説明

コネクタの支持構造

【課題】隔壁の内外の配線にそれぞれ接続される対のコネクタ同士の接続及び支持を、容易に行なえるようにする。
【解決手段】キャブの後側壁面5aに貫通孔5bを開設し、該貫通孔5bをコネクタ支持部材20で塞ぐと共に、該コネクタ支持部材20に、内側コネクタ18が挿入支持される支持孔20dと、内側コネクタ18の支持孔20dへの挿入をガイドするガイド部20eと、支持孔20dに挿入された内側コネクタ18の移動を規制するストッパ20iとを設け、内側コネクタ18を支持孔20dに位置決め状に支持せしめた状態で、該内側コネクタ18に外側コネクタ19を接続する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線同士を接続するためのコネクタの支持構造の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、隔壁の内外に配設される電気機器類同士を電気的に接続する場合、例えば、油圧ショベル等の建設機械において、キャブの室内に配設される電気機器類とキャブの室外に配設される電気機器類とを電気的に接続する場合には、キャブの室内外を連通する配線が必要になるが、このような場合に、上記配線作業を容易且つ効率良く行なえるようにすることが要求される。そこで従来、キャブ室内に配設の電気機器類とキャブ室外(機械室)に配設の電気機器類とを接続する配線を、キャブの室内外の境界部近傍で内側配線と外側配線とに分断し、該分断した内側配線と外側配線とをコネクタを用いて接続するようにした技術が提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−202313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のものは、キャブの壁面に開設した貫通孔を通して外側配線をキャブ室内に引出し、該キャブ室内で外側配線と内側配線とをコネクタで接続する構成になっている。このため、キャブ室内でコネクタの接続作業を行なわなければならない許りか、接続したコネクタがフリーの状態であると機体振動等により接続が外れてしまう惧れがあるため、コネクタを固定する作業も必要になる。而して、キャブ室内の狭隘なスペースでコネクタの接続作業と固定作業とを行なわなければならず、作業性に劣る。しかも、近年、キャブ室内に配設される電気機器類は複数、多種であって、コネクタも複数必要になるが、コネクタの数が多くなると、上記接続作業及び固定作業の作業性は更に悪くなる。そのうえ、コネクタを支持するためのブラケットも必要であり、該ブラケットの配置スペースをキャブ室内に確保する必要も生じる。さらに、前記従来のものでは、外側配線をキャブ室内に引出すにあたり、単にキャブ壁面の貫通孔に外側配線を貫通させただけの構成であるため、貫通孔と外側配線との間に隙間が生じて、該隙間によりキャブ室内の気密性や水密性、防塵性が損なわれて騒音や雨水、塵介の侵入等の問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、隔壁の内外に配される内側、外側の配線にそれぞれ接続される対のコネクタ同士を接続するにあたり、前記隔壁に貫通孔を開設し、該貫通孔をコネクタ支持部材で塞ぐと共に、該コネクタ支持部材に、前記対のコネクタのうち片方のコネクタがコネクタ支持部材の内外を貫通する状態で挿入支持される支持孔と、該支持孔の内周部に形成されて片方のコネクタの支持孔への挿入をガイドするガイド部と、片方のコネクタが支持孔の所定位置まで挿入されたときに該片方のコネクタに形成の係止部に係止して片方のコネクタの移動を規制する係止受部とを設け、該係止部と係止受部との係止により片方のコネクタをコネクタ支持部材の支持孔に位置決め状に支持せしめた状態で、該片方のコネクタに他方のコネクタを接続する構成にしたことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項2の発明は、請求項1において、片方のコネクタに、コネクタ支持部材のガイド部にスライド移動自在に係合するスライド部を形成し、片方のコネクタの支持孔への挿入時に該スライド部がガイド部にスライド移動自在にガイドされる構成にしたことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項3の発明は、請求項2において、係止受部をコネクタ支持部材のガイド部に形成する一方、該係止受部に係止する係止部を、片方のコネクタのスライド部に形成したことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項4の発明は、請求項3において、コネクタ支持部材のガイド部に形成される係止受部を第一の係止受部とし、片方のコネクタのスライド部に形成される係止部を第一の係止部とする一方、コネクタ支持部材の支持孔の内周部に、ガイド部から周回り方向に離間させて突起部を形成し、該突起部を第二の係止受部にすると共に、該第二の係止受部に係止する第二の係止部として、前記突起部に係止する係止孔が開設された係止片を片方のコネクタに設けたことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項5の発明は、請求項4において、片方のコネクタに、係止片の周回り方向両側において係止片よりも外径方向に突出して係止片をガードするガード部を設けたことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか一項において、片方のコネクタは、コネクタ支持部材の支持孔に位置決め状に支持された状態で該支持孔の挿入方向基端側の孔縁部に対向するフランジ部を備えると共に、該フランジ部に支持孔の孔縁部との間をシールするシール材を装着したことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか一項において、コネクタ支持部材は、該コネクタ支持部材の外周縁部が貫通孔の孔縁部に突当てられた状態で隔壁に取付けられると共に、前記コネクタ支持部材の外周縁部に隔壁との間をシールするシール材を装着したことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか一項において、コネクタ支持部材の支持孔にコネクタが支持されていない場合に、該支持孔をキャップで塞ぐ構成にすると共に、該キャップは、支持孔を塞ぐ蓋面部と、支持孔に挿入支持される脚片部とを備え、蓋面部の外周縁部が支持孔の孔縁部に対向する状態で支持孔に取付けられると共に、該蓋面部の外周縁部に支持孔の孔縁部との間をシールするシール材を装着したことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項9の発明は、請求項4を引用する請求項8において、キャップの脚片部に、コネクタ支持部材の支持孔の内周部に第二の係止受部として形成された突起部に係止する係止孔を開設し、該脚片部の係止孔が突起部に係止することでキャップが支持孔に位置決め状に支持される構成にしたことを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項10の発明は、請求項1乃至9の何れか一項において、コネクタ支持部材は、複数対のコネクタを個別に支持するべく複数の支持孔を備えることを特徴とするコネクタの支持構造である。
請求項11の発明は、請求項1乃至10の何れか一項において、隔壁は、建設機械のキャブの外殻を形成する壁面であることを特徴とするコネクタの支持構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、隔壁の内外の配線に接続される対のコネクタ同士を接続する場合に、コネクタ支持部材の支持孔に位置決め状に支持せしめた片方のコネクタに他方のコネクタを接続することで、対のコネクタの接続と支持とを容易且つ効率よく行なえることになって、作業性が大幅に向上する。しかも、片方のコネクタは、コネクタ支持部材に形成されたガイド部によって、係止部が係止受部に係止する所定位置まで支持孔に確実且つ容易に挿入されることになる。さらに、隔壁の貫通孔はコネクタ支持部材によって塞がれ、また、コネクタ支持部材の支持孔は片方のコネクタによって塞がれることになるから、隔壁の内外の気密性や水密性、防塵性を確保できる。
請求項2の発明とすることにより、片方のコネクタの支持孔への挿入を、容易且つ円滑に行うことができる。
請求項3の発明とすることにより、片方をコネクタを支持孔に挿入することに伴い、係止部を確実に係止受部に係止させることができる。
請求項4の発明とすることにより、片方のコネクタを支持孔の所定位置に強固に支持せしめることができることになって、大きな振動があったり配線作業中等にコネクタが引っ張られるようなことがあったとしても、片方のコネクタが支持孔から外れてしまうような不具合を確実に防止することができる。
請求項5の発明とすることにより、片方のコネクタの運搬時や支持孔への挿入時等に係止片が他の部品に接触して破損したりしてしまうことを、確実に防止することができる。
請求項6の発明とすることにより、片方のコネクタとコネクタ支持部材との間の気密性、水密性、防塵性を確実に確保することができる。
請求項7の発明とすることにより、コネクタ支持部材と隔壁との間の気密性、水密性、防塵性を確実に確保することができる。
請求項8の発明とすることにより、コネクタ支持部材の支持孔にコネクタが支持されていない場合には、該支持孔をキャップで塞ぐことで、隔壁の内外の気密性や水密性、防塵性を確保することができる。
請求項9の発明とすることにより、第二の係止受部として形成された突起部をそのまま利用して、キャップを支持孔に位置決め状に支持できることになって、別途キャップ専用の突起部を設ける必要がなく、構造の簡略化が図れる。
請求項10の発明とすることにより、複数対のコネクタを近接して配置する場合にも対応できると共に、これら複数対のコネクタの接続及び支持を効率よく行うことができる。
請求項11の発明とすることにより、キャブの室内外の配設同士の接続を容易且つ効率よく行うことができると共に、キャブ室内の気密性、水密性、防塵性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】(A)、(B)はコネクタ支持部材の取付状態を示す側面図、背面図である。
【図3】(A)、(B)はコネクタ支持部材の正面図、斜視図である。
【図4】(A)、(B)はコネクタ支持部材の一部切欠き側面図、背面図である。
【図5】(A)、(B)はコネクタ支持部材のガイド部の平面図、斜視図、(C)は(A)のX−X断面図である。
【図6】(A)、(B)、(C)、(D)は第一の実施の形態の内側コネクタの正面図、側面図、背面図、底面図である。
【図7】(A)は第一の実施の形態の内側コネクタをコネクタ支持部材に取付けた状態を示す一部切欠き側面図、(B)は(A)の切欠き部の拡大図である。
【図8】(A)、(B)は図7(A)のX矢視図、Y矢視図である。
【図9】(A)は治具を示す図、(B)、(C)は治具を用いて内側コネクタを取外す過程を示す図である。
【図10】(A)、(B)、(C)、(D)、(E)は第二の実施の形態の内側コネクタの正面図、側面図、背面図、底面図、斜視図である。
【図11】(A)は第二の実施の形態の内側コネクタをコネクタ支持部材に取付けた状態を示す一部切欠き背面図、(B)は第二の実施の形態における係止孔と突起部との係止状態を示す図である。
【図12】(A)はキャップの背面図、(B)は(A)のX−X断面図、(C)はキャップの斜視図である。
【図13】(A)はキャップをコネクタ支持部材に取付けた状態を示す一部切欠き背面図、(B)はキャップの係止孔と突起部との係止を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第一の実施の形態について、図1〜図9に基づいて説明する。これらの図面において、1は建設機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2の上部に上部旋回体3が旋回自在に支持されており、該上部旋回体3のフロント部に、ブーム4a、アーム4b、バケット4c等から構成されるフロント作業機4が装着されている。
【0009】
さらに、前記上部旋回体3には、運転室であるキャブ5、該キャブ5の後方に配される機械室6、該機械室6の後方に配されるカウンタウエイト7、図示しない燃料タンクや作動油タンク等が配設されている。前記キャブ5の室内には、オペレータが着座するシート8や、旋回やフロント作業機4による作業を行なうための操作レバー9等が配設されると共に、スタータスイッチ等の操作スイッチ10、データや映像が表示されるモニタパネル11、ヒューズボックス12等の各種電気機器類が配設されている。また、前記機械室6には、エンジン13や、図示しない油圧ポンプ、ラジエータ等が配設されると共に、エンジン始動用のスタータモータ14、バッテリ15等の各種電気機器類が配設されている。
【0010】
そして、前記キャブ5の室内に配設される電気機器類と、キャブ5の室外である機械室6に配設される電気機器類とは、対応する電気機器同士が配線(電力線や信号線)を介して電気的に接続されることになるが、この場合に、上記配線は、キャブ5の室内に配設の電気機器類に接続される内側配線16と、機械室6に配設の電気機器類に接続される外側配線17とに分断されると共に、内側配線(複数の内側配線を束ねたハーネスを含む)16の先端には内側コネクタ18が接続される一方、外側配線(複数の外側配線を束ねたハーネスを含む)17の先端には外側コネクタ19が接続されており、そしてこれら対となる内側、外側のコネクタ18、19同士を接続することによって、キャブ5の室内外に配される電気機器同士の接続がなされるように構成されている。尚、本実施の形態では、複数の内側配線16と外側配線17とを接続するべく複数対のコネクタ18、19が設けられていると共に、これら複数対のコネクタ18、19のなかには、一極コネクタ及び多極コネクタが含まれている。また、内側コネクタ18としてはメスコネクタが用いられ、外側コネクタ19としてはオスコネクタが用いられているが、内側コネクタ18は本発明の片方のコネクタに相当し、外側コネクタ19は本発明の他方のコネクタに相当する。
【0011】
一方、キャブ5の後側壁面(本発明の隔壁、及びキャブの外殻を形成する壁面に相当する)5aには、機械室6に隣接する部位に、キャブ5の室内外を貫通する矩形状の貫通孔5bが開設されている。そして、該貫通孔5bは、前記複数対のコネクタ18、19を個別に支持するコネクタ支持部材20によって塞がれるように構成されている。
【0012】
つまり、前記コネクタ支持部材20は、樹脂製のパネル状のものであって、前記貫通孔5bを塞ぐことができる大きさの矩形状の閉塞面部20aを備えていると共に、該閉塞面部20aの外周縁部には、キャブ5の室内側から貫通孔5bの孔縁部に突当たる取付面部20bが形成されている。該取付面部20bには、略全面に亘ってシール材21が装着されていると共に、取付面部20bの四隅部及び上下方向中間部には螺子孔20cが開設されている。そして、前記取付面部20bをキャブ5の室内側から貫通孔5bの孔縁部に突当てた状態で、キャブ5の室外側から後側壁面5aを貫通させた螺子22を螺子孔20cに螺入することによって、コネクタ支持部材20は貫通孔5bを塞ぐ状態で後側壁面5aに取付けられるようになっている。このとき、取付面部20bに装着されたシール材21が貫通孔5bの孔縁部に密着することによって、コネクタ支持部材20と後側壁面5aとの間が気密状、水密状にシールされるようになっている。尚、本実施の形態、及び後述する第二の実施の形態の説明において、室内、室外はキャブ5の室内、室外であり、また、内外方向はキャブ5の室内外方向(後側壁面5aと直交する方向)である。さらに、コネクタ支持部材20を後側壁面5aに取付けた状態での上下左右の方向を、上下左右として説明する。
【0013】
さらに、コネクタ支持部材20には、前記複数対のコネクタ18、19を個別に支持するための複数の支持孔20d(本実施の形態では、六つの支持孔20d)が形成されている。該支持孔20dは、閉塞面部20aを内外方向に貫通するように形成された四角筒状の孔であって、該支持孔20dの下側内周面部20mには、前記内側コネクタ18を内外方向にスライド移動自在にガイドするためのガイド部20eが形成されているが、該ガイド部20eの室内側端部は支持孔20dの内外方向中間部に位置し、また室外側端部は支持孔20dの室外側端部よりも室外側に突出している。尚、支持孔20dは、コネクタ18、19の数に対応して(予備の分も含めて)適宜数形成される。また、支持孔20dの左右の内周面部20nには、突起部20p及びガイド条20qが形成されているが、これら突起部20p及びガイド条20qについては、後述する第二の実施の形態において説明する。
【0014】
前記ガイド部20eは、底面部20fの左右外方に左右の側面部20gが形成された凵形状のものであって、該ガイド部20eに、後述する内側コネクタ18に形成のスライド部18cがスライド移動自在に内嵌される構成になっている。さらに、底面部20fの左右方向中間部には、下方に向けて凹んだ凹溝部20hが底面部20fの内外方向全長(後述するストッパ20iの形成部分を除く)に亘って形成されていて、底面部20fは左右に分割された状態になっていると共に、上記凹溝部20hの室内側端部には、後述するように支持孔20dに挿入された内側コネクタ18の移動を位置決め状に規制するためのストッパ(本発明の係止受部に相当する)20iが、凹溝部20hの溝底よりも上方に突出する状態で形成されている。該ストッパ20iの突出高さは、底面部20fと面一状になるように設定されていると共に、ストッパ20iの室内側面は傾斜状に形成されていて、後述する係止凸部18fが乗り越えやすいようになっている。
【0015】
また、支持孔20dの室内側端部は、閉塞面部20aの室内側面よりもキャブ5の室内側に突出していると共に、該支持孔20dの室内側端部の孔縁部には、後述する内側コネクタ18に形成のフランジ部18hに突当たる突当て部20kが形成されている。
【0016】
一方、前記対の内側、外側のコネクタ18、19は、基端側に内側、外側配線16、17がそれぞれ接続される配線接続部18a、19aが形成され、先端側に互いにオスメス嵌合する嵌合部18b、19bが形成されているが、内側コネクタ18は、嵌合部18bが形成される先端側を挿入方向先端側として、前記コネクタ支持部材20の支持孔20dにキャブ5の室内側から挿入される構成になっていると共に、該内側コネクタ18の外周部には、前記支持孔20dの下側内周面部20mに形成されたガイド部20eにスライド移動自在に係合するスライド部18cが形成されている。而して、内側コネクタ18の支持孔20dへの挿入は、上記スライド部18cがガイド部20eにスライド移動自在にガイドされる状態で行なわれるようになっている。
【0017】
前記スライド部18cは、ガイド部20eの底面部20f及び左右の側面部20gにガイドされる底面18d及び左右の側面18eを備えているが、該スライド部18cの底面18dの左右方向中央部には、内側コネクタ18が所定位置まで挿入されたときに、前述したストッパ20iに係止する係止凸部(本発明の係止部に相当する)18fが下方に向けて突出形成されている。この係止凸部18fは、挿入方向先端側がスライド部18cの底面18dと面一で、挿入方向基端側ほど突出量が大きくなるよう傾斜状に形成されており、これと、前述したようにストッパ20iの室内側面が傾斜状に形成されていることにより、内側コネクタ18の挿入時に係止凸部18fがストッパ20iを乗り越えることができるようになっていると共に、係止凸部18fがストッパ20iを乗り越えた状態では該ストッパ20iに係止凸部18fの挿入方向基端側面が係止することによって、内側コネクタ18の反挿入方向側への移動が規制されるようになっている。そして、前記ストッパ20iを乗り越えた係止凸部18fは、コネクタ支持部材20のガイド部20eに形成の凹溝部20h内に位置するようになっている。
【0018】
さらに、スライド部18cの底面18dの左右方向中央部は、前記係止凸部18fが形成される部位よりも挿入方向先端側部分が、底面18dよりも上方に向けて凹んだ凹溝部18gになっている。該凹溝部18gは、内側コネクタ18が前記所定位置まで挿入された状態で、コネクタ支持部材20のガイド部20eに形成された凹溝部20hと連続するようになっており、これら連続する両方の凹溝部18g、20hによって、コネクタ支持部材20のガイド部20eと内側コネクタ18のスライド部18cとの間に、後述する治具23をキャブ5の室外側から差込むことができる間隙部Sが形成されている。
【0019】
また、内側コネクタ18の基端側には外径方向に突出するフランジ部18hが形成されているが、該フランジ部18hは、内側コネクタ18を所定位置まで挿入したときに前記支持孔20dの室内側端部の突当て部20kに対向するように設計されていると共に、該突当て部20kに対向する部位には、シール材24が装着される嵌合溝18kが形成されている。そして、内側コネクタ18を所定位置まで挿入したときに、フランジ部18hの嵌合溝18kに装着されたシール材24が支持孔20dのキャブ室内側端部の突当て部20kに突当たることによって、これ以上の内側コネクタ18の挿入方向側への移動が規制されると共に、上記シール材24が突当て部20kに密着することによって、支持孔20dと内側コネクタ18との間が気密状、水密状にシールされるようになっている。
【0020】
而して、内側コネクタ18の支持孔20dへの挿入は、内側コネクタ18に形成されたスライド部18cが支持孔20dに形成されたガイド部20eにスライド移動自在にガイドされる状態で行なわれると共に、前述したように、内側コネクタ18が所定位置まで挿入された時点で、スライド部18cに形成された係止凸部18fがガイド部20eに形成されたストッパ20iを乗り越えて該ストッパ20iに係止し、これにより内側コネクタ18の反挿入方向への移動が規制される一方、内側コネクタ18に形成のフランジ部18hに装着されたシール材24が支持孔20dのキャブ室内側端部の突当て部20kに突当たり、これにより内側コネクタ18のこれ以上の挿入方向への移動が規制され、この様にして、内側コネクタ18は支持孔20dに位置決め状に支持されるようになっているが、該支持孔20dに位置決め状に支持された状態で、内側コネクタ18の先端側(嵌合部18b側)は、支持孔20dからキャブ室外側に突出している。
【0021】
そして、前記コネクタ支持部材20の支持孔20dに位置決め状に支持された内側コネクタ18の嵌合部18bに、外側コネクタ19の嵌合部19bをキャブ5の室外側から嵌合せしめることによって、内側、外側のコネクタ18、19同士を接続することができ、これにより、キャブ5の室内側に配設される電気機器類と、キャブ5の室外側である機械室6に配される電気機器類とが電気的に接続されるようになっている。
【0022】
ここで、前記コネクタ支持部材20の支持孔20dに支持された内側コネクタ18は、前述したように、挿入方向及び反挿入方向への移動が規制された状態であるため、該内側コネクタ18をコネクタ支持部材20から取外す場合には、ストッパ20iと係止凸部18fとの係止を、専用の治具23を用いて解除する構成になっている。該治具23は、前述したコネクタ支持部材20のガイド部20eと内側コネクタ18のスライド部18cとの間に形成される間隙部Sに差込むことができる差込み部23aを備えているが、該差込み部23aの先端側半部は、先端側ほど肉薄になるよう上面が下面に対して傾斜状になった楔形状をしている。そして、図9に示すように、差込み部23aを前記間隙部Sにキャブ5の室外側から差込むことにより、該差込み部23aの先端側がコネクタ支持部材20のガイド部20eの凹溝部20hに侵入し、さらに、該凹溝部20hに侵入した差込み部23aの傾斜状の上面が、スライド部18cの底面18dと凹溝部18gの挿入方向基端側面とのコーナー部18iに当接して、内側コネクタ18を上方に押しながら反挿入方向に押す。これにより内側コネクタ18は、係止凸部18fがストッパ20iよりも上方に位置することになって係止が解除されると共に、係止凸部18fがストッパ20iを乗り越える前の位置まで反挿入方向に移動し、この様にして内側コネクタ18をコネクタ支持部材20から取外すことができるようになっている。尚、治具23は、差込み部23aの基端側に把持部23bが設けられているが、該把持部23bの下半部には上半部よりも先端側に突出する突出部23cが形成されている。そして、治具23を上下逆にして用いようとした場合には、上記突出部23cが内側コネクタ18の室外側部に当たることで、差込み部23aを凹溝部20hに侵入させることができないようになっており、これによって、治具23の使い方を間違えてコネクタ支持部材20のストッパ20iや内側コネクタ18の係止凸部18fを傷つけてしまうような不具合を回避できるようになっている。
【0023】
叙述の如く構成された第一の実施の形態において、キャブ5の室内外に配される電気機器類同士を電気的に接続する場合には、室内に配設の電気機器類に接続される内側配線16と、室外に配設の電気機器類に接続される外側配線17とを、各配線16、17にそれぞれ接続される対の内側コネクタ18、外側コネクタ19を用いて接続することになるが、この場合に、キャブ5の後側壁面5aに貫通孔5bを開設し、該貫通孔5bを塞ぐコネクタ支持部材20を後側壁面5aに取付けると共に、該コネクタ支持部材20に、内側コネクタ18がコネクタ支持部材20の内外を貫通する状態で挿入支持される支持孔20dと、該支持孔20dの内周部(下側内周面部20m)に形成されて内側コネクタ18の挿入をガイドするガイド部20eと、内側コネクタ18が支持孔20dの所定位置まで挿入されたときに該内側コネクタ18に形成の係止凸部18fに係止して内側コネクタ18の移動を規制するストッパ20iとを設ける。そして、内側コネクタ18と外側コネクタ19とを接続する場合には、まず、キャブ5の室内側から内側コネクタ18をコネクタ支持部材20の支持孔20dに挿入する。該内側コネクタ18の支持孔20dへの挿入は、前記ガイド部20eにガイドされながら行なわれると共に、所定位置まで挿入されたときに内側コネクタ18に形成の係止凸部18fがコネクタ支持部材20に形成のストッパ20iに係止し、これにより内側コネクタ18は支持孔20dに位置決め状に支持される。この状態で、外側コネクタ19を、キャブ5の室外側から内側コネクタ18に接続することにより、対のコネクタ18、コネクタ19同士が接続されると共に、コネクタ支持部材20に支持されることになる。
【0024】
この様に、本発明が実施されたものにおいては、キャブ5の後側壁面5aの貫通孔5bに取付けられたコネクタ支持部材20の支持孔20dに、内側コネクタ18をキャブ5の室内側から挿通して位置決め状に支持せしめ、該内側コネクタ18にキャブ5の室外側から外側コネクタ19を接続するという簡単な作業で、コネクタ18、19同士を接続できると共に、これらコネクタ18、19をコネクタ支持部材20を介して後側壁面5aに固定できることになり、よって、キャブ5内の狭隘なスペースでコネクタ同士の接続作業や固定作業を行なう必要がなく、作業性が大幅に向上する。しかも、支持孔20dの内周部には、内側コネクタ18の挿入をガイドするためのガイド部20eが形成されているから、位置ズレしたり傾いたりすることなく、内側コネクタ18を支持孔20dの所定位置まで容易且つ確実に挿入することできる。さらに、後側壁面5aの貫通孔5bはコネクタ支持部材20によって塞がれ、また、コネクタ支持部材20の支持孔20dは内側コネクタ18によって塞がれることになるから、キャブ5室内の気密性、水密性、防塵性を確保することができる。
【0025】
さらにこのものにおいて、内側コネクタ18には、コネクタ支持部材20のガイド部20eにスライド移動自在に係合するスライド部18cが形成されており、内側コネクタ18の挿入時には該スライド部18cがガイド部20eにスライド移動自在にガイドされることになる。これにより、内側コネクタ18を支持孔20dに容易且つ円滑に挿入することができる。
【0026】
また、内側コネクタ18は、支持孔20dに所定位置まで挿入されたときに係止凸部18fがストッパ20iに係止することで支持孔20dに位置決め状に支持されるが、この場合に、ストッパ20iはコネクタ支持部材20のガイド部20eに形成される一方、係止凸部18fは内側コネクタ18のスライド部18cに形成されている。これにより、内側コネクタ18を支持孔20dに挿入することに伴い、係止凸部18fを確実にストッパ20iに係止させることができる。
【0027】
一方、内側コネクタ18をコネクタ支持部材20から取外す場合には、専用の治具23を用いてコネクタ支持部材20のストッパ20iと内側コネクタ18の係止凸部18fとの係止を解除することになるが、該該治具23は、コネクタ支持部材20のガイド部20eと内側コネクタ18のスライド部18cとの間に形成される間隙部Sに差し込まれて内側コネクタ18を係止解除側に向けて押す楔形状の差込み部23aを備えており、而して、該治具23によって、ストッパ20iや係止凸部18fを破損したりすることなく、容易且つ素早く内側コネクタ18をコネクタ支持部材20から取外すことができる。
【0028】
さらに、内側コネクタ18は、コネクタ支持部材20の支持孔20dに位置決め状に支持された状態で、該支持孔20dの室内側端部の孔縁部(挿入方向基端側の孔縁部)に形成された突当て部20kに対向するフランジ部18hを備えると共に、該フランジ部18hには、支持孔20dの孔縁部との間をシールするシール材24が装着されている。これにより、内側コネクタ18とコネクタ支持部材20との間の気密性、水密性、防塵性を確実に確保することができる。
【0029】
また、コネクタ支持部材20は、該コネクタ支持部材20の外周縁部に形成された取付面部20bが貫通孔5bの孔縁部に突当てられた状態で後側壁面5aに取付けられると共に、上記取付面部20bには、後側壁面5aとの間をシールするシール材21が装着されている。これにより、コネクタ支持部材20と後側壁面5aとの間の気密性、水密性、防塵性を確実に確保することができる。
【0030】
さらに、コネクタ支持部材20には複数の支持孔20dが形成されていて、これらの支持孔20dに複数対のコネクタ18、19を個別に支持できるように構成されている。これにより、複数対のコネクタ18、19を近接して配置する場合にも対応できると共に、これら複数対のコネクタ18、19の接続を効率よく行うことができる。
【0031】
次いで、本発明の第二の実施の形態について、図10〜図13に基づいて説明する。尚、第二の実施の形態では、内側コネクタ18Aの構造の一部が第一の実施の形態と異なるが、コネクタ支持部材20及び外側コネクタ19は前記第一の実施の形態と同一のものであるため、図面及び説明を省略する。さらに、内側コネクタ18Aについても、第一の実施の形態の内側コネクタ18と同一の部分については、同一の符号を附すと共にその説明を省略する。尚、第二の実施の形態においても、内側コネクタ18Aは本発明の片方のコネクタに相当し、外側コネクタ19は本発明の他方のコネクタに相当する。
【0032】
扨、第二の実施の形態の内側コネクタ18Aは、第一の実施の形態の内側コネクタ18と同様に、コネクタ支持部材20のガイド部20eにスライド移動自在に係合するスライド部18cが形成されていると共に、該スライド部18cには、内側コネクタ18Aが所定位置まで挿入されたときに、コネクタ支持部材20のストッパ20iに係止して内側コネクタ18Aの移動を規制する係止凸部18fが形成されており、そして、該係止凸部18fがストッパ20iに係止することによって内側コネクタ18Aは支持孔20dに位置決め状に支持されるようになっているが、さらに第二の実施の形態では、内側コネクタ18Aがより強固に支持孔20dに位置決め状に支持されるように、前記ストッパ20iを第一の係止受部とし、係止凸部18fを第一の係止部とする一方、後述する第二の係止受部及び第二の係止部が設けられている。
【0033】
つまり、第二の実施の形態の内側コネクタ18Aの挿入方向基端側には、第一の実施の形態の内側コネクタ18と同様に、外径方向に突出するフランジ部18hが形成されると共に、該フランジ部18hにはシール材24が装着される嵌合溝18kが形成されているが、さらに第二の実施の形態の内側コネクタ18Aのフランジ部18hには、嵌合溝18kよりも内周側の部位から内側コネクタ18Aの挿入方向先端側方向に向けて突出する左右の係止片18mが形成されている。該係止片18mは、内側コネクタ18Aが支持孔20dに挿入された状態で、支持孔20dの左右の内周面部20nに対して少しの間隙を存して対向するように設計されていると共に、該係止片18mには、後述するように内側コネクタ18Aが支持孔20dの所定位置まで挿入されたときにコネクタ支持部材20に形成の突起部20pに係止する係止孔18nが形成されている。尚、前記突起部20pは第二の係止受部に相当し、係止片18mに開設の係止孔18nは第二の係止部に相当する。
【0034】
さらに、前記フランジ部18hには、前記左右の係止片18mの周回り方向両側に、係止片18mよりも外径方向に突出するガード片18p(本発明のガード部に相当する)が形成されているが、該ガード片18pは、内側コネクタ18Aが支持孔20dに挿入された状態で、支持孔20dの四箇所のコーナー部分に殆ど間隙のない状態で内嵌されるように設計されている。そして、該ガード片18pは、係止片18mの周回り方向両側において係止片18mよりも外径方向に突出していることによって、他の部品と接触しないように係止片18mをガードし、これにより、内側コネクタ18Aの運搬時や支持孔20dへの挿入時等に係止片18mが他の部品に接触して破損したりしてしまうことを防止できるようになっている。尚、前記ガード片18pは係止片18mに対して周回り方向に若干の間隙を存する状態で設けられており、該ガード片18pと係止片18mとの間隙には、後述するガイド条20qが嵌入するようになっている。
【0035】
一方、コネクタ支持部材20の支持孔20dの左右の内周面部20nには、内側コネクタ18Aが支持孔20dに所定位置まで挿入されたときに、前記左右の係止片18mの係止孔18nに係止する左右の突起部20pが突設されている。該突起部20pは、内側コネクタ18Aの挿入方向先端側ほど突出量が大きくなるように傾斜状に形成されており、これにより、内側コネクタ18Aの挿入時に係止片18mの係止孔18nよりも挿入方向先端側が突起部20pを乗り越えることができるようになっていると共に、突起部20pが係止孔18nに嵌合した状態では、該突起部20pの挿入方向先端側面が係止孔18nの孔縁部に係止することによって、内側コネクタ18Aの反挿入方向への移動が規制されるようになっている。
【0036】
さらに、コネクタ支持部材20の支持孔20dの左右の内周面部20nには、前記突起部20pの上下両側にガイド条20qが形成されている。該ガイド条20qは、内側コネクタ18Aの挿入時に、前記係止片18mとガイド片18pとの間の間隙に嵌入するようになっており、これにより係止片18mは、ガイド条20qによって上下両側がガイドされる状態で、突起部20pに係止する位置までスムーズに導かれるようになっている。
【0037】
そして、前記突起部20pと係止孔18nとの係止は、前述したストッパ20iと係止凸部18fとの係止と同時的に、つまり、両方の係止とも、内側コネクタ18Aが支持孔20dの所定位置まで挿入されたときに行なわれるようになっている。つまり、内側コネクタ18Aは、所定位置まで挿入された状態では、係止凸部18fがストッパ20iに係止すると共に、左右の係止片18mの係止孔18nが突起部20pに係止することになるが、この場合に、左右の突起部20pは、ストッパ20iが形成されるガイド部20eとは周回り方向に離間して設けられており(ガイド部20eは支持孔20dの下側内周面部20mに形成される一方、左右の突起部20pは支持孔20dの左右の内周面部20nに形成されている)、これにより、内側コネクタ18Aは周回り方向に離間する三箇所で支持孔20dに位置決め状に係止されるようになっている。
【0038】
而して、叙述の如く構成された第二の実施の形態においても、コネクタ支持部材20の支持孔20dにキャブ5の室内側から内側コネクタ18Aを挿通して位置決め状に支持せしめ、該内側コネクタ18Aにキャブ5の室外側から外側コネクタ19を接続することで、対のコネクタ18A、コネクタ19同士が接続されると共に、これらコネクタ18A、19をコネクタ支持部材20を介して後側壁面5aに固定できることになり、よって、第一の実施の形態と同様の作用効果を奏するが、さらに第二の実施の形態では、内側コネクタ18Aを支持孔20dに位置決め状に支持せしめるにあたり、コネクタ支持部材20のガイド部20eに形成されるストッパ20iを第一の係止受部とし、内側コネクタ18Aのスライド部18cに形成されて上記ストッパ20iに係止する係止凸部18fを第一の係止部とする一方、コネクタ支持部材20の内周部に、第二の係止受部として、ガイド部20eから周回り方向に離間させて左右の突起部20pを形成すると共に、内側コネクタ18Aには、第二の係止部として、上記左右の突起部20pに係止する係止孔18nが開設された左右の係止片18mが設けられている。これにより、内側コネクタ18Aは、支持孔20dに所定位置まで挿入されたときに、第一係止部である係止凸部18fが第一係止受部であるストッパ20iに係止するだけでなく、第二係止部である左右の係止片18mに開設の係止孔18nが第二係止受部である突起部20pに係止すると共に、該突起部20pは、ストッパ20iが形成されるガイド部20eから周回り方向に離間して形成されているから、内側コネクタ18Aは、周回り方向に離間する三箇所で支持孔20dに位置決め状に係止されることになり、よって、内側コネクタ18Aを支持孔20dの所定位置に強固に支持せしめることができて、大きな機体振動があったり配線作業中等にコネクタ18A、19が引っ張られるようなことがあったとしても、内側コネクタ18Aが支持孔20dから外れてしまうような不具合を、確実に防止することができる。
【0039】
しかも、前記左右の係止片18mは、該係止片18mの周回り方向両側において係止片18mよりも外径方向に突出するガード片18pによってガードされる構成であるから、内側コネクタ18Aの運搬時や支持孔20dへの挿入時等に係止片18mが他の部品に接触して破損したりしてしまうことを、確実に防止することができる。
【0040】
ところで、前記コネクタ支持部材20には複数の支持孔20dが形成されていて、複数のコネクタ18A、19を支持できるようになっているが、これら支持孔20dのうち使用されていない、つまりコネクタ18A、19が支持されていない支持孔20dがある場合には、該支持孔20dをキャップ25で塞ぐことで、キャブ5の室内外の気密性や水密性、防塵性を確保できるように構成されている。
【0041】
前記キャップ25は、支持孔20dを塞ぐ蓋面部25aと、支持孔20dに挿入支持される左右の脚片部25bとを備えている。左右の脚片部25bには、該脚片部25bをキャブ5の室内側から支持孔20dに挿入したときに、前記コネクタ支持部材20の左右の内周面部20nに形成の突起部20pに係止する係止孔25cが開設されており、そして、該脚片部25bの係止孔25cが突起部20pに係止することで、支持孔20dに位置決め状に支持されるようになっていると共に、脚片部25bの支持孔20dへの挿入は、前記突起部20pの上下両側に形成されたガイド条20qによってガイドされるように構成されている。さらに、脚片部25bの係止孔25cが突起部20pに係止した状態で、蓋面部25aが支持孔20dを塞ぐと共に、該蓋面部25aの外周縁部が支持孔20dの室内側端部の突当て部20kに対向するように設計されているが、該突当て部20kに対向する部位にはシール材26が装着される嵌合溝25dが形成されており、該嵌合溝25dに装着されたシール材26が突当て部20kに密着することによって、支持孔20dと蓋面部25aとの間が気密状、水密状にシールされるようになっている。
【0042】
而して、使用されていない支持孔20dがある場合には、該支持孔20dをキャップ25で塞ぐことで、キャブ5の室内外の気密性や水密性、防塵性を確保できることになるが、上記キャップ5は、前述したように、脚片部25bに開設された係止孔25cがコネクタ支持部材20に形成の突起部20pに係止することで、支持孔20dに位置決め状に支持されることになる。つまり、前述した第二の実施の形態の内側コネクタ18Aを支持孔20dに位置決め状に支持するために第二の係止受部として形成された突起部20pをそのまま利用して、キャップ25を支持孔20dに位置決め状に支持できることになって、別途キャップ専用の突起部を設ける必要がなく、構造の簡略化が図れる。さらに、脚片部25bの支持孔20dへの挿入をガイドするガイド条20qについても、内側コネクタ18Aの係止片18mの挿入をガイドするために用いられるガイド条20qをそのまま利用できることになって、さらなる構造の簡略化が図れる。
尚、第一の実施の形態においても、使用されていない支持孔20dがある場合には、該支持孔20dを前記キャップ25で塞ぐことで、キャブ5の室内外の気密性や水密性、防塵性を確保できることは勿論であるが、第一の実施の形態においては、コネクタ支持部材20の左右の内周面部20nに形成される突起部20p及びガイド条20qは、キャップ専用のものとして用いられることになる。
【0043】
また、本発明は上記第一、第二の実施の形態に限定されないことは勿論であって、上記第一、第二の実施の形態のように建設機械のキャブの室内外に配設される配線同士を接続する場合だけでなく、本発明は、種々のスペースを区画する隔壁の内外に配設される配線同士を接続する場合に実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、隔壁の内外に配される配線同士をコネクタを用いて接続する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
5a キャブの後側壁面
5b 貫通孔
16 内側配線
17 外側配線
18 内側コネクタ
18A 内側コネクタ
18c スライド部
18f 係止凸部
18h フランジ部
18m 係止片
18n 係止片の係止孔
18p ガード片
19 外側コネクタ
20 コネクタ支持部材
20d 支持孔
20e ガイド部
20i ストッパ
20p 突起部
21 シール材
24 シール材
25 キャップ
25a 蓋面部
25b 脚片部
25c 脚片部の係止孔
26 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁の内外に配される内側、外側の配線にそれぞれ接続される対のコネクタ同士を接続するにあたり、前記隔壁に貫通孔を開設し、該貫通孔をコネクタ支持部材で塞ぐと共に、該コネクタ支持部材に、前記対のコネクタのうち片方のコネクタがコネクタ支持部材の内外を貫通する状態で挿入支持される支持孔と、該支持孔の内周部に形成されて片方のコネクタの支持孔への挿入をガイドするガイド部と、片方のコネクタが支持孔の所定位置まで挿入されたときに該片方のコネクタに形成の係止部に係止して片方のコネクタの移動を規制する係止受部とを設け、該係止部と係止受部との係止により片方のコネクタをコネクタ支持部材の支持孔に位置決め状に支持せしめた状態で、該片方のコネクタに他方のコネクタを接続する構成にしたことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項2】
請求項1において、片方のコネクタに、コネクタ支持部材のガイド部にスライド移動自在に係合するスライド部を形成し、片方のコネクタの支持孔への挿入時に該スライド部がガイド部にスライド移動自在にガイドされる構成にしたことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項3】
請求項2において、係止受部をコネクタ支持部材のガイド部に形成する一方、該係止受部に係止する係止部を、片方のコネクタのスライド部に形成したことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項4】
請求項3において、コネクタ支持部材のガイド部に形成される係止受部を第一の係止受部とし、片方のコネクタのスライド部に形成される係止部を第一の係止部とする一方、コネクタ支持部材の支持孔の内周部に、ガイド部から周回り方向に離間させて突起部を形成し、該突起部を第二の係止受部にすると共に、該第二の係止受部に係止する第二の係止部として、前記突起部に係止する係止孔が開設された係止片を片方のコネクタに設けたことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項5】
請求項4において、片方のコネクタに、係止片の周回り方向両側において係止片よりも外径方向に突出して係止片をガードするガード部を設けたことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項において、片方のコネクタは、コネクタ支持部材の支持孔に位置決め状に支持された状態で該支持孔の挿入方向基端側の孔縁部に対向するフランジ部を備えると共に、該フランジ部に支持孔の孔縁部との間をシールするシール材を装着したことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項において、コネクタ支持部材は、該コネクタ支持部材の外周縁部が貫通孔の孔縁部に突当てられた状態で隔壁に取付けられると共に、前記コネクタ支持部材の外周縁部に隔壁との間をシールするシール材を装着したことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項において、コネクタ支持部材の支持孔にコネクタが支持されていない場合に、該支持孔をキャップで塞ぐ構成にすると共に、該キャップは、支持孔を塞ぐ蓋面部と、支持孔に挿入支持される脚片部とを備え、蓋面部の外周縁部が支持孔の孔縁部に対向する状態で支持孔に取付けられると共に、該蓋面部の外周縁部に支持孔の孔縁部との間をシールするシール材を装着したことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項9】
請求項4を引用する請求項8において、キャップの脚片部に、コネクタ支持部材の支持孔の内周部に第二の係止受部として形成された突起部に係止する係止孔を開設し、該脚片部の係止孔が突起部に係止することでキャップが支持孔に位置決め状に支持される構成にしたことを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項において、コネクタ支持部材は、複数対のコネクタを個別に支持するべく複数の支持孔を備えることを特徴とするコネクタの支持構造。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項において、隔壁は、建設機械のキャブの外殻を形成する壁面であることを特徴とするコネクタの支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−119215(P2012−119215A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269145(P2010−269145)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】