けることによって、両金具における複数の爪部が当該ケーブルの外皮に食い込む。こうして、コネクタに接続されたケーブルは、その外皮に両金具における複数の爪部が食い込んだ状態で、ケーブルクランプ手段の第1および第2ブロック間に両金具を介して挟持されるので、両ブロックとの間に多少の隙間があったとしても当該コネクタから簡単に抜けるようなことはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係るコネクタのケーブル接続部構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るコネクタのケーブル接続部構造を示す平面である。
【図3】本発明の実施例に係るコネクタのケーブル接続部を軸方向(ケーブル接続方向)に沿って切断してその内部構造を示す拡大断面である。
【図4】本発明の実施例で使用した抜け止め用の金具を単体で示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例を示すもので、第1および第2ブロックの締結用のネジの部分でケーブル接続方向と直交する方向に切断してその締結時の状態を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例を示すもので、ケーブルクランプ手段における第1ブロックに第2ブロックを締結して両ブロック間にケーブルをクランプする際の組み合わせ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0016】
(実施例1) 図1ないし図6は、本発明に係るコネクタのケーブル接続部構造の実施例を示すものである。図1ないし3において、コネクタ1は、筒状のシェル2と、このシェル2の一端側(ケーブル挿入側となる後端側)に備えられたケーブルクランプ手段3と、シェル2内の他端側に組み込まれたインサート4と、シェル2の他端側の外周部に取り付けられてシェル2の軸方向に沿って所定の範囲で移動可能されたカップリングリング5とを有する。なお、このコネクタ1に接続されるケーブル20は、複数の心線20a・・・20aを絶縁性の外皮20bで被覆した構成である(図5および図6参照)。
【0017】
シェル1の一端側(後端側)の外周部は、図3に示すように、後述する筒状部31が取り付けられる雄ネジ部2aとされている。また、シェル2の一端側の内部には、シェル2内に挿入接続されたケーブル20がシェル1内の一端側でぐらつく等のことがないようにこれを弾性的に保持するゴム製のブッシング6と、このブッシング6を一方向から押さえて固定する金属製のリング部材7とが装着されている。
【0018】
インサート4には、図2に示すように、コネクタ1の接続相手側となる機器Xのコネクタ部Xcに設けられた端子(図示せず)と電気的に接続される複数の端子(図示せず)が設けられており、そのシェル2内側の端部にケーブル20の各心線20aがそれぞれ接続される。
【0019】
カップリングリング5には、その内周面にネジ(図示せず)が形成されており、コネクタ1をその接続相手側の機器Xのコネクタ部Xcに電気的に接続した後に、当該コネクタ部Xcの外周に形成されているネジに対してカップリングリング4の内周面のネジを螺合させて締め合わせることで、当該コネクタ1とコネクタ部Xcとが分離しないように結合させうるようになっている。
【0020】
ケーブルクランプ手段3は、シェル2の一端側(後端側)にネジ嵌合により取り付けられる筒状部31と、この筒状部31のケーブル挿入側の端部に一体に形成された部分円環状の第1ブロック32と、この第1ブロック32と組み合わされて第1ブロック32との間に一対の対向する凹部32a・33aからなるクランプ部3aを形成する部分円環状の第2ブロック33とを有する。
【0021】
このうち、筒状部31は、図3に示したように、その内周面が雌ネジ部31aとされており、この雌ネジ部31aが前記シェル外周面の雄ネジ部2aに螺合されることでシェル2と結合されるようになっている。また、図5および図6に示すように、第2ブロック33の凹部33aを挟む両端部には両ブロック締結用の一対のネジ8・8を挿通させるためのネジ孔(ネジ挿通孔)33b・33bが設けられ、これに対応する第1ブロック32の両端部には当該一対のネジ8・8と螺合するネジ孔(雌ネジ)32b・32bが設けられている。そして、これらの両ブロック32・33間に形成されるクランプ部3aにケーブル20を挿通した状態で前記ネジ8・8を用いて両ブロック32・33を締結し、さらに当該8・8ネジを操作して両ブロック32・33を締め付けることでケーブル20が両ブロック間32・33に挟持されるように構成されている。
【0022】
このような構成に加えて、本発明に係るコネクタ1のケーブル接続部構造においては、ケーブル1の接続時に上記の第1および第2ブロック32・33間に一対のケーブル抜け止め用の金具9・9が装着され、これらの金具9・9を介して両ブロック32・33間にケーブル20が挟持される構成とされている。これらの金具9・9は、両ブロック32・33の対向面側の端面形状に沿うように前記凹部32a・33aに対応するケーブル挟持用の部分円筒部9aが中央部にそれぞれ形成され且つその両側の平坦部に前記ネジ8・8の挿通孔9bがそれぞれ形成されている。これらの金具9・9における部分円筒部9a・9aの軸方向の両端縁には、両金具9・9を介してケーブル20を挟持した状態で両ブロック32・33を締め付けたときに当該ケーブル20の外皮20bのみに食い込む複数の爪部9c・・・9cがそれぞれ設けられている。
【0023】
これらの複数の爪部9c・・・9cは、図1、図3ないし図5に示すように、両金具間9・9に挟持されるケーブル20の軸心方向と直交する径方向から当該ケーブル20の外皮20bのみに食い込むように、当該爪部9cの設けられている部分円筒部9の軸方向の端縁を含む面内にあって当該部分円筒部9の軸心または内方に向けて突出しており、その突出量がケーブル20の外皮20bの厚み寸法未満に設定されている。また、これらの爪部9c・・・9cは、ケーブル20の外皮に確実に食い込むように、ケーブル軸心方向(挿入方向)から見て先端が部分円筒部9aの軸心または内方に向けて尖った三角形の形状とされているとともに、これらの食い込みによる効果がケーブル20の周方向において均等に得られるように、当該金具9における部分円筒部9aの両端縁に沿って略等間隔に配置されている。
【0024】
上記のコネクタ1にケーブル20を接続する際には、まずコネクタ1を構成しているインサート4、シェル2、ケーブルクランプ手段3を分離した状態で、これらにケーブルクランプ手段3側からケーブル20を挿通して、その接続端側の心線20aを前記インサート4に設けられた端子(図示せず)の後端側に接続し、その上でシェル2内の前端側に当該インサート4を組み付ける一方、シェル2の後端側にケーブルクランプ手段3における筒状部31を取り付けて、図1に示したように結合する。
【0025】
次に、図1および図6に示したように、筒状部31と一体の第1ブロック32の合わせ面とケーブル20との間に一方のケーブル抜け止め用の金具9を装着した状態で、この金具9との間でケーブル20を挟持すべく他方のケーブル抜け止め用の金具9をケーブル20上半側に装着して、両金具9・9の対向する一対の部分円筒部9a・9a間にケーブル20を位置させる。この状態で、両金具9・9を介して第1および第2ブロック32・33でケーブル20を挟持すべく、他方の金具9の外面側(合わせ面側とは反対側)から第2ブロック33を組み付け、これらを一対の締結用のネジ8・8で結合する。
【0026】
このようにすると、ケーブル20は第1および第2ブロック32・33間に一対の金具9・9を介して挟持されるが、このとき先ず各金具9・9の部分円筒部9a・9aに設けられた複数の爪部9c・・・9cの先端が当該ケーブル20の外皮20bに当接し、その状態から両ブロック32・33によってさらに締め付けられることによって、図3および図5に示すように、両金具9・9における複数の爪部9c・・・9cがケーブル20の外皮20bに食い込むようになる。この場合、各爪部9c・・・9cは、その突出量がケーブル20の外皮20bの厚み未満に設定されているから、その心線20aにまで達することはない。
【0027】
こうして、コネクタ1に接続されたケーブル20は、その外皮20bに両金具9・9における複数の爪部9c・・・9cが食い込んだ状態で、ケーブルクランプ手段3における第1および第2ブロック32・33間に両金具9・9を介して挟持される。したがって、両ブロック32・33との間に多少の隙間があったとしても当該コネクタ1から簡単に抜けるようなことはなくなる。すなわち、ケーブルクランプ手段3における第1および第2ブロック32・33間にケーブル20をクランプしたうえで、その外皮20bに一対の抜け止め用の金具9・9における爪部9c・・・9cが食い込むことによって当該ケーブル20の抜けを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 コネクタ
2 シェル
3 ケーブルクランプ手段
3a クランプ部
31 筒状部
32 第1ブロック
33 第2ブロック
32a・33a 一対の対向する凹部
8 両ブロック締結用のネジ
9 ケーブル抜け止め用の金具
9a 部分円筒部
9c 爪部
20 ケーブル
20a 心線
20b 外皮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシェルの一端側にケーブルクランプ手段を備え、このケーブルクランプ手段側からシェル内に、絶縁性の外皮で心線を被覆してなるケーブルが挿通されて接続されるとともに、当該ケーブルがケーブルクランプ手段によってクランプされて固定されるコネクタのケーブル接続部構造であって、
前記ケーブルクランプ手段が、前記シェルまたはこれに結合される筒状部と一体に形成された部分円環状の第1ブロックと、この第1ブロックにネジを用いて締結されて当該第1ブロックとの間に一対の対向する凹部からなるクランプ部を形成する部分円環状の第2ブロックとを有していて、
前記クランプ部にケーブルを挿通した状態で両ブロックを締結しているネジを操作して両ブロックを締め付けることでケーブルを挟持する構成とされており、
第1および第2ブロック間には、これらの対向面側の端面形状に沿うように前記凹部に対応するケーブル挟持用の部分円筒部が中央部にそれぞれ形成され且つその両側の平坦部に前記ネジの挿通孔がそれぞれ形成された一対のケーブル抜け止め用の金具が装着され、
これらの金具における部分円筒部の軸方向の両端縁には、両金具を介してケーブルを挟持した状態で両ブロックを締め付けたときに当該ケーブルの外皮のみに食い込む複数の爪部がそれぞれ設けられていることを特徴とするコネクタのケーブル接続部構造。
【請求項2】
複数の爪部は、両金具間に挟持されるケーブルの軸心方向と直交する径方向から当該ケーブルの外皮のみに食い込むように、当該爪部が設けられている部分円筒部の軸方向の端縁を含む面内にあって当該部分円筒部の軸心または内方に向けて突出しており、その突出量が前記ケーブルの外皮の厚み寸法未満に設定されている、請求項1記載のコネクタのケーブル接続部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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