説明

コネクタのロック構造

【課題】ロックアームを短くした際にも可撓性を維持することができ、コネクタの小型化に合わせて小さくすることができるコネクタのロック構造を提供する。
【解決手段】互いに嵌合される雄側コネクタハウジングと雌側コネクタハウジング1とが、雄側コネクタハウジングに設けられた係止部を雌側コネクタハウジング1に設けられたロック係合部20に係止させ、解除可能にロックされるコネクタのロック構造であって、雌側コネクタハウジング1は、水平壁部1aに基端部9aを固定されてコネクタ嵌合方向に延びる可撓性のロックアーム9の先端にロック係合部20と、ロック係合部20に一側端を接続されてロックアーム9に沿って延びる解除レバー部7と、を有する。解除レバー部7が、ロック解除操作時に動き得る支点の周りにロック係合部20と共に回動し、ロックアーム9の横断面の厚さが、基端部9aからロック係合部20に向かって次第に減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタのロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタのロック構造としては、図5及び図6に示すようなものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。図5及び図6はロック部の全体斜視図及び雌側コネクタハウジングのロック部を示す部分断面図である。
雌側のコネクタハウジング101のロック部105は、その両側壁が嵌合方向(図5の左右方向)に延びる半矢じり形状に形成され、この側壁が解除レバー部107を構成している。解除レバー部107の前端部(図5の手前側端部)には、幅方向に全幅に亘って延びる前縁部111が形成されている。この前縁部111から2本の板状のロックアーム109が後方に向かってほぼ水平に延びて形成されている。そして、図6に示すように、両ロックアーム109の後端部(図5の奥側)は下方に曲がって雌側コネクタハウジング101の水平壁部101aにつながって固定端109aを構成している。
【0003】
幅方向に間隔を置いて配置された2本のロックアーム109の中間部の前縁部111が、雄側コネクタハウジング(図示せず)の係止部を係止する掛け金部(ロック係合部)111aを構成している。
一方、解除レバー部107の下端部は、ロックアーム109の後部の固定端109aと嵌合方向のほぼ同位置にあり、ロック解除操作時に解除レバー部107の回動の支点となる支持部107aを構成している。雌側コネクタハウジング101単体の状態では、この支持部107aは雌側コネクタハウジング101の水平壁部101aとの間にすきまを有している(図6参照)。
解除レバー部107の支持部107aよりも後方に全幅に亘って展開している平面部が、ロック解除操作用の指掛け部117を構成している。
【0004】
上記ロック構造によれば、雄雌ハウジング101のロック作用をてこ作用を利用して解除を行う解除レバー部107がロックアーム109の掛け金部111aにつながって設けられているので、ロックアーム109の掛け金部111aを所定量撓ませる時にロックアーム109の固定端109aに過大な応力が生じることがないようにすることができ、ロックアーム109の破損の恐れが解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−250636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、コネクタを小型化するにあたり、コネクタのロック構造も小さくする要請が高まっている。そのためには、ロックアーム109の長さを短くする必要があるが、短くしただけではロックアーム109の剛性が上がり、ロックアーム109が湾曲して撓まなくなる。
そして、ロック時およびロック解除時に掛け金部111aを上方へ変位させる力がロックアーム109に作用すると、固定端109aに応力が集中し、ロックアーム109が破損する可能性がある。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ロックアームを短くした際にも可撓性を維持することができ、コネクタの小型化に合わせて小さくすることができるコネクタのロック構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 互いに嵌合される第1のコネクタハウジングと第2のコネクタハウジングとが、前記第1のコネクタハウジングに設けられた係止部を前記第2のコネクタハウジングに設けられたロック係合部に係止させ、解除可能にロックされるコネクタのロック構造であって、
前記第2のコネクタハウジングは、該第2のコネクタハウジングの壁部に基端部を固定されてコネクタ嵌合方向に延びる可撓性のロックアームの先端に前記ロック係合部と、前記ロック係合部に一側端を接続されて前記ロックアームに沿って延びる解除レバー部と、を有し、
前記解除レバー部が、ロック解除操作時に動き得る支点の周りに前記ロック係合部と共に回動し、
前記ロックアームの横断面の厚さが、前記基端部から前記ロック係合部に向かって次第に減少することを特徴とするコネクタのロック構造。
【0009】
上記(1)の構成のコネクタのロック構造によれば、第1及び第2のコネクタハウジングが嵌合されるときには、ロック係合部の変位に抵抗する部材は片持式のロックアームだけであり、ロックアームの横断面の厚さが基端部からロック係合部に向かって次第に減少するように形成されている。そこで、アーム全長が短くなった際でもロックアームは先端側を湾曲して撓ませることができ、基端部に加わる応力を分散できるので、ロックアームの破損を防止できる。
そして、ロックの解除操作時には、解除レバー部と共にロック係合部が支点周りに回動することによりロック状態が解除される。このとき回動の支点位置はずれることが可能なので抵抗なくロック係合部が回動し、撓んでいるロックアームは無理な負荷を受けることがなく、強度不足の問題は生じない。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコネクタのロック構造によれば、ロックアームを短くした際にも可撓性を維持することができ、コネクタの小型化に合わせて小さくすることができるコネクタのロック構造を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタのロック構造におけるロック部の全体斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る第2のコネクタハウジングを示す一部破断斜視図である。
【図3】図2に示した第2のコネクタハウジングのロック部を示す部分断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る第1及び第2のコネクタハウジングの作動状態を示し、(a)は係止部にロック部が係止していない状態を示す部分断面図、(b)は係止部にロック部が係止している状態を示す部分断面図である。
【図5】従来のロック部の全体斜視図である。
【図6】従来の雌側コネクタハウジングのロック部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係るコネクタのロック構造を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る雌側コネクタハウジング(第2のコネクタハウジング)1のロック部5は、その両側壁が嵌合方向(図1の長手方向)に延びる半矢じり形状に形成され、この側壁が解除レバー部7を構成している。解除レバー部7の一側端である前端部(図1の手前側端部)には、幅方向に全幅に亘って延びる前縁部11が形成されている。
この前縁部11から2本の板状のロックアーム9が後方に向かってほぼ水平に延びて形成されている。そして、図2に示すように、両ロックアーム9の後端側(図1の奥側)は、下方に曲がって雌側コネクタハウジング1の水平壁部(壁部)1aにつながって固定される基端部9aを構成している。
【0014】
幅方向に間隔を置いて配置された2本のロックアーム9の中間部の前縁部11における雌側コネクタハウジング1に対向する面(図3中、下面)には、雄側コネクタハウジング(第1のコネクタハウジング)3(図4参照)の係止部13を係止するロック係合部20が突設されている。
【0015】
ロックアーム9は、ロック係合部20近傍の横断面の厚さH2が基端部9aの横断面の厚さH1より小さくなり、基端部9aからロック係合部20に向かって横断面の厚さが次第に減少するように形成されている。
ロックアーム9の基端部9aからのロック係合部20のオーバハング量はfとなる(図3参照)。なお、図3において符号15はシール部材である。
【0016】
一方、解除レバー部7の下端部は、ロックアーム9の後端側の基端部9aとコネクタ嵌合方向における略同位置にあり、後述するロック解除操作時に解除レバー部7の回動の支点となる支持部7aを構成している。雌側コネクタハウジング1単体の状態では、この支持部7aは雌側コネクタハウジング1の水平壁部1aとの間にすきまdを有している(図3参照)。
【0017】
また、解除レバー部7の支持部7aよりも後方に全幅に亘って展開している平面部が、ロック解除操作用の指掛け部17を構成している。支持部7aから指掛け部17の後端までの距離をgとし、支持部7aから掛け金までの距離をhとする。
【0018】
つぎに両コネクタハウジング1,3の嵌合時および離脱時(ロック解除時)のロック部5の作用を図4(a),(b)により説明する。
図4(a)は、雌側コネクタハウジング1に雄側コネクタハウジング3を嵌合し、係止する直前の状態を示す。両コネクタハウジング1,3の嵌合が進んで雄側コネクタハウジング3の係止部13がロックアーム9のロック係合部20に接触すると、係止部13はロック係合部20を押し上げる。このとき、ロックアーム9は、後方の基端部9a周りの上方への曲げモーメントを受ける。押し上げ力の作用半径はfである。
【0019】
本実施形態に係るロックアーム9は、横断面の厚さが基端部9aからロック係合部20に向かって次第に減少するように形成されている。そこで、アーム全長が短くなった際でも、ロックアーム9は先端側を湾曲して撓ませることができ、ロック係合部20が押し上げられたときのロックアーム9の基端部9a近傍(以下単に基端部9aという)における撓み角を小さくできる。従って、基端部9aに加わる応力を分散してロックアーム9の破損を防止できる。
【0020】
上記ロックアーム9の撓み変形に伴い、前縁部11(ロック係合部20)につながっている解除レバー部7の支持部7aは下方へ下がり、雌側コネクタハウジング1の水平壁部1aに当接し、すきまdはゼロとなる。そして、係止部13がロック係合部20を通過すると、ロック係合部20が押し上げられて撓んでいたロックアーム9が元の姿勢に戻り、雄側コネクタハウジング3はロックされる。ロック状態では支持部7aのすきまdは復元する。ロック状態に至る間に解除レバー部7の姿勢は変化するが、姿勢の変化は他部材からの抵抗を受けずにフリーに行われる。
【0021】
図4(b)は、ロックされている両コネクタハウジング1,3のロックを解除するときの状態を示す。ロックを解除するには、解除レバー部7の後端の指掛け部17を下方へ押し下げる。この押し下げ操作により、解除レバー部7の支持部7aが下げられ雌側コネクタハウジング1の水平壁部1aに当接する。そして、当接後、指掛け部17をさらに下方へ押し下げる操作を行った場合でも、ロック係合部20に作用する持ち上げモーメントは、てこ作用により支持部7a周りの指掛け部17の押し下げモーメントに等しい。支持部7a周りのロック係合部20の半径hが、押し下げ操作側半径gよりも大きく設定されているので、ロック係合部20の持ち上げ力は指掛け部17の押し下げ力よりも小さく、ロックアーム9の強度が不足する恐れはない。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、前記従来例と異なり、雄雌コネクタハウジング3,1のロック作用をてこ作用を利用して解除を行う解除レバー部7がロックアーム9のロック係合部20につながって設けられると共に、ロックアーム9の横断面の厚さが基端部9aからロック係合部20に向かって次第に減少するように形成されているので、アーム全長が短くなった際でもロックアーム9は先端側を湾曲して撓ませることができ、基端部9aに加わる応力を分散できるので、ロックアーム9の破損を防止できる。
【0023】
なお、上記実施形態のロック部5においては、前縁部11から後方に向かって延びるロックアーム9の先端側上部にR部22が形成されているので、ロックアーム9の先端側の横断面の厚さがロック係合部20近傍の横断面の厚さH2よりも大きくなっている。しかしながら、上述したようにロックアーム9は、基端部9aからロック係合部20近傍までは横断面の厚さが次第に減少しており、ロックアーム9は先端側を湾曲して十分に撓むことができる。
勿論、ロックアーム9の先端側の形状を適宜変更し、ロックアーム9の横断面の厚さが基端部9aからロック係合部20まで次第に減少するように構成することもできる。
【0024】
なお、本発明のコネクタのロック構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0025】
1 雌側コネクタハウジング(第2のコネクタハウジング)
1a 水平壁部(壁部)
3 雄側コネクタハウジング(第1のコネクタハウジング)
5 ロック部
7 解除レバー部
7a 支持部(支点)
9 ロックアーム
9a 基端部
11 前縁部
13 係止部
17 指掛け部(解除操作部)
20 ロック係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合される第1のコネクタハウジングと第2のコネクタハウジングとが、前記第1のコネクタハウジングに設けられた係止部を前記第2のコネクタハウジングに設けられたロック係合部に係止させ、解除可能にロックされるコネクタのロック構造であって、
前記第2のコネクタハウジングは、該第2のコネクタハウジングの壁部に基端部を固定されてコネクタ嵌合方向に延びる可撓性のロックアームの先端に前記ロック係合部と、前記ロック係合部に一側端を接続されて前記ロックアームに沿って延びる解除レバー部と、を有し、
前記解除レバー部が、ロック解除操作時に動き得る支点の周りに前記ロック係合部と共に回動し、
前記ロックアームの横断面の厚さが、前記基端部から前記ロック係合部に向かって次第に減少することを特徴とするコネクタのロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58358(P2013−58358A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195370(P2011−195370)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】