説明

コネクタ

【課題】電線カバーの変形を防止する。
【解決手段】電線カバー20は、第1板状部22と、第1板状部22に対し概ね電線13の導出方向に沿った稜線部28を介して連なる第2板状部27と、第1板状部22と第2板状部27の後端に連なってコネクタハウジング10の後面と対向する第3板状部32と、第1板状部22と反対側に開放された開口部24を有する配索空間23と、開口部24を開閉可能な蓋部43を備える。電線カバー20のうちコネクタハウジング10の後面に当接する部分には、受け部36が形成され、蓋部43には、受け部36に対して後方から押圧力を付与可能な押圧部47が形成され、蓋部43は、ヒンジ50により第3板状部32に対する後方への相対変位を規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線カバーを備えたコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コネクタハウジングと、電線の前端部に接続されて前記コネクタハウジング内に収容された端子金具と、コネクタハウジングの後端部に取り付けられ、コネクタハウジングの後面から導出された電線を包囲して導出方向と略直角な方向へ転向させる電線カバーとを備えたコネクタが開示されている。
【0003】
電線カバーは、電線の導出方向に沿うように配された第1板状部と、電線の導出方向に沿うように配され、第1板状部に対し電線の導出方向に沿った稜線部を介して連なる第2板状部と、第1板状部の後端と第2板状部の後端とに連なり、コネクタハウジングの後面と対向するように配された第3板状部とを備えている。
【0004】
第1板状部、第2板状部及び第3板状部は、電線を収容して転向させるための配索空間を構成しているが、配索空間には、電線を配索空間に収容し易くするために、第1板状部とは反対側に開放された開口部が形成されている。電線を配索空間に収容した後は、この開口部は、蓋部によって閉塞される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−190954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このコネクタでは、コネクタハウジングを相手側ハウジングに嵌合させる際に、作業者は、第3板状部の後面に指を宛がって押し操作することにより、電線カバーを介してコネクタハウジングに嵌合力を付与することができるようになっている。
【0007】
しかし、電線カバーは、複数の板状部によって箱状に形成されているため、剛性は高くない。そのため、第3板状部に押し操作力を付与したときに、電線カバーが変形し、円滑な嵌合作業に支障を来すことが懸念される。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線カバーの変形を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、コネクタハウジングと、電線の前端部に接続されて前記コネクタハウジング内に収容された端子金具と、前記コネクタハウジングの後端部に取り付けられ、前記コネクタハウジングの後面から導出された前記電線を包囲して導出方向と略直角な方向へ転向させる電線カバーとを備え、前記電線カバーが、前記電線の導出方向に沿うように配された第1板状部と、前記電線の導出方向に沿うように配され、前記第1板状部に対し概ね前記電線の導出方向に沿った稜線部を介して連なる第2板状部と、前記第1板状部の後端と前記第2板状部の後端とに連なり、前記コネクタハウジングの後面と対向するように配された第3板状部と、前記第1板状部、前記第2板状部及び前記第3板状部により前記電線を収容可能に形成され、前記第1板状部とは反対側に開放された開口部を有する配索空間と、前記開口部を開閉可能な蓋部とを備えて構成されているコネクタにおいて、 前記蓋部は、前記開口部を閉塞した状態において、前記第3板状部に対して後方へ相対変位することを規制されており、前記コネクタハウジングの後面、又は前記電線カバーのうち前記コネクタハウジングの後面に当接する部分に形成された受け部と、前記蓋部に形成され、前記蓋部が前記開口部を閉塞した状態において、前記受け部に対して後方から押圧力を付与可能な押圧部とを備えているところに特徴を有する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記受け部が、前記電線カバーにおける前記コネクタハウジングの後面よりも後方の位置に形成されているところに特徴を有する。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記蓋部には、係止片が形成され、前記受け部には、前記蓋部が前記開口部を閉塞している状態において、前記係止片を係止させることで前記蓋部の開放方向への変位を規制する係止部が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
蓋部で開口部を閉塞した状態で、第3板状部に対し後方から外力が付与されると、その外力は、変位規制部を介して蓋部に伝わり、さらに押圧部と受け部との当接作用により、蓋部から、コネクタハウジングに直接、又は電線カバーを介してコネクタハウジングに間接的に伝達される。第3板状部とコネクタハウジングの後面との間には、蓋部が突っ張るような形態で介在しているので、第3板状部は、後方からの外力を受けても、コネクタハウジング側に接近するような変形を生じる虞がない。
【0013】
<請求項2の発明>
受け部が前方に位置するほど、蓋部の前後長が長くなるため、蓋部の剛性が低下するのであるが、本発明では、受け部をコネクタハウジングの後面よりも後方に配置しているので、蓋部の前後長が短くなり、蓋部の剛性が向上する。これにより、第3板状部の変形を確実に防止することができる。
【0014】
<請求項3の発明>
蓋部の押圧部からの押圧力を受け止める受け部の近傍には、蓋部を閉塞状態にロックするための係止部が配置されているので、係止部に蓋部の係止片が係止した状態では、その係止作用により、押圧部の受け部に対する位置ずれが防止される。これにより、押圧部を受け部に対して確実に当接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の正面図
【図2】配索空間の開口部を蓋部で閉塞した状態をあわらす底面図
【図3】配索空間の開口部を開放した状態をあわらす底面図
【図4】配索空間の開口部を蓋部で閉塞した状態をあわらす図1のA−A線断面図
【図5】配索空間の開口部を開放した状態をあわらす図1のA−A線断面図
【図6】図4のB−B線断面図
【図7】図5のC−C線断面図
【図8】図4のD−D線断面図
【図9】図5のE−E線断面図
【図10】側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図10を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、図1〜図5に示すように、コネクタハウジング10と、コネクタハウジング10の後端部に取り付けられる電線カバー20とを備えて構成されている。コネクタハウジング10は、全体としてブロック状をなし、図4、5,8,9に示すように、コネクタハウジング10の内部に形成した複数のキャビティ11には、夫々、端子金具12が後方から挿入されている。各端子金具12の後端部には電線13の前端部が接続され、電線13はコネクタハウジング10の後面から後方へ導出されている。
【0017】
図6〜10に示すように、コネクタハウジング10の後端部の左右両外側面には、一対のロック突起14が形成されている。また、図2〜5に示すように、コネクタハウジング10の後端部においては、キャビティ11よりも下方の領域がコネクタハウジング10の全幅に亘って切欠されている。図6,7に示すように、この切欠部15内には、切欠部15の天井面から下方へ延出するとともに、切欠部15の前面(=コネクタハウジング10の後面)から後方へ延出する左右一対の板状をなす第1ガイドリブ16が形成されている。図6,7,10に示すように、第1ガイドリブ16の外側面には、前後方向に直線状に延びる第2ガイドリブ17が形成されている。尚、第1ガイドリブ16の下端縁部は、その全長に亘って内側に屈曲されている。
【0018】
図2〜5,8,9に示すように、電線カバー20は、その前端部においてコネクタハウジング10の後端部に組み付けられることで、コネクタハウジング10の後面から後方へ導出された複数本の電線13を包囲するようになっている。電線カバー20に包囲された電線13は、電線カバー20の内部において、電線カバー20の平面形状に沿って右方へ略直角に転向するように配索され、電線カバー20の右端部から外部へ導出されている。電線カバー20は、合成樹脂製であり、図3〜7に示すように、下面に開口部24を有するカバー本体21と、カバー本体21に対してヒンジ50を介して一体に形成された(=カバー本体21に連なった)蓋部43とを備えて構成されている。
【0019】
図2〜9に示すように、カバー本体21は、第1板状部22、第2板状部27、第3板状部32、第4板状部35、及び左右一対の受け部36とを備えて構成されている。図3,4,5,8,9に示すように、これらの板状部22,27,32,35と受け部36とによって囲まれた空間は、コネクタハウジング10から導出された電線13を収容して転向させるように配索するための配索空間23となっている。この配索空間23は、電線カバー20の前面の一部、下面(配索空間23を挟んで第1板状部22とは反対側の面)の全領域、及び右側面の一部において電線カバー20の外部へ開放されている。図3〜5に示すように、この配索空間23を電線カバー20の外部へ開放させるための開口部24は、電線13を配索空間23に収容し易くすること、又は電線カバー20をコネクタハウジング10に組み付けた後でも電線13を収容できるようにすることを目的として形成されたものである。
【0020】
図4,5,10に示すように、第1板状部22は、電線カバー20の上面を構成する。第1板状部22は、側方から見ると中央が盛り上がった円弧状をなしていて左右方向(つまり、コネクタハウジング10からの電線13の導出方向と略直角な方向)に長いアーチ部25と、アーチ部25の左端側部分の前縁から前方へ水平(前後方向)延出するリブ状延出部26とから構成されている。この第1板状部22のアーチ部25の左端側の部分とリブ状延出部26は、電線13の導出方向に沿った形態となっている。
【0021】
図1,2,3,8,9,10に示すように、第2板状部27は、全体として概ね平板状をなし、電線カバー20の左側面を構成している。つまり、第2板状部27は、電線13の導出方向に沿うように配されている。図1,10に示すように、第2板状部27の上端縁は、第1板状部22に対し、その左側縁における全領域に沿った稜線部28を介して連なっている。図10に示すように、第2板状部27には、その前端縁から前方へ片持ち状に且つ面一状に延出した形態の弾性ロック片29が形成され、弾性ロック片29にはロック孔30が形成されている。同じく第2板状部27には、その前端縁のうち弾性ロック片29よりも下端部から前方へ片持ち状に且つ面一状に延出した形態の延出部が形成され、図6,7,10に示すように、延出部の上端縁と弾性ロック片29の下端縁との間は、前方に開口されて前後方向に直線状に延びる第2ガイド溝31となっている。
【0022】
図2〜5,8〜10に示すように、第3板状部32は、全体として平板状をなし、電線カバー20の後面の一部を構成している。第3板状部32の上端縁は、第1板状部22の左端側部分における水平な後端縁に対して直角に連なり、第3板状部32の左側縁は、第2板状部27の上下方向の後端縁に対して直角に連なっている。したがって、第3板状部32は、コネクタハウジング10の後面に対してほぼ平行をなすように対向するように配されている。図2〜5に示すように、第3板状部32の下端縁には、左右方向において上記第2板状部27と後述する第4板状部35との中間部分を切欠した形態の嵌合溝33が形成されている。図2〜5,8〜10に示すように、第3板状部32の後面は、本実施形態のコネクタを相手側コネクタ(図示省略)に嵌合する際に作業者が指を押し当てるための押圧面34となっている。
【0023】
図1〜4,6〜9に示すように、第4板状部35は、全体として概ね平板状をなし、電線カバー20の右側面の一部を構成している。第4板状部35の上端縁は、第1板状部22に対し、そのリブ状延出部26の右側縁に対して直角に連なっている。図6に示すように、第4板状部35には、その前端縁から前方へ片持ち状に且つ面一状に延出した形態の弾性ロック片29が形成され、弾性ロック片29にはロック孔30が形成されている。同じく第4板状部35には、その前端縁のうち弾性ロック片29よりも下端部から前方へ片持ち状に且つ面一状に延出した形態の延出部が形成され、図6に示すように、延出部の上端縁と弾性ロック片29の下端縁との間は、前方に開口されて前後方向に直線状に延びる第2ガイド溝31となっている。この第4板状部35の弾性ロック片29、延出部及び第2ガイド溝31は、第2板状部27の弾性ロック片29、延出部及び第2ガイド溝31とは、左右対称な形態となっている。
【0024】
一対の受け部36は、図2,3に示すように左右対称であり、図4,5に示すように電線カバー20の下面の一部を構成している。図2,4〜7に示すように、左側の受け部36は、第2板状部27の内面における下端縁部から内側に水平に突出する水平部37と、水平部37の延出端縁(内側の端縁)から上方へ延出する鉛直部38とを備えて構成されている。右側の受け部36は、第4板状部35の内面における下端縁部から内側に水平に突出する水平部37と、水平部37の延出端縁(内側の端縁)から上方へ延出する鉛直部38とを備えて構成されている。
【0025】
図6に示すように、第2板状部27の内面(右側面)と水平部37の上面と鉛直部38の内面(左側面)とで囲まれた空間と、第4板状部35の内面(左側面)と水平部37の上面と鉛直部38の内面(右側面)とで囲まれた空間は、いずれも、前後方向に直線状に延びて、受け部36の前後両端面と上面とに開放された第1ガイド溝39となっている。これらの両第1ガイド溝39には、コネクタハウジング10の第1ガイドリブ16が前後方向の摺動を可能に嵌合されるようになっている。両第1ガイド溝39を構成する鉛直部38の内面の下端縁部は、第1ガイドリブ16の下端縁部の内側に屈曲した部分を嵌合させるために、少し凹んだ形態となっている。
【0026】
図3,6,7に示すように、左側の受け部36の内面、即ち左側の鉛直部38の外面(右側面)には、突起状をなす係止部40が形成されている。係止部40の上面は水平であり、係止部40の下面は水平方向に対して傾斜している。また、右側の受け部36の内面、即ち、右側の鉛直部38の外面(右側面)にも、左側の係止部40と左右対称な突起状の係止部40が形成されている。左右両受け部36は、配索空間23のうち前端部における左右両側縁部を塞いでいる。図2,6,7に示すように、この両受け部36の間の空間は、配索空間23の前端部を電線カバー20の下方へ開放させる幅狭連通部41となっている。この幅狭連通部41は、電線カバー20の下面の開口部24を構成する。
【0027】
一対の受け部36を構成する左右両両水平部37の後端は、第4板状部35の後端縁よりも前方に位置する。そして、図2〜5に示すように、この両水平部37の後端面は、後述する蓋部43の押圧部47からの押圧力を受け止めるための左右対称な一対の受け面42となっている。この一対の受け面42は、コネクタハウジング10からの電線13の導出方向と直角であって左右方向(水平方向)に細長い平坦面である。そして、両受け面42は、前後方向において同じ位置に配置されているとともに、上下方向において同じ高さに配置されている。
【0028】
図2〜5に示すように、蓋部43は、全体として一枚板状をなす蓋本体部44と、蓋本体部44から突出する左右一対の係止片45とを一体に形成したものであって、左右対称な形状である。蓋部43をカバー本体21に組み付けた状態における蓋本体部44の前端部は、それよりも後方の領域よりも幅寸法を小さくした幅狭部46となっている。この幅狭部46の幅寸法は、幅狭連通部41の幅寸法と同じ寸法である。蓋部43をカバー本体21に組み付けた状態における蓋本体部44の前端縁のうち幅狭部46の左右両側方の領域(幅狭部46以外の領域)は、左右対称な一対の押圧部47となっている。
【0029】
図4〜7に示すように、左右一対の係止片45は、蓋部43を組み付けた状態における幅狭部46の上面から上方へ直角に板状に突出する。各係止片45は、幅狭部46の前後方向の側縁に沿うように位置しており、係止片45の外側面と幅狭部46の外側面とは面一状に連なっている。また、図4、5に示すように、係止片45には、左右方向に貫通する係止孔48が形成されている。図2,3に示すように、蓋部43を組み付けた状態における蓋本体部44の後端部は、幅狭部46とほぼ同じ幅の幅狭嵌合部49となっている。この幅狭嵌合部49の後端縁は、第3板状部32の下端縁に対し板状をなすヒンジ50を介して連なっている。
【0030】
次に、電線カバー20をコネクタハウジング10に組み付ける手順を説明する。組付けに際しては、蓋部43をカバー本体21の後方へ退避させて幅狭連通部41を開放させた状態としておき、電線カバー20を、電線13の上から被せるようにしながら、後方からコネクタハウジング10に接近させる。このとき、電線13は、電線カバー20内の配索空間23に収容してもよいが、配索空間23の外へはみ出していてもよい。
【0031】
電線カバー20をコネクタハウジング10に接近させる際には、第1ガイドリブ16に第1ガイド溝39を嵌合させるとともに、第2ガイドリブ17に第2ガイド溝31を嵌合させる。これにより、電線カバー20(カバー本体21)がコネクタハウジング10に対して正しい姿勢で接近する。また、電線カバー20を組み付ける途中では、弾性ロック片29がロック突起14と干渉して左右方向外側へ開くように(退避するように)弾性撓みする。
【0032】
そして、電線カバー20がコネクタハウジング10に対して正規の組付位置に達すると、弾性ロック片29が弾性復帰してロック孔30がロック突起14に係止し、この係止作用により、電線カバー20がコネクタハウジング10に対して後方への相対変位(離脱)を規制される。また、第1ガイドリブ16と第1ガイド溝39の嵌合により、電線カバー20は、コネクタハウジング10に対して左右方向への相対変位を規制される。さらに、第2ガイドリブ17と第2ガイド溝31の嵌合により、電線カバー20は、コネクタハウジング10に対する上下方向への相対変位、及び前傾変位又は後傾変位を規制される。さらにまた、カバー本体21のうち第1板状部22、第2板状部27及び第4板状部35の前端縁がコネクタハウジング10の後面に対して当接又は僅かな隙間を空けて対向することにより、電線カバー20は、コネクタハウジング10に対する前方への相対変位を規制される。
【0033】
電線カバー20をコネクタハウジング10に組み付けた後は、コネクタハウジング10から導出されている電線13を、配索空間23内に収容して、第1板状部22に沿うように転向させて、第1板状部22の右端から電線カバー20外へ右方に導出させる。この後、ヒンジ50を湾曲変形させながら、第3板状部32の下端縁を略支点として蓋部43を反転させるようにしてカバー本体21に組み付ける。以上により、本実施形態のコネクタの組付けが完了する。
【0034】
蓋部43をカバー本体21に組み付けた状態では、一対の係止片45の係止孔48が、一対の受け部36の間(幅狭連通部41)に入り込んで係止部40に係止し、この係止作用により、蓋部43がカバー本体21に対して組付け状態に保持され、蓋部43がカバー本体21に対して上下方向及び前後方向へ相対変位することが規制される。
【0035】
蓋部43を組み付けた状態では、蓋本体部44が、電線カバー20の下面の開口部24のうちコネクタハウジング10の真後ろの領域を閉塞し、幅狭嵌合部49が一対の受け部36の間の幅狭連通部41を閉塞し、幅狭嵌合部49が第3板状部32の嵌合溝33に嵌合する。幅狭嵌合部49と幅狭連通部41との嵌合及び幅狭嵌合部49と嵌合溝33との嵌合により、蓋部43のカバー本体21に対する左右方向への相対変位が規制される。
【0036】
蓋部43を組み付けた状態では、蓋本体部44の後端縁のうち幅狭嵌合部49の左右両側の領域が、第3板状部32に対して前方から当接又は接近して対向することにより、蓋部43のカバー本体21に対する後方への相対変位が規制される。さらに、左右一対の押圧部47が左右一対の受け部36の受け面42に対して後方から当接又は接近して対向することにより、蓋部43のカバー本体21に対する前方への相対変位が規制される。
【0037】
本実施形態のコネクタを相手側コネクタ(図示省略)に嵌合する際には、作業者は、指を第3板状部32の押圧面34に宛がって押し操作することができる。このとき、第3板状部32に付与した押圧力は、蓋部43に伝わり、蓋部43から受け部36に伝わり、受け部36からコネクタハウジング10の後面に伝わる。つまり、第3板状部32に作用する操作力は、蓋部43と受け部36を介してコネクタハウジング10の後面で受け止められる。蓋部43と受け部36は、第3板状部32とコネクタハウジング10の後面との間で突っ張り棒のように作用するので、押圧面34に後方からの押圧力が作用しても、この押圧力の作用に起因して第3板状部32が変形する虞はない。
【0038】
また、受け部36が前方に位置するほど、蓋部43の前後長が長くなるため、蓋部43の剛性が低下するのであるが、本実施形態では、受け部36をコネクタハウジング10の後面よりも後方に配置しているので、蓋部43の前後長が短くなり、蓋部43の剛性が向上する。これにより、第3板状部32の変形を確実に防止することができる。
【0039】
また、蓋部43に係止片45を形成し、受け部36に、蓋部43が開口部24を閉塞している状態において、係止片45を係止させることで蓋部43の開放方向への変位を規制する係止部40を形成した。この構成によれば、蓋部43の押圧部47からの押圧力を受け止める受け部36の近傍に、蓋部43を閉塞状態にロックするための係止部40が配置されていることになるので、係止部40に蓋部43の係止片45が係止した状態では、その係止作用により、押圧部47の受け部36に対する位置ずれが防止される。これにより、押圧部47を受け部36に対して確実に当接させることができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、蓋部をヒンジを介してカバー本体に一体に連結した形態としたが、蓋部は、カバー本体とは別体の部品としてもよい。
(2)上記実施形態では、蓋部をヒンジを介して第3板状部に連なるようにしたが、蓋部は、ヒンジを介して第2板状部に連なるようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、受け部を電線カバーのうちコネクタハウジングの後面に当接する部分に形成したが、受け部は、コネクタハウジングの後面に形成してもよい。
(4)上記実施例では、蓋部の押圧部からの押圧力を受け止める受け部の近傍に、蓋部を閉塞状態にロックするための係止部を配置したが、係止部は、受け部から離れた位置に配置してもよい。この場合、係止部は、受け部が形成されている板状部とは別の板状部に形成することができる。
(5)上記実施形態では、蓋部を閉塞状態にロックするための係止片と、電線カバーをコネクタハウジングへの組付け状態にロックするための弾性ロック片とを互いに非接触となるように配置したが、これに変えて、係止片と弾性ロック片を互いに当接可能な配置としてもよい。この場合、電線カバーがコネクタハウジングに対して不正な嵌合状態となって弾性ロック片が弾性撓みしたままになった状態では、この弾性ロック片に対して蓋部の係止片が干渉し、係止片が係止状態とならないようにすることができる。このようにすれば、蓋部を閉塞状態へ変位させる際に、コネクタハウジングに対して電線カバーが適性に嵌合されているか否かを検知することができる。
【符号の説明】
【0041】
10…コネクタハウジング
12…端子金具
13…電線
20…電線カバー
22…第1板状部
23…配索空間
24…開口部
27…第2板状部
28…稜線部
32…第3板状部
36…受け部
40…係止部
43…蓋部
45…係止片
47…押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングと、
電線の前端部に接続されて前記コネクタハウジング内に収容された端子金具と、
前記コネクタハウジングの後端部に取り付けられ、前記コネクタハウジングの後面から導出された前記電線を包囲して導出方向と略直角な方向へ転向させる電線カバーとを備え、
前記電線カバーが、
前記電線の導出方向に沿うように配された第1板状部と、
前記電線の導出方向に沿うように配され、前記第1板状部に対し概ね前記電線の導出方向に沿った稜線部を介して連なる第2板状部と、
前記第1板状部の後端と前記第2板状部の後端とに連なり、前記コネクタハウジングの後面と対向するように配された第3板状部と、
前記第1板状部、前記第2板状部及び前記第3板状部により前記電線を収容可能に形成され、前記第1板状部とは反対側に開放された開口部を有する配索空間と、
前記開口部を開閉可能な蓋部とを備えて構成されているコネクタにおいて、
前記蓋部は、前記開口部を閉塞した状態において、前記第3板状部に対して後方へ相対変位することを規制されており、
前記コネクタハウジングの後面、又は前記電線カバーのうち前記コネクタハウジングの後面に当接する部分に形成された受け部と、
前記蓋部に形成され、前記蓋部が前記開口部を閉塞した状態において、前記受け部に対して後方から押圧力を付与可能な押圧部とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記受け部が、前記電線カバーにおける前記コネクタハウジングの後面よりも後方の位置に形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記蓋部には、係止片が形成され、
前記受け部には、前記蓋部が前記開口部を閉塞している状態において、前記係止片を係止させることで前記蓋部の開放方向への変位を規制する係止部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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