説明

コヒーレント・ポピュレーション・トラッピングにより原子時計信号を変調する方法および対応する原子時計

本発明は、原子時計信号を変調する方法、および、対応する原子時計に関する。レーザビーム(L1,2)は、振幅がパルス変調されて相互作用媒体を照射(A)する。現在パルス(Sr)、および、該現在パルスに先行するパルス(Sr-1〜Sr-p)の検出(B)が実施される。上記各パルスは一次結合により重ね合わせ(C)されることで、スペクトル幅が最小化されて補償された原子時計信号(SHC)が生成される。本発明は、相互作用媒体が熱原子もしくはレーザ冷却された原子から成るというパルス化照会による原子時計に対して適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント・ポピュレーション・トラッピングにより原子時計信号を変調する方法および対応する原子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
CPT(“コヒーレント・ポピュレーション・トラッピング[coherent population trapping]”)時計として知られたコヒーレント・ポピュレーション・トラッピングによる原子時計は、先行技術から公知である。
【0003】
概略的に且つ図1aに示されたように、原子時計は、励起周波数にて局部発振器LOおよび合成器Sにより生成される無線電気信号であってマイクロ波信号によりルビジウムおよびセシウムに対して夫々6.8GHzおよび9.2GHzに成形された無線電気信号により励起されるセシウムまたはルビジウム原子により概略的に形成される相互作用媒体(interactive medium)を使用する。相互作用媒体の原子は、図1bに示された2つのエネルギ準位eおよびf間で励起される。この励起モードは、相互作用が連続的であればラビ照会モード(Rabi interrogation mode)と称され、且つ、照会が不感時間により離間された2つの短い相互作用に基づくのであればラムゼイ照会モード(Ramsey interrogation mode)と称される。
【0004】
上記相互作用から導出される応答信号は、励起信号の共鳴に対する調和分に従う振幅を有する。上記応答信号は、光学的吸収、磁気的選択、光学的蛍光または磁気的検出により検出され得る。
【0005】
上記応答信号に基づいて局部発振器の自動制御を行うシステムは、この発振器の出力にて、共鳴周波数e→fのそれに匹敵する精度および周波数安定性の品質を有する周期的信号Suを提供する。
【0006】
上述の自動制御の原則に戻ると、CPT時計は、2つのレーザ波により照射される相互作用媒体も使用し、連続的な照会モードを実現する。
【0007】
先の実施例においては、ナトリウムから成る相互作用媒体が、30cmの距離だけ離間された2個の別個の相互作用領域へと空間的に分離される。
【0008】
レーザビームは1,772MHzにおいてラマン遷移による共鳴の生成を許容し、ラムゼイ・フリンジのパターンの中央フリンジは上記相互作用領域において生成された相互作用により650Hzの幅とされる。
【0009】
この形式の原子時計のさらに詳細な説明に対しては、マサチューセッツ州、03 139、ケンブリッジ、マサチューセッツ工科大学、電子機器研究所のティー・イー・トーマス、ピー・アール・ヘマーおよびエス・エゼキエルにより公表されて“ナトリウム原子線においてシミュレートされた共鳴ラマン遷移を用いるラムゼイ・フリンジの観察(Observation of Ramsey Fringes using a Simulated, Resonance Raman Transition in a Sodium Atomic Beam)”と称された論文、および、1982年3月29日におけるマサチューセッツ州、01 731、ハンスコム空軍基地、ローム航空開発センターのシー・シー・レイビー・ジュニア、アール・エイチ・ピカードおよびシー・アール・ウィリスの“物理概観知識(PHYSICAL REVIEW LETTERS)”、第48巻、第13号が好適に参照され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般的に、CPT型原子時計は、2つの位相コヒーレント・レーザ波を用いて連続モードで照会を実施する。各レーザ波は、原子の光学遷移2→eおよび2→fと準共鳴すると共に、2つの波の周波数間の差は原子の基準周波数f→eに近い。もしf→eが共鳴に対応するなら、相互作用媒体の原子は、状態fおよびeのコヒーレントな重ね合わせであって暗状態に対応するコヒーレントな重ね合わせにトラップされる。各レーザ波の吸収の振幅における減少、および、蛍光信号の振幅における減少が観察される。原子状態のコヒーレントな重ね合わせには、マイクロ波領域における遷移e→fの周波数にて発振する電磁波を生成する磁化も伴う。
【0011】
共鳴の最大振幅にて、吸収または蛍光放出は最小限であり且つ電磁波動場が放出される。原子時計信号は、各レーザ波の周波数の差の値の関数として、吸収、または、蛍光もしくはマイクロ波の放出により検出された信号の振幅の変化に対応する。
【0012】
現在において公知である形式の全てのCPT原子時計において、相互作用媒体の照会は連続的であり、各レーザ波は連続的に相互作用媒体の原子と相互作用する。
【0013】
しかし上述の形式の原子時計においてレーザ波が相互作用媒体を過剰に強く照射すると、該相互作用媒体の原子の光学的飽和のために、結果的な共鳴線は拡開される。
【0014】
この欠点は、原子時計信号の周波数安定性を阻害する。
この理由のために、現在のCPT原子時計は、使用されるレーザビームにより相互作用媒体を照射する強度を単に減少することにより上述の技術的問題を解決せんとしている。
【0015】
しかしこの種の手法は上述の技術的問題に対する解決策を提供しない、と言うのも、この手法によると、相互作用から導出される低振幅の原子時計信号は検出がさらに困難とされるからである。
【0016】
上述の低振幅の原子時計信号は、阻害された信号/ノイズ(S/N)比の条件下で検出され、これは再び、原子時計の周波数安定性を阻害する。
【0017】
本発明の目的は、原子時計、特にCPT時計などの相互作用媒体の光学的飽和の技術的問題を克服すると同時に、阻害されないS/N比条件を維持するに在る。
【0018】
本発明の目的はまた、現在のCPT原子時計における相互作用媒体の照会により生成される応答信号の特殊処理により、ラムゼイモードにおける干渉フリンジのコントラストの増大と、生成された原子時計信号において特に相互作用媒体を照会するレーザの周波数および振幅などの動作パラメータの低減不能な変動により引き起こされる振幅の低速の変化もしくはドリフトの減少とを実現するに在る。
【0019】
最後に本発明の目的は、相互作用セルの体積が数mm3を超えないという時計の工業的生産に対する観点から、CPTクロック信号を生成する方法と、この形式の時計が小型化されるのを許容する対応CPT時計とを実現することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るコヒーレント・ポピュレーション・トラッピングにより原子時計信号を生成する方法は、相互作用媒体の原子の光学遷移に対して各々が実質的に共鳴する第1および第2の位相コヒーレントなレーザ波を使用する。原子のコヒーレント・ポピュレーション・トラッピングに対応する原子状態のコヒーレントな重ね合わせは、共鳴極値振幅を有する応答信号であって、上記第1および第2の位相コヒーレントなレーザ波の周波数差の値の関数として検出された信号の振幅の変化に対応する原子時計信号を表すという応答信号を提供する。
【0021】
上記方法は、該方法が少なくとも、上記第1および第2レーザ波の強度を、高レベルおよび低レベルの強度間で決定される形状係数により、順次的パルスにより同期して変調する段階であって、現在パルスの間において生成される上記応答信号は、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間に生成された原子状態と、上記各パルスを分離する低レベル強度の存続時間に対するこの原子状態の進展とに依存するという段階を備えることを特徴とする。
【0022】
上記現在パルスの間と該現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間とにおいて生成された応答信号は検出されると共に一次結合により重ね合わされることで、スペクトル幅が最小化されて結果的に補償された原子時計信号が生成される。
【0023】
本発明に係るパルス化照会による原子時計は、相互作用媒体の原子の光学遷移に対して各々が実質的に共鳴する第1および第2の位相コヒーレントなレーザビームを生成する光学的照会モジュールと、上記相互作用媒体を備えた相互作用セルであって作動時には上記第1および第2の位相コヒーレントなレーザビームにより照射されることで、共鳴極値振幅を有する応答信号であって、上記第1および第2の位相コヒーレントなレーザビームの周波数差の関数として検出された信号の振幅の変化に対応する応答信号を生成する相互作用セルと、上記応答信号を検出するモジュールであって、上記応答信号の波長および振幅に対して適合されたモジュールと、を少なくとも備える。
【0024】
上記原子時計は、該原子時計が上記第1および第2レーザビームの強度を高レベルおよび低レベル強度の間でパルス変調するユニットをさらに備えることを特徴とする。この変調ユニットは、上記相互作用セルの上流にて上記第1および第2レーザビームの経路上に載置されることで第1および第2のパルス化レーザビームを同期して生成する。上記第1または第2レーザビームと上記相互作用媒体との間の相互作用は高レベル強度に対応する順次的な各パルスの存続時間に実質的に制限され、現在パルスの間に生成された上記応答信号は、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間に生成された原子状態と、これらのパルスを分離する低レベル強度の存続時間に対するこの原子状態の進展とに依存する。
【0025】
上記検出モジュールは、この現在パルスの間に生成された応答信号と、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間に生成された応答信号とを一次結合により加算するモジュールをさらに備える。一次結合による該加算モジュールは、スペクトル幅が最小化されて結果的に補償された原子時計信号を生成する。
【0026】
本発明に係るコヒーレント・ポピュレーション・トラッピングによる方法および原子時計は、全体的に非常に小さなサイズを有する内蔵式の時間記録または周波数基準手段の工業的実施形態において使用され、特に、宇宙用途において使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係る方法および時計のさらに良好な理解は、先行技術に関する図1aおよび図1bに加えて以下の図面を参照した記述により促進されるであろう。
【実施例】
【0028】
次に、図2a、図2bおよび図2cを参照し、コヒーレント・ポピュレーション・トラッピングにより原子時計信号を生成する本発明に係る方法を詳述する。
【0029】
一般的に、本発明に係る方法は、CPT原子時計の動作モードの原理に従い位相コヒーレントな第1レーザ波L1および第2レーザ波L2に基づき実施されることに注意されたい。
【0030】
図1bを参照すると、上述のレーザ波の各々は相互作用媒体の原子の光学遷移と実質的に共鳴し、レーザ波L1およびL2は周波数f1およびf2で放出されると称され、且つ、真空もしくは空気中におけるそれらの対応波長にて、上述の各レーザ波の周波数の差は周波数差Δf12と表される。好適にはレーザ波L1およびL2は、直交様式で円形または線形に偏光される。
【0031】
図1bに示された如き原子のコヒーレント・ポピュレーション・トラッピングに対応する原子状態のコヒーレントな重ね合わせによれば、共鳴極値振幅(resonance-extremal amplitude)を有するマイクロ波領域の応答信号であって位相コヒーレントな第1および第2レーザ波L1およびL2の周波数差Δf12の値の関数として検出された応答信号の振幅の変化に対応する原子時計信号を表すという応答信号が生成される。
【0032】
特に、相互作用媒体に対する上記第1および第2の波の相互作用のモードは物理的に、先行技術から知られる連続的な相互作用モードに対応することは理解される。
【0033】
但し、本発明に係る方法の特に重要な側面によれば、該方法は少なくともステップAにおいて、順次的パルスにより同期して、高レベル強度と低レベル強度との間で決定された形状係数により第1および第2レーザ波L1,2の強度を変調する段階を備える。
【0034】
図2aはステップAにおいて、増加する時間目盛tに対して順位r,r−1,…,r−pを有すると称される順次的パルスにより同期して変調されたレーザ波L1およびL2を示している。
【0035】
習用的に、現在パルス(current pulse)は順位rを有すると称され、該現在パルスに対して直ちに先行するパルスは順位r−1を、且つ、順次的に先行するパルスは順次的にr−pまでの先行順位を有すると称される。
【0036】
レーザ波L1およびL2は同一の光路上で重ね合わされることから、明らかに、以下の記述にて説明される条件下で変調されてコヒーレントかつ同相とされたレーザ波パルスが獲得され得ることも理解される。
【0037】
従って、第1もしくは第2レーザ波L1,2、特にそれらのパルス化形態と相互作用媒体との間の相互作用は実質的に、高レベルの強度に対応する順次的な各パルスSr,Sr-1〜Sr-pの存続時間に制限されることは理解される。
【0038】
さらに、現在パルスすなわち上述の順位rのパルスの間に生成される応答信号は、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスすなわち順位r−1〜r−pの先行パルスの間に生成された原子状態と、上述の各パルスを分離する低レベルの強度の存続時間に対するこの原子状態の進展とに依存する。
【0039】
順次的パルスによる第1および第2レーザ波L1,2の強度の変調、および当然乍ら、この様に獲得されたレーザ波パルスによる相互作用媒体の照射に続き、本発明に係る方法は特に重要な様式で、現在パルスの間に生成された応答信号すなわちSrにより表される応答信号であって同一順位の照射パルスの順位に対応する順位rを有する応答信号と、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間に生成された応答信号とを、ステップBにおいては検出し且つステップCにおいては一次結合により重ね合わせることで、そのスペクトル幅が最小化されて結果的に補償された原子時計信号を生成する。
【0040】
図2aにおいてはステップBに検出動作が示され、応答信号は、順位rの対応応答信号Srと、先行する順次的応答信号Sr-1〜Sr-pから成ると称される。
【0041】
一次結合による重ね合わせの動作は図2aのステップCに表されると共に、以下の一次結合式により示される:
【数1】

【0042】
上記式においてSHCは上述の一次結合により求められて結果的に補償された原子時計信号を表し、Ckは順次的な各応答信号パルスSkに対して適用された正および/または負の加重係数を表すことに注意されたい。
【0043】
習用的に、且つ、本発明の主題に従いCPT原子時計に関して以下において相当に詳細に記述されるように、現在パルスの順位k=rに関する加重係数Ckは1に等しく選択され得ることから、現在パルスに対して先行パルスとしてマークされた順位k=rの係数は順次的に、最終的に求められる原子時計信号を補正かつ補償するために例えば異なる負の値に等しく選択され得る。一次結合k=rによる加算の最後の順位は、実験的に決定され得るかまたはパラメータとして選択され得る。
【0044】
本発明に係る方法の実施形態は、2つのレーザ波L1およびL2に対する変調およびCPT相互作用に限られない。
【0045】
本発明に係る方法の特に好適な実施例に依れば該方法は、図2bに示されたように、相互作用媒体を励起する各レーザ波の内の一方のレーザ波であって図2bにおいてはレーザ波L2であるレーザ波を、相互作用媒体の原子の遷移e→fの周波数と実質的に等しい周波数の無線周波信号MWと置き換える段階も備え得る。
【0046】
図2bのステップAにおいて示されたように、本発明に係る方法はこの変形例において、順次的パルスにより、維持されたレーザ波L1を、または、この維持されたレーザ波L1および無線周波信号MWを変調する段階を備える。
【0047】
図2cを参照すると、レーザ波L1およびL2または無線周波信号MWをパルス変調するプロセスはパルス列により好適に実施され、変調パルスの周波数は0.2Hz〜104Hzであることに注意されたい。
【0048】
上述の図2cおよびその時間軸を参照すると、所定のパルス列に対する各パルスの高レベルの強度は存続時間hを有し且つ低レベルの強度は存続時間bを有する。
【0049】
これらの条件下で、図2cの1.)に示された変調済みレーザ波パルスの周波数範囲、および、最終的には順次的な順位r,r−1,r−pを有する応答信号の周波数範囲はhおよびbの種々の値に対して1/(h+b)という値により与えられ、且つ、値h/(h+b)により定義される形状係数は10-6〜10-1である。
【0050】
1.)に示された変調済みレーザ波パルスIは、図2cの1.)に示されたパルスの上述の時間および/または周波数の特性を厳密に有する電子的制御信号により獲得され得ることは明らかに理解される。
【0051】
順位rの現在パルスを、この現在パルスに先行するパルスから、すなわち、変調パルス列における順位r−1〜r−pの任意の先行パルスから分離する存続時間bの時的間隔の選択に関し、この存続時間bは2つのクロックレベル間に存在する超微細なコヒーレンスの寿命よりも短いことに注意されたい。
【0052】
図1bに関し、問題となる2つのクロックレベルは、結果的な原子時計信号の周波数を決定するレベルeおよびfであり、且つ、この寿命は基本的に関連する相互作用媒体に依存することに注意されたい。
【0053】
本発明に係る方法の重要な側面のひとつは特に、該方法が、セル内に収容された熱原子のポピュレーション、または、低温の特にレーザ冷却された原子のポピュレーションのいずれかから成る相互作用媒体に基づいて実施され得ることである。
【0054】
両方の場合において照会手順は好適に、少なくとも2つのパルスによるラムゼイ照会モードを備える。
【0055】
上述の相互作用媒体を実現する方法に関する限り、熱原子は蒸気もしくは噴流形態で供与されることに注意されたい。レーザ冷却された原子は、熱原子の光学遷移に対して正しく整合されたレーザ波に対して該熱原子を相互作用させることで獲得される。レーザ波により誘起される放射圧力によれば、原子の運動エネルギは急速に減少され得る。従って、10-6Kの温度に対応する約1cm/sの極めて低い遊走速度(erratic speed)であって、略々数百メートル/秒であるという熱原子の遊走速度よりも遙かに小さいという遊走速度を有する冷却済み原子のサンプルが300Kの温度にて得られる。
【0056】
先行技術から公知であるという、ひとつまたはふたつのパルス変調レーザビームの相互作用を許容するという原子レーザ冷却セルの実施例は、詳細には記述されない。この点に関しては、CNRSの名義で番号2730845にて公開されたフランス特許出願が好適に参照され得る。
【0057】
冷却手順において、原子の運動エネルギまたは該原子の運動エネルギの変化は、300Kにおける初期値から10-6Kまでの温度低下に比例し、比例係数はボルツマン定数に依存することに注意されたい。
【0058】
応答信号を、特に順次的な応答信号パルスSr〜Sr-pを検出する手順は、照会信号の周波数の関数としての光学的吸収、光学的蛍光およびマイクロ波の検出を含む一群の検出プロセスから好適に選択される。
【0059】
本記述において上記で述べられたように、照会モードは好適には少なくとも2つのパルスによるラムゼイ照会モードであるが、本発明に係る方法は選択された相互作用媒体の性質に鑑みて多数の状況において実施され得ることは理解される。従って、検出プロセスは、上述の照会信号の周波数の関数として光学的吸収、光学的蛍光およびマイクロ波の検出により検出を行うプロセスである。
【0060】
以下の表は、本発明に係る方法の実施を許容すべく使用される原子供給源、照会手順もしくはモード、および、対応クロック信号を検出する手順を示すことで該方法を実施し得る原子時計の種類を定めている。
【表1】

【0061】
上記表に関し、CPT形式の原子時計によれば図2aに係る本発明の方法が実施され得ると共に、光ポンピングセルにおけるルビジウム型の原子時計によれば図2bに係る本発明の方法が実施され得ることに注意されたい。
【0062】
次に図3および追随する図を参照し、本発明の主題に係るパルス化照会による原子時計のさらに詳細な記述が与えられる。
【0063】
概略的に、本発明の主題に係るパルス化照会による原子時計のアーキテクチャは図3に示された処に対応することに注意されたい。
【0064】
特にこの形式の時計は光学的区画SOにおいて、第1および第2の位相コヒーレントなレーザビームL1,2を生成する光学的照会モジュール1を備える。上述のように、上記レーザビームの各々は、相互作用媒体の原子の光学遷移と実質的に共鳴する。
【0065】
パルス化照会による上記原子時計はさらに、上述の相互作用媒体を備える相互作用セル3を備える。
【0066】
相互作用セル3は習用的に、レーザビームL1,2に対してトランスペアレントであるケーシングと、当然乍ら、相互作用媒体すなわち熱的および/またはレーザ冷却原子を生成する任意のデバイスとから成り得ることに注意されたい。
【0067】
照会モジュール1は2種類のレーザビームL1およびL2を生成すると共に、その周波数の差は、共鳴周波数、すなわち例えばセシウムに対しては9.2GHzおよびルビジウムに対しては6.8GHzにおけるマイクロ波周波数に等しい。
【0068】
セシウムの場合にレーザダイオードの周波数は、D2線に対して約852nmおよびD1線に対して894nmである。
【0069】
上述のレーザ線は、本記述において上述されたように、CPT相互作用に対して使用され得る。
【0070】
励起状態において相当に超微細である当該遷移の間隔により、D1線の遷移がさらに有用と思われる、と言うのも該遷移によれば、漏出により引き起こされる隣接遷移への原子の喪失と、光の変位との両方が減少され得るからである。
【0071】
また、D2線は780nmかつD1線は795nmにおけるというルビジウム原子を使用することも可能であり、対応する周波数f2およびf1は市販のレーザダイオードにより容易に利用可能である。
【0072】
相互作用媒体の原子のポピュレーションのコヒーレント・トラッピングを誘起する2種類の放射線すなわちレーザビームL1およびL2を生成するために、種々の手順が使用され得る。レーザビームL1およびL2間の周波数差は、クロック周波数、すなわち原子時計信号の周波数に等しい。レーザビームL1およびL2の位相間の位相差は、干渉現象の一切の喪失を阻止するために、可及的に少ない変動を呈さねばならない。上記レーザビームに対して必要とされる放出パワーは、約1ミリワットである。
【0073】
特定実施例において、照会用の光学機器は単一のレーザ源から作成することが可能であり、該レーザ源に対しては側波帯変調形式の数GHzの周波数変調が適用され、側波帯同士の間の距離はクロック周波数に対応することに注意されたい。従って、上述の2つの線は、変調信号の位相コヒーレンスと同じほど良好な位相コヒーレンスを以て獲得される。
【0074】
その場合に上記2つの線すなわちレーザビームL1およびL2は、それらが相互作用媒体に対して適用されるまで、それらが同一の光路を辿ると共に同一の順次的な位相変位に委ねられる様に、習用様式で物理的に重ね合わされる。
【0075】
図2bに示された変形例に係る本発明の方法の実施形態に関し、パルス変調されて維持されたレーザ波L1と同期して変調されても良くされなくても良い無線周波信号MWは習用様式にて相互作用セル3に適用されることに注意されたい。
【0076】
相互作用セル3は、パイレックス(登録商標)または石英製のチャンバから作成され得ることに注意されたい。
【0077】
さらに、ラムディッケ領域へと通過することでドップラ効果により引き起こされる線の広がりを排除するために、緩衝ガスが付加され得る。また、この様に形成された原子時計の精度および長期安定性に影響する周波数変位における一切の変化を阻止するために、磁気的および熱的な環境が厳密に監視される。
【0078】
パルス化照会による原子時計はまた検出区画SDにおいて、セル3の相互作用媒体がレーザビームL1およびL2により照射された後で該相互作用媒体により供与されると定義される応答信号を検出するモジュール4も備える。検出モジュール4は明らかに、電子形態での応答信号を供与するために該応答信号の波長および振幅に対して適合している。
【0079】
より詳細には、応答信号を検出する上記モジュールは、上記の表に記述された手順を実施するモジュールから成り得る。
【0080】
本発明に係るパルス化照会による原子時計の特に重要な側面に依れば、上記時計は、第1および第2のレーザビームL1およびL2の強度を高レベルおよび低レベルの強度の間でパルス変調するモジュール2を備える。
【0081】
明らかに、図3に示されたように、変調モジュール2は光学的区画SOにおいて、図2aに従いセル3に収容された相互作用媒体の照射を許容すべく第1および第2のパルス化レーザビームを同期して生成するために、または、図2bに従い変調して維持されたレーザ波L1と変調されもしくは変調されない無線周波信号MWとを同期して生成するために、相互作用セル3の上流において上記第1および第2レーザビームの経路上に位置される。
【0082】
パルス化された第1および第2レーザビームまたは無線周波信号による上記相互作用媒体の照射によれば、上述のレーザビームと相互作用媒体との間の相互作用は実質的に、高レベルの強度に対応する各順次的パルスの存続時間に限られる。
【0083】
結果として、たとえば順位rの現在パルスの間に生成された応答信号は、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルス、すなわち本記述において上述された順位r−1〜r−pのパルスの間に生成された原子状態と、当然乍ら、これらのパルスを分離する低レベルの強度エネルギの存続時間に対するこの原子状態の進展とに依存する。
【0084】
これに加え、図3に示されたように、応答信号を検出するモジュール4は処理モジュール5により追随され、該処理モジュール5は、電子形態の応答信号を受信し、且つ、現在パルスの間、および、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間すなわち順次的な先行パルスの間において生成された応答信号の一次結合による加算のプロセスを実施する。従って、一次結合により処理を行うモジュール5は、結果的に補償された原子時計信号であってそのスペクトル幅が最小化された原子時計信号を生成し、且つ、局部発振器6の周波数の制御を許容する補正信号Scを構築する。
【0085】
実際、図3において処理モジュール5は、アナログ区画SAに設置されたモジュール6であって、たとえば、一方では外部ユーザに対する基準周波数として使用されるべく周波数制御された周期的信号Suと、他方では光学的照会モジュール1を制御する信号SCOとを供与する局部発振器LOおよび合成器Sから成る。
【0086】
たとえばこの制御信号SCOは、たとえば単一レーザ源から2種類のレーザビームL1およびL2を獲得するために本記述にて上述された側波帯変調手順の制御を許容する基準周波数から成り得る。上述の制御信号SCOによれば、単一レーザ源および/または選択値におけるレーザビームL1およびL2の波長および/または周波数の制御、ならびに、無線周波信号MWの生成も許容され得ることに注意されたい。
【0087】
この制御手順の実施例は詳細には記述されない、と言うのも、それは先行技術から公知の実施例に対応するからである。
【0088】
明らかに、図3にも示されたように、本発明に係るパルス化照会による原子時計は、パルス変調モジュール2、応答信号を検出するモジュール4、および当然乍ら、処理モジュール5、および、局部発振器LOおよび/または合成器Sの役割を果たすモジュール6などのモジュールの全てに対してバスリンクにより接続されたマイクロコンピュータから成り得るという制御ユニット7を備える。
【0089】
特に、制御モジュール7によれば、上述の各モジュールの全ての同期と、たとえば変調モジュール2を制御すべく該制御ユニット7により作成された電子的制御信号から生成された変調パルス列の制御とが許容されることは理解される。
【0090】
第1および第2のレーザビームL1,2の強度をパルス変調するモジュール2は、音響光学的変調器、電気光学的変調器、または最後に、光信号の強度を変調する他の任意の構成要素であってその応答時間は斯かる変調を行うために十分に短いという構成要素から成り得ることに注意されたい。必要であれば、無線周波信号MWを変調すべく無線周波変調器が配備される。
【0091】
より詳細には、低レベルの強度は、上述の変調モジュール2により完全に吸収された上記レーザビームの各々または無線周波信号の実質的にゼロの強度に対応することに注意されたい。
【0092】
次に図4aおよび図4bを参照して、応答信号を一次結合により加算する処理モジュール5のさらに詳細な記述が提供される。
【0093】
概略的に、上述の処理モジュール5は検出モジュール4により供与された電子信号形態で応答信号を受信することは理解される。
【0094】
受信された順次的なパルスSrを処理するために処理モジュール5は図4aに示されたように、好適には、現在パルスおよびこの現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの相互作用の間において生成された応答信号をサンプリングするモジュール50を備え、該サンプリングモジュール50は、レーザビームL1およびL2を変調するモジュール2の制御と同期してトリガされる。
【0095】
サンプリングモジュール50は好適には、上述のパルスの各々の相互作用の間に生成された応答信号のサンプリング値を記憶するモジュール51により追随される。
【0096】
最後に記憶モジュール51は、記憶されたサンプル値の一次結合の計算を許容するモジュール52により追随され得ることから、本記述において先に言及された補償済みの原子時計信号SHCが生成され得る。この信号に基づき、たとえば積分器により形成されるモジュール53は、たとえば局部発振器LOおよび合成器Sから成るモジュール6に対して補正信号Scを供与する。
【0097】
合成器Sによれば、遷移e→fの共鳴周波数に近い周波数のマイクロ波信号が生成され得る。
【0098】
最後に制御ユニット7は好適には、変調モジュール2、応答信号を検出するモジュール4、図4aに関して先に記述された処理モジュール5、および当然乍ら、上述の局部発振器および合成器から成るモジュール6を同期させるべく上記アセンブリを制御するプログラムを備えるワークステーションもしくはマイクロコンピュータから成り得る。
【0099】
特に、非限定的実施例において制御ユニット7は好適に、記憶モジュール51に記憶されたサンプリング値を制御ソフトウェアパッケージを用いて所定時点にて読み取るべくプログラムされ得ることに注意されたい。
【0100】
特にこれらの条件下で、制御ユニット7はその場合、パルスSr〜Sr-pの各々に対し、上述の順次的パルスの各々に対するサンプリング値の各々の最大値および/または最小値を決定するために記憶されたサンプリング値をソートするプログラムを備え得る。
【0101】
従って、本発明に係る原子時計の非限定的実施例においては図4bの2.)に示されたように、処理手順は好適に、順位rの現在パルスSrに対し、このパルスに対するサンプリング値であってMにより表される最大値を有するサンプリング値を決定する段階と、先行する順位r−1〜r−pの順次的パルスに対し、上記パルスの各々においてその順次的パルスにおける対応サンプリング値を決定する段階とを備え得ることに注意されたい。
【0102】
そして、この現在パルスの直前の先行パルスであって順位r−1である先行パルスに対応する最小値はmr-1と表され、次に、先行する順位r−2〜r−pの先行パルスに対しては順次的な値mr-2〜mr-pと表される。
【0103】
本発明に係るパルス化照会による原子時計の好適な非限定的実施例に依れば、その場合にサンプリング値の一次結合は、順位rの現在パルスに対するサンプリング値の最大値を加算する段階と、図4bに示されたように、順位r−1〜r−pの先行パルスの順次的の最小値またはそれらの平均値を減算する段階とを備え得ることに注意されたい。
【0104】
その場合に上記ソートプログラムは、上記パルスの各々の原点であってor,or-1,r-pにより順次的に表された原点に対するソートプロセスを実施し得ることは理解される。
【0105】
従って、図3、図4aおよび図4bに示された処理モジュール5により実施される処理手順の実施形態によれば、特に、順位rの現在パルスの最大値Mrは検出された応答信号に対して最大振幅値を提供するが、順次的なサンプリング値の局所的最小値を表す該値の減算によれば、補償された原子時計信号であって、当該システムのドリフトを表す連続的なもしくは低速に変化する成分の排除によりスペクトル幅が最小化され且つコントラストは相当に改善され得るという補償された原子時計信号を獲得すべくセル3に収容された相互作用媒体により導入されるドリフトおよび摂動を表すサンプリング値の控除が許容されることが理解される。
【0106】
明らかに、且つ、処理モジュール5のデジタル部分に対する処理の速度とリアルタイムでの応答の獲得とを増進すべく、モジュール51,52および53はこの目的に対してプログラムされた専用の信号プロセッサにより置き換えられ得る。
【0107】
本発明の主題に係るパルス化照会による方法および原子時計の実施形態により得られる成果に関する理論的および実験的な証拠は、以下において図4cに関して提供される。
【0108】
相互作用媒体は緩衝ガスが省略されているという熱原子によるCPT型原子時計を考慮すると、クロック信号に対して獲得された発振線の幅、すなわち発振ピークにおける最大振幅に対して3dBにおける幅は、約数GHzの中心周波数に対して数KHzである。斯かる線幅は大きすぎて、この種の原子時計の使用に対して基準クロックとしては互換的でない。このことは、緩衝ガスが存在しないと、相互作用媒体の原子は過剰に迅速な迷走変位に委ねられ、ドップラ効果と、走行時間の制限と、最後に、この様に形成された無線共鳴器の品質とにより引き起こされる共鳴の現象が広げられるという事実により説明され得る。
【0109】
他方、この同一種類の時計において緩衝ガスが用いられるなら、ラムディッケ領域が実現されると共に、原子時計信号の線幅は主として、基底状態におけるコヒーレンスの緩和と、レーザ飽和により引き起こされる拡開とにより制限される。今日まで、約100Hzの線幅が得られている。上述のクロック信号の光学的なもしくはマイクロ波の検出によれば、1秒間の積分の後で約5〜15×10-12のオーダーのユーザ信号Suの周波数の短期安定性が測定されている。長期安定性は基本的に、緩衝ガスとの衝突により誘起される周波数変動により制限される。ラマン非調和分(Raman non-correspondence)に対する対応周波数変位は、それ自体が相互作用媒体の、すなわち、セルの温度の関数であるという緩衝ガスの圧力と直接的に関連している。
【0110】
この形式の時計における共鳴信号およびクロック信号の線幅ΔfCPTは、式(1)により与えられる値を有する。
ΔfCPT=ΔfTT+Δfcollision+ΔfDoppler+Δfsaturation (1)
【0111】
この式において、
ΔfTTは、レーザビームを通る相互作用媒体の原子の制限された走行時間に依る広がりを記述している。
【0112】
連続的な照会に対し、ΔfTTは1/Tの様に変化し、その場合にTは原子とレーザ波との間の相互作用の時間を表す。
【0113】
本発明に係るパルス化照会による方法および時計の実施例によるパルス化照会に対し、ΔfTTは1/2bの様に変化し、その場合にbはパルス列における2つの連続的なパルス間の不感時間を表し、
Δfcollisionは、原子間の衝突によるコヒーレンスの緩衝から帰着する線の広がりであり、
ΔfDopplerは、一次ドップラ効果により引き起こされる広がりであり、
Δfsaturationは、相互作用媒体を照射するレーザビームの実際の強度に伴う飽和による広がりである。
【0114】
その相互作用媒体がスチーム形態の熱原子から成るというCPT原子時計に対し、
ΔfDopplerおよびΔfTTは、緩衝ガスの存在を無視することができ、
Δfsaturationはレーザ出力を調節することにより減少され得るが、このことは、連続的な照会による先行技術のデバイスに関する記述の導入部分において先に言及されたように、S/N比に対して不都合であり、
Δfcollisionは、獲得される原子時計信号を形成する線の広がりに対する主な原因である。
【0115】
図4cはパルス化照会による原子時計を用いる本発明に係る方法の実施例を示しており、その場合に相互作用媒体は、窒素により形成される緩衝ガスの存在下における熱的なセシウム原子から成る。同図は、2つのレーザ波の周波数差Δf12の非調和分の関数として、補償されたクロック信号SHCの振幅を示している。
【0116】
図4cのx軸は、ラマン非調和分の原点における値0に対してkHz単位で区分されている。距離δは、緩衝ガスの存在により導入された非調和分を表す。この周波数バイアスは、たとえば窒素およびアルゴンなどの2種類の緩衝ガスを用いて減少されることで、逆の符号を有する衝突変位が誘起され得る。
【0117】
上記の図を参照すると、y軸上でミリボルト単位で測定された最大振幅に対して発振の幅は、上記処理、および当然乍ら、使用されるレーザビームL1およびL2のパルス変調のために、25Hzもの低さに留まることをことに注意されたい。他方、および、本発明の主題に係るパルス化照会による方法および原子時計の特に重要な側面に依れば、もし相互作用媒体がレーザ冷却された原子から成るならば、本記述において先に言及された条件下、すなわち熱原子の遊走速度よりも約1,000倍遅い遊走速度にて、原子の速度は減少される。
【0118】
従って、これらの条件下にては緩衝ガスを使用せずに照射レーザビームと相互作用媒体との間の長時間の相互作用を実現することが可能であることから、図4cに関して先に言及された共鳴変位δと、衝突により引き起こされる周波数の広がりとが打ち消され得る。
【0119】
従って、パルス化照会による時計、すなわち低温原子によるCPT原子時計に対し、上述の各パラメータは以下のように取り扱われる。
【0120】
ΔfDopplerおよびΔfTTは、低温でレーザ冷却された原子の低速のために無視することができ、
Δfcollisionもまた、低温原子の密度が十分に低ければ無視され得る。
【0121】
この点に関してルビジウム原子はセシウム原子よりも有用であると思われる、と言うのも、衝突変位は少なくとも50倍だけ低いからである。
従って、その相互作用媒体がレーザ冷却された原子から成るという原子時計の線幅を制限するのは飽和Δfsaturationによる広がりであることに注意されたい。
【0122】
さらに、もし照会手順が本発明に係る方法すなわちパルス化照会により実施されるなら、飽和効果の寄与を相当に減少すると同時に、十分な強度すなわち満足できるS/N比の信号を連続的に検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1a】先行技術に関する図である。
【図1b】先行技術に関する図である。
【図2a】本発明に係る方法を実施する基本段階の単に例示的なフローチャートである。
【図2b】単一のレーザ波と、相互作用媒体を励起する無線周波信号とに対して適用された本発明の方法の変形例の基本段階の単に例示的なフローチャートである。
【図2c】においては図2aまたは図2bに示された本発明に係る方法を実施すべく使用され得るパルス駆動されたレーザビームパルス信号のタイミング図(1.))、および、相互作用セルの出力の検出後に獲得される応答信号のタイミング図(2.))を単に例示的に示す図である。
【図3】図2a、図2bおよび図2cに関して記述される方法の実現を許容する本発明の主題に従うCPTまたは他の形式の原子時計の単に例示的な機能的概略図である。
【図4a】好適な非限定的実施例において検出後に応答信号を処理するモジュールであってさらに好適には特定のデジタル処理を実施し得るというモジュールの例示的な詳細図である。
【図4b】順次的な応答信号パルスのサンプリング値に関する動作、より詳細には現在パルスと該現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスとに関する動作であって、上述のサンプリング値に対して行われることで、これらの動作の実施に従い獲得されて結果的に補償された原子時計信号のスペクトル純度およびコントラストの相当な改善を許容するという動作を実施するための例示的なタイミング図である。
【図4c】現在パルスの間と、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間とにおいて生成された応答信号の一次結合による重ね合わせの適用後における、ラマン非調和分すなわち2つのレーザ波間の周波数差の非調和分の振幅/周波数の図であって、図3に示された専用処理モジュールの出力にて得られるラムゼイフリンジ・パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互作用媒体の原子の光学遷移に対して各々が実質的に共鳴する第1および第2の位相コヒーレントなレーザ波からコヒーレント・ポピュレーション・トラッピングにより原子時計信号を生成する方法であって、
前記原子状態のコヒーレントな重ね合わせは、原子のコヒーレント・ポピュレーション・トラッピングに対応し、該原子のコヒーレント・ポピュレーション・トラッピングは、共鳴極値振幅を有する応答信号を生成し、且つ、前記第1および第2の位相コヒーレントなレーザ波の周波数差の値の関数として検出された信号の振幅の変化に対応する原子時計信号を表しており、前記方法は、少なくとも、
前記第1および第2レーザ波の強度を、高レベルおよび低レベルの強度間で決定される形状係数により順次的パルスに同期して変調する段階であって、前記第1または第2レーザ波と前記相互作用媒体との間の相互作用は実質的に高レベル強度に対応する順次的な各パルスの存続時間に制限され、現在パルスの間において生成される前記応答信号は当該現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間に生成された原子状態と、前記各パルスを分離する低レベル強度の存続時間に対するこの原子状態の進展とに依存する段階と、
スペクトル幅が最小化されて結果的に補償された原子時計信号を生成するために、前記現在パルスの間と該現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間とにおいて生成された前記応答信号を検出すると共に一次結合により重ね合わせる段階と、を備えることを特徴とする原子時計信号を生成する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記パルス変調はパルス列により実施され、該変調パルスの周波数は0.2Hz〜104Hzであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記変調パルスは10-6〜10-1の形状係数を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、前記現在パルスに先行するパルスから該現在パルスを分離する低レベル強度の存続時間は、2つのクロックレベル間に存在する超微細なコヒーレンスの寿命よりも短いことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、前記相互作用媒体は、複数個の熱原子もしくはレーザ冷却された原子により形成されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法において、前記時計信号を検出する前記段階は、前記第1および第2の位相コヒーレントなレーザ波の周波数差の関数として、光学的吸収、光学的蛍光、マイクロ波の検出から成る検出プロセス群の内からひとつの検出プロセスとして選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において、該方法は、
前記相互作用媒体を励起する前記レーザ波の内の一方を、前記相互作用媒体の原子の遷移周波数に実質的に等しい周波数の無線周波信号と置き換える段階を備え、
該方法は、前記維持されたレーザ波を、または、前記維持されたレーザ波および前記無線周波信号を、順次的パルスにより変調する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
相互作用媒体の原子の光学遷移に対して各々が実質的に共鳴する第1および第2の位相コヒーレントなレーザビームの生成を許容する光学的照会手段と、
前記相互作用媒体を備えた相互作用セルであって、作動時には前記第1および第2の位相コヒーレントなレーザビームにより照射されることで共鳴極値振幅を有すると共に、前記第1および第2の位相コヒーレントなレーザビームの周波数差の関数として検出された信号の振幅の変化に対応する応答信号を生成する前記相互作用セルと、
前記応答信号を検出する手段であって、前記応答信号の波長および振幅に対して適合された手段と、を少なくとも備えるパルス化照会による原子時計であって、
該原子時計は、さらに、前記第1および第2レーザビームの強度を高レベルおよび低レベル強度の間でパルス変調する変調手段を備え、
該変調手段は、前記相互作用セルの上流にて前記第1および第2レーザビームの経路上に載置されることで第1および第2のパルス化レーザビームを同期して生成し、前記第1または第2レーザビームと前記相互作用媒体との間の相互作用は高レベル強度に対応する順次的な各パルスの存続時間に実質的に制限され、現在パルスの間に生成された前記応答信号は、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間に生成された原子状態と、前記各パルスを分離する低レベル強度エネルギの存続時間に対するこの原子状態の進展とに依存し、且つ、
前記検出手段は、さらに、この現在パルスの間に生成された応答信号と、この現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスの間に生成された応答信号とを一次結合により加算する手段を備え、一次結合による該加算手段はスペクトル幅が最小化されて結果的に補償された原子時計信号の生成を許容することを特徴とする原子時計。
【請求項9】
請求項8に記載の原子時計において、前記第1および第2レーザビームの強度を高レベル強度と低レベルとの間でパルス変調する前記手段は、少なくとも1個の音響光学的変調器を備えることを特徴とする原子時計。
【請求項10】
請求項8または9に記載の原子時計において、前記検出手段は、さらに、
前記現在パルスと該現在パルスに先行する少なくとも1個のパルスとの相互作用の間に生成された応答信号をサンプリングする手段と、
前記パルスの各々の相互作用の間に生成された応答信号のサンプリング値を記憶する手段と、を備えることを特徴とする原子時計。
【請求項11】
請求項10に記載の原子時計において、前記検出手段は、さらに、
所定時点においてサンプリングされて前記記憶手段に記憶された値を読み取る手段と、
記憶された前記サンプリング値の一次結合を計算して前記補償された原子時計信号の生成を許容する手段と、を備えることを特徴とする原子時計。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の原子時計において、
前記レーザビームの1つは無線周波信号により置き換えられ、
維持されたレーザビーム、または、維持されたレーザビームおよび無線周波信号は、順次的パルス列による変調に従うことを特徴とする原子時計。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【公表番号】特表2007−530965(P2007−530965A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505591(P2007−505591)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000754
【国際公開番号】WO2005/101141
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】