説明

コモンモード電流の低減方法

【課題】配電網から交流電圧を供給される電気回路の内部接地と大地との間に流れるコモンモード電流を、簡便かつ安価に低減させる方法を提供する。
【解決手段】この方法においては、配電網2によって、電気回路4の内部接地13と大地との間に電圧が印加され、コモンモード電流iの低減のために、配電網2によって、電気回路4の内部接地13と大地との間に印加されるこの電圧と逆位相の付加電圧が、電気回路4の内部接地13と大地との間に配置された電子部品によって、電気回路4の内部接地13と大地との間に印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電網から電力が供給されている電気回路の内部接地点と大地との間に流れるコモンモード電流を低減させることを目的としている。この配電網は、その中性点が大地に直接接続されているものであるが、それに限定されるわけではない。
【0002】
配電網は、多相または単相の交流電圧を送出し、送出された交流電圧は、バッテリなどの、電気回路の蓄電ユニットへの直流電圧の供給のために整流される。
【0003】
本発明が解決しようとする課題を、次の非限定的な例をあげて説明する。電気回路は、例えば自動車に搭載されており、その自動車の電気推進システムを含んでいる場合がある。自動車は、車両フレームを備えている。
【0004】
蓄電ユニットが配電網によって再充電されるときに、車両フレームは大地に接続される。電気回路と車両フレームとの間に、寄生成分や実在の成分が存在するために、コモンモード電流が、電気回路から車両フレームに流れ、大地を経由して、配電網に戻る場合がある。
【0005】
このようなコモンモード電流は、地表面上に足を置いて、車両フレームにもたれているユーザにとって危険である。
【背景技術】
【0006】
したがって、電気回路の、整流器より下流の部分と、車両フレームとの間を流れるコモンモード電流の許容値を制限するための規準が定められている。ヨーロッパの規準では、最大コモンモード電流は、50Hzの周波数において、3.5mAに制限されている。
【0007】
このような規準を満たすために、電気回路の、整流器より下流の部分と、車両フレームとの間に、絶縁変圧器を設けることが公知である。しかしながら、このような絶縁変圧器は高価であり、またそれを、限られた空間に組み込むことは困難である場合がある。
【0008】
さらに、いわゆるPFC(Power Factor Corrector:力率改善装置)の構成部品などの、制御可能なスイッチ部品を、電流の整流に用い、このスイッチ部品の制御のために、特殊な手段を遂行することは公知である。このような手段は、スイッチを過熱させ、また非常に複雑になる場合がある。
【0009】
高周波領域に関しては、非特許文献1により、配電網に直列に電圧を注入して、高周波数において、コモンモード電流を低減させるアクティブフィルタが公知である。
【0010】
さらに、電磁両立性(EMC)については、特許文献1により、高周波数において、コモンモード電流を低減させるためのアクティブフィルタが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公開第2004−0004514号公報
【特許文献2】国際公開第WO10/057892号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】C. Khun他「A simplified active input EMI filter of common-mode voltage cancellation for induction motor drive(誘導モータ駆動装置におけるコモンモード電圧を打ち消すための、単純化されたアクティブ入力EMIフィルタ)」The 2007 ECTI International Conference、2007年5月9〜12日、タイ国、93〜96頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電気回路と大地との間に流れるコモンモード電流を低減させるための上述の解決方法の欠点を克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために、本発明は、その一態様によれば、交流電圧を送出する配電網から電力を供給される電気回路の内部接地点と、大地との間に流れるコモンモード電流を低減させるための、次のようなステップを含んでいる方法を提供するものである。
− 配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に電圧が印加され、
− コモンモード電流の低減のために、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧と逆位相の付加電圧が、電気回路の内部接地と大地との間に配置された電子部品によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される。
【0015】
この方法において印加される付加電圧は、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧に対して逆位相であり、したがって、大地との間に生じる寄生インピーダンスの端子間で観察される、配電網の中性点と大地との間の電圧は低下する。その結果、コモンモード電流は低減する。
【0016】
付加電圧は、電気回路の内部接地と大地との間に存在する寄生キャパシタに並列に印加される。
【0017】
付加電圧は、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧の符号と逆の符号を有している。付加電圧の絶対値は、配電網によって印加される電圧の値以下である場合がある。さらに、付加電圧の絶対値は、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧の、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%と、次第に、より好ましくなる。
【0018】
付加電圧の絶対値が、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧の値に近いほど、コモンモード電流の値を、より低減させることができる。したがって、付加電圧の絶対値は、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧に、できるだけ近いほうがよい。
【0019】
付加電圧は、電気回路が、配電網から電力を供給されているときに、電子部品が、電気回路の内部接地と大地との間に流れるコモンモード電流を入力信号として受けた際に、電子部品の出力に発生する場合がある。
【0020】
電子部品は、電界効果トランジスタを含んでいない場合がある。具体的には、電子部品は、例えばおよそ450Vのコレクタ−エミッタ間電圧に耐える性能を有するバイポーラトランジスタを含んでいる。
【0021】
電子部品は、導通状態から遮断状態への遷移を実行しない場合がある。
【0022】
電子部品の0dB帯域は、5Hz〜1.1kHzの範囲にわたっている場合がある。
【0023】
電子部品は、ジャイレータとして動作する場合がある。
【0024】
したがって、本発明は、コモンモード電流を、コモンモード電流に対してあらかじめ定められた値にするように動作することができる。この値は0であるか、または標準によって許容されている最大値未満の値にすることができる。この電子部品は、配電網の周波数(一般に50Hzまたは60Hzである)に等しい周波数を有するコモンモード電流を取り除くために用いられるから、「アクティブフィルタ」と呼ぶこともできる。
【0025】
電子部品は、配電網の周波数に等しい周波数を有するコモンモード電流だけを取り除くように構成されている場合がある。
【0026】
一変形例として、電子部品は、配電網の周波数に等しい周波数、およびこの周波数の、二次〜十次の高調波周波数を有するコモンモード電流だけを取り除くように構成されている場合がある。したがって、配電網が50Hzの電流を供給している場合には、電子部品は、50〜500Hzの範囲の周波数でコモンモード電流を取り除くことができる。
【0027】
電子部品への入力信号として用いられるコモンモード電流の値は、配電網から電気回路に送出される電流から得られる場合がある。例えば配電網が三相電流を送出する場合には、各相に流れる電流を測定し、各電流をベクトル的に加え合わせることによって、コモンモード電流の値を得ることができる。
【0028】
したがって、本発明により、コモンモード電流低減のために印加されるべき電圧の値を、動的に決定することができる。
【0029】
上述の電流測定は、ナノ結晶磁性材料から成る磁心を用いて行なうことができる。
【0030】
例えば本出願人による特許文献2に開示されているように、モータの巻線を用いて、ハイブリッド自動車または電気自動車の蓄電ユニットを再充電するために、本発明を実施するときに、モータの巻線において、電流測定を行うことができる。一変形例として、配電網に電気回路を接続するためのコネクタと、モータのステータ巻線との間で、電流測定を行うことができる。
【0031】
付加電圧は、電気回路の内部接地と、電子部品の内部接地との間への、第1の電圧の印加、および大地と電子部品の内部接地との間への、第1の電圧の符号と逆の符号を有する第2の電圧の印加によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される場合がある。この場合、第1の電圧と第2の電圧との差は、付加電圧に等しい。したがって、付加電圧を生成するために、2つの増幅器段を用いることができる。このようにして、単独で付加電圧を発生させるための単一の増幅器の製造に必要な部品より安価な部品を用いて、各増幅器段を製造することができる。
【0032】
この場合には、電気回路の内部接地と電子部品の内部接地とは、互いに接続されない。これらの2つの内部接地は、同電位にないことに注意されたい。
【0033】
しかしながら、本発明は、付加電圧を発生させるために、単一の増幅器段しか用いない場合を排除するものではない。
【0034】
配電網は、50Hzまたは60Hzの周波数を有する交流電圧を送出する場合がある。配電網は、単相または多相(例えば三相)の電圧を送出する。
【0035】
電気回路は、配電網から送出される交流電圧を整流するための、正の出力端子と負の出力端子とを有する整流段を備えている場合があり、電気回路の内部接地は、それらの正の出力端子と負の出力端子とのうちの一方に接続されている場合がある。
【0036】
整流段は、その整流電圧値を、整流段より下流の部品に対して適合させるように構成されている場合もあるし、構成されていない場合もある。整流段は、例えばPFCの構成部品、特にブリッジを有しないPFC(ブリッジレスPFC)の構成部品である。
【0037】
本発明の一実施例によれば、蓄電ユニットが、整流段の正の出力端子と負の出力端子との間に接続されている場合がある。この場合には、本発明の方法を、配電網による、この蓄電ユニットの再充電中に実行することができる。
【0038】
蓄電ユニットは、例えば1つ以上のバッテリで構成されている。蓄電ユニットが、2つ以上のバッテリで構成されている場合には、それらのバッテリは、直列および/または並列に配置されていることがある。
【0039】
蓄電ユニットの端子間電圧は、充電されている状態で、150〜450Vの範囲にある場合がある。蓄電ユニットに吸収される電力は100W以上、例えば配電網が単相であるときには数kW程度、配電網が三相であるときには20kW以上である場合がある。
【0040】
電気回路およびフレームは、電気自動車またはハイブリッド自動車の一部を構成している場合があり、電気回路には、モータのステータ巻線によって構成されているインダクタンスが含まれている場合がある。
【0041】
フレームと、交流電流を送出する配電網から電力を供給される電気回路とを備える自動車の特定の用途にしたがって、本発明を実施することができる。この電気回路は、配電網から送出される電圧を整流するための整流段を備えており、整流段の下流には、電気回路の内部接地が接続されており、電気回路の内部接地の下流には、バッテリなどの蓄電ユニットが接続されている。電気回路の内部接地とフレームとの間に発生する電圧が、電気回路の内部接地とフレームとの間に流れるコモンモード電流の低減のために利用される。
【0042】
電気回路の内部接地と、その電気回路が接続されている配電網との間に、ガルバニック絶縁を設ける必要のないので有利である。
【0043】
寄生容量が、0〜350nF、特に70〜350nFの範囲にある場合には、電子部品のおかげで、電気回路は、大地に対するガルバニック絶縁を必要としない。
【0044】
本発明による方法においては、付加電圧は、電気回路とフレームとの間に存在しており、コモンモード電流の流れに関与する成分に直列に注入されることなく、それらの成分と並列に注入される。
【0045】
さらに、本発明の、別の一態様によれば、次のものを具備しているアセンブリが提供される。
− 交流電圧を整流するための、正の出力端子と負の出力端子とを有している整流段と、正の出力端子と負の出力端子とのうちの一方に接続されている内部接地とを備えている電気回路と、
− フレームと、
− 一方が電気回路の内部接地に、他方がフレームに電気的に接続されている電子部品であって、電気回路が配電網から電力を供給されているときに、電気回路の内部接地とフレームとの間に流れる電流を低減させるために、電気回路の内部接地とフレームとの間に電圧を印加するようになっている電子部品。
【0046】
このアセンブリは、自動車の一部を構成している場合があり、その場合には、フレームは、車両フレームである。
【0047】
しかしながら、フレームは、車両フレームではない場合もある。
【0048】
一変形例として、アセンブリは、他の装置、例えば同期モータ、または非同期モータの電源システムに組み込まれている場合がある。
【0049】
アセンブリは、ガルバニック絶縁が高価なものになってしまう任意のシステム、例えば100W以上の電力を吸収するバッテリ充電器に組み込まれている場合がある。
【0050】
さらに、本発明の方法に関する上述の各特性が、個々に、または2つ以上、上述のアセンブリと組み合わされている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の方法を実施することができるアセンブリの概略的な回路図である。
【図2】図1のアセンブリに等価なコモンモードモデルの概略的な回路図である。
【図3】図2の回路に、本発明による電子部品の一例が組み込まれている回路図である。
【図4】本発明による電子部品の機能が明確に示されている、本発明による方法の一例を、図1のアセンブリに適用したアセンブリのブロック図である。
【図5】本発明による電子部品の構造が明確に示されている、本発明による方法の一例を、図1のアセンブリに適用したアセンブリの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図面を参照して、以下に示す、本発明のいくつかの非限定的な実施形態を読むことによって、本発明を、よりよく理解することができると思う。
【0053】
図1は、本発明の方法を実施することができるアセンブリ1を示している。
【0054】
このアセンブリ1は、コネクタ3を介して、配電網2から電力を供給される。配電網2は、アセンブリ1の電気回路4に交流電圧を送出する。この例においては、配電網2は三相であり、実効値が230Vである交流電圧を送出する。この交流電圧の周波数は、この例においては50Hzである。配電網2の中性点Nは、大地に接続されており、寄生インピーダンス6が、中性点Nと大地との間に発生している。
【0055】
電気回路4は、インダクタンス、および配電網2から送出される交流電圧を整流するための整流段8を備えている。整流段8の出力端子9および10には、直流電流が流れる。
【0056】
整流段8は、例えばトランジスタなどの制御可能なスイッチを有している。整流段8は、交流電圧を整流するための、当業者には公知の、例えばPFCの構成部品であり、整流電圧値を、電気回路4の負荷に適合させ、また力率値および高調波電流の放出に関して、標準に準拠している。
【0057】
キャパシタ11が、整流段8の両出力端子9、10間に配置されている。蓄電ユニット、例えばバッテリ(図示せず)を、このキャパシタ11に並列に接続することができる。このバッテリは、配電網2が単相である場合には、例えば100Wを超過し、例えばほぼ3kWの電力を吸収し、配電網2が三相である場合には、例えばほぼ20kWの電力を吸収する。アセンブリ1は、さらに、金属のフレーム12を有している。フレーム12が地絡しているときには、フレーム12は、インピーダンス16を介して大地に接続されていると考えることができる。このインピーダンス16は、フレーム12が自動車の一部を構成している場合に、その自動車のユーザが、一方において車体に触れ、他方において大地に触れているときには、そのユーザの体の電気抵抗と等しい。
【0058】
アセンブリ1が、例えば電気自動車またはハイブリッド自動車の部品を構成している場合には、配電網2の各相に接続されているインダクタンスは、例えばモータを駆動するための、モータのステータの各相の巻線である。すなわち、特許文献2に開示されているように、ステータの各相の巻線を、インダクタンスとして、配電網2に接続することができる。
【0059】
キャパシタ15は、具体的には、整流段8の出力端子10とフレーム12との間の寄生インピーダンス、および/または技術的な理由に基づいて加えられる実際のインピーダンスを、キャパシタタイプの電子部品の形態で表わしたものである。整流段8の出力端子10は、負側の出力端子であり、電気回路4は、その内部接地13を、出力端子10に接続されている。このキャパシタ15が存在するために、コモンモード電流が、電気回路4からフレーム12へと流れ、さらに、大地を経由して流れ、配電網2に戻ることができる。
【0060】
配電網2が多相交流電圧を送出する場合には、整流段8のスイッチの一連の動作中に、出力端子10は、配電網2の中性点と、配電網2の各相のうちの1つとに交互に接続される。配電網2が単相である場合には、出力端子10は、配電網2の中性点、またはその相に選択的に接続される。
【0061】
したがって、出力端子10と、大地に接続されたフレーム12との間に、電圧Eが印加される。この電圧Eとキャパシタ15との存在によって、出力端子10から大地に向かって、電流が流れる。
【0062】
したがって、電気回路4の、出力端子10より上流の部分、および配電網2は、出力端子10とフレーム12との間に、次の電圧を交互に印加する電圧源20になぞらえることができる。
− ゼロ電圧と、
− 配電網2から電気回路4に伝達される電圧E。
【0063】
したがって、コモンモード電流iが、キャパシタ15、インピーダンス16、および寄生インピーダンス6を通って流れ、配電網2に戻る。したがって、図2に示されている等価コモンモードモデルが得られる。
【0064】
次に、本発明の実施形態の一例を、図3を参照しながら説明する。
【0065】
図3に示すように、コモンモード電流の値を低減させる、さらにコモンモード電流を打ち消すための電子部品21が、キャパシタ15に並列に配置されている。電子部品21の1つの端子は、整流段8の出力端子10に接続されており、別の1つの端子は、フレーム12に接続されている。
【0066】
この電子部品21は、配電網2の周波数と等しい周波数(この例においては50Hzである)で、電圧源20によって印加される電圧と逆位相の付加電圧E’を発生させるようになっているアクティブフィルタである。そのため、寄生インピーダンス6およびインピーダンス16に印加される電圧は低減され、さらには、打ち消される。したがって、寄生インピーダンス6およびインピーダンス16を通る電流も低減され、さらには、打ち消される。
【0067】
付加電圧E’は、キャパシタ15と並列に配置されている電子部品21によって印加される。
【0068】
この例においては、電子部品21は、電気回路4を通るコモンモード電流iを測定する測定システム23と組み合わされている。配電網2が三相である場合には、この測定システム23は、例えばナノ結晶磁性材料から成る磁心または他の磁心を用いて、各相における電流を測定し、測定された電流から計算することによって、コモンモード電流を特定することができる。このコモンモード電流に関する情報に基づいて、電子部品21は、電子部品21に並列に接続されているキャパシタ15の両端子間に、電圧源20によって出力端子10とフレーム12との間に印加されている電圧と逆位相の電圧を発生させる。
【0069】
ここで、電子部品21の一例を、図4および図5を参照しながら、その機能および構造に関して説明する。
【0070】
図4および図5の例において、電子部品21は、2つの増幅器段23および24を備えている。これらの増幅器段の各々は、測定システム23によって特定された電流値に基づいて、電圧を発生させる。2つの増幅器段23と24とは、同一種類のものであっても、異なる種類のものであってもよいし、また同じ電圧を発生させてもよいし、異なる電圧を発生させてもよい。2つの増幅器段23、24によって、それぞれ発生させられる第1、第2の電圧は、どちらも、例えばおよそ300Vの振幅を有している。
【0071】
図4および図5の例においては、第1の増幅器段23は、減結合キャパシタ28を介して、整流段8の出力端子10に接続されており、第2の増幅器段24は、別の減結合キャパシタ29を介して、フレーム12に接続されている。
【0072】
第2の増幅器段24は、利得が−1である増幅器30を有している。
【0073】
図4に示されている2つの増幅器段23および24に関しては、第1の増幅器段23によって、第1の電圧が、出力端子10と電子部品21の内部接地25との間に印加され、第2の増幅器段24によって、第1の電圧と逆符号の第2の電圧が、フレーム12と電子部品21の内部接地25との間に印加される。これらの2つの電圧の差は、コモンモード電流低減のために、電子部品21によってキャパシタ15に印加される電圧と等しい。
【0074】
増幅器段23、24の各々は、高利得のローパスフィルタ33、および直流電圧発生器34を有している。
【0075】
電子部品21は、さらに、増幅器段23および24より上流側に、増幅器32および35、ゼロ比較器36、およびPIDタイプのコントローラ(比例・積分・微分操作に基づいて制御を行うコントローラ)を構成している制御ユニット37を有している。
【0076】
図5は、図4に示す、電子部品21の機能を説明するためのブロック図に対応して、電子部品21の構造を説明するための回路図の一例である。図5に示すように、多くの機能が、+5Vの正電圧および−5Vの負電圧を供給される演算増幅器を用いて実行される。
【0077】
図5に示す値は、キャパシタ15の端子間に付加電圧を発生させることによって、キャパシタ15を通る、50Hzの周波数のコモンモード電流を低減させるための、電子部品21の諸元の一例である。
【0078】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0079】
一変形例(図示せず)においては、付加電圧を発生させるために、単一の増幅器段を用いることができる。
【0080】
さらなる変形例においては、配電網2から電気回路4に送出される実効電圧は、別の値を有している。
【0081】
本発明は、自動車の一部を形成しているアセンブリ1以外のアセンブリに適用することもできる。
【0082】
前記において、「有している」、「備えている」という表現は、特に断らない限り、「少なくとも1つを有している」、「少なくとも1つを備えている」の意味であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0083】
1 アセンブリ
2 配電網
3 コネクタ
4 電気回路
6 寄生インピーダンス
8 整流段
9、10 出力端子
11、15 キャパシタ
12 フレーム
13、25 内部接地
16 インピーダンス
20 電圧源
21 電子部品
23 測定システム、増幅器段
24 増幅器段
28、29 減結合キャパシタ
30、32、35 増幅器
33 ローパスフィルタ
34 直流電圧発生器
36 ゼロ比較器
37 制御ユニット
E 電圧
E’ 付加電圧
i コモンモード電流
N 中性点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を送出する配電網(2)から電力を供給される電気回路(4)の内部接地(13)と、大地との間に流れるコモンモード電流(i)を低減させる方法であって、
− 前記配電網(2)によって、前記電気回路(4)の内部接地(13)と大地との間に電圧が印加され、
− 前記配電網(2)の周波数におけるコモンモード電流(i)の低減のために、前記配電網(2)によって、前記電気回路(4)の内部接地(13)と大地との間に印加される電圧と逆位相の付加電圧が、前記電気回路(4)の内部接地(13)と大地との間に配置された電子部品(21)によって、前記電気回路(4)の内部接地(13)と大地との間に印加される方法。
【請求項2】
前記付加電圧は、前記配電網(2)によって、前記電気回路(4)の内部接地(13)と大地との間に印加される電圧の符号と逆の符号を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加電圧は、前記電気回路(4)の内部接地(13)と大地との間に存在する寄生キャパシタに並列に印加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電子部品(21)の0dB帯域は、5Hz〜1.1kHzの範囲にわたっている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記付加電圧の絶対値は、前記配電網(2)によって印加される前記電圧の値以下であるとともに、特に、前記配電網(2)によって印加される前記電圧の値の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または95%である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記付加電圧は、前記電気回路(4)が、前記配電網(2)から電力を供給されているときに、前記電子部品(21)が、前記電気回路(4)の内部接地(13)と大地との間に流れるコモンモード電流(i)を入力信号として受けた際に、前記電子部品(21)の出力に発生する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記電子部品(21)への入力信号として用いられるコモンモード電流(i)の値は、前記配電網(2)から前記電気回路(4)に送出される電流から得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電子部品(21)は、入力信号として受けたコモンモード電流(i)の値を、あらかじめ定められた設定値、特に0にする動作を行うように構成されている、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記付加電圧は、前記電気回路(4)の内部接地(13)と、前記電子部品(21)の内部接地(25)との間への、第1の電圧の印加、および大地と前記電子部品(21)の内部接地(25)との間への、前記第1の電圧の符号と逆の符号を有する第2の電圧の印加によって、前記電気回路(4)の内部接地(13)と大地との間に印加され、前記第1の電圧と前記第2の電圧との差は、前記付加電圧に等しい、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記配電網(2)は、50Hzまたは60Hzの周波数の交流電圧を送出する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記電子部品(21)は、電界効果トランジスタを含んでいない、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記電気回路(4)は、前記配電網(2)から送出される交流電圧を整流するための、正の出力端子(9)と負の出力端子(10)とを有する整流段(8)を備えており、前記電気回路(4)の内部接地(13)は、前記正の出力端子と負の出力端子とのうちの一方に接続されている、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記整流段(8)の正の出力端子(9)と負の出力端子(10)との間に接続されている蓄電ユニットの再充電中に実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気回路(4)は、ハイブリッド自動車または電気自動車の一部を構成している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
− 交流電圧を整流するための、正の出力端子(9)と負の出力端子(10)とを有している整流段(8)と、該正の出力端子(9)と負の出力端子(10)とのうちの一方に接続されている内部接地(13)とを備えている電気回路(4)と、
− フレーム(12)と、
− 一方で前記電気回路(4)の内部接地(13)に、他方で前記フレーム(12)に電気的に接続されている電子部品(21)であって、前記電気回路(4)が前記配電網(2)から電力を供給されているときに、前記電気回路(4)の内部接地(13)と、前記フレーム(12)との間に流れる、前記配電網(2)の周波数と同じ周波数を有する電流を低減させるために、前記電気回路(4)の内部接地(13)と、前記フレーム(12)との間に電圧を印加するように構成されている電子部品(21)とを備えているアセンブリ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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