コネクタ
【課題】リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことを抑制する。
【解決手段】雌型端子を収容するコネクタハウジング20と、弾性変形可能なロック片46を有して、コネクタハウジング20のリテーナ装着孔23に挿入されるリテーナ40とを備え、雌型端子の進入経路から退避する仮係止位置と、雌型端子の進入経路に進入する本係止位置との間をリテーナ40が移動可能なコネクタ10であって、ロック片46は、本係止突起27によって下方から係止されることでリテーナ40を本係止位置に保持する本係止爪48と、仮係止突起28によって下方から係止されることで、リテーナ40を仮係止位置に保持する仮係止爪47とを備えており、ロック片46が弾性変形して仮係止爪47が変位する量は、本係止爪48が変位する量よりも小さいところに特徴を有する。
【解決手段】雌型端子を収容するコネクタハウジング20と、弾性変形可能なロック片46を有して、コネクタハウジング20のリテーナ装着孔23に挿入されるリテーナ40とを備え、雌型端子の進入経路から退避する仮係止位置と、雌型端子の進入経路に進入する本係止位置との間をリテーナ40が移動可能なコネクタ10であって、ロック片46は、本係止突起27によって下方から係止されることでリテーナ40を本係止位置に保持する本係止爪48と、仮係止突起28によって下方から係止されることで、リテーナ40を仮係止位置に保持する仮係止爪47とを備えており、ロック片46が弾性変形して仮係止爪47が変位する量は、本係止爪48が変位する量よりも小さいところに特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタハウジングに収容された端子金具を抜け止めするリテーナを備えたコネクタとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。
このリテーナは、コネクタハウジングの底部に設けられたリテーナ挿入孔に挿入されるようになっており、端子金具を抜け止めする抜け止め部と、この抜け止め部の幅方向両側において幅方向外側に弾性変形可能な一対のロック片とを備えて構成されている。
一対のロック片は、コネクタハウジングの幅方向両側に形成された仮係止突起と、仮係止突起よりもロック片の挿入方向奥側に形成された本係止突起との何れかに選択的に係止可能に形成されている。そして、ロック片と仮係止突起とが弾性的に係止することで、抜け止め部が端子金具の進入経路から退避して端子金具が挿抜可能な仮係止位置に抜け止め部が保持される。また、ロック片と本係止突起とが弾性的に係止することで、コネクタハウジングに収容された端子金具を抜け止め部が後方から係止して端子金具を抜け止めする本係止位置に抜け止め部が保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−229197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メンテナンスのためにリテーナを本係止位置から仮係止位置に移動させる際には、ロック片を弾性変形させて本係止突起との係止状態を解除し、ロック片と仮係止突起とを係止させる。
ところが、リテーナに対して本係止位置から仮係止位置へ移動する際に、大きな力が加えられると、弾性変形して本係止突起を乗り越えたロック片が、弾性復帰する前に、仮係止突起も乗り越えてしまい、リテーナが勢い余ってコネクタハウジングから外れてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、端子金具を収容するコネクタハウジングと、弾性変形可能なロック片を有して、前記コネクタハウジングのリテーナ装着孔に挿入されるリテーナとを備え、前記端子金具の進入経路から退避して前記端子金具が挿抜可能となる仮係止位置と、前記端子金具の進入経路に進入して前記端子金具を抜け止めする本係止位置との間を前記リテーナが移動可能なコネクタであって、前記ロック片は、前記リテーナ装着孔の内面に形成された本係止突起によって前記リテーナ装着孔の開口側から前記リテーナ装着孔の奥側に向かって係止されることで前記リテーナを前記本係止位置に保持する本係止爪と、前記本係止爪に対して前記リテーナの挿入方向と交差する方向にずれて形成され、前記リテーナ装着孔の内面に形成された仮係止突起によって前記リテーナ装着孔の開口側から前記リテーナ装着孔の奥側に向かって係止されることで、前記リテーナを前記仮係止位置に保持する仮係止爪とを備えており、前記本係止爪が前記本係止突起に乗り上げて前記ロック片が弾性変形することで、前記リテーナが前記本係止位置から前記仮係止位置に移動する際に、前記ロック片が弾性変形して前記仮係止爪が変位する量は、前記本係止爪が変位する量よりも小さいところに特徴を有する。
【0007】
このような構成のコネクタによると、本係止爪と仮係止爪とがずれて形成されているので、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、ロック片が弾性変形する位置は、本係止爪が形成された側となり、本係止爪が本係止突起に乗り上げてロック片が弾性変形した状態における仮係止爪の変位量は、本係止爪の変位量よりも小さくなる。これにより、仮係止爪が形成された側のロック片は、仮係止爪と仮係止突起とが解除されるほど弾性変形した状態にならず、ロック片が本係止突起から解除された勢いで仮係止突起からも解除されることを抑制することができる。ひいては、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことを抑制することができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記仮係止突起および前記本係止突起は、前記コネクタハウジングの幅方向に突出して形成されており、前記仮係止突起と前記ロック片との係り代は、前記本係止突起と前記ロック片との係り代よりも大きい構成としてもよい。
このような構成によると、仮係止突起とロック片との係止を解除するためには、本係止突起とロック片との係止を解除するときよりもロック片を更に弾性変形させる必要があるため、本係止突起から解除されたロック片が勢い余って仮係止突起からも解除されることをさらに抑制することができる。
【0009】
前記ロック片は、前記リテーナの底板部から立ち上がる平板状に形成されており、前記ロック片における前記本係止爪よりも基端部側の部分が、前記仮係止爪よりも基端部側の部分に比べて、肉厚に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、ロック片における本係止爪よりも基端部側の部分を、ロック片における仮係止爪よりも基端部側の部分に比べて、剛性を高くすることができるので、本係止爪と本係止突起との係止状態が解除される方向にロック片が弾性変形し難くすることができる。これにより、仮係止位置よりも係り代が浅い本係止位置におけるリテーナの保持力を向上させることができる。
【0010】
前記仮係止爪と前記本係止爪とは、前記リテーナの挿入方向と交差する方向に連続して一体に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、ロック片の仮係止爪と本係止爪とがリテーナの挿入方向と交差する方向に分かれて形成されている場合に比べて、ロック片全体の強度を高くすることができると共に、リテーナの挿入方向と交差する方向の長さ寸法を小さくすることができる。
【0011】
前記ロック片は、前記ロック片の挿入方向と交差する方向に分割して形成されており、前記仮係止爪は、分割された前記ロック片の一方に形成されており、前記本係止爪は、分割された前記ロック片の他方に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、仮係止爪が形成されたロック片と、本係止爪が形成されたロック片とを独立して弾性変形させることができるので、本係止爪が形成されたロック片が弾性変形して、本係止爪と本係止突起との係止状態が解除される際に、仮係止爪が形成されたロック片は弾性変形した状態にならず、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが組み付けられる前の状態を示す側面図
【図2】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが組み付けられる前の状態を示す背面図
【図3】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが仮係止状態に保持された状態を示す側面図
【図4】図3のA−A線断面図
【図5】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが本係止状態に保持された状態を示す側面図
【図6】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが本係止状態に保持された状態を示す背面図
【図7】図5のB−B線断面図
【図8】実施形態1にかかるコネクタハウジングの底面図
【図9】実施形態1にかかるリテーナの斜視図
【図10】実施形態1にかかるリテーナの平面図
【図11】実施形態1にかかるリテーナの背面図
【図12】実施形態2にかかるコネクタハウジングにリテーナが仮係止状態に保持された状態を示す側面図
【図13】図12のC−C線断面図
【図14】図12のD−D線断面図
【図15】実施形態2にかかるコネクタハウジングにリテーナが本係止状態に保持された状態を示す側面図
【図16】図15のE−E線断面図
【図17】図15のF−F線断面図
【図18】実施形態2にかかるリテーナの斜視図
【図19】実施形態2にかかるリテーナの平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について図1乃至図11を参照して説明する。
本実施形態は、合成樹脂製のコネクタハウジング20と、このコネクタハウジング20に収容される図示しない雌型端子を抜け止めする合成樹脂製のリテーナ40とを備えたコネクタ10を例示している。
【0015】
コネクタハウジング20は、図1乃至図4に示すように、大まかには前後方向に縦長なブロック状に形成されている。
コネクタハウジング20の内部には、前後方向に貫通した形態のキャビティ21が上下方向および幅方向に複数並んで形成されており、キャビティ21内には、図示しない雌型端子が後方から収容可能とされている。雌型端子は、キャビティ21内に収容されると、キャビティ21の内壁から前方に向かって片持ち状に延びるランス22によって後方から係止され、キャビティ21内に抜け止めされるようになっている。
【0016】
コネクタハウジング20の底面における前後方向略中央部には、図8に示すように、リテーナ装着孔23が形成されている。リテーナ装着孔23の開口部は、略U字状に形成されており、リテーナ装着孔23は、幅方向に横長な抜け止め部収容部24と、抜け止め部収容部24の両端部から後方に延びる前後方向に縦長な一対のロック部収容部25とから構成されている。
【0017】
抜け止め部収容部24は、コネクタハウジング20の底面から上方に向かって凹んだ形態をなし、抜け止め部収容部24の内部空間は、コネクタハウジング20の各キャビティ21に連通している。
【0018】
一対のロック部収容部25は、コネクタハウジング20の幅方向両端部に位置する側壁20Aの内側に形成されている。詳しくは、ロック部収容部25は、図4及び図8に示すように、幅方向両端部に位置するキャビティ21とコネクタハウジング20の両側壁20Aとの間にそれぞれ形成されており、コネクタハウジング20の側面に沿った形態とされている。また、ロック部収容部25は、抜け止め部収容部24と同様に、コネクタハウジング20の底面から上方に向かって凹んだ形態をなしている。
【0019】
一方、リテーナ40は、抜け止め部収容部24内に嵌合可能な抜け止め部41と、一対のロック部収容部25内にそれぞれ嵌合可能な一対のロック部42とを備えて構成されている。
抜け止め部41は、図9乃至図11に示すように、背面視略U字状をなし、前後方向に貫通する略矩形状の端子挿通孔43が上下方向及び幅方向に複数形成されることで、幅方向に横長な格子状に形成されている。
【0020】
端子挿通孔43には、雌型端子が前後方向に挿通可能とされており、各端子挿通孔43の底面および抜け止め部41の上面には、コネクタハウジング20のキャビティ21内に挿入された雌型端子を後方から係止する端子係止部44が各キャビティ21に対応して複数形成されている。
【0021】
また、抜け止め部41は、端子係止部44がキャビティ21内に突出することで雌型端子を後方から係止して、雌型端子をキャビティ21内に抜け止めする本係止位置(図6および図7参照)と、端子係止部44がキャビティ21内から退避して、キャビティ21への雌型端子の挿抜を許容する仮係止位置(図4参照)との間を移動可能とされている。これにより、キャビティ21内に雌型端子が収容された状態で、抜け止め部41が本係止位置まで嵌合されると、端子係止部44によって雌型端子が後方から係止され、雌型端子がランス22と端子係止部44とによって二重に係止されるようになっている。
【0022】
また、リテーナ40は、仮係止位置では、図3及び図4に示すように、コネクタハウジング20の底面から抜け止め部41およびロック部42の一部を下方に突出させた状態となり、本係止位置では、図6及び図7に示すように、リテーナ装着孔23に完全に収容された状態で嵌合され、コネクタハウジング20の底面と抜け止め部41の底面およびロック部42の底面とがほぼ面一状態となる。
【0023】
一対のロック部42は、図9乃至図11に示すように、平板状をなし、抜け止め部41の後方に隣接して形成されている。また、ロック部42は、抜け止め部41の幅方向両端部から後方に延びる底板部45と、底板部45から上方に立ち上がるロック片46とを備えて構成されている。なお、図9については、紙面左手前側を後方とし、紙面右奥側を前方としている。
【0024】
底板部45は、いずれも矩形平板状をなし、互いに対向した形態で抜け止め部41の後端部に一体に形成されている。
ロック片46は、底板部45よりも板厚が薄い矩形平板状に形成されている。ロック片46は、底板部45の上端縁における幅方向外側に一体に形成されており、底板部45と連結する基端部を支点に幅方向外側に弾性変形可能とされている。
【0025】
一方、コネクタハウジング20の両側壁20Aには、弾性変形したロック片46を逃がすための貫通孔26がそれぞれ形成されている。貫通孔26は、図1に示すように、前後方向に縦長な略矩形状をなし、側壁20Aの上下方向略中央部において、図4および図7に示すように、側壁20Aを幅方向に貫通して形成されている。
貫通孔26の内部空間には、ロック片46の先端部が進入可能とされており、幅方向外側に弾性変形するロック片46の先端部が貫通孔26の内部空間に進入することで、ロック片46が幅方向外側に弾性変形することが許容されるようになっている。
【0026】
さて、ロック部収容部25の幅方向内側であるキャビティ21側の両内壁には、図1、図4及び図7に示すように、リテーナ40を本係止位置に保持する本係止突起27と、リテーナ40を仮係止位置に保持する仮係止突起28とがそれぞれ形成されている。
【0027】
本係止突起27は、キャビティ21側の内壁から幅方向外側に向かって突出して形成されており、前後方向に延びた形態をなしている。また、本係止突起27は、断面略矩形状をなし、本係止突起27の上面は、突起側本係止面27Aとされている。
【0028】
仮係止突起28は、本係止突起27と同様に、キャビティ21側の内壁から幅方向外側に向かって突出して形成されており、前後方向に延びた形態をなしている。また、仮係止突起28は、本係止突起27よりも幅方向外側に突出して形成されており、キャビティ21側の内壁から幅方向外側に延びる突起側仮係止面28Aを上部に有して、突起側仮係止面28Aの外側端部から僅かに下方に延びた後、下方に延びるほどキャビティ21側に近づく形態をなしている。
【0029】
また、仮係止突起28は、本係止突起27よりもロック部収容部25の開口側である下側に配されており、仮係止突起28の前後方向の長さ寸法は、本係止突起27の前後方向の長さ寸法とほぼ同一に設定されている。また、仮係止突起28は、本係止突起27の後端位置よりも後側の領域における前端部分に形成されており、仮係止突起28の前端位置が本係止突起27の後端位置と上下方向に重なる位置に配されている。すなわち、本係止突起27と仮係止突起28とは、前後方向および上下方向にずれて形成されている。
【0030】
一方、ロック片46の上端縁には、図9および図10に示すように、仮係止突起28と係止可能な仮係止爪47と、本係止突起27と係止可能な本係止爪48とが形成されている。また、仮係止爪47と本係止爪48とは、前後方向に連続して一体に形成されている。
仮係止爪47は、ロック片46の後端から前方に向かって直線的に延びた形態をなし、ロック片46の前後方向略中央部よりも後側に配されている。また、仮係止爪47は、ロック片46の上端縁から幅方向内側に向かって突出して形成されており、仮係止爪47における下側の面である仮係止面47Aは、仮係止突起28の突起側仮係止面28Aと係止可能とされている。仮係止面47Aは、突起側仮係止面28Aよりも前後方向に長く形成されており、仮係止面47Aと突起側仮係止面28Aとが係止した状態では、突起側仮係止面28A全体が仮係止面47Aに面接触するように設定されている。
【0031】
本係止爪48は、ロック片46の前後方向略中央部よりも前側に形成されている。また、本係止爪48は、仮係止爪47の前端からロック片46の前端まで直線的に延びた形態をなし、本係止爪48の前後方向の長さ寸法は、仮係止爪47の前後方向の長さ寸法とほぼ同じに設定されている。
また、本係止爪48は、仮係止爪47と同様に、ロック片46の上端縁から幅方向内側に向かって突出して形成されており、本係止爪48の突出端は、仮係止爪の突出端と面一状に形成されている。
【0032】
また、本係止爪48の下面は、本係止突起27の突起側本係止面27Aと係止可能な本係止面48Aとされており、仮係止爪47の仮係止面47Aと面一状に形成されている。また、本係止面48Aは、突起側本係止面27Aよりも前後方向に長く形成されており、本係止面48Aと突起側本係止面27Aとが係止した状態において、突起側本係止面27A全体が本係止面48Aに面接触するように設定されている。
【0033】
本係止爪48は、リテーナ40が仮係止位置と本係止位置とを相互に移動する際に、本係止突起27に乗り上げる。すると、本係止爪48が形成されたロック片46の前側半分が幅方向外側に弾性変形し、本係止爪48が本係止突起27を乗り越えることでロック片46が弾性復帰する。すなわち、ロック片46は、斜め前上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形し、仮係止爪47が形成されたロック片46の後側半分は、ほとんど弾性変形せず、仮係止爪47が幅方向外側に向かって変位する量は、本係止爪48が幅方向外側に向かって変位する量よりも小さくなるようになっている。
【0034】
そして、抜け止め部41が仮係止位置に配されて、仮係止面47Aが突起側仮係止面28Aによって下方から係止されることで、リテーナ40が仮係止位置に保持され、抜け止め部41が本係止位置に配されて、本係止面48Aが突起側本係止面27Aによって下方から係止されることで、リテーナ40が本係止位置に保持されるようになっている。
【0035】
また、ロック片46から仮係止爪47が幅方向内側に突出する量は、図4及び図7に示すように、ロック片46から本係止爪48が突出する量よりも大きく形成されており、仮係止位置において仮係止突起28の突起側仮係止面28Aと仮係止爪47の仮係止面47Aとが係止した状態における係り代の幅方向の長さ寸法は、本係止位置において本係止突起27の突起側本係止面27Aと本係止爪48の本係止面48Aとが係止した状態における係り代の幅方向の長さ寸法よりも大きくなるように設定されている。これにより、突起側仮係止面28Aと仮係止面47Aとが係止する面積を、突起側本係止面27Aと本係止面48Aとが係止する面積よりも大きくすることができ、仮係止位置におけるリテーナ40の保持力を本係止位置におけるリテーナ40の保持力よりも向上させることができるようになっている。
【0036】
また、ロック片46における本係止爪48よりも基端部側の部分は、ロック片46における仮係止爪47よりも基端部側の部分に比べて、厚肉に形成されており、本係止爪48の前端部は、ロック片46の前端縁から幅方向内側に突出して形成された補強壁49と一体に形成されている。つまり、本係止爪48と仮係止爪47との間を境にロック片46における前側の部分の剛性が後側の部分の剛性よりも高くなっており、本係止位置においてロック片46が幅方向外側に弾性変形し難くすることができる。これにより、本係止爪48と本係止突起27との係り代が、仮係止爪47と仮係止突起28との係り代よりも浅くなる本係止位置において、リテーナ40の保持力を向上させることができる。
【0037】
本実施形態は、以上のような構成であって、次に、コネクタ10の組み付け方法について簡単に説明すると共に、その作用効果を説明する。
まず、コネクタハウジング20の下方から、リテーナ40をリテーナ装着孔23に嵌合させ、コネクタハウジング20に対してリテーナ40を上方に移動させる。この過程において、ロック片46の仮係止爪47が仮係止突起28に乗り上げ、ロック片46の後側部分が同ロック片46の基端部を支点に幅方向外側に弾性変形することで、ロック片46は、斜め後上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形する。
【0038】
そして、仮係止突起28に乗り上げた仮係止爪47が仮係止突起28を乗り越えると、図4に示すように、仮係止爪47の仮係止面47Aが仮係止突起28の突起側仮係止面28Aによって下方から係止され、リテーナ40が仮係止位置に保持される。また、この状態において、抜け止め部41の端子係止部44は、キャビティ21内から退避しており、キャビティ21に対して雌型端子の挿抜が可能となる。そして、雌型端子を後方からキャビティ21内に挿入し、雌型端子を正規の位置まで挿入することで、雌型端子がランス22によってキャビティ21内に抜け止めされる。
【0039】
次に、リテーナ40をコネクタハウジング20に対して、更に上方へと移動させる。この過程において、ロック片46の本係止爪48が本係止突起27に乗り上げ、ロック片46の前側部分が同ロック片46の基端部を支点に幅方向外側に弾性変形し、ロック片46は、斜め前上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形する。このとき、ロック片46の先端部は、コネクタハウジング20の貫通孔26の内部空間に進入し、ロック片46が幅方向外側に弾性変形することを許容される。
【0040】
そして、ロック片46の本係止爪48が本係止突起27を乗り越えると、ロック片46が弾性復帰することで、図7に示すように、本係止爪48の本係止面48Aが本係止突起27の突起側本係止面27Aによって下方から係止され、抜け止め部41が本係止位置に保持される。また、この状態において、抜け止め部41の端子係止部44は、キャビティ21内に突出して、雌型端子を後方から係止して、雌型端子をキャビティ21内に抜け止めする。これにより、雌型端子は、ランス22と端子係止部44とによって二重に係止され、コネクタ10が完成する。
【0041】
次に、メンテナンス等で、リテーナ40を本係止位置から仮係止位置へ移動させる場合について説明する。
リテーナ40を本係止位置から仮係止位置へ移動させる場合には、治具などをリテーナ装着孔23とリテーナ40との間に挿し込んでリテーナ装着孔23からリテーナ40を下方に引き出すように移動させる。このとき、ロック片46は、仮係止位置から本係止位置へ移動させた時と逆の状態となる。つまり、ロック片46の本係止爪48が本係止突起27に乗り上げることで、ロック片46の前側部分が幅方向外側に弾性変形し、ロック片46が斜め前上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形する。そして、ロック片46の本係止爪48が本係止突起27を乗り越えると、仮係止爪47の仮係止面47Aが仮係止突起28の突起側仮係止面28Aによって下方から係止され、図4に示すように、抜け止め部41が仮係止位置に保持される。すなわち、本係止爪48が本係止突起27に乗り上げることで、ロック片46は、斜め前上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形するところ、仮係止爪47及び仮係止突起28は、ロック片46の後側に形成されているので、ロック片46の後側の撓み量は少なく、仮係止爪47と仮係止突起28とは互いに常に係止した状態となっている。これにより、リテーナ40は、コネクタハウジング20に対して常に保持された状態となる。
【0042】
ところで、治具などをリテーナ装着孔23とリテーナ40との間に挿し込んでリテーナ装着孔23からリテーナ40を下方に移動させる際に、大きな力が加わってしまい、本係止突起27を乗り越えるために弾性変形したロック片46が、弾性復帰する前に、仮係止位置まで移動してしまう場合がある。ところが、本実施形態によると、仮係止爪47および仮係止突起28が、本係止爪48および本係止突起27の後方にずれて形成されていることから、ロック片46の前側部分が幅方向外側に弾性変形した状態においても、ロック片46における後側部分は、仮係止爪47と仮係止突起28とが解除されるほど弾性変形した状態にならず、本係止爪48と本係止突起27とが解除された勢いで仮係止突起28から仮係止爪47が解除されることを抑制することができる。これにより、リテーナ40に対して抜け方向である下方向に大きな力が加えられた場合においても、リテーナ40が勢い余ってコネクタハウジング20から外れてしまうことを抑制することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によると、リテーナ40を本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、ロック片46が弾性変形する位置は、本係止爪48が形成された前側となり、仮係止爪47が形成された後側におけるロック片46の撓み量は小さくなる。これにより、仮係止爪47が形成された後側のロック片46は、仮係止爪47と仮係止突起28とが解除されるほど弾性変形した状態にならず、ロック片46が本係止突起27から解除された勢いで仮係止突起28からも解除されることを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態によると、仮係止突起28と仮係止爪47との係り代は、本係止突起27と本係止爪48との係り代よりも突出方向に大きく形成されていることから、仮係止突起28と仮係止爪47との係止を解除するためには、本係止突起27と本係止爪48との係止を解除するときよりもロック片46を幅方向外側にさらに弾性変形させる必要がある。これにより、リテーナ40が勢い余ってコネクタハウジング20から外れてしまうことをさらに抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施形態によると、ロック片46の上端縁に仮係止爪47と本係止爪48とが連続して一体に形成されていることから、仮係止爪と本係止爪とが前後方向に分かれて形成されている場合に比べて、ロック片46全体の強度を高くすることができると共に、リテーナの前後方向の長さ寸法を小さくすることができる。
【0046】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について図12乃至図19を参照して説明する。
実施形態2のコネクタ110は、実施形態1におけるコネクタハウジング20のロック部収容部25と、リテーナ40のロック部42とを変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0047】
実施形態2のコネクタハウジング120のロック部収容部125は、抜け止め部収容部24の両端部から後方だけでなく、前方にも延びた形態となっており、前側のロック部収容部125は、後側のロック部収容部125よりも短く設定されている。
また、ロック部収容部125の本係止突起127及び仮係止突起128は、図12に示すように、ロック部収容部125の前側と後側とに分割して形成されている。また、本係止突起127及び仮係止突起128は、図13及び図14に示すように、コネクタハウジング120の左側と右側とで本係止突起127と仮係止突起128とが前後逆に配置されている。詳しくは、図13に示すように、ロック部収容部125の前側には、図示左側の位置に仮係止突起128が形成され、図示右側の位置に本係止突起127が形成されている。また、図14に示すように、ロック部収容部125の後側には、図示左側の位置に本係止突起127が形成され、図示右側の位置に仮係止突起128が形成されている。
【0048】
一方、リテーナ140のロック部142は、図18及び図19に示すように、抜け止め部41の両端部から後方だけでなく、前方にも延びた形態となっており、前側のロック部142は後側のロック部142よりも短く設定されている。また、各ロック部142のロック片146には、仮係止爪147または本係止爪148が個別に形成されている。詳しくは、前側に位置するロック片146の図示上側に位置する左側には仮係止爪147が形成されており、前側に位置するロック片146の図示下側に位置する右側には本係止爪148が形成されている。また、後側に位置するロック片146の図示上側に位置する左側には本係止爪148が形成されており、後側に位置するロック片146の図示下側に位置する右側には仮係止爪147が形成されている。つまり、コネクタハウジング120の本係止突起127及び仮係止突起128と対応するように、リテーナ140の左側と右側とで本係止爪148と仮係止爪147とが前後逆に配置されている。
【0049】
そして、コネクタハウジング120に対してリテーナ140が仮係止位置と本係止位置との間を移動する際には、右側前及び左側後に位置するロック片146の本係止爪148が本係止突起127に乗り上げ、右側前及び左側後のロック片46が基端部を支点に幅方向外側に弾性変形する。そして、仮係止位置に至ると、図13及び図14に示すように、左側前及び右側後の仮係止爪147が仮係止突起128によって下方から係止され、リテーナ140が仮係止位置に保持される。また、本係止位置に至ると、図16及び図17に示すように、右側前及び左側後の本係止爪148が本係止突起127によって下方から係止され、リテーナ140が仮係止位置に保持される。
【0050】
すなわち、本実施形態によると、本係止爪148及び仮係止爪147は、全てが独立して形成されていることから、リテーナ140が仮係止位置と本係止位置との間を移動する際には、左側前及び右側後に位置するロック片146は、弾性変形することなく、右側前及び左側後に位置するロック片146のみを独立して弾性変形させることができる。これにより、リテーナ140が本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、仮係止爪147が形成されたロック片146は弾性変形せず、リテーナ140が本係止突起127から解除された勢いで仮係止突起128からも解除されることを抑制することができる。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、仮係止突起28および仮係止爪47を本係止突起27および本係止爪48の後側に形成した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、仮係止突起28および仮係止爪47を本係止突起27および本係止爪48の前側に形成してもよい。
(2)上記実施形態では、ロック部収容部25のキャビティ21側の内壁に仮係止突起28および本係止突起27を形成し、ロック片46を幅方向外側に弾性変形可能に構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ロック部収容部の外側に位置する内壁に仮係止突起および本係止突起を形成し、ロック片を幅方向内側に弾性変形可能に形成してもよい。
(3)上記実施形態2では、仮係止突起28および本係止突起27と、仮係止爪47および本係止爪48との位置をコネクタハウジング120およびリテーナ140の左側と右側とで前後逆の配置となるように構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、仮係止突起および本係止突起と、仮係止爪および本係止爪との位置をコネクタハウジングおよびリテーナの左側と右側とで同じに配置してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10,110:コネクタ
20,120:コネクタハウジング
46,146:ロック片
23:リテーナ装着孔
40,140:リテーナ
27,127:本係止突起
48,148:本係止爪
28,128:仮係止突起
47,147:仮係止爪
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタハウジングに収容された端子金具を抜け止めするリテーナを備えたコネクタとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。
このリテーナは、コネクタハウジングの底部に設けられたリテーナ挿入孔に挿入されるようになっており、端子金具を抜け止めする抜け止め部と、この抜け止め部の幅方向両側において幅方向外側に弾性変形可能な一対のロック片とを備えて構成されている。
一対のロック片は、コネクタハウジングの幅方向両側に形成された仮係止突起と、仮係止突起よりもロック片の挿入方向奥側に形成された本係止突起との何れかに選択的に係止可能に形成されている。そして、ロック片と仮係止突起とが弾性的に係止することで、抜け止め部が端子金具の進入経路から退避して端子金具が挿抜可能な仮係止位置に抜け止め部が保持される。また、ロック片と本係止突起とが弾性的に係止することで、コネクタハウジングに収容された端子金具を抜け止め部が後方から係止して端子金具を抜け止めする本係止位置に抜け止め部が保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−229197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メンテナンスのためにリテーナを本係止位置から仮係止位置に移動させる際には、ロック片を弾性変形させて本係止突起との係止状態を解除し、ロック片と仮係止突起とを係止させる。
ところが、リテーナに対して本係止位置から仮係止位置へ移動する際に、大きな力が加えられると、弾性変形して本係止突起を乗り越えたロック片が、弾性復帰する前に、仮係止突起も乗り越えてしまい、リテーナが勢い余ってコネクタハウジングから外れてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、端子金具を収容するコネクタハウジングと、弾性変形可能なロック片を有して、前記コネクタハウジングのリテーナ装着孔に挿入されるリテーナとを備え、前記端子金具の進入経路から退避して前記端子金具が挿抜可能となる仮係止位置と、前記端子金具の進入経路に進入して前記端子金具を抜け止めする本係止位置との間を前記リテーナが移動可能なコネクタであって、前記ロック片は、前記リテーナ装着孔の内面に形成された本係止突起によって前記リテーナ装着孔の開口側から前記リテーナ装着孔の奥側に向かって係止されることで前記リテーナを前記本係止位置に保持する本係止爪と、前記本係止爪に対して前記リテーナの挿入方向と交差する方向にずれて形成され、前記リテーナ装着孔の内面に形成された仮係止突起によって前記リテーナ装着孔の開口側から前記リテーナ装着孔の奥側に向かって係止されることで、前記リテーナを前記仮係止位置に保持する仮係止爪とを備えており、前記本係止爪が前記本係止突起に乗り上げて前記ロック片が弾性変形することで、前記リテーナが前記本係止位置から前記仮係止位置に移動する際に、前記ロック片が弾性変形して前記仮係止爪が変位する量は、前記本係止爪が変位する量よりも小さいところに特徴を有する。
【0007】
このような構成のコネクタによると、本係止爪と仮係止爪とがずれて形成されているので、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、ロック片が弾性変形する位置は、本係止爪が形成された側となり、本係止爪が本係止突起に乗り上げてロック片が弾性変形した状態における仮係止爪の変位量は、本係止爪の変位量よりも小さくなる。これにより、仮係止爪が形成された側のロック片は、仮係止爪と仮係止突起とが解除されるほど弾性変形した状態にならず、ロック片が本係止突起から解除された勢いで仮係止突起からも解除されることを抑制することができる。ひいては、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことを抑制することができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記仮係止突起および前記本係止突起は、前記コネクタハウジングの幅方向に突出して形成されており、前記仮係止突起と前記ロック片との係り代は、前記本係止突起と前記ロック片との係り代よりも大きい構成としてもよい。
このような構成によると、仮係止突起とロック片との係止を解除するためには、本係止突起とロック片との係止を解除するときよりもロック片を更に弾性変形させる必要があるため、本係止突起から解除されたロック片が勢い余って仮係止突起からも解除されることをさらに抑制することができる。
【0009】
前記ロック片は、前記リテーナの底板部から立ち上がる平板状に形成されており、前記ロック片における前記本係止爪よりも基端部側の部分が、前記仮係止爪よりも基端部側の部分に比べて、肉厚に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、ロック片における本係止爪よりも基端部側の部分を、ロック片における仮係止爪よりも基端部側の部分に比べて、剛性を高くすることができるので、本係止爪と本係止突起との係止状態が解除される方向にロック片が弾性変形し難くすることができる。これにより、仮係止位置よりも係り代が浅い本係止位置におけるリテーナの保持力を向上させることができる。
【0010】
前記仮係止爪と前記本係止爪とは、前記リテーナの挿入方向と交差する方向に連続して一体に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、ロック片の仮係止爪と本係止爪とがリテーナの挿入方向と交差する方向に分かれて形成されている場合に比べて、ロック片全体の強度を高くすることができると共に、リテーナの挿入方向と交差する方向の長さ寸法を小さくすることができる。
【0011】
前記ロック片は、前記ロック片の挿入方向と交差する方向に分割して形成されており、前記仮係止爪は、分割された前記ロック片の一方に形成されており、前記本係止爪は、分割された前記ロック片の他方に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、仮係止爪が形成されたロック片と、本係止爪が形成されたロック片とを独立して弾性変形させることができるので、本係止爪が形成されたロック片が弾性変形して、本係止爪と本係止突起との係止状態が解除される際に、仮係止爪が形成されたロック片は弾性変形した状態にならず、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、リテーナがコネクタハウジングから外れてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが組み付けられる前の状態を示す側面図
【図2】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが組み付けられる前の状態を示す背面図
【図3】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが仮係止状態に保持された状態を示す側面図
【図4】図3のA−A線断面図
【図5】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが本係止状態に保持された状態を示す側面図
【図6】実施形態1にかかるコネクタハウジングにリテーナが本係止状態に保持された状態を示す背面図
【図7】図5のB−B線断面図
【図8】実施形態1にかかるコネクタハウジングの底面図
【図9】実施形態1にかかるリテーナの斜視図
【図10】実施形態1にかかるリテーナの平面図
【図11】実施形態1にかかるリテーナの背面図
【図12】実施形態2にかかるコネクタハウジングにリテーナが仮係止状態に保持された状態を示す側面図
【図13】図12のC−C線断面図
【図14】図12のD−D線断面図
【図15】実施形態2にかかるコネクタハウジングにリテーナが本係止状態に保持された状態を示す側面図
【図16】図15のE−E線断面図
【図17】図15のF−F線断面図
【図18】実施形態2にかかるリテーナの斜視図
【図19】実施形態2にかかるリテーナの平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について図1乃至図11を参照して説明する。
本実施形態は、合成樹脂製のコネクタハウジング20と、このコネクタハウジング20に収容される図示しない雌型端子を抜け止めする合成樹脂製のリテーナ40とを備えたコネクタ10を例示している。
【0015】
コネクタハウジング20は、図1乃至図4に示すように、大まかには前後方向に縦長なブロック状に形成されている。
コネクタハウジング20の内部には、前後方向に貫通した形態のキャビティ21が上下方向および幅方向に複数並んで形成されており、キャビティ21内には、図示しない雌型端子が後方から収容可能とされている。雌型端子は、キャビティ21内に収容されると、キャビティ21の内壁から前方に向かって片持ち状に延びるランス22によって後方から係止され、キャビティ21内に抜け止めされるようになっている。
【0016】
コネクタハウジング20の底面における前後方向略中央部には、図8に示すように、リテーナ装着孔23が形成されている。リテーナ装着孔23の開口部は、略U字状に形成されており、リテーナ装着孔23は、幅方向に横長な抜け止め部収容部24と、抜け止め部収容部24の両端部から後方に延びる前後方向に縦長な一対のロック部収容部25とから構成されている。
【0017】
抜け止め部収容部24は、コネクタハウジング20の底面から上方に向かって凹んだ形態をなし、抜け止め部収容部24の内部空間は、コネクタハウジング20の各キャビティ21に連通している。
【0018】
一対のロック部収容部25は、コネクタハウジング20の幅方向両端部に位置する側壁20Aの内側に形成されている。詳しくは、ロック部収容部25は、図4及び図8に示すように、幅方向両端部に位置するキャビティ21とコネクタハウジング20の両側壁20Aとの間にそれぞれ形成されており、コネクタハウジング20の側面に沿った形態とされている。また、ロック部収容部25は、抜け止め部収容部24と同様に、コネクタハウジング20の底面から上方に向かって凹んだ形態をなしている。
【0019】
一方、リテーナ40は、抜け止め部収容部24内に嵌合可能な抜け止め部41と、一対のロック部収容部25内にそれぞれ嵌合可能な一対のロック部42とを備えて構成されている。
抜け止め部41は、図9乃至図11に示すように、背面視略U字状をなし、前後方向に貫通する略矩形状の端子挿通孔43が上下方向及び幅方向に複数形成されることで、幅方向に横長な格子状に形成されている。
【0020】
端子挿通孔43には、雌型端子が前後方向に挿通可能とされており、各端子挿通孔43の底面および抜け止め部41の上面には、コネクタハウジング20のキャビティ21内に挿入された雌型端子を後方から係止する端子係止部44が各キャビティ21に対応して複数形成されている。
【0021】
また、抜け止め部41は、端子係止部44がキャビティ21内に突出することで雌型端子を後方から係止して、雌型端子をキャビティ21内に抜け止めする本係止位置(図6および図7参照)と、端子係止部44がキャビティ21内から退避して、キャビティ21への雌型端子の挿抜を許容する仮係止位置(図4参照)との間を移動可能とされている。これにより、キャビティ21内に雌型端子が収容された状態で、抜け止め部41が本係止位置まで嵌合されると、端子係止部44によって雌型端子が後方から係止され、雌型端子がランス22と端子係止部44とによって二重に係止されるようになっている。
【0022】
また、リテーナ40は、仮係止位置では、図3及び図4に示すように、コネクタハウジング20の底面から抜け止め部41およびロック部42の一部を下方に突出させた状態となり、本係止位置では、図6及び図7に示すように、リテーナ装着孔23に完全に収容された状態で嵌合され、コネクタハウジング20の底面と抜け止め部41の底面およびロック部42の底面とがほぼ面一状態となる。
【0023】
一対のロック部42は、図9乃至図11に示すように、平板状をなし、抜け止め部41の後方に隣接して形成されている。また、ロック部42は、抜け止め部41の幅方向両端部から後方に延びる底板部45と、底板部45から上方に立ち上がるロック片46とを備えて構成されている。なお、図9については、紙面左手前側を後方とし、紙面右奥側を前方としている。
【0024】
底板部45は、いずれも矩形平板状をなし、互いに対向した形態で抜け止め部41の後端部に一体に形成されている。
ロック片46は、底板部45よりも板厚が薄い矩形平板状に形成されている。ロック片46は、底板部45の上端縁における幅方向外側に一体に形成されており、底板部45と連結する基端部を支点に幅方向外側に弾性変形可能とされている。
【0025】
一方、コネクタハウジング20の両側壁20Aには、弾性変形したロック片46を逃がすための貫通孔26がそれぞれ形成されている。貫通孔26は、図1に示すように、前後方向に縦長な略矩形状をなし、側壁20Aの上下方向略中央部において、図4および図7に示すように、側壁20Aを幅方向に貫通して形成されている。
貫通孔26の内部空間には、ロック片46の先端部が進入可能とされており、幅方向外側に弾性変形するロック片46の先端部が貫通孔26の内部空間に進入することで、ロック片46が幅方向外側に弾性変形することが許容されるようになっている。
【0026】
さて、ロック部収容部25の幅方向内側であるキャビティ21側の両内壁には、図1、図4及び図7に示すように、リテーナ40を本係止位置に保持する本係止突起27と、リテーナ40を仮係止位置に保持する仮係止突起28とがそれぞれ形成されている。
【0027】
本係止突起27は、キャビティ21側の内壁から幅方向外側に向かって突出して形成されており、前後方向に延びた形態をなしている。また、本係止突起27は、断面略矩形状をなし、本係止突起27の上面は、突起側本係止面27Aとされている。
【0028】
仮係止突起28は、本係止突起27と同様に、キャビティ21側の内壁から幅方向外側に向かって突出して形成されており、前後方向に延びた形態をなしている。また、仮係止突起28は、本係止突起27よりも幅方向外側に突出して形成されており、キャビティ21側の内壁から幅方向外側に延びる突起側仮係止面28Aを上部に有して、突起側仮係止面28Aの外側端部から僅かに下方に延びた後、下方に延びるほどキャビティ21側に近づく形態をなしている。
【0029】
また、仮係止突起28は、本係止突起27よりもロック部収容部25の開口側である下側に配されており、仮係止突起28の前後方向の長さ寸法は、本係止突起27の前後方向の長さ寸法とほぼ同一に設定されている。また、仮係止突起28は、本係止突起27の後端位置よりも後側の領域における前端部分に形成されており、仮係止突起28の前端位置が本係止突起27の後端位置と上下方向に重なる位置に配されている。すなわち、本係止突起27と仮係止突起28とは、前後方向および上下方向にずれて形成されている。
【0030】
一方、ロック片46の上端縁には、図9および図10に示すように、仮係止突起28と係止可能な仮係止爪47と、本係止突起27と係止可能な本係止爪48とが形成されている。また、仮係止爪47と本係止爪48とは、前後方向に連続して一体に形成されている。
仮係止爪47は、ロック片46の後端から前方に向かって直線的に延びた形態をなし、ロック片46の前後方向略中央部よりも後側に配されている。また、仮係止爪47は、ロック片46の上端縁から幅方向内側に向かって突出して形成されており、仮係止爪47における下側の面である仮係止面47Aは、仮係止突起28の突起側仮係止面28Aと係止可能とされている。仮係止面47Aは、突起側仮係止面28Aよりも前後方向に長く形成されており、仮係止面47Aと突起側仮係止面28Aとが係止した状態では、突起側仮係止面28A全体が仮係止面47Aに面接触するように設定されている。
【0031】
本係止爪48は、ロック片46の前後方向略中央部よりも前側に形成されている。また、本係止爪48は、仮係止爪47の前端からロック片46の前端まで直線的に延びた形態をなし、本係止爪48の前後方向の長さ寸法は、仮係止爪47の前後方向の長さ寸法とほぼ同じに設定されている。
また、本係止爪48は、仮係止爪47と同様に、ロック片46の上端縁から幅方向内側に向かって突出して形成されており、本係止爪48の突出端は、仮係止爪の突出端と面一状に形成されている。
【0032】
また、本係止爪48の下面は、本係止突起27の突起側本係止面27Aと係止可能な本係止面48Aとされており、仮係止爪47の仮係止面47Aと面一状に形成されている。また、本係止面48Aは、突起側本係止面27Aよりも前後方向に長く形成されており、本係止面48Aと突起側本係止面27Aとが係止した状態において、突起側本係止面27A全体が本係止面48Aに面接触するように設定されている。
【0033】
本係止爪48は、リテーナ40が仮係止位置と本係止位置とを相互に移動する際に、本係止突起27に乗り上げる。すると、本係止爪48が形成されたロック片46の前側半分が幅方向外側に弾性変形し、本係止爪48が本係止突起27を乗り越えることでロック片46が弾性復帰する。すなわち、ロック片46は、斜め前上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形し、仮係止爪47が形成されたロック片46の後側半分は、ほとんど弾性変形せず、仮係止爪47が幅方向外側に向かって変位する量は、本係止爪48が幅方向外側に向かって変位する量よりも小さくなるようになっている。
【0034】
そして、抜け止め部41が仮係止位置に配されて、仮係止面47Aが突起側仮係止面28Aによって下方から係止されることで、リテーナ40が仮係止位置に保持され、抜け止め部41が本係止位置に配されて、本係止面48Aが突起側本係止面27Aによって下方から係止されることで、リテーナ40が本係止位置に保持されるようになっている。
【0035】
また、ロック片46から仮係止爪47が幅方向内側に突出する量は、図4及び図7に示すように、ロック片46から本係止爪48が突出する量よりも大きく形成されており、仮係止位置において仮係止突起28の突起側仮係止面28Aと仮係止爪47の仮係止面47Aとが係止した状態における係り代の幅方向の長さ寸法は、本係止位置において本係止突起27の突起側本係止面27Aと本係止爪48の本係止面48Aとが係止した状態における係り代の幅方向の長さ寸法よりも大きくなるように設定されている。これにより、突起側仮係止面28Aと仮係止面47Aとが係止する面積を、突起側本係止面27Aと本係止面48Aとが係止する面積よりも大きくすることができ、仮係止位置におけるリテーナ40の保持力を本係止位置におけるリテーナ40の保持力よりも向上させることができるようになっている。
【0036】
また、ロック片46における本係止爪48よりも基端部側の部分は、ロック片46における仮係止爪47よりも基端部側の部分に比べて、厚肉に形成されており、本係止爪48の前端部は、ロック片46の前端縁から幅方向内側に突出して形成された補強壁49と一体に形成されている。つまり、本係止爪48と仮係止爪47との間を境にロック片46における前側の部分の剛性が後側の部分の剛性よりも高くなっており、本係止位置においてロック片46が幅方向外側に弾性変形し難くすることができる。これにより、本係止爪48と本係止突起27との係り代が、仮係止爪47と仮係止突起28との係り代よりも浅くなる本係止位置において、リテーナ40の保持力を向上させることができる。
【0037】
本実施形態は、以上のような構成であって、次に、コネクタ10の組み付け方法について簡単に説明すると共に、その作用効果を説明する。
まず、コネクタハウジング20の下方から、リテーナ40をリテーナ装着孔23に嵌合させ、コネクタハウジング20に対してリテーナ40を上方に移動させる。この過程において、ロック片46の仮係止爪47が仮係止突起28に乗り上げ、ロック片46の後側部分が同ロック片46の基端部を支点に幅方向外側に弾性変形することで、ロック片46は、斜め後上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形する。
【0038】
そして、仮係止突起28に乗り上げた仮係止爪47が仮係止突起28を乗り越えると、図4に示すように、仮係止爪47の仮係止面47Aが仮係止突起28の突起側仮係止面28Aによって下方から係止され、リテーナ40が仮係止位置に保持される。また、この状態において、抜け止め部41の端子係止部44は、キャビティ21内から退避しており、キャビティ21に対して雌型端子の挿抜が可能となる。そして、雌型端子を後方からキャビティ21内に挿入し、雌型端子を正規の位置まで挿入することで、雌型端子がランス22によってキャビティ21内に抜け止めされる。
【0039】
次に、リテーナ40をコネクタハウジング20に対して、更に上方へと移動させる。この過程において、ロック片46の本係止爪48が本係止突起27に乗り上げ、ロック片46の前側部分が同ロック片46の基端部を支点に幅方向外側に弾性変形し、ロック片46は、斜め前上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形する。このとき、ロック片46の先端部は、コネクタハウジング20の貫通孔26の内部空間に進入し、ロック片46が幅方向外側に弾性変形することを許容される。
【0040】
そして、ロック片46の本係止爪48が本係止突起27を乗り越えると、ロック片46が弾性復帰することで、図7に示すように、本係止爪48の本係止面48Aが本係止突起27の突起側本係止面27Aによって下方から係止され、抜け止め部41が本係止位置に保持される。また、この状態において、抜け止め部41の端子係止部44は、キャビティ21内に突出して、雌型端子を後方から係止して、雌型端子をキャビティ21内に抜け止めする。これにより、雌型端子は、ランス22と端子係止部44とによって二重に係止され、コネクタ10が完成する。
【0041】
次に、メンテナンス等で、リテーナ40を本係止位置から仮係止位置へ移動させる場合について説明する。
リテーナ40を本係止位置から仮係止位置へ移動させる場合には、治具などをリテーナ装着孔23とリテーナ40との間に挿し込んでリテーナ装着孔23からリテーナ40を下方に引き出すように移動させる。このとき、ロック片46は、仮係止位置から本係止位置へ移動させた時と逆の状態となる。つまり、ロック片46の本係止爪48が本係止突起27に乗り上げることで、ロック片46の前側部分が幅方向外側に弾性変形し、ロック片46が斜め前上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形する。そして、ロック片46の本係止爪48が本係止突起27を乗り越えると、仮係止爪47の仮係止面47Aが仮係止突起28の突起側仮係止面28Aによって下方から係止され、図4に示すように、抜け止め部41が仮係止位置に保持される。すなわち、本係止爪48が本係止突起27に乗り上げることで、ロック片46は、斜め前上方に拡開するようにして幅方向外側に弾性変形するところ、仮係止爪47及び仮係止突起28は、ロック片46の後側に形成されているので、ロック片46の後側の撓み量は少なく、仮係止爪47と仮係止突起28とは互いに常に係止した状態となっている。これにより、リテーナ40は、コネクタハウジング20に対して常に保持された状態となる。
【0042】
ところで、治具などをリテーナ装着孔23とリテーナ40との間に挿し込んでリテーナ装着孔23からリテーナ40を下方に移動させる際に、大きな力が加わってしまい、本係止突起27を乗り越えるために弾性変形したロック片46が、弾性復帰する前に、仮係止位置まで移動してしまう場合がある。ところが、本実施形態によると、仮係止爪47および仮係止突起28が、本係止爪48および本係止突起27の後方にずれて形成されていることから、ロック片46の前側部分が幅方向外側に弾性変形した状態においても、ロック片46における後側部分は、仮係止爪47と仮係止突起28とが解除されるほど弾性変形した状態にならず、本係止爪48と本係止突起27とが解除された勢いで仮係止突起28から仮係止爪47が解除されることを抑制することができる。これにより、リテーナ40に対して抜け方向である下方向に大きな力が加えられた場合においても、リテーナ40が勢い余ってコネクタハウジング20から外れてしまうことを抑制することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によると、リテーナ40を本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、ロック片46が弾性変形する位置は、本係止爪48が形成された前側となり、仮係止爪47が形成された後側におけるロック片46の撓み量は小さくなる。これにより、仮係止爪47が形成された後側のロック片46は、仮係止爪47と仮係止突起28とが解除されるほど弾性変形した状態にならず、ロック片46が本係止突起27から解除された勢いで仮係止突起28からも解除されることを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態によると、仮係止突起28と仮係止爪47との係り代は、本係止突起27と本係止爪48との係り代よりも突出方向に大きく形成されていることから、仮係止突起28と仮係止爪47との係止を解除するためには、本係止突起27と本係止爪48との係止を解除するときよりもロック片46を幅方向外側にさらに弾性変形させる必要がある。これにより、リテーナ40が勢い余ってコネクタハウジング20から外れてしまうことをさらに抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施形態によると、ロック片46の上端縁に仮係止爪47と本係止爪48とが連続して一体に形成されていることから、仮係止爪と本係止爪とが前後方向に分かれて形成されている場合に比べて、ロック片46全体の強度を高くすることができると共に、リテーナの前後方向の長さ寸法を小さくすることができる。
【0046】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について図12乃至図19を参照して説明する。
実施形態2のコネクタ110は、実施形態1におけるコネクタハウジング20のロック部収容部25と、リテーナ40のロック部42とを変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0047】
実施形態2のコネクタハウジング120のロック部収容部125は、抜け止め部収容部24の両端部から後方だけでなく、前方にも延びた形態となっており、前側のロック部収容部125は、後側のロック部収容部125よりも短く設定されている。
また、ロック部収容部125の本係止突起127及び仮係止突起128は、図12に示すように、ロック部収容部125の前側と後側とに分割して形成されている。また、本係止突起127及び仮係止突起128は、図13及び図14に示すように、コネクタハウジング120の左側と右側とで本係止突起127と仮係止突起128とが前後逆に配置されている。詳しくは、図13に示すように、ロック部収容部125の前側には、図示左側の位置に仮係止突起128が形成され、図示右側の位置に本係止突起127が形成されている。また、図14に示すように、ロック部収容部125の後側には、図示左側の位置に本係止突起127が形成され、図示右側の位置に仮係止突起128が形成されている。
【0048】
一方、リテーナ140のロック部142は、図18及び図19に示すように、抜け止め部41の両端部から後方だけでなく、前方にも延びた形態となっており、前側のロック部142は後側のロック部142よりも短く設定されている。また、各ロック部142のロック片146には、仮係止爪147または本係止爪148が個別に形成されている。詳しくは、前側に位置するロック片146の図示上側に位置する左側には仮係止爪147が形成されており、前側に位置するロック片146の図示下側に位置する右側には本係止爪148が形成されている。また、後側に位置するロック片146の図示上側に位置する左側には本係止爪148が形成されており、後側に位置するロック片146の図示下側に位置する右側には仮係止爪147が形成されている。つまり、コネクタハウジング120の本係止突起127及び仮係止突起128と対応するように、リテーナ140の左側と右側とで本係止爪148と仮係止爪147とが前後逆に配置されている。
【0049】
そして、コネクタハウジング120に対してリテーナ140が仮係止位置と本係止位置との間を移動する際には、右側前及び左側後に位置するロック片146の本係止爪148が本係止突起127に乗り上げ、右側前及び左側後のロック片46が基端部を支点に幅方向外側に弾性変形する。そして、仮係止位置に至ると、図13及び図14に示すように、左側前及び右側後の仮係止爪147が仮係止突起128によって下方から係止され、リテーナ140が仮係止位置に保持される。また、本係止位置に至ると、図16及び図17に示すように、右側前及び左側後の本係止爪148が本係止突起127によって下方から係止され、リテーナ140が仮係止位置に保持される。
【0050】
すなわち、本実施形態によると、本係止爪148及び仮係止爪147は、全てが独立して形成されていることから、リテーナ140が仮係止位置と本係止位置との間を移動する際には、左側前及び右側後に位置するロック片146は、弾性変形することなく、右側前及び左側後に位置するロック片146のみを独立して弾性変形させることができる。これにより、リテーナ140が本係止位置から仮係止位置へ移動させる際に、仮係止爪147が形成されたロック片146は弾性変形せず、リテーナ140が本係止突起127から解除された勢いで仮係止突起128からも解除されることを抑制することができる。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、仮係止突起28および仮係止爪47を本係止突起27および本係止爪48の後側に形成した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、仮係止突起28および仮係止爪47を本係止突起27および本係止爪48の前側に形成してもよい。
(2)上記実施形態では、ロック部収容部25のキャビティ21側の内壁に仮係止突起28および本係止突起27を形成し、ロック片46を幅方向外側に弾性変形可能に構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ロック部収容部の外側に位置する内壁に仮係止突起および本係止突起を形成し、ロック片を幅方向内側に弾性変形可能に形成してもよい。
(3)上記実施形態2では、仮係止突起28および本係止突起27と、仮係止爪47および本係止爪48との位置をコネクタハウジング120およびリテーナ140の左側と右側とで前後逆の配置となるように構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、仮係止突起および本係止突起と、仮係止爪および本係止爪との位置をコネクタハウジングおよびリテーナの左側と右側とで同じに配置してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10,110:コネクタ
20,120:コネクタハウジング
46,146:ロック片
23:リテーナ装着孔
40,140:リテーナ
27,127:本係止突起
48,148:本係止爪
28,128:仮係止突起
47,147:仮係止爪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を収容するコネクタハウジングと、弾性変形可能なロック片を有して、前記コネクタハウジングのリテーナ装着孔に挿入されるリテーナとを備え、
前記端子金具の進入経路から退避して前記端子金具が挿抜可能となる仮係止位置と、前記端子金具の進入経路に進入して前記端子金具を抜け止めする本係止位置との間を前記リテーナが移動可能なコネクタであって、
前記ロック片は、前記リテーナ装着孔の内面に形成された本係止突起によって前記リテーナ装着孔の開口側から前記リテーナ装着孔の奥側に向かって係止されることで前記リテーナを前記本係止位置に保持する本係止爪と、
前記本係止爪に対して前記リテーナの挿入方向と交差する方向にずれて形成され、前記リテーナ装着孔の内面に形成された仮係止突起によって前記リテーナ装着孔の開口側から前記リテーナ装着孔の奥側に向かって係止されることで、前記リテーナを前記仮係止位置に保持する仮係止爪とを備えており、
前記本係止爪が前記本係止突起に乗り上げて前記ロック片が弾性変形することで、前記リテーナが前記本係止位置から前記仮係止位置に移動する際に、前記ロック片が弾性変形して前記仮係止爪が変位する量は、前記本係止爪が変位する量よりも小さいことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記仮係止突起および前記本係止突起は、前記コネクタハウジングの幅方向に突出して形成されており、
前記仮係止突起と前記ロック片との係り代は、前記本係止突起と前記ロック片との係り代よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ロック片は、前記リテーナの底板部から立ち上がる平板状に形成されており、
前記ロック片における前記本係止爪よりも基端部側の部分が、前記仮係止爪よりも基端部側の部分に比べて、肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記仮係止爪と前記本係止爪とは、前記リテーナの挿入方向と交差する方向に連続して一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ロック片は、前記ロック片の挿入方向と交差する方向に分割して形成されており、
前記仮係止爪は、分割された前記ロック片の一方に形成されており、前記本係止爪は、分割された前記ロック片の他方に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項1】
端子金具を収容するコネクタハウジングと、弾性変形可能なロック片を有して、前記コネクタハウジングのリテーナ装着孔に挿入されるリテーナとを備え、
前記端子金具の進入経路から退避して前記端子金具が挿抜可能となる仮係止位置と、前記端子金具の進入経路に進入して前記端子金具を抜け止めする本係止位置との間を前記リテーナが移動可能なコネクタであって、
前記ロック片は、前記リテーナ装着孔の内面に形成された本係止突起によって前記リテーナ装着孔の開口側から前記リテーナ装着孔の奥側に向かって係止されることで前記リテーナを前記本係止位置に保持する本係止爪と、
前記本係止爪に対して前記リテーナの挿入方向と交差する方向にずれて形成され、前記リテーナ装着孔の内面に形成された仮係止突起によって前記リテーナ装着孔の開口側から前記リテーナ装着孔の奥側に向かって係止されることで、前記リテーナを前記仮係止位置に保持する仮係止爪とを備えており、
前記本係止爪が前記本係止突起に乗り上げて前記ロック片が弾性変形することで、前記リテーナが前記本係止位置から前記仮係止位置に移動する際に、前記ロック片が弾性変形して前記仮係止爪が変位する量は、前記本係止爪が変位する量よりも小さいことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記仮係止突起および前記本係止突起は、前記コネクタハウジングの幅方向に突出して形成されており、
前記仮係止突起と前記ロック片との係り代は、前記本係止突起と前記ロック片との係り代よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ロック片は、前記リテーナの底板部から立ち上がる平板状に形成されており、
前記ロック片における前記本係止爪よりも基端部側の部分が、前記仮係止爪よりも基端部側の部分に比べて、肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記仮係止爪と前記本係止爪とは、前記リテーナの挿入方向と交差する方向に連続して一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ロック片は、前記ロック片の挿入方向と交差する方向に分割して形成されており、
前記仮係止爪は、分割された前記ロック片の一方に形成されており、前記本係止爪は、分割された前記ロック片の他方に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−105658(P2013−105658A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249649(P2011−249649)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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