説明

コネクタキャップ、対照システム

【課題】本発明は、作業者の危険を回避しながら、多数の未接続のコネクタ付き光ファイバから1つの光ファイバを取り出す作業の効率化を図るための、コネクタキャップと対照システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のコネクタキャップは、光ファイバ用コネクタのフェルールを覆うためのコネクタキャップであり、フェルールを汚れと傷から保護する機能と、フェルールの端面からあらかじめ定めた波長帯域の可視光線が放出された場合には、その可視光線を外部に拡散させる機能とを備える。また、可視光線をあらかじめ定めた範囲で減衰させる機能を持たせてもよい。本発明の対照システムは、未接続のコネクタに取り付けられたコネクタキャップと、光ファイバのコネクタキャップが取り付けられていない側から可視光線を挿入するための可視光源から構成される。可視光源の出力は、あらかじめ定められた範囲の出力である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用コネクタのフェルールを覆うためのコネクタキャップと、未使用のコネクタが取り付けられた複数の光ファイバの中から1つを特定するための対照システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバのジャンパリングを行う装置には、FTM(Fiber Termination Module)やIDM(Integrated Distribution Module)などのように電話局の中に設置されるもの、キャビネットなどのようにユーザビル内に設置されるものなどがある。光ファイバは容易に切断、接続ができないなどの理由で、これらの光ファイバのジャンパリングを行う装置内には、複数の未接続(未使用)のコネクタが取り付けられた光ファイバがある(非特許文献1の第2章、図1〜3参照)。特に、FTMは所外の光ファイバが最大2000心成端される装置であり、IDMは所外の光ファイバが最大4000心成端される装置である。そして、所内の伝送装置とこれらの所外の光ファイバとをつなぐための所内用の光ファイバには、未接続の状態のものが多数ある。
【0003】
非特許文献1には、光ファイバのジャンパリングを行う装置内の未接続のコネクタ付き光ファイバから1つの光ファイバ(接続したい伝送装置などとつながっている光ファイバ)を特定する方法として、2次元バーコードを用いる方法が示されている。また、従来から、コネクタ付き光ファイバの逆側(伝送装置側)から赤色の可視光線を挿入し、可視光線がコネクタ付き光ファイバから放出されることを確認する方法もあった。
【0004】
なお、FTMや多くのキャビネットで利用されているコネクタが、SCコネクタ(図1)またはSCコネクタを改良したコネクタである。また、IDMでは、SCコネクタよりも小さいMUコネクタ(図2)が使用されている。SCコネクタ800もMUコネクタ900も、光ファイバコード820、920にコネクタボディ810、910が取り付けられる。光ファイバはフェルール830、930に保護されており、光ファイバの端面はフェルール端面835、935の中心にある。また、未接続のコネクタ800、900には、フェルール端面の傷や汚れ防止のためにコネクタキャップが取り付けられている。従来のコネクタキャップには、コネクタボディ810、910の半分くらいを覆うような不透明のプラスチック製のもの、フェルール830、930のみを覆うように、フェルール830、930とコネクタボディ810、910の内壁部815、915の間に差し込むプラスチック製のものなどがある。また、プラスチック製のコネクタキャップには、不透明なもの、透明度の高いものなどがあり、統一されていない。
【非特許文献1】中尾直樹,井上貴司,井上晃,八木裕,富田研一,国分利直,“所内光媒体運用・管理システムに関する研究”,電子情報通信学会論文誌B,Vol.J84-B No.9,pp.1557-1565,2001年9月.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の方法は、光ファイバに付された番号などから1つの光ファイバを取り出した後に、取り出した光ファイバで間違いないことを、2次元バーコードで確認する方法であり、1つの光ファイバを取り出す作業の効率化を図る方法ではない。
【0006】
従来の可視光線を用いる方法は、コネクタキャップが不透明の(完全に可視光を遮断する)場合には、コネクタキャップを取り外さなければ可視光線を確認できなかった。また、不透明のコネクタキャップを取り外した場合や、透明なコネクタキャップの場合には、放出された可視光線などが目に入る危険もあった。
【0007】
そこで、本発明は、作業者の危険を回避しながら、多数の未接続のコネクタ付き光ファイバから1つの光ファイバを取り出す作業の効率化を図るための、コネクタキャップと対照システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコネクタキャップは、光ファイバ用コネクタのフェルールを覆うためのコネクタキャップであり、フェルールを汚れと傷から保護する機能と、フェルールの端面からあらかじめ定めた波長帯域の可視光線が放出された場合には、その可視光線を外部に拡散させる機能とを備える。ここで、「拡散させる」とは、光ファイバの端面から出射される光を、反射や屈折などによって出射方向とは90度以上異なる方向でも可視光線を確認できるように広げることをいう。特に、フェルール端面に対向し、可視光を減衰させるフェルール対向部のフェルールに近接する近接面を、山形、円形、のこぎり形などの平らでない形状とすればよい。
【0009】
また、可視光線をあらかじめ定めた範囲で減衰させる機能を持たせてもよく、例えば、11.1dB以上、または18.9dB以上減衰させる。可視光線を拡散、減衰させる方法としては、例えば、酸化チタニウムや酸化アルミニウムを混入させればよい。
【0010】
本発明の対照システムは、未接続のコネクタに取り付けられたコネクタキャップと、光ファイバのコネクタキャップが取り付けられていない側から可視光線を挿入するための可視光源から構成される。可視光源の出力は、あらかじめ定められた範囲の出力である。例えば、コネクタキャップに可視光線を減衰させる機能がない場合または減衰させる機能の仕様を限定していない場合には、可視光源の出力は−4.1dBm以下とする。また、コネクタキャップの可視光源の減衰量が11.1dB以上の場合には、可視光源の出力は7dBm以下とする。コネクタキャップの可視光源の減衰量が18.9dB以上の場合には、可視光源の出力は14.8dBm以下とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコネクタキャップおよび対照システムによれば、可視光線が拡散されるので、多数の未接続のコネクタ付き光ファイバから1つの光ファイバを取り出す作業の効率化を図ることができる。また、可視光源の出力とコネクタキャップの減衰量との組合せを安全な範囲に設定できるので、作業者の危険を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1実施形態]
図3は本発明のコネクタキャップの形状を示す斜視図である。また、図4は本発明のコネクタキャップを側面から見たときの断面図である。図5は、本発明のコネクタキャップをSCコネクタに取り付けた様子を示す断面図である。なお、以下の説明ではSCコネクタにコネクタキャップを取り付けた場合の説明をするが、コネクタボディとフェルールを備える光ファイバ用コネクタであれば、どのコネクタでも同じである。
【0013】
コネクタキャップ100は、光ファイバ用コネクタを保持する筒状の筒状部110と、フェルール端面に対向し、光をあらかじめ定めた範囲で減衰させるフェルール対向部120とを備えている。筒状部110は、フェルール830とコネクタボディ810の内壁部815の間に差し込まれる。また、筒状部110は、容易に抜けないように内壁部815と圧接している。なお、筒状部110は、フェルール830と圧接する構造でもかまわない。フェルール端面835には、光ファイバコード820内の光ファイバ825が中心部分にある。この光ファイバ825に傷や汚れが付くと、損失の増加を招くので保護する必要がある。フェルール対向部120のフェルールに近接する近接面121は、コネクタキャップ100を奥までSCコネクタに差し込んでも、フェルール端面835には接触しない。このような構造なので、コネクタキャップ100は、フェルール端面835を汚れと傷から保護できる。
【0014】
図6にコネクタキャップ内での光の様子を示す。この図では、コネクタキャップ100の網掛けは省略する。コネクタキャップ100の近接面121は、中央部分が窪んだ形状なので、光ファイバ825から放出された可視光線は、近接面121で屈折し、光線が広がる。さらに、可視光線は、コネクタキャップ100のフェルール対向部120内で乱反射され、いろいろな方向に拡散され、コネクタキャップ100の外部に放出される。したがって、光ファイバの方向と90度以上異なる方向でも可視光線を確認できる。
【0015】
図7に、本発明の対照システムの構成例を示す。対照システムは、未接続のSCコネクタ800〜800に取り付けられたコネクタキャップ100〜100と、光ファイバのコネクタキャップが取り付けられていない側から可視光線を挿入するための可視光源500から構成される。未接続のコネクタ800〜800は、光ファイバのジャンパリングを行う装置700内の棚711、712に置かれている。可視光源500は、1つの未接続の光ファイバの反対側の端子から可視光線を挿入する。すると、可視光線が挿入された光ファイバコード820のコネクタ800に取り付けられたコネクタキャップ100だけが光る。したがって、どの光ファイバを取り出せばよいのかが簡単に分かる。なお、可視光線としては、レーザダイオード、LED、ヘリウムネオンレーザなどを用いればよい。
【0016】
次に安全性について検討する。JISのレーザ関連装置の危険度の基準では、例えば波長633nm(ヘリウムネオンレーザの波長であり、赤色)では、−4.1dBm(0.39mW)以下であれば、ハザードレベル1(レーザビームを集束させても安全なレベル)とされている。そこで、コネクタキャップ100が可視光線を減衰しない場合または減衰率を限定しない場合には、可視光源500の出力を−4.1dBm以下とする。また、可視光源500の出力が、一般的な光源の出力の例である7dBm(5mW)以下の場合には、その可視光線に対するコネクタキャップ100の減衰率を11.1dBとする。さらに、可視光源500の出力が、ハイパワーな光源の出力の例である14.8dBm(130mW)以下の場合には、その可視光線に対するコネクタキャップ100の減衰率を18.9dBとする。このように可視光源500の出力とコネクタキャップ100の減衰率を調整すれば、安全なシステムを構築できる。
【0017】
また、本発明の対照システムの対象である未接続のSCコネクタから通信光が放出することはない。しかし、電話局内にスプリッタを配置したPONシステムなどでは、通信光が放出される可能性もある。コネクタキャップを共用する場合には、通信装置の出力を安全なレベルまで減衰させる機能も備えればよい。
【0018】
なお、フェルールを保護すると共に光を拡散および減衰させるために、コネクタキャップ100は、ポリウレタン、ポリエステル、ブチルゴム、シリコンゴム、ポリプロピレンなどを材料とし、酸化チタニウム、酸化アルミニウムなどを添加物とすればよい。
【0019】
[変形例1]
図8にフェルール対向部の形状の変形例を示す。図8(A)は小さな円盤または小さな球を付加している。図8(B)はフェルール対向部120を大きくしている。図8(C)と(D)は、フェルール対向部120全体を球形としている。これらのように、フェルール対向部120を大きくすると、可視光線を拡散させやすく、減衰させやすく、かつ持ちやすくなる。一方、大きくしすぎるとジャンパリングを行う装置内のスペースの問題が生じるので、拡散や減衰の機能を果たす範囲内で小型とした方がよい。なお、フェルール対向部120の形状は、図8で図示した形状に限定されるものではない。
【0020】
[変形例2]
図9にフェルール対向部の近接面の変形例を示す。図9(A)と(B)は近接面121を凸状としている。図9(C)は、近接面121を円弧状に窪ませている。図9(D)は、近接面121をのこぎり状としている。図9(A)、(B)のように近接面121を凸状とする場合には、近接面121での反射によっても可視光線の拡散を図ることができる。また、のこぎり状の場合には反射と屈折の両方を利用できる。このように、近接面を平らでない形状にすることで、可視光線を効率的に拡散できる。なお、近接面121の形状は、図9で図示した形状に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のコネクタカバーと対照システムは、未使用のコネクタが取り付けられた複数の光ファイバの中から1つを特定するために利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】SCコネクタの形状を示す斜視図。
【図2】MUコネクタの形状を示す斜視図。
【図3】本発明のコネクタキャップの形状を示す斜視図。
【図4】本発明のコネクタキャップの形状を示す断面図。
【図5】本発明のコネクタキャップを光ファイバ用コネクタに取り付けた様子を示す断面図。
【図6】コネクタキャップ内の光の様子を示す図。
【図7】本発明の対照システムの構成例を示す図。
【図8】フェルール対向部の変形例を示す図。
【図9】フェルール対向部の近接面の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0023】
100 コネクタキャップ 110 筒状部
120 フェルール対向部 121 近接面
500 可視光源 700 光ファイバのジャンパリングを行う装置
711 棚 800 SCコネクタ
810、910 コネクタボディ 815、915 内壁部
820、920 光ファイバコード 825 光ファイバ
830、930 フェルール 835、935 フェルール端面
900 MUコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ用コネクタのフェルールを覆うためのコネクタキャップであって、
前記フェルールを汚れと傷から保護する機能と、
前記フェルールの端面からあらかじめ定めた波長帯域の可視光線が放出された場合には、前記可視光線を外部に拡散させる機能と
を備えるコネクタキャップ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタキャップであって、
前記光ファイバ用コネクタを保持する筒状の筒状部と、
前記フェルール端面に対向するフェルール対向部と
を備え、
前記フェルール対向部のフェルールに近接する近接面は、平らでない
ことを特徴とするコネクタキャップ。
【請求項3】
請求項1記載のコネクタキャップであって、
前記可視光線をあらかじめ定めた範囲で減衰させる機能
も備えるコネクタキャップ。
【請求項4】
請求項1記載のコネクタキャップであって、
前記可視光線を11.1dB以上減衰させる機能
も備えるコネクタキャップ。
【請求項5】
請求項1記載のコネクタキャップであって、
前記可視光線を18.9dB以上減衰させる機能
も備えるコネクタキャップ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のコネクタキャップであって、
酸化チタニウムまたは酸化アルミニウムが混入されている
ことを特徴とするコネクタキャップ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のコネクタキャップであって、
前記通信光をあらかじめ定めた範囲で減衰させる機能
も備えるコネクタキャップ。
【請求項8】
未接続のコネクタが取り付けられた複数の光ファイバの中から1つを特定するための対照システムであって、
前記未接続のコネクタに取り付けられた請求項1から7のいずれかに記載のコネクタキャップと、
前記光ファイバの前記コネクタキャップが取り付けられていない側から可視光線を挿入するための、あらかじめ定められた範囲の出力の可視光源と
を有する対照システム。
【請求項9】
未接続のコネクタが取り付けられた複数の光ファイバの中から1つを特定するための対照システムであって、
前記未接続のコネクタに取り付けられた請求項1または2記載のコネクタキャップと、
前記光ファイバの前記コネクタキャップが取り付けられていない側から可視光線を挿入するための、出力が−4.1dBm以下の可視光源と
を有する対照システム。
【請求項10】
未接続のコネクタが取り付けられた複数の光ファイバの中から1つを特定するための対照システムであって、
前記未接続のコネクタに取り付けられた請求項4記載のコネクタキャップと、
前記光ファイバの前記コネクタキャップが取り付けられていない側から可視光線を挿入するための、出力が7dBm以下の可視光源と
を有する対照システム。
【請求項11】
未接続のコネクタが取り付けられた複数の光ファイバの中から1つを特定するための対照システムであって、
前記未接続のコネクタに取り付けられた請求項5記載のコネクタキャップと、
前記光ファイバの前記コネクタキャップが取り付けられていない側から可視光線を挿入するための、出力が14.8dBm以下の可視光源と
を有する対照システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−69385(P2009−69385A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236628(P2007−236628)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(391025730)岡野電線株式会社 (55)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】