説明

コブラ毒因子様機能を有するヒト補体C3誘導体

CVF機能を有する、実質的に低下した免疫原性を有するヒトC3タンパク質を生じる、ヒトC3タンパク質の部分の、コブラ毒因子タンパク質(CVF)の対応する部分との置換を含む、修飾ヒト補体C3タンパク質(C3)を開示する。好都合には、C3タンパク質は、以下のCVF機能:C3コンバターゼの安定性の向上および因子Hおよび/またはIの作用に対する耐性の向上の少なくとも1つを含有するように操作できる。C3のアルファ鎖のC末端部分に置換を含有する置換を含有する多数のハイブリッドC3タンパク質を紹介して、上の機能について試験する。再潅流傷害、自己免疫疾患、および補体活性化向上の他の疾患などの疾患の処置方法はもちろんのこと、遺伝子治療および他の治療の有効性を向上させる方法も紹介する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本国際出願は、それぞれその全体が参照により本明細書に援用される、2004年4月30日に出願された米国仮特許出願第60/567,069号、2005年2月14日に出願された60/653,247、そして2005年3月30日に出願された60/667,352に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、ヒトC3タンパク質の部分のコブラ毒因子(CVF)タンパク質の対応部分による置換を有するヒト補体C3のキメラ誘導体に関する。好ましくは、C3のアルファ鎖の部分がCVFの対応する部分によって置換される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
補体の第3の成分であるC3は、補体活性化の古典的経路および代替経路の両方において中枢の役割を果たし、生理的C3活性化生成物の多くは、免疫反応および宿主防御において重要な機能を有する。代替経路において、C3の活性化型、C3bは、C3コンバターゼの構造サブユニットである。この2分子酵素は、C3bおよび因子Bの活性化型であるBbより成る。この酵素は、因子Dによって続いて開裂されるC3bの因子Bへの結合によって形成され、C3コンバターゼ、C3b、Bbの形成、および活性化ペプチドBaの放出を生じる。C3コンバターゼは分子をC3bおよびアナフィラトキシン、C3aに開裂することによってC3を活性化する。C3b分子はC3コンバターゼのごく近くの細胞または粒子に結合するであろう。最終的に結合したC3bは、C5のC5bおよびアナフィラトキシン、C5aへの活性化を可能にする。C5活性化は同じC3b、Bb酵素によって起こり、Bb酵素は追加のC3b分子に結合しているときにC5を開裂可能であり、(C3b),Bbより構成される3分子複合体を生成する。このC5開裂3分子酵素はC5コンバターゼと呼ばれる。C3およびC5の両方の活性化がBbサブユニットの同一の活性部位で発生するため、酵素はC3/C5コンバターゼとも呼ばれる;そして1個のECメンバのみが割り当てられている(EC 3.4.21.47)。
【0004】
コブラ毒は、コブラ毒因子(CVF)と呼ばれるC3の構造的および機能的類似物質を含有する。この分子は、ヒトおよび哺乳類血清中の因子Bと結合して複合体CVF,Bを形成することができ、これはまた因子Dによって2分子酵素CVFのBbおよびBaに開裂される。2分子複合体CVF,Bbは、C3bによって形成されるC3/C5コンバターゼと同様にC3およびC5を活性化するC3/C5コンバターゼである。2つのC3/C5コンバターゼC3b,BbおよびCVF,Bbは同じ分子構造、活性の部位保持Bbサブユニット、および基質特異性を共有するが、2つの酵素は著しい機能の相違を示す。CVF,Bb酵素はC3b,Bbよりも物理化学的にはるかに安定であり、調節タンパク質因子HおよびIによる不活性化に対して耐性であり、異なる動的特性を示し、C5開裂のために追加のC3bを必要としない。
【0005】
CVFおよび哺乳類C3が免疫交叉反応、アミノ酸組成、円2色性スペクトル、2次構造、電子顕微鏡による超構造、およびアミノ酸配列を含む、複数の構造上の類似性を示すことが明らかにされている。それにもかかわらず、2つの分子間には著しい構造上の相違が存在する。C3が種に依存して、170〜190kDaの見かけの分子量を持つ2鎖分子であるのに対して、CVFは、C3の生理的活性化生成物の1つであるC3cに似た、149kDaの見かけの分子量を持つ3鎖分子である。C3とCVFの間の別の著しい構造上の相違は、そのグリコシル化にある:CVFは、主として、非還元末端に珍しいα−ガラクトシル残基を持つN結合複合体型鎖で構成される、7.4%(w/w)の炭水化物含有率を有する。これに対して、ヒトおよびラットC3は、より低い程度のグリコシル化を示し、異なる構造のオリゴサッカライド鎖を持つ。
【0006】
CVF,BbおよびC3b,BbはどちらもC3/C5コンバターゼであるが、それらは重要な相違を示す。CVF含有酵素はC3含有酵素よりも、はるかに安定である。どちらのコンバターゼもその2つのそれぞれのサブユニットに自発的に崩壊するであろう。しかしながら、CVF含有コンバターゼの固有半減期(安定性)は、37℃にて約7時間であり、約1.5分間の固有半減期を持つC3含有酵素よりも数百倍長い。さらにCVF含有酵素は、遊離CVFと同様に、補体調節タンパク質因子HおよびIによる調節を受けない。長い固有半減期とCVF含有酵素の調節に対する耐性の組合せによって、CVFはC3およびC5を継続的に(そして次に他の補体成分)を活性化して、最終的に血清補体活性の枯渇(depletion)を引き起こす。
【0007】
大流行している疾患を含め、多数の疾患への補体系の関与に基づいて、過去十年間には、これらの疾患状態における望ましくない補体活性化プロセスを妨害する複数の抗補体剤の開発が見られた。すべての補体向け薬物開発の試みは、補体の活性化を阻害することに基づいており、同時にCVFは血清中の補体を枯渇させることにより作用する。補体活性化の疾患の処置にとって興味深いのは、C3の非免疫原性または低免疫原性をCVFの補体枯渇機能と組合せるC3型分子である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要約)
実施形態の以下のリストは、本発明の各種の態様の非制限的な説明である。他の態様および変形は、開示全体に照らして明らかになるであろう。
【0009】
一部の実施形態は、ヒトC3タンパク質の部分の、実質的にそれに関連する配列のコブラ毒因子タンパク質の対応する部分による置換を有することができる、1つまたは複数の修飾ヒト補体C3タンパク質を含む。一部の実施形態において、CVFの置換部は、C3のアルファ鎖内でありうる。他の実施形態において、CVFの置換部分は、C3のアルファ鎖のC末端部分でありうる。一部の実施形態において、置換C末端部分は、ヒトC3タンパク質のアミノ酸1663を含む。一部の実施形態において、置換C末端部分は、ヒトC3タンパク質のC末端全体を通じて延在しない内部部分でありうる。さらなる実施形態において、修飾タンパク質は、実質的に同数のアミノ酸残基を未修飾ヒトC3タンパク質として有することができる。一部の実施形態において、置換はヒトC3タンパク質のアミノ酸位置700−1663内の任意の位置を含むことができる。他の実施形態は、ヒト補体C3タンパク質であり、これはヒトC3タンパク質の部分の、実質的にそれに関連しており、少なくとも2個の置換を有することができる配列のコブラ毒因子タンパク質の対応する部分による置換を有することができる。一部の実施形態において、置換は選択された開始位置および選択された最終位置を有する;一部のそのような実施形態において、開始位置はたとえば749、874、936、994、1264、1348、1496、1504、1550などでありうる;最終位置はたとえば784、921、970 1324、1550、1617、1663でありうる。好ましい実施形態において、1つまたは複数の置換がアミノ酸:1550−1663、1504−1663、1348−1663、1550−1617、1504−1617、1496−1663、1348−1617、1496−1617、1264−1324、749−784、874−921、994−1663、994−1550および936−970のいずれかを含むことができる。一部の実施形態において、CVFの置換部分はC3のベータ鎖内にありうる。
【0010】
一部の実施形態において、修飾C3タンパク質は因子Bへの親和性を有することができ、コンバターゼの形成を補助できる。一部の実施形態において、得られたコンバターゼはC3を開裂できるが、C5は開裂できない。さらなる実施形態において、コンバターゼは、約37℃にて1.5分間〜約7時間の固有半減期を有することができる。一部の実施形態において、得られたコンバターゼは37℃にて少なくとも約7時間の固有半減期を有することができる。
【0011】
一部の実施形態において、修飾C3タンパク質は単鎖タンパク質として発現できる。一部の実施形態において、修飾C3タンパク質は、C3に似た形態の少なくとも2本の鎖に開裂させることができる。さらなる実施形態において、修飾C3タンパク質を開裂させてそこからC3a部分を放出できる。一部の実施形態において、修飾タンパク質は、C3またはCVFによってコードされないN末端において、追加の1〜約19個のアミノ酸を有することができる。一部の実施形態において、修飾タンパク質は、非C3シグナルペプチド、たとえばDrosophila Bipシグナル配列を含むことができる。一部の実施形態において、修飾C3タンパク質は、因子Bおよび/または因子Dに対して修飾親和性を有することができる。一部の実施形態において、修飾タンパク質は、因子Hおよび/または因子Iに対して部分または完全耐性を示すことができる。一部の実施形態において、修飾C3タンパク質は、実質的に非免疫原性でありうる。
【0012】
他の実施形態は、補体の枯渇に有効な量の修飾C3タンパク質を患者に投与することによって、補体を枯渇させる方法も含むことができる。一部の実施形態において、投与は局所的でありうる。さらなる実施形態において、局所投与は臓器内、皮下的、空洞内、または組織内でありうる。他の実施形態において、局所投与は、修飾C3タンパク質を所望の場所に濃縮できるターゲティング機能を利用できる。さらなる実施形態において、ターゲティング機能は、修飾C3タンパク質に結合された抗体を使用することを含みうる。一部の実施形態において、投与は全身投与、たとえば静脈内または腹腔内投与でありうる。
【0013】
さらなる実施形態は、補体を枯渇するのに十分な修飾C3タンパク質を患者に送達するステップと;患者における再潅流を可能にするステップとによって、患者における再潅流傷害を回避または緩和するための方法でありうる。一部の実施形態において、送達ステップは、修飾C3タンパク質を動脈に注入することを含みうる。他の実施形態において、送達ステップは、修飾C3タンパク質の局所送達を含むことができる。他の実施形態において、送達ステップは修飾C3タンパク質の全身送達を含むことができる。一部の実施形態において、再潅流は閉塞動脈を開くことを含む。一部の実施形態において、再潅流は臓器移植と関連して起こることがある。
【0014】
一部の実施形態は、修飾C3タンパク質を補体を枯渇させるのに十分な量で送達するステップと、遺伝子治療を供給するステップと;それからの向上した結果を観察するステップとによって、遺伝子治療の効率および/または有効性を上昇させる方法を含みうる。
【0015】
一部の実施形態は、血流を増加させるのに十分な修飾C3タンパク質を送達するステップと;治療剤または診断剤を供給するステップとによって、治療剤または診断剤の送達を増加させる方法を含みうる。一部の実施形態において、該方法は、送達ステップの前に、修飾C3タンパク質を特定の組織に対する親和性を備えた抗体に化学的に結合するステップを含みうる。一部の実施形態において、抗体を修飾C3に組換えDNA技術によって付着させることができる。一部の実施形態において、抗体はモノクローナル抗体でありうる。
【0016】
一部の実施形態は、補体を枯渇させるのに十分な修飾C3タンパク質を投与するステップを含む、自己免疫疾患を処置する方法を含む。一部の実施形態において、投与は間欠的でもよく、少なくとも1つの疾患症状上昇の期間に一致する。一部の実施形態において、自己免疫疾患は、ぜんそく、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、関節リウマチ、アルツハイマー病、多発性硬化症、心筋虚血、再潅流、敗血症、超急性拒絶、移植片拒絶、心肺バイパス、心筋梗塞症、血管形成、腎炎、皮膚筋炎、類天疱瘡、脊髄損傷およびパーキンソン病のいずれかでありうる。
【0017】
一部の実施形態は、たとえばヒト補体C3タンパク質の部分をコブラ毒因子(CVF)タンパク質の対応する部分によって置換するステップによって、ヒトタンパク質中のCVFの特性を模倣する方法を含む。一部の実施形態において、部分はC3のアルファ鎖内でありうる。他の実施形態において、部分はC3のアルファ鎖のC末端分でありうる。一部の実施形態において、C末端部分はヒトC3タンパク質のアミノ酸1663を含みうる。一部の実施形態において、置換C末端部分は、ヒトC3タンパク質のC末端全体を通じて延在しない内部部分でありうる。
【0018】
他の実施形態は、修飾タンパク質の機能プロフィールを形成するために修飾C3タンパク質の少なくとも1つの特性を特徴付けるステップと;機能プロフィールを処置される疾患または状態と結び付けるステップとによる、修飾C3タンパク質を選択する方法を含む。一部の実施形態において、少なくとも1つの特性は:コンバターゼ活性、コンバターゼ形成、コンバターゼ安定性、因子Hに対する感受性、因子Iに対する感受性、C3を開裂する能力、およびC5を開裂する能力から成る群より選択できる。一部の実施形態において、選択したC3タンパク質は、慢性状態の処置に適したコンバターゼの形成に関与する。一部の実施形態において、適応は、たとえば長い血漿半減期、高い安定性、因子Hに対する耐性、因子Iに対する耐性などのいずれかを含みうる。一部の実施形態において、コンバターゼは再潅流傷害の処置に適しうる。他の実施形態において、適応はたとえば高いコンバターゼ活性、因子Hに対する耐性、因子Iに対する耐性などのいずれかでありうる。
【0019】
一部の実施形態は、修飾C3タンパク質をコードする核酸配列、および/または核酸を含むベクターおよび/またはベクターを含有する宿主細胞を含む。一部の実施形態において、宿主細胞は:Drosophila S2細胞、Sf9細胞、CHO細胞、COS−7細胞、HiFive細胞、酵母細胞、BHK細胞、HEK293細胞、およびE.coli細胞のいずれかでありうる。
【0020】
一部の実施形態は、修飾ヒト補体C3タンパク質ならびに医薬的に許容される担体および/または核酸を含みうる組成物を含む。
【0021】
一部の実施形態は、修飾C3タンパク質を発現する発現系を含む。一部の実施形態において、発現系は:Drosophila S2細胞、Sf9細胞、CHO細胞、COS−7細胞、HiFive細胞、酵母細胞、BHK細胞、HEK293細胞、およびE.coli細胞から成る群より選択される細胞を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
ヒト補体C3配列の、CVFの特異的機能の主な構造要件を表すCVF配列による置換は、CVF様機能を備えたC3誘導体の作製を可能にする。本発明の好ましい実施形態は、補体活性化が病因の一部である臨床状況で補体を枯渇させる新規な治療剤として使用するための安定なコンバターゼを形成することによって、補体を枯渇させるCVF特異的機能を示すヒトC3誘導体を提供することである。CVF特異的配列によって引き起こされたヒトC3の構造変化は最小限であるため、修飾C3分子は、免疫原性の著しい低下または非存在さえ示すであろう。
【0023】
CVF機能を備えた、しかし実質的に低下した免疫原性を備えたヒトC3タンパク質を生じる、ヒトC3タンパク質の部分の、コブラ毒因子タンパク質(CVF)による対応する部分による置換を有する、多数の修飾ヒト補体C3タンパク質(C3)が開示されている。C3タンパク質は、プロタンパク質(単鎖タンパク質)または4個のアルギニン残基の除去による開裂タンパク質でありうる。追加の2鎖形は、C3a部分の除去により形成できる。好都合には、C3タンパク質は、以下のCVF機能:C3コンバターゼを形成する能力の向上、C3コンバターゼの安定性向上、因子Hおよび/またはIの作用に対する耐性の向上、C3およびC5を開裂させる活性の向上、および血漿半減期の延長の少なくとも1つを含有するように操作できる。1つの実施形態において、C3のアルファ鎖のC末端部分は、CVFタンパク質の対応する部分によって置換される。多種多様の特異領域および特異キメラが本明細書で開示される。さらに修飾C3タンパク質が修飾タンパク質の機能プロフィールを形成する特性を特徴付けるステップと、処置される疾患または状態と結び付けるステップとを含む、修飾C3タンパク質を同定および/または選択する方法が開示される。機能プロフィールは、以下の機能:コンバターゼを形成する能力、Hおよび/またはIに対する感受性、C3を開裂する能力、C5を開裂させる能力、コンバターゼの相対活性、コンバターゼの安定性、および血漿半減期の1つまたは複数を含みうる。キメラC3タンパク質、C3/CVFキメラ、またはC3/CVFハイブリッドタンパク質とも呼ばれる修飾C3タンパク質は、局所または全身補体活性化から生じる各種の疾患および/または状態を処置するのに使用できる。これらの疾患は、これに限定されるわけではないが:再潅流傷害、自己免疫疾患、たとえば関節リウマチおよび狼瘡、そして重症筋無力症ならびに人体のタンパク質または構造に対する免疫反応を識別および指示する抗体から生じた他の疾患を含む。
【0024】
(補体系および疾患)
補体系は、脊椎動物免疫系の構成要素であり、宿主防御および免疫反応でのその役割を通じて健康の維持に関与している。しかしながら補体活性化も多数の疾患の病因に関与している。これらの疾患の例は、自己免疫溶血性貧血、関節リウマチおよび他の免疫複合疾患、ならびに血流が一時的に停止された後に組織損傷が発生する再潅流傷害を含む。再潅流傷害の例は、閉塞血管の再開後の組織損傷(たとえば心臓麻痺、卒中)および臓器移植後のレシピエントの血液による再潅流である。大流行している疾患を含め、多数の疾患への補体系の関与に基づいて、過去十年間には、これらの疾患状態における望ましくない補体活性化プロセスを妨害する複数の抗補体剤の開発が見られた。このような薬物の開発の試みはすべて、補体の活性化を阻害することに基づいている。
【0025】
(補体タンパク質C3、コブラ毒因子CVF、類似性および相違)
補体の第3の成分であるC3は、補体活性化の古典的経路および代替経路の両方において中枢の役割を果たし、生理的C3活性化生成物の多くは、免疫反応および宿主防御において重要な機能を有する(総説については、参考としてその全体が本明細書に援用されるMuller−Eberhard,H.J.(1988) ”Molecular Organization and Function of the Complement System,”Ann.Rev.Biochem.,57:321−347を参照)。ヒトC3は、分子量約185,000の2鎖糖タンパク質である。それは単鎖プリプロC3として合成され、β鎖とα鎖との間のアルギニン残基4個の除去による次の処理を受ける。ヒトC3の1次配列は、分子クローニングから既知である。他の哺乳類種はもちろんのこと非哺乳類種からの完全または部分配列情報が入手できる。これらとしては、マウス、ラット、モルモット、ニワトリ、コブラ、アフリカツメガエル、およびヤツメウナギが挙げられる。ヒトC3遺伝子は、長さ42kbで、エキソン41個を含み、52〜213bpの範囲の大きさである。
【0026】
C3の主な活性化生成物はC3bである。C3bは、代替経路C3/C5コンバターゼの形成で中心的な役割を果たす。この酵素の形成は、C3bの因子Bへの初期結合を必要とする。弱い複合体C3b,BはMg2+の存在下で因子Dによって次に開裂され、酵素活性C3/C5コンバターゼC3b,Bbを生じて、活性化ペプチドBaの放出を引き起こす。C3b,Bb酵素は非常に不安定であり、2つのサブユニットC3bおよびBbへの自発的な崩壊解離を示し、固有半減期は37℃にて1.5分間である。C3b,Bb酵素はプロパージンによって安定化される。C3/C5コンバターゼは、2つの基質における1個のペプチド結合を加水分解することによって、C3およびC5を開裂させる。酵素にC5を開裂させるために、コンバターゼに結合された別のC3b分子にC5を結合させる必要がある。高速の自発的な崩壊解離に加えて、C3b,Bb酵素は厳密な制御を受ける。酵素は因子Hによって分解され、C3bは因子HおよびIの複合作用によって不活性化される。因子Hの存在下で、因子Iは2個の開裂部位におけるC3bのα’鎖を開裂する。iC3bと呼ばれる得られたC3b誘導体はもはや、因子Bを用いてコンバターゼを形成できない。因子Iは第3の部位にてα’鎖を開裂可能であり、これは2つのC3断片C3cおよびC3dgの生成を引き起こす。因子Iによる第3の開裂では、C3bセレプタのCR1が補因子として作用する。
【0027】
C3の珍しい構造特性は、α鎖内の細胞内チオエステルの存在である。C3のC3bへの活性化時に、チオエステルは非常に反応性となり、C3bの細胞および他の特定の標的への共有付着に関与する。チオエステルの開裂と同時に起こる構造変化は、次の因子Bの結合およびその活性化を可能にする。
【0028】
C3中のチオエステルは低速の自発的加水分解を受け、iC3またはC3(HO)と呼ばれるC3の形態の形成を引き起こす。iC3はC3b様機能を呈し、血清中の因子BおよびDによって流体相コンバターゼを形成できる。得られたコンバターゼiC3,BbはC3b,Bbコンバターゼと同様に不安定であり、因子HおよびIによる制御を受ける。しかしながらチオエステルの自発的な加水分解およびiC3,BbコンバターゼによるC3の次の低グレードの活性化は、標的細胞または粒子に対するC3bの初期沈着に関与して、いわゆるアクチベータ表面での代替経路の活性化を引き起こすと考えられる。
【0029】
C3は、非常に珍しい多機能タンパク質である。その各種活性化生成物を含む該タンパク質は特に、約20の異なる血漿タンパク質または細胞表面レセプタと相互作用する。このような他機能性は、分子の詳細な構造/機能解析に多大な興味をかき立てている。因子H、プロパージン、因子B、および補体レセプタCR1、CR2、CR3、およびC3aを含むC3の一部のリガンドでは、レセプタ結合部位は、C3ポリペプチドの多かれ少なかれ定義領域に提示または割当てされる。
【0030】
コブラ毒は、コブラ毒因子(CVF)と呼ばれるC3の構造的および機能的類似物質を含有する。CVFはヒト血清および本質的にすべての脊椎動物の血清中の因子Bと結合でき、弱い複合体CVF,Bを形成し、これが次にMg2+の存在下で因子Dによって2分子酵素CVF,BbおよびBaに開裂されるという点で、CVFはC3bに機能的に似ている。2分子複合体CVF,Bbは、C3bによって形成されたC3/C5コンバターゼと同様にC3およびC5を活性化する、C3/C5コンバターゼである。
【0031】
CVFは、約150,000Daの分子量を持つ3鎖糖タンパク質である。CVFおよび哺乳類C3は、免疫交叉反応、アミノ酸組成、円2色性スペクトルおよび2次構造、ならびに電子顕微鏡超構造を含む複数の構造上の類似性を示すことが明らかにされている。初期のN末端アミノ酸配列比較は、C3との配列相同性を証明し、CVFがC3cと構造的に似ているという示唆をもたらした。CVFとC3との構造相同性および鎖の関係は、CVFの分子クローニングによって確認され、このことはタンパク質レベルにて哺乳類C3に対して約70パーセントの、そしてコブラC3と比較したときに90パーセント超の全体的な類似性を明らかにした。
【0032】
CVFとC3との間のこれらの機能上および構造上の類似性にもかかわらず、2つの分子および得られたコンバターゼは、重要な機能上の相違を示す:
1.両方の酵素が、酵素活性を破壊する、各サブユニットへの自発的な崩壊解離を示す。C3b,Bb酵素は非常に短寿命であり、37℃にて1.5分間の固有半減期で崩壊するのに対して、CVF,Bb酵素は何桁もより安定であり、約7時間の固有半減期で崩壊する。
【0033】
2.C3b,Bb酵素は、因子HおよびIによる調節を受ける。これに対してCVF,BbおよびCVFは、これらの2つのタンパク質の調節作用に対して完全に耐性である。
【0034】
3.補体活性化中に産生されたC3b,Bb酵素は表面に結合している。これに対してCVF,Bb酵素は流体相酵素である(iC3,Bbと同様)。
【0035】
4.C3b,BbとCVF,Bbとの別の機能上の相違は、C5コンバターゼ活性にある。C5をC5コンバターゼによって開裂させるために、C3bまたはCVFのどちらかに結合させる必要がある。しかしながらC3b,Bb酵素によってC5開裂を発生させるために、C5をC3b,Bb酵素の一部であるC3b分子とは異なるC3b分子に結合させる必要がある。これに対して、C5は、Bb触媒サブユニットを保持する同じCVF分子によって結合される。CVF,Bb酵素がC5を結合するこの特性はおそらく、流体相C5コンバターゼ活性を示すその能力の理由であり、これに対して、C3b,Bb酵素のC5コンバターゼ活性は粒子の表面に制限される。
【0036】
5.両方の活性が、C3加水分解のその動力学においてやや異なることが示されている。kcat/Kに基づいて、触媒効率は、CVF,Bbと比較してC3b,Bbでは約8倍大きい。
【0037】
機能上の結果に関して、CVF,BbとC3b,Bbの間の2つの最も重大な相違は、CVF,Bb酵素の固有安定性および調節タンパク質因子HおよびIに対するその耐性である。CVF,Bb酵素が形成されると、それは引き続きC3およびC5を活性化して、補体消費を引き起こす。CVFを実験動物に、その血漿補体を枯渇させるために安全に投与できることが30年間に渡って証明されて以来、CVFは、免疫反応、宿主防御、および疾患の病因における補体の各種生体機能を、正常な(補体充足)動物をCVF処置(補体枯渇)動物と比較することによって、試験する重要な調査ツールとなってきた。
【0038】
(C3/CVF誘導体)
CVFは、次に枯渇につながる徹底的な活性化の機構を通じて作用する、補体インヒビタである。実際に、CVFは、他の薬物の抗補体活性を評価する標準として頻繁に使用される。CVFはこの強力な抗補体活性を示すが、その免疫原性のためにヒト用途には適していない。この理由で、CVFとC3との広範囲に渡る構造類似性を利用することによって実質的に非免疫原性CVFを調製することと、CVF分子の機能的に重要な領域をヒトC3内へ組換え手段で置換することによってCVFの所望の補体枯渇機能を備えたヒトC3誘導体を産生することが望ましい。このことは、本明細書で述べるように実施されている。
【0039】
多数のヒトC3誘導体が生成および/または設計されており、C3配列の部分が相同性CVF配列、主にCVFベータ鎖内の配列によって置換された。CVFおよびC3は、真核発現系にて組換え手段によってうまく発現されている。C3のアルファ鎖領域、そして好ましくは、CVF配列全体に集合的に及ぶ、CVFとコブラC3との間の5つのハイブリッドタンパク質が作製された(ヒトC3よりも、CVFに対する高い類似性のために)、以前の研究に基づいて、この鎖のC末端部分が選択された(参考としてその全体が本明細書に援用される、Mol.Immunol.40:199(2003))。他の系列の研究は、CVFタンパク質の制限されたタンパク質分解を含んでいた(参考としてその全体が本明細書に援用される、Mol.Immunol.30,Suppl.1,113(1993)U.S.Patent No.5,174,344)。この以前の研究結果を使用して、アミノ酸残基1550−1663、1504−1663、および1348−1663それぞれをCVFからの相同配列で置換することによって、3つの好ましいヒトC3誘導体を作製した。C3誘導体は第1のアミノ酸残基によって指定され、最後のアミノ酸残基が示されない場合、それは1663であると理解される。CVF挿入の終点がタンパク質のC末端より前である場合、それは位置によって指定される(たとえば:HC3−1550/1617)。アミノ酸残基1348−1663を置換することによって作製されたC3誘導体は、以前に1325−1663と呼ばれたが、置換マッピングが次に1325ではなく1348であったことを示していた。3つのヒトC3誘導体は、HC3−1550、HC3−1504、およびHC3−1348と呼ばれる。3つのヒトC3誘導体は、所望のCVF活性を示すことが明らかにされた:3つのタンパク質はすべて、活性C3/C5コンバターゼを形成することができる。これは、3つのタンパク質が因子Bの活性化を補助する能力によって、そして3つの得られたコンバターゼがC3を開裂する能力によって証明される。3つのタンパク質はすべて安定なコンバターゼを形成するが、固有安定性および少なくとも1つ(HC3−1550)は、CVFと比べてより低い固有安定性を示す。最初に試験した3つのタンパク質のうち2つ(HC3−1550およびHC3−1348)が実際にモルモット血清から補体除去できたという観察は予想されていなかったが、この活性はCVFの活性よりも明らかに低く、5つのタンパク質のうち4つがヒト血清中の補体を枯渇させることができ、HC3−1348およびHC3−1496は、CVFとほぼ同様に補体ヒト血清から補体を除去することができた。HC3−1550/1617は、ヒト血清中の補体を枯渇できなかった。補体を少なくとも部分的に枯渇する能力は、C3誘導体が安定なコンバターゼを形成するだけでなく、調節タンパク質因子Hおよび/またはIに対して少なくとも部分的に耐性であることを示しており、それによりCVF様活性であることを示す。ヒトC3誘導体HC3−1550は、アミノ酸残基の4%未満がヒトC3とは異なり、その予測された免疫原性をCVFと比較して大幅に低減または除去している。各種のC3ハイブリッドは、処置される疾患に応じて、その各種の特徴に基づいて好ましいことがある。たとえば慢性疾患の処置では、目的は、極めて低い免疫原性を有するか、免疫原性を持たず、高いコンバターゼ安定性を有するC3ハイブリッドを提供して、慢性疾患に罹患している患者の体内でその持続を促進することである。そのような状況では、他方の特徴、たとえばコンバターゼの活性は、比較的あまり重要でない。これに対して、補体関連再潅流傷害を回避するための処置では、高いコンバターゼ活性がコンバターゼ安定性よりも大きく重要である。それゆえそれぞれ特定の一連の特性を有する各種ハイブリッドの多様性により、補体活性化および/または補体枯渇によって処置できる所与の状態の処置のための好ましいハイブリッドの選択が可能となる。
【0040】
1つの実施形態において、本発明は、以下のCVFまたはCVF,Bb品質:1.5分間より長い固有半減期で崩壊、因子Hおよび/またはIの調節作用に対する耐性の上昇、流体相C3コンバターゼおよび流体相C5コンバターゼ活性の少なくとも1つを示す修飾補体C3タンパク質に関する。これらの要因に加え、触媒効率がCVF,Bbと比較してC3b,Bbでは約8倍であるため、一部の実施形態において触媒効率をC3b,Bbと比べて低下させることができる。他の実施形態において、触媒効率はC3b,Bbと比較して上昇または下降されない。多くの好ましいC3ハイブリッドがほとんどまたは全く免疫原性を持たないが、それにもかかわらず多くの用途に適切である他の実施形態は、一部の場合では検出可能〜中程度の免疫原性を示すことがある。
【0041】
一部の実施形態において、修飾C3タンパク質によって形成されたコンバターゼの固有半減期は、1.5分間超、好ましくは10分間超である。さらなる実施形態において、固有半減期は一般に、これに限定されるわけではないが、約:2分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、90分間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間および7時間またはそれ以上を含む、CVF含有コンバターゼ(7時間以上)およびC3(1.5分間)の間に収まりうる。短いコンバターゼ固有半減期および/または短い血漿半減期を持つ修飾C3タンパク質は、一部の用途に有用であるが、長いコンバターゼ固有半減期および/または長い血漿半減期を持つC3タンパク質は別の用途に有用であろう。
【0042】
さらなる実施形態において、C3ハイブリッドの因子Hおよび/またはIに対する耐性は、未修飾C3の耐性よりも大きく、一部の実施形態においてCVFの耐性と同等である。しかしながら一部の実施形態において、因子Hおよび/またはIに対する耐性を達成するために、分子の他の部分でのさらなる修飾が必要となることがある。
【0043】
本明細書で述べる多くの実施形態はC3の1つまたは複数の別個の領域の、CVFの対応する領域による特異的置換に関するが、他の実施形態は、CVF配列に実質的に関連しているが、同一ではない配列を利用した置換を含む。すなわち置換のために選択したCVF領域内に、選択したCVF領域の所望の機構または機能を損失せずに1つまたは複数のアミノ酸に対する変化を生じさせることができる位置があり、一部の場合ではそのような変化は、機構または機能の向上を付与できる。そのような変化はすべて、本発明の実施形態と見なされる。
【0044】
さらなる実施形態において、修飾C3タンパク質を含有するコンバターゼの触媒活性は、一部の実施形態においてCVFを含有するコンバターゼの触媒活性の少なくとも50%であり、未修飾C3を含有するコンバターゼの触媒活性よりも大きい。さらなる実施形態において、触媒活性は、CVFコンバターゼの触媒活性の60%、70%、80%、90%または100%である。両方の酵素が、C3加水分解のその動力学で多少異なることが示されている。それゆえ多くの実施形態において、修飾C3を含有するコンバターゼは、2つの間に収まる、または未修飾C3を含有するコンバターゼの活性を超える触媒活性を有することができる。それゆえ一部の実施形態において、修飾C3を含有するコンバターゼのそのような活性は、CVFを含有するコンバターゼの活性の、これに限定されるわけではないが20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、および110%、135%、150%、200%、300%、400%、500%、750%、1000%およびそれ以上を含む、10%〜1000%またはそれ以上でありうる。
【0045】
cat/Kに基づいて、触媒効率は、C3を開裂させるときに、CVF,Bbと比較してC3b,Bbでは約8倍である。それゆえ一部の実施形態において、修飾C3を含有するコンバターゼの触媒効率は一部の実施形態においてCVFを含有するコンバターゼの少なくとも50%であり、未修飾C3bを含有するコンバターゼの触媒効率よりも大きいことがある。両方の酵素は、C3加水分解のその動力学でいくらか異なることが示されている。それゆえ多くの実施形態において、修飾C3を含有するコンバターゼは、2つの間に収まる、または未修飾C3を含有するコンバターゼの活性を超える触媒効率を有することができる。それゆえ一部の実施形態において、修飾C3を含有するコンバターゼのそのような効率は、CVFを含有するコンバターゼの効率の、これに限定されるわけではないが20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、および110%、135%、150%、200%、300%、400%、500%、750%、1000%およびそれ以上を含む、10%〜1000%またはそれ以上でありうる。
【0046】
さらなる実施形態において、修飾C3タンパク質のC5開裂活性は上昇する。C5開裂活性は、CVFまたはC3の活性の、これに限定されるわけではないが:15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、および375%を含む、約10%〜400%でありうる。
【0047】
さらなる実施形態において、修飾C3タンパク質の因子Bへの結合および/または因子Dによるその次の開裂を低下させることができる。しかしながら触媒活性および補体枯渇活性の少なくとも機能的量が残存している限り、修飾C3タンパク質は有用である。
【0048】
さらなる実施形態において、修飾C3タンパク質を有するコンバターゼは、天然CVFを含有するコンバターゼの実質的に同じ補体活性化活性を示す。「天然CVFの実質的に同じ補体活性化活性を示すという用語は、本発明のC3誘導体が、Cochranらの方法(参考としてその全体が本明細書に援用される、(1970)J.Immunol.105(1)),55−69)によって測定されたように、天然CVFの補体活性化活性のレベルの0.1〜97%、好ましくは50〜97%、好ましくは80〜97%を有することを意味する。
【0049】
一部の実施形態において、修飾補体C3タンパク質は、C末端領域の一部または全部がCVFの対応する領域によって置換されているC3分子である。一部の実施形態において、C3のアルファ鎖のC末端部分のみがCVFの対応する領域によって置換される。一部の実施形態において、これに限定されるわけではないが:30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、175、180、190、200、250、275、300、350、375、400、450、475、500、550、575、600、650、675、700、750、775、800、850、875、900、950、975、1000個の領域を含む、これに限定されるわけではないが20〜約1000個のアミノ酸の領域を含む、アミノ酸700−1663の一部またはすべてが置換される。一部の実施形態において、C3のベータ鎖は無処置であり、すなわち天然C3と同じである。しかしながら一部の実施形態において、C3のアルファ鎖における置換に加えて、上昇した安定性などの機能を提供するために他の置換を行うことができる(たとえば因子H結合および因子I開裂に関連する部位を変異または置換することができる)。特異的置換は、これに限定されるわけではないが、アミノ酸1550−1663、1504−1663、1348−1663、1550−1617、1504−1617、1470−1663、1348−1617、1470−1617、1264−1324、1348−1386、749−784、874−921、1496−1663、1496−1617および936−970を含む。一部の実施形態において、これらの範囲でのなお小規模な置換は、所望のCVF機能または品質を持つC3を生じさせるより小規模な領域に一致できる。
【0050】
好ましい実施形態の免疫原性は、C3の免疫原性と比較して、低いか、または非存在のままである。一部の実施形態において、修飾C3タンパク質は実質的に非免疫原性である。実質的に非免疫原性とは、タンパク質がヒト患者に注入されたときに補体活性化機能をなお示せることを意味する。さらに修飾C3タンパク質は、C3と同様に非免疫原性でありうるか、またはこれに限定されるわけではないが、80%、85%、90%、95%、および99%を含む、約75%非免疫原性〜約100%非免疫原性でありうる。
【0051】
(全身または局所処置の方法)
本明細書で開示した方法によって生成された修飾ヒト補体C3タンパク質は、以下のように補体を局所的または全身的に枯渇させるために使用できる:
局所処置は、所望の効果に応じて、補体の枯渇または補体の活性化の結果を生じさせるために多数の方法で実施できる。1つの実施形態において、局所枯渇は、修飾C3タンパク質を臓器、組織、空洞、または皮内に局所的に投与したときに作用する。これはその範囲の補体の一時的および完全な枯渇を引き起こす。局所枯渇または活性化も、選択した部位への修飾C3タンパク質の間欠流または定常流を生じさせるインスリン型ポンプを使用して作用しうる。あるいは補体の局所活性化は、修飾C3に化学的に付着したときに、特異的組織、疾患、または罹患細胞に局在化して、その部位の補体の連続活性化を引き起こすことができる、特異的モノクローナル抗体を利用する。他の実施形態において、抗体は組換えDNA技術によって修飾C3タンパク質に付着できる。
【0052】
全身枯渇は、修飾C3タンパク質が全身的に、たとえば静脈内または腹腔内に投与されたときに作用する。これは全身的に補体の一時的および完全な枯渇を引き起こす。この方法は、再潅流傷害、冠状動脈心臓手術、移植または全身性疾患に、特に再発または間欠的活性の間に使用できる。これは本明細書に与える実施例でさらに議論する。
【0053】
このような各場合および具体的な疾患状態において使用される修飾ヒトC3タンパク質の最も好都合な品質の多くは、かなり変化しうる。たとえば補体の即時であるが一時的な除去が望ましい場合、より短い血漿半減期および/または安定性を有するが、高い補体活性化活性(高いC3/C5コンバターゼ活性)を持つ修飾タンパク質が最も適している。慢性疾患を処置する場合、長い血漿半減期および/または安定性ならびに低いまたは停滞した活性が最も適している。
【0054】
(コンバターゼ活性/機能)
本明細書で修飾C3タンパク質のための最善の用途を産生および解析する場合、これに限定されるわけではないが以下を含む、多数の機能および活性をそのような解析に使用できる:
因子Bに対する親和性−修飾C3タンパク質が因子Bの活性化(BaおよびBbへの開裂)を補助する効率の相違は、検出可能であり、利用できる。因子B活性化の補助を開始する、因子Bに対する単なる親和性を超えた複数の因子があるが、いったんコンバターゼが形成されると、一般に最も重要である次なる主な特性は、安定性、HおよびIによる調節、そしてC3およびC5の開裂の活性である。
【0055】
安定性−C3b,Bb酵素およびCVF,Bb酵素のどちらも、酵素活性を破壊する各サブユニットへの自発的な崩壊解離を示す。C3b,Bb酵素は非常に短寿命であり、37℃にて1.5分間の固有半減期で崩壊するのに対して、CVF,Bb酵素は何桁もより安定であり、約7時間の固有半減期で崩壊する。
【0056】
因子Hおよび/またはIによる調節−C3b,Bb酵素は、因子HおよびIによる調節を受ける。これに対してCVF,BbおよびCVFは、これらの2つのタンパク質の調節作用に対して完全に耐性である。
【0057】
開裂C3の活性−どちらの酵素も、C3加水分解のその動力学においてやや異なることが示されている。kcat/Kに基づいて、触媒効率は、CVF,Bbと比較してC3b,Bbでは約8倍大きい。
【0058】
免疫原性−CVF特異的配列によって引き起こされたヒトC3の構造変化は最小限であるため、修飾C3はCVFと比較して、著しく低下した免疫原性、または免疫原性の非存在すら示す。加えて、ヒトとは遠くかけ離れた種ではよくあるように、アルファ結合ガラクトースをCVFオリゴサッカライド鎖の端部に移動するトランスフェラーゼ酵素が、コブラで生成される。ヒトはこのトランスフェラーゼを生成しないため、アルファ結合ガラクトース残基は、非自己として見られ、高い免疫原性である。それゆえ、CVFで生成された特異的CHO部分を認識する抗アルファgal抗体が生成される。ヒトC3およびCVFはその位置の52%における同一性を欠いており、炭水化物の相違はなお顕著である。それゆえ好ましい修飾C3タンパク質は、10%未満、そして一部の実施形態においては約4%の、CVFのアミノ酸によって置換されたC3アミノ酸を有し、コブラ由来炭水化物構造(グリカン上の特異的にアルファ結合されたガラクトース)も持たないため、本発明のC3ハイブリッドは、著しく低い免疫原性である。一部の実施形態において、好ましい実施形態のC3ハイブリッドは、CVFよりも著しく免疫原性が低い。他の実施形態において、好ましい実施形態のC3ハイブリッドは、CVFよりも少なくとも50%低い免疫原性である。一部の実施形態において、組換えタンパク質は昆虫または哺乳類細胞系のどちらかで生成され、それは単純な(simple)炭水化物部分、またはヒトに見出されるのと非常に類似した炭水化物部分のどちらかを生じるであろう。
【実施例】
【0059】
CVF配列の大部分がコブラC3の相同性部分によって置換された、5つのCVF/コブラC3機能喪失ハイブリッドタンパク質を生成した。これらのハイブリッドタンパク質の予備キャラクタリゼーションは、CVFのα鎖(C3のβ鎖)内のコブラC3配列による置換が血清補体活性を枯渇させる機能特性を変化させるように見えないことを示したのに対して、β鎖およびγ鎖の部分の置換は大きな効果を有していた。CVF残基978〜1642がコブラC3配列によって置換されたハイブリッドタンパク質H4およびH5は、血清補体を枯渇させる能力の低下に加えて、バイスタンダー溶解(C5開裂の尺度)活性の著しい低下を示した。このことは、C3のアルファ鎖(CVFのβ鎖およびガンマ鎖に相当する)がCVFおよびC3の活性間の相違の主要な部位であることを示唆した。実験による裏付けの別の系統は、CVFβ鎖のC末端部分がCVF機能にとって重要であることを強く示唆し、キモトリプシンによるCVFの制限されたタンパク質分解の実験から生じている(参考としてその全体が本明細書に援用される、Grunwald,et al.(1993) Mol.Immunol.30,Supp.1,30)。それゆえヒトC3タンパク質の部分の、コブラ毒因子タンパク質(CVF)の対応する部分による置換を有する、多数の修飾ヒト補体C3タンパク質(C3)が生成または同定されている。これらの置換は、CVF型機能を備えているが、CVFよりも実質的に低い免疫原性を備えたヒトC3タンパク質を生じる。これらのタンパク質の生成および試験を以下の実施例1〜3で述べる。これらのタンパク質の使用およびアッセイを実施例4〜10に与える。
【0060】
(実施例1)
ヒト補体C3/CVFハイブリッドタンパク質の生成
ヒトC3配列の、CVF特異的機能に関する重要な構造上の特徴を示すCVF配列による置換は、CVF様機能を備えたC3誘導体の生成を可能にする。それゆえ本発明の実施形態は、補体活性化が病因の一部である臨床状況で補体を枯渇させる新規な治療剤として使用するための安定なコンバターゼを形成することによって、補体を枯渇させるCVF特異的機能を示すヒトC3誘導体の産生に関する。CVF特異的配列によって引き起こされたヒトC3の構造変化は最小限であるため、修飾C3分子が免疫原性の著しい低下または非存在さえ示せることが明らかである。
【0061】
表1のヒトC3分子は、CVF機能を備えたヒトC3誘導体を作製するために、特異的CVF配列を含有するように組換えられている。本発明の一部の実施形態は、これらの範囲により小さい置換を供給して、比較的安定なコンバターゼを形成できる、そして免疫原性をほとんどまたは全く示さない修飾C3タンパク質を生じる小さな領域を定義する。
【0062】
(表1:ヒトC3/CVFクローンの例)
【0063】
【表1】

ある修飾C3タンパク質(ハイブリッドタンパク質またはキメラとも呼ばれる)は、以下で述べる部位特異的変異によって生成した。簡単には、ヒトC3配列の小規模な部分をCVFと置換する部位特異的変異のために、Hoらの手順を使用した(参考としてその全体が本明細書に援用される、Ho,S.N.,Hunt,H.D.,Horton,R.M.,Pullen,J.K.and Pease,L.R.(1989)”Site−Directed Mutagenesis by Overlap Extension Using the Polymerase Chain Reaction”Gene,77:51−59)。この方法では、2つのPCR反応を実施し、1つは所望の突然変異の部位から上流のどこかのフォワードプライマーを用いた。2つ目は、リバースプライマーが突然変異を含有していた。このラウンドの第2のPCRは、所望の突然変異を含有するフォワードプライマーを有し、リバースプライマーは突然変異部位からの下流である。好ましくは少なくとも1つの特有の制限部位がこのステップによるPCR生成物にそれぞれ存在し、修飾DNAを元のクローンに戻すことが可能である。大量のテンプレートDNAと、PCRプロセスによって導入された突然変異を最小限にするために少ない回数のサイクルを使用して、増幅を実施した。さらに詳細には、PCRの第1のラウンドでは、5’生成物の反応がテンプレートとしてヒトC3プラスミドを使用するのに対して、他方のPCRはCVFプラスミドを使用した。この場合では、中間の「突然変異」プライマーは、部分的にC3配列より成り、そして部分的にCVF配列より成り、2つの配列間で「ブリッジ」を提供する。
【0064】
増幅の後、2つの生成物をゲル電気泳動によって精製して、QiagenからのQiaquick Gel抽出キットを使用してゲルから単離した。次に断片を合せて、2つの断片をテンプレートとして、外部プライマーを増幅プライマーとして使用して別のPCR反応を実施した。高濃度のテンプレートDNAを使用して再びPCR反応を実施して、PCRによって発生する突然変異を最小限にするために2、3回のサイクルのみ循環させた。得られたPCR生成物を2つの独自の制限酵素によって切断し、アガロースゲルでサイズ精製し、Qiaquickカラムを使用して興味のある断片を単離した。次に断片を適切な酵素によって切断して、同じ酵素で切断したpBS−HuC3またはpHC3−1550(−sig)のどちらかへクローニングした。
【0065】
第1のハイブリッドプラスミド、pHC3−1550は、位置1550からタンパク質のC末端までの相同性C3配列を置換するCVF配列を含有した。第2のハイブリッドプラスミド、pHC3−1504は、位置1504からタンパク質のC末端までのヒトC3配列を置換するCVF配列を含有するハイブリッドタンパク質をコードする。第3のハイブリッドプラスミド、pHC3−1348は、位置1348からタンパク質のC末端までの相同性C3配列を置換するCVF配列を含有した。第1のプラスミドを調製するために、2つの初期PCR反応を実施した。どちらのハイブリッドも、以下のRSPWPGVPTSPVWWNSADA(配列番号:5)の一部または全部を有する約19アミノ酸ベクターコード配列を有していた。C3遺伝子のクローニングの方法のために、クローニングベクターによってコードされたこれらのアミノ酸は、ヒトC3のN末端に対してN末端側であった。これらの余分のアミノ酸は、タンパク質の活性に影響しなかったため、それらは悪影響なしに除去できた。第1のプラスミドは、pBS−HC3−2をテンプレートとして使用し、以下のオリゴヌクレオチド:HC3H5−1(GGATGCCACTATGTCTATATTGGACATATCC−配列番号:6)、およびHC3H5−2(TCTTCTATTCGAACCAGTCGGGTCTTGTAC−配列番号:7)をプライマーとして使用して調製した。第2のPCRは、pCVF−FL3Δをテンプレートとして、以下のオリゴヌクレオチド:HuC3H5−3(GTACAAGACCCGACTGGTTCGAATAGAAGAACAAG−配列番号:8)およびHuC3H5−4(TATCATGTAAGCGGCCGCGTATAAACAATTTAAGGG−配列番号:9)をプライマーとして使用した。どちらの反応もEppendorfサーモサイクラーで、以下のプログラムを使用して実施した:95℃で5分、続いて95℃で30秒を5サイクル、58℃で30秒(50〜65℃の勾配)、72℃で1分、続いて95℃で30秒を20サイクル、57.5℃で30秒(55〜60℃の勾配)、72℃で1分、続いて72℃で10分。2つの断片をQiagen PCRクリーンアップキットを使用して精製し、HC3H5−1およびHC3H5−2をプライマーとして、2つの1次PCR生成物をテンプレートとして、第2のPCR反応で合せた。この反応で使用したサイクル条件は:95℃で5分、続いて;95℃で30秒、51℃で30秒(46〜56℃の勾配)、および72℃で1.5分を5サイクル、続いて;95℃で30秒、57℃で30秒(52〜62℃の勾配)、および72℃で1.5分を20サイクルであった。これには72℃で10分間のインキュベーションが続いた。PCR断片は上述のように精製して、BsrGIおよびNotIで切断し、ゲル精製して、Qiagen Gel単離キットを使用して単離した。この断片を同じ酵素によって切断したpBS−HuC3−2内にクローニングして、得られたクローンを、EcoRIを用いた消化による正しい断片の挿入についてスクリーニングした。正しいEcoRI消化パターンを持つクローンはすべて配列決定して、PCR誘発突然変異が挿入されていないことを確認した。予想配列を用いた1つのクローン(pHC3−1550)の大規模な調製を実施して、インサートをHindIII(およびT4 DNAポリメラーゼによって修復された端部)およびNotIによる消化によって切除した。断片をゲル電気泳動によって精製し、上述のようにゲルから単離して、EcoRVおよびNotIで切断したDrosophila発現ベクター、pMT/V5−HisA内にクローニングした。この構築物からハイブリッドタンパク質の発現を得る試みは、タンパク質の非常に低い収率をもたらした。この理由で、新しい独自のAfeI部位に挿入する間に、pHC3−1550から除去されたヒトC3シグナル配列を有する構築物が作製された。これを行うために、pHC3−1550を以下の2つのプライマー:HC3SigRemF;AGATCTCCATGGAAGCTTAGCGCTGGGAGTCCCATGTACTCTATCATC(配列番号:10、およびHC3SigRemR:GCGTCCCGCCTTCAACAGCC(配列番号:11)を用いて増幅した。増幅後、断片を上述のように精製して、HindIIIおよびSpeIで切断した。150bpバンドをゲル単離して、同じ酵素で切断したpHC3−1550内にクローニングした。トランスフォーマントからのDNAは、AfeIを用いた切断によってスクリーンングして、すべての陽性クローンをDNA配列決定によって確認した。このプラスミドをpHC3−1550(−sig)と呼んだ。
【0066】
インサートは、AfeI、DraI(プラスミドを断片化するため)、およびNotIを用いた消化によってプラスミドから切除した。消化はゲル上で実施して、5kb断片を上述のように単離した。次にそれをEcoRVおよびNotIによって消化したpMT−Bip/V5−HisA内へ結合した。得られたプラスミドをpMB/HC3−1550と読んだ。
【0067】
第2のハイブリッドタンパク質を生成するためのプラスミド、HC3−1504を以下のように同様の方法で生成した。2つのPCR反応を実施して、コード配列のヒトC3およびCVF部分を得た。最初にpBS−HuC3−2をテンプレートとして、以下のオリゴヌクレオチド:HC3H5−3−F1(TCTGTGTGGCAGACCCCTTCGAGG−配列番号:12)およびHC3H5−3−R1(CGTTACCAATACATATCTTGTTCAGCTTTCCATCC−配列番号:13)をプライマーとして使用した。第2のPCRは、pCVF−FL3Δテンプレートとして、以下のオリゴヌクレオチド:HuCC3H5−3−F2(GGATGGAAAGCTGAACAAGATATGTATTGGTAACG−配列番号:14)、およびHuC3H5−3−R2(CATCCATGACATAGATATCATTACCATCTTG−配列番号:15)をプライマーとして使用した。得られた2つのPCR生成物を、HuC3H5−3−F1およびHuC3H5−3−R2をプライマーとして、2つのPCR断片をテンプレートとして使用してPCR反応で合せた。第2のPCR反応の後、生成物をQiagen PCRクリーンアップキットを使用して精製し、次にNspVを用いて切断して、同じ酵素で切断した、そしてコウシ小腸アルカリホスファターゼも用いて処理したpHC3−1550(−sig)内へクローニングした。得られたクローンをEcoRIで切断して、インサートの向きを決定し、PCR誘発修飾が存在しないことを確認するために配列決定した。得られたプラスミドをpHC3−1504と呼んだ。次にこのプラスミドからのインサートを上述のように単離して、上述のようにpMT−Bip/V5−HisA内にクローニングした。このプラスミドをpMB/HC3−1504と呼んだ。
【0068】
第3の構築物の生成のためのプラスミド、HC3−1348を、HC3−1504に使用したのと同様の方式で構築した。唯一の相違は、2つの突然変異プライマーがHuC3H5−5−1R(GCAACTGTGCGTTATACATTGTCACCACCGAC−配列番号:16)およびHuC3H5−5−2F(GTCGGTGGTGACAATGTATAACGCACAGTTGC−配列番号:17)であったことである。1次PCR反応では、使用したプライマーはHuC3H5−3−1FおよびHuC3H5−5−1Rであり、テンプレートはpBS−HuC3−2であり、これに対して第2の1次PCR反応に使用したプライマーはHuC3H5−5−2FおよびHuC3H5−3−2Rであり、pCVF−FL3Δをテンプレートとして使用した。1次PCRの後、2つの断片を精製して、pHC3−1504の構築で述べたように2次PCR反応のテンプレートとして使用した。2次PCR反応生成物を精製して、NspVで切断し、pHC3−1550内にクローニングして、配列を確認し、インサートを上述のようにpMT−Bip/V5−HisA)内にクローニングした。
【0069】
第4のハイブリッドタンパク質、HC3−1496の生成のためのプラスミドを、以下のような同様の方式で生成した。2つのPCR反応を実施して、コード配列のヒトC3およびCVF部分を得た。最初にpBS−HuC3−2をテンプレートとして、以下のオリゴヌクレオチド:HC3H5−3−F1(TCTGTGTGGCAGACCCCTTCGAGG−配列番号:12)およびHC3H5−4−R1 GAGAAGGCCTGTTCCTTTATCCGGATGGTAGAACCGGGTAC(配列番号:18)をプライマーとして使用した。第2のPCRは、pCVF−FL3Δテンプレートとして、以下のオリゴヌクレオチド:HuCC3H5−4−F2 CCGGTTCTACCATCCGGATAAAGGAACAGGCCTTC(配列番号:19)、およびHuC3H5−3−R2(CATCCATGACATAGATATCATTACCATCTTG−配列番号:20)をプライマーとして使用した。得られた2つのPCR生成物を、HuC3H5−3−F1およびHuC3H5−3−R2をプライマーとして、2つのPCR断片をテンプレートとして使用してPCR反応で合せた。第2のPCR反応の後、生成物をQiagen PCRクリーンアップキットを使用して精製した。次にそれをNspVで切断して、同じ酵素で切断してコウシ小腸アルカリホスファターゼ処理したpHC3−1550(−sig)内へクローニングした。得られたプラスミドをpHC3−1496と呼んだ。次にこのプラスミドからのインサートを上述のように単離して、上述のようにpMT−Bip/V5−HisA内にクローニングした。このプラスミドをpMB/HC3−1496と呼んだ。
【0070】
HC3−1550のC末端46アミノ酸残基がヒトC3配列によって置換された第5のハイブリッドタンパク質、HC3−1550/1617の生成のためのプラスミドを以下で説明する。再び2つのPCR反応を実施して、コード配列のヒトC3およびCVF部分を得た。最初に以下の2つのプライマー;HuC3H5−F1 GGATGCCACTATGTCTATATTGGACATATCC(配列番号:21)、およびHuC3H5−2R1、CCCGATGATGTAGCTGAGTTTATCTTTCGTGGG(配列番号:22)を使用して、pHC3−1550を増幅した。第2のPCRは、pCVF−FL3Δをテンプレートとして、HuC3H5−2F2(CCCACGAAAGATAAACTCAGCTACATCATCGGG−配列番号:23)およびHuC3H5−2−R2(AATTGGAGCTCCACCGCGGTGG−配列番号:24)をプライマーとして使用して実施した。第1のPCRの後、HuC3H5−F1およびHuC3H5−2−R2をプライマーとして、2つのPCR断片をテンプレートとして使用して、断片を第2のPCR反応で合せた。このPCRの後、増幅断片をQiagen PCR精製カラムを使用して生成し、BsrGIおよびNotIで切断して、同じ酵素で切断したpHC3−1550(−sig)内へクローニングした。得られたプラスミドを配列決定して正しい配列を確認した。それをpHC3−1550/1617と呼んだ。インサートを上述のように単離して、上述のようにpMT−Bip/V5−HisA内へクローニングした。このプラスミドをpMB/HC3−1550/1617と呼んだ。
【0071】
一部の場合では、ヒトC3の部分を1を超える部位でCVF配列とさらに交換して、本明細書で示した目的の1つまたは複数で有用な修飾C3を産生した。それゆえCVF特異的配列が1を超える領域に挿入される、または既知の領域が各種の手段によって変異誘発される修飾C3タンパク質が産生される。たとえば因子Bを用いた物理的に安定なコンバターゼの形成に必要な1個または複数の部位に加えて、ヒトC3の因子I開裂部位を変化させることも望ましい。ヒトC3の因子I耐性ミュータントは以前に、Feckeらによって1998年にうまく説明されている(参考としてその全体が本明細書に援用される、Fecke,W.,Farries,T.C.,D’Cruz,L.G.,Napper,C.M.,and Harrison,R.A.(1998)Xenotransplantation 5:29−34)。たとえば特異的CVF機能に必要な選択配列の置換により、CVF機能の特異的なサブセットがそれぞれ存在または除去された新規なC3誘導体を組み換えることができる(たとえば安定なC3コンバターゼを形成するが、C5を開裂しないC3誘導体またはCVF誘導体)。C5を活性化しない修飾C3分子は、炎症誘発性C5aアナフィラトキシンの産生を防止するため、療法のための特別の利点を有することがある。
【0072】
(実施例2)
修飾ヒトC3タンパク質の発現
タンパク質は、Drosophila S2細胞系において、タンパク質分泌のためのDrosophila Bipシグナル配列を使用して生成した。簡単には、プラスミドpMB/HC3−1550、pMB/HC3−1504、pMB/HC3−1496、pMB/HC3−1550/1617、およびpMB/HC3−1348をDrosophila S2細胞内に、ChenおよびOkayama(参考としてその全体が本明細書に援用される、Chen,C.,and Okayama,H.(1987) Mol.Cell.Biol.7(8),2745−2752)のリン酸カルシウム法を使用して形質移入した。S2細胞は、発現プラスミドとpCoBlastの混合物を19:1(w:w)の比で使用して形質移入した。形質移入後、ブラストサイジン(25μg/mL)を使用して、両方のプラスミドを含有する細胞を選択した。発現では、形質移入細胞の培養物1リットルを無血清培地(Hi−FiveおよびL−グルタミン)で、ブラストサイジンの非存在下で培養した。細胞が5x10細胞/mLの密度に達したとき、最終濃度25μMまでのCuSOの添加によって、組換えタンパク質の生成を誘発した。培養物に4〜5日に渡って組換えタンパク質を発現させた。次にANX、Sephacryl H−300、およびCM−FFクロマトグラフィーの併用により、培地からハイブリッドタンパク質を精製した。
【0073】
C3遺伝子のクローニングの方法のために、クローニングベクターによってコードされた、ヒトC3のN末端に対してN末端側である複数のアミノ酸(約19)がある。これらの余分なアミノ酸は、タンパク質の活性に影響を及ぼさないため、悪影響なしに除去することができる。一部の場合では、最終構築物を発現ベクター内にクローニングするために必要な制限部位のアーチファクトである、少なくとも2つのアミノ酸があることが好ましい。各種の実施形態において、ヒトC3の未変性シグナル配列はもちろんのこと、新生ポリペプチドの小胞体への進入を指示するのに有効な他の任意のシグナル配列を含む、各種のシグナル配列を使用できる。
【0074】
使用できる他の発現系は、これに限定されるわけではないが:Sf9またはHiFive細胞のバキュロウィルス感染(他の昆虫発現系)、CHO細胞、COS−7細胞(哺乳類発現系)、E.coli、BHK、HEK293細胞、およびHanselula酵母発現系を含む各種の酵母発現系を含む。
【0075】
(実施例3)
修飾ヒト補体C3タンパク質の活性測定の結果
精製した修飾ヒトC3タンパク質ハイブリッドに、以下のように多数の機能分析を受けさせた。
【0076】
補体枯渇:
本アッセイは、タンパク質がヒト(または他の)血清中の補体を枯渇する能力を測定する。アッセイは2ステップで実施した。第1のステップでは、興味のあるタンパク質を通常は連続希釈によって、緩衝液中で所望の濃度まで希釈した(通例、ナノグラム/マイクロリットル未満から約320ng/マイクロリットルまたはアッセイで使用する10マイクロリットル中3.2μg)。次に希釈したタンパク質の分割量10μLを未希釈血清と混合する。混合物を37℃で3時間インキュベートして、C3コンバターゼを形成することによってタンパク質に補体を活性化させた。形成されたコンバターゼは次に血清のC3を活性化できた。次に、残っている補体活性の量を測定するために、血清を希釈して、血清中に存在するときに補体によって容易に溶解される抗体感作ヒツジ赤血球と混合した。この反応を30分間進行させて、混合物を冷緩衝液中で希釈することによって停止させた。細胞を遠心分離にかけ、放出されたヘモグロビンを測定することによって、溶解細胞を定量した。結果を図4および図9に示す。
【0077】
予想された通り、非常に少量のCVFがヒト血清中の補体を完全に枯渇することができた。タンパク質HC3−1348およびHC3−1496のどちらかの800ngが、ヒト血清10μLを完全に枯渇することができた。他のハイブリッドタンパク質はより活性が低く、補体のヒト血清10μLを部分的に枯渇させるためにタンパク質約3〜4μgを必要とした。1つのハイブリッドタンパク質HC3−1550/1617は明らかに、試験した濃度では補体を枯渇することができなかった。
【0078】
タンパク質の2つ(HC3−1550およびHC3−1348)が実際にモルモット血清中の補体を枯渇させることができなかったという観察は予想されなかったが、この活性はCVFの活性よりも明らかに低かった。特に、好ましい実施形態HC3−1550、HC3−1504、HC3−1496およびHC3−1348はすべて、ヒト血清中の補体を枯渇することができた。
【0079】
因子B活性化アッセイ
これは、ハイブリッドタンパク質が因子Bを活性化して、C3/C5コンバターゼを形成する能力を測定するアッセイであった。コンバターゼ形成は、因子BのBbおよびBaへの開裂の機能として測定した。アッセイでは、精製したハイブリッドタンパク質は、3倍過剰の因子Bおよび因子D(すべて高度に精製)によって、37℃にてマグネシウムの存在下でインキュベートした。各種の時間にて、反応物の分割量を取り出し、マグネシウムをキレートするEDTAを添加することによって反応を停止させた。反応生成物を非還元性SDSポリアクリルアミドゲルに流して、タンパク質はクマシーブルーで染色された。変換された因子Bの量は、ゲルを専用コンピュータプログラム内にスキャンして、因子BおよびBbバンド内のタンパク質の量を測定することによって定量した。
【0080】
図5および10の結果は、因子Bが2つの理由で、ヒトC3の存在下で非常に迅速に活性化されたことを示す。ヒトC3は、因子Bを非常に迅速に結合することができ、これにより因子Dによる開裂が可能になる。しかしながら得られたコンバターゼは非常に不安定であり、迅速に分解して、さらに因子Bを結合するためにC3bを利用できるようにする。CVFの存在下での反応ははるかに低速であり、これは因子Bに対するCVFのより低い親和性、およびCVF含有コンバターゼのより高い安定性の結果であった。HC3−1504またはHC3−1496の存在下での因子Bの変換は、CVFときわめて似ている。HC3−1550およびHC3 1550/1617は、因子BをCVFよりもはるかに迅速に、しかしC3bよりも低速に変換することができた。これはおそらく、コンバターゼがCVF含有酵素よりも安定でないが、C3b含有コンバターゼよりも安定であることの結果である。加えてHC3−1550による因子Bの初期結合は、CVFによる結合よりもはるかに迅速であると思われる。最後に、HC3−1348は、因子Bの開裂を、議論した他のタンパク質よりも巧みに補助しない。これはおそらく、得られたコンバターゼC3b含有酵素よりも安定であることと、因子Bの初期結合がより迅速でないことの組合せである。
【0081】

C3コンバターゼ活性アッセイ
本アッセイは、C3aペプチドを開裂させることによって、ハイブリッドタンパク質を含有するC3/C5コンバターゼがヒトC3を活性化する活性を測定する。このアッセイを実施するために、コンバターゼを上述のように形成して、反応をEDTAの添加によって停止させた。次にコンバターゼをヒトC3と混合して、反応物を37℃にてインキュベートした。指示した時間に分割量を取り出して、SDSおよびβ−メルカプトエタノールを含有するゲル装填緩衝液と混合して反応を停止させた。SDSはタンパク質を変性させて、β−メルカプトエタノールは、タンパク質中のシステイン間のジスルフィド結合を還元する。還元条件下での電気泳動の後、ゲルをクマシーブルー染料で染色して、C3α鎖およびC3α’鎖の相対量を上述のように定量した。各反応で同量のコンバターゼを使用するように注意した。
【0082】
図6および図11は、このアッセイでCVFおよびHC3−1550の両者がヒトC3をほぼ同じ速度で変換できることを示している。HC3−1504は、CVFよりも著しく低速であるが、1時間以内に存在するC3の量を完全に変換できる。HC3−1348およびHC3−1496は、CVFよりも高速でC3を変換するように見えたが、HC3−1550/1617は、C3を最初は高速で変換して、約10分後には低速になるように見えた。この現象をさらに調査するために、HC3−1504を除くすべてのタンパク質を使用して、C3変換アッセイを反復した。反応速度を低下させるために、存在するコンバターゼの量を5分の1に減少させた。これらの結果を図7および図11のはめ込み図に示す。本アッセイでは、HC3−1348およびHC3−1496がCVFよりも著しく効率的であるコンバターゼを形成することが明らかであった。HC3−1550/1617は、最初に活性であるが、約10分後にはほとんど不活性になるように見えるコンバターゼを形成した。
【0083】

C5変換アッセイ
C5変換活性のアッセイは本質的に、参考としてその全体が本明細書に援用されるPetrella et al.,(1987)J.Immunol.Methods 104(1−2),159−172によって述べられているように実施した。本アッセイでは、C5コンバターゼは合計3μgのタンパク質を使用して上述のように形成した。コンバターゼ形成の後、最終濃度5mMまでのEDTAの添加によって反応を停止させた。次にこの反応物5μLを、PBS中にC57μgを含有する反応物25μLに添加した。反応物を37℃で24時間インキュベートし、Laemmliゲル装填緩衝液7μLの添加と、それに続く5分間の煮沸によって反応を停止させた。反応生成物は、SDS−PAGEを還元することによって分離し、ゲルをクマシーブルー染料で染色して、C5α鎖およびC5α’鎖の相対量を上述のように定量した。現在のタンパク質のいずれも、活性C5コンバターゼを形成できなかった。
【0084】
因子HおよびIによるタンパク質の分解のアッセイを本質的に、OranおよびIsenman(参考としてその全体が本明細書に援用される、(1999)J.Biol.Chem.274(8),5120−5130)の方法に従って実施した。本方法では、各タンパク質12μgを因子H4.3μgおよび因子I 0.3μgによって、37℃にて全量60μLでインキュベートした。指示した時間に、分割量10μLを取り出して、5μL 5xLaemliゲル装填緩衝液の添加により反応を停止させた。反応生成物をSDS−PAGEによって、還元条件下の4〜20%勾配ゲルで分離した。これらのデータは、すべてのタンパク質が、因子Hの存在下で、因子Iによる消化に対して部分的に耐性であることを示している。同様のアッセイでは、C3bは0時点にてほぼ完全に消化された。
【0085】
(実施例4)
補体を局所的または全身的に枯渇させる方法
本明細書で開示した方法によって生成した修飾ヒト補体C3タンパク質を使用して、以下のように補体を局所的または全身的に枯渇させる:
局所枯渇は、修飾C3タンパク質が臓器、組織、空洞に、または経皮的に局所投与されるときに作用する。これはその範囲の補体の一時的および完全な枯渇を引き起こす。あるいは局所枯渇は、修飾C3に化学的に付着したときにそれを特定の組織、疾患部位、または感染細胞に局在化させて、その範囲の補体の連続的枯渇を引き起こす、特異的モノクローナル抗体を使用できる。
【0086】
全身枯渇は、修飾C3タンパク質が全身的に、たとえば静脈内または腹腔内に投与されたときに作用する。これは全身的に補体の一時的および完全な枯渇を引き起こす。この方法は、再潅流傷害、冠状動脈心臓手術、移植および/または全身性疾患に、特に症状の再発または間欠的活性の間に使用できる。
【0087】
このような各場合および具体的な疾患状態において使用される修飾ヒトC3タンパク質の最も好都合な品質の一部は、かなり変化しうる。たとえばたとえば補体の即時であるが一時的な除去が望ましい場合、より短い血漿半減期および/または安定性を有するが、高い補体活性化活性が好ましい。慢性疾患を処置する場合、低いまたは停滞した活性を伴っても、長い血漿半減期および/または高い安定性が好ましい。さらにC5を活性化しない修飾C3分子は、炎症誘発性C5aアナフィラトキシンの産生を防止するため、ある治療にとって特に好都合でありうる。
【0088】
(実施例5)
再潅流傷害の処置方法
再潅流傷害の例は、閉塞血管の再開後(たとえば心臓麻痺または虚血性卒中の後)の組織損傷、および移植臓器のレシピエントの血液による再潅流である。詰まった冠状動脈または臓器移植後の再潅流では、移植体に再潅流させる前に、または閉塞血管の開通前に多くの場合で補体を枯渇させることが望ましい。補体活性化を活性化する能力は、それが引き起こす組織損傷を回避できるため、組織損傷の唯一残存している主な源は、酸素欠乏である。通例、再潅流の間の補体活性化による組織損傷は、酸素欠乏による組織損傷の2倍大きい−すなわち組織損傷のほぼ2/3が補体活性化に起因するのに対して、1/3は酸素欠乏に起因する。それゆえ再潅流傷害は、本発明の実施形態で可能であるように、再潅流の前に補体を所望させることによって大幅に減少させることができる。この場合、最高活性コンバターゼを使用することと、高い用量を使用することが好ましい。コンバターゼの安定性は、慢性疾患に対するほど重要ではない。
【0089】
一般論として、本発明のこれらの実施形態の方法は、修飾C3タンパク質の有効量を全身的に投与するステップと、補体の枯渇に十分な時間に渡って放置するステップと、次に手術を実施するステップとを含む。
【0090】
(実施例6)
遺伝子治療の有効性および/または効率を上昇させる方法
本方法は、体内での有用なウィルスの生存の延長を補助するために、補体の枯渇に依存している。補体は遺伝子治療で使用したあるウィルスベクターの本体からの除去を補助することが見出されているため、遺伝子治療ベクターの投与前に循環する補体の量を減少させることが望ましい。このことは、使用されている遺伝子治療の種類に応じて局所的にまたは全身的に実施できる。
【0091】
方法は、修飾C3タンパク質の有効量を全身的に、または遺伝子治療が投与されている局所範囲に投与するステップと、補体の枯渇のための時間に渡って放置するステップと、次に遺伝子治療を投与するステップとを含む。
【0092】
(実施例7)
治療剤(たとえば化学治療剤)または診断剤の送達を向上させる方法
治療薬が投与される範囲への血流を増加させるために、修飾C3タンパク質は、選択した組織への親和性を持つモノクローナル抗体に化学的に結合される。本実施例では、修飾C3は、高い活性のC3/C5コンバターゼを形成するC3である。修飾C3/抗体は、組織へ標的化されて、領域に局所補体活性化を生じさせて、補体活性化のために血管透過性を引き起こす。新しい非活性化補体が標的に到着する血液によって連続的に供給されるため、血管透過性は、活性コンバターゼ/抗体複合体が標的に結合されている限り継続する。
【0093】
肺癌の処置の間の本方法の使用では、肺特異的抗原を認識するモノクローナル抗体を使用して、修飾C3タンパク質−モノクローナル抗体ハイブリッドが肺癌患者に投与される。抗体は、肺組織に結合して、補体を局所的に活性化する。これは肺における血管透過性を向上させて、化学治療剤をより効率的および効果的に肺癌に作用させる。上述のように、本方法は補体の連続局所活性化を可能にして、それは血管透過性の持続的な局所上昇を可能にする。
【0094】
(実施例8)
関節リウマチ、狼瘡、および他の自己免疫または免疫複合疾患を処置する方法
本方法は、関節リウマチの例を局所範囲における補体活性化から疼痛および炎症が発生する複数の状態の1つとして使用する。処置のために、修飾C3タンパク質が全身的または局所的に投与されて、補体を枯渇させることによって、補体反応/活性化を低下させる。これは疾患の症状および疾患の進行を低減させることができる。特に疾患症状の悪化の発現があるときには、補体系の活性の長期低下と組合せて間欠的枯渇を有することも有益でありうる。さらに本方法は、循環免疫複合体を伴う他の疾患、たとえば狼瘡および他の自己免疫疾患によって使用できる。
【0095】
たとえば補体活性化自己抗体が生成され、体内の自分のタンパク質に対して向けられたとき、疾患効果は主に、補体活性化および組織損傷を引き起こす抗体の標的への結合はもちろんのこと、正常機能への他の干渉によるものである。重症筋無力症は、この種の疾患の例である。自己抗体は、神経が筋肉に接触する神経筋終板に結合する。補体は活性化されて、神経伝達物質を遮断して、麻痺を生じる。本発明の本実施形態の方法を利用すると、補体の全身枯渇は、連続的に、または疾患の悪化の間のどちらかで、症状およびその進行を著しく低減することができる。
【0096】
(実施例9)
修飾C3タンパク質を選択する方法
各種の修飾C3タンパク質は、各種の疾患、および処置方法に有用である。それゆえ本発明の実施形態の修飾C3タンパク質の機能品質を解析して、それに従ってそれらを使用することが有用である。以下の方法を、実施例2で生成された精製修飾C3タンパク質の機能を分析するために使用する。本明細書で述べる方法は、当業者に既知の他の方法と同様に使用できる。
【0097】
コンバターゼ活性を決定するアッセイ。以下で触れる特異性アッセイに加えて、血清補体活性の枯渇およびバイスタンダー溶解の誘発に関する2つの溶血アッセイをスクリーニングに利用できる。
【0098】
補体枯渇アッセイ。修飾C3タンパク質の抗補体(補体消費)活性を測定するために、少量のヒト血清をCVFまたはハイブリッドタンパク質によって、3時間またはそれより短い期間に渡り37℃にて、タンパク質濃度5μg/mLでインキュベートして、タンパク質に補体を枯渇させる。次に残存する補体溶血活性を感作ヒツジ赤血球を使用して、Cochrane et al.,1970(参考としてその全体が本明細書に援用される、Cochrane et al.,1970,J.Immunol 117:630−4)の方法を含む当業者に既知の方法を使用し、測定する。
【0099】
バイスタンダー溶解アッセイ。バイスタンダー溶解アッセイは、37℃の正常モルモット血清20μLを濃度5μg/mLのCVFまたはハイブリッドタンパク質20μLおよびモルモット赤血球20μL(5x10/mL)と共にインキュベートすることによって実施する。CVFまたはハイブリッドタンパク質は、赤血球の溶解を引き起こすC5の流体相活性化に関与する。それゆえ上澄み中のヘモグロビンの存在はC5活性化を示す。反応を37℃で30分間インキュベートして、冷緩衝液1mLの添加によって停止させる。遠心分離の後、放出されたヘモグロビンを分光光度法で測定する(参考としてその全体が本明細書に援用される、Vogel,C.W.,and Muller−Eberhard,H.J.(1984)J.Immunol.Methods 73(1),203−220)。
【0100】
C3コンバターゼ形成/因子B活性化。因子BのBaおよびBbへの開裂を検出するために、ハイブリッドタンパク質(1μMにて)は、最長24時間まで3倍モル過剰の因子Bおよび因子D0.5μMの存在下で、MgClの存在下で37℃にてインキュベートする。因子Bの消失および開裂生成物BaおよびBbの出現を監視するために、反応混合物を非還元条件下にて7.5%(w/v)SDSポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって分析する。必要な場合、次のウェスタンブロットを実施してBaおよびBb開裂断片を検出できる。対照は、未変性CVF、pro−CVF、コブラC3、iC3、ヒトC3、iC3、C3b、およびEDTAを含みうる(参考としてその全体が本明細書に援用される、Vogel and Muller−Eberhard,1982,J.Biol.Chem.257:8292−9)。
【0101】
C3開裂活性。C3開裂活性を検査するために、C3コンバターゼは、「C3コンバターゼ形成/因子B活性化」を参照して、ハイブリッドタンパク質ならびにヒト因子Bおよび因子Dを使用して、本発明で述べたように予備形成する。コンバターゼ形成をEDTAの添加によって停止して、精製ヒトC3を添加する。反応混合物は、37℃で1時間または他の任意の適切な期間に渡ってインキュベートする。分割量を取り、ただちに氷水浴に移して、さらなるC3活性化を停止させる。還元条件下で7.5%(w/v)SDSポリアクリルアミドゲルに反応生成物を流すことによって、C3α鎖の消失およびC3α’鎖の出現によってC3開裂を監視する。必要な場合、抗C3抗血清を用いた次のウェスタンブロットを実施する。対照は、未変性CVF、pro−CVF、ならびにヒトおよびコブラiC3またはC3bを含む(参考としてその全体が本明細書に援用される、Vogel and Muller−Eberhard,1982,J.Biol.Chem.257:8292−9)。
【0102】
C5開裂アッセイ。C5開裂アッセイは、精製ヒトC5を基質として使用して、C3開裂アッセイについて上述したように実施する(参考としてその全体が本明細書に援用される、Petrella et al.,1987,J.Immunol.164:4742−4751)。たとえば図12を参照。
【0103】
コンバターゼ安定性のアッセイ。上述のようにハイブリッドタンパク質および精製ヒト因子Bおよび因子Dを使用して、2分子コンバターゼを予備形成する。EDTAの添加後、混合物を37℃でインキュベートして、分割量を24時間または適切ならばより短い期間に渡って取り出して、各分割量をただちに氷水浴に入れる。次にC3コンバターゼ活性を上述のC3開裂アッセイによって決定する。時間に対するC3開裂活性の低下から、各種のコンバターゼの自発的な崩壊解離の半減期を計算する。本アッセイのために不十分な量のハイブリッドタンパク質しか入手できない場合、酵素活性を蛍光発生トリペプチドt−ブチルオキシ−カルボニル−ロイシル−グリシル−アルギニル−アミノメチルクマリンを使用して決定する(参考としてその全体が本明細書に援用される、Caporale,L.H.,Gabaer,S.S.,Kell,W.,and Gotze,O.1981 J.Immunol.126(5),1963−1965)。
【0104】
因子H結合のアッセイ。ハイブリッドタンパク質への因子H結合は、ELISAアッセイを使用して決定する。ハイブリッドタンパク質はマイクロタイタープレートに吸収される。オボアルブミンおよびBSAを用いた遮断の後、精製ヒト因子Hを10μg/mLにて添加して、室温にて30分間インキュベートする。洗浄後、結合した因子Hを抗因子H抗体によって、続いて適切なホスファターゼ結合2次抗体によって検出する。因子Hがタンパク質に結合できる場合、適切な色変化が観察される。対照は、未変性CVF、pro−CVF、コブラおよびヒトC3はもちろんのこと、コブラおよびヒトiC3も含みうる(参考としてその全体が本明細書に援用される、Alsenz et al.,1992,Dev.Comp.Immunol.16:63−76)。
【0105】
因子I開裂のアッセイ。ハイブリッドタンパク質は、精製ヒト因子Hおよび因子Iを用いて37℃で数時間インキュベートする。反応物を次の4〜20%(w/v)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって還元条件下で分析する。因子I活性は、105kDaα’鎖バンドの強度の低下、および分子量37および40kDaのバンドの出現によって決定する。必要ならば、次のウェスタンブロットは、抗CVFおよび/または抗C3抗体を使用して実施する。あるいはハイブリッドタンパク質は、ヨードジェン法(Fraker and Speck,1978)を使用して125Iによって標識する。開裂生成物は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の後に、オートラジオグラフィーによって検出する(参考としてその全体が本明細書に援用される、Lambris et al.,1996,J.Immunol.156:4821−32)。たとえば図12を参照。
【0106】
免疫原性のアッセイ。これに限定されるわけではないが、皮膚試験、そのようなトランスジェニック動物で産生された血清を使用するRIA試験を含む、試験管内法でヒト免疫系を有するように遺伝子組換えされたトランスジェニック動物における修飾C3タンパク質の試験、放射性免疫沈降アッセイ、ELISAアッセイ、電気化学発光、および表面プラスモン共鳴を含む、各種の方法を使用して、免疫原性を分析することができる。加えて一部のタンパク質のマウス、ラットまたはモルモット類似物質を、マウス、ラットまたはモルモットC3およびCVF配列のどれかを使用して構築する。これらを適切な動物に注入して、血清を収集し、ハイブリッドタンパク質に対する抗体の生成について分析する。
【0107】
(実施例10)
血漿半減期を測定する方法
これに限定されるわけではないが、免疫系によって生成される特異的抗体、血清内で循環するプロテアーゼ、非特異的免疫反応、および因子HおよびIなど特異的調節因子を含む、修飾C3タンパク質の血漿半減期に影響を及ぼす多くの因子がある。修飾C3タンパク質を活性化させて、次に補体を枯渇できるようにするために、好ましいC3タンパク質は、ヒト血漿内で少なくとも最小限の量の時間に渡って持続するであろう。それゆえ修飾C3タンパク質の血漿半減期を確認して、それらがある疾患の処置にどのように有用であるかを判定することは興味深い。
【0108】
本方法は、3つの方法で血漿中の修飾C3タンパク質の安定性を測定する。しかしながら方法の1つまたはすべてはもちろんのこと、当業者に既知の他の任意の方法も使用できることが理解されるはずである。
【0109】
第1の方法は、試験管内での血清の安定性を測定する。ヒト血清は患者の全血から単離および分離する。各種の濃度の修飾C3タンパク質の分割量を血清に添加し、インキュベートする。血清の分割量を各種の時間間隔で取り出して、持続する修飾C3の量をC3に対して特異的であるモノクローナル抗体を使用してELISAアッセイで確認する。
【0110】
第2の方法は、ヒト化動物における血清の安定性の確認を可能にする。修飾C3タンパク質を動物に投与して、血液サンプルを時間と共に取り出す。修飾C3タンパク質の量は、ELISAアッセイでタンパク質に対する特異的抗体を使用して同定する。
【0111】
第3の方法は、ヒト患者での安定性の確認を可能にする。修飾C3を患者に投与して、血液サンプルを時間と共に取り出す。修飾C3タンパク質の量はELISAアッセイを使用して同定する。これは修飾C3タンパク質が患者の血漿中を循環する期間の明確な表示を与えるであろう。
【0112】
一部の実施形態において、使用した抗体は、修飾C3に対して特異的である必要はない。たとえば正常なC3を認識する抗体は、ELISA手順で修飾C3を同定するために試験および使用できる。
【0113】
(実施例11)
表面プラスモン共鳴を使用して測定されるような修飾ヒト補体C3タンパク質のC3コンバターゼ形成
表2は、補体タンパク質のC3、CVF、および組換えヒトC3/CVFタンパク質への相対結合を示す。すべての場合で、数字が大きいほどタンパク質相互作用が強いことを示す。タンパク質(C3bなど)をBIACORECHIPTMに結合させて、次に補体因子と接触させる。チップに結合された(それゆえ修飾C3タンパク質に結合された)補体因子それぞれの量は、表面プラスモン共鳴によって決定した。結果は:1)C5を開裂できるコンバターゼを形成できないことと一致して、C5に結合した組換えタンパク質のどちらも示さず、2)両方のタンパク質は因子Hに結合したが、CVFは結合せず、因子Hは、C3b,Bbコンバターゼ複合体を解離させて、開裂によってC3bを不活性化するために第2の補体タンパク質、因子Iを向けることができる調節タンパク質の1つであることと、3)因子Dおよびマグネシウムの存在下での因子Bへのタンパク質の親和性は、タンパク質がC3コンバターゼを形成する速度(因子B開裂を仲介するその能力によって測定された−図10を参照)にほぼ比例したことを示した。HC3−1550およびHC3−1348の両方を開裂させたが、C3bよりも低速であった。CVFはHまたはI部位を持たないため、CVFはHまたはIによって全く開裂されない。組換えCVFの2鎖分子は2または3個のI部位を有するが、因子Iによってなお開裂されないことは、興味深い。
【0114】
表2:補体タンパク質のC3、CVF、および組換えヒトC3/CVFタンパク質への相対結合
【0115】
【表2】

表3は、表面プラスモン共鳴によってBIACORE装置で25℃にて測定した、修飾ヒト補体C3タンパク質によって形成されたC3コンバターゼの安定性を示す。結果は、両方のタンパク質が実質的にC3b含有コンバターゼよりも安定であるC3コンバターゼを形成できることを示した。表は、HC3−1348含有コンバターゼが実際にCVF含有酵素よりも安定であることも示している。これらの結果は、CVFが37℃にて7時間の半減期を有し、C3bが37℃にて1.5分間の半減期を有することを示した、より高温での半減期の他の測定と一致している。
【0116】
【表3】

(実施例12)
修飾ヒト補体C3タンパク質の因子B開裂
図10の因子B開裂のグラフは、修飾ヒト補体C3bタンパク質がマグネシウムイオンおよび因子Dの存在下で因子Bの開裂を仲介する能力の時間経過を示す。これはタンパク質がC3/C5コンバターゼを形成する能力を測定するのに使用できる。本アッセイでは、それが因子Dおよびマグネシウムの存在下で因子Bを非常に効率的に結合する(実施例11のデータを参照)ことと、得られた複合体が非常に安定であることの両方のために、C3bがコンバターゼを非常に効率的に形成することは注目に値した。CVF、HC3−1496およびHC3−1504はすべてコンバターゼをほぼ同じ速度で形成したが、HC3−1550およびHC3−1550/1617は、そのコンバターゼを形成する能力がC3bとCVFとの中間である。HC3−1348は非常に低速で因子Bを結合する。これはいったん形成されたコンバターゼより長い半減期と、因子Bへのハイブリッドタンパク質のより低い親和性との組合せによって最も確からしく説明される。
【0117】
(実施例13)
修飾ヒト補体C3タンパク質のC3開裂
図11は、コンバターゼがC3を開裂する能力を示し、開裂反応の時間経過を示す。はめ込み図は、主グラフで使用したコンバターゼの20%で実施した時間経過である。結果は、CVFおよびHC3−1550がC3開裂にてほぼ等しく効率的であるコンバターゼを形成したが、HC3−1348およびHC3−1496はどちらもC3の開裂でCVFよりも約5倍効率的であるコンバターゼを形成したことを示している。HC3−1550/1617含有コンバターゼは非常に不安定であるように見えたが、約10分後にはC3開裂を補助しなかったことは興味深い。
【0118】
(実施例14)
修飾ヒト補体C3タンパク質の補体枯渇
図9の補体枯渇チャートのデータは、HC3−1550/1617を除くすべてのタンパク質が、非常に異なる効率であるが補体を枯渇できたことを示している。HC3−1550およびHC3−1504はどちらも補体の枯渇ではきわめて非効率的であったが、HC3−1496およびHC3−1348は、天然または組換えCVFと全く同様というわけではないが、補体をきわめて効率的に枯渇することができた。以前にHC3−1348を、前出願ではHC3−1325と呼んだが、置換マッピングは次に、置換が1325ではなくて1348であることを示している。
【0119】
結論として、HC3−1496は、それのみがHC3−1504よりも長いインサート8アミノ酸を有しているが、補体枯渇およびC3開裂に関しては非常にHC3−1348と似たように、因子B開裂に関してはHC3−1504と似たように作用するため、興味深いタンパク質である。HC3−1496はHC3−1504またはCVFと同様にコンバターゼを形成するが、得られたコンバターゼはC3の開裂でより活性が高い。
【0120】
HC31550/1617は、1550からC3端までの領域をCVF領域と置換して、次に最後の46アミノ酸を除去して、それらをC3と置換することによって作製した。このキメラ分子は補体枯渇を示さず、HC3−1550と同様にC3コンバターゼを形成して、形成されたC3コンバターゼはHC3−550とほぼ同じくらい活性であったが、明らかにより短い半減期を有していた。
【0121】
(実施例15)
修飾C3タンパク質の変異形を生成する方法
好都合な品質を有する修飾C3タンパク質の変異形が生成される。好都合なとは、変異形がこれに限定されるわけではないが:C3コンバターゼ活性、血清補体除去、因子B結合、C3の開裂、Bbの結合およびC3の結合を含む、タンパク質の1つまたは複数の活性を向上させることを意味する。変異形は各領域に1つまたは複数の突然変異体を含むことが可能であり、1つまたは複数のアミノ酸を含むことができる。一部の特異的変異形を以下に述べる:
C末端がC3コンバターゼの安定化に関与しているため、突然変異は任意の修飾C3タンパク質のC末端(aa1617の後)に生成される。突然変異は挿入、欠失、および置換でありうる。しかしながら突然変異は好ましくは置換である。突然変異はC3コンバターゼを安定化する。C末端における突然変異の例は、これに限定されるわけではないが:位置1633、1654、および1658における突然変異を含む。非保存的変異は保存的変異と同様に、形態に影響するアミノ酸変化に加えて、実施形態に含まれる。しかしながら好ましくは、突然変異は、非保存的アミノ酸変化を生じる。
【0122】
コンバターゼの活性の大きな変化の原因と思われる1496〜1504(8アミノ酸残基)のスパンにおいて、CVFとヒトC3との間には3つの変化がある。それゆえ修飾C3タンパク質のいずれかの位置1496と1504との間には、C3開裂および/または血清の補体枯渇におけるコンバターゼの活性上昇を引き起こす突然片を含む突然変異が含まれている。突然変異は、その領域内の1つまたは複数のアミノ酸に変化できる。好ましくは、突然変異はその領域での1つまたは複数のアミノ酸の置換、特に非保存的アミノ酸変化を生じる突然変異である。
【0123】
タンパク質が因子Bを結合する能力(特にC3bおよび因子Bが結合する能力)を修飾する、任意の修飾C3タンパク質における位置1348と1496との間の突然変異が生成され、好ましくは修飾が因子Bに結合する能力を向上させる。CVFからの領域全体がC3に交換され、またはその反対も同様である。含まれるさらなる突然変異がアミノ酸置換を生じさせる。さらに詳細には、CVFおよびC3については1367−1379の領域が交換され、この領域内の特異的アミノ酸は置換される。
【0124】
配列は、Bbの結合または標的C3分子の結合のどちらかから、C3開裂のC3コンバターゼ活性に関与する、CVFにおける1550付近の領域およびC3の1570−1584の領域の配列において変化する。CVF/コブラC3置換を使用すると、はるかに低いC3開裂の活性を持つタンパク質を生じる一連の4アミノ酸残基が同定された(CVF配列ナンバリングに従ってナンバリングされたQ1550G、E1554R、P1556AおよびR1557Q位置)。したがって変異形は、修飾C3タンパク質のC3開裂でのC3コンバターゼの活性向上を生じる位置1570−1584のアミノ酸にて生成される。変異形は好ましくは、その領域の1つまたは複数のアミノ酸のアミノ酸置換である。
【0125】
上述した各種の方法および技法は、本発明を実施する多数の方法を提供する。もちろん、説明された必ずしもすべての目的および利点が本明細書で述べた任意の詳細な実施形態に従って実現されないことが理解されるはずである。それゆえたとえば、当業者は、本明細書で教示または示唆できる他の目的または利点を必ずしも達成することなく、方法が本明細書で教示した1つの利点または利点の群を達成または最適化する方法で実施できることを認識するであろう。
【0126】
さらに当業者は、異なる実施形態から各種の特徴の互換性を認識するであろう。同様に上述した各種の特徴およびステップは、そのような特徴およびステップそれぞれの他の既知の同等物と同様に、本明細書に述べた原理に従って方法を実施するために当業者が組合せおよび/または交換することができる。本明細書で引用した各特許、文献引用などは、参考としてその全体が本明細書に援用される。
【0127】
本発明は一部の実施形態および実施例の状況で開示されているが、当業者によって、本発明が特に開示された実施形態を超えて、他の代わりの実施形態および/または用途ならびにその明らかな改良および同等物に及ぶことが理解されるはずである。したがって本発明は、本明細書の好ましい実施形態の具体的な開示によって制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】斜線部分が成熟タンパク質中に存在する、C3およびCVFの鎖構造を示す。
【図2】元のCVF/コブラC3ハイブリッドタンパク質のマップを示し、5つのハイブリッドタンパク質それぞれにおいてコブラC3配列と置換されたCVFの領域を示す。
【図3A】CVF1のcDNAおよび誘導アミノ酸配列(配列番号:3および4)を示す。α−、γ−、およびβ−鎖のNH末端およびC末端、機能的に重要な領域、および既知のリガンド結合部位を示す。アミノ酸残基のナンバリングは、pro−CVF1分子のNH末端にて開始する。
【図3B】CVF1のcDNAおよび誘導アミノ酸配列(配列番号:3および4)を示す。α−、γ−、およびβ−鎖のNH末端およびC末端、機能的に重要な領域、および既知のリガンド結合部位を示す。アミノ酸残基のナンバリングは、pro−CVF1分子のNH末端にて開始する。
【図3C】CVF1のcDNAおよび誘導アミノ酸配列(配列番号:3および4)を示す。α−、γ−、およびβ−鎖のNH末端およびC末端、機能的に重要な領域、および既知のリガンド結合部位を示す。アミノ酸残基のナンバリングは、pro−CVF1分子のNH末端にて開始する。
【図3D】CVF1のcDNAおよび誘導アミノ酸配列(配列番号:3および4)を示す。α−、γ−、およびβ−鎖のNH末端およびC末端、機能的に重要な領域、および既知のリガンド結合部位を示す。アミノ酸残基のナンバリングは、pro−CVF1分子のNH末端にて開始する。
【図3E】CVF1のcDNAおよび誘導アミノ酸配列(配列番号:3および4)を示す。α−、γ−、およびβ−鎖のNH末端およびC末端、機能的に重要な領域、および既知のリガンド結合部位を示す。アミノ酸残基のナンバリングは、pro−CVF1分子のNH末端にて開始する。
【図3F】CVF1のcDNAおよび誘導アミノ酸配列(配列番号:3および4)を示す。α−、γ−、およびβ−鎖のNH末端およびC末端、機能的に重要な領域、および既知のリガンド結合部位を示す。アミノ酸残基のナンバリングは、pro−CVF1分子のNH末端にて開始する。
【図3G】CVF1のcDNAおよび誘導アミノ酸配列(配列番号:3および4)を示す。α−、γ−、およびβ−鎖のNH末端およびC末端、機能的に重要な領域、および既知のリガンド結合部位を示す。アミノ酸残基のナンバリングは、pro−CVF1分子のNH末端にて開始する。
【図4】CVFと比較した、3つの修飾ヒトC3タンパク質(HC3−1348、HC3−1504、およびHC3−1550)のヒト血清における補体枯渇アッセイの結果を示す。
【図5】CVFおよびC3bと比較して修飾ヒトC3タンパク質(HC3−1348、HC3−1504、およびHC3−1550)が因子Bを活性化して、C3/C5コンバターゼを形成する能力を測定するアッセイの結果を示す。
【図6】CVFと比較した、3つの修飾ヒトC3タンパク質(HC3−1348、HC3−1504、およびHC3−1550)に関する、C3を活性化するためにC3/C5コンバターゼの活性を測定するアッセイの結果を示す。
【図7】CVFと比較した、修飾ヒトC3タンパク質HC3−1348のC3開裂(図6の実験で使用したコンバターゼの量の20%を使用して)を測定するアッセイの結果を示す。
【図8】CVFおよびヒトC3bと比較した、3つの修飾ヒトC3タンパク質:HC3−1348、HC3−1504、およびHC3−1550の活性測定の結果のまとめを示す。
【図9】天然CVFおよび各種のヒトC3タンパク質の補体枯渇の結果を示すグラフである。
【図10】C3b、組換えCVFおよび各種の修飾ヒトC3タンパク質による因子Bの開裂の結果を示すグラフである。
【図11】天然CVFおよび各種の修飾ヒトC3タンパク質のC3開裂の結果を示すグラフである。はめ込みグラフは、主グラフのコンバターゼの20%を使用して実施した同じ反応である。
【図12】因子HおよびIによる、選択したハイブリッドタンパク質の開裂の結果を示すグラフである。
【図13】ヒトC3/CVFハイブリッドタンパク質によるC5変換の結果を示すゲルの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトC3タンパク質の部分の、実質的にそれに関連する配列のコブラ毒因子タンパク質の対応する部分による置換を含む、修飾ヒト補体C3タンパク質。
【請求項2】
CVFの置換部分がC3のアルファ鎖内である、請求項1に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項3】
CVFの置換部分がC3のアルファ鎖のC末端部分である、請求項2に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項4】
置換C末端部分がヒトC3タンパク質のアミノ酸1663を含む、請求項3に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項5】
置換C末端部分がヒトC3タンパク質のC末端全体を通じて延伸しない内部部分である、請求項3に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項6】
修飾タンパク質が未修飾ヒトC3タンパク質と実質的に同数のアミノ酸残基を有する、請求項1に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項7】
置換がヒトC3タンパク質のアミノ酸位置700−1663内の任意の位置を含む、請求項1に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項8】
置換が最初の位置および最後の位置を含み、最初の位置が749、874、936、1264、1348、1496、1504、および1550から成る群より選択され、最後の位置が784、921、970 1324、1550、1617、および1663から成る群より選択される、請求項1に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項9】
置換がアミノ酸:1550−1663、1504−1663、1348−1663、1550−1617、1504−1617、1496−1663、1348−1617、1496−1617、1264−1324、749−784、874−921、994−1663、994−1550および936−970から成る群より選択される、請求項8に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項10】
修飾C3タンパク質が因子Bへの親和性を有し、活性コンバターゼの形成を補助する、請求項1に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項11】
コンバターゼが37℃にて約15分間の固有半減期を有する、請求項10に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項12】
修飾タンパク質がC3またはCVFによってコードされないN末端に追加の1〜19アミノ酸を有する、請求項1に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項13】
修飾タンパク質が実質的に非免疫原性である、請求項1に記載の修飾C3タンパク質。
【請求項14】
請求項1に記載の修飾C3タンパク質を患者に補体の枯渇に有効な量で投与するステップを含む、補体を枯渇させる方法。
【請求項15】
請求項1に記載の修飾C3タンパク質を補体を枯渇させるのに十分な量で送達するステップと;
遺伝子治療を提供するステップと;
そこから向上した結果を観察するステップと;
を含む、遺伝子治療の効率および/または有効性を向上させる方法。
【請求項16】
請求項1に記載の修飾C3タンパク質を血流を向上させるのに十分な量で送達するステップと;
治療剤または診断剤を提供するステップと;
を含む、治療剤または診断剤の送達を向上させる方法。
【請求項17】
送達ステップの前に修飾C3タンパク質を特定の組織に対する親和性を備えた抗体に化学的に結合させるステップ;
をさらに含む、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
補体を枯渇させるのに十分な量で修飾C3タンパク質を投与するステップ;
を含む、望ましくない補体活性化に関連する状態または疾患を処置する方法。
【請求項19】
状態または疾患がぜんそく、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、関節リウマチ、アルツハイマー病、多発性硬化症、心筋虚血、再潅流、敗血症、超急性拒絶、移植片拒絶、心肺バイパス、心筋梗塞症、血管形成、腎炎、皮膚筋炎、類天疱瘡、脊髄損傷およびパーキンソン病から成る群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
修飾タンパク質の機能プロフィールを形成するために、修飾C3タンパク質の少なくとも1つの特性を特徴付けるステップと;
機能プロフィールを処置される疾患または状態と結び付けるステップと;
を含む、修飾C3タンパク質を選択する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の修飾C3タンパク質をコードする核酸配列。
【請求項22】
請求項1に記載の修飾ヒト補体C3タンパク質および医薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の修飾C3タンパク質を発現する発現系。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−502323(P2008−502323A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511077(P2007−511077)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/015119
【国際公開番号】WO2005/107785
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(592225434)ユニバーシティ・オブ・ハワイ (4)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF HAWAII
【Fターム(参考)】