コネクタ
【課題】リテーナがハウジングから離脱するのを確実に防止する。
【解決手段】ハウジング10は、リテーナ30の移動方向と略直角な離脱規制面17Fと、リテーナ30の移動方向に対して傾斜してリテーナ30の組付け方向において離脱規制面17Fより前方に配された前後一対のテーパ面16F,16Rとを有する。リテーナ30は、仮係止位置にある状態で後側のテーパ面16Rと離脱規制面17Fとの間に嵌合する係止部40を有する。係止部40は、ハウジング10に対する組付け方向前方を向いた前側係止面40Fと、ハウジング10に対する移動方向と略直角な面であってハウジング10に対する組付け方向後方を向いた後側係止面40Rとを有する。
【解決手段】ハウジング10は、リテーナ30の移動方向と略直角な離脱規制面17Fと、リテーナ30の移動方向に対して傾斜してリテーナ30の組付け方向において離脱規制面17Fより前方に配された前後一対のテーパ面16F,16Rとを有する。リテーナ30は、仮係止位置にある状態で後側のテーパ面16Rと離脱規制面17Fとの間に嵌合する係止部40を有する。係止部40は、ハウジング10に対する組付け方向前方を向いた前側係止面40Fと、ハウジング10に対する移動方向と略直角な面であってハウジング10に対する組付け方向後方を向いた後側係止面40Rとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、後方からハウジング内に端子金具を挿入し、ハウジングに対し端子金具の挿入方向と交差する方向からリテーナを組付け、このリテーナを端子金具に係止させることにより、端子金具を抜止めするようにしたコネクタが開示されている。ハウジングに端子金具を挿入する際には、ハウジングに対する端子金具の挿抜を許容する仮係止位置へリテーナを退避させておく。そして、端子金具をハウジングに挿入し終えたら、リテーナを、本係止位置へ移動させて端子金具に係止させ、この係止作用により端子金具を抜止めする。
【0003】
リテーナを仮係止位置又は本係止位置に保持する手段として、リテーナには、ハウジングに対する組付け方向に沿って延びる保持壁が形成されており、保持壁におけるハウジングの外面との対向面には、仮係止凹部と本係止凹部が、ハウジングに対するリテーナの組付け方向に離間して形成されている。一方の半割体の外面には係止部が形成されている。仮係止凹部を係止部に係止させると、リテーナは仮係止位置に保持され、本係止凹部を係止部に係止させると、リテーナは本係止位置に保持される。また、リテーナが仮係止位置と本係止位置との間で移動する際には、保持壁がキャビティの外面から離間する方向へ弾性撓みすることにより、凹部が係止部から解離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−252000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のコネクタでは、リテーナを仮係止位置と本係止位置に保持する手段として、リテーナ側に2つの凹部を形成するのに対し、ハウジング側には1つの係止部を形成し、このハウジング側の係止部が、リテーナを仮係止位置に保持する手段と、リテーナを本係止位置に保持する手段とを兼ねるようにしている。具体的には、係止部は互いに反対方向を向いた2つの係止面を有しているのであるが、一方の係止面は、仮係止位置にあるリテーナがハウジングから離脱する方向(つまり、本係止位置に向かう方向とは反対の方向)へ移動するのを規制する機能と、本係止位置にあるリテーナが仮係止位置側へ移動するのを規制する機能とを兼ね備た兼用係止面となっている。
【0006】
メンテナンス等のために端子金具をハウジングから抜き止る際には、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる必要があるが、このとき、保持壁が弾性撓みして凹部が係止部から支障なく解離させるために、上記兼用係止面は、リテーナの移動方向に対して傾斜させている。
【0007】
ところが、兼用係止面を傾斜面にすることは、仮係止位置にあるリテーナがハウジングから離脱するのを規制する機能が低下することを意味する。そのため、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させたときに、勢い余ってリテーナが仮係止位置を通過してハウジングから離脱してしまう虞がある。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、リテーナがハウジングから離脱するのを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための手段として、本発明は、後方から端子金具が挿入されるハウジングと、前記ハウジングに対し、前記端子金具の挿入方向と交差する方向に組み付けられたリテーナとを備えており、前記リテーナは、前記ハウジングに対する端子金具の挿入・抜取りを許容する仮係止位置と、前記仮係止位置よりも組付け方向前方の位置であって前記端子金具に係止して前記端子金具を抜止めする本係止位置との間で移動可能となっているコネクタにおいて、前記ハウジングには、第1突部と、前記リテーナの組付け方向において前記第1突部よりも後方の位置に配され前記リテーナの組付け方向前側の面が、前記リテーナの移動方向と略直角な離脱規制面となっている第2突部とが形成され、前記リテーナには、前記ハウジングに対する組付け方向と同方向へ片持ち状に延出した形態であって弾性撓み可能な保持壁が形成され、前記保持壁における前記ハウジングとの対向面には、前記リテーナが仮係止位置にある状態で前記第1突部と前記第2突部との間に嵌合される係止部が形成され、前記係止部には、前記ハウジングに対する組付け方向前方を向いた前側係止面と、前記ハウジングに対する移動方向と略直角な面であって前記ハウジングに対する組付け方向後方を向いた後側係止面とが形成され、また、前記保持壁には、前記係止部よりも前記リテーナの移動方向前方に位置し、前記リテーナを前記ハウジングに組み付ける過程で前記第1突部及び前記第2突部を乗り越え可能なガイド部が形成され、前記ガイド部と前記係止部との間には、前記リテーナが仮係止位置にある状態で前記第1突部を嵌合させる係止凹部が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リテーナをハウジングに組み付ける際に、保持壁が弾性撓みしつつガイド部が第1突部と第2突部を乗り越え、リテーナが仮係止位置に到達すると、係止凹部に第1突部が嵌合することで保持壁が弾性復帰してリテーナが仮係止位置に保持された状態となる。
【0011】
また本発明は、ハウジングに形成された第2突部の離脱規制面と、リテーナの保持壁に形成された係止部の後側係止面とが、共にリテーナの移動方向と略直角に形成され、リテーナが仮係止位置にあるときに、これら両面が当接し合うようになっているため、リテーナがハウジングから離脱することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1においてリテーナが仮係止位置にある状態の平面図
【図2】図1のX−X線断面図
【図3】リテーナが本係止位置にある状態の平面図
【図4】図3のY−Y線断面図
【図5】図3のZ−Z線断面図
【図6】ハウジングの正面図
【図7】ハウジングの底面図
【図8】リテーナの正面図
【図9】リテーナの背面図
【図10】リテーナの側面図
【図11】リテーナの平面図
【図12】リテーナの底面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における好ましい実施の形態を説明すると、前記第1突部における前記リテーナの組み付け方向の前側の面及び後側の面には一対のテーパ面が形成されるようにしてもよい。
このような構成によれば、第1突部に後側テーパ面が形成されているため、リテーナが仮係止位置にあるときに本係止位置へ向けての力が付与されると、前側係止面が後側テーパ面上を摺接しつつ保持壁が弾性撓みし、これによってリテーナを本係止位置へと移動させることができる。
また、第1突部に前側テーパ面が形成されているため、リテーナが本係止位置にあるときに仮係止位置へ向けての力が付与されると、後側係止面が前側テーパ面上を摺接しつつ保持壁が弾性撓みし、これによってリテーナを仮係止位置へと移動させることができる。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1乃至図12を参照して説明する。本実施例のコネクタは、ハウジング10、ハウジング10内に挿入される複数の端子金具20と、ハウジング10に組み付けられるリテーナ30とを備えて構成されている。
【0015】
ハウジング10は、合成樹脂製であり、内部にはハウジング10を前後方向に貫通する複数のキャビティ11が形成されている。キャビティ11の後端は端子金具20を挿入するための入口として大きく開口し、キャビティ11の前端は、図示しない相手側端子のタブを進入させるためのタブ進入口12として小さく開口している。
【0016】
ハウジング10の下面壁には、その外面(下面)からキャビティ11内に連通する端子受け部13が、各キャビティ11と対応するように形成されている。下面壁における端子受け部13よりも後方の位置には、下面壁の外面(下面)からキャビティ11内に連通する連通溝14が、左右方向(ハウジング10に対する端子金具20の挿入方向と直角に交差する方向)に延びるように形成されている。同じく下面壁の下面における端子受け部13よりも前方の位置には、連通溝14と平行なガイド面15が形成されている。
【0017】
端子金具20は、全体として前後方向に細長く、端子金具20の前端側部分は角筒状の端子接続部21となっている。端子金具20の後端側部分はオープンバレル状の圧着部22となっており、この圧着部22には電線23の前端部が圧着により接続されている。端子接続部21の下面板には、その一部を斜め下後方へ延出するように切り起こした形態のランス24が形成されている。また、端子接続部21は、前方から相手側端子のタブ(図示せず)を進入させることにより電気的に接続されるようになっている。端子接続部21の後端の下縁部は、リテーナ30の抜止部36を係止させるための係止段部25となっている。
【0018】
リテーナ30は、合成樹脂製であり、前面壁31と、側面壁32と、上面壁33と、保持壁34とを一体に形成した形態である。側面壁32は、正面から見て前面壁31の右側の側縁に略直角に連なって、前面壁31から後方へ延出している。上面壁33は、前面壁31の上縁に対して直角に連なるとともに、側面壁32の上縁にも連なっている。保持壁34は、前面壁31の上縁に対して略直角に連なっているとともに、側面壁32の上縁にも連なっている。上面壁33と保持壁34は略平行をなす。つまり、リテーナ30は、側面壁32とは反対側の側面及び後面に開口する箱状をなしている。
【0019】
かかるリテーナ30は、ハウジング10に対して側方(図2,4,6における右方)から組み付けられる。組み付けられた状態では、上面壁33はハウジング10の上面に重なり、保持壁34はハウジング10の下面に重なり、前面壁31はハウジング10の前端面に重なる。つまり、ハウジング10は上面壁33と保持壁34により上下に挟まれた状態となる。ハウジング10に組み付けられたリテーナ30は、仮係止位置と本係止位置のいずれかに保持されるとともに、仮係止位置と本係止位置との間で左右方向(つまり、ハウジング10に対するリテーナ30の組付方向と平行な方向)に移動し得るようになっている。本係止位置は、仮係止位置よりもリテーナ30の組付け方向前方に位置する。
【0020】
移動時にリテーナ30を案内する手段として、リテーナ30の保持壁34には、ハウジング10の下面のガイド面15に摺動可能なガイドリブ35が形成されている。また、保持壁34の後端部には、連通溝14内に嵌入される抜止部36が突出形成されている。さらに、前面壁31には、キャビティ11のタブ進入口12と対応するガイド孔37が形成されている。
【0021】
キャビティ11に端子金具20を挿入する際には、図2に示すように、リテーナ30は仮係止位置に保持される。仮係止位置では、抜止部36は端子金具20の挿入経路外へ退避しているので、端子金具20の挿入動作が支障なく行われる。端子金具20が正規位置まで挿入されると、ランス24と端子受け部13との係止作用により、端子金具20を抜止めする機能が発揮される。端子金具20を挿入した後は、リテーナ30を本係止位置へ押し込む。すると、抜止部36が端子金具20の係止段部25に係止し、この係止作用により、端子金具20を抜止めする機能が発揮される。このように、ランス24と端子受け部13との係止及び抜止部36と係止段部25との係止とによる二重係止作用により、端子金具20が確実に抜止め状態に保持される。また、端子金具20をハウジング10から抜き取る際には、リテーナ30を本係止位置から仮係止位置へ移動させ、抜止部36を係止段部25から解離させればよい。
【0022】
次に、リテーナ30を仮係止位置と本係止位置に保持する手段を説明する。図2,4,6,7に示すように、ハウジング10の下面には、左右方向に間隔を空けて第1突部16と第2突部17が形成されている。第1突部16は、正面から見て山形(略三角形)をなしており、左右一対のテーパ面16F,16Rを有している。ハウジング10に対するリテーナ30の組付方向において前方(正面から見て左側)に位置するテーパ面は、前側テーパ面16Fとなっている。ハウジング10に対するリテーナ30の組付方向における後方に位置するテーパ面は、後側テーパ面16Rとなっている。この前後両テーパ面16F,16Rは、いずれも、リテーナ30のハウジング10への組付方向に対して傾斜している。
【0023】
第2突部17は、リテーナ30の組付方向において第1突部16よりも後方に位置しており、正面から見ると方形をなしている。第2突部17の側面のうち、リテーナ30の組付方向前方を向いた前側の側面は、離脱規制面17Fとなっている。この離脱規制面17Fは、リテーナ30の組付方向に対して直角な面となっている。第2突部17の側面のうち、リテーナ30の組付方向後方を向いた後側の側面は、治具当て面17Rとなっている。
【0024】
図2及び図4に示すように、リテーナ30の保持壁34には、その前面壁31の後面に沿って係止凹部38と逃がし凹部39が、左右方向に間隔を空けて形成されている。係止凹部38は、リテーナ30の組付方向において逃がし凹部39よりも前方に位置する。これらの凹部38,39は、いずれも、保持壁34の内面(上面)から外面(下面)へ貫通しており、両凹部38,39の間の部分は係止部40となっている。
【0025】
この係止部40の左右両側面のうちリテーナ30の組付方向前方を向いた前側の側面は、前側係止面40Fとなっており、リテーナ30の組付方向後方を向いた後側の側面は後側係止面40Rとなっている。この両係止面40F,40Rは、いずれも、リテーナ30の組付方向に対して直角な面となっている。
【0026】
また、係止凹部38の左右方向(リテーナ30の組付方向と平行な方向)の幅寸法は、第1突部16の最大幅寸法と同じか僅かに大きい寸法であり、且つ第2突部17の幅寸法よりも小さい寸法となっている。
【0027】
また、保持壁34のうち両凹部38,39よりも延出端側の部分は、ガイド部41となっている。このガイド部41のうち係止凹部38とは反対側の面(リテーナ30の組付方向前方を向いた面)は、リテーナ30の組付方向に対して傾斜したガイド斜面42となっている。さらに、逃がし凹部39の内側面のうち側面壁32の近い側の内側面は、治具受け面43となっている。
【0028】
リテーナ30をハウジング10に組み付ける過程では、ガイド斜面42が第2突部17と干渉することにより、保持壁34が下方へ弾性撓みして、ガイド部41が第2突部17に乗り上がってその下面に摺接する。リテーナ30の組付けが進むと、ガイド部41が第2突部17を通過し終わり、係止凹部38が第2突部17と対応する。ここで、係止凹部38の幅寸法は第2突部17の幅寸法よりも狭いことから、ガイド部41が第2突部17を通過し終わった時点では、係止部40の一部が第2突部17と対応しており、これにより、係止凹部38は第2突部17と嵌合することもなく、ガイド部41が第1突部16と第2突部17との間に落ち込むこともない。この後、リテーナ30の組付が進むのに伴い、係止部40が第2突部17の下面に摺接する。
【0029】
そして、リテーナ30が仮係止位置に到達すると、係止部40が第2突部17を通過し終わるので、保持壁34が弾性復帰し、図2に示すように、係止部40が第1突部16と第2突部17との間に嵌合するとともに、第1突部16が係止凹部38に嵌合する。この状態では、リテーナ30は、後側係止面40Rが離脱規制面17Fに係止(面当たり状に当接)することにより、ハウジング10から離脱する方向(本係止位置に移動する方向とは反対方向)へ移動することを規制されるとともに、前側係止面40Fが後側テーパ面16Rに係止(当接)することにより、本係止位置側への移動を規制される。これらの係止作用により、リテーナ30は仮係止位置に保持される。尚、ガイド部41が第1突部16に当接することによっても、リテーナ30がハウジング10から離脱するのを規制する機能が発揮される。
【0030】
リテーナ30が仮係止位置に保持されている状態で、リテーナ30の側面壁32を押して前側係止面40Fと後側テーパ面16Rとの係止力を上回る押圧力をリテーナ30に付与すると、保持壁34が弾性撓みしながら前側係止面40Fが後側テーパ面16R上を摺接し、係止部40が第1突部16に乗り上がり、リテーナ30が本係止位置側への移動を開始する。そして、リテーナ30が本係止位置に到達すると、係止部40が第1突部16を通過し終わるので、保持壁34が弾性復帰し、図4に示すように、係止部40の後側係止面40Rが第1突部16の前側テーパ面16Fに係止(当接)し、リテーナ30は仮係止位置側への移動を規制される。また、側面壁32がハウジング10の外側面に当接することにより、リテーナ30は前止まりされる。以上により、リテーナ30は本係止位置に保持される。
【0031】
リテーナ30が本係止位置にある状態では、逃がし凹部39うち第2突部17の治具当て面17Rと逃がし凹部39の治具受け面43との間の領域が、リテーナ30の下方へ開放された操作空間44として確保される。この操作空間44に差し込んだ細長い治具(図示せず)を、治具当て面17Rと治具受け面43に当接させてこじるようにすると、リテーナ30に対して仮係止位置側への押圧力を付与することができる。
【0032】
この治具の操作により、後側係止面40Rと前側テーパ面16Fとの係止力を上回る押圧力をリテーナ30に付与すると、保持壁34が弾性撓みしながら、後側係止面40Rが前側テーパ面16F上を摺接し、係止部40が第1突部16に乗り上がり、リテーナ30が仮係止位置側への移動を開始する。そして、リテーナ30が仮係止位置に到達すると、係止部40が第1突部16を通過し終わるので、保持壁34が弾性復帰し、係止部40が第1突部16と第2突部17との間に嵌合するとともに、第1突部16に係止凹部38が嵌合する。そして、後側係止面40Rと離脱規制面17Fとの係止、及び前側係止面40Fと後側テーパ面16Rとの係止により、リテーナ30は仮係止位置に保持される。
【0033】
本実施例においては、仮係止位置にあるリテーナ30は、前側係止面40Fと後側テーパ面16Rとの係止作用により本係止位置側への移動を規制されるとともに、後側係止面40Rが離脱規制面17Fに係止することによりハウジング10から離脱する方向への移動を規制されるのであるが、離脱規制面17Fと後側係止面40Rは、いずれも、リテーナ30の移動方向に対して略直角な面であるから、リテーナ30がハウジング10から離脱するのを確実に防止できる。
【0034】
また、リテーナ30の組付け時に保持壁34を弾性撓みさせる際には、保持壁34の弾性撓みを助勢するガイド斜面42が、リテーナ30の組付け方向において係止部40よりも前方の位置、即ち保持壁34の基端部(弾性撓みの支点)から遠い位置に配置されている。したがって、係止部に形成したガイド斜面を第2突部17に摺接させた構造のものに比べると、保持壁34が弾性撓みし易くなっている。
【0035】
また、リテーナ30を組み付ける過程で仮係止位置まで到達させるためには、第2突部17を通過したガイド部41が、引き続いて第1突部16を通過し、さらには係止部40も第2突部17を通過しなければならない。このとき、ガイド部41と係止部40との間の係止凹部38が第2突部17に嵌合し、その結果、リテーナ30が仮係止位置に到達する前に、リテーナ30の組付け動作が規制されてしまうことが懸念される。
【0036】
しかし、本実施例では、係止凹部38の幅を第2突部17の幅よりも小さい寸法としているので、ガイド部41が第2突部17を通過した時点で、係止部40の一部が第2突部17に乗り上がった状態となる。したがって、係止凹部38が第2突部17に嵌合することがなく、リテーナ30は支障なく仮係止位置に到達することができる。
【0037】
また、第2突部17における離脱規制面17Fとは反対側の治具当て面17Rとリテーナ30の治具受け面43との間には、リテーナ30が本係止位置にある状態で、リテーナ30を本係止位置から仮係止位置へ移動させるための治具の進入を許容する操作空間44が形成されている。そして、この操作空間44に治具を進入させることにより、リテーナ30を本係止位置から仮係止位置へ移動させることができるようになっている。ここで、第2突部17における治具の当接領域は、離脱規制面17Fとは反対側であって、リテーナ30の係止部40は当接しない治具当て面17Rであるから、仮に治具によってこの治具当て面17Rが傷付けられたとしても、離脱規制面17Fと後側係止面40Rとの係止作用に支障を来すことはない。
【0038】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施例では離脱規制面をリテーナの移動方向と直角な面としたが、離脱規制面は、リテーナの移動方向に対して直角に近い角度の面であってもよい。この場合、離脱規制面は、ハウジングの外面(即ち、リテーナの移動方向と平行な面)に対して鋭角のオーバーハング状をなしていてもよい。
【0040】
(2)上記実施例では後側係止面をリテーナの移動方向(ハウジングに対する組付け方向)と直角な面としたが、後側係止面は、リテーナの移動方向に対して直角に近い角度の面であってもよい。この場合、後側係止面は保持壁におけるハウジングとの対向面(リテーナの移動方向と平行な面)に対して鋭角のオーバーハング状をなしていてもよい。
【0041】
(3)上記実施例では離脱規制面と後側係止面とが互いに平行をなして面当たりするようにしたが、離脱規制面と後側係止面は僅かに異なる角度であってもよい。
【0042】
(4)上記実施例ではリテーナの前側係止面を、リテーナの移動方向に対して略直角な面としたが、前側係止面は、リテーナの移動方向に対して傾斜した面であってもよい。この場合、前側係止面と後側のテーパ面とを平行な面としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ハウジング
16…第1突部
16F…前側テーパ面
16R…後側テーパ面
17…第2突部
17F…離脱規制面
20…端子金具
30…リテーナ
34…保持壁
38…係止凹部
40…係止部
40F…前側係止面
40R…後側係止面
41…ガイド部
42…ガイド斜面
43…操作空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、後方からハウジング内に端子金具を挿入し、ハウジングに対し端子金具の挿入方向と交差する方向からリテーナを組付け、このリテーナを端子金具に係止させることにより、端子金具を抜止めするようにしたコネクタが開示されている。ハウジングに端子金具を挿入する際には、ハウジングに対する端子金具の挿抜を許容する仮係止位置へリテーナを退避させておく。そして、端子金具をハウジングに挿入し終えたら、リテーナを、本係止位置へ移動させて端子金具に係止させ、この係止作用により端子金具を抜止めする。
【0003】
リテーナを仮係止位置又は本係止位置に保持する手段として、リテーナには、ハウジングに対する組付け方向に沿って延びる保持壁が形成されており、保持壁におけるハウジングの外面との対向面には、仮係止凹部と本係止凹部が、ハウジングに対するリテーナの組付け方向に離間して形成されている。一方の半割体の外面には係止部が形成されている。仮係止凹部を係止部に係止させると、リテーナは仮係止位置に保持され、本係止凹部を係止部に係止させると、リテーナは本係止位置に保持される。また、リテーナが仮係止位置と本係止位置との間で移動する際には、保持壁がキャビティの外面から離間する方向へ弾性撓みすることにより、凹部が係止部から解離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−252000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のコネクタでは、リテーナを仮係止位置と本係止位置に保持する手段として、リテーナ側に2つの凹部を形成するのに対し、ハウジング側には1つの係止部を形成し、このハウジング側の係止部が、リテーナを仮係止位置に保持する手段と、リテーナを本係止位置に保持する手段とを兼ねるようにしている。具体的には、係止部は互いに反対方向を向いた2つの係止面を有しているのであるが、一方の係止面は、仮係止位置にあるリテーナがハウジングから離脱する方向(つまり、本係止位置に向かう方向とは反対の方向)へ移動するのを規制する機能と、本係止位置にあるリテーナが仮係止位置側へ移動するのを規制する機能とを兼ね備た兼用係止面となっている。
【0006】
メンテナンス等のために端子金具をハウジングから抜き止る際には、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させる必要があるが、このとき、保持壁が弾性撓みして凹部が係止部から支障なく解離させるために、上記兼用係止面は、リテーナの移動方向に対して傾斜させている。
【0007】
ところが、兼用係止面を傾斜面にすることは、仮係止位置にあるリテーナがハウジングから離脱するのを規制する機能が低下することを意味する。そのため、リテーナを本係止位置から仮係止位置へ移動させたときに、勢い余ってリテーナが仮係止位置を通過してハウジングから離脱してしまう虞がある。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、リテーナがハウジングから離脱するのを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための手段として、本発明は、後方から端子金具が挿入されるハウジングと、前記ハウジングに対し、前記端子金具の挿入方向と交差する方向に組み付けられたリテーナとを備えており、前記リテーナは、前記ハウジングに対する端子金具の挿入・抜取りを許容する仮係止位置と、前記仮係止位置よりも組付け方向前方の位置であって前記端子金具に係止して前記端子金具を抜止めする本係止位置との間で移動可能となっているコネクタにおいて、前記ハウジングには、第1突部と、前記リテーナの組付け方向において前記第1突部よりも後方の位置に配され前記リテーナの組付け方向前側の面が、前記リテーナの移動方向と略直角な離脱規制面となっている第2突部とが形成され、前記リテーナには、前記ハウジングに対する組付け方向と同方向へ片持ち状に延出した形態であって弾性撓み可能な保持壁が形成され、前記保持壁における前記ハウジングとの対向面には、前記リテーナが仮係止位置にある状態で前記第1突部と前記第2突部との間に嵌合される係止部が形成され、前記係止部には、前記ハウジングに対する組付け方向前方を向いた前側係止面と、前記ハウジングに対する移動方向と略直角な面であって前記ハウジングに対する組付け方向後方を向いた後側係止面とが形成され、また、前記保持壁には、前記係止部よりも前記リテーナの移動方向前方に位置し、前記リテーナを前記ハウジングに組み付ける過程で前記第1突部及び前記第2突部を乗り越え可能なガイド部が形成され、前記ガイド部と前記係止部との間には、前記リテーナが仮係止位置にある状態で前記第1突部を嵌合させる係止凹部が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リテーナをハウジングに組み付ける際に、保持壁が弾性撓みしつつガイド部が第1突部と第2突部を乗り越え、リテーナが仮係止位置に到達すると、係止凹部に第1突部が嵌合することで保持壁が弾性復帰してリテーナが仮係止位置に保持された状態となる。
【0011】
また本発明は、ハウジングに形成された第2突部の離脱規制面と、リテーナの保持壁に形成された係止部の後側係止面とが、共にリテーナの移動方向と略直角に形成され、リテーナが仮係止位置にあるときに、これら両面が当接し合うようになっているため、リテーナがハウジングから離脱することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1においてリテーナが仮係止位置にある状態の平面図
【図2】図1のX−X線断面図
【図3】リテーナが本係止位置にある状態の平面図
【図4】図3のY−Y線断面図
【図5】図3のZ−Z線断面図
【図6】ハウジングの正面図
【図7】ハウジングの底面図
【図8】リテーナの正面図
【図9】リテーナの背面図
【図10】リテーナの側面図
【図11】リテーナの平面図
【図12】リテーナの底面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における好ましい実施の形態を説明すると、前記第1突部における前記リテーナの組み付け方向の前側の面及び後側の面には一対のテーパ面が形成されるようにしてもよい。
このような構成によれば、第1突部に後側テーパ面が形成されているため、リテーナが仮係止位置にあるときに本係止位置へ向けての力が付与されると、前側係止面が後側テーパ面上を摺接しつつ保持壁が弾性撓みし、これによってリテーナを本係止位置へと移動させることができる。
また、第1突部に前側テーパ面が形成されているため、リテーナが本係止位置にあるときに仮係止位置へ向けての力が付与されると、後側係止面が前側テーパ面上を摺接しつつ保持壁が弾性撓みし、これによってリテーナを仮係止位置へと移動させることができる。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1乃至図12を参照して説明する。本実施例のコネクタは、ハウジング10、ハウジング10内に挿入される複数の端子金具20と、ハウジング10に組み付けられるリテーナ30とを備えて構成されている。
【0015】
ハウジング10は、合成樹脂製であり、内部にはハウジング10を前後方向に貫通する複数のキャビティ11が形成されている。キャビティ11の後端は端子金具20を挿入するための入口として大きく開口し、キャビティ11の前端は、図示しない相手側端子のタブを進入させるためのタブ進入口12として小さく開口している。
【0016】
ハウジング10の下面壁には、その外面(下面)からキャビティ11内に連通する端子受け部13が、各キャビティ11と対応するように形成されている。下面壁における端子受け部13よりも後方の位置には、下面壁の外面(下面)からキャビティ11内に連通する連通溝14が、左右方向(ハウジング10に対する端子金具20の挿入方向と直角に交差する方向)に延びるように形成されている。同じく下面壁の下面における端子受け部13よりも前方の位置には、連通溝14と平行なガイド面15が形成されている。
【0017】
端子金具20は、全体として前後方向に細長く、端子金具20の前端側部分は角筒状の端子接続部21となっている。端子金具20の後端側部分はオープンバレル状の圧着部22となっており、この圧着部22には電線23の前端部が圧着により接続されている。端子接続部21の下面板には、その一部を斜め下後方へ延出するように切り起こした形態のランス24が形成されている。また、端子接続部21は、前方から相手側端子のタブ(図示せず)を進入させることにより電気的に接続されるようになっている。端子接続部21の後端の下縁部は、リテーナ30の抜止部36を係止させるための係止段部25となっている。
【0018】
リテーナ30は、合成樹脂製であり、前面壁31と、側面壁32と、上面壁33と、保持壁34とを一体に形成した形態である。側面壁32は、正面から見て前面壁31の右側の側縁に略直角に連なって、前面壁31から後方へ延出している。上面壁33は、前面壁31の上縁に対して直角に連なるとともに、側面壁32の上縁にも連なっている。保持壁34は、前面壁31の上縁に対して略直角に連なっているとともに、側面壁32の上縁にも連なっている。上面壁33と保持壁34は略平行をなす。つまり、リテーナ30は、側面壁32とは反対側の側面及び後面に開口する箱状をなしている。
【0019】
かかるリテーナ30は、ハウジング10に対して側方(図2,4,6における右方)から組み付けられる。組み付けられた状態では、上面壁33はハウジング10の上面に重なり、保持壁34はハウジング10の下面に重なり、前面壁31はハウジング10の前端面に重なる。つまり、ハウジング10は上面壁33と保持壁34により上下に挟まれた状態となる。ハウジング10に組み付けられたリテーナ30は、仮係止位置と本係止位置のいずれかに保持されるとともに、仮係止位置と本係止位置との間で左右方向(つまり、ハウジング10に対するリテーナ30の組付方向と平行な方向)に移動し得るようになっている。本係止位置は、仮係止位置よりもリテーナ30の組付け方向前方に位置する。
【0020】
移動時にリテーナ30を案内する手段として、リテーナ30の保持壁34には、ハウジング10の下面のガイド面15に摺動可能なガイドリブ35が形成されている。また、保持壁34の後端部には、連通溝14内に嵌入される抜止部36が突出形成されている。さらに、前面壁31には、キャビティ11のタブ進入口12と対応するガイド孔37が形成されている。
【0021】
キャビティ11に端子金具20を挿入する際には、図2に示すように、リテーナ30は仮係止位置に保持される。仮係止位置では、抜止部36は端子金具20の挿入経路外へ退避しているので、端子金具20の挿入動作が支障なく行われる。端子金具20が正規位置まで挿入されると、ランス24と端子受け部13との係止作用により、端子金具20を抜止めする機能が発揮される。端子金具20を挿入した後は、リテーナ30を本係止位置へ押し込む。すると、抜止部36が端子金具20の係止段部25に係止し、この係止作用により、端子金具20を抜止めする機能が発揮される。このように、ランス24と端子受け部13との係止及び抜止部36と係止段部25との係止とによる二重係止作用により、端子金具20が確実に抜止め状態に保持される。また、端子金具20をハウジング10から抜き取る際には、リテーナ30を本係止位置から仮係止位置へ移動させ、抜止部36を係止段部25から解離させればよい。
【0022】
次に、リテーナ30を仮係止位置と本係止位置に保持する手段を説明する。図2,4,6,7に示すように、ハウジング10の下面には、左右方向に間隔を空けて第1突部16と第2突部17が形成されている。第1突部16は、正面から見て山形(略三角形)をなしており、左右一対のテーパ面16F,16Rを有している。ハウジング10に対するリテーナ30の組付方向において前方(正面から見て左側)に位置するテーパ面は、前側テーパ面16Fとなっている。ハウジング10に対するリテーナ30の組付方向における後方に位置するテーパ面は、後側テーパ面16Rとなっている。この前後両テーパ面16F,16Rは、いずれも、リテーナ30のハウジング10への組付方向に対して傾斜している。
【0023】
第2突部17は、リテーナ30の組付方向において第1突部16よりも後方に位置しており、正面から見ると方形をなしている。第2突部17の側面のうち、リテーナ30の組付方向前方を向いた前側の側面は、離脱規制面17Fとなっている。この離脱規制面17Fは、リテーナ30の組付方向に対して直角な面となっている。第2突部17の側面のうち、リテーナ30の組付方向後方を向いた後側の側面は、治具当て面17Rとなっている。
【0024】
図2及び図4に示すように、リテーナ30の保持壁34には、その前面壁31の後面に沿って係止凹部38と逃がし凹部39が、左右方向に間隔を空けて形成されている。係止凹部38は、リテーナ30の組付方向において逃がし凹部39よりも前方に位置する。これらの凹部38,39は、いずれも、保持壁34の内面(上面)から外面(下面)へ貫通しており、両凹部38,39の間の部分は係止部40となっている。
【0025】
この係止部40の左右両側面のうちリテーナ30の組付方向前方を向いた前側の側面は、前側係止面40Fとなっており、リテーナ30の組付方向後方を向いた後側の側面は後側係止面40Rとなっている。この両係止面40F,40Rは、いずれも、リテーナ30の組付方向に対して直角な面となっている。
【0026】
また、係止凹部38の左右方向(リテーナ30の組付方向と平行な方向)の幅寸法は、第1突部16の最大幅寸法と同じか僅かに大きい寸法であり、且つ第2突部17の幅寸法よりも小さい寸法となっている。
【0027】
また、保持壁34のうち両凹部38,39よりも延出端側の部分は、ガイド部41となっている。このガイド部41のうち係止凹部38とは反対側の面(リテーナ30の組付方向前方を向いた面)は、リテーナ30の組付方向に対して傾斜したガイド斜面42となっている。さらに、逃がし凹部39の内側面のうち側面壁32の近い側の内側面は、治具受け面43となっている。
【0028】
リテーナ30をハウジング10に組み付ける過程では、ガイド斜面42が第2突部17と干渉することにより、保持壁34が下方へ弾性撓みして、ガイド部41が第2突部17に乗り上がってその下面に摺接する。リテーナ30の組付けが進むと、ガイド部41が第2突部17を通過し終わり、係止凹部38が第2突部17と対応する。ここで、係止凹部38の幅寸法は第2突部17の幅寸法よりも狭いことから、ガイド部41が第2突部17を通過し終わった時点では、係止部40の一部が第2突部17と対応しており、これにより、係止凹部38は第2突部17と嵌合することもなく、ガイド部41が第1突部16と第2突部17との間に落ち込むこともない。この後、リテーナ30の組付が進むのに伴い、係止部40が第2突部17の下面に摺接する。
【0029】
そして、リテーナ30が仮係止位置に到達すると、係止部40が第2突部17を通過し終わるので、保持壁34が弾性復帰し、図2に示すように、係止部40が第1突部16と第2突部17との間に嵌合するとともに、第1突部16が係止凹部38に嵌合する。この状態では、リテーナ30は、後側係止面40Rが離脱規制面17Fに係止(面当たり状に当接)することにより、ハウジング10から離脱する方向(本係止位置に移動する方向とは反対方向)へ移動することを規制されるとともに、前側係止面40Fが後側テーパ面16Rに係止(当接)することにより、本係止位置側への移動を規制される。これらの係止作用により、リテーナ30は仮係止位置に保持される。尚、ガイド部41が第1突部16に当接することによっても、リテーナ30がハウジング10から離脱するのを規制する機能が発揮される。
【0030】
リテーナ30が仮係止位置に保持されている状態で、リテーナ30の側面壁32を押して前側係止面40Fと後側テーパ面16Rとの係止力を上回る押圧力をリテーナ30に付与すると、保持壁34が弾性撓みしながら前側係止面40Fが後側テーパ面16R上を摺接し、係止部40が第1突部16に乗り上がり、リテーナ30が本係止位置側への移動を開始する。そして、リテーナ30が本係止位置に到達すると、係止部40が第1突部16を通過し終わるので、保持壁34が弾性復帰し、図4に示すように、係止部40の後側係止面40Rが第1突部16の前側テーパ面16Fに係止(当接)し、リテーナ30は仮係止位置側への移動を規制される。また、側面壁32がハウジング10の外側面に当接することにより、リテーナ30は前止まりされる。以上により、リテーナ30は本係止位置に保持される。
【0031】
リテーナ30が本係止位置にある状態では、逃がし凹部39うち第2突部17の治具当て面17Rと逃がし凹部39の治具受け面43との間の領域が、リテーナ30の下方へ開放された操作空間44として確保される。この操作空間44に差し込んだ細長い治具(図示せず)を、治具当て面17Rと治具受け面43に当接させてこじるようにすると、リテーナ30に対して仮係止位置側への押圧力を付与することができる。
【0032】
この治具の操作により、後側係止面40Rと前側テーパ面16Fとの係止力を上回る押圧力をリテーナ30に付与すると、保持壁34が弾性撓みしながら、後側係止面40Rが前側テーパ面16F上を摺接し、係止部40が第1突部16に乗り上がり、リテーナ30が仮係止位置側への移動を開始する。そして、リテーナ30が仮係止位置に到達すると、係止部40が第1突部16を通過し終わるので、保持壁34が弾性復帰し、係止部40が第1突部16と第2突部17との間に嵌合するとともに、第1突部16に係止凹部38が嵌合する。そして、後側係止面40Rと離脱規制面17Fとの係止、及び前側係止面40Fと後側テーパ面16Rとの係止により、リテーナ30は仮係止位置に保持される。
【0033】
本実施例においては、仮係止位置にあるリテーナ30は、前側係止面40Fと後側テーパ面16Rとの係止作用により本係止位置側への移動を規制されるとともに、後側係止面40Rが離脱規制面17Fに係止することによりハウジング10から離脱する方向への移動を規制されるのであるが、離脱規制面17Fと後側係止面40Rは、いずれも、リテーナ30の移動方向に対して略直角な面であるから、リテーナ30がハウジング10から離脱するのを確実に防止できる。
【0034】
また、リテーナ30の組付け時に保持壁34を弾性撓みさせる際には、保持壁34の弾性撓みを助勢するガイド斜面42が、リテーナ30の組付け方向において係止部40よりも前方の位置、即ち保持壁34の基端部(弾性撓みの支点)から遠い位置に配置されている。したがって、係止部に形成したガイド斜面を第2突部17に摺接させた構造のものに比べると、保持壁34が弾性撓みし易くなっている。
【0035】
また、リテーナ30を組み付ける過程で仮係止位置まで到達させるためには、第2突部17を通過したガイド部41が、引き続いて第1突部16を通過し、さらには係止部40も第2突部17を通過しなければならない。このとき、ガイド部41と係止部40との間の係止凹部38が第2突部17に嵌合し、その結果、リテーナ30が仮係止位置に到達する前に、リテーナ30の組付け動作が規制されてしまうことが懸念される。
【0036】
しかし、本実施例では、係止凹部38の幅を第2突部17の幅よりも小さい寸法としているので、ガイド部41が第2突部17を通過した時点で、係止部40の一部が第2突部17に乗り上がった状態となる。したがって、係止凹部38が第2突部17に嵌合することがなく、リテーナ30は支障なく仮係止位置に到達することができる。
【0037】
また、第2突部17における離脱規制面17Fとは反対側の治具当て面17Rとリテーナ30の治具受け面43との間には、リテーナ30が本係止位置にある状態で、リテーナ30を本係止位置から仮係止位置へ移動させるための治具の進入を許容する操作空間44が形成されている。そして、この操作空間44に治具を進入させることにより、リテーナ30を本係止位置から仮係止位置へ移動させることができるようになっている。ここで、第2突部17における治具の当接領域は、離脱規制面17Fとは反対側であって、リテーナ30の係止部40は当接しない治具当て面17Rであるから、仮に治具によってこの治具当て面17Rが傷付けられたとしても、離脱規制面17Fと後側係止面40Rとの係止作用に支障を来すことはない。
【0038】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施例では離脱規制面をリテーナの移動方向と直角な面としたが、離脱規制面は、リテーナの移動方向に対して直角に近い角度の面であってもよい。この場合、離脱規制面は、ハウジングの外面(即ち、リテーナの移動方向と平行な面)に対して鋭角のオーバーハング状をなしていてもよい。
【0040】
(2)上記実施例では後側係止面をリテーナの移動方向(ハウジングに対する組付け方向)と直角な面としたが、後側係止面は、リテーナの移動方向に対して直角に近い角度の面であってもよい。この場合、後側係止面は保持壁におけるハウジングとの対向面(リテーナの移動方向と平行な面)に対して鋭角のオーバーハング状をなしていてもよい。
【0041】
(3)上記実施例では離脱規制面と後側係止面とが互いに平行をなして面当たりするようにしたが、離脱規制面と後側係止面は僅かに異なる角度であってもよい。
【0042】
(4)上記実施例ではリテーナの前側係止面を、リテーナの移動方向に対して略直角な面としたが、前側係止面は、リテーナの移動方向に対して傾斜した面であってもよい。この場合、前側係止面と後側のテーパ面とを平行な面としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ハウジング
16…第1突部
16F…前側テーパ面
16R…後側テーパ面
17…第2突部
17F…離脱規制面
20…端子金具
30…リテーナ
34…保持壁
38…係止凹部
40…係止部
40F…前側係止面
40R…後側係止面
41…ガイド部
42…ガイド斜面
43…操作空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方から端子金具が挿入されるハウジングと、
前記ハウジングに対し、前記端子金具の挿入方向と交差する方向に組み付けられたリテーナとを備えており、
前記リテーナは、前記ハウジングに対する端子金具の挿入・抜取りを許容する仮係止位置と、前記仮係止位置よりも組付け方向前方の位置であって前記端子金具に係止して前記端子金具を抜止めする本係止位置との間で移動可能となっているコネクタにおいて、
前記ハウジングには、
第1突部と、
前記リテーナの組付け方向において前記第1突部よりも後方の位置に配され前記リテーナの組付け方向前側の面が、前記リテーナの移動方向と略直角な離脱規制面となっている第2突部とが形成され、
前記リテーナには、前記ハウジングに対する組付け方向と同方向へ片持ち状に延出した形態であって弾性撓み可能な保持壁が形成され、
前記保持壁における前記ハウジングとの対向面には、前記リテーナが仮係止位置にある状態で前記第1突部と前記第2突部との間に嵌合される係止部が形成され、
前記係止部には、
前記ハウジングに対する組付け方向前方を向いた前側係止面と、
前記ハウジングに対する移動方向と略直角な面であって前記ハウジングに対する組付け方向後方を向いた後側係止面とが形成され、
また、前記保持壁には、前記係止部よりも前記リテーナの移動方向前方に位置し、前記リテーナを前記ハウジングに組み付ける過程で前記第1突部及び前記第2突部を乗り越え可能なガイド部が形成され、
前記ガイド部と前記係止部との間には、前記リテーナが仮係止位置にある状態で前記第1突部を嵌合させる係止凹部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記第1突部における前記リテーナの組み付け方向の前側の面及び後側の面には一対のテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項1】
後方から端子金具が挿入されるハウジングと、
前記ハウジングに対し、前記端子金具の挿入方向と交差する方向に組み付けられたリテーナとを備えており、
前記リテーナは、前記ハウジングに対する端子金具の挿入・抜取りを許容する仮係止位置と、前記仮係止位置よりも組付け方向前方の位置であって前記端子金具に係止して前記端子金具を抜止めする本係止位置との間で移動可能となっているコネクタにおいて、
前記ハウジングには、
第1突部と、
前記リテーナの組付け方向において前記第1突部よりも後方の位置に配され前記リテーナの組付け方向前側の面が、前記リテーナの移動方向と略直角な離脱規制面となっている第2突部とが形成され、
前記リテーナには、前記ハウジングに対する組付け方向と同方向へ片持ち状に延出した形態であって弾性撓み可能な保持壁が形成され、
前記保持壁における前記ハウジングとの対向面には、前記リテーナが仮係止位置にある状態で前記第1突部と前記第2突部との間に嵌合される係止部が形成され、
前記係止部には、
前記ハウジングに対する組付け方向前方を向いた前側係止面と、
前記ハウジングに対する移動方向と略直角な面であって前記ハウジングに対する組付け方向後方を向いた後側係止面とが形成され、
また、前記保持壁には、前記係止部よりも前記リテーナの移動方向前方に位置し、前記リテーナを前記ハウジングに組み付ける過程で前記第1突部及び前記第2突部を乗り越え可能なガイド部が形成され、
前記ガイド部と前記係止部との間には、前記リテーナが仮係止位置にある状態で前記第1突部を嵌合させる係止凹部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記第1突部における前記リテーナの組み付け方向の前側の面及び後側の面には一対のテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−16519(P2013−16519A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233520(P2012−233520)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2008−261836(P2008−261836)の分割
【原出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2008−261836(P2008−261836)の分割
【原出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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