コネクタ
【課題】一括ゴム栓の後端面に水が溜まるのを防止する。
【解決手段】コネクタXは、複数の端子収容室14が形成されたハウジング10と、ハウジング10の後端面を凹ませた形態であって端子収容室14の後端に連通する収容凹部11と、端子収容室14と対応する複数の電線挿通孔22を有していて収容凹部11内に収容された一括ゴム栓20とを備える。一括ゴム栓20には、その後端面から外周縁に達する排水路23が形成されている。
【解決手段】コネクタXは、複数の端子収容室14が形成されたハウジング10と、ハウジング10の後端面を凹ませた形態であって端子収容室14の後端に連通する収容凹部11と、端子収容室14と対応する複数の電線挿通孔22を有していて収容凹部11内に収容された一括ゴム栓20とを備える。一括ゴム栓20には、その後端面から外周縁に達する排水路23が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の端子収容室を有するハウジングと、ハウジングの後端面を凹ませた形態であって端子収容室の後端に連通する収容凹部と、端子収容室と対応する複数の電線挿通孔を有していて収容凹部内に収容された一括ゴム栓と、端子収容室内から電線挿通孔を貫通して一括ゴム栓の後方へ導出された電線とを備えた防水タイプのコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−299156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このコネクタは、一括ゴム栓の後端面が上向きとなる姿勢で使用された場合、一括ゴム栓の上に水が溜まることが懸念される。もし、一括ゴム栓の後面に水が溜まると、その溜まった水が、電線挿通孔と電線との隙間を通ってハウジング(端子収容室)内へ浸入することが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、一括ゴム栓の後端面に水が溜まるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数の端子収容室が形成されたハウジングと、前記ハウジングの後端面を凹ませた形態であって前記端子収容室の後端に連通する収容凹部と、前記端子収容室と対応する複数の電線挿通孔を有していて前記収容凹部内に収容された一括ゴム栓とを備えたコネクタにおいて、前記一括ゴム栓には、その後端面から外周縁に達する排水路が形成されているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記排水路は、前記電線挿通孔の孔縁部に連通しているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記一括ゴム栓には、隣り合う2つの前記電線挿通孔の孔縁部同士を連通させた形態であって、前記電線挿通孔を介して前記排水路に連通する連通路が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記収容凹部を構成する周壁部には、前記排水路を前記周壁部の外面側へ連通させる排出部が形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記一括ゴム栓は、前後対称な形状をなしており、前記収容凹部の奥端面には、前記排水路に嵌合される突部が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
一括ゴム栓の後端面上の水は、排水路を通って一括ゴム栓の外周縁から排出されるので、一括ゴム栓の後端面に水が溜まる虞はない。
【0011】
<請求項2の発明>
排水路が電線挿通孔の孔縁部に連通しているので、電線挿通孔の後端部の水を確実に排出することができる。
【0012】
<請求項3の発明>
電線挿通孔と一括ゴム栓の外周縁との間に別の電線挿通孔が存在する場合、この2つの電線挿通孔から別々に一括ゴム栓の外周縁に達する2本の排水路を延ばした場合に比べると、本発明は、この2つの電線挿通孔同士を連通路で連通することにより、一括ゴム栓の外周縁に近い側の電線挿通孔から延ばした排水路を、外周縁から遠い側の電線挿通孔用の排水路として兼用させることができる。
【0013】
<請求項4の発明>
排水路を通って一括ゴム栓の外周縁に到達した液体は、排出部を通って収容凹部の外部へ排出される。
【0014】
<請求項5の発明>
一括ゴム栓を前後対称な形状としたので、収容凹部に取り付ける際に一括ゴム栓の前後の向きを考慮せずに済み、作業性が良い。また、一括ゴム栓を取り付けた状態では、排水路と突部との嵌合により一括ゴム栓の前面側の不正な変形や位置ずれが規制されるので、電線挿通孔の前面側の開口部を、端子収容室の後面側の開口部に対して正しい位置関係となるように整合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1のコネクタの斜視図
【図2】ハウジングと一括ゴム栓とゴム栓ホルダを分離した状態をあらわす斜視図
【図3】背面図
【図4】図3のA−A線断面図
【図5】図3のB−B線断面図
【図6】実施形態2のコネクタの斜視図
【図7】ハウジングと一括ゴム栓とゴム栓ホルダを分離した状態をあらわす斜視図
【図8】背面図
【図9】図8のC−C線断面図
【図10】図8のD−D線断面図
【図11】実施形態3のコネクタの斜視図
【図12】ハウジングと一括ゴム栓とゴム栓ホルダを分離した状態をあらわす斜視図
【図13】背面図
【図14】図13のE−E線断面図
【図15】図13のF−F線断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図5を参照して説明する。本実施形態のコネクタXは、合成樹脂製のブロック状をなすハウジング10と、ハウジング10の後端部に組み付けられる一括ゴム栓20と、ハウジング10の後端部に組み付けられるゴム栓ホルダ30とを備えている。尚、以下の説明においては、ハウジング10、一括ゴム栓20及びゴム栓ホルダ30の後端面が上向きとなった状態を基準として方向を定義する。また、ハウジング10は、その後半領域のみを図示し、前半領域の図示は省略する。
【0017】
ハウジング10の後端部には、後方へ開放された形態の収容凹部11が形成されている。収容凹部11の開口形状は、奥行き方向に比べて幅方向の寸法が大きい略長方形をなしている。収容凹部11の周壁部12は、幅方向に沿った一対の長辺側壁部12Lと、奥行き方向に沿った一対の短辺側壁部12Sと、四半円弧状をなして両壁部12L,12Sの端部同士を滑らかに繋ぐ4つの弧状壁部12Rとから構成されている。この周壁部12の内周面はシール面として機能する。また、短辺側壁部12Sの外面には、一対の係止突起13が形成されている。
【0018】
ハウジング10の内部には、16室の端子収容室14が前後方向に貫通して形成されており、各端子収容室14の後端は収容凹部11の奥端面に開口している。16室の端子収容室14は、幅方向及び奥行き方向に沿って直線状に並ぶように整列配置されている。即ち、端子収容室14は奥行き方向において2列に分かれ、各列においては8室の端子収容室14が幅方向に一定ピッチで並んでいる。この端子収容室14内には後方から周知形態の端子金具(図示省略)が挿入されるようになっている。
【0019】
一括ゴム栓20は、前後方向(厚さ方向)、幅方向及び奥行き方向において対称な形状であって、一括ゴム栓20の前後両端面は略長方形をなしている一括ゴム栓20の厚さ寸法(前後方向)の寸法は、収容凹部11の前後方向の深さ寸法よりも小さい。一括ゴム栓20は、ハウジング10に対し後方から収容凹部11内に嵌入(収容)されるようにして組み付けられている。組み付けられた状態では、一括ゴム栓20の前端面が収容凹部11の奥端面に当接し、一括ゴム栓20の外周の外周側リップ部21が、周壁部12の内周面に対して弾性撓みした状態で液密状に密着している。一括ゴム栓20には、前後方向に貫通する16の円形をなす電線挿通孔22が、ハウジング10に組み付けたときに端子収容室14と対応(整合)するように幅方向及び奥行き方向に整列して形成されている。電線挿通孔22の内周には、最小内径が電線(図示省略)の外径よりも小さい内周側リップ部が形成されている。
【0020】
ゴム栓ホルダ30は、合成樹脂製であり、略長方形の板状をなして収容凹部11の後端の開口部を全領域に亘って閉塞する本体部31と、本体部31の幅方向における両端部から前方へ突出する一対の弾性係止片32とを有している。本体部31の前端面における外周縁部は全周に亘って切欠されており、本体部31のうち切欠されなかった領域は、収容凹部11の後端部に嵌入する嵌入部33となっている。本体部31には、前後方向(厚さ方向)に貫通する16の方形をなす貫通孔34が、ハウジング10に組み付けたときに電線挿通孔22及び端子収容室14と対応(整合)するように幅方向及び奥行き方向に整列して形成されている。
【0021】
ゴム栓ホルダ30は、ハウジング10に対して後方から組み付けられ、弾性係止片32と係止突起13との係止により組付け状態に保持されている。ゴム栓ホルダ30が組み付けられた状態では、嵌入部33の前面が収容凹部11内に取り付けられている一括ゴム栓20の後端面に対して押圧することにより、一括ゴム栓20がハウジング10(収容凹部11)に対して後方への離脱や位置ずれを規制された状態に保持される。
【0022】
端子金具は、後方から貫通孔34と電線挿通孔22を順に通過して端子収容室14内に挿入される。端子金具が端子収容室14に挿入された状態では、端子金具の後端部に接続された電線が電線挿通孔22に液密状に貫通され、貫通孔34を通過してゴム栓ホルダ30の後方へ導出される。電線は端子金具よりも細く、貫通孔34は端子金具を貫通させる大きさを有しているので、貫通孔34の内周と電線の外周との間には大きな隙間が空くことになる。そのため、この隙間を通って、コネクタXの後方から水(他の液体も含む)が一括ゴム栓20の後端面上に浸入する虞がある。以下、その対策として、一括ゴム栓20の後端面上の水を排出する手段について説明する。
【0023】
一括ゴム栓20の後端面には、各電線挿通孔22の孔縁部から一括ゴム栓20の外周縁に達する合計20本の排水路23が形成されている。排水路23は、一括ゴム栓20の後端面上に開放された方形断面の溝状をなし、直線状に延びている。幅方向における両端部に位置する4つの電線挿通孔22に関しては、電線挿通孔22から幅方向に1本の排水路23が延びているとともに、奥行き方向に1本の排水路23が延びている。また、幅方向両端部以外の位置に配置された12の電線挿通孔22に関しては、各電線挿通孔22から奥行き方向に1本の排水路23が延びている。つまり、全ての電線挿通孔22に排水路23が連通している。
【0024】
一括ゴム栓20の後端面には、幅方向に隣り合う電線挿通孔22の孔縁部同士を連通させる14本の連通路24が形成されている。連通路24は、排水路23と同じく、一括ゴム栓20の後端面上に開放された方形断面の溝状をなし、直線状に延びている。同じく一括ゴム栓20の後端面には、奥行き方向に隣り合う電線挿通孔22の孔縁部同士を連通させる8本の連通路24が形成されている。つまり、全ての電線挿通孔22は連通路24に連通しており、したがって、全ての排水路23は電線挿通孔22を介していずれかの連通路24と連通している。連通路24は、排水路23と同じく、一括ゴム栓20の後端面上に開放された方形断面の溝状をなし、直線状に延びている。
【0025】
これらの排水路23と連通路24は、幅方向において、電線挿通孔22を介して一直線状に並ぶように配置されているとともに、奥行き方向においても、電線挿通孔22を介して一直線状に並ぶように配置されている。つまり、一括ゴム栓20の後端面上においては、排水路23と連通路24とで構成されて一括ゴム栓20の外周縁に開口するように幅方向に延びる2本の流路と、排水路23と連通路24とで構成されて一括ゴム栓20の外周縁に開口するように奥行き方向に延びる8本の流路とが形成され、この幅方向に延びる2本の流路と奥行き方向に延びる8本の流路とが、電線挿通孔22において直角に交差している。尚、一括ゴム栓20は前後対称であるため、一括ゴム栓20の前端面にも、後端面と同じ数、同じ配置の排水路23と連通路24が形成されている。
【0026】
また、ハウジング10の周壁部12には、周壁部12を貫通して収容凹部11の内部と外部とを連通させる形態の排出部15が形成されている。排出部15は、方形に開口し、その開口領域は全周に亘って窓孔状に閉じた形態(即ち、周壁部12の後端縁に開放されていない形態)となっている。排出部15は、一括ゴム栓20の外周縁における各排水路23の開口端と対応するように合計20箇所に設けられており、排水路23及び連通路24の長さ方向の延長線上に位置している。つまり、1つの排水路23に対して1つの排出部15が配置されている。また、前後方向(一括ゴム栓20の厚さ方向)において、排出部15の開口領域は、一括ゴム栓20の外周面における排水路23の開口領域の全体を含む領域に亘っている。即ち、前後方向において、排出部15の開口縁における後縁は一括ゴム栓20の後端面と同じ位置にあり、排出部15の開口縁における前縁は、一括ゴム栓20の外周面における排水路23の開口領域よりも前方に位置している。
【0027】
上記構成によれば、貫通孔34から一括ゴム栓20の後端面上に浸入した水は、排水路23のみを通る経路、電線挿通孔22と排水路23を順に通る経路、連通路24と電線挿通孔22と排水路23を順に通る経路、電線挿通孔22と連通路24と別の電線挿通孔22と排水路23を順に通る経路、複数の連通路24と複数の電線挿通孔22を交互に通って排水路23を経る経路等、種々の経路を経て一括ゴム栓20の外周縁(外周面)に到達し、その後、排出部15を通って収容凹部11(ハウジング10)の外部へ排出される。
【0028】
本実施形態のコネクタXは、複数の端子収容室14が形成されたハウジング10と、ハウジング10の後端面を凹ませた形態であって端子収容室14の後端に連通する収容凹部11と、端子収容室14と対応する複数の電線挿通孔22を有していて収容凹部11内に収容された一括ゴム栓20とを備えたものであって、一括ゴム栓20に、その後端面から外周縁に達する排水路23を形成しているので、一括ゴム栓20の後端面上の水を、排水路23を通して一括ゴム栓20の外周縁から排出させることができる。したがって、一括ゴム栓20の後端面に水が溜まる虞はない。
【0029】
また、排水路23は、電線挿通孔22の孔縁部に連通しているので、電線挿通孔22の後端部の水も確実に排出することができる。また、収容凹部11を構成する周壁部12には、排水路23を周壁部12の外面側へ連通させる排出部15を形成したので、排水路23を通って一括ゴム栓20の外周縁に到達した液体は、排出部15を通って収容凹部11の外部へ確実に排出される。また、一括ゴム栓20を前後対称な形状としたので、収容凹部11に取り付ける際に一括ゴム栓20の前後の向きを考慮せずに済み、作業性が良い。
【0030】
また、本実施形態では、幅方向において電線挿通孔22と一括ゴム栓20の外周縁との間に別の電線挿通孔22が存在するのであるが、この2つの電線挿通孔22から別々に一括ゴム栓20の外周縁に向けて排水経路を延ばした場合には、2本の排水経路が必要となる。この点に鑑み、本実施形態では、一括ゴム栓20に、隣り合う2つの電線挿通孔22の孔縁部同士を連通させた形態であって、電線挿通孔22を介して排水路23に連通する連通路24を形成した。このように隣り合う2つの電線挿通孔22同士を連通路24で連通すれば、一括ゴム栓20の外周縁に近い側の電線挿通孔22から延ばした排水路23を、外周縁から遠い側の電線挿通孔22用の排水路23として兼用させることができるので、排水経路の長さを短くすることができる。
【0031】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図6〜図10を参照して説明する。本実施形態2のコネクタYは、ハウジング40の収容凹部41とゴム栓ホルダ50の形態を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0032】
上記実施形態1の排出部15は、その開口領域が全周に亘って窓孔状に閉じた形態(即ち、周壁部12の後端縁には開放されていない形態)となっていたが、本実施形態2の排出部45は、その開口領域のうち後端が周壁部42の後端縁に開放された形態となっている。即ち、排出部45は、周壁部42の後端縁を方形に切欠した形態となっている。また、収容凹部41の前後方向の深さ寸法は、実施形態1の収容凹部11よりも小さくなっており、収容凹部41内に組み付けた一括ゴム栓20の後端面と、周壁部42の後端面とが、前後方向において同じ位置にある。ゴム栓ホルダ50は、実施形態1の嵌入部33に相当する部位が本体部51に形成されておらず、本体部51の前面は全領域に亘って段差のない平坦面となっている。そして、この本体部51の前面で一括ゴム栓20の後端面を押圧している。
【0033】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を図11〜図15を参照して説明する。本実施形態3のコネクタZは、ハウジング60とゴム栓ホルダ70を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0034】
上記実施形態1では、収容凹部11の周壁部12に排出部15が形成されていたのに対し、本実施形態3では、排出部73が、収容凹部61の周壁部62にではなく、ゴム栓ホルダ70に形成されている。即ち、収容凹部61の前後方向の深さ寸法は、実施形態1の収容凹部11よりも小さくなっており、収容凹部61内に組み付けた一括ゴム栓20の後端面が、周壁部62の後端面よりも後方に突出するように位置している。そして、ゴム栓ホルダ70の本体部71の前面には、その外周縁に沿って前方へリブ状(壁状)に突出する外嵌部72が全周に亘って形成されている。そして、この外嵌部72には、その前端縁部を方形に切り欠くことによって排出部73が形成されている。
【0035】
ゴム栓ホルダ70をハウジング60に組み付けた状態では、外嵌部72の前端が周壁部62の後端に突き当たるとともに、本体部71の前面が一括ゴム栓20の後端面を押圧する。また、外嵌部72が、一括ゴム栓20のうち周壁部62の後端よりも後方へ突出した後端部を全周に亘って包囲する。そして、外嵌部72に形成した排出部73が一括ゴム栓20の後端面の排水路23と対応するように位置する。
【0036】
また、本実施形態3では、一括ゴム栓20が前後対称であって一括ゴム栓20の前端面にも溝状の排水路23と連通路24が形成されていることに着目し、収容凹部61の奥端面には、排水路23及び連通路24と対応する複数の突部63が形成されている。一括ゴム栓20を収容凹部61内に組み付けた状態では、排水路23と連通路24が突部63に嵌合することにより、一括ゴム栓20の前端部は収容凹部61に対して幅方向及び奥行き方向への相対変位や不正な弾性変形を規制される。これにより、電線挿通孔22の前面側の開口部は、端子収容室14の後端側の開口部に対して正しい位置関係を保った状態に位置決めされる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1〜3では、排水路の全領域が一括ゴム栓の後端面に開放された溝状としたが、排水路は、両端が一括ゴム栓の後端面と外周縁とに開口し、それ以外の領域が一括ゴム栓の内部を貫通する形態であってもよい。
(2)上記実施形態1〜3では、全ての排水路が電線挿通孔の孔縁部に連通する形態としたが、全ての排水路が電線挿通孔の孔縁部に連通しない形態でもよく、複数の排水路のうちいずれかの排水路のみが電線挿通孔の孔縁部に連通する形態であってもよい。
(3)上記実施形態1〜3では、排水路を直線状としたが、排水路は、曲線状の経路や屈曲した経路であってもよい。
(4)上記実施形態1〜3では、幅方向及び奥行き方向に隣り合う位置関係となっている2つの電線挿通孔の孔縁部同士を、全て、連通路で連通させたが、このような位置関係となっているもののうちいずれかの電線挿通孔同士は連通路で連通させない形態としてもよい。
(5)上記実施形態1〜3では、幅方向及び奥行き方向に隣り合う位置関係となっている2つの電線挿通孔同士を連通路で連通させたが、斜め方向に隣り合う2つの電線挿通孔同士を連通路で連通させてもよい。
(6)上記実施形態1〜3では、連通路を直線状としたが、連通路は、曲線状の経路や屈曲した形態であってもよい。
(7)上記実施形態1〜3では、隣り合う2つの電線挿通孔同士を連通させる連通路を形成したが、このような連通路を形成しない形態としてもよい。
(8)上記実施形態1〜3では、連通路と排水路を一直線状に並ぶように配置したが、連通路と排水路を互いに斜めをなす位置関係となるように配置してもよい。
(9)上記実施形態1〜3では、排水路と連通路を電線挿通孔を介して連通する形態としたが、排水路と連通路とを、直接、連通させてもよい。この場合、排水路が、連通路から分岐する形態としてもよく、連通路を横切る形態としてもよい。
(10)上記実施形態1〜3では、1つの排水路に対して1つの排出部を設けたが、1つの排出部が複数の排水路と対応するようにしてもよい。
(11)上記実施形態1〜3では、複数の電線挿通孔を、幅方向及び奥行き方向において縦横に整列するように配置したが、複数の電線挿通孔は千鳥状に配置されていてもよい。
(12)上記実施形態1〜3では、一括ゴム栓を前後対称な形状としたが、一括ゴム栓は前後非対称な形状であってもよい。この場合、実施形態1,2においては、一括ゴム栓の前面に排水路や連通路を形成しない形態としてもよく、実施形態3においては、排水路や連通路の位置を前後で異ならせればよい。
(13)上記実施形態3の排水路と突部を嵌合させる構成は、実施形態1,2にも適用できる。
(14)上記実施形態3の連通路と突部を嵌合させる構成は、実施形態1,2にも適用できる。
(15)上記実施形態3のゴム栓ホルダに排出部を形成する構成は、実施形態2に適用することができる。この場合、ゴム栓ホルダの排出部と周壁部の排出部とを整合させて1つの排出部を構成することができる。
(16)上記実施形態1〜3では、端子収容室と電線挿通孔の数を16としたが、端子収容室と電線挿通孔の数は、15以下でも、17以上でもよい。
(17)上記実施形態では、端子収容室と電線挿通孔を奥行き方向において2列に分けて配置したが、奥行き方向における列の数は、1列でも、3列以上でもよい。
(18)上記実施形態1〜3では、端子収容室と電線挿通孔を幅方向に8つずつ並ぶようにしたが、端子収容室と電線挿通孔の幅方向の並び数は、7以下でも、9以上でもよい。
【符号の説明】
【0038】
X…コネクタ
10…ハウジング
11…収容凹部
12…周壁部
14…端子収容室
15…排出部
20…一括ゴム栓
22…電線挿通孔
23…排水路
24…連通路
Y,Z…コネクタ
40,60…ハウジング
41,61…収容凹部
42,62…周壁部
45,73…排出部
63…突部
72…外嵌部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の端子収容室を有するハウジングと、ハウジングの後端面を凹ませた形態であって端子収容室の後端に連通する収容凹部と、端子収容室と対応する複数の電線挿通孔を有していて収容凹部内に収容された一括ゴム栓と、端子収容室内から電線挿通孔を貫通して一括ゴム栓の後方へ導出された電線とを備えた防水タイプのコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−299156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このコネクタは、一括ゴム栓の後端面が上向きとなる姿勢で使用された場合、一括ゴム栓の上に水が溜まることが懸念される。もし、一括ゴム栓の後面に水が溜まると、その溜まった水が、電線挿通孔と電線との隙間を通ってハウジング(端子収容室)内へ浸入することが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、一括ゴム栓の後端面に水が溜まるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数の端子収容室が形成されたハウジングと、前記ハウジングの後端面を凹ませた形態であって前記端子収容室の後端に連通する収容凹部と、前記端子収容室と対応する複数の電線挿通孔を有していて前記収容凹部内に収容された一括ゴム栓とを備えたコネクタにおいて、前記一括ゴム栓には、その後端面から外周縁に達する排水路が形成されているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記排水路は、前記電線挿通孔の孔縁部に連通しているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記一括ゴム栓には、隣り合う2つの前記電線挿通孔の孔縁部同士を連通させた形態であって、前記電線挿通孔を介して前記排水路に連通する連通路が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記収容凹部を構成する周壁部には、前記排水路を前記周壁部の外面側へ連通させる排出部が形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記一括ゴム栓は、前後対称な形状をなしており、前記収容凹部の奥端面には、前記排水路に嵌合される突部が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
一括ゴム栓の後端面上の水は、排水路を通って一括ゴム栓の外周縁から排出されるので、一括ゴム栓の後端面に水が溜まる虞はない。
【0011】
<請求項2の発明>
排水路が電線挿通孔の孔縁部に連通しているので、電線挿通孔の後端部の水を確実に排出することができる。
【0012】
<請求項3の発明>
電線挿通孔と一括ゴム栓の外周縁との間に別の電線挿通孔が存在する場合、この2つの電線挿通孔から別々に一括ゴム栓の外周縁に達する2本の排水路を延ばした場合に比べると、本発明は、この2つの電線挿通孔同士を連通路で連通することにより、一括ゴム栓の外周縁に近い側の電線挿通孔から延ばした排水路を、外周縁から遠い側の電線挿通孔用の排水路として兼用させることができる。
【0013】
<請求項4の発明>
排水路を通って一括ゴム栓の外周縁に到達した液体は、排出部を通って収容凹部の外部へ排出される。
【0014】
<請求項5の発明>
一括ゴム栓を前後対称な形状としたので、収容凹部に取り付ける際に一括ゴム栓の前後の向きを考慮せずに済み、作業性が良い。また、一括ゴム栓を取り付けた状態では、排水路と突部との嵌合により一括ゴム栓の前面側の不正な変形や位置ずれが規制されるので、電線挿通孔の前面側の開口部を、端子収容室の後面側の開口部に対して正しい位置関係となるように整合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1のコネクタの斜視図
【図2】ハウジングと一括ゴム栓とゴム栓ホルダを分離した状態をあらわす斜視図
【図3】背面図
【図4】図3のA−A線断面図
【図5】図3のB−B線断面図
【図6】実施形態2のコネクタの斜視図
【図7】ハウジングと一括ゴム栓とゴム栓ホルダを分離した状態をあらわす斜視図
【図8】背面図
【図9】図8のC−C線断面図
【図10】図8のD−D線断面図
【図11】実施形態3のコネクタの斜視図
【図12】ハウジングと一括ゴム栓とゴム栓ホルダを分離した状態をあらわす斜視図
【図13】背面図
【図14】図13のE−E線断面図
【図15】図13のF−F線断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図5を参照して説明する。本実施形態のコネクタXは、合成樹脂製のブロック状をなすハウジング10と、ハウジング10の後端部に組み付けられる一括ゴム栓20と、ハウジング10の後端部に組み付けられるゴム栓ホルダ30とを備えている。尚、以下の説明においては、ハウジング10、一括ゴム栓20及びゴム栓ホルダ30の後端面が上向きとなった状態を基準として方向を定義する。また、ハウジング10は、その後半領域のみを図示し、前半領域の図示は省略する。
【0017】
ハウジング10の後端部には、後方へ開放された形態の収容凹部11が形成されている。収容凹部11の開口形状は、奥行き方向に比べて幅方向の寸法が大きい略長方形をなしている。収容凹部11の周壁部12は、幅方向に沿った一対の長辺側壁部12Lと、奥行き方向に沿った一対の短辺側壁部12Sと、四半円弧状をなして両壁部12L,12Sの端部同士を滑らかに繋ぐ4つの弧状壁部12Rとから構成されている。この周壁部12の内周面はシール面として機能する。また、短辺側壁部12Sの外面には、一対の係止突起13が形成されている。
【0018】
ハウジング10の内部には、16室の端子収容室14が前後方向に貫通して形成されており、各端子収容室14の後端は収容凹部11の奥端面に開口している。16室の端子収容室14は、幅方向及び奥行き方向に沿って直線状に並ぶように整列配置されている。即ち、端子収容室14は奥行き方向において2列に分かれ、各列においては8室の端子収容室14が幅方向に一定ピッチで並んでいる。この端子収容室14内には後方から周知形態の端子金具(図示省略)が挿入されるようになっている。
【0019】
一括ゴム栓20は、前後方向(厚さ方向)、幅方向及び奥行き方向において対称な形状であって、一括ゴム栓20の前後両端面は略長方形をなしている一括ゴム栓20の厚さ寸法(前後方向)の寸法は、収容凹部11の前後方向の深さ寸法よりも小さい。一括ゴム栓20は、ハウジング10に対し後方から収容凹部11内に嵌入(収容)されるようにして組み付けられている。組み付けられた状態では、一括ゴム栓20の前端面が収容凹部11の奥端面に当接し、一括ゴム栓20の外周の外周側リップ部21が、周壁部12の内周面に対して弾性撓みした状態で液密状に密着している。一括ゴム栓20には、前後方向に貫通する16の円形をなす電線挿通孔22が、ハウジング10に組み付けたときに端子収容室14と対応(整合)するように幅方向及び奥行き方向に整列して形成されている。電線挿通孔22の内周には、最小内径が電線(図示省略)の外径よりも小さい内周側リップ部が形成されている。
【0020】
ゴム栓ホルダ30は、合成樹脂製であり、略長方形の板状をなして収容凹部11の後端の開口部を全領域に亘って閉塞する本体部31と、本体部31の幅方向における両端部から前方へ突出する一対の弾性係止片32とを有している。本体部31の前端面における外周縁部は全周に亘って切欠されており、本体部31のうち切欠されなかった領域は、収容凹部11の後端部に嵌入する嵌入部33となっている。本体部31には、前後方向(厚さ方向)に貫通する16の方形をなす貫通孔34が、ハウジング10に組み付けたときに電線挿通孔22及び端子収容室14と対応(整合)するように幅方向及び奥行き方向に整列して形成されている。
【0021】
ゴム栓ホルダ30は、ハウジング10に対して後方から組み付けられ、弾性係止片32と係止突起13との係止により組付け状態に保持されている。ゴム栓ホルダ30が組み付けられた状態では、嵌入部33の前面が収容凹部11内に取り付けられている一括ゴム栓20の後端面に対して押圧することにより、一括ゴム栓20がハウジング10(収容凹部11)に対して後方への離脱や位置ずれを規制された状態に保持される。
【0022】
端子金具は、後方から貫通孔34と電線挿通孔22を順に通過して端子収容室14内に挿入される。端子金具が端子収容室14に挿入された状態では、端子金具の後端部に接続された電線が電線挿通孔22に液密状に貫通され、貫通孔34を通過してゴム栓ホルダ30の後方へ導出される。電線は端子金具よりも細く、貫通孔34は端子金具を貫通させる大きさを有しているので、貫通孔34の内周と電線の外周との間には大きな隙間が空くことになる。そのため、この隙間を通って、コネクタXの後方から水(他の液体も含む)が一括ゴム栓20の後端面上に浸入する虞がある。以下、その対策として、一括ゴム栓20の後端面上の水を排出する手段について説明する。
【0023】
一括ゴム栓20の後端面には、各電線挿通孔22の孔縁部から一括ゴム栓20の外周縁に達する合計20本の排水路23が形成されている。排水路23は、一括ゴム栓20の後端面上に開放された方形断面の溝状をなし、直線状に延びている。幅方向における両端部に位置する4つの電線挿通孔22に関しては、電線挿通孔22から幅方向に1本の排水路23が延びているとともに、奥行き方向に1本の排水路23が延びている。また、幅方向両端部以外の位置に配置された12の電線挿通孔22に関しては、各電線挿通孔22から奥行き方向に1本の排水路23が延びている。つまり、全ての電線挿通孔22に排水路23が連通している。
【0024】
一括ゴム栓20の後端面には、幅方向に隣り合う電線挿通孔22の孔縁部同士を連通させる14本の連通路24が形成されている。連通路24は、排水路23と同じく、一括ゴム栓20の後端面上に開放された方形断面の溝状をなし、直線状に延びている。同じく一括ゴム栓20の後端面には、奥行き方向に隣り合う電線挿通孔22の孔縁部同士を連通させる8本の連通路24が形成されている。つまり、全ての電線挿通孔22は連通路24に連通しており、したがって、全ての排水路23は電線挿通孔22を介していずれかの連通路24と連通している。連通路24は、排水路23と同じく、一括ゴム栓20の後端面上に開放された方形断面の溝状をなし、直線状に延びている。
【0025】
これらの排水路23と連通路24は、幅方向において、電線挿通孔22を介して一直線状に並ぶように配置されているとともに、奥行き方向においても、電線挿通孔22を介して一直線状に並ぶように配置されている。つまり、一括ゴム栓20の後端面上においては、排水路23と連通路24とで構成されて一括ゴム栓20の外周縁に開口するように幅方向に延びる2本の流路と、排水路23と連通路24とで構成されて一括ゴム栓20の外周縁に開口するように奥行き方向に延びる8本の流路とが形成され、この幅方向に延びる2本の流路と奥行き方向に延びる8本の流路とが、電線挿通孔22において直角に交差している。尚、一括ゴム栓20は前後対称であるため、一括ゴム栓20の前端面にも、後端面と同じ数、同じ配置の排水路23と連通路24が形成されている。
【0026】
また、ハウジング10の周壁部12には、周壁部12を貫通して収容凹部11の内部と外部とを連通させる形態の排出部15が形成されている。排出部15は、方形に開口し、その開口領域は全周に亘って窓孔状に閉じた形態(即ち、周壁部12の後端縁に開放されていない形態)となっている。排出部15は、一括ゴム栓20の外周縁における各排水路23の開口端と対応するように合計20箇所に設けられており、排水路23及び連通路24の長さ方向の延長線上に位置している。つまり、1つの排水路23に対して1つの排出部15が配置されている。また、前後方向(一括ゴム栓20の厚さ方向)において、排出部15の開口領域は、一括ゴム栓20の外周面における排水路23の開口領域の全体を含む領域に亘っている。即ち、前後方向において、排出部15の開口縁における後縁は一括ゴム栓20の後端面と同じ位置にあり、排出部15の開口縁における前縁は、一括ゴム栓20の外周面における排水路23の開口領域よりも前方に位置している。
【0027】
上記構成によれば、貫通孔34から一括ゴム栓20の後端面上に浸入した水は、排水路23のみを通る経路、電線挿通孔22と排水路23を順に通る経路、連通路24と電線挿通孔22と排水路23を順に通る経路、電線挿通孔22と連通路24と別の電線挿通孔22と排水路23を順に通る経路、複数の連通路24と複数の電線挿通孔22を交互に通って排水路23を経る経路等、種々の経路を経て一括ゴム栓20の外周縁(外周面)に到達し、その後、排出部15を通って収容凹部11(ハウジング10)の外部へ排出される。
【0028】
本実施形態のコネクタXは、複数の端子収容室14が形成されたハウジング10と、ハウジング10の後端面を凹ませた形態であって端子収容室14の後端に連通する収容凹部11と、端子収容室14と対応する複数の電線挿通孔22を有していて収容凹部11内に収容された一括ゴム栓20とを備えたものであって、一括ゴム栓20に、その後端面から外周縁に達する排水路23を形成しているので、一括ゴム栓20の後端面上の水を、排水路23を通して一括ゴム栓20の外周縁から排出させることができる。したがって、一括ゴム栓20の後端面に水が溜まる虞はない。
【0029】
また、排水路23は、電線挿通孔22の孔縁部に連通しているので、電線挿通孔22の後端部の水も確実に排出することができる。また、収容凹部11を構成する周壁部12には、排水路23を周壁部12の外面側へ連通させる排出部15を形成したので、排水路23を通って一括ゴム栓20の外周縁に到達した液体は、排出部15を通って収容凹部11の外部へ確実に排出される。また、一括ゴム栓20を前後対称な形状としたので、収容凹部11に取り付ける際に一括ゴム栓20の前後の向きを考慮せずに済み、作業性が良い。
【0030】
また、本実施形態では、幅方向において電線挿通孔22と一括ゴム栓20の外周縁との間に別の電線挿通孔22が存在するのであるが、この2つの電線挿通孔22から別々に一括ゴム栓20の外周縁に向けて排水経路を延ばした場合には、2本の排水経路が必要となる。この点に鑑み、本実施形態では、一括ゴム栓20に、隣り合う2つの電線挿通孔22の孔縁部同士を連通させた形態であって、電線挿通孔22を介して排水路23に連通する連通路24を形成した。このように隣り合う2つの電線挿通孔22同士を連通路24で連通すれば、一括ゴム栓20の外周縁に近い側の電線挿通孔22から延ばした排水路23を、外周縁から遠い側の電線挿通孔22用の排水路23として兼用させることができるので、排水経路の長さを短くすることができる。
【0031】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図6〜図10を参照して説明する。本実施形態2のコネクタYは、ハウジング40の収容凹部41とゴム栓ホルダ50の形態を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0032】
上記実施形態1の排出部15は、その開口領域が全周に亘って窓孔状に閉じた形態(即ち、周壁部12の後端縁には開放されていない形態)となっていたが、本実施形態2の排出部45は、その開口領域のうち後端が周壁部42の後端縁に開放された形態となっている。即ち、排出部45は、周壁部42の後端縁を方形に切欠した形態となっている。また、収容凹部41の前後方向の深さ寸法は、実施形態1の収容凹部11よりも小さくなっており、収容凹部41内に組み付けた一括ゴム栓20の後端面と、周壁部42の後端面とが、前後方向において同じ位置にある。ゴム栓ホルダ50は、実施形態1の嵌入部33に相当する部位が本体部51に形成されておらず、本体部51の前面は全領域に亘って段差のない平坦面となっている。そして、この本体部51の前面で一括ゴム栓20の後端面を押圧している。
【0033】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を図11〜図15を参照して説明する。本実施形態3のコネクタZは、ハウジング60とゴム栓ホルダ70を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0034】
上記実施形態1では、収容凹部11の周壁部12に排出部15が形成されていたのに対し、本実施形態3では、排出部73が、収容凹部61の周壁部62にではなく、ゴム栓ホルダ70に形成されている。即ち、収容凹部61の前後方向の深さ寸法は、実施形態1の収容凹部11よりも小さくなっており、収容凹部61内に組み付けた一括ゴム栓20の後端面が、周壁部62の後端面よりも後方に突出するように位置している。そして、ゴム栓ホルダ70の本体部71の前面には、その外周縁に沿って前方へリブ状(壁状)に突出する外嵌部72が全周に亘って形成されている。そして、この外嵌部72には、その前端縁部を方形に切り欠くことによって排出部73が形成されている。
【0035】
ゴム栓ホルダ70をハウジング60に組み付けた状態では、外嵌部72の前端が周壁部62の後端に突き当たるとともに、本体部71の前面が一括ゴム栓20の後端面を押圧する。また、外嵌部72が、一括ゴム栓20のうち周壁部62の後端よりも後方へ突出した後端部を全周に亘って包囲する。そして、外嵌部72に形成した排出部73が一括ゴム栓20の後端面の排水路23と対応するように位置する。
【0036】
また、本実施形態3では、一括ゴム栓20が前後対称であって一括ゴム栓20の前端面にも溝状の排水路23と連通路24が形成されていることに着目し、収容凹部61の奥端面には、排水路23及び連通路24と対応する複数の突部63が形成されている。一括ゴム栓20を収容凹部61内に組み付けた状態では、排水路23と連通路24が突部63に嵌合することにより、一括ゴム栓20の前端部は収容凹部61に対して幅方向及び奥行き方向への相対変位や不正な弾性変形を規制される。これにより、電線挿通孔22の前面側の開口部は、端子収容室14の後端側の開口部に対して正しい位置関係を保った状態に位置決めされる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1〜3では、排水路の全領域が一括ゴム栓の後端面に開放された溝状としたが、排水路は、両端が一括ゴム栓の後端面と外周縁とに開口し、それ以外の領域が一括ゴム栓の内部を貫通する形態であってもよい。
(2)上記実施形態1〜3では、全ての排水路が電線挿通孔の孔縁部に連通する形態としたが、全ての排水路が電線挿通孔の孔縁部に連通しない形態でもよく、複数の排水路のうちいずれかの排水路のみが電線挿通孔の孔縁部に連通する形態であってもよい。
(3)上記実施形態1〜3では、排水路を直線状としたが、排水路は、曲線状の経路や屈曲した経路であってもよい。
(4)上記実施形態1〜3では、幅方向及び奥行き方向に隣り合う位置関係となっている2つの電線挿通孔の孔縁部同士を、全て、連通路で連通させたが、このような位置関係となっているもののうちいずれかの電線挿通孔同士は連通路で連通させない形態としてもよい。
(5)上記実施形態1〜3では、幅方向及び奥行き方向に隣り合う位置関係となっている2つの電線挿通孔同士を連通路で連通させたが、斜め方向に隣り合う2つの電線挿通孔同士を連通路で連通させてもよい。
(6)上記実施形態1〜3では、連通路を直線状としたが、連通路は、曲線状の経路や屈曲した形態であってもよい。
(7)上記実施形態1〜3では、隣り合う2つの電線挿通孔同士を連通させる連通路を形成したが、このような連通路を形成しない形態としてもよい。
(8)上記実施形態1〜3では、連通路と排水路を一直線状に並ぶように配置したが、連通路と排水路を互いに斜めをなす位置関係となるように配置してもよい。
(9)上記実施形態1〜3では、排水路と連通路を電線挿通孔を介して連通する形態としたが、排水路と連通路とを、直接、連通させてもよい。この場合、排水路が、連通路から分岐する形態としてもよく、連通路を横切る形態としてもよい。
(10)上記実施形態1〜3では、1つの排水路に対して1つの排出部を設けたが、1つの排出部が複数の排水路と対応するようにしてもよい。
(11)上記実施形態1〜3では、複数の電線挿通孔を、幅方向及び奥行き方向において縦横に整列するように配置したが、複数の電線挿通孔は千鳥状に配置されていてもよい。
(12)上記実施形態1〜3では、一括ゴム栓を前後対称な形状としたが、一括ゴム栓は前後非対称な形状であってもよい。この場合、実施形態1,2においては、一括ゴム栓の前面に排水路や連通路を形成しない形態としてもよく、実施形態3においては、排水路や連通路の位置を前後で異ならせればよい。
(13)上記実施形態3の排水路と突部を嵌合させる構成は、実施形態1,2にも適用できる。
(14)上記実施形態3の連通路と突部を嵌合させる構成は、実施形態1,2にも適用できる。
(15)上記実施形態3のゴム栓ホルダに排出部を形成する構成は、実施形態2に適用することができる。この場合、ゴム栓ホルダの排出部と周壁部の排出部とを整合させて1つの排出部を構成することができる。
(16)上記実施形態1〜3では、端子収容室と電線挿通孔の数を16としたが、端子収容室と電線挿通孔の数は、15以下でも、17以上でもよい。
(17)上記実施形態では、端子収容室と電線挿通孔を奥行き方向において2列に分けて配置したが、奥行き方向における列の数は、1列でも、3列以上でもよい。
(18)上記実施形態1〜3では、端子収容室と電線挿通孔を幅方向に8つずつ並ぶようにしたが、端子収容室と電線挿通孔の幅方向の並び数は、7以下でも、9以上でもよい。
【符号の説明】
【0038】
X…コネクタ
10…ハウジング
11…収容凹部
12…周壁部
14…端子収容室
15…排出部
20…一括ゴム栓
22…電線挿通孔
23…排水路
24…連通路
Y,Z…コネクタ
40,60…ハウジング
41,61…収容凹部
42,62…周壁部
45,73…排出部
63…突部
72…外嵌部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子収容室が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの後端面を凹ませた形態であって前記端子収容室の後端に連通する収容凹部と、
前記端子収容室と対応する複数の電線挿通孔を有していて前記収容凹部内に収容された一括ゴム栓とを備えたコネクタにおいて、
前記一括ゴム栓には、その後端面から外周縁に達する排水路が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記排水路は、前記電線挿通孔の孔縁部に連通していることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記一括ゴム栓には、隣り合う2つの前記電線挿通孔の孔縁部同士を連通させた形態であって、前記電線挿通孔を介して前記排水路に連通する連通路が形成されていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記収容凹部を構成する周壁部には、前記排水路を前記周壁部の外面側へ連通させる排出部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記一括ゴム栓は、前後対称な形状をなしており、
前記収容凹部の奥端面には、前記排水路に嵌合される突部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項1】
複数の端子収容室が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの後端面を凹ませた形態であって前記端子収容室の後端に連通する収容凹部と、
前記端子収容室と対応する複数の電線挿通孔を有していて前記収容凹部内に収容された一括ゴム栓とを備えたコネクタにおいて、
前記一括ゴム栓には、その後端面から外周縁に達する排水路が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記排水路は、前記電線挿通孔の孔縁部に連通していることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記一括ゴム栓には、隣り合う2つの前記電線挿通孔の孔縁部同士を連通させた形態であって、前記電線挿通孔を介して前記排水路に連通する連通路が形成されていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記収容凹部を構成する周壁部には、前記排水路を前記周壁部の外面側へ連通させる排出部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記一括ゴム栓は、前後対称な形状をなしており、
前記収容凹部の奥端面には、前記排水路に嵌合される突部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−164524(P2012−164524A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24093(P2011−24093)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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