説明

コラーゲン組成物、及びその製造方法

【課題】形状維持性・熱安定性・生体内安定性に富み、医療用材料・美容整形材料として好適なコラーゲン組成物を提供することである。
【解決手段】 架橋コラーゲンと、乳糖とを含有し、
前記架橋コラーゲン100重量部に対して前記乳糖が1〜30重量部であり、
前記コラーゲンが魚由来のコラーゲンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコラーゲン組成物、特に生体内に埋め込まれるコラーゲン組成物、中でも美容整形材料として生体内に埋め込まれるコラーゲン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、部分的に螺旋構造(コラーゲン螺旋)を有するタンパク質または糖タンパク質である。そして、コラーゲンは、無脊椎動物あるいは脊椎動物の組織、特に皮膚から多く抽出される。このようなコラーゲンには構造の違いによって19種類の型の存在が報告されており、更に同じ型に分類されるコラーゲンにも数種類の異なる分子種が存在する。中でも、I、II、III型及びIV型コラーゲンが主にバイオマテリアルの原料として用いられている。I型は殆どの結合組織に存在し、生体内に最も多量に存在するコラーゲンである。特に、コラーゲンは、腱、真皮及び骨に多く、工業的には、これらの部位から抽出される場合が多い。II型は軟骨を形成するコラーゲンである。III型は少量ではあるがI型と同様の部位に存在することが多い。IV型は基底膜を形成するコラーゲンである。I,II及びIII型はコラーゲン線維として生体内に存在し、主に組織あるいは器官の強度を保つ役割を果たしている。IV型は線維形成能力を有しないが、4分子で構成される網目状会合体を形成し、基底膜における細胞分化に関与していると言われる。コラーゲン線維は上記コラーゲン分子の自己集合体であり、コラーゲン分子が直列かつ並列にパッキングされた特異的な線維構造を有する。工業的には酸、アルカリ、あるいはタンパク質分解酵素を用いて組織内コラーゲン線維から可溶化されたコラーゲンが作成される。可溶性コラーゲンは、コラーゲン分子が数分子以下の集合体にまで微細化されていて、水あるいは塩水溶液に溶解して均一な透明溶液を形成する。一度可溶化されたコラーゲン分子は条件次第では試験管内でコラーゲン線維を再形成することが知られている。この現象は線維化(fibril formationあるいはfibrillation)と呼ばれる。コラーゲンに熱を加えるとコラーゲンの三重螺旋構造がほぐれ、各々のポリペプチド鎖がランダムコイル状の熱変性物を与える。そのような構造変化を起こす温度は変性温度と呼ばれ、熱変性物はゼラチンと呼ばれる。ゼラチンはコラーゲンに比べ水溶性が高い他に、生体内プロテアーゼに対する感受性が高いことが知られている。溶媒の条件によってはゼラチンがコラーゲン螺旋構造を部分的に回復することが知られている。ゼラチンはコラーゲン線維形成能を失っているが、部分的にコラーゲン螺旋構造を回復させることでコラーゲン線維形成能を回復できることが知られている。コラーゲンの変性温度は溶液状態の時に最も低くなる。コラーゲンは一般に生物原料から得られるが、生物から得たコラーゲンの変性温度はその生物の生活環境温度と密接に関係していると言われる。水溶液でのコラーゲンの変性温度は、哺乳類では38℃前後であるが、魚類はおおむね哺乳類よりも低く、特に鮭等の寒流系の魚類では20℃を下回る場合もある。
【0003】
コラーゲンは優れた保湿性を有し、ヒアルロン酸などの他の生体由来保湿剤に比べ収量が多く安価である為に、化粧品原料として有効に用いられる。又、細胞の接着や増殖を促す、抗原性が低い、生体親和性が高い、生分解性である等の多くの優れた性質から、細胞実験用材料および医療用材料など様々な用途に有効に使用される。これらの目的でコラーゲンが使用される場合、水溶液、綿状物、フィルム、スポンジ、ゲルなど用途に応じて種々の形態で使用される。特に、コラーゲンゲルは細胞担体、医療用材料、美容整形材料などに有効に用いられており、近年では再生医療における重要なマテリアルとして盛んに研究されている。
【0004】
上記コラーゲンゲルの原料となるコラーゲンは、従来、その殆どが牛皮など家畜の組織から採取されている。ところで、近年、BSE(牛海綿状脳症)問題が顕在化し、牛皮由来を含む家畜由来の原料を用いたコラーゲンが人間に用いられた場合、上記病原体の感染の恐れが指摘されるに至った。そこで、安全性と資源量等の観点から、魚由来コラーゲンが化粧品材料や食品材料として脚光を浴びている。又、細胞担体や医療用材料・美容整形材料のコラーゲンゲルの原料としても、魚由来コラーゲンを用いることが重要になりつつある。
【0005】
コラーゲンゲルを作製する方法としては大きく3種類に分けることが出来る。
(1)コラーゲン溶液に架橋剤を導入し、溶液をゲル化する方法。
(2)コラーゲン溶液に架橋を惹起する光線を照射し、溶液をゲル化する方法。
(3)コラーゲン溶液に中性緩衝液を加えてコラーゲンの線維化を惹起させ、コラーゲン線維ネットワークから構成されるゲルを得る方法。
【0006】
上記(1)の方法については、例えばコラーゲン溶液に化学架橋剤を混合してゲル化させた眼科用コラーゲンゲル成形物、グリコサミノグリカンとコラーゲンの混合溶液を水溶性カルボジイミドで架橋した組織再生マトリックス用ゲルなどが知られている。(2)の方法については、例えば窒素で十分に置換したコラーゲン溶液に紫外線を照射すると、コラーゲン溶液がゲル化することが報告されている。(3)の方法については、例えばサメ由来コラーゲン溶液と中性緩衝液を混合してコラーゲンの線維化を惹起させることにより得られるコラーゲン線維ネットワークから構成されるゲルが知られている。
【0007】
ところで、上記3種類のゲル化方法によって魚由来コラーゲンから作製したコラーゲンゲルは、ゲル強度、熱安定性や生体内安定性が不十分で、医療用材料・美容整形材料の用途においてはゲルの収縮や崩壊の恐れとか、生体内吸収性が高すぎる恐れが有った。
【0008】
そこで、近年、魚由来コラーゲンゲルの強度および熱安定性を大幅に向上させる技術として、コラーゲンを線維化させる工程に架橋剤を共存させ、コラーゲン線維内に架橋結合を導入させる技術が提案されている。魚由来コラーゲンの変性温度は一般的に低く、工業的に生産されている魚由来コラーゲンの変性温度は30℃以下であり、上記技術において用いられている魚由来コラーゲンの変性温度は19℃程度である。これらの魚由来コラーゲンから上記方法でコラーゲンゲルを作製すると、生体内温度である37℃において部分的に変性し、ゲルの収縮や崩壊を来たす恐れや、生体内で速やかに吸収される恐れが有り、魚由来コラーゲンから医療用材料・美容整形材料としてのコラーゲンゲルを作成する方法としては必ずしも十分ではなかった。
【0009】
このような問題を解決する為、即ち、高い強度・熱安定性・生体内安定性を有するコラーゲンゲルを提供する為、変性温度が30℃以上である魚鱗由来コラーゲンを含むコラーゲン溶液に対して架橋剤と線維化剤を添加しゲル化させることを特徴とするコラーゲンゲルの作成方法が提案(特開2006−257013号公報)されている。
【特許文献1】特開2006−257013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来のコラーゲンゲルは、耐久性が劣るものであった。例えば、従来のコラーゲンゲルをマウスに注入して経過を観察すると、注入部に形成された脹らみが長期間に亘っては維持されて無いことが判って来た。
【0011】
従って、本発明が解決しようとする第1の課題は、耐久性に富むコラーゲン組成物を提供することである。特に、形状安定性・熱安定性・生体内安定性に富み、医療用材料・美容整形材料として好適なコラーゲン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は、
架橋コラーゲンと、
乳糖
とを含有することを特徴とするコラーゲン組成物によって解決される。
【0013】
特に、
架橋コラーゲンと、
乳糖とを含有し、
前記架橋コラーゲン100重量部に対して前記乳糖が1〜30重量部である
ことを特徴とするコラーゲン組成物によって解決される。
【0014】
又、上記のコラーゲン組成物であって、架橋コラーゲンが1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩によって架橋されたコラーゲンであることを特徴とするコラーゲン組成物によって解決される。
【0015】
又、上記のコラーゲン組成物であって、コラーゲンが魚由来コラーゲンであることを特徴とするコラーゲン組成物によって解決される。
【0016】
又、上記のコラーゲン組成物であって、生体内に埋め込まれて使用される材料であることを特徴とするコラーゲン組成物によって解決される。
【0017】
又、上記のコラーゲン組成物であって、生体内に埋め込まれて使用される美容整形材料であることを特徴とするコラーゲン組成物によって解決される。
【0018】
又、コラーゲン溶液に架橋剤を添加してゲル化させるゲル化工程と、
ゲル化コラーゲンに乳糖を添加する乳糖添加工程
とを有することを特徴とするコラーゲンゲル組成物の製造方法によって解決される。
【0019】
又、上記のコラーゲンゲル組成物の製造方法であって、
コラーゲン溶液に架橋剤を添加してゲル化させるゲル化工程と、
ゲル化コラーゲンに乳糖を添加する乳糖添加工程
とを有することを特徴とするコラーゲンゲル組成物の製造方法によって解決される。
【0020】
又、上記のコラーゲンゲル組成物の製造方法であって、乳糖添加工程で添加される乳糖は濃度が0.5〜10%の乳糖水溶液であることを特徴とするコラーゲン組成物の製造方法によって解決される。
【発明の効果】
【0021】
架橋コラーゲンと乳糖とを含有するコラーゲン組成物は、体内に埋め込まれた状態にても、長期間に亘って、その状態が保持されていた。すなわち、形状安定性・熱安定性・生体内安定性に富んだものであった。
【0022】
尚、乳糖が用いられても、架橋されていないコラーゲンが用いられたに過ぎないコラーゲン組成物の場合、架橋コラーゲンが用いられても、乳糖が用いられてないコラーゲン組成物の場合には、形状安定性・熱安定性・生体内安定性に富むと言う本願発明の特長が奏せられてなかった。例えば、本発明のコラーゲン組成物は、37℃(人間の体温)においても、所定の粘性を保っており、変化が無かったのに対して、乳糖の代わりにブドウ糖を用いた場合には、粘性を失ってしまい、本発明の特長が到底に得られないものであった。
【0023】
尚、架橋コラーゲンと乳糖との割合は、架橋コラーゲン100重量部に対して乳糖が1〜30重量部である場合、形状安定性・熱安定性・生体内安定性が特に奏されるものであった。特に好ましい割合は、架橋コラーゲン100重量部に対して乳糖が6〜25重量部の場合であった。
【0024】
架橋コラーゲンは、前述の通り、各種の手法で得られる。但し、架橋剤によって架橋させたコラーゲンが特に好ましいものであった。中でも、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩によって架橋されたコラーゲンが最も好ましいものであった。例えば、グルタルアルデヒドによって架橋されたコラーゲンと乳糖とからなるコラーゲン組成物と、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩によって架橋されたコラーゲンと乳糖とからなるコラーゲン組成物とを対比すると、後者のコラーゲン組成物の方が形状安定性・熱安定性・生体内安定性に優れていた。
【0025】
そして、コラーゲンとして魚由来のコラーゲンを用いた場合には、牛由来のコラーゲンを用いた場合のBSE問題の心配も無い。
【0026】
すなわち、本発明になるコラーゲン組成物は、医療用材料・美容整形材料として安全性が高く非常に好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明はコラーゲン組成物である。特に、生体内に埋め込まれて使用される材料としてのコラーゲン組成物である。中でも、生体内に埋め込まれて使用される美容整形材料としてのコラーゲン組成物である。そして、架橋コラーゲンと乳糖とを含有する。架橋コラーゲンと乳糖との割合は、架橋コラーゲン100重量部に対して、特に、乳糖が1〜30重量部(中でも、6〜25重量部)である。架橋コラーゲンは、特に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩によって架橋されたコラーゲンである。すなわち、架橋剤として、アルデヒド系、カルボジイミド系、エポキシド系、或いはイミダゾール系の架橋剤が用いられるものの、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩や、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド・スルホン酸塩などの水溶性カルボジイミド系のものが好ましかった。中でも、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩が最も好ましいものであった。コラーゲンは、特に、魚由来コラーゲンである。
【0028】
又、本発明はコラーゲンゲル組成物の製造方法である。特に、上記のコラーゲンゲル組成物の製造方法である。そして、コラーゲン溶液に架橋剤を添加してゲル化させるゲル化工程を有する。かつ、ゲル化工程でゲル化されたゲル化コラーゲンに乳糖を添加する乳糖添加工程を有する。乳糖添加工程では、乳糖の濃度が0.5〜10%(特に、1%以上、更には2.5%以上。8%以下、更には7%以下。)の乳糖水溶液が用いられる。
【0029】
以下、更に具体的に説明する。
【0030】
[実施例1]
[魚由来のコラーゲンの作成]
(1) ヒラメのリン酸緩衝液でのホモジナイズ処理
凍結されたヒラメの皮をピンセット・鋏で取り、細かく切った。このヒラメの皮の細片85gに1000mLのリン酸緩衝液(リン酸一水素二ナトリウム21.7gとリン酸二水素一カリウム0.78gとを水に加えて1000mLとしたもの)を加え、ホモジナイズした。同リン酸緩衝液で1時間洗浄し、静置後、上澄み液をガーゼで濾過し、水で洗浄(1回の洗浄時間は1時間)を2回した。
(2) ペプシン処理
上記のヒラメ溶液にペプシン0.2gを加え、更に0.5M酢酸溶液を加えて1000mLとし、そして5℃で24時間攪拌した。
(3) コラーゲンの精製
ペプシン処理を終えた溶液を100000g×1時間の条件下で超遠心分離を行い、可溶性上清を分取した。この可溶性上清を0.7MのNaCl/0.5M酢酸溶液で5℃で24時間掛けて透析した。
【0031】
この透析液を100000g×1時間の条件下で超遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿物を0.5M酢酸に24時間掛けて溶解させ、この後で100000g×1時間の条件下で超遠心分離した。そして、上清を0.05Mとなるよう0.5Mのトリス−HCl緩衝液(pH7.4)を加え、そして緩衝能を持たせた上でpHメータで測定しながらpHが7.4となるように5MのNaOHを加えて中和した。尚、この時、ゲル化が起きないようにする為、pHが4.8〜5.0に長時間留まらないように注意する。
【0032】
次に、4.4MのNaClを加え、1晩に亘る攪拌後に、100000g×1時間の条件下で超遠心分離を行った。そして、沈殿物を2.4MのNaCl/0.05Mのトリス−HCl緩衝液(pH7.5)で抽出(1晩×2回)後、100000g×1時間の条件下で超遠心分離を行った。次いで、この沈殿物を1.0MのNaCl/0.05Mのトリス−HCl緩衝液(pH7.5)で抽出(1晩×2回)後、100000g×1時間の条件下で超遠心分離を行い、上清を得た。この上清液はコラーゲンを含むことから、分取して濃度を測定した処、1.38%であった。
【0033】
このコラーゲン含有溶液(a溶液)2.5mLを、予め、1.0MのNaCl/0.05Mのトリス−HCl緩衝液(pH7.5)を移動相として充填したゲル濾過カラムに添加した。そして、出て来た溶液を廃棄し、カラム上端に溶液が無くなってから、カラムの上端に移動相3mLを加え、ゲル濾過し、濾過された液3mLを採取し、更に0.22μmのメンブランフィルターを通過させた。
このようにしてコラーゲン溶液を得た。
【0034】
[コラーゲンゲルの作成]
EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩)を1%の割合で上記のコラーゲン溶液に添加・溶解させ、5℃で4日間掛けて反応を行わせた。得られた反応物に水を加えて洗浄した後、100000g×1時間の条件下で超遠心分離を行った。この操作を3回繰り返した。
【0035】
得られた沈殿物2gに乳糖水溶液(1%,4.7%,10%)を70mL加え、室温で、一晩振とうし、得られた反応物に水を加えて洗浄した。この後、100000g×1時間の条件下で超遠心分離を行った。そして、沈殿物を凍結乾燥し、水分を半分除去した。
【0036】
[マウスへの注入]
上記のようにして得られた乳糖処理のEDC架橋魚由来コラーゲンをヌードマウスの背部皮下に0.3g注入した。又、比較の為、乳糖処理していないEDC架橋魚由来コラーゲン(水分を凍結乾燥により半分除去)をヌードマウスの背部皮下に0.3g注入した。そして、注入部の状況を目視で観察したので、その結果を表−1に示す。
【0037】
表−1
観察結果
1%乳糖溶液処理EDC架橋魚由来コラーゲン 22日間皮下に膨れ保持
4.7%乳糖溶液処理EDC架橋魚由来コラーゲン 90日以上皮下に膨れ保持
10%乳糖溶液処理EDC架橋魚由来コラーゲン 6日間皮下に膨れ保持
乳糖溶液未処理EDC架橋魚由来コラーゲン 4日間皮下に膨れ保持

表−1から判る通り、本発明になる乳糖処理された架橋コラーゲンは、体内において、長期間に亘って維持されるものである。
【0038】
[実施例2]
実施例1におけるコラーゲン含有溶液(a溶液)2.5mLを、予め、注射用水を移動相として充填したゲル濾過カラムに添加した。そして、出て来た溶液を廃棄し、カラム上端に溶液が無くなってから、カラムの上端に注射用水の移動相3mLを加え、ゲル濾過し、濾過された液3mLを採取し、更に0.22μmのメンブランフィルターを通過させた。このようにしてコラーゲン溶液を得た。
【0039】
上記のようにして得られたコラーゲン溶液を基にして実施例1と同様に行った処、実施例1と同様な結果が得られた。すなわち、本発明になる乳糖処理された架橋コラーゲンは、体内において、長期間に亘って維持されるものであった。
【0040】
[実施例3]
実施例1において、架橋剤として用いたEDCの代わりに、グルタルアルデヒドを用いて同様に行った。
【0041】
その結果は、EDCを用いた場合よりも劣るものであった。例えば、粘性が僅かで、淡黄色を呈するものであった、但し、乳糖水溶液による処理がなされていないものに比べると、良好なものであった。

代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋コラーゲンと、
乳糖
とを含有することを特徴とするコラーゲン組成物。
【請求項2】
架橋コラーゲンと、
乳糖とを含有し、
前記架橋コラーゲン100重量部に対して前記乳糖が1〜30重量部である
ことを特徴とするコラーゲン組成物。
【請求項3】
架橋コラーゲンは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩によって架橋されたコラーゲンである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のコラーゲン組成物。
【請求項4】
コラーゲンが魚由来コラーゲンである
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかのコラーゲン組成物。
【請求項5】
生体内に埋め込まれて使用される材料である
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかのコラーゲン組成物。
【請求項6】
生体内に埋め込まれて使用される美容整形材料である
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかのコラーゲン組成物。
【請求項7】
コラーゲン溶液に架橋剤を添加してゲル化させるゲル化工程と、
ゲル化コラーゲンに乳糖を添加する乳糖添加工程
とを有することを特徴とするコラーゲンゲル組成物の製造方法。
【請求項8】
乳糖添加工程で添加される乳糖は濃度が0.5〜10%の乳糖水溶液である
ことを特徴とする請求項7のコラーゲン組成物の製造方法。
【請求項9】
架橋剤が1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩である
ことを特徴とする請求項7又は請求項8のコラーゲン組成物の製造方法。
【請求項10】
コラーゲンが魚由来コラーゲンである
ことを特徴とする請求項7〜請求項9いずれかのコラーゲン組成物の製造方法。
【請求項11】
生体内に埋め込まれて使用される材料の製造方法であることを特徴とする請求項7〜請求項10いずれかのコラーゲン組成物の製造方法。
【請求項12】
生体内に埋め込まれて使用される美容整形材料の製造方法であることを特徴とする請求項7〜請求項11いずれかのコラーゲン組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−161495(P2008−161495A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355187(P2006−355187)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(399086263)学校法人帝京大学 (21)
【Fターム(参考)】