説明

コネクタ

【課題】基板取付前後において、変形し難いコネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るコネクタは、コンタクトと、コンタクトを収容する絶縁体からなるボディと、ボディの外周を覆うように筒状に形成された導電体のシェルと、を有し、シェルは、相手方コネクタ挿入口とボディ挿入口とを備える本体部と、本体部の上壁前方端において折り返され本体部上面を覆うように形成された反転折り返し部と、を備え、本体部に形成された第一係止部と、第一係止部と対応するように反転折り返し部に形成された第二係止部と、が係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気/電子機器に使用されるコネクタに関し、特に狭い空間内に配置される基板に実装されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が従来技術として知られている。特許文献1記載のコネクタは、コネクタの小型化を実現しつつ、基板に対する実装強度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−258016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のシェルは1枚の金属板を筒状に折り曲げて形成されているため、基板取付前に外力を受けると、変形しやすいという問題がある。また、基板取付後においても、相手方コネクタが挿入される際にかかる荷重ストレスにより、シェルが外周方向に開き、変形しやすいという問題がある。例えば、相手方コネクタを自コネクタに挿入する際に、互いの挿入軸が一致せずに、相手方コネクタが自コネクタのシェルの内面にぶつかり、自コネクタのシェルに対し、外周方向に開き変形させようとする力がかかり、変形する。シェルは1回の挿入によって変形する場合だけではなく、多数回の挿入によって徐々に変形する場合もある。これらの変形により、相手方コネクタを挿入しにくくなったり、挿入できなくなったり、挿入時にガタツキや接触不良が生じたり、抜け落ちやすくなったりするという問題がある。
【0005】
本発明は、基板取付前後において、変形し難いコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係るコネクタは、コンタクトと、コンタクトを収容する絶縁体からなるボディと、ボディの外周を覆うように筒状に形成された導電体のシェルと、を有し、シェルは、相手方コネクタ挿入口とボディ挿入口とを備える本体部と、本体部の上壁前方端において折り返され本体部上面を覆うように形成された反転折り返し部と、を備え、本体部に形成された第一係止部と、第一係止部と対応するように反転折り返し部に形成された第二係止部と、が係止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、シェルの上壁を、本体部の上壁と反転折り返し部によって2重構造とすることで、シェルの破壊強度を高め、その変形を防ぐことができるという効果を奏する。また、本体部の両側壁に形成された第一係止部と、反転折り返し部に第一係止部と対応するように形成された第二係止部と、が係止することで、相手方コネクタが挿入される際にかかる荷重ストレスにより、シェルが外周方向に開き、変形するのを防ぐことができる。つまり、本体部が外周方向に開き、変形しようとする力を、反転折り返し部が第二係止部を介して規制し、本体部は第一係止部を介してその力を受け止め、シェルの変形を防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】コネクタ100の正面、右側面及び平面を示す分解斜視図。
【図2】コネクタ100の背面、左側面及び底面を示す分解斜視図。
【図3】シェル130の展開図。
【図4】コネクタ100の底面図。
【図5】図4のX-X断面を示す斜視図。
【図6】コネクタ100と基板90の関係を示す図。
【図7】図4のY-Y断面を示す斜視図。
【図8】基板90にコネクタ100を実装した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、MicroUSB規格に準拠するコネクタに本発明の技術思想を適用した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明の技術思想が適用可能なコネクタは特定の規格に準拠するコネクタに限定されるものではなく、任意の規格(例えば、USB規格、miniUSB規格、IEEE1394規格など)に準拠するコネクタ全般に適用可能である。
【実施例1】
【0010】
<コネクタ100>
図1を用いて実施例1に係るコネクタ100を説明する。コネクタ100は、導電体のコンタクト110と、コンタクト110を収容する絶縁体からなるボディ120と、ボディの外周を覆うように四角筒状に形成された導電体のシェル130と、を有する。
【0011】
<シェル130>
シェル130は、相手方コネクタ挿入口132fとボディ挿入口132g(図2参照)とを備える本体部132と、本体部132の上壁132kの前方端において折り返され本体部上面を覆うように形成された反転折り返し部134と、を備える。なお、相手方コネクタが挿入される面をコネクタ100の正面とし、基板に実装する際に実装面となる面を底面とし、コネクタ100の中心から見て正面方向を前方とし、底面方向を下方として説明する。図2に示すように、本体部132の側壁132mに形成された第一係止部132nと、第一係止部132nと対応するように反転折り返し部134に形成された第二係止部134nと、が係止する。
【0012】
例えば、図3に示すように、第一係止部132n、132nは、それぞれ矩形であり、本体部132の側壁132m、132mに上面側を固定端として外方に切り起された係止片である。一方、第二係止部134n、134nは、それぞれ第一係止部132n、132n、に対応する矩形の貫通孔である。図4はコネクタ100の底面図である。図4のX-X断面図である図5に示すように、第一係止部132n、132nの自由端の端面132n−1、132n−1と、第二係止部134n、134nの底面側の断面134n−1、134n−1とがそれぞれ係止する。また、図6に示すように、反転折り返し部134は、その両側端から下方に延びる第一取付脚部134a、134aと、その後方端から下方に延びる第二取付脚部134b、134bとを備える。
【0013】
(本体部132)
図3は、シェル130の折り畳む前の展開図である。シェル130は薄板状の金属板をプレスにより打ち抜き加工したものである。図3において、隣接する二点鎖線により挟まれた領域は曲げ領域を示す。上壁132kと側壁132m、132mと過渡部132p、132pと平坦部132q、132qとの間の各曲げ領域において、谷折りされ、本体部132は、四角筒状に形成される。なお、四角筒状とは、略四角筒状を含むものとし、底壁は過渡部132p、132pと平坦部132q、132qとからなる。シェル130は、ボディ120の外周に沿った形状に折り曲げ成形され、ボディ120の全体がシェル130に収容される。そして、シェル130の平坦部132q、132qに形成された端縁同士が当接して継目130bが形成される(図3及び図2参照)。この継目130bが「あり」と「あり溝」の関係に形成されているので、端縁同士が互いに分離しにくくなっている。
【0014】
本体部132の側壁132m、132mの後方には、側壁132m、132mの上面側に固定端を有する片持梁状の舌片である第一係止部132n、132nが打ち抜きにより形成される。第一係止部132n、132nは、固定端側に設けた曲げ領域において、僅かに山折りされ、外方に突出している。
【0015】
本体部132の側壁132m、132mの長手方向、即ち挿抜方向の略中間部に固定端を有する片持梁状の舌片である本体取付脚部132a、132aが打ち抜きにより形成されている。本体取付脚部132a、132aは、2つの曲げ領域を備え、各曲げ領域において山折りされ、上方に延びる逆U字形断面を有している。
【0016】
本体部132の上壁132kの後方の両側には、凸部132t、132tがそれぞれ形成されている。凸部132t、132tはそれぞれ上壁132kから内方に打ち出して形成されたものであり、上壁132kから僅かに内方に突出している。
【0017】
本体部132の平坦部132q、132qの後方端には、それぞれ片持梁状の舌片である第一ストッパ132r、132rが形成されている。第一ストッパ132rは固定端側の曲げ領域において、谷折りされ、上方に突出する。
【0018】
さらに、側壁132m、132mの後方端には、後方に延びて、さらに下方に垂下するL字型の第二ストッパ132s、132sが形成される。
【0019】
本体部132の上壁132kの前方の両側には、固定端を前方として、切り起され上方に僅かに突出する係止片132u、132uが形成されている。このような構成とすることで、図示しない相手方コネクタのストッパと係止片132u、132uとが係止し、コネクタ100から相手方コネクタが抜け落ちるのを防止することができる。
【0020】
上壁132kの前方端には、上壁132kと反転折り返し部134との間の曲げ領域の成す間隔より小さい幅の第一突片132wが形成されている。平坦部132q、132qの前方端にはそれぞれ第二突片132v、132vが形成され、側壁132m、132mの前方端にはそれぞれ第三突片132x、132xが形成されている。各突片132w、132v、132v、132x、132xはシェル130の外方に拡開している。このような形状により、各突片が挿入時の相手方コネクタをガイドし、相手方コネクタをスムーズに挿入することができる。
【0021】
(反転折り返し部134)
反転折り返し部134は、本体部132の上壁132kの前方端において折り返され本体部132の上面を覆うように形成される。さらに、反転折り返し部134には、折り返したときに、第一係止部132n、132nに対応する位置に、対応する形状の第二係止部134n、134nが形成される。例えば、第二係止部134n、134nは、反転折り返し部134の上壁134kの両側から外方に突出形成された部分に設けられた矩形の貫通孔である。このような構成とすることで、本体部132が拡がり、変形しようとする方向に対して、第一係止部132nと第二係止部134nとが係止し変形を規制することができる。
【0022】
反転折り返し部134の上壁134kと第一取付脚部134a、134aとの間の曲げ領域において、山折りする。第一取付脚部134a、134aは曲げ領域から外方に延び、さらに、先端側の曲げ領域において、山折りされ、下方に延び、逆L字型断面を有している。
【0023】
反転折り返し部134の上壁134kには、前方の両側に矩形の開口134u、134uが形成される。転折り返し部134を曲げ返したときに、上方に切り起された係止片132u、132uが、それぞれ開口134u、134u内に収容される、または、それぞれ開口134u、134uを貫通する。このような構成により、切り起された係止片132uと反転折り返し部134の上壁134kが干渉するのを防ぐことができる。
反転折り返し部134の上壁134kの後方端からさらに後方に延びる第二取付脚部134b、134bが形成される。
【0024】
<ボディ120の挿入及び固定>
ボディ120を四角筒状のシェル130の後方のボディ挿入口132gから挿入すると、凸部132t、132tの背面と、ボディ120の第三凹部120t、120tの正面とが当接する(図1及び図2参照)。また、切り起された第一ストッパ132r、132rの背面と、ボディ120の第一凹部120r、120rの正面とが当接する。また、本体部132の上壁132kの後方端面と、ボディ120に設けられた第一鍔部120k、120kの正面とが当接する。さらに、本体部132の過渡部132p、132pの後方端面と、ボディ120に設けられた第二鍔部120p、120pの正面とが当接する(但し、左側面側の第二鍔部120pは図示しない)。本体部132の平坦部132q、132qの後方端面と、ボディ120に設けられた第三鍔部120qの正面とが当接する。四角筒状の本体部132の内周面と、ボディ120の外周面とが当接する(図5参照)。さらに、第二ストッパ132s、132sは、その固定端側の曲げ領域において、谷折りされ、第二ストッパ132s、132sの正面と、ボディ120の背面に設けられた第二凹部120s、120sとが当接し、係合する。これらの構造により、シェル130がボディ120に固定されている(図6参照)。
【0025】
<コンタクト110及びボディ120>
ボディ120は、図1及び図2に示すように、シェル130の成す四角筒状の内周面とボディ120の外周面とが接し、かつ、四角筒状の後方端と当接する正面を有する形状である。
そして、ボディ120は前方に突出するコンタクト支持板120cを有する。このコンタクト支持板120cの底面には、所定の間隔で5本のコンタクト受容溝が形成されている。コンタクト110は、これらのコンタクト受容溝に圧入されて、図4のY-Y断面図である図7に示すように、その接点部110bがコンタクト支持板120cの底面に配置される。コンタクト110は、ボディ120の後方に延出して、後方端に基板90の導電パッド94と接続される端子部110dを有する。
【0026】
コンタクト受容溝の先端部には、支持部120bが設けられる。コンタクト110の接点部110bの先端には、僅かに上方に偏倚し、さらに前方に延びる先端部110aが形成される。支持部120bと先端部110aとが係止し、コンタクト110の接点部110bが上下方向に固定される。また、接点部110bは、コンタクト受容溝の内壁により左右方向に固定される。
【0027】
コンタクト110の端子部110dの底面とシェル130の反転折り返し部134の第二取付脚部134bの底面が同一平面上に位置するように形成されている(図6参照)。このような構成とすることにより、コネクタ100が基板90に取り付けられる際、端子部110dが基板90に当接して偶発的に過度に曲げられようとするときに、基板90に当接して端子部110dに過度の応力がかかることを阻止することができる。
【0028】
<コネクタ100の基板90に対する取付>
図6に示すようにコネクタ100が取り付けられる基板90の端縁には、コネクタ100の幅より僅かに広い幅の切欠け90aが形成されている。この切欠け90aには、コネクタ100が上方から配置される。切欠け90aの近傍には、第一取付脚部134a、134a、本体取付脚部132a、132aに対応する位置に貫通孔90b、90b、90c、90cがそれぞれ形成されている。さらに貫通孔90b、90b、90c、90cの基板90の上面の周縁部にはそれぞれ第一ランド92、92、第三ランド91、91が形成されている。また、切欠け90aの近傍には、第二取付脚部134b、134bに対応する位置に第二ランド93、93が、各端子部110dに対応する位置に導電パッド94が形成されている。
【0029】
このような構成により、ミッドマウント構造(コネクタ100が基板90内に配置される構造)タイプでの実装が可能となり、コネクタ100の実装高さを低くすることができる(図8参照)。さらに、基板90の第一ランド92、92、第二ランド93、93、第三ランド91、91、導電パッド94に半田ペーストを印刷しておき、上方からコネクタ100を配置し、熱を加えて半田を溶かすことで、ミッドマウント構造での自動実装(リフロー方式)が可能となる。なお、それぞれ第一取付脚部134a、134a及び本体取付脚部132a、132aが、基板に設けられた貫通孔90c、90c及び90b、90bを貫通し、第二取付脚部134b、134b、各端子部110dが、それぞれ第二ランド93、93及び各導電パッド94に接するように配置する。
【0030】
<効果>
このような構成により、シェルの上壁を、本体部の上壁と反転折り返し部によって2重構造とすることで、シェルの破壊強度を高め、その変形を防ぐことができる。また、本体部132が外周方向に開き、変形しようとする力を、反転折り返し部134が第二係止部134nを介して規制し、本体部132は第一係止部132nを介してその力を受け止める。これにより、本体部132の変形を防ぐ。
【0031】
また、特許文献1のシェルは、1枚の金属板を筒状に折り曲げて形成され、その両側壁から複数の取付脚部が切り起されているため、シェル自体の破壊強度が低い。また、各取付脚部の大きさも小さくなるため、基板に対する実装強度も低い。一方、実施例1では、反転折り返し部134を設けることで、シェルの破壊強度を低下させることなく、十分な大きさを有する取付脚部を多数設けることができ、この取付脚部を半田付けすることで、基板に対する実装強度(固定強度)を向上させることができる。
【0032】
[変形例]
なお、実施例1では、第一係止部132n、132nを、側壁132m、132mの上面側に固定端を有する片持梁状の舌片とし、外方に突出している形状としたが、側壁132m、132mに形成された矩形の貫通孔であってもよい。その場合、第二係止部134nを、反転折り返し部134の上壁134kの両側から外方に突出形成された部分(第一係止部に対応する位置)に、矩形の係止片(第一係止部に対応する形状)として打ち抜きにより形成される。この係止片は、底面側を固定端として内方に切り起される。第一係止部の貫通孔の上面側の断面と、第二係止部の自由端の端面とが係止し、実施例1と同様の効果を得ることができる。このような構成とすることで、本体部132が外周方向に開き、変形しようとする力を、反転折り返し部134が第二係止部を介して規制し、本体部132は第一係止部を介してその力を受け止めることができる。なお、第一係止部と第二係止部の位置や大きさ、形状等は、上記以外のものであってもよく、第一係止部と第二係止部とが本体部が広がる方向と反対方向において係止すればよい。
また、反転折り返し部134を設けることで、シェルの破壊強度を低下させることなく、十分な大きさを有する取付脚部を多数設けることができる点がポイントであり、その数や大きさ、位置は適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 コネクタ
110 コンタクト
120 ボディ
130 シェル
132 本体部
132n 第一係止部
134 反転折り返し部
134a 第一取付脚部
134b 第二取付脚部
134n 第二係止部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトと、
前記コンタクトを収容する絶縁体からなるボディと、
前記ボディの外周を覆うように筒状に形成された導電体のシェルと、を有し、
前記シェルは、相手方コネクタ挿入口と前記ボディ挿入口とを備える本体部と、本体部の上壁前方端において折り返され本体部上面を覆うように形成された反転折り返し部と、を備え、本体部に形成された第一係止部と、前記第一係止部と対応するように反転折り返し部に形成された第二係止部と、が係止する、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記反転折り返し部は、一以上の取付脚部をさらに備える、
コネクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のコネクタであって、
前記第一係止部は、矩形であり、本体部の両側壁に上面側を固定端として外方に切り起された係止片であり、
前記第二係止部は、前記第一係止部に対応する矩形の貫通孔であり、
前記第一係止部の自由端の端面と、前記第二係止部の底面側の断面とが係止する、
コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−99378(P2012−99378A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247110(P2010−247110)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】