説明

コネクタ装置

【課題】確実に固定保持した端子ピンを道具を用いることなく容易に脱着することもできるコネクタ装置を提供する。
【解決手段】コネクタ本体14内に、一方ピンホルダ31と他方ピンホルダ32とを相互に平行状態のまま移動自在に設ける。一方ピンホルダ31は、複数のピン挿入穴33をそれぞれ有する複数のプレート34を連結板35により一体化し、他方ピンホルダ32は、一方ピンホルダ31の複数のプレート34間に交互に挿入した、複数のピン挿入穴37をそれぞれ有する複数のプレート38を連結板39により一体化する。一方ピンホルダ31の付勢手段連結部材41とコネクタ本体14との間、および他方ピンホルダ32の付勢手段連結部材42とコネクタ本体14との間に、引き伸ばす方向に付勢するバネ45を張設する。付勢手段連結部材41,42間にリンク43を回動自在に軸連結し、リンク43の中央部はコネクタ本体14に回動自在に軸支する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子ピンを有するコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタ装置は、コネクタ本体内の端子支持部材に端子ピンを嵌着し、端子支持部材内の係止部材により端子ピンの一部を係止することで、端子ピンの抜止めを図っている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平6−505122号公報(第9頁、図8)
【特許文献2】特表2005−521223号公報(第9頁、図7−8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような端子支持部材内の係止部材により端子ピンを抜止めする従来のコネクタ装置は、端子ピンの脱着が容易でなく、端子ピンが抜け難いとともに、端子ピンを抜くための道具を必要とする。
【0005】
すなわち、電気系統の設計変更の際に、端子ピンのアサインメントが変更されたり、また、端子ピンを除去する必要が生じる場合もあるが、いったん挿入した端子ピンは抜けにくいように引掛固定の係止構造をとっているため、単に引張っただけで端子ピンを抜き取ることは困難であり、この種の端子ピンを除去する際は、リムーバなどのピン抜き取り用の道具を用いて逐一ピン抜き取り作業をする必要がある。
【0006】
このように、端子ピンの変更の際に、ピン抜き取り用の道具により1つ1つの端子ピンを取り除くことは、作業者にとっての労力と時間の負担が大きく、また、ピン抜取用の道具も準備しなければならない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、確実に固定保持された端子ピンを道具を用いることなく容易に脱着することもできるコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、外殻状のコネクタ本体と、上記コネクタ本体内に設けられ、複数のピン挿入穴をそれぞれ有する複数のプレートを一端側で一体化した絶縁性を有する一方ピンホルダと、上記コネクタ本体内で上記一方ピンホルダに対し相対的に平行状態のまま移動自在に設けられ、上記一方ピンホルダの複数のプレート間に交互に挿入された複数のピン挿入穴をそれぞれ有する複数のプレートを他端側で一体化した絶縁性を有する他方ピンホルダと、一方ピンホルダと他方ピンホルダとを相互に引き伸ばす方向に付勢する付勢手段と、上記付勢手段に抗して上記一方ピンホルダと上記他方ピンホルダとを相互に圧縮する方向に移動させることで上記一方ピンホルダの複数のピン挿入穴と上記他方ピンホルダの対応する複数のピン挿入穴とに挿脱可能な複数の導電性を有する端子ピンとを具備したコネクタ装置である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のコネクタ装置における一方ピンホルダおよび他方ピンホルダが、コネクタ本体に対しそれぞれ移動自在に設けられ、上記一方ピンホルダおよび上記他方ピンホルダの移動方向に沿った側縁部間にリンクの一端部と他端部とが回動自在に軸連結され、上記リンクの中央部は上記コネクタ本体に回動自在に軸支されたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、コネクタ本体内で相対的に平行状態のまま移動自在に設けられた一方ピンホルダと他方ピンホルダとを付勢手段により相互に引き伸ばす方向に付勢することで、一方ピンホルダの複数のプレートとこれらのプレート間に交互に挿入された他方ピンホルダの複数のプレートとにそれぞれ設けられた複数のピン挿入穴に挿入された端子ピンを確実に固定保持できるとともに、上記付勢手段に抗して一方ピンホルダと他方ピンホルダとを相互に圧縮する方向に移動させることで一方ピンホルダの複数のピン挿入穴と他方ピンホルダの対応する複数のピン挿入穴とに複数の端子ピンを挿脱可能としたので、これらの一方ピンホルダおよび他方ピンホルダの複数のピン挿入穴により固定保持された複数の端子ピンを、単なる圧縮方向の操作のみにより、道具を用いることなく容易に脱着することもできる。
【0011】
請求項2に記載された発明によれば、コネクタ本体に対しそれぞれ移動自在に設けられた一方ピンホルダと他方ピンホルダとにリンクの一端部と他端部とが回動自在に軸連結され、このリンクの中央部はコネクタ本体に回動自在に軸支されたので、リンクの連動作用により、一方ピンホルダと他方ピンホルダとの移動量を等しくすることができ、端子ピンの挿入位置と固定位置とがずれるおそれがなく、コネクタ本体に開ける端子ピン挿入用の開口を最小にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るコネクタ装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】(a)は同上コネクタ装置のピン固定状態を示す断面図、(b)は同上コネクタ装置のピン固定解除状態を示す断面図である。
【図3】同上コネクタ装置の雄型コネクタおよび雌型コネクタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、図1乃至図3に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図3に示されるように、コネクタ装置は、雄型コネクタ11と雌型コネクタ12とで構成され、雄型コネクタ11は、エンジン・コントロール・モジュール(ECM)13などに固定される絶縁樹脂製のコネクタ本体14と、このコネクタ本体14に設けられた複数のピン嵌着孔15と、これらのピン嵌着孔15からコネクタ本体14内に嵌着された複数の導電性を有する端子ピン16とを備え、これらの端子ピン16の下端がECM13などの回路に結線される。
【0015】
一方、雌型コネクタ12は、樹脂製のコネクタ本体21と、このコネクタ本体21に設けられ雄型コネクタ11の各端子ピン16と嵌合して電気的に結合される複数のピン挿入穴22とを備え、これらの各ピン挿入穴22内に嵌着された導電性金属片にハーネス23が接続されている。
【0016】
雄型コネクタ11には、コネクタ本体14のほぼ中央部に角形の案内凸部25が一体に設けられ、この案内凸部25に固定ねじ穴26が設けられ、一方、雌型コネクタ12には、雄型コネクタ11の案内凸部25と嵌合する角形の案内凹部27がコネクタ本体14のほぼ中央部に形成され、この案内凹部27の中央には、雄型コネクタ11の固定ねじ穴26に螺合される固定ねじ28が配置され、そして、雄型コネクタ11と雌型コネクタ12とがピン結合された状態で、この固定ねじ28をコネクタ本体21の反対側から回動操作して、固定ねじ穴26に螺入することで、雄型コネクタ11と雌型コネクタ12のピン結合状態が固定される。
【0017】
図1に示されるように、雄型コネクタ11は、外殻状に成型されたコネクタ本体14内で、絶縁性を有する一方ピンホルダ31と、絶縁性を有する他方ピンホルダ32とが、相互に平行状態のまま、かつコネクタ本体14に対しそれぞれ移動自在に設けられている。
【0018】
一方ピンホルダ31は、複数のピン挿入穴33をそれぞれ有する複数のプレート34を、その一端側で連結板35により連結することで一体化した絶縁性樹脂成型品であり、プレート面方向に移動自在に設けられている。連結板35からコネクタ本体14の外部に押圧操作用の一方のリムーブ用ボタン36が突出されている。
【0019】
他方ピンホルダ32は、一方ピンホルダ31の複数のプレート34間に交互に挿入された、複数のピン挿入穴37をそれぞれ有する複数のプレート38を、その他端側で連結板39により連結することで一体化した絶縁性樹脂成型品であり、プレート面方向に移動自在に設けられている。連結板39からコネクタ本体14の外部に押圧操作用の他方のリムーブ用ボタン40が突出されている。
【0020】
一方ピンホルダ31のプレート34の1つの移動方向に沿った前後両側の側縁部に、付勢手段連結部材41が一体に設けられ、他方ピンホルダ32のプレート38の1つの移動方向に沿った前後両側の側縁部に、付勢手段連結部材42が一体に設けられ、一方ピンホルダ31のプレート34の両側縁部に一体化された付勢手段連結部材41の中央側端と、他方ピンホルダ32のプレート38の両側縁部に一体化された付勢手段連結部材42の中央側端との間に、これらのプレート前後に配置された両側のリンク43の一端部と他端部とが回動自在に軸連結され、これらのリンク43の中央部は、それぞれ支軸44によりコネクタ本体14に回動自在に軸支されている。
【0021】
一方ピンホルダ31のプレート両側縁部に一体化された付勢手段連結部材41の反対側端とコネクタ本体14との間、および他方ピンホルダ32のプレート両側縁部に一体化された付勢手段連結部材42の反対側端とコネクタ本体14との間に、一方ピンホルダ31と他方ピンホルダ32とを相互に引き伸ばす方向に付勢する付勢手段としてのバネ45がそれぞれ張設されている。これらのバネ45のコネクタ本体側フックは、コネクタ本体14に設けられた係止穴(図示せず)などに係合するとよい。
【0022】
複数の端子ピン16は、バネ45に抗して一方ピンホルダ31と他方ピンホルダ32とを相互に圧縮する方向に移動させることで一方ピンホルダ31の複数のピン挿入穴33と他方ピンホルダ32の対応する複数のピン挿入穴37とに被挟圧ピン部16aを挿脱可能となっている。各端子ピン16の導電性を有する被挟圧ピン部16aにそれぞれのハーネスが結線される。
【0023】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0024】
図1に示されるように、コネクタ本体14と一方ピンホルダ31および他方ピンホルダ32との間に張設されたバネ45により、一方ピンホルダ31および他方ピンホルダ32を相互に引き伸ばす方向に付勢することで、図2(a)に示されるように、絶縁性を有する一方ピンホルダ31の複数のプレート34のピン挿入穴33と、絶縁性を有する他方ピンホルダ32の複数のプレート38のピン挿入穴37とに挿入された導電性を有する各端子ピン16の被挟圧ピン部16aは、これらのピン挿入穴33,37の内周面による挟圧作用により固定保持される。
【0025】
図2(b)に示されるように、一方および他方のリムーブ用ボタン36,40を両側から把持するようにして、バネ45に抗して一方ピンホルダ31と他方ピンホルダ32とを相互に圧縮する方向に移動させると、これらのピン挟圧固定力が緩み、一方ピンホルダ31の複数のピン挿入穴33と他方ピンホルダ32の対応する複数のピン挿入穴37とに挿入された端子ピン16は、一方ピンホルダ31のプレート34と他方ピンホルダ32のプレート38とによる挟圧作用から解放されるので、容易に取り出すことができるとともに、挿入することもできる。
【0026】
これらのピン挟圧作用時および挟圧作用解放時の一方ピンホルダ31および他方ピンホルダ32の移動量は、リンクの連動作用により、端子ピンの挿入位置を基準として等しくなる。
【0027】
このように、コネクタ本体14内で相対的に平行状態のまま移動自在に設けられた一方ピンホルダ31と他方ピンホルダ32とをバネ45により相互に引き伸ばす方向に付勢することで、一方ピンホルダ31の複数のプレート34とこれらのプレート34間に交互に挿入された他方ピンホルダ32の複数のプレート38とにそれぞれ設けられた複数のピン挿入穴33,37に挿入された端子ピン16を確実に固定保持できる。
【0028】
特に、一方ピンホルダ31の複数のプレート34と他方ピンホルダ32の複数のプレート38とを左右両側から互い違いに突出させて噛ませる構造としたので、複数のピン挿入穴33の内周面と複数のピン挿入穴37の内周面とが端子ピン16の被挟圧ピン部16aに作用して、端子ピン16を確実に安定保持できる。
【0029】
一方、バネ45に抗して一方ピンホルダ31と他方ピンホルダ32とを相互に圧縮する方向に移動させることで、一方ピンホルダ31の複数のピン挿入穴33と他方ピンホルダ32の対応する複数のピン挿入穴37とに複数の端子ピン16を挿脱可能としたので、これらの複数のピン挿入穴33,37により固定保持された複数の端子ピン16を、単なる圧縮方向の操作のみにより、道具を用いることなく容易に脱着することもできる。
【0030】
また、コネクタ本体14に対しそれぞれ移動自在に設けられた一方ピンホルダ31と他方ピンホルダ32とにリンク43の一端部と他端部とが回動自在に軸連結され、このリンク43の中央部はコネクタ本体14に回動自在に軸支されたので、リンク43の連動作用により、一方ピンホルダ31と他方ピンホルダ32との移動量を等しくすることができ、端子ピン16の挿入位置と固定位置とがずれるおそれがなく、コネクタ本体14に開ける端子ピン挿入用の開口すなわちピン嵌着孔15を最小にできる。
【0031】
さらに、一方および他方のリムーブ用ボタン36,40を押圧することで端子ピン16を抜けるようにしたので、作業ミスなどに対しても迅速のリカバーが可能であり、作業能率を向上できる。
【0032】
特に、各端子ピン16に結線されたハーネスを全て除去してしまうときも、一方および他方のリムーブ用ボタン36,40を押圧するのみで、全部の端子ピン16を固定している挟圧力を一度に緩めることができるので、全部の端子ピン16を一度に抜くことができ、作業能率を飛躍的に向上できる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、一方ピンホルダ31および他方ピンホルダ32の両方をコネクタ本体14に対し移動自在としたが、一方ピンホルダ31または他方ピンホルダ32のいずれか一方のみをコネクタ本体14に対し移動自在とした実施の形態もあり得る。要するに、コネクタ本体14内で一方ピンホルダ31に対し他方ピンホルダ32が相対的に平行状態のまま移動自在であればよく、移動可能側のピンホルダにリムーブ用ボタンを設けるようにすればよい。
【0034】
さらに、上記実施の形態では、連結板35,39からコネクタ本体14の外部に押圧操作用のリムーブ用ボタン36,40を突出させたが、これらのリムーブ用ボタン36,40は必要でない実施の形態もあり得る。すなわち、コネクタ本体14に開けられたボタン突出用の穴から指または棒材などを挿入して、連結板35,39を押圧操作するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、コネクタ装置の製造販売、コネクタ装置により制御装置と機械各部とを接続した作業機械などを製造販売する産業において利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
14 コネクタ本体
31 一方ピンホルダ
32 他方ピンホルダ
33,37 ピン挿入穴
34,38 プレート
43 リンク
45 付勢手段としてのバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻状のコネクタ本体と、
上記コネクタ本体内に設けられ、複数のピン挿入穴をそれぞれ有する複数のプレートを一端側で一体化した絶縁性を有する一方ピンホルダと、
上記コネクタ本体内で上記一方ピンホルダに対し相対的に平行状態のまま移動自在に設けられ、上記一方ピンホルダの複数のプレート間に交互に挿入された複数のピン挿入穴をそれぞれ有する複数のプレートを他端側で一体化した絶縁性を有する他方ピンホルダと、
一方ピンホルダと他方ピンホルダとを相互に引き伸ばす方向に付勢する付勢手段と、
上記付勢手段に抗して上記一方ピンホルダと上記他方ピンホルダとを相互に圧縮する方向に移動させることで上記一方ピンホルダの複数のピン挿入穴と上記他方ピンホルダの対応する複数のピン挿入穴とに挿脱可能な複数の導電性を有する端子ピンと
を具備したことを特徴とするコネクタ装置。
【請求項2】
一方ピンホルダおよび他方ピンホルダは、コネクタ本体に対しそれぞれ移動自在に設けられ、
上記一方ピンホルダおよび上記他方ピンホルダの移動方向に沿った側縁部間にリンクの一端部と他端部とが回動自在に軸連結され、
上記リンクの中央部は上記コネクタ本体に回動自在に軸支された
ことを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−228080(P2011−228080A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95884(P2010−95884)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】